JP4521930B2 - インクジェットヘッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録紙にインク滴を所定パターンに付着させて画像を形成するインクジェットヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、記録紙に画像を形成するための記録デバイスとしてインクジェットヘッドが用いられている。
【0003】
インクジェットヘッドの記録方式には、インク滴を記録紙に向けて吐出・飛翔させるのに発熱抵抗体の発する熱エネルギーを利用するものや圧電素子の変形を利用するもの,更には電磁波の照射に伴って発生する熱を利用するもの等があり、これらの中でも発熱抵抗体の熱エネルギーを利用するサーマルジェットタイプのものは、発熱抵抗体のパターン形成が容易であることに加え、発熱抵抗体の面積が小さくても比較的大きな熱エネルギーを発生させることができることから高密度記録への対応に適したものとして注目されている。
【0004】
かかるサーマルジェットタイプのインクジェットヘッドとしては、例えば、多数の発熱抵抗体及びこれら発熱抵抗体を被覆する保護膜が設けられている基板と、前記発熱抵抗体と1対1に対応する多数のインク吐出孔が穿設されている天板とを、間に所定の間隔を空けて配置させるとともに、前記基板及び天板間の隙間にインクを充填させた構造のものが知られており、記録紙を前記天板の上面に沿って搬送しながら、多数の発熱抵抗体を画像データに基づいて個々に選択的に発熱させ、この熱エネルギーによってインク中に気泡を発生させるとともに、該発生した気泡による圧力でもってインクの一部を天板のインク吐出孔より外部に吐出させ、これを記録紙に付着させることによって所定の画像が記録される。
【0005】
尚、前記インクをインク吐出孔より外部に吐出した後、基板と天板との間には吐出したインクと同じ量のインクが流入して補充されるようになっており、これによって上述の記録動作を連続的に繰り返すことができるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来のインクジェットヘッドにおいては、発熱抵抗体の熱エネルギーによってインク滴を吐出させた後、基板−天板間の気泡は上述したインクの補充によってその大部分が消滅するものの、細かな気泡が残ってしまうことがある。このような残留気泡を含んだ基板−天板間のインクは、次ラインの記録動作が開始されるまでの間、そのまま同じ場所にあるため、発熱抵抗体を再び発熱させて新たな気泡を発生させると、インクが小さな残留気泡を含んだまま外部に吐出されてしまったり、或いは、新たに発生した気泡と残留気泡とが合体することにより大きな気泡を形成する等してインクの吐出量が不均一となり、濃度むらが形成される欠点を有していた。
【0007】
また上述した従来のインクジェットヘッドの基板−天板間に充填されているインクは、気泡発生の際やインク補充の際を除けば流動することが殆どなく、インクや基板中には熱がこもり易くなっている。それ故、インクジェットヘッドを長時間にわたって使用すると、基板等の温度が過度に高温となり、インクの吐出量にバラツキを生じて濃度むらが発生したり、或いは不要なインクが外部に吐出される等の不具合を生じる欠点があり、またこれを避けるために各ラインの記録動作の間に十分な冷却時間を設けると、記録に要する時間が長くなって高速記録に供しなくなる欠点が誘発される。
【0008】
そこで上記欠点を解消するために、基板−天板間に充填されているインクを流動させることでインク吐出孔−発熱抵抗体間より残留気泡を除去するとともに基板中の熱を流動するインクで吸収し、基板を冷却することが検討されている。
【0009】
しかしながら、上述したインクジェットヘッドのインクは、基板−天板間の狭い隙間に充填されていることから、このように狭い領域内でインクを高速で流動させることは難しく、またこのようなインク中では発熱抵抗体やインク吐出孔付近において渦巻き状の流れが出来てしまったり、該渦巻きの発生によってインクの流れを止めてしまうことがあり、このような場合、インク中の残留気泡を短時間で除去したり、基板をインクで速やかに冷却したりするのに必要な所定の流速を得ることができず、高速記録に供することが不可となる欠点が誘発される。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記欠点に鑑み案出されたもので、本発明のインクジェットヘッドは、多数の発熱抵抗体及び該発熱抵抗体を被覆する保護膜が設けられている基板と、前記発熱抵抗体と1対1に対応する多数のインク吐出孔が穿設されている天板とを、前記インク吐出孔が前記発熱抵抗体の上部に位置するようにして間に所定の間隔を空けて配置させるとともに、前記基板及び前記天板間に形成される隙間にインクを充填させてなり、前記インクを前記発熱抵抗体の配列と直交する方向でかつ前記天板の下面に沿う方向に流動させながら前記発熱抵抗体の発する熱エネルギーによって前記インク吐出孔よりインク滴を吐出させて画像を形成するインクジェットヘッドであって、前記インクと接する前記保護膜の表面及び前記天板の下面の少なくとも一方に、前記発熱抵抗体の配列と直交する方向でかつ前記天板の下面に沿う方向に沿った多数の溝が形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
また本発明のインクジェットヘッドは、前記多数の溝は、各々の幅が1μm〜125μm、深さが0.1μm〜1.5μmであり、かつ前記発熱抵抗体の配列方向に1本/mm〜110本/mmの密度で形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
更に本発明のインクジェットヘッドは、前記インクの流速が、少なくとも前記発熱抵抗体及び前記インク吐出孔間の領域で50μm/sec〜2000μm/secに制御されることを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の一形態に係るインクジェットヘッドの分解斜視図、図2は図1のインクジェットヘッドの副走査方向にかかる断面図、図3は図1のインクジェットヘッドの主走査方向にかかる拡大断面図、図4は図1のインクジェットヘッドにおける溝の形成方向を説明するための拡大平面図であり、1は基板、3は発熱抵抗体、5は保護膜、6は保護膜表面の溝、7は天板、8はインク吐出孔、9はインクである。
【0014】
前記基板1は、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料によって矩形状をなすように形成され、その上面でグレーズ層2や多数の発熱抵抗体3等を支持するための支持母材として機能する。
【0015】
尚、前記基板1は、例えばアルミナセラミックスから成る場合、アルミナ、シリカ、マグネシア等のセラミックス原料粉末に適当な有機溶剤、溶媒を添加・混合して泥漿状に成すとともに、これを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等を採用することによってセラミックグリーンシートを得、しかる後、前記セラミックグリーンシートを所定形状に打ち抜いた上、高温で焼成することによって矩形状をなすように製作される。
【0016】
また前記基板1の上面には、一方の長辺に沿って断面山状のグレーズ層2が帯状に形成され、更にその頂部には多数の発熱抵抗体3が直線状に被着・配列される。
【0017】
前記グレーズ層2は、ガラス等によって断面山状をなすように形成されており、その表面は極めて平滑であることから、該グレーズ層2上に従来周知のフォトリソグラフィー等によって多数の発熱抵抗体3をパターン形成する際、発熱抵抗体3の微細加工を比較的容易に行うことができる。
【0018】
尚、前記グレーズ層2は、ガラスから成る場合、ガラス粉末に適当な有機溶剤、有機バインダー等を添加・混合して得た所定のガラスペーストを、前記基板1の上面に、従来周知のスクリーン印刷等によって帯状に印刷・塗布し、これを高温で焼き付けることにより断面山状をなすように形成される。
【0019】
また前記グレーズ層2上に被着されている多数の発熱抵抗体3は、例えば600dpiのドット密度で主走査方向に直線状に配列されており、TaN系やTaSiO系,TaSiNO系,TiSiO系,TiSiCO系,NbSiO系等の電気抵抗材料から成っているため、各発熱抵抗体3の両端に電気的に接続されている電極層4,4を介して発熱抵抗体3に電源電力が供給されるとジュール発熱を起こし、インク9中で気泡Aを形成するのに必要な熱エネルギーを発生する作用を為す。
【0020】
尚、前記発熱抵抗体3は、従来周知の薄膜手法、具体的にはスパッタリング、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術等を採用し、前述の電気抵抗材料をグレーズ層2の上面に所定厚み、所定パターンに被着させることにより形成される。
【0021】
更に前記発熱抵抗体3等の上面には窒化珪素等から成る保護膜5が略一定の厚みに被着され、該保護膜5によって発熱抵抗体3や電極4,4を被覆している。
【0022】
前記保護膜5は、発熱抵抗体3や電極層4,4をインク10の接触による腐食から保護するためのものであり、従来周知のスパッタリング等によって発熱抵抗体3等の上面に例えば2.0μm〜20.0μmの厚みに被着される。
【0023】
また前記保護膜5の表面には、発熱抵抗体3の配列と直交する方向(副走査方向)に多数の溝6が形成されている。
【0024】
前記多数の溝6は、少なくとも発熱抵抗体3上の領域に、各々が1μm〜125μmの幅、0.1μm〜1.5μmの深さで、かつ前記発熱抵抗体3の配列方向に1本/mm〜110本/mmの密度で形成されており、これらの溝6は前述した如く発熱抵抗体3の配列と直交する方向に沿って設けられているため、該方向に沿って後述するインク9を良好かつ安定的に流動させることができる。
【0025】
尚、前記多数の溝6は、保護膜5の表面を、酸化アルミニウムやシリコンカーバイド,ダイヤモンド等から成る硬質の無機質微粒子が接着されている所定のラッピングペーパーで発熱抵抗体3の配列と直交する方向に研磨し、保護膜5の表面の一部を削り取ることによって形成される。
【0026】
そして上述した基板1上には、発熱抵抗体3と1対1に対応する多数のインク吐出孔8を有した天板7が、間に所定の間隔を空けて、基板上面と略平行に配置される。
【0027】
前記天板7は、インク吐出孔8が対応する発熱抵抗体3の上部(真上)に位置するように位置合わせされており、その下面には基板1−天板7間の間隔を略一定に保つための図示しないスペーサが天板7の外周に沿って配され、該スペーサによって基板1−天板7間に所定の隙間を形成するようにしている。
【0028】
また前記インク吐出孔8は、インクジェットヘッドの記録動作時、インク滴iを記録紙に向けて吐出するためのものであり、発熱抵抗体3と1対1に対応するように、発熱抵抗体3と略等しい密度、例えば600dpiのドット密度で主走査方向に直線状に配列されている。
【0029】
尚、前記天板7は、モリブデン等の金属やアルミナセラミックス等の電気絶縁性材料から成り、例えばモリブデンから成る場合、モリブデンのインゴット(塊)を従来周知の金属加工法によって所定厚みの板体と成し、得られた板体に従来周知のレーザー加工等によって直径50μm〜110μmのインク吐出孔8を複数個、穿設することにより製作される。
【0030】
そして更に前述した基板1−天板7間の隙間にはインク9が充填される。
前記インク9としては、例えば顔料タイプの油性インクや水性染料インク等が使用され、該インク9は図示しないインクタンクから基板1−天板7間に供給され、前述した発熱抵抗体3の熱エネルギーによってインク9中に気泡Aが発生すると、該気泡Aによる圧力でもってインク9の一部がインク滴iとなってインク吐出孔9より外部に吐出される。
【0031】
またこのようなインク9は、インク吐出孔8の配列と直交する方向(副走査方向)に流動させる図示しない循環ポンプ等によってインクタンクとの間で循環される。
【0032】
前記インク9は、発熱抵抗体3とインク吐出孔8との間の領域において、例えば50μm/sec〜2000μm/secの流速で流動するように制御されており、かかるインク9の流れは、発熱抵抗体3の駆動状態にかかわらず、発熱抵抗体3が発熱しているときも、発熱していないときも常に略等しい流速に保たれる。
【0033】
このため、発熱抵抗体3からの熱エネルギーによってインク滴を吐出させた後、基板1−天板7間にいくつかの細かな気泡aが残留したとしても、これらの残留気泡aは基板1−天板8間を流動するインク9と共にインク吐出孔8の配列と直交する方向に移動して、次ラインの記録動作が開始されるまでの間に、発熱抵抗体3とインク吐出孔8との間の領域から速やかに排除される。従って、次ラインの記録動作に伴い発熱抵抗体3を再び発熱させて新たな気泡を発生させた際、インク吐出孔8より吐出されるインク滴iの中に細かな残留気泡aが含まれたり、新たに発生した気泡Aと残留気泡aとが合体することにより大きな気泡を形成したりすることは殆どなく、これによりインク9の吐出量を略一定として濃度むらの少ない良好な画像を形成することが可能となる。
【0034】
尚、インク9の流動方向を副走査方向以外の方向、例えばインク吐出孔8の配列と平行な主走査方向に設定した場合、インク9の流動に伴って残留気泡aが移動する方向には他のインク吐出孔8が多数配置されることとなるので、全ての残留気泡aを発熱抵抗体3とインク吐出孔8との間の領域から排除するには次ラインの記録動作が開始されるまでの間にインク9を主走査方向にわたって流動させる必要があり、この場合、次ラインの記録動作を開始するまでに極めて長時間を要し、高速記録に供しなくなる。従って、残留気泡aをインク吐出孔8の直下より速やかに取り除くにはインク9の流動方向を副走査方向と合致させておく必要がある。
【0035】
また前記インク9は、発熱抵抗体3や基板1を被覆する保護膜5と接した状態で流動するようになっていることから、インクジェットヘッドを長時間にわたって使用する場合であっても、発熱抵抗体3や基板1,グレーズ層2等の内部に蓄積される熱は保護膜5を介してインク9に良好に吸収され、基板1やグレーズ層2等の温度が過度に高温となることはない。従って、各ラインの記録動作の間に十分な冷却時間を設けなくても、発熱抵抗体3の温度を記録動作に適した温度に維持して、インク吐出孔8からのインク9の吐出量を常に略一定となすことができ、濃度むらの少ない鮮明な画像を高速で記録することが可能となる。
【0036】
更に本形態においては、前述した如く、インク9と接する保護膜5の表面に、副走査方向に沿って延びる多数の溝6が形成されていることから、基板1−天板7間のインク9は溝6の形成方向に沿って流動し易く、インク9を比較的速い流速で所定の方向に安定的に流動させることができる。これにより、インク9中で渦巻き状の流れが発生することは殆どなく、インク9の流れが局所的に止まるといった不都合も有効に防止されるようになるため、インク9中の残留気泡aを発熱抵抗体3−インク吐出孔8間より短時間で良好に除去するとともに基板1を流動するインク9で速やかに冷却するのに必要な所定の流速を得ることができ、高速記録に対応することが可能となる。
【0037】
尚、前記インク9は、基板1と天板7との間を通過した後、一旦、前述のインクタンクに戻って、再度、基板1と天板7との間に供給されるようになっており、これによってインク9が基板1−天板7間の領域とインクタンクとの間を繰り返し循環することとなる。
【0038】
また基板1−天板7間を流動するインク9が吸収した熱は、前述の如き循環経路を流動する過程で外部に放散され、再び基板1−天板7間に供給されるまでの間に十分に低い温度まで冷却される。
【0039】
かくして上述したインクジェットヘッドは、記録紙を天板7の上面に沿ってインク吐出孔8の配列方向と直交する方向に搬送しながら、多数の発熱抵抗体3を外部からの画像データに基づき個々に選択的に発熱させ、該発生した熱エネルギーによって発熱抵抗体3上に気泡Aを発生させるとともに、この気泡Aによる圧力でもってインク9の一部を天板7のインク吐出孔8より外部に吐出させ、吐出したインク滴iを記録紙に付着させることによって所定の画像が記録される。
【0040】
尚、本発明は上述の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0041】
例えば上述の形態においては、副走査方向に沿って延びる多数の溝6を保護膜5の表面に形成するようにしたが、これに代えて副走査方向に沿って延びる多数の溝6を天板7の下面に形成したり、或いは、保護膜5の表面と天板7の下面の双方に形成するようにするようても上述の形態と同様の効果が得られる。
【0042】
また上述の形態において、金属材料やセラミック材料から成る天板8の上面に更にポリイミド樹脂製のフィルムを被着させておいても構わない。この場合、前記フィルムには、インク吐出孔9の形成箇所に該吐出孔9よりも一回り小さなインク吐出孔が形成され、インク滴iは前記フィルムに設けたインク吐出孔より外部に吐出されることとなる。
【0043】
更に上述の本形態において、基板1−天板7間のインク9が全てのインク吐出孔8の直下領域で常に流動するようになしておけば、発熱抵抗体3の発した熱等によってインク9中の水分もしくは油分がインク吐出孔8から多量に蒸発し、インク吐出孔8内のインク9の粘度が上昇しようとしても、この部分にはインク吐出孔8の直下を流れるインク9から水分もしくは油分が順次補給されることによりインク9がインク吐出孔8付近で固まってしまうことはなく、インク吐出孔8の目詰まりを有効に防止することができる。この場合、画像データに対応した正確な画像を形成することができ、インクジェットヘッドの信頼性を向上させることが可能となる利点がある。
【0044】
【発明の効果】
本発明のインクジェットヘッドによれば、基板及び天板間のインクを、インク吐出孔の配列と直交する方向に流動させるようになしたことから、発熱抵抗体の熱エネルギーによってインク滴を吐出させた後、基板−天板間にいくつかの細かな気泡が残留したとしても、これらの気泡は基板−天板間を流動するインクと共にインク吐出孔の配列と直交する方向に移動して、次ラインの記録動作が開始されるまでの間に、発熱抵抗体とインク吐出孔との間の領域から速やかに排除される。従って、次ラインの記録動作に伴い発熱抵抗体を再び発熱させて新たな気泡を発生させた際、インク吐出孔より吐出されるインク滴の中に細かな残留気泡が含まれたり、新たに発生した気泡と残留気泡とが合体することにより大きな気泡を形成したりすることは殆どなく、これによりインクの吐出量を一定として濃度むらの少ない良好な画像を形成することが可能となる。
【0045】
また本発明のインクジェットヘッドによれば、インクが発熱抵抗体を被覆する保護膜と接触した状態で流動するようになっていることから、インクジェットヘッドを長時間にわたって使用する場合であっても、発熱抵抗体や基板等の内部に蓄積される熱は保護膜を介してインクに良好に吸収され、基板の温度が過度に高温となることはない。従って、各ラインの記録動作の間に十分な冷却時間を設けなくても、発熱抵抗体の温度を記録動作に適した温度に維持して、インク吐出孔からのインクの吐出量を略一定となすことができ、これによって濃度むらの少ない鮮明な画像を高速で記録することが可能となる。
【0046】
更に本発明のインクジェットヘッドにおいては、インクと接する保護膜の表面及び/又は天板の下面に、副走査方向に沿って延びる多数の溝を形成するようにしたことから、基板−天板間のインクを比較的速い流速で所定の方向に安定的に流動させることができるようになり、インク中で渦巻き状の流れが発生するのを有効に防止することができる。従って、インク中の残留気泡を発熱抵抗体−インク吐出孔間より短時間で良好に除去するとともに基板を速やかに冷却するのに必要な所定の流速を得ることができ、高速記録に対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一形態に係るインクジェットヘッドの分解斜視図である。
【図2】図1のインクジェットヘッドの断面図である。
【図3】図1のインクジェットヘッドの主走査方向にかかる拡大断面図である。
【図4】図1のインクジェットヘッドにおける溝の形成方向を説明するための拡大平面図である。
【符号の説明】
1・・・基板、3・・・発熱抵抗体、5・・・保護膜、6・・・溝、7・・・天板、8・・・インク吐出孔、9・・・インク
Claims (3)
- 多数の発熱抵抗体及び該発熱抵抗体を被覆する保護膜が設けられている基板と、前記発熱抵抗体と1対1に対応する多数のインク吐出孔が穿設されている天板とを、前記インク吐出孔が前記発熱抵抗体の上部に位置するようにして間に所定の間隔を空けて配置させるとともに、前記基板及び前記天板間に形成される隙間にインクを充填させてなり、前記インクを前記発熱抵抗体の配列と直交する方向でかつ前記天板の下面に沿う方向に流動させながら前記発熱抵抗体の発する熱エネルギーによって前記インク吐出孔よりインク滴を吐出させて画像を形成するインクジェットヘッドであって、
前記インクと接する前記保護膜の表面及び前記天板の下面の少なくとも一方に、前記発熱抵抗体の配列と直交する方向でかつ前記天板の下面に沿う方向に沿った多数の溝が形成されていることを特徴とするインクジェットヘッド。 - 前記多数の溝は、各々の幅が1μm〜125μm、深さが0.1μm〜1.5μmであり、かつ前記発熱抵抗体の配列方向に1本/mm〜110本/mmの密度で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
- 前記インクの流速が、少なくとも前記発熱抵抗体及び前記インク吐出孔間の領域で50μm/sec〜2000μm/secに制御されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
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