JP4521129B2 - ガラス成形品の製造方法及び装置、ガラス基板の製造方法、情報記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記録媒体、光磁気記録媒体および光記録媒体などの情報記録媒体の基板として、あるいはカメラ用フィルタ、マスクブランクスなどの板状ガラスとして使用される、例えば肉厚が約3mm以下である肉薄の板状ガラスをプレス成形により製造するガラス成形品の製造方法及びこの製造方法に用いる製造装置に関する。さらに本発明は、上記ガラス成形品に研削、研磨を施して基板とするガラス基板の製造方法、並びに上記基板を備えた磁気記録媒体、光磁気記録媒体および光記録媒体などの情報記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、磁気記録媒体など情報記録媒体の基板としてガラス基板が多く使用されている。このようなガラス基板は、従来は、板状のガラスから切り出す方法により製造されていた。しかるに、近年、上記方法に代えて、溶融ガラスから成形型を用いて直接プレス成形する方法、すなわちダイレクトプレス法が採用されている。
ダイレクトプレス法としては、例えば、特開平5−105458号公報に開示されている方法がある。この方法は、離型剤層を成形面に形成した成形型で、原料ガラス温度が軟化点以下である温度において、上下型とガラスとが熱的に平衡となるまで充分な時間プレスすることにより、反りの小さな近最終形状のディスク形状ガラス製品を製造する方法である。
しかしながら、上記方法では、原料ガラス温度が軟化点以下の温度において上下型とガラスとが熱的に平衡となるまで充分な時間プレス成形する必要があり、プレス成形にかかる時間が長く、量産性が悪いという問題点があった。
【0003】
それに対して、最近では磁気記録媒体の高密度化の要求が高まり、従来に比べ、より反りの小さな基板が求められている。特にMRヘッドに対応可能な磁気記録媒体用基板には高い平坦性を有することが要求されている。そのため、特開平5−105458号公報に記載の方法を用いてMRヘッド対応用の磁気記録媒体用ガラス基板を製造する場合、プレス成形により得られたガラス基板を所定のスペックに収まるように研削・研磨加工する必要があった。この研削は、肉薄板状ガラスを両側面から研削板によって挟み込み、圧力をかけた状態でなされる。しかし、板状ガラスが肉薄であればある程、撓んだ状態で研削されるため、板状ガラスの反りが解消されにくい。研削後に肉薄板状ガラスを研削板から取り外し、板状ガラスの両側から圧力を解くと、撓みが解消され、研削前の反りが復活してしまうという問題がある。このため、肉薄の板状ガラスを研削する場合に、板状ガラスが撓まないように常にきめ細かく板状ガラスに加える圧力を調節しなければならず、結果として、研削時間が長くなる。
このように、特開平5−105458号公報に記載の方法を用いて、MRヘッド対応用の磁気記録媒体用ガラス基板を製造する場合、プレス成形にかかる時間が長いばかりか、平坦性の良い肉薄板状ガラスの量産性を向上させることもできないという問題があった。
【0004】
このような問題を解決する方法として、特開平10−236831号公報に記載されている方法が提案されている。この方法は、具体的には、プレス成形後の変形可能な状態にある肉薄板状ガラスを、一対の平坦基盤で押圧してガラスの反りを修正すること(以下、修正プレスという)を特徴とするものである。
反りが修正されたガラスは、ガラスが外力に対して変形しないような温度にまで冷えた後に下型より取り出され、直ちにアニールのための炉に移され、歪みが取り除かれる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の方法では、プレス後、上型のみが成形されたガラスから離型され、成形されたガラスは、下型の成形面上に載置された状態で取り出し可能な温度にまで冷やされる。これは、上型から離型された時点ではガラスはまだ外力によって変形可能な温度範囲にあり、この状態でガラスを下型から取り出すと、ガラスに加わる力のために成形したガラスが変形してしまうからである。
【0006】
上型が待避された時点では、ガラスを載置する下型も降温されつつあるが、まだかなりの高温状態にあり、成形されたガラスの冷却は、主として型に接していない面からの放熱によって進む。即ち、この時点では、下型の成形面と接する面からのガラスの放熱と、上型から離型され雰囲気と接している面からのガラスの放熱との間には大きな差異がある。この状態はガラスを下型から取り出すまで続く。そのため、ガラスを下型から取り出す時点では、雰囲気と接している面(上型により成形された面)側の温度は、成形されたガラスの下型の成形面と接する面側の温度に比べて相当高い状態にある。このような対向する2つの面の間での温度差は、成形されたガラスに反りを生じさせる原因となる。
【0007】
そこで、上型からの離型時と下型からの取り出し時との間において、下型の冷却を急速に行い、成形ガラスの対向する2面間の温度差が小さくなるようにすれば、板状ガラスの反りを低減できるように思われる。ところが、下型を急速冷却するには、例えば、型内に冷却媒体を通すなどの工夫が必要であり、かつ成形型を均一に冷却する必要もあることから、技術的には非常に困難である。したがって、下型を強制的に冷却して、温度の低下を雰囲気温度の低下と同程度にすることにより板状ガラスの反りを低減することは実際的ではない。
【0008】
また、ガラスを下型より取り出した後に、板状ガラスの反りを上記修正プレスにより修正することは、事実上できない。なぜなら、上記修正プレスによる修正は、ガラスの温度がそのガラスのガラス転移点より高いときにのみ可能であるのに対して、ガラスの下型からの取り出しは、取り出しによってガラスが変形しないように、通常、ガラスがガラス転移点より低い温度でなった後に行われるからである。即ち、下型から取り出されたガラスの温度はガラス転移点より低いため、修正プレスにより反りを修正することはできない。
【0009】
そこで本発明の目的は、製造時間(サイクルタイム)を延ばすことなく(より短い時間内に)、より厚みの薄い板状のガラス成形体であっても、反りのより少ない状態で製造することができる板状ガラス成形品の製造方法及び製造装置を提供することにある。
さらに本発明の目的は、上記製造方法により製造されたガラス成形体を用いたガラス基板の製造方法を提供することにある。
加えて本発明の目的は、上記ガラス基板を用いた情報記録媒体の提供にある。
【0010】
本発明者は上記のような問題について鋭意検討した結果、両面で温度差がある肉薄板状ガラスをアニール工程の前に破損しない範囲で急冷し、ガラスを一時的に歪み点より低い温度にすることにより、ガラスの反りを低減できることを見出した。さらに、ガラスを一時的に歪み点より高い温度範囲に置くことで行われるアニール工程中、板状ガラスを縦置き状態にすることにより、アニールにより生じる板状ガラスの反りの量を低減できることを見出した。
本発明は上記知見に基づいてなされたものであり、反りを低減した肉薄板状ガラス成形品の製造方法、及び上記成形品を加工してガラス基板とするガラス基板の製造方法、並びに上記ガラス基板を使用した情報記録媒体を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、被成形ガラス材料を少なくとも上型及び下型からなる成形型を用いてプレスして板状ガラス成形品を得る方法であって、ガラス転移点より高い温度を有する被成形ガラス材料を下型の成形面上に供給する工程(供給工程)、供給された被成形ガラス材料を下型及び上型によりプレス成形して板状ガラスとする工程(プレス工程)、上記板状ガラスから上型を離型した後、下型成形面上の板状ガラスを、下型成形面上から取り出す工程(取り出し工程)、上記取り出した板状ガラスを180秒以内に該ガラスの歪み点より低い温度に冷却する工程(冷却工程)、及び得られた板状ガラスをアニールする工程(アニール工程)を含むガラス成形品の製造方法に関する。
【0012】
上記発明において、下型の成形面上に供給される被成形ガラス材料は、溶融ガラスであることができる。また、冷却工程及び/又はアニール工程を、前記板状ガラスを縦置きにして行うことがアニールにより生じる板状ガラスの反りの量を低減できるという観点から好ましい。また、板状ガラスから上型を離型した後、板状ガラスを下型成形面から取り出すまでの間に、板状ガラスに外力を加えて板状ガラスの反りを修正することが好ましい。さらに、板状ガラス成形品は厚みが4mm以下であることができる。また、供給工程からアニール工程までの一連の工程を繰り返し行うことにより板状ガラス製品を連続的に製造する方法において、成形面上から板状ガラスを取り出した後の下型を、所定温度に調整した後に供給工程にリサイクルすることがサイクルタイム短縮という観点から好ましい。
【0013】
さらに本発明の第2の態様は、被成形ガラス材料を少なくとも上型及び下型からなる成形型を用いてプレスし、得られた板状ガラスを成形型から離型した後にアニールして板状ガラス成形品を得る方法であって、前記アニールを、前記板状ガラスを縦置きにして行うことを特徴とするガラス成形品の製造方法に関する。
上記発明において、アニールは、移送手段上に縦置きされた状態の板状ガラスを、アニール炉中を搬送することにより行うことができる。
【0014】
さらに本発明の別の態様は、上記本発明の製造方法により得られたガラス成形品の主表面に少なくとも研磨を施してガラス基板を得るガラス基板の製造方法に関する。なお、本発明において、ガラス基板は、結晶化処理が施された結晶化ガラスよりなる基板も含む。また、本発明の別の態様は、上記本発明の製造方法によりガラス基板を得、このガラス基板の主表面に情報記録層を設けて情報記録媒体を得る、情報記録媒体の製造方法に関する。尚、本態様において、上記情報記録層は、ガラス基板の主表面に直接設けられても良いし、情報記録層とは別の層を介してガラス基板の主表面に間接的に設けられても良い。
【0015】
さらに本発明は、被成形ガラス材料をプレスした板状ガラスにするための少なくとも上型及び下型からなる成形型と、前記板状ガラスをアニールするアニール炉とを備えた板状ガラス成形品の製造装置において、前記成形型から取り出された板状ガラスの温度を180秒以内に該ガラスの歪み点より低温にする冷却部と、前記板状ガラスを前記アニール炉へと搬送するための搬送部を有することを特徴とする板状ガラス成形品の製造装置に関する。上記装置において、前記搬送部が前記板状ガラスを縦置き状態で搬送する手段であることが好ましい。
【0016】
さらに本発明は、被成形ガラス材料をプレスした板状ガラスにするための少なくとも上型及び下型からなる成形型と、前記板状ガラスをアニールするアニール炉とを備えた板状ガラス成形品の製造装置において、前記アニール炉内において前記板状ガラスを縦置き状態で搬送するための搬送部を有することを特徴とする板状ガラス成形品の製造装置に関する。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明第1のガラス成形品の製造方法は、被成形ガラス材料を少なくとも上型及び下型からなる成形型を用いてプレスして板状ガラス成形品を得る方法であって、供給工程、プレス工程、取り出し工程、冷却工程及びアニール工程をこの順に有する。
本発明第1の製造方法によれば、取り出し工程において、上型から離型され、次いで、下型成形面上の板状ガラスは下型成形面上から取り出される。より具体的には、板状ガラスから上型を離型した後、下型成形面上の板状ガラスを外力に対して変形しない状態になるまで冷却した後、下型成形面上から取り出すことが好ましい。下型上に載置された状態で、下型より取り出し可能な温度にまで冷却された肉薄板状ガラスには、下型により成形された面側と上型により成形された面側との間に温度差が生じる。しかし、取り出し工程において、下型よりの取り出しとともにガラスを外力に対して変形しない状態になるまで冷却するので、板状ガラスの反りは大きくならず、反りを低減することができる。
【0018】
〔供給工程〕
供給工程において、ガラス転移点より高い温度を有する被成形ガラス材料が下型の成形面上に供給される。被成形ガラス材料は、ガラス転移点より高い温度を有することで、次のプレス工程で、少なくとも上型及び下型からなる成形型を用いてプレスされる。具体的には、被成形ガラス素材は、溶融状態(ガラスの粘度が102〜103ポアズの範囲)にあるガラスであることが好ましい。溶融ガラスをダイレクトプレスすることで、ガラス塊を加熱してプレス成形する方法のようにプリフォームの作製等の余計な工程が不要となり、高い生産性のもとに肉薄の板状ガラスを生産することができる。
【0019】
このような溶融ガラスを直接プレス成形する方法は、ダイレクトプレスと呼ばれているが、ダイレクトプレスでは、下型に溶融ガラスが供給されてから、ガラスの粘度が大きく上昇しないうちに(ガラスの温度が大きく低下しないうちに)プレス成形する必要がある。そのため、被成形ガラス素材として、溶融状態にあるガラスを用いると、プレス時から成形されたガラスを下型から取り出すまでの間に下降する温度差が大きくなり、下型取り出し時における下型により成形された面側のガラスの温度と上型により成形された面側のガラスの温度との間の温度差が比較的大きくなる。このように上型により成形される面側と下型により成形される面側との間の温度差が大きい成形では、下型からガラスを取り出した後の反りは大きくなる。しかし、冷却工程を施すことにより反りを低減することができる本発明の製造方法では、このような溶融ガラスをプレスする場合であっても、ガラスの反りを低減することができ、ダイレクトプレスには極めて有効である。
【0020】
〔プレス工程〕
プレス工程においては、下型の成形面上に供給された被成形ガラス材料を下型及び上型によりプレス成形して板状ガラスとする。
プレス成形に使用する上型、下型の温度は、ガラスの種類、ガラスの離型性、型の損傷等の観点から適宜設定される。但し、上型の温度は250〜450℃の範囲、下型の温度は350〜550℃の範囲であることが好ましい。この温度範囲にある型を使用すれば、ガラスが型内で十分に伸びて成形が可能であり、温度が高過ぎて型の焼き付きや張り付きが起こることもない。上型の温度は、下型と同じ温度か、または下型の温度より50〜100℃低い方が好ましい。また、成形型は下型及び上型以外に上下型又は/及び上型を案内する胴型を有することもでき、この場合、胴型の温度は、下型と近似した温度であることが好ましい。下型の温度は、プレス成形後(反り修正を行う場合には、反り修正後)の板状ガラスの反りの状態によって適宜変化させることが好ましい。例えば、完成した板状ガラスが凹形状の反りを有している場合は、下型の温度を下げることにより、ガラスの粘度が下がり、次工程の反り修正を適正に行うことができる。逆に凸形状の反りがある場合は、下型の温度を上げ、反り修正時のガラスの粘度を上げることにより、反り修正を適正に行うことができる。
【0021】
但し、成形プレス終了時のガラスが、型の成形面に対応する形状を、離型後も基本的には維持し、且つ外力によって微小変形も可能な状態になっているという観点から、プレス成形終了時のガラスの温度は、ガラス転移点及びガラス軟化点より高い温度であることが適当である。また、プレス成形の所要時間は、2秒以内が好ましく、更に好ましくは1.8秒以内である。また、本発明の製造方法が対象とする板状ガラスは、磁気ディスク用ガラス基板などの情報記録媒体に代表されるような薄板状ガラス基板に適したガラス成形品であり、板厚は、例えば、が4mm以下、好ましくは0.5〜3mm範囲のものである。また、板状ガラスは、円板状であることが好ましく、情報記録媒体の基板として用いられる事を考慮すると、直径が15cm付近又はそれ以下、特に10cm付近であることが適当である。
【0022】
プレス工程では、被成形ガラス材料を成形型の外周方向に押し広げることで、ガラスを薄い板状に成形することができる。成形型の成形面に固体潤滑剤を付着させて、ガラスに対する潤滑性を上げることが、被成形ガラス材料を成形型の外周方向に容易に押し広げることができるという観点から好ましい。なお、被成形ガラス材料が溶融ガラスであり、かつ肉薄の板状ガラスを成形する場合、肉厚の板状ガラスを得る場合より、成形型は、より多くの熱を溶融ガラスから受け取るためより高温になる。従って、固体潤滑剤は高温域においても潤滑性を失わない耐熱性のものであることが好ましい。このような耐熱性固体潤滑剤としては、耐熱性に優れるものであれば特に限定されないが、例えば、窒化ホウ素(BN)が好適である。また、極薄い肉薄板状ガラスであっても機械的強度に優れる板状ガラスを得るために、被成形ガラス素材として溶融温度が高いものを用いることがある。このような場合には、成形型もかなり高温となるため、固体潤滑剤に要求される耐熱性は非常に高度なものとなる。このような場合にもBN粉末等の高耐熱性固体潤滑剤粉末は好適に用いられる。耐熱性固体潤滑剤は粉末化したものを用いることで、潤滑剤の成形面への均一な付着および余剰分の除去を容易に行うことができる。固体潤滑剤は離型剤として作用する。
さらに、成形型の材料は、耐熱性のあるものであればよく、グラファイト、タングステン合金、窒化物、炭化物、耐熱金属等が用いられるが、特に鋳鉄が、強度、耐久性に優れるため好ましい。
【0023】
〔取り出し工程〕
取り出し工程においては、プレス成形後の板状ガラスから上型を離型し、その後、下型成形面上の板状ガラスを下型成形面上から取り出す。好ましくは、前記板状ガラスから上型を離型した後、下型成形面上の板状ガラスを外力に対して変形しない状態になるまで冷却した後、下型成形面上から取り出す。「外力に対して変形しない状態」かどうかは、本願各請求項にかかる発明において、板状ガラスの表面温度が(ガラス転移点+20℃)以下になっているかどうかを目安にして見分けることができる。好ましくは板状ガラスの表面温度が(ガラス転移点+10℃)以下、さらに好ましくは板状ガラスの表面温度がガラス転移点以下である。特に、板状ガラスの表面温度が(ガラス転移点−10℃)以下になった状態で取り出すことが望ましい。なお、ガラス表面の温度は放射温度計によって測定することができる。本発明の方法では、例えば、下型成形面上の板状ガラスの上面(上型により成形された面)及び下面(下型により成形された面)の温度が、いずれもガラス転移点以下になるまで冷却することが好ましい。上記取り出し工程における冷却は、板状ガラスの温度がガラスの歪み点まで冷却する前に終了する。
【0024】
板状ガラスの冷却は、板状ガラスから上型を離型することで、板状ガラスの離型した面を、成形型を収納している成形装置内の雰囲気に晒すことで行うことができる。成形装置内の雰囲気は、空気または窒素ガス等の不活性ガスであることができ、雰囲気の温度は、特別に調整する必要はなく、例えば室温であってもよい。空気にてこの工程を行うことにより、特別なガスを使用することもないので、安価で簡略な冷却を行うことができる。取り出し工程において、上型により成形された面は雰囲気又は大気に晒され、下型と接している面との間に温度差が生じてしまうが、本発明によれば、そのような温度差があってもガラス取り出し後の反りを低減することができる。
【0025】
取り出し工程中に、好ましくは冷却と並行して、板状ガラスに外力を加えて反りを修正することができる。反り修正は、例えば、板状ガラスの温度が該ガラスのガラス転移点より高い状態で行う。反り修正により、プレス後に発生するガラスの反りを修正し、ガラスを平坦化することができ、さらに冷却工程によって、取り出し工程後に生じた反りを低減することができるので、反り全体の量をより低減することができる。
【0026】
プレス成形後のガラス体は、各型を通して放出される熱量が異なっており、これが原因となってガラス体の対向主表面が湾曲したように反っている。この反りを低減、除去するのが、肉薄板状ガラスの反り修正工程である。この反りの修正方法としては、例えば、プレス成形後の肉薄板状ガラスにおける、上面と下面の温度が高い方から、空気等を吹きかけて熱を奪う方法や、プレス成形後のガラス体を平坦な一対の基盤で押圧して、外力によって平坦な形態になるように変形する方法(以下、反り修正プレスと呼ぶ)がある。平坦な一対の基盤でガラス体を押圧する場合は、平坦な一対の基盤として、プレス成形で使用した上型と下型を用いてもよい。この反り修正工程におけるガラスの粘度は、外力が付与されなければ、プレス成形で付与された形状を維持し、外力が付与されれば、微小変形する値であることが好ましい。反り修正で使用する平坦な基盤の温度は、400〜650℃が好ましい。400℃未満だとガラスに欠陥を発生させ、600℃を超えるとガラスが基盤に張り付くためである。この温度はガラスの温度より250〜20℃低く、成形プレスで使用する型より、50〜200℃高くするのが好ましい。これは、反りの修正工程では、プレス成形時よりガラスの温度、粘度が低下しており、反り修正でワレが発生するのを防止するためである。
【0027】
プレス成形は、不定形な溶融ガラス等の被成形ガラス素材を成形型の内周成形面に対応した一定形状に成形するものであるが、上記の反り修正プレスは、プレス成形により得られた肉薄板状ガラスを形状加工するという意味合いからではなく、プレス成形によって形状加工された肉薄板状ガラスの反りを取り除き(または低減し)、肉薄板状ガラスを平坦または平坦に近い形態にするためになされるものである。好ましい反り修正プレスは、上型と下型との間で平坦な状態とされた肉薄板状ガラスをこれよりも低温になっている一対の平坦な基盤(または上型と下型)によって冷やし硬くすることにより、肉薄板状ガラスの反りを修正するというものである。反り修正プレスは、肉薄板状ガラスの内部がガラス転移点より高い状態にあるときに行うのが好ましい。ガラス転移点以下の状態で反り修正プレスを行うと、肉薄板状ガラスが硬すぎるため、肉薄板状ガラスにひびや割れが発生する傾向がある。一方、肉薄板状ガラスが軟らかすぎると、反り修正プレスにより肉薄板状ガラスの形状が変化してしまい好ましくないので、この観点から反り修正プレスを行う温度の上限が定められる。尚、反り修正のためのプレスは、1回に限らず、必要に応じて2回以上行うこともできる。
【0028】
[冷却工程]
冷却工程では、取り出し工程において、好ましくは冷却された板状ガラスを、下型成形面上から取り出し、該ガラスの歪み点より低い温度に冷却する。
プレス成形された板状ガラスは、取り出し工程において、好ましくは上記の反り修正プレスが施され、外力を加えても変形しない状態まで冷却されてから下型より取り出される。取り出された板状ガラスは、冷却工程において、断熱性の部材により保持された状態で、例えば、大気に晒され、歪み点より低い温度に冷却される。この冷却は、比較的急冷であることが好ましく、下型より取り出されたガラスを所定温度よりも低い温度の雰囲気に晒すことが好ましい。ガラスが急冷されることで、反りが大きくなる前に歪み点より低い温度にまでガラスを冷却することができる。前記ガラスの温度は180秒以内、好ましくは60秒以内に、歪み点より低い温度にまで急冷されることが適当である。ガラスが晒される雰囲気は大気でもよいし、他の種類のガスが満たされている雰囲気でもよい。但し、上記雰囲気は、成形されたガラスの熱容量と比べて十分大きい熱容量を有していることが好ましい。大気中に晒す場合は、空気以外の雰囲気を準備する必要もなく、また雰囲気の温度調節をする必要もないので、簡略的である。
【0029】
ただし、取り出し直後のガラスに冷却ガスを吹き付けて冷却すると、冷却ガスが吹き付けられた部分の温度が極端に低下し、ガラスの2つの主表面間の温度差が大きくなり、反りを低減する上からは好ましくない。さらに、取り出し直後にガスの吹き付けるとガスの圧力によりガラスが微妙に変形することがあるので好ましくない。下型より取り出されたガラスは、2つの主表面間で温度差がなければ、冷却スピードは小さくてもよいが、取り出し直後のガラスで、上記温度差をなくすことは困難である。そのため、反りを低減する上からは下型より取り出されたガラスをできるだけ早く、反りが生じにくい歪み点より低い温度にまで冷却する。したがって、冷却工程における冷却スピード(取り出し温度から歪み点までの冷却スピード)は急激な温度変化によりガラスが破損しない範囲でできるだけ大きくすることが好ましい。
雰囲気中又は大気中にガラスを晒す方法の以外に、ガラスの歪み点より低い温度の液体に板状ガラスを浸漬することにより冷却工程を行ってもよい。ここで上記液体は、成形されたガラスの熱容量と比べて十分大きい熱容量を有していることが好ましい。上記液体は、ガラスと反応しない液状の物質であることが適当であり、例えば、すず(融点232℃)などのガラスの歪み点より低い融点を有する低融点金属を融解した液状物質の中に浸漬してもよい。
【0030】
冷却工程は、後続のアニール工程とともに、前記板状ガラスを縦置きにして行うことが好ましい。ここで縦置きした状態とは、肉薄板状ガラスをその主表面の中央部における法線が略水平方向を向くようにした状態を意味する。板状ガラスの縦置きは、下型より取り出された板状ガラスを、板状ガラスを縦置き可能な構造を有する断熱材により支持した状態で行うことができる。支持材の温度如何によってガラスの反りが大きくなるのを低減することができる。
【0031】
〔アニール工程〕
アニール工程では、冷却工程で冷却された板状ガラスをアニールする。歪み点より低い温度まで冷却されたガラスは、再度、加熱され、アニールされる。アニールの温度条件は通常採用されている条件とするこができる。アニール工程は、冷却工程とともに、前記板状ガラスを縦置きにして行うことが好ましい。外力を加えても変形しない状態でガラスを縦置きすることができ、しかも縦置き状態でアニールすることにより、反りを低減することができる。なお、ガラスの反りはガラスの歪み点以上で生じるので、アニール工程のうち、少なくともガラスの温度が歪み点以上にある間、縦置き状態を保てば上記効果を得ることができる。縦置き状態にする手段としては、特に制限はないが、板状ガラスを両側から耐熱性の支持体で挟んで支持したり、複数枚重ねられた板状ガラスを上記の支持体で挟んで支持したりすることができる。
ガラスの縦置きは、成形型からの取り出しと同時又は直後に行ってもよいし、冷却工程後に行ってもよい。冷却工程後に、縦置き作業するため、ガラスをより低い温度にまで冷却する必要がある場合には、ガス吹き付けによりガラスを急冷してもよい。アニールのため、ガラスを歪み点より高い状態にする前に、ガラスを縦置き状態にすることが望ましい。
【0032】
縦置き状態された肉薄板状ガラスは、例えばガラスを縦置き状態に保持する部材にセットされ、搬送装置によりアニール炉へと搬送される。ガラスは一度、歪み点より低い温度にまで冷却されているので、急激には加熱せず、アニール温度よりも低い温度に設定された領域を経て、アニール温度に設定された領域へと移動される。アニールされたガラスは徐々に室温まで冷却される。
多数のガラスを生産する上で、複数のガラスをセットされた上記縦置き状態を保持する部材を複数、アニール炉中に導入してアニールを行うことが望ましい。アニールされたガラスは、研削、研磨が施され基板として加工される。この過程でガラスは適宜、洗浄される。またこの過程でガラスにイオン交換による化学強化処理あるいは結晶化処理などを行ってもよい。
【0033】
本発明の第1の製造方法では、供給工程からアニール工程までの一連の工程を繰り返し行うことにより板状ガラス製品を連続的に製造する。この際、冷却工程において板状ガラスを取り出した後の下型を、所定温度に調整した後に供給工程にリサイクルする。下型よりガラスを取り出すまでに下型温度をガラス転移点付近まで下げれば十分なので、ガラスが取り出された下型を被成形ガラス材料が供給され、プレスが開始される際の下型温度に調整するのに要する時間が短くて済み、反りの少ないガラス成形品を生産性よく製造することができる。
【0034】
下型は、被成形ガラス素材の供給工程、プレス工程、(必要により、反り修正の工程)、取り出し工程における成形品の取り出し等の工程を順次経るように設計されている。例えば、ターンテーブルの円周上に複数個の下型を配置し、下型が各工程を経るようにターンテーブルを回転させることが好ましいが、直線方向に移動するように設計してもよい。このように、複数の下型を用い、該複数の下型の各々を順次、前記一連の工程を行う位置に移動、循環して前記一連の工程を行うことができる。但し、複数の下型を循環して使用するので、一つの下型を使用する方法に比べ、下型の温度調整の時間短縮化は生産性を向上させる上でより重要になる。
また、各工程に、同時に供せられる下型の数は、単数個または複数個であってもよい。一方、上型は、プレス成形の工程に位置した下型に対向して配置される。従って、上型は、一度のプレス成形に使用される下型と少なくとも同数が必要であるが、それ以上の個数を備えてもよい。また、プレス成形後に溶融ガラスから上型に移動した熱を除去して、上型の温度が成形時の適切温度になるように短時間で温度コントロールすることができれば、上型は1個であってもよい。
【0035】
前述のように、上型及び下型のそれぞれの成形面の温度は、プレス成形開始時に、ある所定の温度に調節されることが必要である。ここで、上型及び下型について所定の温度とは、ガラス材料を、肉薄の板状に成形するのに適した温度をいう。かかる温度は、硝子種、肉厚、ガラス板のサイズ等により適宜決定される温度である。
さらに、プレス成形開始時の上型および下型の成形面の温度を前記所定温度に調節するために、上型および下型に対して、必要に応じて加熱する手段、および冷却する手段が講じられる。加熱する手段としては、例えば、ニクロムヒータを下型(上型)の周囲に複数配置して加熱する方法、下型(上型)の周囲を取り囲むように配置したコイルに電流を流して導電体からなる成形型を誘導加熱する方法、ガスにより加熱する方法等がある。下型(上型)が複数個配置される場合に、各々の下型(上型)の周囲にニクロムヒータを配置して加熱する場合には、各ニクロムヒータ間の温度のバラツキにより、各々の下型(上型)を均一に加熱するのが困難であるので、均一な加熱ができる誘導加熱による方法が好ましい。誘導加熱によると、一つのコイルで各々の下型(上型)を加熱することができるため熱源温度のバラツキという問題がなく、コイルと各々の下型(上型)との距離を一定にすることで成形型を均一に加熱することができる。ここで、誘導加熱の際にコイルに流す電流は、高周波電流であることが好ましい。低周波電流では装置が大がかりになり、また、人の可聴音域であるため騒音が問題となる場合がある。一方、下型(上型)が単数個である場合には、各ニクロムヒータ間での温度のバラツキという問題がないので、ニクロムヒータを下型(上型)の周囲に配置して加熱する方法を採用できる。
【0036】
プレス成形に供せられた成形型の温度は、プレス成形前に比べて上昇している。連続してガラスの成形を行うためには、次のプレス成形までに成形型を冷却して、どの成形品についても同等の温度条件で成形する必要が生じる。したがって、加熱手段と同時に、冷却手段も必要となる。冷却手段としては、成形型の中空部に水や空気を循環させる方法、水等の液体を成形型の中空部内面に吹き付けて気化させる方法などを採用することができる。液体を吹き付けて気化させる方法によると、液体の気化熱で成形型を冷却することができるため、液体を循環させる方法よりも少ない液量で冷却効果が得られる。従って、水等の気化熱を利用する方法は、冷却効果の観点ばかりでなく、冷却装置をより小さくすることができる観点からも好ましい。さらに、例えば上型の冷却に時間がかかり、成形後、次の成形までに所定の温度までに冷却できない場合等には、上型を複数個用意し、どれか1つの上型がプレス成形を行っているときに、他の上型を冷却しておき、冷却後の上型を順次プレス成形に供するようにしてもよい。
【0037】
プレス成形終了時に、板状ガラスの温度が、成形型の温度より高く、この時点で肉薄板状ガラスと成形型とは熱的に平衡状態に至っていない。しかし、上記の如く、成形型があらかじめ所定の温度に保たれているので、成形後冷却して得られた肉薄板状ガラスは、反り等の品質が一定した一定の形状をしており、研削・研磨しやすい形状となっている。また、肉薄板状ガラスと成形型は熱的に平衡状態に達するまで冷却する必要がないため、成形時間を短縮することもできる。
【0038】
本発明の第2のガラス成形品の製造方法は、被成形ガラス材料を少なくとも上型及び下型からなる成形型を用いてプレスし、得られた板状ガラスを成形型から離型した後にアニールして板状ガラス成形品を得る方法であって、前記アニールを、前記板状ガラスを縦置きにして行うことを特徴とする。
本発明の第1のガラス成形品の製造方法は、冷却条件等に限定があるが、本発明の第2のガラス成形品の製造方法は、板状ガラスのアニールを、板状ガラスを縦置きにして行うことのみを特徴とする。アニールまでの工程には特に制限はない。アニール中に板状ガラスが歪み点以上の温度になっても、板状ガラスを縦置き状態にすることで、水平状態でアニールしたときと比べ、反りの量を低減することができる。
ここで縦置きした状態とは、板状ガラスをその主表面の中央部における法線が略水平方向を向くようにした状態を意味する。
板状ガラスは、前記ガラスの歪み点より低い状態にあるときに、縦置きにすることが好ましい。ガラスの反りが発生する歪み点以上の温度範囲にガラスが加熱されたときには、既に反りが発生しにくい縦置き状態となっているので、反りを低減することができる。
前記アニールは、移送手段上に縦置きされた状態の板状ガラスを、アニール炉中を搬送することにより行うことが好ましい。板状ガラスがアニール炉中を搬送される間にアニールされるので、多数の板状ガラスを生産性よくアニールでき、しかも縦置き状態にすることにより、アニール中に生じるガラスの反りを低減することができる。
【0039】
本発明の第1のガラス成形品の製造は、例えば、被成形ガラス材料をプレスした板状ガラスにするための少なくとも上型及び下型からなる成形型と、前記板状ガラスをアニールするアニール炉と、前記成形型から取り出された板状ガラスの温度を180秒以内に該ガラスの歪み点より低温にする冷却部と、前記板状ガラスを前記アニール炉へと搬送する搬送部を有する製造装置を用いて行うことができる。この装置において、前記搬送部は前記板状ガラスを縦置き状態で搬送する手段であることが好ましい。
【0040】
本発明の第2のガラス成形品の製造は、被成形ガラス材料をプレスした板状ガラスにするための少なくとも上型及び下型からなる成形型と、前記板状ガラスをアニールするアニール炉と、前記アニール炉内において前記板状ガラスを縦置き状態で搬送する搬送部を有する製造装置を用いて行うことができる。
【0041】
上記成形型、アニール炉及び搬送部を有する板状ガラス成形品の製造装置の概略図を図17に示す。この装置は、ターンテーブル13上に複数の下型14が配置され、取り出し工程に応じてこの下型と対向する位置に、溶融ガラス(図示せず)の流出パイプ41、上型17、及び板状ガラス取り出し手段(テイクアウト手段)80を有する成形部90、取り出し手段80により下型の成形面から取り出した板状ガラス44を冷却及び/又は搬送するために保持する支持体81(この支持体81は好ましくは複数の板状ガラス44を保持する)からなる冷却部91、及びアニール炉82とその中を板状ガラス44を保持した支持体81を移動する(搬送させる)ための移動手段83からなるアニール部92からなる。
【0042】
この装置を用いた板状ガラス成形品の製造は、以下のように行われる。
溶融ガラス(図示せず)が流出パイプ41から下型14の成形面上に供給される。供給前に離型剤、例えば、窒化ボロン粉末を下型成形面に塗布する。(塗布機構は図示せず。)溶融ガラスが供給された下型14はターンテーブル13の機構によりプレス位置に移動し、上型と下型でガラスをプレス成形する。成形後、上型はガラスから離型し、成形された板状ガラスは取り出し位置にターンテーブルの機構によって移動する。取り出し位置に来た下型から板状ガラスは取り出し手段80により取り出されて、冷却部へ移される。離型剤塗布から取り出しを行うまでの一連の工程は成形部90で行われる。冷却部において板状ガラスはこのガラスの歪み点より低い温度にまで冷却される。冷却手段としては、前述の方法のいずれか、又は組合せをとることができる。(自然冷却、冷却ガスの吹き付け、液体への浸漬など)自然冷却の場合は、雰囲気中に所定時間晒されるように、冷却部に板状ガラスを蓄積する部分を設ける、あるいは取り出し搬送の際に、上記雰囲気中に晒される時間が所定の時間になるよう搬送速度を調整する、あるいは上記蓄積部と搬送速度が調整された搬送手段を併用するなどの機構を設けても良い。取り出されたガラス44は支持体81により縦置き状態にされてアニール炉へ搬送される。そして、アニール炉82中を移送される間にアニールされ、炉の出口よりアニールされた板状ガラスが取り出される。
【0043】
先に説明したように、肉薄板状ガラスの反りが大きいと研削、研磨時に肉薄板状ガラスに圧力を加えるとガラスの反りが一時的に修正されるが、圧力を解くとガラスは再び反ってしまう。したがって、ガラスの反りは何時までも残ってしまうため、加える圧力を微妙に調整しながら加工を行う必要がある。しかし、本発明によれば、肉薄板状ガラスの反りが低減されているので、研削、研磨時に加える圧力によるガラスの変形量が小さくなるので、従来の方法と比べて圧力調整を精密に行わなくてもよくなり、研削、研磨時間を短縮化することができる。
【0044】
本発明の製造方法により、成形プレス、取り出し工程(反り修正プレスを含む)、冷却工程、縦置き状態でのアニール工程などを経て完成した板状ガラスは、完全に反りが除去されている場合と、少量の反りが残存している場合がある。少量の反りが残存している場合であっても、反りを機械的研削、研磨で除去することができれば反りが残存したプレス完成品としてもよい。
反ったガラス基板を単純に通常の研削、研磨すると、通常、その完成品は依然反ったものになってしまう。したがって、反ったプレス品を研削、研磨するには、工夫が必要になる。良好な研削方法を実現するには、研削する際、プレス品の湾曲が、研削のラップ盤の荷重により変形することを抑制して研削すればよい。具体的には、ラップ盤の荷重を、研削開始から時間がたつに従って徐々に上げて、まず平坦なガラス基板を形成した後、板厚が所定の寸法になるように更に荷重を上げて研削すればよい。また、プレス品の湾曲の変形を抑える他の方法としては、プレス品の形状を単純な円盤状にするのではなく、プレス品の周辺部にラップ盤の圧力を支持する圧力受け部をプレス成形の段階で形成してもよい。このような形状の場合、ラップ盤の圧力は、圧力受け部で受けられるので、湾曲した部分の変形を容易に抑制することができる。なお、このような圧力受け部を備えたガラスも、肉薄板状ガラスに含めるものとする。
なお、このような、反ったガラス基板を平坦に研削、研磨する発明は、特開平5−105458号公報、特開平7−133121号公報に記載されたプレス方法に記載された方法によって得られたプレス品にも適用できる。
【0045】
上記の製造方法により得られた板状ガラスは、研削、研磨等の機械加工を経て例えば情報記録媒体用ガラス基板となる。その際の研削、研磨の工程は、通常、大きく分けて、(1)荒ずり(粗研磨)、(2)砂掛け(精研削、ラッピング)、(3)第一研磨(ポリッシュ)、(4)第二研磨(ファイナル研磨、ポリッシュ)の各工程からなる。場合によっては、(1)荒ずり(粗研磨)を省略してもよい。
【0046】
さらに、上記情報記録媒体用ガラス基板は、そのガラス基板上に下地層、磁性層、保護層、潤滑層を順次積層することにより、磁気記録媒体を構成する。ここで、磁気記録媒体のガラス基板の材質としては、たとえば、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ソーダアルミノケイ酸ガラス、アルミノボロシリケートガラス、ボロシリケートガラス、石英ガラス、チェーンシリケートガラス、または、結晶化ガラス等のガラスセラミックなどが挙げられる。さらに、好ましくは、次のような組成のガラスが使用される。
【0047】
(1)結晶化ガラス1
重量%表示で、SiO2 が60〜87%、Li2 Oが5〜20%、Na2 Oが0〜5%、K2 Oが0〜10%、Na2 OとK2 Oが合計で0.5〜10%、MgOが0.5〜7.5%、CaOが0〜9.5%、SrOが0〜15%、BaOが0〜13%、ZnOが0〜13%、B2 O3 が0〜10%、Al2 O3 が0〜10%、P2 O5 が0.5〜8%、TiO2 が0〜5%、ZrO2 が0〜3%、SnO2 が0〜3%、As2 O3 とSb2 O3 が合計で0〜2%、上記金属酸化物の1種以上の金属元素のフッ化物をFの合計量として0〜5%含有し、場合により着色成分として、V2 O5 、CuO、MnO2 、Cr2 O3 、CoO、MoO3 、NiO、Fe2 O3 、TeO2 、CeO2 、Pr2 O3 、Nd2 O3 、Er2 O3 の群より選ばれた少なくとも1種を0〜5%含有し、主結晶としてリチウムジシリケート、場合によりα−クリストバライト、α−クオーツ、リチウムモノシリケート、β−スポジューメン等を含有し、結晶粒の大きさが3.0μm以下である結晶化ガラス。
【0048】
(2)結晶化ガラス2
重量%表示で、SiO2 が45〜75%、CaOが4〜30%、Na2 Oが2〜15%、K2 Oが0〜20%、Al2 O3 が0〜7%、MgOが0〜2%、ZnOが0〜2%、SnO2 が0〜2%、Sb2 O3 が0〜1%、B2 O3 が0〜6%、ZrO2 が0〜12%、Li2 Oが0〜3%、上記金属酸化物の1種以上の金属元素のフッ化物をFの合計量として3〜12%含有し、場合により着色成分としてCr2 O3 、Co3 O4 等を含有し、主結晶としてカナサイト又はカリウム・フルオロ・リヒテライトを含有し、結晶粒の大きさが1.0μm以下である結晶化ガラス。
【0049】
(3)結晶化ガラス3
SiO2:35−65モル%
Al2O3: 5−25モル%
MgO: 10−40モル%
TiO2: 5−15 モル%
を含有し、上記組成の合計が少なくとも93モル%以上であり、モル比(Al2O3/MgO)が0.5未満である組成を有する結晶化ガラス。この結晶化ガラスは、主結晶相がエンスタタイト及び/又はその固溶体であること好ましい。
【0050】
(4)結晶化ガラス4
SiO2:42-65モル%、Al2O3:11-25モル%、MgO:15-33モル%、及びTiO2:5.5-13モル%を含有し、主結晶相がα−石英固溶体並びにエンスタタイト及び/又はエンスタタイト固溶体を含む結晶化ガラス。
SiO2:42-65モル%、Al2O3:11-25モル%、MgO:15-33モル%、及びTiO2:5.5-13モル%を含有し、α−石英固溶体並びにエンスタタイト及び/又はエンスタタイト固溶体を含み、α−石英固溶体、エンスタタイト及びエンスタタイト固溶体の合計が50重量%以上である結晶化ガラス。
SiO2:42-65モル%、Al2O3:11-25モル%、MgO:15-33モル%、及びTiO2:5.5-13モル%を含有し、主結晶相が、X線回折パターン中に石英に特有の回折パターンとほぼ同等の回折パターンが観測される石英系結晶並びにエンスタタイト及び/又はエンスタタイト固溶体を含み、かつ比重が2.9以上である結晶化ガラス。SiO2:42-65モル%、Al2O3:11-25モル%、MgO:15-33モル%、及びTiO2:5.5-13モル%を含有し、結晶相が、X線回折パターン中に石英に特有の回折パターンとほぼ同等の回折パターンが観測される石英系結晶並びにエンスタタイト及び/又はエンスタタイト固溶体を含み、石英系結晶、エンスタタイト及びエンスタタイト固溶体の合計が50重量%以上であり、かつ比重が2.9以上である結晶化ガラス。
【0051】
(5)ガラス5
重量%表示で、SiO2 が62〜75%、Al2 O3 が4〜18%、ZrO2が0〜15%、Li2 Oが3〜12%、Na2 Oが3〜13%含有するガラス。重量%で、62〜75%のSiO2 、5〜15%のAl2 O3 、4〜10%のLi2 O、4〜12%のNa2 O、および5.5〜15%のZrO2 を含有し、かつNa2 O/ZrO2 の重量比が0.5〜2.0であり、さらにAl2 O3 /ZrO2 の重量比が0.4〜2.5である化学強化用ガラス。
【0052】
(6)ガラス6
ガラス成分としてTiO2が0.1〜30モル%、CaOを1〜45モル%、MgOを前記CaOとの合量で5〜40モル%、Na2 OとLi2 Oの合量で3〜30モル%、Al2 O3 を15モル%未満、SiO2 を35〜65モル%含有するガラス、又はこのガラスからなる化学強化用ガラス。上記ガラスのガラス成分であるTiO2の一部又は全部に代えて遷移金属酸化物が含まれているガラス。
【0053】
このようなガラス基板は、耐衝撃性や耐振動性等の向上を目的として、表面に低温イオン交換法による化学強化処理を施すことができる。ここで、化学強化方法としては、従来より公知の化学強化法であれば特に制限されないが、例えば、ガラス転移点の観点から転移温度を超えない領域でイオン交換を行う低温型化学強化などが好ましい。化学強化に用いるアルカリ溶融塩としては、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、あるいは、それらを混合した硝酸塩などが挙げられる。
【0054】
下地層としては、例えば、Cr、Mo、Ta、Ti、W、V、B、Alなどの非磁性金属から選ばれる少なくとも一種以上の材料からなる下地層等が挙げられる。Coを主成分とする磁性層の場合には、磁気特性向上等の観点からCr単体やCr合金であることが好ましい。また、下地層は単層とは限らず、同一又は異種の層を積層した複数層構造とすることもできる。例えば、Cr/Cr、Cr/CrMo、Cr/CrV、CrV/CrV、Al/Cr/CrMo、Al/Cr/Cr、Al/Cr/CrV、Al/CrV/CrV等の多層下地層等が挙げられる。
磁性層としては、例えば、Coを主成分とするCoPt、CoCr、CoNi、CoNiCr、CoCrTa、CoPtCr、CoNiPtや、CoNiCrPt、CoNiCrTa、CoCrTaPt、CoCrPtSiOなどの磁性薄膜が挙げられる。磁性層は、磁性膜を非磁性膜(例えば、Cr、CrMo、CrVなど)で分割してノイズの低減を図った多層構成(例えば、CoPtCr/CrMo/CoPtCr、CoCrTaPt/CrMo/CoCrTaPtなど)としてもよい。磁気抵抗型ヘッド(MRヘッド)又は大型磁気抵抗型ヘッド(GMRヘッド)対応の磁性層としては、Co系合金に、Y、Si、希土類元素、Hf、Ge、Sn、Znから選択される不純物元素、又はこれらの不純物元素の酸化物を含有させたものなども含まれる。また、磁性層としては、上記の他、フェライト系、鉄−希土類系や、SiO2 、BNなどからなる非磁性膜中にFe、Co、FeCo、CoNiPt等の磁性粒子が分散された構造のグラニュラーなどであってもよい。また、磁性層は、内面型、垂直型のいずれの記録形式であってもよい。
【0055】
保護層としては、例えば、Cr膜、Cr合金膜、カーボン膜、ジルコニア膜、シリカ膜等が挙げられる。これらの保護層は、下地層、磁性層等とともにインライン型スパッタ装置で連続して形成できる。また、これらの保護層は、単層としてもよく、あるいは、同一又は異種の膜からなる多層構成としてもよい。さらに、上記保護層上に、あるいは上記保護層に替えて、他の保護層を形成してもよい。例えば、上記保護層に替えて、Cr膜の上にテトラアルコキシランをアルコール系の溶媒で希釈した中に、コロイダルシリカ微粒子を分散して塗布し、さらに焼成して酸化ケイ素(SiO2 )膜を形成してもよい。
潤滑層は、例えば、液体潤滑剤であるパーフロロポリエーテル(PFPE)をフレオン系などの溶媒で希釈し、媒体表面にディッピング法、スピンコート法、スプレイ法によって塗布し、必要に応じ加熱処理を行って形成する。
【0056】
【実施例】
次に添付図面を参照して本実施例について説明する。図1は原料ガラスからアニール終了時の板状ガラスに到るまでのガラスの温度変化を示す概略図であり、図2は製造方法の工程図である。尚、図1の横軸の時間スケールは一定ではない。
本実施例で用いた原料ガラスの組成は次の通りである。すなわち、SiO2 が63.7、Al2O3 が14、Li2Oが7、Na2Oが9、ZrO2 が6、Sb2O3 が0.3の各重量%である。
【0057】
図2に示すように、本発明の実施の形態の製造方法では、まず下型の成形面に耐熱性固体潤滑剤粉末を付着させる。この耐熱性固体潤滑剤粉末は六方晶BN(窒化ボロン)粉末からなり、気体とともに噴射して下型の成形面に付着させる。この耐熱性固体潤滑剤粉末を成形面に付着させることにより、離型性の向上、溶融ガラスの延びの向上等を図ることができる。次に、下型の成形面上に溶融ガラス(図1に示すように1200℃)を適当量供給し、表面張力で丸みを帯びたオハジキ状のガラスゴブとする(供給工程)。次に、下型上に上型を下降させ、上下の型でガラスゴブを肉薄の板状ガラスにプレス成形する(プレス工程)。このとき、プレス成形は1秒程度のごく短時間で行い、肉薄の板状ガラス(3.0インチΦ−1.5mmt)が軟化状態にあるとき、すなわち肉薄の板状ガラスの内部が図1で示すように690℃の軟化点(Ts)以上の温度であるときに上型を上昇させてプレス成形を終了する。なお、このプレス成形に供される上型には、下型と同様にあらかじめ成形面に耐熱性固体潤滑剤粉末(六方晶BN粉末)が付着されている。したがって、軟化状態の高温の板状ガラスから上型を離す際に、上型にガラスが融着するのを防止することができる。
【0058】
次に、上型を成形したガラスから離型した後、下型上に残された板状ガラスに対して、冷却と並行して反り率を修正する反り修正プレスを行う。反り修正プレスには、上型と同様な成形面を有した成形型を用いた。本実施例では、反り修正プレスを2回行った。第1回目の反り修正プレスを行った時は、板状ガラスは図1に示すように未だ690℃の軟化点以上の温度にあった。第2回目の反り修正プレスを板状ガラスに対して行ったときは、肉薄板状ガラスは図1に示すように、690℃の軟化点と500℃の転移点(Tg)との中間の温度にあった。2回の反り修正プレスの間も板状ガラスの冷却は進み、500℃の転移点温度以下の温度にした(取り出し工程)。転移点温度以下の温度になったところ(ただし、380℃の歪み点以上の温度)で、板状ガラスを下型上から取り出し、室温下の大気に断熱性の部材により支持した状態(横置き)で晒し、板状ガラスがそのガラスの歪み点(380℃)より低い温度になるように急冷した(冷却工程)。さらにガラスを冷却してからガラスを縦置き状態にし、縦置き状態のガラスを徐々にアニールを行う温度にまで加熱してアニールを行った(9時間、アニール工程、460℃)。
【0059】
上記のように、本発明の冷却工程を行い、その後、縦置き状態でアニールしたもの上面(上型により成形された側の主表面)及び下面(下型により成形された側の主表面)の平面度を測定し、表1に示す。上記実施例で得たサンプルをエンドサンプル(縦置きアニール)と表示する。
これ以外に、冷却工程後、アニール工程を経ていないで得られたサンプル(表1中、ホットサンプル)及び冷却工程を行わず、かつ横置き状態でアニールして得たサンプル(表1中、エンドサンプル(通常アニール))についても同様に平面度を測定した。
尚、上記エンドサンプルは、後述のように、研削、研磨加工を施されて基板となる。
【0060】
【表1】
【0061】
表1に示す結果から、本発明の製造方法によれば、ガラスを下型から取り出す際に存在している、上型により成形された面と下型により成形された面との間の温度差によって生じる、取り出し後に生じる反りを低減することができる。冷却工程を施すことにより反り低減の効果は得られ、縦置きすることにより反り低減の効果は得られるが、冷却工程及び縦置き状態にすることにより、さらに良好な反り低減を行うことができる。
これに加え、反りを修正するための修正プレスを行っているため、プレス工程から下型よりガラスを取り出すまでの間に生じる反りも低減することができる。
【0062】
さらに、肉薄の板状ガラスが軟化状態にあり、成形型とガラスが熱的に平衡でない状態にあるときにプレス成形を終了しているので、プレス成形にかかる時間が短くなる。このプレス時間が短くなるのに加えて、反り修正プレスが、肉薄板状ガラスの内部がガラス転移点より高い状態にあるときに終了しプレス成形終了から反り修正プレス終了までの時間も短く設定されているので、この方法によれば、肉薄板状ガラスの量産性が向上する。さらに、この方法では、プレス時間が短く、肉薄板状ガラスから上型及び下型へ移動する熱量が均一ではなく、肉薄板状ガラスの上型側と下型側とが熱的に非均衡な状態となっており、肉薄板状ガラスはある程度反った状態となるが、反り修正プレスによって反りが修正されるので、平坦性の良い肉薄板状ガラスが製造される。
【0063】
図3は、上記の方法に使用される上型装置11および下型装置12の一具体例を示す平面図である。下型装置12は、中心部の図示しない回転軸を中心として2秒に1回の割合で1ピッチずつ回転するターンテーブル13上の同一円周上に16個の下型14を等間隔に設けて構成されており、下型14はターンテーブル13が1ピッチずつ回転するごとに図に示すAからPの位置を順次移動する。そして、下型14に関しては、位置Oで成形面に耐熱性固体潤滑剤粉末が付着され、位置Aでガラスゴブが供給され、位置Cでプレス成形が行われ、位置Dで第1回目の反り修正プレスが行われ、位置Eで第2回目の反り修正プレスが行われ、位置L〜Nで肉薄板状ガラスの取り出しが行われる。また、このような16個の下型14の外側と内側を囲んで1つの高周波コイル15が設けられている。すなわち、この装置においては、共通の1つの高周波コイル15により16個の下型14が一括して高周波誘導加熱されるものである。しかも、高周波コイル15は、各下型を同一温度に加熱するために、下型とコイルとの距離が一定になるように、円周上に配置されている下型の外側と内側を囲んで配置されている。これにより16個の下型14を均一に加熱できる。しかも、16個の下型14が回転して、16個の下型14と高周波コイル15との位置関係が均等になるため、より均一に16個の下型14を加熱できる。このため、高周波誘導加熱により成形型を加熱した場合には、一つの成形型における部分的な温度差が生じないため、ガラスの部分的な延び不良や型への融着を防止することができる。また、全部の型を、所望の温度に制御することが可能となり、同品質の肉薄板状ガラスを量産できる。
【0064】
上型装置11は、タコ足状の回転ユニット16の各足先端部に上型17を取り付けて、8個の上型17が回転ユニット16と一体に、ターンテーブル13と同様、2秒に1回の割合で1ピッチずつ位置a〜hを回転するように構成されている。この上型17についても高周波誘導加熱により加熱している。この場合、8個の上型17の内側と外側を囲んで1つの高周波コイル18を設け、この高周波コイル18により8個の上型17が一括して高周波誘導加熱されるようにすることが好ましい。また、上型17は成形面に耐熱性固体潤滑剤粉末が付着されるが、この付着は、上型17がプレスに供される位置以外のいずれの位置でも行うことができ、たとえば位置eにおいて行うことができる。また、上型17は、位置eと正反対の位置aにおいて、位置Cの下型14上に位置して(図では図示の都合上、左側にずれている)プレス成形に供される。したがって、この装置では、各上型17は位置aに回転して来たとき、つまり8回のプレス成形に1回の割合でプレス成形に供されることになり、時間を置いて同一上型がプレス成形に使用されるため、上型17の異常加熱を防止できる。すなわち、上型17はプレス成形に供されたときガラスゴブから熱を受けて温度が上昇し、これを連続的に繰り返すと異常加熱状態となりガラスが成形面に張り付くなどの問題が生じるが、この装置によれば8回のプレス成形に1回の割合で時間を置いて同一上型が使用されるため、上型17は異常加熱状態になることはなく、高周波誘導加熱で管理された所定温度に維持され、ガラスの張り付きなどを防止できる。
【0065】
なお、上型装置11の高周波コイル18および下型装置12の高周波コイル15は、ともに水冷し、成形型が放射する熱により高周波コイルが高温化するのを防止することが好ましい。また、例えば、上型が単数である場合には、図4に示すとおり、上型17とコイル18との距離が一定となるようにコイル18を配置することで上型17を均一に加熱することができる。また、上型が図4のように単数の場合には、コイル18に代えてニクロムヒータを同様に上型の周囲に配置して加熱する方法を採用してもよい。
【0066】
上型17および下型14は種々の構造のものを使用できるが、図5に一具体例を示す。上型17は、円柱状の上型本体21と、この上型本体21の上面中央部に形成されて上型本体21を支持する支持ロッド22とにより構成されており、上型本体21の平坦な下面はプレス面(成形面)23となっている。さらに、支持ロッド22が図示しない駆動手段によって上下動されることによって、上型17が上下動するようになっている。また、上型本体21および支持ロッド22の中心部には、支持ロッド22の上面に開口する空洞部24が形成されており、さらにこの空洞部24の周りの上型部分には、空洞部24の奥の部分でこの空洞部24と連通し、かつ支持ロッド22の上面に開口する排出孔25が図6の平面図で示すように8本形成されている。ここで、空洞部24に水を空気とともに噴霧すると、水の気化熱を用いて上型17を冷却することができる。気化した水は排出孔25から排出される。単位体積あたりの水の気化熱は、比熱よりも大きいため、この気化熱を利用した冷却法は、水を冷却媒体として循環させる方法よりも大きな設備を必要とせずに効率よく冷却できる。
【0067】
上型17は、該上型17を囲むように胴型26を備えており、この胴型26は、円筒状の胴型本体27と、この胴型本体27の上端部に内側に突出して形成された円環状のフランジ部28とによって構成されている。ここで、胴型本体27の下面部の内周面は他より径大となっており、しかもプレス成形した肉薄板状ガラスに面取りを形成するために下広がりの斜面29となっている。上型17は、このような胴型26の内周面を上下に摺動自在に設けられている。
【0068】
下型14は、円柱状の下型本体31と、この下型本体31の下面中央部に形成されて下型本体31を支持する支持ロッド32とによって構成されており、下型本体31の平坦な上面はプレス面(成形面)33となっている。さらに、支持ロッド32が図示しない駆動手段によって上下動されることによって、下型14が上下動するようになっている。また、下型本体31および支持ロッド32の中心部には、支持ロッド32の下面に開口する空洞部34が形成されており、さらにこの空洞部34の周りの下型部分には、空洞部34の奥の部分でこの空洞部34と連通し、かつ支持ロッド32の下面に開口する排出孔35が図6の下面図で示すように8本形成されている。ここで、空洞部34には、水が空気とともに噴霧される。この噴霧された水の気化熱を用いて下型14を冷却する。気化した水は排出孔35から排出される。上記の冷却は、成形型に設置された熱電対からの信号によりPID制御されており、成形型は所定の温度に制御され、連続成形しても、溶融ガラスを常に一定の温度に保たれた成形型により成形できるようにしている。
【0069】
下型14は、該下型14を囲むように胴型36を備えており、この胴型36は、円筒状の胴型本体37と、この胴型本体37の下端部に内側に突出して形成された円環状のフランジ部38とによって構成されている。ここで、胴型本体36の上面部の内周面は他より径大となっており、しかも径大に変化した部分の内周面は、プレス成形した肉薄板状ガラスに面取りを形成するために上広がりの斜面39となっている。下型14は、このような胴型36の内周面を上下に摺動自在に設けられている。
【0070】
なお、下型14のプレス面33および上型17のプレス面23は、例えば面粗さ(Ra)が0.5〜2.0μmの粗面に形成されている。この粗面は、プレス面33,23の全体に形成してもよいし、プレス面33,23の一部にだけ形成してもよい。この粗面をプレス面33,23に形成することにより、断熱性の向上、ガラスの張り付き防止、耐熱性固体潤滑剤粉末の付着性向上を図ることができる。また、上記の構成では、胴型26,36の内周面に面取り部形成用の斜面29,39が形成されているが、このような斜面形成法は、成形型に突起などで斜面を形成する方法に比較して耐久性が向上する。
【0071】
上記のような上型17および下型14の外に、図3の位置D,Eにおいては、反り修正プレスを行うために、下型14に対向して図10(図10では、空洞部24,34および排出孔25,35の図示は省略されている)に示すように、反り修正プレス用の上型(成形型)71,72が設けられる。この反り修正プレス用の上型71,72は、胴型71A,72Aを備えて、ここでは上記したプレス成形用の上型17と同一に構成される。ただし、プレス成形用上型17の成形面の温度が410℃であるのに対して、第1回目反り修正プレス用上型71の成形面の温度は600℃、第2回目反り修正プレス用上型72の成形面の温度は560℃にそれぞれ調整されている。
【0072】
次に、以上のように構成された成形装置を用いてディスク状の肉薄板状ガラスをプレス成形する方法を図3および図7〜図10を参照して説明する。なお、図7ないし図9では、図10と同様に、図の簡素化のため、空洞部24,34および排出孔25,35の図示は省略されている。下型14が図3の位置Aに回転すると、図7(a)および図10の位置Aに示すように、白金製パイプ41から1200℃に加熱された溶融ガラス42が一定流量で下型14(成形面の温度450℃)上に供給され、所定量となったところで溶融ガラス42が図7(b)に示すように切断刃43で切断される。切断された溶融ガラス42は、表面張力で丸みを帯びたオハジキ状ガラスゴブとなる。次に下型14が図3の位置Cに回転すると、図8(a)に示すように、上型17(成形面の温度410℃)が胴型26と一体に下降し、胴型26の下面が下型用胴型36の上面に当接する。次に、図8(b)および図10の位置Cに示すように上型17が胴型26の内周面を摺動して下降し、上型17と下型14とでガラスゴブをプレス成形する。すると、ガラスゴブは、胴型26,36で囲まれた偏平状の空間一杯に広がって肉薄板状ガラス44となる。このとき、肉薄板状ガラス44の外周部両表面には、胴型26,36内周面の斜面29,39により欠け防止用の面取り部が形成される。成形に要した時間は約1.7秒である。
【0073】
次に、図9(a)で示すように上型17が胴型26の内周面を摺動して上昇する。このとき、上型17に張り付いて肉薄板状ガラス44が上昇する恐れがあるが、この装置においては、上型用胴型26の下面部の内周面径大部分の内面(斜面29を有する部分の内面部)で肉薄板状ガラス44が押え付けられるので、上型17と一体に肉薄板状ガラス44が上昇せず、肉薄板状ガラス44は下型14上に保持される。その後、図9(b)に示すように上型用胴型26が上昇する。このとき、上型用胴型26と肉薄板状ガラス44は接触面積が少ないので、肉薄板状ガラス44が上型用胴型26に張り付いて上昇することはない。
【0074】
次に、下型14が図3の位置Dに回転すると、図10の位置Dに示すように下型14および胴型36上に第1回目反り修正プレス用の上型71および胴型71Aが下降し、下型14上に保持されている肉薄板状ガラス44に対して第1回目の反り修正プレスが行われる。さらに、下型14が図3の位置Eに回転すると、図10の位置Eに示すように下型14および胴型36上に第2回目反り修正プレス用の上型72および胴型72Aが下降し、下型14上に保持されている肉薄板状ガラス44に対して第2回目の反り修正プレスが行われる。1回の反り修正に要した時間は約1.7秒である。その後、下型14が図3の位置L〜Nに回転すると、下型14が胴型36の内周面を摺動して上昇し、肉薄板状ガラス44の取出しが行われる。その後、下型14は図3の位置O,P,A…と回転して再びプレス成形に供せられる。なお、反り修正で使用される上型は、図10の上型71(または72)と胴型71A(または72A)を一体にしたような図16の上型73でもよい。
【0075】
このようにしてプレス成形された肉薄板状ガラスは、最終製品より厚く形成されており、前述のように、冷却工程及びアニール工程を経た後に、両主表面をラップ研磨等により研削する。このとき、本例の肉薄板状ガラスでは、反りの大きさがある程度一定にでき、また、反りの方向もすべて上向きに凹状と一定にできた。このため、その後のラップ研磨においても、反り方向を揃えて配置でき、高精度に平坦に研削することができた。逆に、反りの方向が上向きであったり、下向きであったりすると、ラップ研磨が安定せず高精度に平坦に研削・研磨できない、いわゆる不適品が増加する。ここで、反りの方向がすべて一定であったのは、製造工程において、溶融ガラスの熱の奪われ方が、どのガラスにおいても一定であったためであると考えられる。
【0076】
以下、機械加工について詳しく説明する。機械加工については、具体的には、上記のガラスの表面を水洗浄し、以下の(1)荒ずり(粗研磨)、(2)砂掛け(精研削、ラッピング)、(3)第一研磨(ポリッシュ)、(4)第二研磨(ファイナル研磨、ポリッシュ)の各工程を経る。
(1)荒ずり工程
まず、粒度の細かいダイヤモンド砥石で上記ガラス基板の両面を片面ずつ研削加工した。このときの荷重は100kg程度とした。これにより、ガラス基板両面の表面粗さをRmax(JIS B 0601で測定)で10μm程度に仕上げた。次に、円筒状の砥石を用いてガラス基板の中央部分に孔を開けるとともに、外周端面も研削して直径を65mmφとした後、外周端面及び内周面に所定の面取り加工を施した。
(2)砂掛け(ラッピング)工程
次に、ガラス基板に砂掛け加工を施した。この砂掛け工程は、寸法精度及び形状精度の向上を目的としている。砂掛け加工は、ラッピング装置を用いて行い、砥粒の粒度を#400、#1000と替えて2回行った。詳しくは、はじめに、粒度#400のアルミナ砥粒を用い、内転ギアと外転ギアを回転させることによって、キャリア内に収納したガラス基板の両面を両精度0〜1μm、表面粗さ(Rmax)6μm程度にラッピングした。このラッピングにおいては荷重を80kgから120kgに次第に上げた。次いで、アルミナ砥粒の粒度を#1000に替えてラッピングを行い、表面粗さ(Rmax)2μm程度とした。上記砂掛け加工を終えたガラス基板を、中性洗剤、水の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。
【0077】
(3)第一研磨(ポリッシュ)工程
次に、第一研磨工程を施した。この第一研磨工程は、上述した砂掛け工程で残留したキズや歪みの除去を目的とするもので、研磨装置を用いて行った。詳しくは、ポリシャ(研磨粉)として硬質ポリシャ(セリウムパッドMHCl:スピードファム社製)を用い、以下の研磨条件で第一研磨工程を実施した。
研磨液:酸化セリウム+水
荷重:300g/cm2 (L=238kg)
研磨時間:15分
除去量:30μm
下定盤回転数:40rpm
上定盤回転数:35rpm
内ギア回転数:14rpm
外ギア回転数:29rpm
上記第一研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、純水、純水、IPA(イソプロピレンアルコール)、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。
【0078】
(4)第二研磨工程
次に、第一研磨工程で使用した研磨装置を行い、ポリシャを硬質ポリシャから軟質ポリシャ(ポリラックス:スピードファム社製)に替えて、第二研磨工程を実施した。研磨条件は、荷重を100g/cm2 、研磨時間を5分、除去量を5μmとしたこと以外は、第一研磨工程と同様とした。上記第二研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、中性洗剤、純水、純水、IPA(イソプロピルアルコール)、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。なお、各洗浄槽に超音波を印加した。このようにして、外径65mmφ、中心部の孔径20mmφ、厚さ0.5mm、Rmax 40オングストローム、Ra8オングストローム程度の円板状の情報記録媒体用ガラス基板を得た。
【0079】
本発明の上記の実施の形態の製造方法では、下型14をターンテーブル13に複数個配置し、順次、各々の下型をプレスを行う位置に搬送してプレス工程等を行い、各々の下型から成形された肉薄板状ガラスを取り出し、各々の下型14を再び肉薄板状ガラスの製造に供するので、肉薄板状ガラスを量産できる。なお、上記の実施の形態では、反り修正プレスを位置D及び位置Eで行っているが、平坦度がそれほど要求されていない場合には、位置D及び位置Eの一方で行っても良い。ただし、位置F以降では、肉薄板状ガラス44が硬くなり過ぎ、反り修正プレスを行うと、ひびや割れを生じる傾向にある。
【0080】
さらに、上記の実施の形態では、反り修正プレスの上型として、プレス成形の上型と同様のものを使用しているが、図12ないし図14に示されるような上型を用いてもよい。図12に示す如く、上型50は、冷却用の空気の通路となる溝部52が形成された小径筒状部材51と、開口部側にフランジ54が形成された有底の大径円筒状部材53とが溶接部57で溶接されてなるものである。このような上型50は、筒状の胴型56内に設けられており、上型50は図示しないエアシリンダによって胴型56内を軸線方向に沿って往復移動されるようになっている。上型50は、フランジ54が、胴型56の上端部内側に形成された段差面56Bへ当接することにより下方への移動が制限されるようになっている。
【0081】
上型50の大径円筒状部材53の胴部53Aの外径は、図13(図12の円A部分の拡大図)に示す下型60のプレス面61の径よりも小さくなっており、しかも胴部53Aの下端部には面取り部53Bが周方向全体に沿って形成されている。これにより、反り修正プレスの際に、肉薄板状ガラス44の冷却速度が速く最も硬化された周縁部に上型50のプレス面55が当たることがなく、肉薄板状ガラス44にひびや割れが発生するのが防止される。
【0082】
上型50のプレス面55には、図14に示される如く、v字状の複数個の溝55Aが放射状に形成されている。各々の溝55Aは、反り修正プレス後に上型50のプレス面55から肉薄板状ガラス44が離れ易くするためのものである。なお、反り修正プレスは、上記の如く、肉薄板状ガラス44の形状が変形しない硬さの時になされるので、肉薄板状ガラス44の形状に溝55Aが影響を与えることはない。
胴型56の下端部内面には、図13に示す下型60との芯合わせ用の溝56Aが周方向全体に沿って形成されている。下型60の突起部60Aに溝56Aが嵌合する状態にすることにより、上型50と下型60の軸芯が一致するようになっている。
なお、このような上型50は、図15の後述する支持部45が外周端部に形成された肉薄板状ガラス44の反り修正プレスを行う場合に特に効果を発揮する。すなわち、支持部45は、上型側へ突出する部位があるので、この突出する部位に上型50のプレス面55が当たると、該突出部及び肉薄板状ガラス44の突出部との境界部58にひびや割れを生じ易いが、上型50に面取り部53Bが形成されていれば、上型50のプレス面55が支持部45に当たるのが防止される。
【0083】
プレス成形された肉薄板状ガラスは、最終製品より厚く形成されており、最終製品とするためには両主表面をラップ研磨等により研削する必要がある。このとき、肉薄板状ガラスに反りがあると、研削板により肉薄板状ガラスの両面側から圧力が加えられた際に、肉薄板状ガラスが撓む。したがって、この状態で研削して肉薄板状ガラスを平坦にしても、両側から圧力を解くと再び肉薄板状ガラスが反り、平坦な肉薄板状ガラスを得られにくい。そこで、肉薄板状ガラスの一部に、該肉薄板状ガラスの両表面側からの圧力を受け止める部位を設けてもよい。一具体例としては、図15に示すように、湾曲した部分の厚さが1.3mmである肉薄板状ガラス44の外周端部に肉薄板状ガラス44の周方向全体に沿って圧力受け部としての支持部45(高さ1.5mm)を形成する。この支持部45は、肉薄板状ガラス44の表裏面の各々よりも突出した状態に形成するのが好ましい。支持部45よりも肉薄板状ガラス44の表面が突出すると、研削の際に、支持部45が上定盤46に当接する前に肉薄板状ガラス44の湾曲部が上定盤46に当たり、湾曲部状態が変化してしまい、研削後に肉薄板状ガラス44が反ってしまうからである。
【0084】
肉薄板状ガラス44を図15に示す如く上定盤46と下定盤47との間に配置し、これら定盤46,47により両面側から圧力を与えつつ肉薄板状ガラス44を研削し、肉薄板状ガラス44を平坦にすると共に所定の肉厚寸法に加工する。この研削において、上定盤46及び下定盤47による両側からの圧力は、支持部45で受け止められるので、肉薄板状ガラス44が撓むことが防止され、肉薄板状ガラス44の湾曲状態の変化が抑制された状態で研削される。したがって、上定盤46と下定盤47による両側からの圧力が解かれても肉薄板状ガラス44が反ることはなく、格段に平坦性の良い肉薄板状ガラス44を得やすくなる。また、支持部45によって上定盤46及び下定盤47による両側からの圧力を受けて、肉薄板状ガラス44の湾曲部が移動しないようにしているので、研削工程において、肉薄板状ガラス44の湾曲部が移動しないように肉薄板状ガラス44に加える圧力をきめ細かく調整する必要はなく、肉薄板状ガラス44の研削を効率的に行え、平坦性の良い肉薄板状ガラス44を量産できる。
【0085】
なお、上記の研削において、研削の後半は研削が進み肉薄板状ガラス44と上定盤46(下定盤47)との接触面積が大きくなるので、前半よりも大きな圧力を掛けて研削するのが好ましい。また、支持部45は、図15の外周端部のほか、肉薄板状ガラスの外周端部よりも中心部側に設けてもよい。また、このような支持部45は、上述した上型、下型および胴型の成形面に凹部を設けることにより容易に得られる。
【0086】
以上本発明について詳述したが、上述の実施の形態は一具体例にすぎないことはいうまでもない。上型装置および下型装置の具体的構成、上型および下型の個数、上型および下型の位置と各工程の関係、上型および下型の具体的構成などは種々に変形可能である。また、上型および下型は、プレス面の表面温度より胴型の内表面温度をより高く設定することも可能である。さらに、肉薄板状ガラスの反り率は0.001〜1%程度であることが適当であり、反り方向も、上方向か、あるいは下方向のいずれか一方向に一定であれば、その後のラップ研磨において高精度に平坦に研磨することが可能となる。
【0087】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、平坦性のよい肉薄状板ガラスを高い量産性のもとに製造でき、ひいては高品質、高性能な情報記録媒体用ガラス基板および磁気記録媒体を高い量産性で製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における板状ガラスの製造方法の実施の形態におけるガラスの温度変化の概略図。
【図2】本発明の板状ガラスの製造方法を示すフローチャット。
【図3】図2の方法で使用される上型装置および下型装置の平面図。
【図4】上型と高周波コイルとの関係の他の例を示す平面図。
【図5】図3の装置の上型および下型の具体例を示す断面図。
【図6】図5の上型および下型の平面図および下面図。
【図7】プレス成形を説明するための断面図。
【図8】同プレス成形を説明するための断面図。
【図9】同プレス成形を説明するための断面図。
【図10】プレス成形および反り修正プレスを説明するための断面図。
【図11】本発明の実施の形態により製造されたディスク状ガラスを示す断面図。
【図12】反り修正プレス用上型の他の例を示す断面図。
【図13】12のA部を拡大して示す断面図。
【図14】図12の反り修正プレス用上型のプレス面を示す下面図。
【図15】本発明に係る肉薄板状ガラスの他の例と研削工程を示す断面図。
【図16】反り修正プレス用上型の他の例を示す断面図。
【図17】成形型、アニール炉及び搬送部を有する板状ガラス成形品の製造装置の概略図。
【符号の説明】
14 下型
17 上型
42 溶融ガラス
44 板状ガラス
Claims (13)
- 被成形ガラス材料を少なくとも上型及び下型からなる成形型を用いてプレスして板状ガラス成形品を得る方法であって、
ガラス転移点より高い温度を有する被成形ガラス材料を下型の成形面上に供給する工程(供給工程)、
供給された被成形ガラス材料を下型及び上型によりプレス成形して板状ガラスとする工程(プレス工程)、
上記板状ガラスから上型を離型した後、下型成形面上の板状ガラスを下型成形面上から取り出す工程(取り出し工程)、
上記取り出した板状ガラスを180秒以内に該ガラスの歪み点より低い温度に冷却する工程(冷却工程)、
及び得られた板状ガラスをアニールする工程(アニール工程)
を含むガラス成形品の製造方法。 - 上型から離型した前記板状ガラスを、下型成形面上の板状ガラスを外力に対して変形しない状態になるまで冷却した後に、下型成形面上から取り出すことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- 下型の成形面上に供給される被成形ガラス材料が溶融ガラスである請求項1または2に記載の製造方法。
- 冷却工程及び/又はアニール工程を、前記板状ガラスを縦置きにして行う請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
- 板状ガラスから上型を離型した後、該板状ガラスを下型成形面より取り出すまでの間に、板状ガラスに外力を加えて板状ガラスの反りを修正する請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
- 板状ガラス成形品は厚みが4mm以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
- 供給工程からアニール工程までの一連の工程を繰り返し行うことにより板状ガラス製品を連続的に製造する方法において、成形面から板状ガラスを取り出した後の下型を、所定温度に調整した後に供給工程にリサイクルする請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記アニールを、前記板状ガラスを縦置きにして行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記アニールは、移送手段上に縦置きされた状態の板状ガラスを、アニール炉中を搬送することにより行う請求項8に記載の製造方法。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法により得られたガラス成形品の主表面に少なくとも研磨を施してガラス基板を得るガラス基板の製造方法。
- 請求項10に記載の製造方法によりガラス基板を製造し、得られたガラス基板の主表面に情報記録層を設けて情報記録媒体を得る、情報記録媒体の製造方法。
- 被成形ガラス材料をプレスした板状ガラスにするための少なくとも上型及び下型からなる成形型と、前記板状ガラスをアニールするアニール炉とを備えた板状ガラス成形品の製造装置において、前記成形型から取り出された板状ガラスの温度を180秒以内に該ガラスの歪み点より低温にする冷却部と、その後に前記板状ガラスを前記アニール炉へと搬送するための搬送部を有することを特徴とする板状ガラス成形品の製造装置。
- 前記搬送部が前記板状ガラスを縦置き状態で搬送する手段であることを特徴とする請求項12に記載の製造装置。
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