JP4520300B2 - 薄型シート - Google Patents

Description

本発明は、折り畳み自在の車椅子にも採用することのできる軽量の薄型シートに関するものである。

従来の車両用シートは、シートフレームにばね材を取り付け、その上にフォーム材、ロック材あるいは綿等のパッド材を設け、さらにビニールレザー、織布、革等の表皮で上張りされたものが一般的である。
一方、車両用シート以外のシートは、フレームに載せたパッド材を表皮で被覆したものや、クッション性を高めるためにばね材をさらに設けたものが一般的である。
しかしながら、これらのシートは、肉厚が全体的に厚く、重たくて高価なものが多い。
そこで、最近では、軽量で安価な薄型シートも種々提案されており、本願出願人も、軽量でありながらクッション材としての特性（ばね特性、減衰特性等）を十分備えた３次元構造体のネットを使用した薄型シートの開発を行ってきた。
この薄型シートに採用されている３次元ネット（以下、３Ｄネットと称する）は、立体メッシュニットにより構成されており、基布の織りを例えばハニカム状（六角形）のメッシュに形成するとともに、上部メッシュ層と下部メッシュ層とを多数のパイルからなるパイル層で結合した３層の立体的なトラス構造を有している。また、上部メッシュ層と下部メッシュ層の各糸は、多数の細い糸をよったもので形成する一方、パイル層を構成するパイルの各々は１本の太い糸で形成し立体メッシュニットに剛性を付与している。
図７は、二人掛け用の上述した従来の薄型シートの１例を示しており、３Ｄネットを有するシートクッション５０と、シートクッション５０の後縁に立設されたシートバック５２とを備えている。
図７及び図８Ａ，８Ｂに示されるように、シートクッション５０は、シートクッションフレーム５４と、シートクッションフレーム５４に張設された３Ｄネット５６とを有している。３Ｄネット５６の外縁部はトリム（表皮）５８及び引張材６０の内縁部に縫合され、表皮５８及び引張材６０の外縁部はシートクッションフレーム５４に巻きつけられた後、係止具６２によりトリム留６４に係止されることにより、シートクッション５４に所定の張力を付与している。
しかしながら、上記構成の従来の薄型シートに着座すると、トリム５８に張力が加わり、シートクッション５４の張りが強くなって、側圧が大きくなることから、シートクッション５４の中央部からずれた位置に着座した場合あるいはシートクッション５４に二人掛けした場合、着座者の姿勢が多少傾く傾向にあり、座り心地を損ねる虞があった。
本発明は、従来技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、着座姿勢を正しくとることができるとともに、長時間の使用に耐えうるクッション性能の向上した薄型シートを提供することを目的としている。

上記目的を達成するために、本発明にかかる薄型シートは、フレームと、フレームに張設されたクッション材とを備え、該クッション材の前縁及び後縁のみ上記フレームに係止することによりクッション材の前後方向にのみ張力を実質的に付与するようにしたことを特徴とする。
また、上記クッション部材の幅方向中央部に補強用パッチを設けたことを特徴とする。
さらに、上記補強用パッチの材質が上記クッション材の材質と同一であることを特徴とする。
また、上記クッション材として、縦糸と横糸の引張特性が異なる布ばねを使用し、上記横糸のばね定数が上記縦糸のばね定数より大きいことを特徴とする。
また、上記布ばねをトリムにより被覆し、布ばねとトリムとの間に３次元ネットあるいはウレタンを介装したことを特徴とする。
また、上記布ばねのシート幅方向の端部を緩ませたことを特徴とする。

図１は、本発明にかかる薄型シートの分解斜視図である。
図２は、図１の薄型シートに設けられたシートクッションの部分断面斜視図である。
図３Ａは、図１の薄型シートの縦断面図である。
図３Ｂは、図１の線ＩＩＩ−ＩＩＩに沿った断面図である。
図３Ｃは、図１の薄型シートの部分断面図である。
図４は、縦糸に弾性糸を横糸にポリエステル系繊維を使用して織った布地を図１の薄型シートに布ばねとして使用した場合の静特性を示すグラフである。
図５は、シートクッションにおける着座時の張力が異なる部分を示す斜視図である。
図６は、着座時のストロークを増大したい場合のシートクッションの概略平面図である。
図７は、本発明にかかる薄型シート及び従来の薄型シートの斜視図である。
図８Ａは、図７の線ＶＩＩＩａ−ＶＩＩＩａに沿った従来の薄型シートの断面図である。
図８Ｂは、図７の線ＶＩＩＩｂ−ＶＩＩＩｂに沿った従来の薄型シートの断面図である。

以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図１、図２及び図３Ａ−３Ｃは本発明にかかる薄型シートＳを示しており、その外観は図７の従来の薄型シートと略同じである。
図１、図２及び図３Ａ−３Ｃに示されるように、本発明にかかる薄型シートＳは、シートクッション２と、シートクッション２の後縁に立設されたシートバック４とを備えている。シートクッション２は、シートクッションフレーム６と、シートクッションフレーム６に張設されたクッション材としての布ばね８及び３Ｄネット１０とを備えており、３Ｄネット１０はトリム（表皮）１２により被覆されている。
また、布ばね８は、その前縁に形成された第１の係止部８ａと、その後縁に形成された第２の係止部８ｂとを有している。
図３Ａに示されるように、第１の係止部８ａの先端部はシートクッションフレーム６に接合されたトリム留１４に係止されるとともに、第２の係止部８ｂの先端部も同様にシートクッションフレーム６に接合されたトリム留１６に係止され、さらに、布ばね８の中間部は係止具１８によりトリム留１４に係止されることで、布ばね８にシートの前後方向に所定の張力を付与している。
一方、シートの幅方向においては、トリム１２のみ側縁部がシートクッションフレーム６に接合されたトリム留１９に係止されており、布ばね８はその端部８ｃが、図３Ｂに示されるように、トリム留１９に緩んだ状態で係止されるか、あるいは、図３Ｃに示されるように、全く係止されていない。したがって、着座時においても、シートの幅方向には張力が擬似的に０（伸び：約０〜５％）になるように設定されており、この方向には張力は殆ど発生しない。
なお、布ばね８とトリム１２との間に介装された３Ｄネット１０の端部は、シートクッションフレーム６とトリム１２とにより挟持されている。
布ばね８としては、縦糸（シートＳの前後方向に延在する糸）と横糸（シートＳの幅方向に延在する糸）の引張特性の異なる布地を使用することも可能で、張力が発生する縦糸を横糸に比べ荷重に対する伸びが大きいものを使用すると、クッション性が向上する。
図４のグラフは、例えば縦糸に弾性糸（軟化ばね）を使用するとともに横糸にポリエステル系繊維（線形ばね）を使用して織った布地を布ばね８として使用した場合の静特性（引っ張り特性）を示している。この静特性は、布ばね材を長さ２００ｍｍ、幅５０ｍｍで切り出した試験片を用い、試験片の長手方向の各端部からそれぞれ５０ｍｍ内側に寄った部位までを掴み代として、試験機により長手方向に沿って５０ｍｍ／分の速度で引っ張ることにより得られた特性である。なお、弾性糸の引っ張り特性は、弾性糸の延在方向が長手方向となるように切り出した試験片を用い、ポリエステル系繊維の引っ張り特性は、ポリエステル系繊維の延在方向が長手方向となるように切り出した試験片を用いている。
この布ばね８は、図４のグラフからわかるように、縦糸が横糸に比べ荷重に対する伸びが大きく、前後方向に伸びやすい性質を持っている。また、ストロークを稼ぐ場合には、初期荷重に対し非線形特性を持たせた横糸を使用する必要があるが、ばね定数を略同じに設定すれば、線形ばねの荷重０の時の許容値は０〜１０ｍｍで、最大２０ｍｍまで使用可能である。
また、布ばね８の幅方向中央部の後方寄りには、矩形の補強パッチ２０が縫合されている。補強パッチ２０の材料としては、布ばね８と同等のものを採用することができる。
図２において、矢印Ａは着座時の張力が加わる方向を示しており、縦糸の方向に一致している。また、幅方向の範囲Ｌは、前後の張力がかかる範囲を示しており、第１の係止部８ａの長さと略一致している。
また、トリム１２も布ばね８と同様に、その前縁に形成された第１の係止部１２ａと、その後縁に形成された第２の係止部１２ｂとを有し、第１の係止部１２ａの先端部は布ばね８の第１の係止部８ａとともにトリム留１４に係止され、第２の係止部１２ｂの先端部も同様に布ばね８の第２の係止部８ｂとともにトリム留１６に係止されることで、トリム１２に所定の張力を付与している。
上記構成の本発明にかかる薄型シートＳに着座すると、前後方向（矢印Ａの方向）に張力が加わり、幅方向には張力が殆ど加わらないことから、従来の薄型シートと異なり側圧が大きくなることはない。また、布ばね８の中央部に補強パッチ２０が設けられていることから、二人が着座した場合でも体重の影響を軽減することができ、着座者の姿勢が傾くこともない。
図５は、シートクッション２における着座時の張力が異なる部分を示しており、幅方向中央部の領域Ｂは座面部Ｃよりも張力が大きく、剛性が高い。したがって、領域Ｂはストロークが少ないので、必要に応じフレーム等の部材を配置することもできる。また、幅方向の端部領域Ｄは、布ばね８の端部８ｃを緩ませた領域を示している。
さらに、着座時のストロークを増大したい場合、図６に示されるように、シートクッション２の幅方向中央部の剛性を上げ、座面部の前後方向に張力を付与するとともに、幅方向中央部と座面部との間に緩みを持たせればよい。すなわち、幅方向中央部と座面部との間に位置する布ばね８の端部をトリム留に緩んだ状態で係止するか、あるいは、係止しないようにすればよい。
なお、上記実施の形態において、布ばね８とトリム１２との間に３Ｄネット１０を介装したが、３Ｄネット１０に代えてウレタン等の弾性材を使用することもできる。
また、図１及び図３Ａにおいては、シートバック４は、板材２２と、板材２２を被覆するクッション材２４と、クッション材２４を被覆するトリム（表皮）２６とにより構成されているが、クッション材２４に３Ｄネットを採用することもできる。
また、上記構成の薄型シートＳは折り畳み自在の車椅子にも適用することができる。この場合、シートの前後方向のみならず、左右方向にも所定の張力を付与するのがよい。
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
フレームに張設されたクッション材の前縁及び後縁のみフレームに係止することによりクッション材の前後方向にのみ張力を実質的に付与するようにしたので、従来の薄型シートと異なり、着座時に側圧が加わることがない。したがって、着座姿勢を正しくとることができるとともに、長時間の使用に耐えうるクッション性能の向上した薄型シートを提供することができる。
また、クッション部材の幅方向中央部に補強用パッチを設けたので、二人掛けの場合でも、体重の影響を軽減することができ、着座者の姿勢が傾くこともなく、座り心地が向上する。
さらに、クッション材として、縦糸より横糸のばね定数が大きい布ばねを使用したので、幅方向の伸びが少なく、身体の傾きが防止できる。
また、布ばねをトリムにより被覆し、布ばねとトリムとの間に３次元ネットあるいはウレタンを介装したので、薄型軽量のクッション性能の向上した薄型シートを提供することができる。
また、布ばねのシート幅方向の端部を緩ませたので、幅方向の伸びが少なく、身体の傾きが防止できる。

Claims (5)

1. フレームと、フレームに張設されたクッション材とを備え、該クッション材は、幅方向に離隔しそれぞれ一人が着座するための二つの座面部を有し、該二つの座面部の間に補強用パッチを設け、前記クッション材の前縁及び後縁のみ上記フレームに係止することによりクッション材の前後方向にのみ張力を実質的に付与するようにしたことを特徴とする二人掛け用の薄型シート。
2. 上記補強用パッチの材質が上記クッション材の材質と同一である請求項１に記載の薄型シート。
3. 上記クッション材として、縦糸と横糸の引張特性が異なる布ばねを使用し、上記横糸のばね定数が上記縦糸のばね定数より大きい請求項１あるいは２に記載の薄型シート。
4. 上記布ばねをトリムにより被覆し、布ばねとトリムとの間に３次元ネットあるいはウレタンを介装した請求項３に記載の薄型シート。
5. 上記布ばねのシート幅方向の端部を緩ませた請求項３あるいは４に記載の薄型シート。

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