JP4519998B2 - ポリスチレン系樹脂発泡板組立体を用いた、軽量地盤構築方法、基礎構築方法、及び軽量盛土施工方法 - Google Patents

ポリスチレン系樹脂発泡板組立体を用いた、軽量地盤構築方法、基礎構築方法、及び軽量盛土施工方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する分野】
本発明は、ポリスチレン系樹脂発泡板組立体を用いた、軽量地盤構築方法、基礎構築方法、及び軽量盛土施工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、建築物の基礎工事や地盤の改良などの土木工事にポリスチレン樹脂発泡体を用いる工法が知られている。このような工法は例えば実開平4-117040号全文明細書、特開平6-158605号公報、特開平6-322777号公報、特開平8-144285号公報、特開平9-273160号公報などに記載されている。
【0003】
実開平4-117040号全文明細書は、建築物のべた基礎構造に関するものであり、床スラブと地盤との間に、ポリスチレン樹脂発泡体からなる方形状のブロック体を、地中梁に囲まれた領域全体にわたって敷設してなる建築物の基礎構造が記載されている。この発泡体からなるブロック体は、建築物の基礎の盛土の代替となるし、コンクリートを打設する際の型枠としても利用される。
【0004】
特開平6-158605号公報には、軟弱地盤に埋めて土壌改良したり、盛土の代わりに用いる軽量部材として、合成樹脂発泡体のブロックの複数枚を縦横に積層してなる構造体において、相互の離反を防止するために、ブロックの複数の小集合体の外周を囲むようにしてバンドで結束し、さらにこの結束された小集合体を相互にバンドで結束してなる、軽量部材積層構造体が開示されている。
【0005】
特開平6-322777号公報には、建築物の基礎構造において布基礎や地中梁もしくは独立した束等の成型用の型枠として使用され、そのまま捨て型枠になるとともに、その上面をコンクリート打設面として床スラブの荷重を直接地盤に伝達する為の基礎構築用ブロックが開示されている。このブロック体は、平面形状方形のポリスチレン樹脂発泡体の上面の肩に段溝を設けた構成を備えている。
【0006】
また地下水などの浸出しやすい軟弱地盤に用いられる盛土用発泡体ブロックとして、特開平7-279149号公報に、重量付加材としてコンクリートなどを貫通孔に充填した発泡体ブロックが記載されている。
【0007】
特開平08-144285号公報には、軟弱地盤の盛土、急傾斜地盛土等の土木工事における盛土構造に用いられる盛土材料として発泡スチロールのブロック体が記載されている。具体的には、上面から下面に貫通する多数の貫通孔をブロック全域に渡って配列形成し、貫通孔による空隙率を30〜75%に形成してなる軽量盛土用合成樹脂発泡ブロックが記載されている。
【0008】
特開平9-273160号公報には、耐震性、均等性に優れ、工事を簡略化し、経済的で安定した基礎構造とする目的で、合成樹脂発泡体を用いた基礎構造が記載されている。例えば、地表を削土し、整地した地表に溝を設け、その上に合成樹脂発泡体からなる基盤材を敷設する方法や、この基盤材の下に杭の代わりとなる、独立発泡体粒とコンクリートを混合してなるラップル基礎材を埋設する方法などが開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の工法では、いずれも地表を掘削して施工を行うが、掘削の際に発生する土を残土として処理しなければならない。しかしながら、この残土の処理は、近年、残土を処理する土地が限られてきており、環境的に処理が困難になりつつあることや、残土処理に費用がかかるために、施工コストを上昇させてしまうという問題がある。
【0010】
また、上記工法に用いられる合成樹脂発泡体のブロックは、施工中の湧水や降雨により大きな浮力を受け、施工した該ブロックが浮き上がってしまい、再度施工を行わなければならなくなるという不具合に対する対策が望まれている。
【0011】
更に、上記工法に用いられる合成樹脂発泡体のブロックは、このような土木、建築分野で使用する場合にはまだまだ安価とは言い難く、施工コストを低減する為に、さらなる低コストの材料が望まれている。
【0012】
本発明は上記従来技術の欠点を解決するためになされたもので、施工の際の残土の処理が容易であり、浮き上がり事故を防止する事ができ、しかも施工コストを低減可能な、ポリスチレン系樹脂発泡板組立体を用いた、軽量地盤構築方法、基礎構築方法、及び軽量盛土施工方法を提供する事を目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)地面を掘削して凹部を形成し、該凹部の底面の地盤上に、複数枚のポリスチレン系樹脂発泡板からなる側壁部と、側壁部に囲まれた空間の上下面が開口して構成された中空部とからなる筒状中空体であり、側壁部の隣り合う発泡板どうしの接合が連結手段によりなされ、筒状中空体の側面周囲が引っ張り抵抗を有する材料からなる結束材にて緊結されているポリスチレン系樹脂発泡板組立体を、該組立体の開口面が鉛直方向とほぼ直交するように敷設した後、ポリスチレン系樹脂発泡板組立体の中空部に土を埋戻し、ポリスチレン系樹脂発泡板組立体の上面側を覆うようにコンクリートを打設することを特徴とする軽量地盤構築方法、(2)地面を掘削して溝または凹部を形成し、該溝の底面あるいは該凹部の底面周囲に形成したフーチング上に外型枠と、複数枚のポリスチレン系樹脂発泡板からなる側壁部と、側壁部に囲まれた空間の上下面が開口して構成された中空部とからなる筒状中空体であり、側壁部の隣り合う発泡板どうしの接合が連結手段によりなされ、筒状中空体の側面周囲が引っ張り抵抗を有する材料からなる結束材にて緊結されているポリスチレン系樹脂発泡板組立体からなる内型枠とを、該組立体の開口面が鉛直方向とほぼ直交するように対向させて配置し、組立体の中空部に土を埋戻し、内型枠と外型枠との間で形成される空間にコンクリートを打設することを特徴とする基礎構築方法、(3)地盤上に、複数枚のポリスチレン系樹脂発泡板からなる側壁部と、側壁部に囲まれた空間の上下面が開口して構成された中空部とからなる筒状中空体であり、側壁部の隣り合う発泡板どうしの接合が連結手段によりなされ、筒状中空体の側面周囲が引っ張り抵抗を有する材料からなる結束材にて緊結されているポリスチレン系樹脂発泡板組立体を、該組立体の開口面が鉛直方向とほぼ直交するように敷設し、ポリスチレン系樹脂発泡板組立体の中空部に土を埋戻し、ポリスチレン系樹脂発泡板組立体の上面側にコンクリートを打設することを特徴とする軽量盛土施工方法、(4)上記ポリスチレン系樹脂発泡板組立体の側壁部外面、側壁部内面、あるいは側壁部外面及び内面に、排水層が設けられていることを特徴とする上記(1)記載の軽量地盤構築方法、(5)上記ポリスチレン系樹脂発泡板組立体の側壁部外面、側壁部内面、あるいは側壁部外面及び内面に、排水層が設けられていることを特徴とする上記(2)記載の基礎構築方法、(6)上記ポリスチレン系樹脂発泡板組立体の側壁部外面、側壁部内面、あるいは側壁部外面及び内面に、排水層が設けられていることを特徴とする上記(3)記載の軽量盛土施工方法、を要旨とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明を詳細に説明する。図1は本発明ポリスチレン系樹脂発泡板組立体の1例の外観を示す斜示図、図2は図1の正面図、図3は図1の背面図、図4は図1の平面図、図5は図1の右側面図、図6は図4のA-A線断面図である。なお、左側面図は右側面図と同一であり、底面図は平面図と同一である。
【0015】
本発明ポリスチレン系樹脂発泡板組立体(以下、発泡板組立体と記載する)1は、図1に示すように、複数枚のポリスチレン系樹脂発泡板からなる側壁部2と、側壁部2に囲まれた内部が中空部3として形成されており、中空部3の上面及び下面が開口している筒状中空体として構成されている。側壁部2を構成するポリスチレン系樹脂発泡板は、隣り合う発泡板どうしを連結具4等の連結手段を用いて接合して固定されている。さらに中空部内部側から外方に力が加わった場合に連結部が外れないように、筒状中空体の側面周囲を、引っ張り抵抗を有する材料からなる結束材5にて緊結している。
【0016】
図1に示す態様の発泡板組立体は、4枚のポリスチレン系樹脂発泡板をそれぞれ側壁部2の各壁として用い、四角筒状体に形成したものである。筒状中空体の形状は、水平断面の外形形状が、正方形、長方形などの方形状となるような、四角筒状に形成するのが好ましいが、特に四角筒状体には限定されず、それ以外の多角形筒状体として形成してもよい。
【0017】
発泡板組立体1の側壁部2を構成するポリスチレン系樹脂発泡板は、型内発泡成形体(ビーズ発泡成形体:EPS)、押出発泡成形体のいずれを用いてもよいが、押出発泡成形体が好ましい。これは、押出発泡成形体は長尺な発泡板を得る場合に長さの制限がなく、各種の寸法に対応するのが容易であることや、強度に優れること、製造コストが比較的安価であるなど、型内発泡成形体と比較して有利な点が多いためである。
【0018】
側壁部2を構成するポリスチレン系樹脂発泡板は、組立体の大きさや、用途などに応じて、厚み、強度等を適宜選択することができる。ポリスチレン系樹脂発泡板の原料樹脂としては、公知のポリスチレン系樹脂を用いることができる。ポリスチレン系樹脂発泡体は、安価であり十分な強度の発泡体が得られ、製造が容易である。
【0019】
側壁部2の隣り合う発泡板どうしの接合に用いる連結手段としては、以下に詳述する連結具、接着剤、粘着剤、またはそれらを複合したもの等が挙げられる。接着剤としては、硬化後にゴム弾性を発揮し得るものが好ましい。また、発泡板組立体の製造作業性の面から、接着剤、粘着剤塗布工程、接着剤硬化時間待ちの必要がない連結具を使用することが好ましい。また連結手段として、接着剤あるいは粘着剤と、連結具とを併用した場合、発泡板どうしの確実な接合が得られる利点がある。
【0020】
連結具4は、2枚の発泡板を固定可能なものであれば特に限定されない。例えば図8に示すように、金物の板状体41の片面側に、発泡板に食い込ませるための爪片42を打ち抜き折り曲げて形成した連結具4aを用いることができる。この連結具4aは、図1及び図10に示すように2枚の隣合う発泡板2a、2bをまたぐように、爪片42を発泡板に食い込ませて取り付けることができる。この片面側に爪片を設けた連結具4aは、図1に示す態様では、図10に示すように筒状中空体の4隅の上面側及び下面側から取り付けたものであるが、筒状中空体の隣合う発泡板の側面外側に取り付けたり、筒状中空体の内側に取り付けたりしてもよい。
【0021】
また連結具4は図9に示すように、金物の板状体41の両面側から爪片42を打ち抜き折り曲げて形成してなる連結具4bを用いることができる。この爪片42を板状体41の両面側に設けてなる連結具4bは、図10に示すように、隣合う2枚の発泡板2a、2bが接合する界面となる部分に、両面の爪片42を発泡体2a、2bにそれぞれ食い込ませて取り付けることで、発泡板2a、2bを固定できる。図10に示すように、発泡板の接合部の界面と、外側表面との両方に連結具を取り付けて筒状中空体を組み立てることは、組立体の強度を保持する上で好ましい。
【0022】
連結具は平板の板状体のみに限定されず、例えば断面L字状等の他の形状に形成してもよい。これらの形状は、発泡板の接合部分の形状に応じて適宜選定すればよい。また連結具の材質は、金属金物、プラスチック成形体、その他の材料から適宜選択すればよい。要するにポリスチレン系樹脂発泡板のどうしを接合可能な手段を有するものであれば、連結具として用いることができる。連結具の数、連結位置などは、発泡板組立体の形状、大きさなどに応じて、運搬や使用の際に形状を保持できる様に決めればよい。
【0023】
結束材5としては引っ張り抵抗を有する材料であればよく、例えばポリプロピレン樹脂などで平板テープ状に形成された梱包用バンド等が用いられる。連結具により中空筒状体を組立てた後、該中空筒状体の側面周囲に梱包用バンド等の結束材を巻き回し、該テープの重なり部を熱融着して固定する事で、筒状中空体を緊結する事ができる。なおこの場合の緊結とは、連結具で固定された筒状中空体を発泡板組立体として組み立てたものが、その使用の際に、形状を保持できる程度に止められていればよい。
【0024】
図1に示す態様の発泡板組立体は、筒状中空体の側面の上端付近、及び下端付近に結束材5をそれぞれ1本ずつ設けて緊結したものであるが、この態様に限定されず、高さが高い際には側面中央付近に更に1本設けて合計3本としてもよいし、高さが低い場合には、図7に示すように側面中央付近にのみ1本だけ設けてもいずれでもよい。また結束材は、水平方向に巻き回すのみならず、組立体の使用に差し支えない範囲であれば、筒状中空体の上下方向に巻き回してもよい。
【0025】
本発明の発泡板組立体1は、図7に示すように、4枚の発泡板により側壁部2が構成された中空筒状体の中空部3に、別体の発泡板による桟部6を設けて、中空部を3a、3bに分けて構成する事もできる。この構成は水平断面形状が長方形であり、短片に対する長片の長さの割合が大きい際に、形状保持性が良好になるため効果的である。
【0026】
発泡板組立体の大きさ(外形の大きさ)は、その高さ(H)、幅(W)、奥行(D)について、用途に応じ適宜決めることができ、特に限定されないが、実用的に十分な大きさであり、かつ取り扱いが容易であり、通常の製造が可能であって製造コストがさほど上昇しない範囲として好ましいのは、高さ(H)が0.3m〜6m、幅(W)が0.5m〜6m、奥行き(D)が0.5m〜1.5mである。発泡組立体の外形の大きさを上記範囲に形成した場合、中空部3の好ましい容積は0.2m3〜8m3である。発泡板組立体の外形の容積に対する中空部3の容積の割合は、発泡板組立体を使用する際に中空部に掘削した残土を入れて埋め戻すことから、発泡板組立体としての強度が得られる範囲できるだけ大きく形成する事が、残土の処理効率の点から好ましい。この中空部の割合は、ポリスチレン系樹脂発泡板の厚みを選択する事で調節できる。
【0027】
発泡板組立体の強度は、ポリスチレン系樹脂発泡板の5%圧縮強さが50kN/m2〜200kN/m2の範囲であるのが好ましい。この5%圧縮強さはポリスチレン系樹脂発泡板を実際に発泡板組立体とした場合に上下方向となる方向に圧縮した場合の圧縮強さである。また、ポリスチレン系樹脂発泡板の密度は、12kg/m3〜50kg/m3が好ましい。なお、ポリスチレン系樹脂発泡板の密度は組立体の側壁部を構成する発泡板の重量を該発泡板の外形寸法から求められる体積で割ることによって求められる値である。
【0028】
本発明において、ポリスチレン系樹脂発泡板の5%圧縮強さは、JIS K 7220(1983)に基づき、高さ100mm、幅及び長さ100mmの試験片を試験速度10mm/minの条件にて試験片高さの10%まで圧縮し、圧縮量と荷重との関係を表わすグラフを得る。次に該グラフより5%圧縮時の荷重を読み取り、5%圧縮時の荷重を試験片の元の断面積により割ることにより算出される値である。なお、5%圧縮前に降伏点が現れ、且つ、5%圧縮時の荷重よりも大きな値の場合は降伏点荷重と該断面積により5%圧縮強さを算出する。
【0029】
また特に図示しないが、発泡板組立体の側壁部2の外側表面、内側表面、あるいは外側表面及び内側表面の両面に、排水層を積層してもよい。排水層は、例えば不織布シートなどのように、積層した際に面方向に通水性を有し、発泡板組立体1の側壁部2に接触する水を上方から下方へ排水可能な材料であればよい。
【0030】
本発明発泡板組立体は、ポリスチレン系樹脂発泡板を複数枚積層した積層体を用いて側壁部2を構成してもよい。この積層体は、発泡板組立体として形状が保持できるのであれば、単なる重ねただけでもよいし、連結具を使用したり、粘着剤や接着剤を用いて接着するなどして積層一体化した物であってもいずれでもよい。
【0031】
上記発泡板組立体は、地面を掘削してポリスチレン発泡体のブロックを埋設する工法に用いることができる。以下、具体的な工法ごとに、その利用方法を説明する。
【0032】
従来の軟弱地盤に建築物の基礎を構築する方法として、特開平9-273160号公報に記載されているように、堅い地盤まで地面を掘削し、その凹部に独立気泡発泡粒とコンクリートの混合物などを敷いて嵩上げして軽量地盤を構築し、該軽量地盤の上にコンクリートなどを一面隙間なく敷き建築物の基礎を構築する方法が用いられている。
【0033】
本発明の軽量地盤構築方法は、上記の独立気泡発泡粒とコンクリートの混合物の代わりに、上記発泡組立体を用いて、軽量地盤を構築する方法である。図11は上記発泡板組立体を用いた軽量地盤構築方法の説明図であり。以下この図面に沿って軽量地盤構築方法を説明する。
【0034】
まず図11(A)に示すように、支持地盤を確認し軟弱地盤の地面10を堅い地盤の面11まで掘削して凹部12を設けて根切を設ける。ついで同図(B)に示すように、凹部12の底面(根切り底13)を根切り底締め固めを行った後、同図(C)に示すように根切り底にコンクリートを打設するとともに該コンクリート中に緊結金物14を埋設し、コンクリートを硬化させて地盤15を設ける。なお、地盤はコンクリート打設面に限らずコンクリートを打設せずに凹部堀削底面を地盤とすることもできる。同図(D)に示すように、コンクリート地盤15の上に、これまで説明した発泡板組立体1を中空部3の開口面が鉛直方向とほぼ直交するよう(中空部の貫通方向が上下方向となるように)敷設する。この際、緊結金物14の先端が発泡板組立体1の側壁部2の下面から発泡板の内部に貫入するよう載置する事で、不用意に移動しないように固定する事ができる。ついで同図(E)に示すように、根切を設ける際に掘削により生じた土16を発泡板組立体1周囲及び該発泡板1の中空部3の内部に埋戻した後、同図(F)に示すように、上記発泡板組立体の上面を覆うようにコンクリートを打設して硬化させ、レベル調整コンクリート層17を設けることで、軽量地盤を構築できる。なお、コンクリートを該発泡板組立体上面に打設する前に、該発泡板組立体の上面を土で覆ったり、該発泡板組立体の上面に蓋をして、その上にコンクリートを打設してもよい。
【0035】
上記軽量地盤構築方法において、図12(a)に示すように、浮き上がりや、排水性を改良するために、根切り底13に地盤15を形成する際に、発泡板組立体1の中空部3に対応する位置に予めパイプサポート鉄筋19を埋設しておいて穴あきパイプ18を該鉄筋に通し、発泡板組立体1を所定位置に載置し、土を埋め戻した後、同図(b)に示すようにコンクリートを打設してレベル調整コンクリート層17を設けてもよい。この穴あきパイプ18が中空部に設けられていることで、中空部内部に水が発生した場合でも埋戻した土が軟弱にならないし、発生した水をこのパイプにポンプをつないでパイプを通して外部に排水する事が可能であり、排水対策にきわめて有効である。
【0036】
図13に示すように発泡板組立体1の側壁部表面に振動吸収材20を積層し、振動吸収性を向上させることができる。また、この振動吸収材の代わりに、発泡板組立体の側壁部表面に排水材を積層した物を用いれば、排水性が向上し、地下水位対策に効果的である。また、発泡板組立体の側壁部表面に補強材を積層した物を用いれば、該組立体の機械的強度が向上し、各用途における耐荷重等の構造設計上、活用範囲が広がる。
【0037】
この軽量地盤構築方法は、発泡板組立体を用いることで、カサ上げ地盤の軽量化により支持地盤の支持力低下を少なくするのに効果的であり、より堅い支持地盤まで掘削する必要がなくなる。また、掘削した土を発泡板組立体の中空部に埋設することができ、同じ外形形状の発泡体ブロックを使用することや、コンクリートを流し込む工法と比較して、残土処理量は発泡板の部分の体積のみで済む為に、残土の処理量を効果的に削減できる。また、発泡板組立体は中空部を有するため、中空部のない発泡体と比べて浮力が小さく、また、中空部へ埋戻した土も発泡体の浮上防止効果を発揮するため、施工中の発泡体浮き上がり事故を防ぐことができる。また該発泡板組立体の上に形成するレベル調整コンクリート層の使用量を減らすことが可能であり、そのことは前記支持地盤の支持力低下を少なくする効果、コストダウン、工期短縮などの効果を奏する。
【0038】
この方法によれば、発泡板組立体に補強材、排水材や振動吸収材を積層する事が容易であり、発泡板組立体の中空部に穴あきパイプなどを設置できるために、圧縮強度不足対策、曲げ強度不足対策、排水対策、浮上り対策、振動対策、地下水位対策などの各種の問題に容易に対応できる利点がある。また、軟弱地盤の層が厚く根切りが深くなる場合に高さの高い発泡板組立体が必要になった場合に、押出発泡成形により長さが6m程度までは長尺の発泡板を容易に製造可能であるから十分対応でき、更に高さの高い発泡板組立体が必要な場合には、上下方向に複数の該組立体を連結手段で接合する事で対応できる為、深さ方向の施工の自由度が高い。
【0039】
軽量地盤構築方法は、従来、建築分野で軽量地盤の基礎構築、振動対策基礎構築などを行う際に生コンクリートを用いる代わりに上記発泡板組立体を用いる方法や、土木分野で土木構造物の基礎構築、地下水位以下の基礎構築、軽量高盛土、背面盛土、大型埋め立て工事仮設、土木構造物基礎型枠、含水量の多い排土処理、振動対策基礎などの施工において、生コンクリート、発泡モルタル、EPS盛土、コンパネ型枠、鉄製型枠などを用いる代わりに上記発泡板組立体を利用して施工する方法等に応用できる。
【0040】
図14は発泡板組立体を用いた基礎構築方法の説明図であり、本発明基礎構築方法は、同図(a)に示すように、まず地面を掘削して溝または凹部21を形成する。次いで該溝の底面あるいは該凹部の底面周囲にコンクリートを打設してフーチング22を形成する[同図(b)]。フーチング22には緊結金物24を埋設しておくか、フーチング部のコンクリートが硬化後に、コンクリート針等を打ち込み緊結金物とする。次にフーチング22上に外型枠23を設け、内型枠としての発泡板組立体1を、該発泡板組立体1の開口面が鉛直方向とほぼ直交するように上記外型枠23と対向させて配置する[同図(c)]。このとき発泡板組立体1は側壁部に緊結金物24を貫入して固定する。組立体1の中空部3に土16を埋戻し、同図(d)に示すように内型枠1と外型枠23との間で形成される空間にコンクリート25を打設する。更に内型枠の内側、内型枠の上面、または内型枠の内側と上面にコンクリートを打設して、スラブを一度に形成できる。なお、上記基礎構築方法において、外型枠を内型枠と同様の発泡板組立体を用いて構成してもよい。また、コンクリートを該発泡板組立体上面に打設する前に、該発泡板組立体の上面を土で覆ったり、該発泡板組立体の上面に蓋をして、その上にコンクリートを打設してもよい。
【0041】
コンクリート打設後、内型枠としての発泡板組立体は、そのまま捨て型枠として該発泡板組立体の上に床スラブを構築する際の基礎として利用される。また内型枠(発泡板組立体)の施工は、図15に示すように、地中梁25に囲まれた区画の中において、四隅の部分にまず発泡板組立体1Aを載置し、次いでその隣に順次前記発泡板組立体1Aと同一寸法の発泡板組立体1B、あるいは更に組立体1Cを載置していく。最後に残った寸法の異なる部分に、幅寸法をこの残った部分の寸法に合わせた調整型枠26を載置する。この調整用型枠26は前記発泡板組立体を用いても、通常の型枠を用いてもよい。
【0042】
この基礎構築方法は、基礎・地中梁の型枠材として、上記発泡板組立体を用いる点に大きな特徴があり、該発泡板組立体の側壁部が型枠面として利用され、中空部が埋戻し土の保持に利用される。そのため型枠に掘削した土を埋め戻す作業と型枠工事を平行して行うことができ、従来の基礎構築方法と比較して、施工作業性に優れる。
【0043】
図16は軽量盛土施工方法の1例を示す説明図である。同図(a)に示すように、緊結金物28等を設置して地盤27を調整する。この地盤27上に上記発泡板組立体1を該組立体の開口面が鉛直方向とほぼ直交するように敷設し、緊結金物28が発泡板組立体1の発泡板に貫入するようにして、発泡板組立体1を地盤上の所定位置に固定する[同図(b)]。次いで同図(c)に示すように、発泡板組立体1の中空部3に土29を埋戻し、また必要に応じ発泡組立体1の周囲にも土を盛って、発泡板組立体1の上面を覆うようにコンクリート30を打設する。コンクリート30は保護コンクリート、あるいは浮力抑止コンクリートとして機能する。なお、コンクリートを該発泡板組立体上面に打設する前に、該発泡板組立体の上面を土で覆ったり、該発泡板組立体の上面に蓋をして、その上にコンクリートを打設してもよい。
【0044】
図17は軽量盛土施工方法の斜面施工例を示す説明図である。斜面の場合には、図17に示す如く斜面に応じて高さの異なる発泡板組立体1a,1b,1c,1dを準備してこれを組み合わせて施工する。斜面31を整地し上記発泡板組立体1a,1b,1c,1dが設置できるように地盤32a〜32dを構築し、その上に発泡板組立体を設置し、土を埋戻した後、発泡板組立体1a〜1dの上面側を覆うようにコンクリートを打設する。図中33は排水材である。
【0045】
上記軽量盛土施工方法は、橋台、擁壁などの背面施工に用いることができる。また、軽量盛土施工方法の場合にも軽量地盤構築方法で説明した、穴あきパイプを中空部に設けた排水性対策、発泡板組立体の側壁部表面に振動吸収材を積層して振動吸収性を改良する手段、排水材を積層する地下水位対策等に利用できる。
【0046】
本発明の軽量地盤構築方法、基礎構築方法及び軽量盛土施工方法において発泡板組立体の中空部への土の埋戻しは、必ずしも中空部の全てを土にて満たす必要はなく、中空部に空間が形成できるように土を埋戻し、樹脂発泡板にて発泡板組立体の上面開口部をふさぐことにより、発泡板組立体内部に空間部を形成することができる。このように発泡板組立体に空間部が存在する場合には、該空間部により防震効果、防音効果などが期待できる。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は上記構成を採用したことにより、施工の際の残土の処理が容易であり、しかも施工コスト低減、施工作業性向上、施工期間短縮などが可能な、ポリスチレン系樹脂発泡板組立体を用いた、軽量地盤構築方法、基礎構築方法、及び軽量盛土施工方法が得られる。また施工中の湧水、降雨による発泡体の浮き上がり事故対策に有効である。
【0048】
発泡板組立体は、ポリスチレン系樹脂発泡板から組み立てられている為、従来用いられていた、予め所定形状に成型されたブロック状の発泡体と比較して、種々のサイズに形成するのが容易であり、柔軟に対応できる。また中空部を有する為、該部分に土を埋め戻すことができ残土処理量を著しく低減できる。更に水位以下のところに施工した場合の浮き上がり防止対策、振動防止対策、地下水位以下の排水施工対策、地盤補強対策などを容易に行うことができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明ポリスチレン系樹脂発泡板組立体の1例の外観を示す斜示図である。
【図2】 図1の正面図である。
【図3】 図1の背面図である。
【図4】 図1の平面図である。
【図5】 図1の右側面図である。
【図6】 図2のA-A断面図である。
【図7】 本発明ポリスチレン系樹脂発泡板組立体の他の例の外観を示す斜示図である。
【図8】 連結具の1例を示す外観斜示図である。
【図9】 連結具の他の例を示す外観斜示図である。
【図10】 本発明ポリスチレン系樹脂発泡板組立体の接合部分を示す分解斜示図である。
【図11】 発泡板組立体を用いた軽量地盤構築方法の説明図である。
【図12】 軽量地盤構築方法の他の例の説明図である。
【図13】 軽量地盤構築方法のその他の例の説明図である。
【図14】 発泡板組立体を用いた基礎構築方法の説明図である。
【図15】 基礎構築方法の型枠の設置手順を示す説明図である。
【図16】 軽量盛土施工方法の1例を示す説明図である。
【図17】 軽量盛土施工方法の斜面施工例を示す説明図である。
【符号の説明】
1 ポリスチレン系樹脂発泡板組立体
2 側壁部
3 中空部
4 連結具
5 結束材

Claims (6)

  1. 地面を掘削して凹部を形成し、該凹部の底面の地盤上に、複数枚のポリスチレン系樹脂発泡板からなる側壁部と、側壁部に囲まれた空間の上下面が開口して構成された中空部とからなる筒状中空体であり、側壁部の隣り合う発泡板どうしの接合が連結手段によりなされ、筒状中空体の側面周囲が引っ張り抵抗を有する材料からなる結束材にて緊結されているポリスチレン系樹脂発泡板組立体を、該組立体の開口面が鉛直方向とほぼ直交するように敷設した後、ポリスチレン系樹脂発泡板組立体の中空部に土を埋戻し、ポリスチレン系樹脂発泡板組立体の上面側を覆うようにコンクリートを打設することを特徴とする軽量地盤構築方法。
  2. 地面を掘削して溝または凹部を形成し、該溝の底面あるいは該凹部の底面周囲に形成したフーチング上に外型枠と、複数枚のポリスチレン系樹脂発泡板からなる側壁部と、側壁部に囲まれた空間の上下面が開口して構成された中空部とからなる筒状中空体であり、側壁部の隣り合う発泡板どうしの接合が連結手段によりなされ、筒状中空体の側面周囲が引っ張り抵抗を有する材料からなる結束材にて緊結されているポリスチレン系樹脂発泡板組立体からなる内型枠とを、該組立体の開口面が鉛直方向とほぼ直交するように対向させて配置し、組立体の中空部に土を埋戻し、内型枠と外型枠との間で形成される空間にコンクリートを打設することを特徴とする基礎構築方法。
  3. 地盤上に、複数枚のポリスチレン系樹脂発泡板からなる側壁部と、側壁部に囲まれた空間の上下面が開口して構成された中空部とからなる筒状中空体であり、側壁部の隣り合う発泡板どうしの接合が連結手段によりなされ、筒状中空体の側面周囲が引っ張り抵抗を有する材料からなる結束材にて緊結されているポリスチレン系樹脂発泡板組立体を、該組立体の開口面が鉛直方向とほぼ直交するように敷設し、ポリスチレン系樹脂発泡板組立体の中空部に土を埋戻し、ポリスチレン系樹脂発泡板組立体の上面側にコンクリートを打設することを特徴とする軽量盛土施工方法。
  4. 上記ポリスチレン系樹脂発泡板組立体の側壁部外面、側壁部内面、あるいは側壁部外面及び内面に、排水層が設けられていることを特徴とする請求項1記載の軽量地盤構築方法。
  5. 上記ポリスチレン系樹脂発泡板組立体の側壁部外面、側壁部内面、あるいは側壁部外面及び内面に、排水層が設けられていることを特徴とする請求項2記載の基礎構築方法。
  6. 上記ポリスチレン系樹脂発泡板組立体の側壁部外面、側壁部内面、あるいは側壁部外面及び内面に、排水層が設けられていることを特徴とする請求項3記載の軽量盛土施工方法。
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