JP4519483B2 - 耐焼き付き性に優れたフェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法 - Google Patents

耐焼き付き性に優れたフェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、耐焼き付き性に優れたフェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法に関し、より詳しくは、表面に特定の酸化皮膜を有するとともに表面粗度が特定範囲にあって、過酷なプレス成形環境においても優れた耐焼き付き性を発揮するフェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法に関する。
SUS430やSUS430J1Lに代表されるフェライト系ステンレス鋼板や、SUH409などのフェライト系耐熱鋼板は、美麗な外観に加えて、優れた、加工性、耐食性及び耐熱性を備えており、しかもオーステナイト系の耐熱鋼板やステンレス鋼板に比較して安価であるので、流し台や冷蔵庫などの厨房、家電部品や建材用途、更には、燃焼系部品などに広く使用されている。特に、最近では、優れた耐熱性を備えることから、ガスコンロやストーブバーナー材などの燃焼系部品や冷蔵庫、洗濯機のモーターカバーなどの用途にもその需要が拡大しつつある。
従来、流し台に代表される厨房部品などは、プレス成形により加工されるものであるが、フェライト系ステンレス鋼板特有の美麗な外観を重視する用途であり、プレス成形加工時の疵などを防止するために、表面にフィルム状の保護膜を粘着させてプレス成形に供されている。これに対し、バーナー材などの燃焼系部品に代表される、いわゆる「人目」に触れることがないために部品の外観が重要視されない部品の場合には、単にプレス油を塗布し、前記の厨房部品などに比べて高速且つ連続的なプレス成形によって大量生産することも行われている。
しかしながら、近年、各種製品の小型軽量化の要求が大きくなるとともに、構成部品の設置スペースが大幅に縮小され、前記燃焼系部品などの形状が従来にもまして複雑化してきた。
そのため、部品の素材の面からは、従来と同等の耐熱性を保持しつつ加工性を高める対策が講じられ、一方、部品の加工面からは、プレス成形の加工工程を増やして各工程での加工度を低減させるなどの工夫がなされている。
しかし、部品形状の複雑化に伴い、フェライト系ステンレス鋼板を加工する上で、「金型の焼き付き」という重大な問題が従来以上に顕著化しつつある。
すなわち、「金型の焼き付き」が発生すると、部品の表面に疵が生じたり、場合によってはプレス成形時に割れが生じたりするので、部品の歩留りが悪化してしまう。更には、金型を手入れする必要が生じて生産性が低下するし、金型寿命の低下による部品コストの上昇も避けられないこととなる。
なお、焼き付きは金型とフェライト系ステンレス鋼板のような被加工材となる材料との直接的な接触によって引き起こされると考えられている。そして、一般にフェライト系ステンレス鋼板をはじめとしてステンレス鋼板は、いわゆる「普通鋼」の鋼板に比べてプレス成形時における金型の焼き付きが生じやすい。その理由は必ずしも明らかではないが、下記(1)〜(3)などに起因すると考えられている。
(1)ステンレス鋼は普通鋼に比べて材料強度が高いので、金型と被加工材であるステンレス鋼との接触面圧が高くなって、金型と被加工材とが直接接触しやすいこと。
(2)ステンレス鋼は活性な金属元素であるCrを含有するため、金型とステンレス鋼とが直接接触した際に、ステンレス鋼が金型に凝着しやすいこと。
(3)ステンレス鋼は熱伝導率が低いために加工・摩擦によって発生した熱が分散されにくいので、局所的な温度上昇によって油膜切れを起こし、金型と被加工材であるステンレス鋼が直接接触しやすいこと。
このため、金型の焼き付き防止を目的に、普通鋼鋼板をプレス成形する場合よりも高粘度のプレス油を使用したり、例えば特許文献1や特許文献2で開示されているような特殊な表面潤滑処理をステンレス鋼板に施してプレスすることを余儀なくされている。
しかしながら、近年要求されているような複雑な形状にフェライト系ステンレス鋼板をプレス成形する場合には、加工環境として従来よりも高面圧になりやすく、このため、金型の焼き付き抑制のために上述のような手法を講じても、その効果は必ずしも十分なものではない。
すなわち、上記のような加工環境下にあっては、たとえ高粘度油を用いても、加工・摩擦発熱の影響で特にプレス油の粘度は大きく低下し、金型と被加工材であるフェライト系ステンレス鋼板との直接的な接触を防止することは困難である。また、極端に粘度が高いプレス油を用いることは、被加工材としてのフェライト系ステンレス鋼板への塗布が困難となって作業性が著しく低下するし、それに加えて、作業環境も劣悪になってしまう。更には、プレス後の部品洗浄における洗浄性も低下してしまう。
また、特許文献1や特許文献2で開示された潤滑処理皮膜を被加工材であるフェライト系ステンレス鋼板に設けても、皮膜の剥離が生じたり、皮膜の耐熱性が低いために、必ずしも焼き付きが防止できるというものではない。すなわち、部品形状が複雑な場合には、プレス加工は、プレス成形時の割れ防止のために各工程での加工度を低減した複数の工程から構成されるのが一般的であるが、プレスの初期工程での金型と被加工材であるフェライト系ステンレス鋼板との摺動によって潤滑皮膜が剥離し、次工程以降での潤滑性能が著しく低下して焼き付きが発生したり、加工発熱の影響で皮膜の潤滑性能が低下し、所定の潤滑性能が得られず焼き付きに至る場合がある。
一方、加工面における金型の焼き付き対策として、SKD11などの硬質ダイス鋼に厚さ数十ミクロンのCr、TiやVなどの炭化物、窒化物或いは炭窒化物からなる超硬質層(以下、「金型表面処理層」という。)を被覆させた金型を初めとして、表面に各種の処理を施した金型を用いてフェライト系ステンレス鋼をプレス成形することが試みられているが、従来以上に焼き付き防止効果が得られるものは見出されていない。
加工面における金型の焼き付き対策としては、金型表面処理層を初めとする各種の処理層を金型の表面に設ける以外にも、例えば下記(イ)〜(ハ)などの手法が講じられている。しかし、これらの手法も、必ずしも有効な対策といえるものではない。
(イ)プレス成形時の局部的な面圧上昇を抑制するために可能な限りクッション圧を低下させる。
(ロ)ダイス部の曲率半径を大きくし、許容される範囲で加工工程を増やした加工方法とする。
(ハ)加工発熱を抑制するために金型を冷却したり、加工速度を低下させる。
すなわち、前記(イ)の手法の場合には、ある一定圧よりもクッション圧を低下させるとシワの発生を招き、極端な場合には割れが発生することさえある。また、前記(ロ)の手法の場合には、金型費用の増加や加工工程の増加による作業効率の低下の結果として、部品コストの上昇が避けられない。更に、(ハ)の手法の場合にも、加工速度の低下のために生産性が極端に低くなってしまう。
なお、特許文献3及び非特許文献1には、チタン板をプレス成形する場合、チタン板の表面に酸化皮膜を形成させることで金型の焼き付きを防止できることが開示されており、また、特許文献4には、表面に酸化皮膜を形成させて深絞り性を高めたフェライト系ステンレス鋼板が開示されている。
しかし、チタン板とフェライト系ステンレス鋼板とではその化学組成が全く異なるため、単に特許文献3及び非特許文献1で記載された酸化処理をフェライト系ステンレス鋼板に施しても、前述の厳しい加工環境下にあっては、所望の耐焼き付き性を確保することができない。また、特許文献4で開示された技術の場合、酸化皮膜の厚さを規定するだけでその組成及びステンレス鋼板の表面粗度については考慮されていないので、前述の厳しい加工環境下にあっては、必ずしも所望の耐焼き付き性を確保することができない。
このように、従来以上に複雑な形状が要求される自動車排気系部品用フェライト系ステンレス鋼をプレス成形する際に、金型の焼き付きを抑制する有効な手段は未だ確立されていない。
特開平8−290520号公報
特開2001−140080号公報 特開2002−192248号公報 特開昭52−141413号公報 プレス技術、第40巻第3号(2002年3月号)、30〜36ページ
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、その目的は、優れた耐熱性を有するとともにプレス成形時の耐焼き付き性に優れたフェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法を提供することである。
本発明の要旨は、下記(1)〜(2)に示すフェライト系ステンレス鋼板及び(3)に示すフェライト系ステンレス鋼板の製造方法にある。
(1)表面に厚さが50〜500nmのCr−Mn系酸化物からなる酸化皮膜を有し、表面粗度が平均粗さRaで0.02〜2.5μmであることを特徴とする耐焼き付き性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
(2)表面に外側がCr−Mn系酸化物で内側がCr系酸化物からなる厚さが50〜500nmの酸化皮膜を有し、表面粗度が平均粗さRaで0.02〜2.5μmであることを特徴とする耐焼き付き性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
(3)製造工程に900〜1200℃の温度にある酸素濃度0.5%以上の雰囲気中で下記(a)式を満たす処理時間t(分)での熱処理を含むことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の耐焼き付き性に優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
t≦3×フェライト系ステンレス鋼板の板厚(mm)・・・(a)。
なお、「Cr−Mn系酸化物」とはCr23などのCr系酸化物とMn34などのMn系酸化物とが複合して存在する酸化物をいう。また、本発明でいう酸化皮膜は、薄膜のいわゆる「干渉皮膜」を指し、「酸化スケール」状として表面に付着したものは含まない。ここで、「干渉皮膜」とは、可視光と干渉を起こす程度の薄い皮膜をいう。「酸化スケール」は可視光と干渉を起こすことがない厚い皮膜である。
更に、本発明における「フェライト系ステンレス鋼板」とは、JISで規定されたフェライト系の「耐熱鋼板」及びフェライト系の「ステンレス鋼板」をあわせたものを指す。
以下、上記(1)〜(2)の耐焼き付き性に優れたフェライト系ステンレス鋼板に係る発明及び(3)の耐焼き付き性に優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方法に係る発明をそれぞれ本発明(1)〜本発明(3)という。
本発明の耐焼き付き性に優れたフェライト系ステンレス鋼板は、優れた耐熱性を有するとともにプレス成形時の耐焼き付き性に優れているため、近年その形状が複雑になっている燃焼系部品などの素材として利用することができる。そして、そのフェライト系ステンレス鋼板は、本発明の方法によって比較的容易に製造することができる。
本発明者らは、前記した課題を解決するために、先ず、焼き付きの発生メカニズムについて検討した。
すなわち、各種のフェライト系ステンレス鋼板を実験室規模及び工業的な製造規模でプレス成形した後で、金型を詳細に観察した。
その結果、
(a)焼き付きは主にダイス肩部など、金型と被加工材であるフェライト系ステンレス鋼板とが面圧の高い条件で接触する部位で優先的に発生すること、
(b)焼き付きが発生した箇所では、金型表面処理層が剥離して、金型の素材であるダイス鋼と被加工材であるフェライト系ステンレス鋼板とが直接接触すること、
(c)上記のダイス鋼とフェライト系ステンレス鋼板との直接接触により、フェライト系ステンレス鋼板の表面がむしり取られて金型に凝着、堆積する結果、部分的に被加工材の流入抵抗が増加し、これによって、部品表面に疵が発生したり、重度の焼き付きの場合にはプレス成形時の割れの原因となること、
が明らかになった。
そこで次に、SKD11鋼を素材とする金型を用いて、金型表面処理層の有無が金型と被加工材であるフェライト系ステンレス鋼板との摺動に及ぼす影響について実験室的に検討した。
その結果、
(d)金型表面処理層を有する場合に比べて金型表面処理層がない場合(つまり、SKD11鋼そのものの場合)には、摺動による摩擦係数が著しく増加し、極めて凝着が生じやすいこと、
が明らかになり、
(e)焼き付き防止のためには金型表面処理層の剥離をできるだけ抑制すればよい、
との知見が得られた。
そこで更に、金型表面処理層の剥離に至るまでの機構をより詳細に把握するために綿密な観察を行った結果、下記(f)〜(i)の新たな事実が判明した。
(f)焼き付き発生箇所であるダイス肩部などの部位では、金型表面処理層と被加工材であるフェライト系ステンレス鋼とが直接接触しやすく、ステンレス鋼板の一部が金型表面処理層に凝着物として堆積し、より詳しくは、ステンレス鋼板の表面が極めて小さな粉末状や粒子状に剥離して、これらが金型表面処理層に凝着物として堆積し、局部的に摩擦係数が上昇する。但し、この凝着は極軽度の凝着であり、プレス成形した部品に疵が生じたり、プレス成形時の割れ発生に至るものではない。
(g)工業的な規模での製造のように、金型を長期に亘って使用する場合には、上述の凝着が生じた部位は局部的に摩擦係数が大きいため、プレス成形する部品の製造個数に応じた回数だけ他の部位よりも高い剪断応力を受けることになる。しかも、上述の軽度の凝着が発生した箇所には、プレス成形を行う度毎に凝着物が堆積していくので、徐々にではあるが摩擦係数が上昇していく。
(h)一般に、金型表面処理層は超硬質な皮膜構造となっており、耐摩耗性に優れる反面皮膜自体は脆い。このため、長期に亘って繰り返し剪断応力を受け続け、皮膜の耐久限界を超えると、皮膜の剥離が生じてしまう。すなわち、ダイス肩部などの焼き付き発生危険箇所では軽度の凝着が重なる結果、優先的に金型表面処理層の剥離が発生することとなる。
(i)金型表面処理層が剥離すると、金型の素材鋼が表面に露出するので凝着物の堆積が短時間で進行し、一気に重度の焼き付きに至ってしまう。
更に上記の事実から、従来、表面に各種の処理を施した金型を用いているにも拘わらず十分な焼き付き防止効果が得られなかった理由が、次の(j)のように考えられることも明らかになった。
(j)金型表面処理層とフェライト系ステンレス鋼板とが接触すると、ステンレス鋼板の一部が金型表面処理層に凝着するが、フェライト系ステンレス鋼板には、C(炭素)やN(窒素)との親和性の強い活性なCrが多量に含有されているため、現在一般に知られるCr、TiやVなどの炭化物、窒化物或いは炭窒化物からなる金型表面処理層に凝着しやすく、そのため金型表面処理層の組成をどのように調整しても凝着を回避することができず、一方、皮膜の脆さを改善するために皮膜の硬さを低下させると耐摩耗性の劣化を生じ、したがって、長期の使用に際しては金型の素材鋼が表面に露出することを避けられず、十分な焼き付き防止効果が得られない。
このような金型表面処理層の剥離に関する検討を行った結果、次の(k)に示す結論に達した。
(k)耐焼き付き性の向上のためには、金型表面処理層と被加工材であるフェライト系ステンレス鋼板との直接的な接触を抑制して凝着を完全に回避すること、つまり潤滑条件を適正化することが極めて重要である。
そこで、焼き付き抑制のための潤滑条件を明らかにするために、実際のプレス成形時の詳細環境調査の一環として、各種部品形状における加工温度(すなわち、加工中の金型温度)を赤外線温度測定装置を用いて計測した。
その結果、次の事項が明らかになった。
(l)ダイス肩部など焼き付きが発生しやすい箇所における加工中の金型温度が最も高く、最高で約200℃まで到達する。
(m)一般的な潤滑油の粘度は、約200℃という高温の条件下では著しく低下する。したがって、接触面圧が高い場合には、金型表面処理層と被加工材であるフェライト系ステンレス鋼板との接触界面で潤滑油が押し出され、金型表面処理層とフェライト系ステンレス鋼板とが直接接触することを回避することはできない。
(n)200℃程度まで温度が上昇すると、既に述べた特許文献1や特許文献2で開示された潤滑処理皮膜を被加工材であるフェライト系ステンレス鋼板に設けても、皮膜成分の変化を避けられず、このため、常温で得られる潤滑効果やフェライト系ステンレス鋼板との密着性は大きく劣化し、本発明が対象とするような極めて過酷な加工条件下において焼き付きを防止する効果はほとんど得られない。
そして、次の結論(o)に達した。
(o)従来知られている一般的な潤滑方法では、本発明が対象とするような極めて過酷な加工条件下においてフェライト系ステンレス鋼板の焼き付きを完全に抑制することは極めて困難である。
そこで、本発明者らは、フェライト系ステンレス鋼板表面の酸化皮膜及び表面性状に着目し、焼き付き防止効果に及ぼす影響について鋭意研究を行った。その結果、下記の新たな知見が得られた。
(p)フェライト系ステンレス鋼板の表面に特定の厚さで特定の組成からなる酸化皮膜を設け、しかも、表面粗度が平均粗さRaで特定の範囲になるように調整すれば、一般的なプレス油を併用することで、高面圧で且つ高温の実際のプレス成形条件で摺動させた場合の焼き付きを抑制することができる。
すなわち、従来のフェライト系ステンレス鋼板は、その表面にCr酸化物からなる酸化皮膜が存在して優れた耐食性と耐熱性を発揮するのであるが、酸化皮膜をCr−Mn系酸化物又は、外側がCr−Mn系酸化物で内側がCr系酸化物からなる厚さが50〜500nmの酸化皮膜とし、しかも、表面粗度を平均粗さRaで0.02〜2.5μmの範囲に調整することによって、極めて優れた耐焼き付き性が得られる。これは、実際のプレス成形条件である高面圧、且つ200℃に近い高温という過酷な環境下で摺動させても酸化皮膜の剥離が起こらず、金型表面処理層とフェライト系ステンレス鋼板の直接的な接触が回避でき、また、軽度の凝着ですら完全に防止できるからであり、したがって、酸化皮膜が通常のCr酸化物の場合に比べて極めて優れた耐焼き付き性が得られるのである。
前記の本発明(1)〜本発明(3)は、上記の知見に基づいて完成されたものである。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
(A)表面の酸化皮膜の組成
通常、フェライト系ステンレス鋼板表面の酸化皮膜はCr23などのCr系酸化物からなるものであるが、本発明に係るフェライト系ステンレス鋼板の場合、その酸化皮膜は少なくとも外側がCr−Mn系酸化物からなる酸化皮膜とする必要がある。
通常のCr系酸化物からなる酸化皮膜の場合には、高面圧、且つ200℃に近い高温という過酷なプレス成形環境条件で摺動させた場合、容易に剥離するために優れた焼き付き防止効果を得ることができない。
これに対して、Cr23などのCr系酸化物とMn34などのMn系酸化物とが複合して存在するCr−Mn系酸化物からなる酸化皮膜の場合、母材であるフェライト系ステンレス鋼板の変形に対し追従性がよい。このため、例えば縮みフランジ変形、曲げ変形や引張り変形を受けても母材の変形形態に応じて変形することができる。したがって、多工程でのプレス成形においても剥離することがないし、また、耐熱性がよいので既に述べた特許文献1や特許文献2で開示された潤滑処理皮膜に比較して極めて優れた保護効果を安定して発揮することができる。したがって、前述の過酷なプレス成形条件で摺動させても剥離が起こらず、金型表面処理層とフェライト系ステンレス鋼板の直接的な接触が回避できるし、また、軽度の凝着ですら完全に防止できるので、一般のプレス油を併用するだけで極めて優れた焼き付き防止効果が得られる。
なお、上記Cr−Mn系酸化物からなる酸化皮膜は、少なくとも金型表面処理層と接触する表層側(つまり、外側)がCr−Mn系酸化物でありさえすればよく、内側は従来同様のCr系酸化物からなる酸化皮膜であっても構わない。勿論、全体がCr−Mn系酸化物からなる酸化皮膜であってもよい。なお。Cr−Mn系酸化物からなる酸化皮膜を有する状態のプレス成形部品を、例えばバーナー材などの燃焼系部品に適用してもその耐熱性は何ら損なわれるものではない。
したがって、前記本発明(1)に係るフェライト系ステンレス鋼板の表面の酸化皮膜の組成をCr−Mn系酸化物からなる酸化皮膜と規定した。
また、前記本発明(2)に係るフェライト系ステンレス鋼板の表面の酸化皮膜の組成は、外側がCr−Mn系酸化物で内側がCr系酸化物と規定した。
なお、既に述べたように、本発明でいう酸化皮膜とは、薄膜のいわゆる「干渉皮膜」を指し、「酸化スケール」状として表面に付着したものは含まない。
(B)酸化皮膜の厚さ
本発明に係るフェライト系ステンレス鋼板の前記(A)項で述べた組成の酸化皮膜の厚さは50〜500nmとする必要がある。
フェライト系ステンレス鋼板の表面における酸化皮膜の組成がたとえ前記(A)項で述べたものであっても、その厚さが50nmを下回る場合には、摺動時に酸化皮膜が破れて安定した保護効果を得ることができない。一方、厚さが500nmを超えると、「酸化スケール」が表面に付着し、母材であるフェライト系ステンレス鋼板の変形に対する追従性が小さくなってプレス成形の初期工程で剥離しやすくなり、剥離が生じると、酸化物(酸化スケール)が金型に付着して押し込みなどの原因となる。また、厚さが500nmを超える場合には、耐焼き付き性に効果のある酸化皮膜の組成が安定して得られない。
したがって、前記本発明(1)及び本発明(2)に係るフェライト系ステンレス鋼板においては、酸化皮膜の厚さを50〜500nmとした。一層好ましい酸化皮膜の厚さは80〜400nmである。
なお、本発明における酸化皮膜の組成及び厚さは、ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)やXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)やグロ−放電質量分析或いは薄膜X線回折のような一般に知られる物理分析機器を用いて容易に測定することができる。
(C)表面粗度
本発明に係るフェライト系ステンレス鋼板の表面粗度は、平均粗さRaで0.02〜2.5μmとする必要がある。
フェライト系ステンレス鋼板の表面における酸化皮膜の組成がたとえ前記(A)項で述べたものであり、更に、その酸化皮膜の厚さがたとえ前記(B)項で述べたものであっても、フェライト系ステンレス鋼板の表面粗度が平均粗さRaで0.02μmを下回る場合には、そのプレス成形時に併用する一般的なプレス油の保油性が低下して、安定して優れた焼き付き防止効果が得られない。一方、表面粗度が平均粗さRaで2.5μmを超える場合には、摺動時に表面の凸部が母材とともに金型にむしり取られて凝着しやすくなって、優れた焼き付き防止効果が得られない。
したがって、前記本発明(1)及び本発明(2)に係るフェライト系ステンレス鋼板においては、表面粗度を平均粗さRaで0.02〜2.5μmとした。一層好ましい表面粗度は平均粗さRaで0.05〜2.0μmである。
(D)フェライト系ステンレス鋼板の製造方法
フェライト系ステンレス鋼板表面の酸化皮膜の少なくとも外側をCr−Mn系酸化物からなる厚さ50〜500μmの酸化皮膜とするには、換言すれば、フェライト系ステンレス鋼板の表面の酸化皮膜を、Cr−Mn系酸化物からなる厚さ50〜500μmの酸化皮膜又は、外側がCr−Mn系酸化物で内側がCr系酸化物からなる厚さ50〜500μmの酸化皮膜とするには、製造工程に750〜1200℃の温度にある酸素濃度0.5%以上の雰囲気中で前記(a)式を満たす処理時間t(分)での熱処理を含んでいる必要がある。
以下、上記の規定に関して詳しく説明する。
先ず、熱処理を酸素濃度0.5%以上の雰囲気中で行うのは、フェライト系ステンレス鋼板の表面にCr−Mn系酸化物を安定して生成させるためである。雰囲気中の酸素濃度が0.5%に満たない場合には、酸化皮膜の組成がCr系酸化物になりやすく、Cr−Mn系酸化物を安定して得ることができないので、所望の優れた耐焼き付き性を確保することができない。雰囲気中の好ましい酸素濃度は1%以上である。なお、上記の熱処理は大気中で行っても構わない。すなわち、大気中の酸素濃度(約21%)を雰囲気における酸素濃度の上限とすればよい。
上記の酸素濃度0.5%以上の雰囲気中であっても、熱処理温度が750℃を下回る場合には、Cr−Mn系酸化物が形成されず、表面に形成される酸化皮膜が通常のCr系酸化物だけからなるものとなって、所望の優れた耐焼き付き性を確保することができない。一方、熱処理温度が1200℃を超える場合には、表面の酸化皮膜が、焼き付き防止のために最適な薄膜のいわゆる「干渉皮膜」形態とはならず、「酸化スケール」状となるために過酷な条件下でのプレス成形時に剥離し、やはり、所望の優れた耐焼き付き性を確保することができない。
熱処理の雰囲気と温度が前記の規定を満たす場合であっても、熱処理時間t(分)が前記(a)式から外れる場合、つまり「3×フェライト系ステンレス鋼板の板厚(mm)」を超える場合には、表面に形成される酸化皮膜が「酸化スケール」状となるために過酷な条件下でのプレス成形時に剥離し、所望の優れた耐焼き付き性を確保することができない。
したがって、前記本発明(3)に係るフェライト系ステンレス鋼板の製造方法は、750〜1200℃の温度にある酸素濃度0.5%以上の雰囲気中で前記(a)式を満たす処理時間t(分)での熱処理を製造工程に含むものと規定した。
なお、前記熱処理における一層好ましい温度範囲は800〜1100℃である。また、熱処理時間tの下限値は特に規定されるものではないが、酸素濃度が0.5%以上の雰囲気中での本発明に係るフェライト系ステンレス鋼板の表面に形成される酸化皮膜の組成及び厚さの熱処理温度依存性から、「1/60」分(すなわち1秒)程度とするのがよい。
なお、上記の熱処理によってフェライト系ステンレス鋼板の表面に前述した酸化皮膜を設けても、熱処理後プレス成形加工を行う前に酸洗処理のような酸化皮膜を剥離させたり除去するような工程が入れば所望の優れた耐焼き付き性を確保することができないので、プレス成形加工は、前述の酸化皮膜を被覆させたままで行う必要がある。
例えば、フェライト系ステンレス鋼板の製造工程は、熱間圧延鋼帯を冷間圧延によって所定板厚まで圧延し、その後、鋼板の軟化を目的に熱処理し、次いで酸洗処理を施す工程が一般的なものであるが、この一般的な製造工程において、軟化のための熱処理が前記した雰囲気、温度及び処理時間の規定を満たす場合には、熱処理に続いて行われる酸洗処理を省略し、前記軟化熱処理時に生成した酸化皮膜を被覆させたままでプレス成形用の素材として用いることで、所望の優れた耐焼き付き性を確保することができる。
また、通常どおりに軟化熱処理と酸洗処理を施されたフェライト系ステンレス鋼板にスリット加工やブランキングを施した後、前記した雰囲気、温度及び処理時間の規定を満たす条件の熱処理を行い、表面に酸化皮膜を設けてからプレス成形加工することでも、所望の優れた耐焼き付き性を確保することができる。
なお、本発明に係る耐焼き付き性に優れたフェライト系ステンレス鋼板は、SUH409、SUS430J1LやSUS444など、良好な加工性と例えばバーナー材などの燃焼系部品として使用されるにふさわしい耐熱性とを有するものでありさえすればよいが、その好ましい化学組成は、質量%で、C:0.10%以下(0%を含まない)、Si:3.0%以下(0%を含まない)、Mn:0.05〜3.0%、P:0.05%以下(0%を含まない)、S:0.1%以下(0%を含まない)、Cr:10〜25%、Ni:1.0%以下(0%を含まない)、N:0.10%以下(0%を含まない)を含むとともに、更に、Ti:1.0%以下(0%を含む)、Nb:1.0%以下(0%を含む)、Al:1.0%以下(0%を含む)、Mo:3.0%以下(0%を含む)、Cu:1.5%以下(0%を含む)、V:0.3%以下(0%を含む)、W:1.0%以下(0%を含む)、B:0.005%以下(0%を含む)、REM(希土類元素):0.05%以下(0%を含む)の1種以上を含み、残部がFe及び不純物からなるものである。なお、上記TiからREMまでの元素の全てが0%であっても構わない。
本発明に係るフェライト系ステンレス鋼板は、例えば、所定の板厚まで圧延した熱間圧延鋼帯を冷間圧延によって所定の板厚まで圧延し、その後、鋼板の軟化を目的に熱処理し、次いで酸洗処理を行った後、前記本発明(3)に係る熱処理を施すことによって、容易に得られる。この際、鋼板の表面粗度は、冷間圧延に用いられるワークロールの粗度を適宜調整することによって、本発明に係る範囲内に調整すればよい。勿論、前記本発明(3)に係る熱処理を施す前に、鋼板表面を研削或いは研磨することによって、本発明に係る範囲内にしてもよい。
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。
表1に示す化学組成を有するフェライト系ステンレス鋼を溶製して厚さ200mmのスラブとした後、1200℃に加熱して通常の方法で熱間圧延し、厚さ4mmの熱延鋼板に仕上げた。
次いで、上記のようにして得た厚さ4mmの熱延鋼板に対して、通常の方法で酸洗処理、冷間圧延、軟化熱処理(軟化焼鈍)及び酸洗処理を施し、厚さ1.5mmの製品板とした。
Figure 0004519483
このようにして得られた製品板から、幅が100mmで長さが10mmの試験片を採取して表2に示す条件で熱処理した後、グロー放電質量分析装置を用いた表面の酸化皮膜の組成及び厚さの調査、並びに、粗さ計を用いた表面粗度の調査を行った。
Figure 0004519483
また、図1に示す平板摺動試験設備を用いて、下記の条件で、上述の熱処理した各試験片を供試材とし、SKD11鋼に表面処理層としてTiCを被覆させた、金型に相当する工具1を供試材2で両面から一定荷重3をかけて挟み込み、摩擦係数を測定して耐焼き付き性を評価した。また、酸化皮膜の剥離の有無及び工具1への供試材2(被加工材)の凝着の有無についても調査した。
すなわち、供試材2の工具1との接触面にプレス油(スギムラ化学製のサンプレスS478)を塗布し、30分立て掛けて放置した後に試験に供した。なお、工具1と供試材2の接触面積は片面200mm2の条件、押さえ荷重3は実際のプレス成形でのダイス肩部の面圧に相当する98MPaとした。また、ヒーター4で加熱して、試験温度を実際のプレス成形条件に相当する200℃とした。
上記の条件下で、工具1を1000mm/分の速度で100mm摺動させ、その時の引き抜き荷重を測定することにより、押さえ面圧との関係から摩擦係数を求め、100mmの摺動距離における摩擦係数の最大値を各条件での摩擦係数として評価した。
また、実際のプレス成形における金型への被加工材の凝着挙動を再現するために、一度摺動させた工具1の表面を研磨、脱脂することなく摺動の初期の位置に戻し、供試材2だけを新規のものに取り替えて前記の条件で摺動させて摩擦係数を測定することを合計5回繰り返した。そして、摩擦係数の変化の調査と5回目の摺動試験に用いた供試材2の表面を目視で観察して表面の酸化皮膜の剥離の有無の調査を行うとともに、5回摺動後の工具1の表面を目視で観察して工具1への供試材2の凝着有無を調査した。
なお、酸洗処理のままで熱処理を施さなかったもの(表2の熱処理記号11)についても上述の各調査を実施した。
前記各調査の結果を表3に示す。
なお、表3において摩擦係数は、1回目の摺動試験、3回目の摺動試験及び5回目の摺動試験の際の測定値をそれぞれ、「1回摺動」、「3回摺動」及び「5回摺動」として表記した。
「耐焼き付き性」の「評価」欄における「◎」、「○」及び「×」は、「5回目の摺動試験の際の摩擦係数−1回目の摺動試験の際の摩擦係数」の値がそれぞれ、0.01未満、0.01以上で0.03未満及び0.03以上であることを指し、「◎」及び「○」の場合に耐焼き付き性が良好と評価した。
「酸化皮膜厚さ」欄及び「表面粗度」の欄における「−」は、表面の酸化皮膜が「酸化スケール」状であったため、測定しなかったことを示す。「酸化皮膜剥離有無(5回摺動後)」欄の「有」のうち「#1」を付したものは酸化皮膜が剥離して母材が鏡面化したことを、「#2」を付したものは酸化皮膜がスジ状に剥離したことを示す。なお、「母材」とは前記表1に記載のフェライト系ステンレス鋼からなる厚さ1.5mmの製品板を指す。
Figure 0004519483
表3から、表面に本発明で規定する酸化皮膜を有するフェライト系ステンレス鋼板である試験No.1〜10の場合、摺動時に酸化皮膜が剥離しないため工具とフェライト系ステンレス鋼板の直接接触が回避されて工具に凝着が起こらず、摺動回数を増やしても摩擦係数は増加せずに良好な耐焼き付き性が安定して得られていることがわかる。
図2は、試験No.2の場合の、グロー放電質量分析装置を用いた表面の酸化皮膜の組成及び厚さの調査結果を示す図であるが、O(酸素)とともにCr及びMnが検出されており、表面の酸化皮膜がCr−Mn系酸化物からなっていることが明らかである。
一方、酸洗処理後に熱処理を行わなかった試験No.11は、現在一般的に用いられている表面状態のフェライト系ステンレス鋼板、つまり、表面の酸化皮膜がCr系酸化物だけからなるフェライト系ステンレス鋼板の場合を示すものであるが、5回目の摺動試験に用いた供試材の表面は工具と擦れて鏡面化しており、また、5回摺動後の工具の表面には凝着物の堆積が認められた。そして、摺動回数が増えるにつれて摩擦係数は増加した。
試験No.13及び試験No.17の場合は、酸洗処理後に熱処理を行っているが、フェライト系ステンレス鋼板の表面の酸化皮膜はCr系酸化物だけからなるものであり、上記の試験No.11の場合と同様に、5回目の摺動試験に用いた供試材の表面は工具と擦れて鏡面化しており、また、5回摺動後の工具の表面には凝着物の堆積が認められた。そして、摺動回数が増えるにつれて摩擦係数は増加した。
なお、図3は、試験No.13の場合の、グロー放電質量分析装置を用いた表面の酸化皮膜の組成及び厚さの調査結果を示す図であるが、Mnは検出されず、表面の酸化皮膜がCr系酸化物からなっていることが明らかである。
試験No.14及び試験No.16の場合は、表面の酸化皮膜が、いわゆる「酸化スケール」状であるため、酸化皮膜による保護効果を十分得ることができず、したがって、上記の試験No.11や試験No.13の場合と同様に、5回目の摺動試験に用いた供試材の表面は工具と擦れて鏡面化しており、また、5回摺動後の工具の表面には凝着物の堆積が認められた。そして、摺動回数が増えるにつれて摩擦係数は増加した。
試験No.12の場合は、表面粗度が平均粗さRaで0.01μmと小さく保油性に劣るため、皮膜が剥離して十分な耐焼き付き性が得られていない。
試験No.15の場合は、表面粗度が平均粗さRaで3.20μmと大きく、表面の凸部が工具により潰されスジ状に凝着物が堆積して摩擦係数が上昇した。
本発明のフェライト系ステンレス鋼板は、プレス成形時に表面の酸化皮膜が剥離せず、金型との直接接触による凝着が回避できるため良好な耐焼き付き性を有し、しかも優れた耐熱性を有するため、近年その形状が複雑になっている例えばバーナー材などの燃焼系部品の素材として利用することができる。そして、そのフェライト系ステンレス鋼板は、本発明の方法によって比較的容易に製造することができる。
平板摺動試験設備を用いた耐焼き付き性評価試験を説明する図である。 実施例における試験No.2のグロー放電質量分析装置を用いた表面の酸化皮膜の組成及び厚さの調査結果を示す図である。 実施例における試験No.13のグロー放電質量分析装置を用いた表面の酸化皮膜の組成及び厚さの調査結果を示す図である。
符号の説明
1:工具、
2:供試材、
3:荷重、
4:ヒーター

Claims (3)

  1. 表面に厚さが50〜500nmのCr−Mn系酸化物からなる酸化皮膜を有し、表面粗度が平均粗さRaで0.02〜2.5μmであることを特徴とする耐焼き付き性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
  2. 表面に外側がCr−Mn系酸化物で内側がCr系酸化物からなる厚さが50〜500nmの酸化皮膜を有し、表面粗度が平均粗さRaで0.02〜2.5μmであることを特徴とする耐焼き付き性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
  3. 製造工程に900〜1200℃の温度にある酸素濃度0.5%以上の雰囲気中で下記(a)式を満たす処理時間t(分)での熱処理を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の耐焼き付き性に優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
    t≦3×フェライト系ステンレス鋼板の板厚(mm)・・・(a)
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