JP5093010B2 - 熱間加工用金型 - Google Patents
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ただし、「硬化深さ」とは、表面から、生地の硬さより10%以上硬さが高い位置に至るまでの距離を指す。
(A−1)化学組成
C:0.30%以上0.50%未満
Cは、熱間加工用金型に優れた焼入れ性を付与するとともに、炭化物を形成して生地の焼戻し後の強度、耐摩耗性および軟化抵抗を高める作用を有し、0.30%以上含有させる必要がある。しかしながら、Cの含有量が多くなって、特に0.50%以上になると、析出する炭化物のサイズが極めて大きくなって、生地の靱性が低下してしまう。したがって、Cの含有量を0.30%以上0.50%未満とした。
Siは、脱酸作用を有する。なお、同じ脱酸元素であるAlとは異なって、Siの場合には、粗大な酸化物の生成が抑制されるので、靱性の劣化を抑止することができる。Siには、金型を所定の形状に仕上げるための被削性を改善する作用もある。これらの効果は、Siの含有量が0.10%以上で得られる。しかしながら、Siは鋼の熱伝導率を下げるので、熱間加工中の型表面の軟化を早め、このために、耐摩耗性の低下をきたし、特に、Siの含有量が0.5%を超えると、耐摩耗性の低下が著しくなる。したがって、Siの含有量を0.10〜0.5%とした。
Mnは、焼入れ性を向上させて、金型の生地の靱性を高める作用を有するので、0.30%以上含有させる。しかしながら、Mnの含有量が多くなると、金型を所定の形状に加工する際の被削性の低下をきたし、特に、Mnの含有量が1.0%を超えると、被削性の低下が著しくなる。したがって、Mnの含有量を0.30〜1.0%とした。
Pは、金型の生地の靱性および耐ヒートクラック性を低下させ、特に、その含有量が0.02%を超えると、生地の靱性および耐ヒートクラック性の低下が著しくなって、熱間加工用金型の工具寿命を短くしてしまう。したがって、Pの含有量を0.02%以下とした。なお、Pの含有量は0.01%以下とすることが好ましい。
Sも、金型の生地の靱性および耐ヒートクラック性を低下させて型割れを誘発し、特に、その含有量が0.005%を超えると、生地の靱性および耐ヒートクラック性の低下が著しくなって、熱間加工用金型の工具寿命が短くなってししまう。したがって、Sの含有量を0.005%以下とした。なお、Sの含有量は0.003%以下とすることが好ましい。
Crは、本発明の熱間加工用金型において極めて重要な元素の一つである。すなわち、Crは、焼入れ性を高めて、強度、高温強度、靱性および軟化抵抗といった生地の基本特性に大きな影響を及ぼすとともに、窒化層の特性にも大きな影響を及ぼす。なお、クランクシャフトなど比較的サイズの大きい機械加工部品を成形するための金型は、それ自体のサイズも大きいものが多いので、高い焼入れ性が必要となる。
Moは、生地の焼入れ性を高めるとともに、微細な炭化物を形成して軟化抵抗や高温強度を向上させる作用を有するため、熱間加工用金型として適正な機械性質を得るために必須の元素である。しかしながら、Moは高価な合金原料でありコストが嵩むので、その含有量はむやみに高めてはならず、0.2%以上の範囲で含有させるのがよい。一方、1.5%以上の量のMoを含有させてもコストが嵩むばかりである。このため、Moの含有量を0.2%以上1.5%未満とした。
Vは、本発明の熱間加工用金型において極めて重要な元素の一つである。すなわち、Vは、微細な炭化物を形成して、生地の基本特性である軟化抵抗および高温強度を高める作用を有し、しかも、窒化層の硬さ分布や軟化抵抗にも影響を及ぼす。
本発明においては、脱酸剤として前述の量のSiを含有させるので、Alを積極的に含有させる必要はない。すなわち、Alは、脱酸作用を有するものの、同じ脱酸元素であるSiとは異なって粗大な酸化物を形成し、特に、その含有量が0.03%を超えると、粗大な酸化物の形成が著しくなって、靱性の劣化を招いてしまう。このため、Alの含有量を、0.03%以下とした。なお、Alの含有量の上限は0.02%とすることが好ましい。
Nは、VやTiなどと結合してVやTiなどの窒化物を形成するため、金型の生地の特性に影響を与えるVやTiなどの炭化物の量に影響を与え、特に、Nの含有量が多くなって0.0150%を超えると、VやTiなどの窒化物の量が増える代わりに、VやTiなど炭化物の量が減少して、軟化抵抗や高温強度の低下につながる。したがって、Nの含有量を、0.0150%以下とした。なお、Nの含有量は0.0120%以下とすることが好ましく、少なければ少ないほどよい。
Oは、酸化物を形成し、特に、Oの含有量が多くなって0.0030%を超えると、粗大な酸化物が多く形成されて、熱間加工用金型に割れが生じる。したがって、Oの含有量を、0.0030%以下とした。なお、Oの含有量は0.0020%以下とすることが好ましく、少なければ少ないほどよい。
既に述べたように、本発明の熱間加工用金型においては、原料コストの低減という観点から、高価な合金元素であるNiおよびWは非添加とし、つまり、NiおよびWを積極的に含有量させることなく、Crの含有量を高めることによって焼入れ性を確保する。したがって、本発明においては、不純物としてのNiおよびWの含有量をいずれも0.7%未満とした。なお、不純物としてのNiおよびWの含有量はいずれも0.5%以下とすることが好ましい。
Nbは、微細な炭化物を形成して、軟化抵抗を高める作用を有し、また、結晶粒を微細化して、靱性を向上させる作用も有するので、これらの効果を得るためにNbを含有してもよい。しかしながら、Nbの含有量が過剰になると、粗大な炭化物が形成されるため、鋼の鋳造時に割れが生じるなどの問題が生じて製造歩留まりの低下を招き、特に、0.10%を超えると、製造歩留まりの低下が著しくなる。したがって、Nbの含有量を0.10%以下とした。なお、Nbの含有量は0.06%以下とすることが望ましい。
Tiも、微細な炭化物を形成して、軟化抵抗を高める作用を有し、また、強度を向上させる作用も有するので、これらの効果を得るためにTiを含有してもよい。しかしながら、Tiの含有量が過剰になると、粗大な窒化物や炭化物が生じるため、靱性の低下を招き、特に、0.30%を超えると、靱性の低下が著しくなる。したがって、Tiの含有量を0.30%以下とした。なお、Tiの含有量は0.10%以下とすることが望ましい。
Bは、焼入れ性を高めて強度を向上させる作用を有するので、こうした効果を得るためにBを含有してもよい。しかしながら、Bの含有量が多くなり、特に、0.020%を超えると逆に強度を低下させてしまう。したがって、Bの含有量を0.020%以下とした。なお、Bの含有量は0.010%以下とすることが望ましい。
Caは、脱酸元素として作用し、金型を所定の形状に仕上げるための被削性を向上させるのに適した酸化物を形成する。このため、被削性を向上させるためにCaを含有してもよい。しかしながら、0.0050%を超える量のCaを含有させても上記の効果が飽和してコストが嵩んでしまう。したがって、Caの含有量を0.0050%以下とした。なお、Caの含有量は0.0040%以下とすることが望ましい。
クランクシャフトなど比較的サイズの大きい機械加工部品の成形に使用される熱間加工用金型の場合、生地の引張強度が900MPaを下回ると、工具寿命が短くなることを避けることができない。したがって、本発明の熱間加工用金型について、生地の引張強度が900MPa以上であることとした。さらに優れた工具寿命を得たい場合には、生地の引張強度は1000MPa以上とすることが好ましい。
本発明の熱間加工用金型に、耐ヒートクラック性と耐摩耗性とを具備させて、良好な工具寿命を得るためには、少なくとも被加工材と接する面に硬化深さが200μmを超える窒化層を備えるとともに、前記窒化層の深さが30μm以上の位置での硬さをビッカース硬さで900以下としなければならない。
表1に示す化学組成を有する鋼a〜eを電気炉によって溶解し、インゴットを作製した。なお、上記の鋼a〜eはいずれも、化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼である。なお、これらの鋼のA1変態点は、750〜820℃の範囲にある。
表3に示す化学組成を有する鋼1〜12を電気炉によって溶解し、インゴットを作製した。なお、上記の鋼のうち、鋼1〜5は、化学組成が本発明で規定する範囲内にある本発明例の鋼である。一方、鋼6〜12は、化学組成が本発明で規定する条件から外れた比較例の鋼である。
Claims (5)
- 生地が、C:0.30%以上0.50%未満、Si:0.10〜0.5%、Mn:0.30〜1.0%、P:0.02%以下、S:0.005%以下、Cr:4.0〜8.0%、Mo:0.2%以上1.5%未満、V:0.05〜1.0%、Al:0.03%以下、N:0.0150%以下およびO:0.0030%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、不純物としてのNiおよびWがいずれも0.7%未満の化学組成および900MPa以上の引張強度を有する熱間加工用金型であって、少なくとも被加工材と接する面に硬化深さが200μmを超える窒化層を備えるとともに、前記窒化層の深さが30μm以上の位置での硬さがビッカース硬さで900以下であることを特徴とする熱間加工用金型。
ただし、「硬化深さ」とは、表面から、生地の硬さより10%以上硬さが高い位置に至るまでの距離を指す。 - 生地の化学組成が、質量%で、さらに、Nb:0.10%以下およびTi:0.30%以下のうちの1種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の熱間加工用金型。
- 生地の化学組成が、質量%で、さらに、B:0.020%以下を含有するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の熱間加工用金型。
- 生地の化学組成が、質量%で、さらに、Ca:0.0050%以下を含有するものであることを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の熱間加工用金型。
- 生地の引張強度が1000MPa以上であることを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載の熱間加工用金型。
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