JP3529946B2 - 排ガス伝熱部材用フェライト系ステンレス鋼及び製造方法 - Google Patents
排ガス伝熱部材用フェライト系ステンレス鋼及び製造方法Info
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Description
腐食性,耐酸化性,耐硫酸性に優れ、排ガス伝熱部材と
して好適な低コストのフェライト系ステンレス鋼及びそ
の製造方法に関する。
用される鋼材には、酸化が問題とされる高温用鋼及び硫
酸露点腐食が問題とされる低温用鋼がある。高温用には
シクロマル等の耐熱鋼が使用されており、低温用には低
C,NのSUS410L等の13Cr系ステンレス鋼製
シームレスパイプ等が使用されている。シームレスパイ
プは、溶接部を含んでおらず、構造信頼性に優れている
ものの、製造コストが高い。そのため、コスト面からの
制約を受ける場合、普通鋼のボイラー用鋼管が消耗品的
に使用されている。溶接鋼管を排ガス用途に使用する
と、使用条件によっては硫酸露点腐食の環境に曝される
ため、溶接部の耐粒界腐食性が問題となる。C,Nを固
定するNb,Ti等の安定化元素を所定量以上添加する
ことで溶接部の耐粒界腐食性が改善され、Nb添加によ
って高温強度が上昇することはすでに知られており、特
開平5−1535号公報では、このようにして材料特性
を改善した自動車排気系材料が紹介されている。
等として使用される排ガス伝熱部材にあっては、排ガス
に含まれているSOx が結露した硫酸露点腐食環境に曝
されることから耐硫酸性が要求される。また、低温部に
使用される部材であっても、ボイラー運転中の排ガス温
度や圧力が高いため、耐酸化性に優れていることも必要
である。更に、重油に含まれている微量のVやNaによ
って生じるV2 O5 含有燃焼灰に対する耐高温腐食性も
要求される。本発明は、このような問題を解消すべく案
出されたものであり、パイプに加工するための造管性や
溶接部の耐粒界腐食性に加えて、P及びCuの複合添加
によって耐硫酸性を改善すると共に、パイプ造管後の焼
鈍によって耐酸化性や加工性を向上させ、排ガス伝熱部
材として好適な低コストのフェライト系ステンレス鋼を
提供することを目的とする。
用フェライト系ステンレス鋼は、その目的を達成するた
め、Cr:10〜18重量%,Nb:0.2〜1.0重
量%,Si:1重量%以下,Mn:0.1〜1重量%,
Cu:0.1〜0.4重量%,P:0.04〜0.15
重量%を含み、X=Nb−7×(C+N)−P−0.1
5で定義されるX値が0以上であり、残部が実質的にF
eからなる組成をもち、素地鋼に比較して2倍以上の割
合でMnが濃縮された表層酸化物層をもつことを特徴と
する。このフェライト系ステンレス鋼は、V含有量を
0.1重量%以下に規制することが好ましい。この組成
をもつ鋼板又は鋼管に酸素濃度10体積%以下の雰囲気
中で900〜1100℃に加熱する焼鈍を施すとき、加
工性や耐酸化性が改善される。焼鈍された鋼板又は鋼管
は、酸洗,研磨等の後処理を施すことなく製品とされ
る。
々の特性を調査検討した結果、耐硫酸性を向上させるた
めにはP及びCuの複合添加が有効であること、耐高温
腐食に対してはV含有量を規制する必要があること、ま
た耐酸化性及び耐食性の改善にはパイプ造管後の焼鈍条
件が効いていることを見い出した。本発明は、このよう
な知見に基づき完成されたものであり、排ガス伝熱部材
としての耐硫酸性,耐高温酸化性及び耐粒界腐食性を同
時に満足する。Cuは、本発明ステンレス鋼において最
も重要な特性である耐硫酸性を向上させる上で重要な役
割を果す合金元素である。一般に、ステンレス鋼では酸
等の過酷な腐食環境下で活性溶解による全面腐食が生じ
る。すなわち、−0.4V(vs. SCE)付近のFeが
溶け出す領域で腐食が進行する。しかし、ステンレス鋼
にCuを添加すると、Fe,Cr等の主要合金元素と共
に溶出したCuが活性な箇所で再析出し、腐食が抑制さ
れるものと推察される。
するOと結合してリン酸を生成し、リン酸の腐食抑制作
用によって耐硫酸性を改善するものと推察される。耐硫
酸性に及ぼすPの効果は、安定化元素としてNbの代わ
りにTiを含む鋼では、酸素との結合力がPよりもTi
の方が大きいため、Pの耐硫酸性改善効果が奏せられな
いことからも推察される。JIS G4304等で規定
されている通常のステンレス鋼においては、加工性,靭
性等の面からP含有量が0.04重量%以下に制限され
ている。しかし、本発明に従ったステンレス鋼のよう
に、安定化元素を添加した成分系の材料を6.0mmよ
り薄い板厚で使用する場合には、Pを0.04重量%以
上含有させても靭性劣化の問題はなく、耐食性や機械的
性質を犠牲にすることなく安価に材料を供給することが
可能である。
原因が明らかになっていない。しかし、V以外の合金成
分をほぼ同様な含有量で含む鋼について、Vの有無によ
る腐食性の相違を検討すると、V含有鋼の方が腐食減量
が大きくなる。これは、鋼中に含まれるVが排ガス中の
Vと共同し、耐Vアタック性を低下するものと考えられ
る。したがって、V2 O5 腐食を低減する上では、V含
有量を低く、具体的には0.1重量%以下に規制するこ
とが好ましい。排ガス伝熱部材用にステンレス鋼製パイ
プを使用する場合、一般には造管ままで、意匠が要求さ
れる用途では更に研磨を施して使用される。また、造管
後に加工が厳しい用途で使用される場合、パイプを焼鈍
した後、表面スケールを酸洗除去している。しかし、排
ガス伝熱部材のように使用環境中においても排ガスによ
る加熱を受ける用途では、必ずしも酸洗の必要はない。
このようなことから、本発明は、焼鈍条件を規制するこ
とにより、酸洗や研磨を省略している。
るコスト的なメリットに止まらず、耐酸化性を向上させ
る積極的な効果も発揮する。すなわち、通常の大気中で
焼鈍した場合に比較し、酸素濃度が10体積%以下に低
下した都市ガス,ブタン等の燃焼ガス中で焼鈍すると、
酸素濃度が低下し、大気雰囲気に比較して酸化性の弱い
焼鈍雰囲気となる。この雰囲気下では、Si,Mn等の
易酸化性元素が優先的に酸化され、表層に拡散して酸化
物層となって濃縮する。そのため、その後に酸化雰囲気
に曝されても、更なる酸化の進行が抑制される。Mn
は、素地に対する密着性が良好なスピネル型の酸化物層
を形成し、スケール剥離が問題となる場合に有効であ
る。特に、本発明が対象とする排ガス伝熱部材では、ス
ケール剥離は後工程の電気集塵機等の排ガス処理装置に
目詰り等の問題を発生させる原因となる。スケール剥離
防止効果を発現させるためには、素地とスケール層との
界面に均一なスピネル型の酸化物層を形成させる必要が
ある。このようなことから、Mnは、熱処理によって表
面に濃縮する元素ではあるが、少なくとも0.1重量%
以上の含有量が好ましい。しかし、耐食性も問題となる
排ガス伝熱部材としての用途では、可溶性の介在物であ
るMnSの生成に起因して耐食性が低下するため、過剰
のMn添加は望ましくない。この点、本発明において
は、特定の熱処理を行うことにより少量のMn添加で表
層酸化物層のみMn濃度を高めていることから、耐食性
を損なわずに耐酸化性が改善される。
表層酸化物層を形成するために900〜1100℃の温
度範囲に設定することが必要である。焼鈍温度が900
℃に達しないと、材料の回復,再結晶が不十分なことか
ら加工性が低下するばかりでなく、Crの酸化に起因し
て素地にCr欠乏が生じ、耐食性及び耐酸化性を低下さ
せる。逆に1100℃を超える焼鈍温度では、結晶粒の
粗大化が生じ、材料の靭性が低下するだけでなく、雰囲
気によってはMn等の元素も還元される条件となり、本
来の特性が得られない。本発明は、以上のような新たな
知見に基づいて完成されたものであり、これにより排ガ
ス伝熱部材用に要求される耐硫酸性,耐高温酸化性及び
耐粒界腐食性を満足する材料が得られる。以下に、各合
金成分の含有量等を規制した理由を説明する。
〜15重量% ステンレス鋼の耐食性を確保する上で必須の合金元素で
あり、10重量%以上の含有量でCrの効果が顕著にな
る。本発明が対象とする用途に要求される特性は、12
Cr鋼レベルで十分に発現されるが、更に高いCrレベ
ルの材料においても同様な効果が期待できる。ただし、
Cr含有量が15重量%を超えると、コスト高になるば
かりでなく、Nb添加による高温強度向上作用が低下す
る傾向を示す。したがって、Crの含有量は、10〜1
8重量%,好ましくは10〜15重量%の範囲に設定す
る。
以上の含有量でNbの添加効果が現れ、0.3重量%以
上で顕著になる。Nbは、Tiと同様にCやNを固定す
ることから、耐粒界腐食性を改善する作用も呈する。ま
た、0.3重量%以上のNbを添加しても、Tiと異な
り高周波造管性が劣化しない。しかし、0.8重量%を
超えるNbを添加するとスポット溶接部又はTIG溶接
部において高温割れが生じ易くなり、この傾向は1.0
重量%を超えるNb含有量で顕著になる。したがって、
Nbの含有量は、0.2〜1.0重量%,好ましくは
0.3〜0.8重量%の範囲に設定する。 Si:1重量%以下 製鋼時に脱酸剤として添加される元素であり、Si含有
量が高いと耐酸化性が向上する。しかし、1.0重量%
を超える多量のSiが含まれると、固溶強化によって材
質が硬化し、加工性が低下する。
また熱処理時にスケール剥離防止作用のある酸化物層を
形成することから、Mnを合金成分として積極的に添加
しており、0.1重量%以上の含有量で耐酸化性の改善
がみられる。しかし、1.0重量%を超える過剰のMn
を添加すると、可溶性化合物MnSを生成し、耐食性が
低下する。 Cu:0.1〜0.4重量%,好ましくは0.15〜
0.3重量% 耐硫酸性を向上させ、材料の靭性改善に伴う高周波造管
性を向上させる上で有効な合金元素である。Cu含有量
が0.1〜0.15重量%でも無添加の場合に比較して
耐硫酸性及び高周波造管性の向上がみられるが、本来の
効果を発現させるためには0.15重量%以上のCuを
含有させることが好ましい。しかし、Cuを過剰添加す
ると、コスト高となるばかりでなく、材料を硬質にし、
加工性を低下させる。また、熱間加工性も、Cuの過剰
添加に伴って劣化する。したがって、Cuの含有量は、
0.1〜0.4重量%,好ましくは0.15〜0.3重
量%の範囲に設定する。
は0.04〜0.08重量% 耐硫酸性の改善に有効な合金元素であり、腐食の形態を
孔食等の局部腐食から全面腐食的な形態に変化させるこ
とにより穴開き等の機能性が問題となる排ガス伝熱部材
としての用途に好適な元素である。このような作用・効
果を発現させるためには、0.04重量%以上のPを含
有させることが必要である。しかし、過剰添加は、結晶
粒界におけるPの偏析を促進させ、鋼の耐粒界腐食性を
低下させる。そのため、P含有量の上限を0.15重量
%,好ましくは0.08重量%に規制する。 X=Nb−7×(C+N)−P−0.15≧0 X値は、本発明者等の実験結果として求められ、材料の
溶接部における耐粒界腐食感受性を評価する指標であ
る。C,Nの安定に必要なNb量を算出する類似の式は
従来から知られているが、本発明のように多量のPを含
む鋼においては、Pの影響も無視できない。すなわち、
粒界腐食の発生原因には、従来から指摘されているCr
系炭化物の粒界析出及びPの粒界偏析があるが、本発明
では、適量のNbを添加することによって粒界に優先析
出させ、P偏析に起因する粒界腐食の発生を防止するも
のである。このような観点から、粒界腐食に及ぼすPの
影響を取り込んだX値によってNb量を算出し、耐粒界
腐食性を改善する。
掲げた合金元素の外に、Ti,V,C,S,Ni,M
o,Al,N,O等を次のように規制することが好まし
い。 Ti:0.2重量%以下 一般には、Nbと同様に、Cの固定元素として耐食性や
加工性に有効であるといわれている。しかし、本発明に
従ったステンレス鋼では、Pの添加効果を消失させるこ
とから、Ti添加は好ましくない。ただし、微量のTi
は、Nを固定する上で有効であることから許容される。
この点、Ti含有量は、多くとも0.2重量%以下,好
ましくは0.1重量%以下に規制される。 V:0.1重量%以下 一般には、NbやTiと同様に、Cの固定元素として耐
食性や加工性に対して有効な合金元素として扱われてい
る。しかし、本発明が対象とする重油等の排ガス環境に
曝されるステンレス鋼では、Vアタックを促進する作用
があることからV添加は好ましくない。しかし、Cr原
料等の不純物として混入する場合もあり、V含有を厳し
く制限するとき使用可能な原料に加わる制約が大きくな
る。この点、本発明においては、V含有の許容量を、
0.1重量%,好ましくは0.05重量%に規制する。
減に伴って材料が軟質化し加工性が向上すると共に、炭
化物の生成が少なくなり溶接性,耐粒界腐食性が向上す
る。また、Nb,Ti添加鋼においては、C含有量の低
減によりNb,Tiの消費が抑えられ、高温強度の向上
及びコストの低減が図られる。このようなことから、C
含有量を0.03重量%以下にすることが好ましい。 N:0.03重量%以下 Cと同様に不可避的不純物として鋼中に含まれる元素で
あり、N含有量が高いと、材料が硬質になり加工性が低
下すると共に、窒化物としてNb等の固定元素を多量に
消費する。この点から、N含有量の上限を0.03重量
%に設定することが好ましい。
に起因する。したがって、耐粒界腐食を防止するために
は、V含有量の低減が最も重要であるが、本発明鋼のよ
うに固定元素を添加する場合には、Cと同様にNも結合
して固定元素が消費される。そのため、C+Nの総和で
C及びNをコントロールすることが必要である。また、
高温強度の向上には、固溶Nb量の増加、換言すれば
C,N量の低下が有効である。現在の精錬技術では、工
業レベルでC+Nを0.005重量%未満にすることは
不可能に近い。しかし、C+Nが0.04重量%を超え
ると、粒界腐食感受性が増加し、高温強度が低下する。
したがって、0.005〜0.04重量%の範囲にC+
N量を設定することが好ましい。 S:0.03重量%以下 不可避的不純物として鋼中に含まれる元素であるが、S
含有量が高いと熱間加工性や耐食性が劣化する。そのた
め、S含有量の上限を0.03重量%に規定する。 Ni:0.6重量%以下 フェライト系ステンレス鋼の靭性改善に有効な合金元素
であるが、過剰のNi含有は鋼材コストを上昇させる原
因となる。本発明においては、通常のフェライト系ステ
ンレス鋼で規定されている0.6重量%以下にNi含有
量を規定した。
耐食性及び高温強度を改善する作用を呈する。しかし、
過剰添加は鋼材コストを上昇させることから、Moを添
加する場合には含有量を1.5重量%以下に設定する。 Al:0.5重量%以下 Siと同様に製鋼段階で脱酸剤として添加される元素で
あるが、酸素との反応性が極めて高いため、鋼中に残存
したAlは、高周波造管時にTiと同様な酸化物を形成
し、ピンホールを発生させる原因となる。そのため、A
l含有量は、上限を0.5重量%に設定することが好ま
しい。 O:0.02重量%以下 C,Nと同様に不可避的不純物として鋼中に混入する元
素であり、O含有量が高いと加工性が著しく阻害され
る。また、高周波造管時にTi,Al等と結合して酸化
物を形成し、ピンホールを発生させる原因となる。その
ため、O含有量は、0.02重量%以下に規制する。
鋼を実験室で溶製し、熱間圧延によって板厚4.5mm
の熱延板を製造した。熱延板を板厚2mmまで冷間圧延
し、900〜1050℃で仕上げ焼鈍を施し、供試材を
作製した。なお、表1について、Aグループは本発明に
従ったステンレス鋼であり、何れも安定化元素としてN
bがX[=Nb−7×(C+N)−P−0.15]≧0
の条件下で添加されている。Bグループは比較鋼であ
る。B1は、Nb,Cu,Pの含有量が本発明で規定し
た範囲を満足するものの、X値が本発明で規定した範囲
を外れる。B2はCuを含んでいない。B3は、Cuを
含んでいない他に、P含有量が低い。B4は、本発明で
規定している値より高いTiを含むと共に、X値が本発
明で規定した範囲を外れる。B5は、Vが本発明で規定
した範囲を外れる。B6は、SUH409Lに相当する
が、B4と同様、TiとX値が本発明で規定した範囲を
外れると共に、P,Cu,Nbも規定範囲を外れる。B
7は、SUS410Lに相当し、Nb,Cu,Pの含有
量及びX値が本発明で規定した範囲を満足していない。
B8は、P含有量が本発明で規定した範囲を超え、Cu
を含んでおらず、またX値が本発明で規定した範囲を外
れる。なお、A1,B6,B7のステンレス鋼は、実ラ
インを使用してほぼ同一の条件下で製造したものを用意
した。
た。 耐硫酸性試験:70℃に保持した50%硫酸水溶液中に
試験片を2時間浸漬し、浸漬前後の重量変化を測定し
た。 電気化学試験:6000ppmのCl- 及び60000
ppmのSO4 2- を含む溶液を塩酸でpH3に調整した
温度80℃の水溶液を使用し、活性溶解の目安としてア
ノード分極曲線の極大電流密度を測定した。 硫酸−硫酸銅試験:溶接芯線を使用することなくTIG
溶接した試験片を500℃×10時間で熱処理した後、
JIS G0575に準じて調整した硫酸−硫酸銅溶液
中に60℃で16時間浸漬する試験を行い、曲げ及び断
面組織観察により粒界腐食発生の有無を調査した。 V2 O5 腐食試験:試験片表面にV2 O5 灰を塗布し、
900℃に3時間加熱し、加熱前後の腐食減量を測定し
た。
較鋼においてもCuを含有する鋼B1,B4,B5では
耐硫酸性が満足される。電気化学試験においてはPの効
果が認められ、Pの含有量が高い鋼B8は極大電流密度
が低かった。Pが本発明で規定する量以下の鋼B3,B
6,B7或いはTiを含有する鋼B4,B6では極大電
流密度が高かった。これに対し、Cu及びPを複合添加
した本発明ステンレス鋼では、両試験とも他の比較鋼に
比べて良好な耐食性が示された。V2 O5 腐食について
みると、Vを含む比較鋼B5は、A1及び既存のB6,
B7と比較しても腐食減量が大きくなっている。これ
は、鋼中に含まれているVが悪影響を及ぼしたことを示
すものである。また、粒界腐食発生の有無を調査した硫
酸−硫酸銅試験についてみると、X値が0を上回る本発
明鋼では粒界腐食の発生が検出されなかったが、0を下
回る比較鋼B1及びB6〜8では粒界腐食が発生してい
た。
製造した鋼管及び造管後に種々の焼鈍温度で焼鈍した鋼
管について、素材部,溶接部の耐硫酸試験及び酸化試験
を行った。酸化試験は、酸化性雰囲気中で900℃で1
00時間連続加熱し、異常酸化発生の有無を調査した。
試験結果を、GDSで求めた表面酸化物層におけるMn
の濃縮割合と併せて表3に示す。表3にみられるよう
に、X値を調整した本発明鋼A1では、溶接部において
も母材部と同様の耐硫酸性を示していた。焼鈍後の鋼管
は、造管ままの鋼管に比較すると耐硫酸性に若干劣って
いるが、耐酸化性において著しい改善効果が認められ
た。特にMnの酸化物層の濃縮割合が2以上になる90
0〜1050℃で焼鈍した材料は、異常酸化が全く発生
しなかった。耐硫酸性についても、900〜1050℃
で焼鈍した鋼管は、870℃で焼鈍した鋼管に比較して
腐食減量の増加度合いも少なくなっていた。
レス鋼を本発明に従って焼鈍した鋼A1について、熱処
理後の表面状態をGDSで分析した。分析結果を図1に
示す。また、比較のためSUS430J1Lを熱処理し
た後、表面状態を分析した結果を図2に示す。この分析
では機器の特性から酸素のプロファイルは得られない
が、Feの発光強度がマトリックスの1/2になる厚み
が酸化物層の厚みに相当する。また、GDSでは正確な
皮膜厚みが判らないが、SiO2 の基準サンプルから求
めた相対厚みから推定すると、酸化物層の厚みは数十〜
数百nmであった。図1と図2との対比から明らかなよ
うに、本発明鋼A1ではMnの濃縮した酸化物層が表層
に形成されているのに対し、SUS430J1Lでは酸
化層が薄く且つMnの濃化も表面に限られていることが
判る。この表面状態の相違、すなわちMnが濃化した酸
化物層が厚く形成されていることが、表3に示すように
耐高温酸化性の改善に有効に作用する原因であると考え
られる。実際に、表2に示した950℃焼鈍材から空気
予熱器を製造し、加熱炉中で6か月間使用した後で酸化
及び腐食を調査したところ、侵食がほとんど観察されな
かった。他方、造管ままの鋼管では、侵食が若干発生し
ていた。
レス鋼においては、Nb,C,N,P,Cu,Mnの含
有量を規制することにより、耐粒界腐食性,高周波造管
性及び高温強度特性に加え、耐硫酸性及び高温酸化特性
も改善されている。このフェライト系ステンレス鋼は、
優れた高周波造管特性のため造管工程での歩留りも高
く、焼鈍後に酸洗を施す必要がないことから比較的安価
に製造できる。更に、溶接部の耐粒界腐食性が優れてい
るため、溶接施工のままで排ガス伝熱部材等の過酷な腐
食環境に曝される用途に適した材料となる。また、優れ
た耐硫酸性を活用し、各種煙道,煙突等の構造材料とし
ても使用される。
の表面層の元素濃度分布
た後の表面層の元素濃度分布
Claims (3)
- 【請求項1】 Cr:10〜18重量%,Nb:0.2
〜1.0重量%,Si:1重量%以下,Mn:0.1〜
1重量%,Cu:0.1〜0.4重量%,P:0.04
〜0.15重量%を含み、X=Nb−7×(C+N)−
P−0.15で定義されるX値が0以上であり、残部が
実質的にFeからなる組成をもち、素地鋼に比較して2
倍以上の割合でMnが濃縮された表層酸化物層をもつ排
ガス伝熱部材用フェライト系ステンレス鋼。 - 【請求項2】 V含有量を0.1重量%以下に規制した
請求項1記載の排ガス伝熱部材用フェライト系ステンレ
ス鋼。 - 【請求項3】 請求項1又は2記載の組成をもつ鋼板又
は鋼管に、酸素濃度10体積%以下の雰囲気中で900
〜1100℃に加熱する焼鈍を施すことを特徴とする排
ガス伝熱部材用フェライト系ステンレス鋼の製造方法。
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JP18543296A JP3529946B2 (ja) | 1996-06-26 | 1996-06-26 | 排ガス伝熱部材用フェライト系ステンレス鋼及び製造方法 |
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