JP4516776B2 - 有機無機ハイブリッドガラス状物質とその製造方法 - Google Patents

有機無機ハイブリッドガラス状物質とその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ゾルゲル法に用いられる原料を出発原料とする有機無機ハイブリッドガラス状物質とその製造方法に関する。
600℃以下で軟化する材料としては、高分子材料や低融点ガラスなどが有名であり、古くから封着・封止材料、パッシベーションガラス、釉薬など、多くのところで用いられてきた。高分子材料と低融点ガラスでは、その諸物性が異なるので、その使用できる環境に応じて使い分けられてきた。一般的には、耐熱性や気密性能が優先される場合にはガラスが、耐熱性や気密性能以外の特性が優先される分野では高分子材料に代表される有機材料が使われてきた。しかし、昨今の技術進歩に伴い、これまで要求されなかった特性も着目され、その特性をもった材料の開発が期待されている。
このため、耐熱性や気密性能を増能させた高分子材料や、軟化領域を低温化させたガラスいわゆる低融点ガラスの開発が積極的になされている。特に、耐熱性や気密性能が要求される電子材料市場において、PbO-SiO2-B2O3系あるいはPbO-P2O5-SnF2系ガラスなどに代表される低融点ガラスは、電子部品の封着、被覆などの分野で不可欠の材料となっている。また、低融点ガラスは高温溶融ガラスに比べ、その成形加工に要するエネルギーひいてはコストを抑えられるため、省エネルギーに対する昨今の社会的要請とも合致している。さらに、光機能性能の有機物を破壊しない温度で溶融することが可能ならば、光機能性有機物含有(非線形)光学材料のホストとして光スイッチなどの光情報通信デバイスなどへの応用が期待される。このように、一般的な溶融ガラスの特徴である耐熱性や気密性能を有し、かつ高分子材料のように種々の特性を得やすい材料は多くの分野で要望され、特に低融点ガラスにその期待が集まっている。さらに、有機無機ハイブリッドガラスも低融点ガラスの一つとして着目されている。
低融点ガラスでは、例えば、Sn−Pb−P−F−O系ガラス(例えば、非特許文献1参照)に代表されるTickガラスが有名であり、100℃前後にガラス転移点を持ち、しかも優れた耐水性を示すので、一部の市場では使われてきている。しかしながら、この低融点ガラスはその主要構成成分に鉛を含むので、昨今の環境保護の流れから代替材料に置き換える必要性がでてきている。さらには、Tickガラスに代表される低融点ガラスに対する要求特性も大きく変化していると同時に、その要望も多様化している。
一般的なガラスの製造方法としては、溶融法と低温合成法が知られている。溶融法はガラス原料を直接加熱することにより溶融してガラス化させる方法で、多くのガラスがこの方法で製造されており、低融点ガラスもこの方法で製造されている。しかし、低融点ガラスの場合、融点を下げるために、鉛やアルカリ、ビスマスなどの含有を必要とする等、構成できるガラス組成には多くの制限がある。
一方、非晶質バルクの低温合成法としては、ゾルゲル法、液相反応法及び無水酸塩基反応法が考えられている。ゾルゲル法は金属アルコキシドなどを加水分解−重縮合し、500℃を超える温度(例えば、非特許文献2参照)、通常は700〜1600℃で熱処理することにより、バルク体を得ることができる。しかし、ゾルゲル法で作製したバルク体を実用材料としてみた場合、原料溶液の調製時に導入するアルコールなど有機物の分解・燃焼、又は有機物の分解ガス若しくは水の加熱過程における蒸発放出などのために多孔質となることが多く、耐熱性や気密性能には問題があった。このように、ゾルゲル法によるバルク製造ではまだ多くの問題が残っており、特に低融点ガラスをゾルゲル法で生産することはなされていない。
さらに、液相反応法は収率が低いために生産性が低いという問題の他、反応系にフッ酸などを用いることや薄膜合成が限度とされていることなどから、現実的にバルク体を合成する手法としては不可能に近い状態にある。
無水酸塩基反応法は、近年開発された手法であり、低融点ガラスの一つである有機無機ハイブリッドガラスの製作も可能(例えば、非特許文献3参照)であるが、まだ開発途上であり、すべての低融点ガラスが製作できているわけではない。
したがって、多くの低融点ガラスの製造は、低温合成法ではなく、溶融法により行われてきた。このため、ガラス原料を溶融する都合上からそのガラス組成は制限され、生産できる低融点ガラスとなると、その種類は極めて限定されていた。
なお、現時点では耐熱性や気密性能から、低融点ガラスが材料として有力であり、低融点ガラスに代表される形で要求物性が出されることが多い。しかし、その材料は低融点ガラスにこだわるものではなく、要求物性が合致すれば、ガラス以外の低融点あるいは低軟化点物質で大きな問題はない。
公知技術をみれば、ゾルゲル法による石英ガラス繊維の製造方法(例えば、特許文献1参照)が、ゾルゲル法による酸化チタン繊維の製造方法(例えば、特許文献2参照)が、さらにはゾルゲル法による半導体ドープマトリックスの製造方法(例えば、特許文献3参照)が、溶融法によるP25−TeO2−ZnF2系低融点ガラス(例えば、特許文献4参照)が、さらには有機−無機ハイブリッドガラス用前駆体組成物及びそれよりなるハイブリッドガラスが開示されている(例えば、特許文献5参照)。
特開昭62-297236号公報 特開昭62-223323号公報 特開平1-183438号公報 特開平7-126035号公報 特開平2-137737号公報 P.A.Tick, Physics and Chemistry of Glasses, Vol. 25 No. 6, pp. 149-154(1984). 神谷寛一、作花済夫、田代憲子,窯業協会誌,pp. 614−618,84(1976). 高橋雅英、新居田治樹、横尾俊信,New Glass, pp. 8-13,17(2002).
多くの低軟化点材料、特に低融点ガラスの製造は、溶融法により行われてきた。このため、そのガラス組成には多くの制限があり、ガラス原料を溶融する都合上、生産できる低融点ガラスは極めて限られていた。
一方、低温合成法のゾルゲル法で製造した場合、緻密化のために500℃以上の処理温度が必要となるが、その温度で処理すると低融点ガラスとはならないので、結果として耐熱性や気密性能の良好な低融点ガラスを得ることはできなかった。特に、電子材料分野では、厳しい耐熱性や気密性能と低融点化に対応する低融点ガラスはなかった。さらに、耐熱性や気密性能を満足するガラス以外の低融点材料もこれまで見出されていない。
特開昭62-297236号公報、特開昭62-223323号公報及び特開平1-183438号公報で開示された方法は、高温溶融でのみ対応可能であった材料生産を低温でも可能としたという功績はあるが、低融点ガラスを製造することはできない。また、ゾルゲル処理後には、500℃以上での処理も必要である。一方、特開平7-126035号公報の方法では、転移点が3百数十℃のガラスを作製できることが開示されている。しかし、それ以下の転移点をもつガラスを鉛やビスマスなどを始めとする低融点化材料なしで製作した例はこれまでなかった。さらには、特開平2-137737号公報の方法でもどこまでバルク状のガラスが低融点化されているか不明である。
すなわち、従来は、耐熱性や気密性能と低融点特性を同時に満たし、さらには着色又は蛍光発色するガラス状物質はなかった。また、ガラス以外の材料でもこのような特性を満たすものはなかった。
さらに、本発明者らは、上記の問題を解決する有機無機ハイブリッドガラス状物質を開発し、特許出願した(例えば、特願2003-69327号)。しかし、ゾルゲル法で使われる材料を出発原料として有機無機ハイブリッドガラス状物質を製造することは同様であるが、出発原料の混合工程後にゲル体を経る工程が必須であり、そのゲル化工程では1〜3日程度を必要とするという問題があった。従来のゾルゲル法では、原料の混合後、1〜3日かけてゲル化した生成物をそのまま焼結していたため、低融点材料を得ることはできなかった。また、その製造工程の変更により、低融点材料を得ることができるようになったが、この場合でもゲル化工程が必要という問題点を有していた。
本発明は、金属アルコキシド及び2価金属M(Mg、Ca、Sr、Ba、Snの中から選ばれた少なくとも1種)からなる化合物を原料として40℃以上100℃以下の温度でかつ30分以上10時間以下で行う加熱反応工程30℃以上400℃以下かつ溶融温度以上の温度で行う溶融工程、溶融工程後の融液が2層に分離する場合、その上澄み液を廃棄し、下側の融液を抽出する抽出工程、30℃以上400℃以下かつ熱分解温度以下の温度で行う熟成工程を経て、MO−RSiO3/2又はMO−RSiO(R:有機官能基、M:2価金属)で示される物質を少なくとも1種類以上含有する物質を生成させることを特徴とする有機無機ハイブリッドガラス状物質の製造方法である。
また、RSiO(4−n)/2(R:有機官能基、n:1〜3)で示される物質を含有する物質を生成させる上記の有機無機ハイブリッドガラス状物質の製造方法である。
また、Nb、Zr、Tiのうち少なくともいずれか一つの酸化物を原料に含有させる上記の有機無機ハイブリッドガラス状物質の製造方法である。
また、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znのうち少なくともいずれか一つの遷移金属化合物を原料に含有させる上記の有機無機ハイブリッドガラス状物質の製造方法である。
また、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybのうち少なくともいずれか一つの希土類金属化合物を原料に含有させる上記の有機無機ハイブリッドガラス状物質の製造方法である。
また、有機色素を原料に含有させる上記の有機無機ハイブリッドガラス状物質の製造方法である。
さらに、上記の方法で製造された有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
さらにまた、RnSiO(4-n)/2(R:有機官能基、n:1〜3)で示される物質を少なくとも1種類以上含有し、かつ溶融する性質を有する上記の有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
さらにまた、MO−RSiO3/2又はMO−R2SiO(R:有機官能基、M:2価金属)で示される物質を含有し、かつMがMg、Ca、Sr、Ba、Snの中から選ばれた少なくとも1種であり、さらに溶融する性質を有する上記の有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
さらにまた、Nb、Zr、Tiのうち少なくともいずれか一つの酸化物を含有している上記の有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
さらにまた、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znのうち少なくともいずれか一つの遷移金属イオンを含有している上記の有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
さらにまた、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tmのうち少なくともいずれか一つの希土類金属イオンを含有している上記の有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
さらにまた、有機色素を含有している上記の有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
さらにまた、熟成を行うことにより軟化温度が変化する上記の有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
さらにまた、有機色素による染み出しが1ヶ月間認められない気密性を有す上記の有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
さらにまた、フェニル基を含んでいる上記の有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
本発明によれば、これまで製作することが極めて難しいとされてきた耐熱性や気密性能と低融点特性を満たし、かつ従来よりも極めて短期間で製作することができる有機無機ハイブリッドガラス状物質を得ることができる。
本発明は、金属アルコキシド及び2価金属M(Mg、Ca、Sr、Ba、Snの中から選ばれた少なくとも1種)からなる化合物を原料として40℃以上100℃以下の温度でかつ30分以上10時間以下で行う加熱反応工程30℃以上400℃以下かつ溶融温度以上の温度で行う溶融工程、溶融工程後の融液が2層に分離する場合、その上澄み液を廃棄し、下側の融液を抽出する抽出工程、30℃以上400℃以下かつ熱分解温度以下の温度で行う熟成工程を経て、MO−RSiO3/2又はMO−RSiO(R:有機官能基、M:2価金属)で示される物質を少なくとも1種類以上含有する物質を生成させることを特徴とする有機無機ハイブリッドガラス状物質の製造方法である。
本発明の有機無機ハイブリッドガラス状物質を製作する手法は、従来のゾルゲル法と称されている方法と、さらには本発明者らが出願している溶融及び熟成を含む新しい手法(例えば、特願2003-69327号)とも基本的に異なる。
従来のゾルゲル法では、数種類のゾルゲル原料を混合した後、室温で数時間撹拌、その後室温で2日〜1週間静置し、湿潤ゲルを得る。その後、室温〜約100℃で数時間〜3日間乾燥させて乾燥ゲルとし、必要であれば粉砕・洗浄・濾過した後、低くとも400℃以上で通常は800℃以上で焼結させてバルク体とする。繊維状成形体を作製する場合、高粘度ゾルを曳糸し、繊維状湿潤ゲルを得る、その後、乾燥、焼結過程を得て成形体を得る。膜の場合には、ゾル状態で薄膜状とし、乾燥・焼結させて薄膜を得る。
また、本発明者らが出願している新しい方法では、数種類のゾルゲル原料を混合した後、室温で1〜3日間撹拌してゲル化させ、このゲルを乾燥した後、溶融工程及び熟成工程を経て、所定のガラス状物質を得る。この場合、焼結という工程を必要としないので、低くとも400℃以上通常は800℃以上という高温処理を必要としない。この方法は、乾燥ゲルの溶融性と熟成によるガラス変化(ガラス安定化)というこれまで全く見られなかった新しい特性に着目することにより、従来のゾルゲル法では得られなかった新しい材料を得ることができる。すなわち、従来のゾルゲル法ではバルク状の乾燥ゲルあるいは薄膜状のガラスを得ることはできるが、バルク状のガラスあるいは厚膜を得ることは難しい。
これに対し、本発明ではゾルゲル原料の混合を行った後に加熱反応工程を入れることにより、そのままゲル化させることなく、直接溶融することができる。この加熱反応工程は、混合後のゾルゲル原料を適切な条件下で反応・促進させることにより、溶融化させる準備段階に位置するものであり、本発明に独特の工程である。ゲル化させない点及びその融液を直接溶融することが従来のゾルゲル法と、あるいは乾燥ゾルを熟成して有機無機ハイブリッドガラス状物質を得る新しい手法とも大きく異なる。また、この加熱反応工程に要する時間は、30分〜5時間程度であるので、ゲル化に1〜3日を要していた従来のゾルゲル法及び前述の新しい手法とはその処理時間も大きく異なるという特徴を持つ。さらには、ほぼ同様のゾルゲル原料を用いた場合でも、より低軟化温度の有機無機ハイブリッドガラス状物質を得ることができるという大きな特徴を有す。なお、本発明の手法ではこの加熱反応工程後、すぐに溶融工程に入っても良いし、一度冷却してから溶融工程に入っても良い。さらには、適切な条件下で行うことにより、混合工程から引き続き加熱反応工程にすることも可能である。
さらには、前記の溶融工程の後に、熟成工程を有することも本発明の特徴である。しかし、本発明でいう熟成は、従来のゾルゲル法で言われている熟成とは全く別のものである。すなわち、熟成は2日〜1週間かけて湿潤ゲルを得るための静置を指すのではなく、溶融後の有機無機ハイブリッドガラスを構造変化せしめてガラス状物質を安定化させる作業を指す。従来から行われてきたゾルゲル法では、前記の溶融工程がなく、乾燥ゲルをそのまま焼結するため、その後の熟成工程もない。この熟成工程は極めて重要であり、溶融性を有するガラス状物質でもその後の熟成工程を経なければ、所望の有機無機ハイブリッドガラス状物質を得ることはできない。単に溶融しただけでは系内に反応活性な水酸基(−OH)が残留しており、これを冷やし固めたとしても、その残留した水酸基(−OH)が加水分解−脱水縮合を起こして、結果的にクラックが生じたり、破壊したりして、良好な有機無機ハイブリッドガラス状物質を得ることができない。このため、この反応活性な水酸基(−OH)を熟成によりガラス状物質内で安定化させることが極めて重要な工程となる。この点が本発明と従来のゾルゲル法で大きく異なる点である。
出発原料は金属アルコキシド、金属アセチルアセトナート、金属カルボン酸、金属水酸化物、又は金属ハロゲン化物であり、先ずゾルゲル法によりゾルを製作する。この出発原料は、上記以外でも、ゾルゲル法で使われているものであれば問題はなく、上記の出発原料に限定されない。但し、このゾルの作製は重要な最初の工程であり、フェニル基を有することが好ましい。
混合工程では、触媒を用いることが好ましい。これらの触媒については、従来のゾルゲル法で使われてきたアルカリ触媒及び酸触媒で問題はないが、アルカリ触媒としてはアンモニアが、酸触媒としては塩酸、酢酸がより好ましい。
原料の混合工程後、40℃以上100℃以下の温度でかつ30分以上10時間以下の加熱反応工程で処理する。この温度域以外では、その構造中に上述した有機官能基Rを持つ金属ユニットを適切に含有させることができないため、ガラス溶融のできる有機無機ハイブリッドガラス状物質を得ることは極めて難しい。なお、加熱反応工程はその前後の条件を適切に選択することにより、混合工程及び溶融工程と連続させることも可能である。
上記の原料は、ゾルゲル法で使用されるものであるが、この加熱反応工程を入れることにより、従来1〜3日かけてゲル化していた工程を割愛することができる。40℃以上100℃以下の温度でかつ30分以上10時間以下での加熱処理を行うことが好ましい。この加熱条件以外では、その構造中に有機官能基Rを持つ金属ユニット、すなわち、MO−RSiO3/2又はMO−RSiO(R:有機官能基、M:2価金属)で示される物質を効率的に含有させることは難しくなる。なお、RSiO(4−n)/2(R:有機官能基、n:1〜3)で示される物質を含有する物質を生成させることも有る。これらのガラス系は極めて重要であり、これのガラス系の物質が存在することにより、耐熱性及び気密性能と低融点化という両立させるのに極めて難しい特性を同時に満足させることができる。
溶融工程に入る前、すなわち、出発原料の混合工程と加熱による溶融工程との間に、加熱反応工程を有する。この加熱反応工程は40℃以上100℃以下の温度で行われることが好ましい。
加熱反応工程の上限温度は沸点が100℃を越すアルコール、例えば118℃の1−ブタノールを用いる場合では100℃以下で行うことが好ましいが、沸点が100℃以下のアルコールでは沸点も考慮する方がさらに好ましい。例えば、エタノールを用いる場合は、その沸点の80℃以下とした方が良い結果となる傾向にある。これは、沸点を越えると、アルコールが急激に蒸発するので、アルコール量や状態変化から均一反応が達成されにくくなるためであると考えられる。なお、加熱反応工程は開放系で行っても良いし、還流条件下で行っても良い。
加熱による溶融工程は30℃以上400℃以下の温度で処理することが好ましい。30℃よりも低い温度では、実質上溶融できない。また、400℃を超えると、網目を形成する金属元素と結合する有機基が燃焼するために所望の有機無機ハイブリッドガラス状物質を得られないばかりか、破砕したり、気泡を生じて不透明になったりする。望ましくは、100℃以上300℃以下である。
溶融工程後の融液が2層に分離する場合、その上澄み液を廃棄し、下側の融液を抽出して熟成させることが好ましい。本発明の方法は溶融させることに大きな特徴を有するが、溶融工程後の融液が2層に分離した状態となることが多く発生する。2層の上方にあるいわゆる上澄液は廃棄し、下側の融液を抽出して熟成させた方が物性的にも安定した有機無機ハイブリッドガラス状物質を得ることができる。この方法をとることにより、一般的には軟化温度も低い有機無機ハイブリッドガラス状物質が得られる。2層に分離した場合でもそのまま熟成することは可能であるが、その場合には光透過率などの光学的特性もやや低い傾向をもつことになる。
熟成工程では30℃以上400℃以下の温度で処理することが好ましい。30℃よりも低い温度では、実質上熟成できない。400℃を超えると、熱分解することがあり、安定したガラス状物質を得ることは難しくなる。望ましくは、100℃以上300℃以下である。さらに、この熟成温度は、溶融下限温度よりも低い温度ではその効果が極めて小さくなる。一般的には、溶融下限温度〜(溶融下限温度+150℃)程度が望ましい。さらに、熟成に要する時間は5分以上必要である。熟成時間は、その処理量、処理温度及び反応活性な水酸基(−OH)の許容残留量により異なるが、一般的には5分未満では満足できるレベルに到達することは極めて難しい。また、長時間では生産性が下がってくるので、望ましくは10分以上1週間以内である。なお、熟成する場合において、40℃〜230℃の温度かつ0.1Torr以下の圧力下で行われる第1熟成と大気圧下70℃〜350℃で行われる第2熟成の2つの工程と分けることも有効である。
なお、加熱による溶融工程若しくは熟成工程において、不活性雰囲気下で行ったり、減圧下で行ったりすることにより時間を短縮できる傾向にあり、有効である。また、マイクロ波や超音波加熱は時間短縮に対しても有効であるが、強度や硬度等の機械的特性や誘電率を始めとする電気的特性の改善に対しても有効であることが多い。
加熱反応工程、溶融工程及び熟成工程を経ることにより、安定化した有機無機ハイブリッドガラス状物質を得ることができる。従来から行われてきたゾルゲル法では、前記の溶融工程がないため、当然ながらその後の熟成工程もない。また、加熱反応工程と溶融工程により、ゲル体を経ない場合においても、有機無機ハイブリッドガラス状物質を得ることはできる。しかし、その後の熟成工程を経ることにより、より安定した有機無機ハイブリッドガラス状物質を得ることができるので、熟成工程を入れることが好ましい。
なお、有機官能基Rは、アリール基やアルキル基が代表的である。アリール基としては、フェニル基、ピリジル基、トリル基、キシリル基などがあり、特に好ましいのはフェニル基である。当然ながら、有機官能基は上述のアルキル基やアリール基に限定されるものではない。また、アルキル基としては、直鎖型でも分岐型でもさらには環状型でも良い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基(n−、i−)、ブチル基(n−、i−、s−、t−)、ペンチル基、ヘキシル基(炭素数:1〜20)などが挙げられ、特に好ましいのはメチル基とエチル基である。
さらに、上記の有機無機ハイブリッドガラス状物質の物性や着色を変えることも可能となる。例えば、Nb、Zr、Tiなどの酸化物を原料として導入することにより耐水性などのガラス物性を向上させた有機無機ハイブリッドガラス状物質を製造することもできるし、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znなどの遷移金属化合物を導入して、種々の物性を変化させた有機無機ハイブリッドガラス状物質を製造することもできる。さらには、希土類(Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybなど)の化合物や有機色素を原料に含有させ、着色又は蛍光発色する有機無機ハイブリッドガラス状物質を製造することもできる。
また、上記の方法で製造された有機無機ハイブリッドガラス状物質である。すなわち、従来のゾルゲル法で使われている原料を出発原料とし、出発原料の混合工程と溶融工程との間に加熱反応工程を有し、さらに溶融工程後に熟成工程を有する製造方法によって得られた有機無機ハイブリッドガラス状物質である。この有機無機ハイブリッドガラス状物質は、RnSiO(4-n)/2(R:有機官能基、n:1〜3)で示される物質を少なくとも1種類以上含有し、かつ溶融する性質を有することが好ましい。RnSiO(4-n)/2(R:有機官能基、n:1〜3)で示される物質を少なくとも1種類以上含有し、かつ溶融する性質を有することにより、耐熱性及び気密性能と低融点化という両立させることができるからである。
MO−RSiO3/2又はMO−R2SiO(R:有機官能基、M:2価金属)で示される物質を含有し、かつMがMg、Ca、Sr、Ba、Snの中から選ばれた少なくとも1種であり、さらに溶融する性質を有する有機無機ハイブリッドガラス状物質であることが好ましい。MO−RSiO3/2若しくはMO−R2SiOで示される物質を含有し、溶融する性質を有することが重要である。このようなガラス系の物質が存在することにより、耐熱性及び気密性能と低融点化という両立させるのに極めて難しい特性を同時に満足させることができるからである。ここで、2価金属MはMg、Ca、Sr、Ba、Snの中から選ばれた少なくとも1種であることが好ましく、特にSnが望ましい。
また、従来の物性と異なった有機無機ハイブリッドガラス物質、あるいは着色した有機無機ハイブリッドガラス物質であることが好ましい。例えば、Nb、Zr、Tiなどが酸化物として導入されて耐水性などのガラス物性を向上させた有機無機ハイブリッドガラス状物質、及びV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znなどの遷移金属イオンが導入された種々の物性を変化させた有機無機ハイブリッドガラス状物質、さらには希土類イオン(Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm等)や有機色素を含有させ、着色又は蛍光発色した有機無機ハイブリッドガラス状物質であることが好ましい。
また、本発明の有機無機ハイブリッドガラス状物質は当然ながら全て対象となるが、その一部又はすべてに不規則網目構造をもつ有機無機ハイブリッドガラス状物質であることが好ましい。
また、熟成を行うことにより軟化温度が変化する有機無機ハイブリッドガラス状物質であることが好ましい。軟化温度が変化しない有機無機ハイブリッドガラスは溶融性を示さないことが多いためである。この場合、軟化温度は熟成により上がる傾向を有すことがさらに好ましい。熟成前の軟化温度が60〜150℃、熟成後の軟化温度が100〜350℃であれば、非常に好ましい。
なお、この有機無機ハイブリッドガラス状物質の軟化温度が80℃以上400℃以下であることが好ましい。80℃未満では得られる有機無機ハイブリッドガラス状物質の化学的安定性が低く、400℃を越すと溶融性を有しなくなる場合が多いためである。より好ましくは100℃以上380℃以下、さらに好ましくは100℃以上350℃以下である。なお、有機無機ハイブリッドガラス状物質の軟化温度は、10℃/minで昇温したTMA測定から判断することができる。すなわち、上記条件で収縮量を測定し、収縮量の変化開始温度を軟化温度とする。
また、有機色素による染み出しが1ヶ月間認められない気密性を有す有機無機ハイブリッドガラス状物質であることが好ましい。有機無機ハイブリッドガラスの中には、気密性に問題があるものも多いが、本発明のように溶融性を有し、熟成を行うことができた有機無機ハイブリッドガラス状物質は気密性が増加するからである。
さらに、フェニル基を含んでいる有機無機ハイブリッドガラス状物質であることが好ましい。フェニル基を含んだ有機無機ハイブリッドガラス状物質は、溶融性を有し、熟成管理が可能となる場合が多く、かつ非常に安定しているからである。
以下、実施例に基づき、述べる。
出発原料として金属アルコキシドのフェニルトリエトキシシラン(PhSi(OEt)3)約10mlとエチルトリエトキシシラン(EtSi(OEt)3)約2mlの混合系を用い、その比モルは8:2とした。容器中でフェニルトリエトキシシランとエチルトリエトキシシランに約45mlの水(フェニルトリエトキシシランに対するモル比は50)、約30mlのエタノール、触媒である塩酸約0.5ml(フェニルトリエトキシシランに対するモル比は0.01)の他、塩化スズを加え、加熱反応工程として80℃で3時間撹拌後、150℃に上げ1時間溶融した。溶融後に上澄み層と融液の2層に分離していたので、その上澄液を廃棄し、下側の融液を抽出してさらに200℃で5時間熟成した後、室温まで冷却し、透明状物質を得た。このように、従来のゾルゲル法で作製した場合と比較して約1/10の約10時間で有機無機ハイブリッド状物質を得ることができた。
10℃/minで昇温したTMA測定での収縮量変化から軟化挙動開始点を求め、その開始温度を軟化温度としたところ、この物質の軟化温度は89℃であった。また、JOEL社の磁気共鳴測定装置CMX-400型でSnO、RSiO3/2及びR2SiOの存在が確認され、いわゆるMO−RSiO3/2又はMO−R2SiO(R:有機官能基、M:2価金属)で示される物質が存在していることを確認した。不規則網目構造を有していたことも考慮すると、今回得た透明状物質は有機無機ハイブリッドガラス構造をとる物質、すなわち有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
この有機無機ハイブリッドガラス状物質の気密性能をみるため、得られた有機無機ハイブリッドガラス状物質の中に有機色素メチレンブルーを入れ、1ヶ月後の染み出し状態を観察した。この結果、染み出しは全く認められず、気密性能を満足していることが分かった。また、100℃の雰囲気下に300時間置いたこの有機無機ハイブリッドガラス状物質の転移点を測定したが、その変化は認められず、耐熱性にも問題がないことが確認された。さらに、得られた有機無機ハイブリッドガラス状物質を1ヶ月間、大気中に放置したが、特に変化は認められず、化学的耐久性に優れていることも確認できた。
実施例で行った化学耐久性試験(100℃の雰囲気下に300時間置いた後、さらに大気中に1ヶ月間放置)後のガラス状物質に対してさらなる熟成処理を行った。このときの熟成は約200℃約0.05Torrの雰囲気下で5分間処理する第1熟成、大気下210℃で3時間処理する第2熟成の2段階熟成を行った後、室温まで冷却した。この結果、軟化温度は94℃に変化した。このガラス状物質に対し、実施例と同様の染み出し試験及び化学耐久性試験を行ったところ、問題がないことを確認できた。
触媒として酢酸を用い、その他の原料は実施例とほぼ同様の原料を使い、同様の処理方法で合成を行ったところ、実施例とは異なり溶融後に相分離はせず無色透明な融液であったためそのまま熟成工程に移り透明状の物質を得た。但し、ここではTiのイソプロポキシドを原料の中に入れてある。
この物質の軟化温度は100℃であり、Ti混入の物性変化(軟化温度変化、屈折率向上)効果が確認できた。また、JEOL社の磁気共鳴測定装置CMX-400型でSnO、RSiO3/2及びR2SiOの存在が確認され、いわゆるMO−RSiO3/2又はMO−R2SiO(R:有機官能基、M:2価金属)で示される物質が存在していることを確認した。不規則網目構造を有していたことも考慮すると、今回得た透明状物質は有機無機ハイブリッドガラス構造をとる物質、すなわち有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
この有機無機ハイブリッドガラス状物質の気密性能をみるため、有機色素メチレンブルーを入れ、1ヶ月後の染み出し状態を観察した。この結果、染み出しは全く認められず、気密性能を満足していることが分かった。また、100℃の雰囲気下に300時間置いたこの有機無機ハイブリッドガラス状物質の転移点を測定したが、その変化は認められず、耐熱性にも問題がないことが確認された。さらに、得られた有機無機ハイブリッドガラス状物質を1ヶ月間、大気中に放置したが、特に変化は認められず、化学的耐久性に優れていることも確認できた。
実施例で行った化学耐久性試験(100℃の雰囲気下に300時間置いた後、さらに大気中に1ヶ月間放置)後のガラス状物質に対してさらなる熟成処理を行った。このときの熟成は約210℃約0.05Torrの雰囲気下で5分間処理する第1熟成、大気下230℃で2時間処理する第2熟成の2段階熟成を行った後、室温まで冷却した。この結果、軟化温度は107℃に変化した。このガラス状物質に対し、実施例と同様の染み出し試験及び化学耐久性試験を行ったところ、問題がないことを確認できた。
実施例とほぼ同様の原料を使い、同様の処理方法で、透明状の物質を得た。但し、ここではZnの塩化物を原料の中に入れてある。
この物質の軟化温度は88℃であり、Zn混入の軟化温度低下効果が確認できた。また、JEOL社の磁気共鳴測定装置CMX-400型でSnO、RSiO3/2及びR2SiOの存在が確認され、いわゆるMO−RSiO3/2又はMO−R2SiO(R:有機官能基、M:2価金属)で示される物質が存在していることを確認した。不規則網目構造を有していたことも考慮すると、今回得た透明状物質は有機無機ハイブリッドガラス構造をとる物質、すなわち有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
この有機無機ハイブリッドガラス状物質の気密性能をみるため、有機色素メチレンブルーを入れ、1ヶ月後の染み出し状態を観察した。この結果、染み出しは全く認められず、気密性能を満足していることが分かった。また、100℃の雰囲気下に300時間置いたこの有機無機ハイブリッドガラス状物質の転移点を測定したが、その変化は認められず、耐熱性にも問題がないことが確認された。さらに、得られた有機無機ハイブリッドガラス状物質を1ヶ月間、大気中に放置したが、特に変化は認められず、化学的耐久性に優れていることも確認できた。
実施例で行った化学耐久性試験(100℃の雰囲気下に300時間置いた後、さらに大気中に1ヶ月間放置)後のガラス状物質に対してさらなる熟成処理を行った。このときの熟成は約200℃約0.05Torrの雰囲気下で5分間処理する第1熟成、大気下220℃で2時間処理する第2熟成の2段階熟成を行った後、室温まで冷却した。この結果、軟化温度は92℃に変化した。このガラス状物質に対し、実施例と同様の染み出し試験及び化学耐久性試験を行ったところ、問題がないことを確認できた。
実施例とほぼ同様の原料を使い、同様の処理方法で、同様の物質を得た。但し、ここでは有機色素ローダミン6Gを原料の中に入れ、着色を試みた。
この物質の軟化温度は89℃であり、ほぼ均一な状態で着色ができた。また、JEOL社の磁気共鳴測定装置CMX-400型でSnO、RSiO3/2及びR2SiOの存在が確認され、いわゆるMO−RSiO3/2又はMO−R2SiO(R:有機官能基、M:2価金属)で示される物質が存在していることを確認した。不規則網目構造を有していたことも考慮すると、今回得た透明状物質は有機無機ハイブリッドガラス構造をとる物質、すなわち有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
この有機無機ハイブリッドガラス状物質の気密性能をみるため、得られたガラス状物質の中にローダミン6Gとは別の有機色素メチレンブルーを入れ、1ヶ月後の染み出し状態を観察した。この結果、染み出しは全く認められず、気密性能を満足していることが分かった。また、100℃の雰囲気下に300時間置いたこのガラス状物質の転移点を測定したが、その変化は認められず、耐熱性にも問題がないことが確認された。さらに、得られた有機無機ハイブリッドガラス状物質を1ヶ月間、大気中に放置したが、特に変化は認められず、化学的耐久性に優れていることも確認できた。
実施例で行った化学耐久性試験(100℃の雰囲気下に300時間置いた後、さらに大気中に1ヶ月間放置)後のガラス状物質に対してさらなる熟成処理を行った。このときの熟成は約190℃約0.05Torrの雰囲気下で5分間処理する第1熟成、大気下220℃で3時間処理する第2熟成の2段階熟成を行った後、室温まで冷却した。この結果、軟化温度は93℃に変化した。このガラス状物質に対し、実施例と同様の染み出し試験及び化学耐久性試験を行ったところ、問題がないことを確認できた。
実施例とほぼ同様の原料を使い、同様の処理方法で、透明状物質を得た。但し、ここではErを塩化物の形で原料の中に入れ、蛍光発光を試みた。
この物質の軟化温度は95℃であり、暗闇で観察したところ、380nmの光で励起するとガラス状全体できれいに緑色蛍光発色していることが確認できた。また、JEOL社の磁気共鳴測定装置CMX-400型でSnO、RSiO3/2及びR2SiOの存在が確認され、いわゆるMO−RSiO3/2又はMO−R2SiO(R:有機官能基、M:2価金属)で示される物質が存在していることを確認した。不規則網目構造を有していたことも考慮すると、今回得た透明状物質は有機無機ハイブリッドガラス構造をとる物質、すなわち有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
この有機無機ハイブリッドガラス状物質の気密性能をみるため、有機色素メチレンブルーを入れ、1ヶ月後の染み出し状態を観察した。この結果、染み出しは全く認められず、気密性能を満足していることが分かった。また、100℃の雰囲気下に300時間置いたこの有機無機ハイブリッドガラス状物質の転移点を測定したが、その変化は認められず、耐熱性にも問題がないことが確認された。さらに、得られた有機無機ハイブリッドガラス状物質を1ヶ月間、大気中に放置したが、特に変化は認められず、化学的耐久性に優れていることも確認できた。
実施例で行った化学耐久性試験(100℃の雰囲気下に300時間置いた後、さらに大気中に1ヶ月間放置)後のガラス状物質に対してさらなる熟成処理を行った。このときの熟成は約200℃約0.05Torrの雰囲気下で5分間処理する第1熟成、大気下230℃で3時間処理する第2熟成の2段階熟成を行った後、室温まで冷却した。この結果、軟化温度は105℃に変化した。このガラス状物質に対し、実施例と同様の染み出し試験及び化学耐久性試験を行ったところ、問題がないことを確認できた。
(比較例1)
出発原料には金属アルコキシドのエチルトリエトキシシラン(EtSi(OEt)3)を用いた。容器中でエチルトリエトキシシランに水、エタノール、触媒である酢酸を加え、加熱反応工程として80℃で3時間撹拌後、150℃に上げ溶融を試みたが、溶融することはなかった。そこで、ゾルの段階で有機色素メチレンブルーを入れ、同様の合成を行った後、気密性試験を試みたが、1週間後に確認したときには、ゲル体からの滲み出しが確認された。
(比較例2)
出発原料には金属アルコキシドのエチルトリエトキシシラン(EtSi(OEt)3)とメチルトリエトキシシラン(MeSi(OEt)3)の混合系を用い、その比は8:2とした。容器中でエチルトリエトキシシランとメチルトリエトキシシランに水、エタノール、触媒である塩酸を加え、20℃で3時間撹拌後、150℃に上げ溶融を試みたが、溶融することはなかった。
(比較例3)
実施例とほぼ同様の原料を用い、容器中でフェニルトリエトキシシランとエチルトリエトキシシランに水、エタノール、触媒である塩酸の他、塩化スズを加え、加熱反応工程として20℃で3時間撹拌後、700℃での熱処理を行った。
この結果、得られた物質は800℃でも軟化せず、低融点物質とは言えなかった。なお、SnOの存在は確認できたが、RSiO3/2及びR2SiO(R:有機官能基)で示される物質の存在は確認できず、実施例及び実施例に示した熟成を試みたが、その変化は全く認められず、熟成はできないと判断した。
(比較例4)
実施例とほぼ同様の原料を用い、容器中でフェニルトリエトキシシランとエチルトリエトキシシランに水、エタノール、触媒である酢酸の他、塩化スズを加え、加熱反応工程として20℃で3時間撹拌後、700℃での熱処理を行った。
この結果、得られた物質は800℃でも軟化せず、低融点物質とは言えなかった。また、黒化しており、実施例2のような着色というよりも汚く変化していた。なお、SnOの存在は確認できたが、RSiO3/2及びR2SiO(R:有機官能基)で示される物質の存在は確認できなかった。また、実施例1等で示した熟成を試みたが、その変化は全く認められず、熟成はできないと判断した。
(比較例5)
実施例とほぼ同様の原料を用い、容器中でフェニルトリエトキシシランとエチルトリエトキシシランに水、エタノール、触媒である酢酸の他、塩化スズを加え、加熱反応工程として20℃で3時間撹拌後、750℃での熱処理を行った。
この結果、得られた物質は800℃でも軟化せず、低融点物質とは言えなかった。また、蛍光発色はないことを確認した。なお、SnOの存在は確認できたが、RSiO3/2及びR2SiO(R:有機官能基)で示される物質の存在は確認できなかった。また、実施例1等で示した熟成を試みたが、その変化は全く認められず、熟成はできないと判断した。
(比較例6)
出発原料には金属アルコキシドのエチルトリエトキシシラン(EtSi(OEt)3)を用いた。容器中でエチルトリエトキシシランに水、エタノール、触媒である塩酸の他、塩化スズを加え、加熱反応工程として80℃で3時間撹拌後、150℃に上げ溶融を試みたが、溶融することはなかった。そこで、ゾルの段階で有機色素メチレンブルーを入れ、同様の合成を行った後、気密性試験を試みたが、1週間後に確認したときには、ゲル体からの滲み出しが確認された。
(比較例7)
出発原料には金属アルコキシドのエチルトリエトキシシラン(EtSi(OEt)3)とジエトキシジメチルシラン(Me2Si(OEt)2)の混合系を用い、その比は8:2とした。容器中でエチルトリエトキシシランとジエトキシジメチルシランに水、エタノール、触媒である塩酸の他、塩化スズを加え、加熱反応工程として20℃で3時間撹拌後、150℃に上げ溶融を試みたが、溶融することはなかった。
PDPを始めとするディスプレイ部品の封着・被覆用材料、光スイッチや光結合器を始めとする光情報通信デバイス材料、LEDチップを始めとする光学機器材料、光機能性(非線形)光学材料、接着材料等、低融点ガラスが使われている分野、エポキシ等の有機材料が使われている分野に利用可能である。

Claims (6)

  1. 金属アルコキシド及び2価金属M(Mg、Ca、Sr、Ba、Snの中から選ばれた少なくとも1種)からなる化合物を原料として40℃以上100℃以下の温度でかつ30分以上10時間以下で行う加熱反応工程30℃以上400℃以下かつ溶融温度以上の温度で行う溶融工程、溶融工程後に上澄液を廃棄し、下側の融液を抽出する抽出工程、30℃以上400℃以下かつ熱分解温度以下の温度で行う熟成工程を経て、MO−RSiO3/2又はMO−RSiO(R:有機官能基、M:2価金属)で示される物質を少なくとも1種類以上含有する物質を生成させることを特徴とする有機無機ハイブリッドガラス状物質の製造方法。
  2. SiO(4−n)/2(R:有機官能基、n:1〜3)で示される物質を含有する物質を生成させることを特徴とする請求項1に記載の有機無機ハイブリッドガラス状物質の製造方法。
  3. Nb、Zr、Tiのうち少なくともいずれか一つの酸化物を原料に含有させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機無機ハイブリッドガラス状物質の製造方法。
  4. V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znのうち少なくともいずれか一つの遷移金属化合物を原料に含有させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機無機ハイブリッドガラス状物質の製造方法。
  5. Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybのうち少なくともいずれか一つの希土類金属化合物を原料に含有させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機無機ハイブリッドガラス状物質の製造方法。
  6. 有機色素を原料に含有させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機無機ハイブリッドガラス状物質の製造方法。
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