JP2005146221A - 紫外線可視光線透過性有機無機ハイブリッドガラス状物質 - Google Patents
紫外線可視光線透過性有機無機ハイブリッドガラス状物質 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2005146221A JP2005146221A JP2003389800A JP2003389800A JP2005146221A JP 2005146221 A JP2005146221 A JP 2005146221A JP 2003389800 A JP2003389800 A JP 2003389800A JP 2003389800 A JP2003389800 A JP 2003389800A JP 2005146221 A JP2005146221 A JP 2005146221A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- inorganic hybrid
- wavelength
- organic
- transmittance
- visible light
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Withdrawn
Links
Landscapes
- Silicon Polymers (AREA)
Abstract
【課題】従来の製造方法では、耐熱性や気密性能と低融点特性を同時に満たし、さらに紫外線可視光線透過率の高いガラス状物質はなかった。
【解決手段】3mm厚で、波長630nmでの透過率が80%以上、波長470nmでの透過率が80%以上、波長294nmでの透過率が50%以上、波長280nmでの透過率が10%以下の紫外線可視光線透過性有機無機ハイブリッドガラス状物質。波長350〜800nmでの可視光線の平均透過率が80%以上、波長295〜350nmでの紫外線の平均透過率が80%以上、軟化点が−20〜400℃、さらにガラス状物質の一部又はすべてに不規則網目構造を有し、着色材料又は蛍光性材料が混入されている特徴を有す。
【選択図】 なし
【解決手段】3mm厚で、波長630nmでの透過率が80%以上、波長470nmでの透過率が80%以上、波長294nmでの透過率が50%以上、波長280nmでの透過率が10%以下の紫外線可視光線透過性有機無機ハイブリッドガラス状物質。波長350〜800nmでの可視光線の平均透過率が80%以上、波長295〜350nmでの紫外線の平均透過率が80%以上、軟化点が−20〜400℃、さらにガラス状物質の一部又はすべてに不規則網目構造を有し、着色材料又は蛍光性材料が混入されている特徴を有す。
【選択図】 なし
Description
本発明は、ゾルゲル法に用いられる原料を出発原料とする紫外線可視光線透過性有機無機ハイブリッドガラス状物質に関する。
600℃以下で軟化する材料としては、高分子材料や低融点ガラスなどが有名であり、古くから封着・封止材料、パッシベーションガラス、釉薬など、多くのところで用いられてきた。高分子材料と低融点ガラスでは、その諸物性が異なるので、その使用できる環境に応じて使い分けられてきた。一般的には、耐熱性や気密性能が優先される場合にはガラスが、耐熱性や気密性能以外の特性が優先される分野では高分子材料に代表される有機材料が使われてきた。しかし、昨今の技術進歩に伴い、これまで要求されなかった特性も着目され、その特性をもった材料の開発が期待されている。
このため、耐熱性や気密性能を増能させた高分子材料や、軟化領域を低温化させたガラスいわゆる低融点ガラスの開発が積極的になされている。特に、耐熱性や気密性能が要求される電子材料市場において、PbO-SiO2-B2O3系あるいはPbO-P2O5-SnF2系ガラスなどに代表される低融点ガラスは、電子部品の封着、被覆などの分野で不可欠の材料となっている。また、低融点ガラスは高温溶融ガラスに比べ、その成形加工に要するエネルギーひいてはコストを抑えられるため、省エネルギーに対する昨今の社会的要請とも合致している。
さらに、光機能性能の有機物を破壊しない温度で溶融すること又は成形することが可能ならば、光機能性有機物含有(非線形)光学材料のホストとして光スイッチや光結合器をはじめとする光情報通信デバイスなどへの応用が期待される。このとき、極めて重要となるのは、低融点化特性の他、紫外線・可視光線・赤外線それぞれの領域における光透過性である。しかし、どの波長領域で透過性と吸収性が要求されるかについては多くの種類があるが、まだガラス状物質が開発されたいう状況にはない。ガラス以外の材料としては、例えば、光導波路デバイスでは、UVエポキシ樹脂や重水素化PMMA等の有機材料が使われているが、通信分野において、満足できる材料が開発されているとはいえない。さらには、化学的安定性、機械的強度等の問題、さらには種々の要求特性に対する自由度に対しても、ガラス又はガラス状材料は期待できる面が多い。
そこで、一般的な溶融ガラスの特徴である耐熱性や気密性能を有し、かつ高分子材料のように種々の特性を得やすい材料は多くの分野で要望され、特に紫外線・可視光線領域における光透過性を有す低融点ガラスにその期待が集まっている。その中でも、有機無機ハイブリッドガラスが低融点ガラスの一つとして着目されている。
低融点ガラスでは、例えば、Sn−Pb−P−F−O系ガラス(例えば、非特許文献1参照)に代表されるTickガラスが有名であり、100℃前後にガラス転移点を持ち、しかも優れた耐水性を示すので、一部の市場では使われてきている。しかしながら、この低融点ガラスはその主要構成成分に鉛を含むので、昨今の環境保護の流れから代替材料に置き換える必要性がでてきている。さらには、Tickガラスに対する要求特性も大きく変化していると同時に、その要望も多様化している。
一般的なガラスの製造方法としては、溶融法と低温合成法が知られている。溶融法はガラス原料を直接加熱することにより溶融してガラス化させる方法で、多くのガラスがこの方法で製造されており、低融点ガラスもこの方法で製造されている。しかし、低融点ガラスの場合、融点を下げるために、鉛やアルカリ、ビスマスなどの含有を必要とするなど、構成できるガラス組成には多くの制限がある。
一方、非晶質バルクの低温合成法としては、ゾルゲル法、液相反応法及び無水酸塩基反応法が考えられている。ゾルゲル法は金属アルコキシドなどを加水分解−重縮合し、500℃を超える温度(例えば、非特許文献2参照)、通常は700〜1600℃で熱処理することにより、バルク体を得ることができる。しかし、ゾルゲル法で作製したバルク体を実用材料としてみた場合、原料溶液の調製時に導入するアルコールなど有機物の分解・燃焼、又は有機物の分解ガス若しくは水の加熱過程における蒸発放出などのために多孔質となることが多く、耐熱性や気密性能には問題があった。このように、ゾルゲル法によるバルク製造ではまだ多くの問題が残っており、特に低融点ガラスをゾルゲル法で生産することはなされていない。なお、基板上にコーティングしたゾルゲル法による有機無機ハイブリッドガラスのゲル膜をプレスすることにより、マイクロレンズの製造を行う試みもなされている(例えば、非特許文献3)。
さらに、液相反応法は収率が低いために生産性が低いという問題の他、反応系にフッ酸などを用いることや薄膜合成が限度とされていることなどから、現実的にバルク体を合成する手法としては不可能に近い状態にある。
無水酸塩基反応法は、近年開発された手法であり、低融点ガラスの一つである有機無機ハイブリッドガラスの製作も可能(例えば、非特許文献3参照)であるが、まだ開発途上であり、所望の有機無機ハイブリッドガラスがすべて製作できるわけではない。
したがって、多くの低融点ガラスの製造は、低温合成法ではなく、溶融法により行われてきた。このため、ガラス原料を溶融する都合上からそのガラス組成は制限され、生産できる低融点ガラスとなると、その種類は極めて限定されていた。
なお、現時点では耐熱性や気密性能から、低融点ガラスが材料として有力であり、低融点ガラスに代表される形で要求物性が出されることが多い。しかし、その材料は低融点ガラスにこだわるものではなく、要求物性が合致すれば、ガラス以外の低融点あるいは低軟化点物質で大きな問題はない。
公知技術をみれば、ゾルゲル法による石英ガラス繊維の製造方法(例えば、特許文献1参照)が、ゾルゲル法による酸化チタン繊維の製造方法(例えば、特許文献2参照)が、さらにはゾルゲル法による半導体ドープマトリックスの製造方法(例えば、特許文献3参照)が知られている。また、溶融法によるP2O5−TeO2−ZnF2系低融点ガラスが知られている(例えば、特許文献4参照)。
特開昭62-297236号公報
特開昭62-223323号公報
特開平1-183438号公報
特開平7-126035号公報
P.A.Tick, Physics and Chemistry of Glasses, 14, 1140(1989).
神谷寛一、作花済夫、田代憲子,窯業協会誌,618−618,84(1976).
松田厚範、セラミックス,893-895,38(2003).
高橋雅英、新居田治樹、横尾俊信,New Glass, 8-14,17(2002).
多くの低軟化点材料、特に低融点ガラスの製造は、溶融法により行われてきた。このため、そのガラス組成には多くの制限があり、ガラス原料を溶融する都合上、生産できる低融点ガラスは極めて限られていた。
一方、低温合成法のゾルゲル法で製造した場合、緻密化のために500℃以上の処理温度が必要となるが、その温度で処理すると低融点ガラスとはならないので、結果として耐熱性や気密性能の良好な低融点ガラスを得ることはできなかった。特に、電子材料分野では、厳しい耐熱性や気密性能と低融点化に対応する低融点ガラスはなかった。さらに、耐熱性や気密性能を満足するガラス以外の低融点材料もこれまで見出されていない。
特開昭62-297236号公報、特開昭62-223323号公報及び特開平1-183438号公報で開示された方法は、高温溶融でのみ対応可能であった材料生産を低温でも可能としたという功績はあるが、低融点ガラスを製造することはできない。また、ゾルゲル処理後には、500℃以上での処理も必要である。一方、特開平7-126035号公報の方法では、転移点が3百数十℃のガラスを作製できることが開示されている。しかし、それ以下の転移点をもつガラスを鉛やビスマスなどを始めとする低融点化材料なしで製作した例はこれまでなかった。また、最近着目されつつある有機無機ハイブリッドガラスにおいても、その研究が開始されたばかりであり、製作条件によりその結果が異なる等、未開発の部分も多い。
すなわち、これまでの低融点ガラスの製造方法では、厳しい耐熱性や気密性能と低融点特性を満たし、さらには可視光線赤外線領域、特に赤外線を透過するガラスを作ることはできなかった。また、ガラス以外の材料でもこのような特性を満たすものはなかった。
本発明は、3mm厚で、波長630nmにおける透過率が80%以上、波長470nmにおける透過率が80%以上、波長294nmにおける透過率が50%以上、波長280nmにおける透過率が10%以下の紫外線可視光線透過性有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
また、波長350〜800nmにおける可視光線の平均透過率が80%以上である上記の紫外線可視光線透過性有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
また、波長295〜350nmにおける紫外線の平均透過率が80%以上である上記の紫外線可視光線透過性有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
また、軟化点が−20〜400℃にある上記の紫外線可視光線透過性有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
また、ガラス状物質の一部又はすべてに不規則網目構造を有する上記の紫外線可視光線透過性有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
さらに、ガラス状物質の一部又はすべてに着色材料又は蛍光性材料が混入されている上記の紫外線可視光線透過性有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
本発明により、これまで製作することが極めて難しいとされてきた耐熱性や気密性能と低融点特性を同時に満たし、紫外線可視光線を含めた領域で高透過性を示す紫外線可視光線透過性有機無機ハイブリッドガラス状物質を生成することができた。
本発明は、3mm厚で、波長630nmにおける透過率が80%以上、波長470nmにおける透過率が80%以上、波長294nmにおける透過率が50%以上、波長280nmにおける透過率が10%以下の紫外線可視光線透過性有機無機ハイブリッドガラス状物質である。ここで、可視領域での代表波長を630nmと470nmとしたのは、可視光域での中心に位置すると同時に630〜470nmは透過が難しい緑色領域の両端であり、また紫外線領域での代表波長を294nmと280nmとしたのは、一般的にこの領域で吸収が急激に変化することが多いためである。
紫外線可視光線透過性有機無機ハイブリッドガラス状物質としては、波長350〜800nmにおける可視光線の平均透過率が80%以上であることが好ましい。可視光線領域で光透過性が高い、いわゆる透明性が高いことは多くの材料で要求されているからである。例えば、この領域を透明化することにより、青・赤・緑等の光をそれぞれ透過させることができるので、その汎用性が広がる。本発明の有機無機ハイブリッドガラス状物質は、無色透明であるという特徴を有する。一般的に、有機無機ハイブリッドガラス状物質は薄い黄色の着色となる場合が多いが、当然ながら無色透明の有機無機ハイブリッドガラス状物質に限定される。
紫外線可視光線透過性有機無機ハイブリッドガラス状物質としては、波長295〜350nmにおける紫外線の平均透過率が80%以上であることが好ましい。紫外線透過性も最近の状況では極めて重要となることが多い。例えば、最近着目されている白色ダイオードは、紫外線による蛍光材料の発光現象を利用しているので、紫外線透過性が必須となっている。
紫外線可視光線透過性有機無機ハイブリッドガラス状物質としては、軟化点が−20〜400℃にあることが好ましい。軟化温度が−20℃よりも低いと室温で安定して使用できないという問題が発生する。一方、400℃よりも高いと低融点性を利用できないという問題が発生する。
また、上記の方法で製造された有機無機ハイブリッドガラス状物質は当然ながら全て対象となるが、その一部又はすべてに不規則網目構造をもつ有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
さらに、本発明の紫外線可視光線透過性有機無機ハイブリッドガラス状物質では、そのガラス状物質の一部又はすべてに着色材料又は蛍光性材料が混入されていることが好ましい。場合によっては、630nmを越えた波長域、特に赤外線領域では特定の波長をカットする必要がある場合があるからである。また、主に紫外線に反応する蛍光性材料を紫外線可視光線透過性有機無機ハイブリッドガラス状物質の一部又はすべてに混入することにより特別の波長をもった光を発光させることができる。さらには、補色関係を利用することにより、例えば白色光を得ることもできる。
なお、本発明の有機無機ハイブリッドガラス状物質は以下のようにして製作することができる。すなわち、原料とする金属アルコキシド、水、酢酸若しくは塩酸及びアルコールによる混合工程の後、加熱反応工程、溶融工程及び熟成工程を経て製造されることが好ましい。なお、酸触媒としては酢酸か塩酸、アルカリ触媒としてはアンモニアを用いることが多い。
原料とする金属アルコキシドは有機置換基で置換されたアルコキシシランであり、有機置換基としてフェニル基、メチル基、エチル基、プロピル基(n−、i−)、ブチル基(n−、i−、t−)、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、メルカプトメチル基、メルカプトプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-トリフルオロアセトキシプロピル基、ビニル基、ベンジル基、スチリル基等から、アルコキシル基としてメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基(n−、i−)等から成る金属アルコキシドから選ばれることが好ましい。これらは、有機無機ハイブリッドガラス状物質、特に室温以下の低軟化となる透明状物質を製造する上で極めて有用な原料である。なお、上記以外の金属アルコキシドでも良い。また、金属アセチルアセトナート、金属カルボン酸塩、金属硝酸塩、金属水酸化物、及び金属ハロゲン化物等、ゾルゲル法で使われているものであれば製造は可能である。
なお、混合工程で用いる水はモル比でアルコールの1.0倍以上であることが好ましい。従来のゾルゲル法では、アルコールの種類にもよるが、水は加水分解に必要な最小限とされていた。これは、急速な加水分解及び不安定ゾルの生成を抑制するという基本的な問題に発している。薄膜状ゾルゲル膜を形成させるときに多めの水を使うことはあるが、バルク状とする場合はできるだけ少なくする、例えばアルコールの0.3倍程度が従来の方法であった。しかし、熟成工程を有する場合には、混合工程で用いる水がアルコールの1.0倍未満であると、熟成工程に多大の時間を要するという問題が発生する。しかし、水の量が多すぎても、熟成工程で多くの時間を要することにもなるので、より好ましくは、アルコールの1.0倍以上5.0倍以下である。なお、混合工程において、酸化物前駆体に水、エタノール、触媒である酢酸を加えて撹拌しながら混合するが、この順序にはこだわらない。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノ-ル、2−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノ-ル、2−ブタノール、1.1−ジメチル−1−エタノール等が代表的であるが、これらに限定される訳ではない。
溶融工程に入る前、すなわち、出発原料の混合工程と加熱による溶融工程との間に、加熱反応工程を有することが好ましい。この加熱反応工程は40℃以上100℃以下の温度で行われる。この温度域以外では、その構造中に有機官能基Rを持つ金属ユニット、例えば(RnSiO(4−n)/2)(n=1、2、3から選択)で表されるケイ素ユニット、さらに、詳細には、フェニル基の金属ユニット(PhnSiO(4−n)/2)、メチル基のケイ素ユニット(MenSiO(4−n)/2)、エチル基のケイ素ユニット(EtnSiO(4−n)/2)、ブチル基のケイ素ユニット(BtnSiO(4−n)/2)(n=1〜3)などを適切に含有させることができないため、ガラス溶融のできる有機無機ハイブリッドガラス状物質を得ることは極めて難しくなる。なお、この有機官能基Rは、アルキル基やアリール基が代表的である。アルキル基としては、直鎖型でも分岐型でもさらには環状型でも良い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基(n−、i−)、ブチル基(n−、i−、t−)、ペンチル基、ヘキシル基(炭素数:1〜20)などが挙げられ、特に好ましいのはメチル基とエチル基である。さらに、アリール基としては、フェニル基、ピリジル基、トリル基、キシリル基などがあり、特に好ましいのはフェニル基である。当然ながら、有機官能基は上述のアルキル基やアリール基に限定されるものではない。
加熱反応工程の上限温度は沸点が100℃を越すアルコール、例えば118℃の1−ブタノールを用いる場合では100℃以下であるが、沸点が100℃以下のアルコールでは沸点も考慮する方が望ましい。例えば、エタノールを用いる場合は、その沸点の80℃以下とした方が良い結果となる傾向にある。これは、沸点を越えると、アルコールが急激に蒸発するので、アルコール量や状態変化から均一反応が達成されにくくなるためであると考えられる。
加熱による溶融工程は30℃以上400℃以下の温度で処理される。30℃よりも低い温度では、実質上溶融できない。また、400℃を超えると、網目を形成する金属元素と結合する有機基が燃焼するために所望の有機無機ハイブリッドガラス状物質を得られないばかりか、破砕したり、気泡を生じて不透明になったりする。望ましくは、100℃以上300℃以下である。
溶融工程及び熟成工程を経ることにより、安定化した有機無機ハイブリッドガラス状物質を得ることができる。従来から行われてきたゾルゲル法では、前記の溶融工程がないため、当然ながらその後の熟成工程もない。
熟成工程では30℃以上400℃以下の温度で処理する。30℃よりも低い温度では、実質上熟成できない。400℃を超えると、熱分解することがあり、安定したガラス状物質を得ることは難しくなる。望ましくは、100℃以上300℃以下である。さらに、この熟成温度は、溶融下限温度よりも低い温度ではその効果が極めて小さくなる。熟成に要する時間は5分以上必要である。熟成時間は、その処理量、処理温度及び反応活性な水酸基(−OH)の許容残留量により異なるが、一般的には5分未満では満足できるレベルに到達することは極めて難しい。また、長時間では生産性が下がってくるので、望ましくは10分以上1週間以内である。
なお、加熱による溶融工程若しくは熟成工程において、不活性雰囲気下で行ったり、加圧下又は減圧下で行なうことにより時間を短縮できる傾向にある。また、マイクロ波加熱も有効である。さらには、加熱反応工程、溶融工程及び熟成工程を連続して行っても良い。
以下、実施例に基づき、述べる。
出発原料には金属アルコキシドのフェニルトリエトキシシラン(PhSi(OEt)3)を用いた。混合工程として室温で10mlのフェニルトリエトキシシランに約45mlの水(フェニルトリエトキシシランに対するモル比は約50)、約20mlのエタノール(フェニルトリエトキシシランに対するモル比は約10)、触媒である酢酸を約0.30ml(フェニルトリエトキシシランに対するモル比は約0.1)加えて撹拌しながら混合し、加熱反応工程として60℃で撹拌しながら3時間加熱後、150℃に上げ2時間かけて溶融した。さらに、150℃で3時間熟成した後、室温まで冷却し、厚さ3.0mmで薄片状の透明状物質を得た。
出発原料には金属アルコキシドのフェニルトリエトキシシラン(PhSi(OEt)3)を用いた。混合工程として室温で10mlのフェニルトリエトキシシランに約45mlの水(フェニルトリエトキシシランに対するモル比は約50)、約20mlのエタノール(フェニルトリエトキシシランに対するモル比は約10)、触媒である酢酸を約0.30ml(フェニルトリエトキシシランに対するモル比は約0.1)加えて撹拌しながら混合し、加熱反応工程として60℃で撹拌しながら3時間加熱後、150℃に上げ2時間かけて溶融した。さらに、150℃で3時間熟成した後、室温まで冷却し、厚さ3.0mmで薄片状の透明状物質を得た。
この透明状物質の軟化温度は130℃であり、フェニル基の分解温度の約400℃よりも低い温度であった。また、不規則網目構造を有していたことも考慮すると、今回得た透明状物質は有機無機ハイブリッドガラス構造をとる物質、すなわち有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
この有機無機ハイブリッドガラス状物質の気密性能をみるため、得られた有機無機ハイブリッドガラス状物質の中に有機色素を入れ、1ヶ月後の染み出し状態を観察した。この結果、染み出しは全く認められず、気密性能を満足していることが分かった。また、100℃の雰囲気下に300時間置いたこの有機無機ハイブリッドガラス状物質の転移点を測定したが、その変化は認められず、耐熱性にも問題がないことが確認された。さらに、得られた有機無機ハイブリッドガラス状物質を1ヶ月間、大気中に放置したが、特に変化は認められず、化学的耐久性に優れていることも確認できた。
さらに、図1に示すように、有機無機ハイブリッドガラス状物質の各波長域における透過率曲線を日立U−3500形自記分光光度計を用いて測定した。実施例1と書かれた実線のデータがこれにあたる。この結果からも明らかなように、大きな着色、特に従来みられた青色領域での吸収はないことが分かる。なお、波長300〜800nmにおける可視光線の平均透過率は89%であった。
(実施例2)
出発原料には金属アルコキシドのフェニルトリエトキシシラン(PhSi(OEt)3)を用いた。混合工程として室温で10mlのフェニルトリエトキシシランに約45mlの水(フェニルトリエトキシシランに対するモル比は約50)、約20mlのエタノール(フェニルトリエトキシシランに対するモル比は約10)、触媒である酢酸を約0.30ml(フェニルトリエトキシシランに対するモル比は約0.1)加えて撹拌しながら混合し、加熱反応工程として60℃で撹拌しながら3時間加熱後、150℃に上げ2時間かけて溶融して透明状物質を得た。この透明状物質を30mlのアセトンに溶解させて、蛍光材料としてYAG(イットリウム−アルミニウム−ガーネット)を10mg添加した。この溶液を室温で乾燥後150℃で3時間熟成した後、室温まで冷却し、厚さ3.0mmで薄片状の透明状物質を得た。
出発原料には金属アルコキシドのフェニルトリエトキシシラン(PhSi(OEt)3)を用いた。混合工程として室温で10mlのフェニルトリエトキシシランに約45mlの水(フェニルトリエトキシシランに対するモル比は約50)、約20mlのエタノール(フェニルトリエトキシシランに対するモル比は約10)、触媒である酢酸を約0.30ml(フェニルトリエトキシシランに対するモル比は約0.1)加えて撹拌しながら混合し、加熱反応工程として60℃で撹拌しながら3時間加熱後、150℃に上げ2時間かけて溶融して透明状物質を得た。この透明状物質を30mlのアセトンに溶解させて、蛍光材料としてYAG(イットリウム−アルミニウム−ガーネット)を10mg添加した。この溶液を室温で乾燥後150℃で3時間熟成した後、室温まで冷却し、厚さ3.0mmで薄片状の透明状物質を得た。
この透明状物質の軟化温度は125℃であり、フェニル基の分解温度の約400℃よりも低い温度であった。また、不規則網目構造を有していたことも考慮すると、今回得た透明状物質は有機無機ハイブリッドガラス構造をとる物質、すなわち有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
この透明状物質に波長470nmの光を照射すると光吸収が起こり可視光領域530nmでの発光を確認した。
(実施例3)
出発原料には金属アルコキシドのフェニルトリエトキシシラン(PhSi(OEt)3)を用いた。混合工程として室温で10mlのフェニルトリエトキシシランに約45mlの水(フェニルトリエトキシシランに対するモル比は約50)、約20mlのエタノール(フェニルトリエトキシシランに対するモル比は約10)、触媒である酢酸を約0.30ml(フェニルトリエトキシシランに対するモル比は約0.1)加えて撹拌しながら混合し、加熱反応工程として60℃で撹拌しながら3時間加熱後、150℃に上げ2時間かけて溶融して透明状物質を得た。この透明状物質を30mlのアセトンに溶解させて、着色材料としてローダミン6Gを10mg添加した。この溶液を室温で乾燥後150℃で3時間熟成した後、室温まで冷却し、厚さ3.0mmで薄片状の透明状物質を得た。
出発原料には金属アルコキシドのフェニルトリエトキシシラン(PhSi(OEt)3)を用いた。混合工程として室温で10mlのフェニルトリエトキシシランに約45mlの水(フェニルトリエトキシシランに対するモル比は約50)、約20mlのエタノール(フェニルトリエトキシシランに対するモル比は約10)、触媒である酢酸を約0.30ml(フェニルトリエトキシシランに対するモル比は約0.1)加えて撹拌しながら混合し、加熱反応工程として60℃で撹拌しながら3時間加熱後、150℃に上げ2時間かけて溶融して透明状物質を得た。この透明状物質を30mlのアセトンに溶解させて、着色材料としてローダミン6Gを10mg添加した。この溶液を室温で乾燥後150℃で3時間熟成した後、室温まで冷却し、厚さ3.0mmで薄片状の透明状物質を得た。
この透明状物質の軟化温度は125℃であり、フェニル基の分解温度の約400℃よりも低い温度であった。また、不規則網目構造を有していたことも考慮すると、今回得た透明状物質は有機無機ハイブリッドガラス構造をとる物質、すなわち有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
この透明状物質に波長500nmの光を照射すると光吸収が起こり可視光領域570nmでの発光を確認した。
(比較例1)
出発原料には金属アルコキシドのフェニルトリエトキシシラン(PhSi(OEt)3)を用いた。混合工程として室温で約10mlのフェニルトリエトキシシランに約3mlの水(フェニルトリエトキシシランに対するモル比は約3)、約20mlのエタノール(フェニルトリエトキシシランに対するモル比は約10)、触媒である塩酸(フェニルトリエトキシシランに対するモル比は約0.01)を約0.04ml加えて撹拌しながら混合し、加熱反応工程として撹拌しながら80℃で3時間加熱後、150℃に上げ1時間30分溶融し、淡黄色のガラス状物質を得た。さらに、160℃で5時間熟成した後、室温まで冷却したところ、ガラス状物質は淡黄色のままであった。なお、板厚は約1.7mmであった。
出発原料には金属アルコキシドのフェニルトリエトキシシラン(PhSi(OEt)3)を用いた。混合工程として室温で約10mlのフェニルトリエトキシシランに約3mlの水(フェニルトリエトキシシランに対するモル比は約3)、約20mlのエタノール(フェニルトリエトキシシランに対するモル比は約10)、触媒である塩酸(フェニルトリエトキシシランに対するモル比は約0.01)を約0.04ml加えて撹拌しながら混合し、加熱反応工程として撹拌しながら80℃で3時間加熱後、150℃に上げ1時間30分溶融し、淡黄色のガラス状物質を得た。さらに、160℃で5時間熟成した後、室温まで冷却したところ、ガラス状物質は淡黄色のままであった。なお、板厚は約1.7mmであった。
さらに、図1に示すように、有機無機ハイブリッドガラス状物質の各波長域における透過率曲線を日立U−3500形自記分光光度計を用いて測定した。比較例1と書かれた破線のデータがこれにあたる。この結果からも明らかなように、波長300〜800nmにおける可視光線の平均透過率は約45.4%であり、可視光線透過率は低い値を示した。
PDPを始めとするディスプレイ部品の封着・被覆用材料、光スイッチや光結合器をはじめとする光情報通信デバイス材料、LEDチップを始めとする光学機器材料、光機能性(非線形)光学材料等、低融点ガラスが使われている分野、エポキシ等の有機光学材料が使われている分野に利用可能である。
Claims (6)
- 3mm厚で、波長630nmにおける透過率が80%以上、波長470nmにおける透過率が80%以上、波長294nmにおける透過率が50%以上、波長280nmにおける透過率が10%以下であることを特徴とする紫外線可視光線透過性有機無機ハイブリッドガラス状物質。
- 波長350〜800nmにおける可視光線の平均透過率が80%以上であることを特徴とする請求項1に記載の紫外線可視光線透過性有機無機ハイブリッドガラス状物質。
- 波長295〜350nmにおける紫外線の平均透過率が80%以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の紫外線可視光線透過性有機無機ハイブリッドガラス状物質。
- 軟化点が−20〜400℃にあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の紫外線可視光線透過性有機無機ハイブリッドガラス状物質。
- ガラス状物質の一部又はすべてに不規則網目構造を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の紫外線可視光線透過性有機無機ハイブリッドガラス状物質。
- ガラス状物質の一部又はすべてに着色材料又は蛍光性材料が混入されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の紫外線可視光線透過性有機無機ハイブリッドガラス状物質。
Priority Applications (5)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003389800A JP2005146221A (ja) | 2003-11-19 | 2003-11-19 | 紫外線可視光線透過性有機無機ハイブリッドガラス状物質 |
PCT/JP2004/008968 WO2005000943A1 (ja) | 2003-06-26 | 2004-06-25 | 有機無機ハイブリッドガラス状物質とその製造方法 |
US10/875,617 US7451619B2 (en) | 2003-06-26 | 2004-06-25 | Organic-inorganic hybrid glassy materials and their production processes |
EP04746437A EP1612233A4 (en) | 2003-06-26 | 2004-06-25 | HYBRID ORGANIC-INORGANIC VITREOUS MATERIAL AND PROCESS FOR OBTAINING THE SAME |
KR1020057017311A KR100740804B1 (ko) | 2003-06-26 | 2004-06-25 | 유기-무기 하이브리드 글래스상 물질 및 그 제조 방법 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003389800A JP2005146221A (ja) | 2003-11-19 | 2003-11-19 | 紫外線可視光線透過性有機無機ハイブリッドガラス状物質 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2005146221A true JP2005146221A (ja) | 2005-06-09 |
Family
ID=34696426
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003389800A Withdrawn JP2005146221A (ja) | 2003-06-26 | 2003-11-19 | 紫外線可視光線透過性有機無機ハイブリッドガラス状物質 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2005146221A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2005146222A (ja) * | 2003-11-19 | 2005-06-09 | Central Glass Co Ltd | 有機無機ハイブリッドガラス状物質とその製造方法 |
JP2005290105A (ja) * | 2004-03-31 | 2005-10-20 | Central Glass Co Ltd | 有機無機ハイブリッドガラス状物質とその製造方法 |
JP2013523986A (ja) * | 2010-04-12 | 2013-06-17 | ユニヴェルシテ クロード ベルナール リヨン 1 | 有機ケイ素ゾルの急速縮合によって得られるハイブリッド材料の製造方法 |
-
2003
- 2003-11-19 JP JP2003389800A patent/JP2005146221A/ja not_active Withdrawn
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2005146222A (ja) * | 2003-11-19 | 2005-06-09 | Central Glass Co Ltd | 有機無機ハイブリッドガラス状物質とその製造方法 |
JP2005290105A (ja) * | 2004-03-31 | 2005-10-20 | Central Glass Co Ltd | 有機無機ハイブリッドガラス状物質とその製造方法 |
JP4516776B2 (ja) * | 2004-03-31 | 2010-08-04 | セントラル硝子株式会社 | 有機無機ハイブリッドガラス状物質とその製造方法 |
JP2013523986A (ja) * | 2010-04-12 | 2013-06-17 | ユニヴェルシテ クロード ベルナール リヨン 1 | 有機ケイ素ゾルの急速縮合によって得られるハイブリッド材料の製造方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR100756398B1 (ko) | 유기무기 하이브리드 유리상 물질 및 그 제조방법 | |
KR100740804B1 (ko) | 유기-무기 하이브리드 글래스상 물질 및 그 제조 방법 | |
JP5713300B2 (ja) | 蛍光体分散ガラスの製造方法及び蛍光体分散ガラス | |
US7728095B2 (en) | Organic-inorganic hybrid glassy material and its production process | |
KR100768577B1 (ko) | 유기-무기 하이브리드 글라스상 물질과 그 제조 방법 | |
JP4516736B2 (ja) | 膜状有機無機ハイブリッドガラス状物質及びその製造方法 | |
JP4079898B2 (ja) | 有機無機ハイブリッドガラス状物質 | |
JP2005097030A (ja) | 有機無機ハイブリッドガラス状物質とその製造方法 | |
JP4079897B2 (ja) | 有機無機ハイブリッドガラス状物質とその製造方法 | |
JP4516727B2 (ja) | 有機無機ハイブリッドガラス状物質とその製造方法 | |
JP2005035876A (ja) | 有機無機ハイブリッドガラス状物質とその製造方法 | |
JP2005146221A (ja) | 紫外線可視光線透過性有機無機ハイブリッドガラス状物質 | |
JP4079896B2 (ja) | 有機無機ハイブリッドガラス状物質とその製造方法 | |
JP4079904B2 (ja) | 有機無機ハイブリッドガラス状物質を含有するディスプレイパネル用低誘電体材料 | |
JP2005146222A (ja) | 有機無機ハイブリッドガラス状物質とその製造方法 | |
JP4516766B2 (ja) | 有機無機ハイブリッドガラス状物質とその製造方法 | |
JP4736388B2 (ja) | 有機無機ハイブリッドガラス状物質とその製造方法 | |
JP4512936B2 (ja) | 有機無機ハイブリッドガラス状物質 | |
JP2008019395A (ja) | 有機無機ハイブリッドガラス状物質とその製造方法 | |
JP2008019396A (ja) | 有機無機ハイブリッドガラス状物質とその製造方法 | |
JP4375982B2 (ja) | 有機無機ハイブリッドガラス状物質及びその製造方法 | |
JP4516776B2 (ja) | 有機無機ハイブリッドガラス状物質とその製造方法 | |
JP4516728B2 (ja) | 有機無機ハイブリッドガラス状物質及びその製造方法 | |
KR20090026215A (ko) | 유기무기 하이브리드 유리상 물질과 그의 제조방법 | |
JP2005247614A (ja) | 有機無機ハイブリッドガラス状物質とその製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
RD01 | Notification of change of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7421 Effective date: 20060424 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20060609 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A132 Effective date: 20090303 |
|
A761 | Written withdrawal of application |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761 Effective date: 20090428 |