JP4811170B2 - 有機無機ハイブリッドガラス状物質 - Google Patents

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Description

本発明は、透明材料として、無機ガラスとプラスチックの特性を併せ持ち、それらの代替として使用可能な、有機無機ハイブリッドガラス状物質に関する。
従来透明材料として、無機ガラスが使用されてきた。無機ガラスは透明性に優れ、低吸水性で非常に安定性があることより、汎用光学材料として広範囲に使用されてきた。しかしながら、比重が2.5と非常に重いという問題があった。
しかしながら、比重が2.5と非常に重いため、昨今の軽量化のニーズにより、より軽量のものを求め、プラスチックの使用が検討され、一部用途については代替が進んでいるが、精密光学材料に対しては、現行のプラスチックでは、吸水率が低いものでも0.15%と無機ガラスと比較して1桁高いものであり、吸水することで膨潤し、形状の変化、および屈折率の変動が起こるため、現在のところ、無機ガラスを使用せざる得ないのが現状である。
また、プラスチックであれば,100℃から250℃と比較的低温で成型が可能となるが、無機ガラスを使用する場合は、低いものでも350℃以上の加熱が必要となり、成型工程の煩雑化および製造コストが高くなるなどの問題がある。
これらの問題を解決するため、オルガノアルコキシシランの重縮合によって得られる、低温成型が可能であり、かつ低吸水率であるような有機無機ハイブリッドガラス状物質が提案されている(特許文献1参照)。
特開2005−146222号公報
前述した例えば特開2005−146222号公報に記載のものは、比較的低温で成型可能であり、飽和吸水率も低いが、物理的強度が低く、脆くて割れやすいという問題がある。これは、物質内の分子結合が少ないのが原因であり、作成条件により改善可能であるが、結合を増やすと性質が無機ガラスに近くなり、低温で成型可能であるという利点が失われる。
このように、無機ガラスの低吸水性とプラスチックの低温での成型可能性の両方の性質をもち、なおかつ通常の使用に耐えうるような強度を持った材料は未だに得られているとはいえない。
本発明は、有機無機ハイブリッドガラス状物質において、R1 Si(OR24−n(R1は有機基、R2は炭素数1〜5のアルキル基、nは1〜2)で表されるオルガノアルコキシシランの重縮合物とスチレン・ブタジエンブロックコポリマーの複合物であり、前記オルガノアルコキシシランの重縮合物が重量%表示で40%以上、70%以下で、スチレン・ブタジエンブロックコポリマーが30%以上、60%以下であることを特徴とする有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
また本発明は、吸水率が飽和吸水率として0.1%以下であることを特徴とする上記の有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
さらに本発明は、JIS R3106による可視光線透過率が厚さ2mmに対して85%以上を有する上記の有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
また本発明は、軟化温度が100℃から200℃、好ましくは実施例に示す100℃〜123℃であることを特徴とする上記の有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
また本発明は、出発原料であるシランアルコキシドとしてR1 2Si(OR22又はR1Si(OR23が使用されていることを特徴とする上記の有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
さらに本発明は、出発原料であるシランアルコキシドのR1にフェニル基が含有されていることを特徴とする上記の有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
本発明によれば、光学用途に使用可能な透明材料で、無機ガラスの低吸水性とプラスチックの低温での成型可能性の両方の性質をもち、なおかつ通常の使用に耐えうるような強度を持った材料を得ることが出来る。
本発明は、有機無機ハイブリッドガラス状物質において、R1 Si(OR24−n(R1は有機基、R2は炭素数1〜5のアルキル基、nは1〜2)で表されるオルガノアルコキシシランの重縮合物とスチレン・ブタジエンブロックコポリマーの複合物であり、前記オルガノアルコキシシランの重縮合物が重量%表示で40%以上、70%以下で、スチレン・ブタジエンブロックコポリマーが30%以上、60%以下であることを特徴とする有機無機ハイブリッドガラス状物質である。
オルガノアルコキシシランの重縮合物の割合が多くなると、吸水性を低くするのには有利であるが、得られる有機無機ハイブリッドガラス状物質が脆く割れやすくなるのでオルガノアルコキシシランの重縮合物は70%以下であることが望ましく、従ってスチレン・ブタジエンブロックコポリマーは30%以上が望ましい。逆にスチレン・ブタジエンブロックコポリマーの割合が多くなると、吸水性が高くなり実用的ではないためにスチレン・ブタジエンブロックコポリマーは60%以下が望ましく、従ってオルガノアルコキシシランの重縮合物は40%以上が望ましい。
その他の性質においても、この範囲を外れると、単独で使用した場合の性質と変わらず、混合の効果が得られないため、この範囲内であることが望ましい。
本発明に使用するオルガノアルコキシシランの重縮合物は下記に示す方法で合成することができる。出発原料として、オルガノアルコキシシランを使用し、水、触媒及びアルコールを適量混合した後、加熱加水分解反応工程、溶融部分重縮合工程、高温重縮合完結工程を経て製造されることが好ましい。
触媒は、酸触媒として酢酸、硝酸、塩酸等を、アルカリ触媒としてアンモニアを使用することができる。
出発原料となるオルガノアルコキシシランは、R1 Si(OR24−n(式中R1は有機基、R2は炭素数1〜5のアルキル基、nは1〜2)で示されるように一部が有機基で置換されたものであり、R1の有機基としては、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、あるいは、メチル基、エチル基、プロピル基(n−,i−)、ブチル基(n−,i−,t−)などのアルキル基、メタクリロキシ基、ビニル基、グリシル基、R2としてはメチル基、エチル基、プロピル基(n−、i−)等から成るオルガノアルコキシシランから選ばれることが特に好ましい。
また、これらの中で、低融点でかつ軟化点を下げるためにフェニル基が含有されていることが特に望ましい。
混合工程で用いる水はオルガノアルコキシシランのアルコキシ基の3倍モル以上であることが好ましい。従来のゾルゲル法では、アルコールの種類にもよるが、水は加水分解に必要な最小限とされていた。これは、急速な加水分解及び不安定ゾルの生成を抑制するという基本的な問題に発している。薄膜状ゾルゲル膜を形成させるときに多めの水を使うことはあるが、バルク状とする場合はできるだけ少なくする、例えばアルコキシ基の2倍モル程度が従来の方法であった。しかし、熟成工程を有する場合には、混合工程で用いる水がアルコキシ基の2倍モル未満であると、熟成工程に多大の時間を要するという問題が発生する。しかし、水の量が多すぎても、熟成工程で多くの時間を要することにもなるので、より好ましくは、アルコキシ基の5倍モル以上20倍モル以下である。なお、混合工程において、酸化物前駆体に水、エタノール、触媒である酢酸を加えて撹拌しながら混合するが、この順序に限定されない。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノ-ル、2−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノ-ル、2−ブタノール、1.1−ジメチル−1−エタノール等が代表的であるが、これらに限定されるものではない。
溶融工程に入る前、すなわち、出発原料の混合工程と加熱による溶融工程との間に、加熱反応工程を有することが好ましい。この加熱反応工程は40℃以上100℃以下の温度で行われる。この温度域以外では、その構造中に有機官能基Rを持つユニット、例えば(RSiO(4−n)/2)(n=1、2から選択)で表されるオルガノシロキサン、さらに、詳細には、オルガノ基がフェニル基であるフェニルシロキサン(PhSiO(4−n)/2)、メチル基であるメチルシロキサン(MeSiO(4−n)/2)、エチル基であるエチルシロキサン(EtSiO(4−n)/2)、ブチル基であるブチルシロキサン(BtSiO(4−n)/2)(n=1〜2)などを適切に含有させることができないため、溶融工程で溶融できるオルガノアルコキシシランの重縮合物を得ることは極めて難しくなる。
この有機官能基Rは、アルキル基やアリール基が代表的である。アルキル基としては、直鎖型でも分岐型でもさらには環状型でも良い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基(n−、i−)、ブチル基(n−、i−、t−)などが挙げられ、特に好ましいのはメチル基とエチル基である。さらに、アリール基としては、フェニル基、ピリジル基、トリル基、キシリル基などがあり、特に好ましいのはフェニル基である。当然ながら、有機官能基は上述のアルキル基やアリール基に限定されるものではない。
加熱反応工程の上限温度は沸点が100℃を越すアルコール、例えば沸点が118℃の1−ブタノールを用いる場合では100℃以下であるが、沸点が100℃以下のアルコールでは沸点も考慮する方が望ましい。例えば、エタノールを用いる場合は、その沸点の80℃以下とした方が良い結果となる傾向にある。これは、沸点を越えると、アルコールが急激に蒸発するので、アルコール量や状態変化から均一反応が達成されにくくなるためであると考えられる。
加熱による溶融工程は30℃以上400℃以下の温度で処理される。30℃よりも低い温度では、実質上溶融できない。また、400℃を超えると、網目を形成するSiと結合する有機基が燃焼するために所望の重縮合物を得られないばかりか、破砕したり、気泡を生じて不透明になったりする。望ましくは、100℃以上300℃以下である。
溶融工程及び熟成工程を経ることにより、安定化した重縮合物を得ることができる。従来から行われてきたゾルゲル法では、前記の溶融工程がないため、当然ながらその後の熟成工程もない。
熟成工程では30℃以上400℃以下の温度で処理する。30℃よりも低い温度では、実質上熟成できない。400℃を超えると、熱分解することがあり、安定したガラス状物質を得ることは難しくなる。望ましくは、100℃以上300℃以下である。さらに、この熟成温度は、溶融下限温度よりも低い温度ではその効果が極めて小さくなる。熟成に要する時間は5分以上必要である。熟成時間は、その処理量、処理温度及び反応活性な水酸基(−OH)の許容残留量により異なるが、一般的には5分未満では満足できるレベルに到達することは極めて難しい。また、長時間では生産性が下がってくるので、望ましくは10分以上1週間以内である。
なお、加熱による溶融工程若しくは熟成工程において、不活性雰囲気下で行ったり、加圧下又は減圧下で行なうことにより時間を短縮できる傾向にある。また、マイクロ波加熱も有効である。さらには、加熱反応工程、溶融工程及び熟成工程を連続して行っても良い。
このオルガノアルコキシシランの重縮合物と複合させた場合、均一にさせるような有機ポリマーとしては、熱可塑性を示すことが望ましい。また、最終的に得られる有機無機ハイブリッドガラス状物質を光学用途に使用する場合は、芳香族環を含有する透明ポリマーであることが透明化しやすいために望ましい。
また、本発明に使用するオルガノアルコキシシランの重縮合物単独での飽和吸水率が0.03%と非常に低いことより、例えば飽和吸水率0.1%以下を維持させる場合には、有機ポリマーの飽和吸水率は0.14%以下であれば良い。
このような有機ポリマーは各種市販されているが、オルガノアルコキシシランの重縮合物と相容性が高く、透過率及び吸水率に関して良好なものには、スチレン・ブタジエンブロックコポリマーがある。
スチレン・ブタジエンブロックコポリマーは、従来周知のものを使用すればよく、また、分子量などについても特に限定されない。すなわち、ポリマーの分子量については、低分子量のものから高分子量のものまで使用可能であり、また、上記ポリマーには、種々の共重合体や部分変性体なども包含される。一般的には、スチレン・ブタジエンブロックコポリマーの分子量が小さいと、得られる有機無機ハイブリッドガラス状物質の硬度が低くなり、スチレン・ブタジエンブロックコポリマーの分子量が大きいと、オルガノアルコキシシランの重縮合物と相容性が低くなるため、用途により適宜選択する必要がある。
最終的に本発明の有機無機ハイブリッドガラス状物質を得るには、特に限定されないが、通常は、オルガノアルコキシシランの重縮合物合成工程で熟成工程が完了した段階で、必要量のスチレン・ブタジエンブロックコポリマーと溶解用溶媒を加えて、完全に溶解させ均一分散させる方法が採用される。
使用可能な溶媒としては、オルガノアルコキシシランの重縮合物とスチレン・ブタジエンブロックコポリマー両方とも溶解させる必要があり、溶媒としては、テトラヒドロフラン、キシレン、トルエン、クロロホルム等が該当するが、溶媒留去を考慮した場合、テトラヒドロフランが特に好ましい。
このようにして、溶解均一分散させた後、熱処理により溶媒留去させることで、有機無機ハイブリッドガラス状物質となる。
本発明の有機無機ハイブリッドガラス状物質は、オルガノアルコキシシランの重縮合物の出発原料により、融点は異なるものの、
・ 融点以上の温度で溶融状態とさせた後、所定の形状をしたモールドに流し込んで最終成型体とする
・ 前駆体として溶融成型した後、軟化温度以上の温度でプレス成型して最終成型体とする
・ 冷却固化物を研磨により最終成型体とする
等、目的とする形状に合わせて適時、選択することが可能である。
上記したような方法によって成形された成形体は、その有機無機ハイブリッドガラス状物質が持つ透明性、低吸水性などの各種特性をそのまま生かした用途に用いられる。
以下、実施例により説明する。
(オルガノアルコキシシランの重縮合物の合成)
オルガノアルコキシシランとしてフェニルトリエトキシシランとジフェニルジエトキシシランを用いて、混合工程として、フェニルトリエトキシラン19.3g(80mmol)とジフェニルジエトキシシラン5.4g(20mmol)を水90g(5mol)、エタノール87.4g(1.9mol)、触媒である酢酸を0.6g(10mmol)の混合溶液中に撹拌しながら滴下し、反応工程として60℃で3時間加熱することにより加水分解させた後、150℃に上げ、溶融させながら5時間加熱することにより部分重縮合を行った後、減圧環境で245℃で1時間処理し、常温まで冷却することにより、オルガノアルコキシシランの重縮合物を得た。このオルガノアルコキシシランの重縮合物は、無色透明で、軟化点が151℃のものであった。
(有機ポリマーアロイ化)
上記で合成した重縮合物50gに対して、スチレン・ブタジエンブロックコポリマー(商品名「アサフレックスM」:旭化成製、数平均分子量:約86000)を全固形分中に50重量%になるように50gを調合した後、溶媒としてテトラヒドロフランを全固形分の3倍にあたる300gを加え希釈した後、常温で完全に溶解するまで撹拌し、150℃に上げ、溶媒を除去することにより、有機無機ハイブリッドガラス状物質を得た。
(供試体作製)
上記で作製した有機無機ハイブリッドガラス状物質をシリコンモールドに所定量添加した後、真空オーブンを使用して、減圧下230℃雰囲気で60分保持することにより、溶融し、モールド形状に追従することが可能となり、その後、常温まで冷却することにより直径18mmで厚み2mmの円形の供試体を作製した。
この供試体について、可視光透過率は日立製作所製分光光度計U−4000を用いて、JIS R3106に基づき測定した。軟化温度は、理学製熱膨張測定器TMA8310を用いて、1g加重でのたわみ温度を測定した。吸水率はJIS K7209に準拠して、23℃の標準状態に保った蒸留水中に供試体を浸漬させ、逐次重量変化を測定し、変動がなくなった数値を飽和吸水率とした。硬度は、TECLOCK製デュロメータ(スプリング式硬度計)GS−702GのタイプDを用いて、JIS K 6253に準拠して、スプリング荷重値を測定した。
測定結果を表1に示す。
実施例1で作製したシリカ重縮合物を70gとし、スチレン・ブタジエンブロックコポリマーを30gとした以外は、実施例1と同様の操作で、アロイ化および供試体を作製し、評価した。
実施例1で作製した重縮合物を40gとし、スチレン・ブタジエンブロックコポリマーを60gとした以外は、実施例1と同様の操作で、アロイ化および供試体を作製し、評価した。
(比較例1)
実施例1で合成した、オルガノアルコキシシランの重縮合物のみを使用した以外は、実施例1と同様の操作で試供体を作製し、評価した。
(比較例2)
スチレン・ブタジエンブロックコポリマーのみで試供体を作製して評価した。
Figure 0004811170
(結果)
表1からわかるように、本発明の実施例のものは、可視光透過率85%以上、軟化温度が100〜123℃、飽和吸水率が0.1%以下であり、硬度の点からも光学材料への応用が十分可能なものであった。これに対して、比較例のものは、硬度が低い、飽和吸水率が高いなどの問題があった。
本発明は、PDPを始めとするディスプレイ部品の封着・被覆用材料、光スイッチや光結合器を始めとする光情報通信デバイス材料、LEDチップを始めとする光学機器材料、光機能性(非線形)光学材料、接着材料等、低融点ガラスが使われている分野、エポキシ等の有機材料が使われている分野など光学材料の広い分野に利用可能である。

Claims (4)

  1. 有機無機ハイブリッドガラス状物質において、R1 Si(OR24−n(R1フェニル基、R2は炭素数1〜5のアルキル基、nは1〜2)で表されるオルガノアルコキシシランの重縮合物とスチレン・ブタジエンブロックコポリマーを相容してなる複合物であり、前記オルガノアルコキシシランの重縮合物が重量%表示で40%以上、70%以下で、スチレン・ブタジエンブロックコポリマーが30%以上、60%以下であり、軟化温度が100℃から123℃であることを特徴とする有機無機ハイブリッドガラス状物質。
  2. 吸水率が飽和吸水率として0.1%以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機無機ハイブリッドガラス状物質。
  3. JIS R3106による可視光線透過率が厚さ2mmに対して85%以上を有する請求項1または2に記載の有機無機ハイブリッドガラス状物質。
  4. 出発原料であるシランアルコキシドとしてR1 2Si(OR22又はR1Si(OR23が使用されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の有機無機ハイブリッドガラス状物質。
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