JP4516706B2 - インク組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録方式の記録(印刷)に好適な擬1次元結晶性カラー有機顔料を含むインク組成物に関する。なお、本発明のインク組成物は、各種マーキング用具や器具の着色剤としても好適に使用できる。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、種々の機構によりインクの小滴を吐出させ、その小滴をメディア上に付着させ、ドットを形成して画像を記録する方式である。このため、記録時の騒音が少ない、フルカラー化が容易である、現像および定着が不要であり高速記録が可能であるなどの特長を有している。近年、このインクジェット記録方式は、ディスプレイなどに表示されたカラー画像、各種図形、カラー原稿などを印刷する方法として注目され、急速に普及している。
【0003】
インクジェット記録方式の記録に用いられるインクは、メディア上では速やかに乾燥定着し、ノズル内では乾燥しにくく、ノズル詰まりを起こしにくいという矛盾した特性が要求される。また、基本性能として保存安定性や安全性も要求される。さらに、メディアの種類によって、インクの浸透・吸収状態が大きく異なるため、使用できる紙が制限されるなどの問題点がある。特に、近年ではオフィスで一般に使用されているコピー用紙、レポート用紙、ノート、便箋などのいわゆる普通紙に対しても良好な記録を行えることが要求され、上記の問題点についての早急な改善が望まれている。
【0004】
インクは、着色剤としての染料または顔料とそれを溶解または分散させるための溶媒を主成分とする組成物であり、必要に応じて各種添加剤が含まれている。
顔料を用いたインクは、オフィス、パーソナル分野向けに多用されている水溶性染料を用いたインクよりも、耐水性、耐光性に優れ、デザイン、ディスプレイ市場の向けの大判印刷の分野において実用化が進んでいる。しかし、多種多様なメディアに高画質の出力が求められるオフィス、パーソナル分野向けへの応用は困難な状況にある。
【0005】
着色剤として顔料を用いた水性インクとしては、例えば、比較的極性の高い多孔質のカーボンブラックを用いたもの(特開平8−3498号公報および特表平10−510862号公報参照)、マイクロカプセル化有機顔料を用いたもの(特開平9−151342号公報および特開平10−140065号公報参照)があるが、彩度、乾燥速度、耐擦過性などの点で未だ充分とは言えない。
【0006】
顔料系のインクでは、長期間安定に溶媒中に顔料を分散させること(保存安定性)、記録装置のノズルの目詰まりがないことが特に求められる。例えば、特開平6−212106号公報には、高分子分散剤、界面活性剤などの分散剤などを用いて溶媒中に顔料を分散させる技術が開示されている。しかしながら、このような分散剤の添加は、一般にインクの泡立ちの原因となり、インクの吐出過程に影響を及ぼし、その結果、印字ムラを引き起こすという問題がある。
【0007】
特許第3000672号公報には、分散質としての着色成分(着色剤)の粒子径ならびに分散媒の表面張力特性を特定の範囲に制御することにより滲みの発生を抑えたインクジェット記録用インクが開示されている。
しかしながら、上記の公報には、X線回折スペクトルにおいて、最大強度を示す回折線とそのn次(n:2以上の整数)の回折線を主要ピークとして有する擬1次元結晶性カラー有機顔料を着色剤として用いるという技術思想はない。
【0008】
耐光性に優れた顔料を着色剤として使用すれば耐水性・耐光性は容易に達成できるが、インクジェット記録方式のインクとしては、安定なインクの吐出の確保、インクの保存安定性、メディア表面への定着性が問題となる。また、高い色濃度と耐擦過性の確保も未だ達成できていない。さらに、顔料を着色剤とし、1次色としてシアン顔料、マジェンタ顔料、イエロー顔料の3色を基本とすると、混色による濁りが発生し易く、高彩色な記録は実現できていないのが現状である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、普通紙記録に対して滲み、裏写りがなく、耐水性・耐光性・耐擦過性に優れ、色濃度の高い高品質(高精細、高彩度)記録が可能な顔料インク組成物を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、X線回折スペクトルにおいて、最大強度を示す回折線とそのn次(n:2以上の整数)の回折線を主要ピークとして有する擬1次元結晶性カラー有機顔料からなる着色剤、水溶性有機溶剤、界面活性剤および水溶性樹脂を主成分として含むインク組成物を用いることによって、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに到った。
また、本発明者らは、表面改質技術を用いて親水化を施す過程で上記の擬1次元結晶性を有するカラー有機顔料が得られることを見出した。
【0011】
さらに、本発明者らは、上記のインク組成物を用いると、普通紙に対する滲みと裏写りが抑止され、1次色として、シアン、マジェンタ、イエローの3色に加え、レッド、グリーン、ブルーを用いると、色の濁りのない極めて高精彩な記録装置、さらには両面同時印写の可能な記録装置が実現できること、またこのインク組成物は、長期間放置後もその安定したインク吐出性能の確保を可能にし、再起動時にノズルの目詰まりがないことを見出し、本発明を完成するに到った。
【0012】
かくして、本発明によれば、X線回折スペクトルにおいて、最大強度を示す回折線とそのn次(n:2以上の整数)の回折線のピーク面積が全回折線のピーク面積の65%以上である擬1次元結晶性カラー有機顔料からなる着色剤、水溶性有機溶剤、界面活性剤および水溶性樹脂を含有し、
前記擬1次元結晶性カラー有機顔料が、
C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー180およびC.I.ピグメントイエロー194から選択された結晶性イエロー顔料を濃硫酸中で改質することにより得られた擬1次元結晶性イエロー顔料;
C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド190、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド175、C.I.ピグメントレッド176およびC.I.ピグメントレッド185から選択された結晶性マジェンタ顔料を濃硫酸中で改質することにより得られた擬1次元結晶性マジェンタ顔料;
C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3およびC.I.ピグメントブルー15:4から選択される結晶性シアン顔料を濃硫酸中で改質することにより得られた擬1次元結晶性シアン顔料;
C.I.ピグメントブルー60またはC.I.ピグメントブルー15:6の結晶性ブルー顔料を濃硫酸中で改質することにより得られた擬1次元結晶性ブルー顔料;
C.I.ピグメントグリーン7またはC.I.ピグメントグリーン36の結晶性グリーン顔料を濃硫酸中で改質することにより得られた擬1次元結晶性グリーン顔料;および
C.I.ピグメントレッド238またはC.I.ピグメントレッド221の結晶性レッド顔料を濃硫酸中で改質することにより得られた擬1次元結晶性レッド顔料
から選択され、
前記水溶性有機溶剤が、
2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンおよび1,3−ジメチル−イミダゾリジノンから選択される含窒素複素環式ケトン類;
エチレングリコール−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテルおよびメチルカルビトールから選択されるグリコールエーテル類;および
プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールおよびテトラプロピレングリコールから選択されるプロピレングリコール類
を含む有機溶剤であることを特徴とするインク組成物が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、擬1次元結晶性カラー有機顔料からなる着色剤、特定の水溶性有機溶剤、界面活性剤および水溶性樹脂を主成分として含む水系のインク組成物について述べるが、これに限定されるものではなく、本発明は非水系のインク組成物にも適用できる。
【0014】
本発明のインク組成物は、X線回折スペクトルにおいて、最大強度を示す回折線とそのn次(n:2以上の整数)の回折線を主要ピークとして有する擬1次元結晶性カラー有機顔料からなる着色剤、水溶性有機溶剤、界面活性剤および水溶性樹脂を含有することを特徴とする顔料分散型のインク組成物である。
本発明における「擬1次元結晶」とは、実質的に1軸方向の周期性が認められる結晶を意味する。
また、「主要ピーク」とは、最大強度を示す回折線とそのn次(n:2以上の整数)の回折線のピーク面積が、全回折線のピーク面積の65%以上であることを意味するが、X線回折スペクトルは、最大強度を示す回折線とそのn次(n:2以上の整数)の回折線のみからなるのが好ましい。
【0015】
本発明の着色剤を構成する擬1次元結晶性カラー有機顔料は、上記の条件を備えたイエロー、マジェンタおよびシアンの3原色の擬1次元結晶性カラー有機顔料、さらには補色となるブルー、グリーンおよびレッドの擬1次元結晶性カラー有機顔料である。このような擬1次元結晶性カラー有機顔料を用いることにより、高彩度、高濃度の発色が可能なインク組成物を提供することができる。
【0016】
このような擬1次元結晶性カラー有機顔料は、X線回折スペクトルにおいて、最大強度を示す回折線とそのn次(n:2以上の整数)の回折線を主要ピークとして有するが、そのX線回折スペクトルは顔料の種類によって異なる。
擬1次元結晶性カラー有機顔料のX線回折スペクトルにおける最大強度を示す回折線のブラッグ角(2θ±0.2°)の好ましい例を以下に示す。
イエロー顔料 :5.4°
マジェンタ顔料 :5.7°
シアン顔料 :5.7°
なお、このスペクトルはCuKα線(0.154050nm)を用いた場合の数値である。
【0017】
本発明の擬1次元結晶性カラー有機顔料は、例えば、通常の結晶性カラー有機顔料を化学的処理および/または物理的処理により改質することにより製造することができる。この処理は粒子表面のみの改質には止まらず、結晶格子を大きく歪ませる程度まで改質するものであり、処理方法によっては同時に親水性も付与される。
【0018】
擬1次元結晶性カラー有機顔料を製造するための化学的処理および/または物理的処理としては、酸素雰囲気での紫外線照射(例えば、酸素ガス雰囲気中で低圧水銀ランプ(λ:185nm)を照射する方法)、反応性プラズマガス中での暴露(例えば、真空下で低圧酸素ガスのグロー放電プラズマ中に暴露する方法)および酸処理(例えば、大気下、湿式で、発煙硫酸やクロロスルホン酸で処理する方法)が挙げられるが、擬1次元結晶性カラー有機顔料が最も得られやすいことから、酸処理が好ましい。
酸処理としては、例えば、結晶性カラー有機顔料と顔料重量の10〜50倍程度の濃硫酸(98%)とを0.5〜3時間程度攪拌し、得られた混合溶液を0℃程度の水中に急速に滴下攪拌する方法が挙げられる。
【0019】
上記の改質処理では、有機顔料の耐性が求められる。つまり、顔料によっては改質処理中に分解したり変色することもあるので、処理条件を最適化すると共に耐性のある顔料の選定が重要となる。
【0020】
このような顔料としては、例えば、印刷インク、トナー、塗料などの着色剤として用いられるアゾ顔料(例えば、モノアゾイエロー顔料、ナフトールAS顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ジスアゾイエロー顔料、ピラゾロン顔料、縮合アゾ顔料など)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、チオインジゴ顔料、アンサンスロン顔料など)などが結晶性カラー有機顔料が挙げられる。これらの顔料を上記の処理に付すことにより、本発明の着色剤、すなわち擬1次元結晶性カラー有機顔料が得られる。
【0021】
本発明において用いられる顔料の具体例を示す。
イエロー顔料としては、C.I.ピグメントイエロー74のようなモノアゾイエロー顔料、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー83およびC.I.ピグメントイエロー176のようなジスアゾイエロー顔料、C.I.ピグメントイエロー128のような縮合アゾ顔料、ならびにC.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー180およびC.I.ピグメントイエロー194のようなベンズイミダゾロン顔料などが挙げられ、これらの中でも、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー180およびC.I.ピグメントイエロー194が特に好ましい。
【0022】
マジェンタ顔料としては、C.I.ピグメントレッド122およびC.I.ピグメントレッド202のようなキナクリドン顔料、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド190およびC.I.ピグメントレッド224のようなペリレン顔料、ならびにC.I.ピグメントレッド175、C.I.ピグメントレッド176およびC.I.ピグメントレッド185のようなナフトールAS―ベンズイミダゾロン顔料などが挙げられる。
【0023】
シアン顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3およびC.I.ピグメントブルー15:4のようなフタロシアニン顔料などが挙げられる。
【0024】
ブルー顔料としては、C.I.ピグメントブルー60およびC.I.ピグメントブルー15:6のようなフタロシアニン顔料などが挙げられる。
グリーン顔料としては、C.I.ピグメントグリーン7およびC.I.ピグメントグリーン36のようなフタロシアニン顔料などが挙げられる。
レッド顔料では、C.I.ピグメントレッド238のようなナフトールAS顔料、およびC.I.ピグメントレッド221のような縮合アゾ顔料などが挙げられる。
【0025】
本発明のインク組成物には、上記の擬1次元結晶性カラー有機顔料からなる着色剤の1種を単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いられる。その含有量は、1〜10重量%が好ましく、2〜5重量%がより好ましい。着色剤が1重量%未満の場合には、印字濃度が低くなるので好ましくない。また、着色剤が10重量%を超える場合には、粘度が高く、分散安定性に劣るので好ましくない。
【0026】
本発明において用いられる水溶性有機溶剤としては、含窒素複素環式ケトン類、グリコールエーテル類、プロピレングリコール類が挙げられる。
【0027】
含窒素複素環式ケトン類は、インクの乾燥に伴う目詰まり防止剤としても機能し、擬1次元結晶性カラー有機顔料との組み合わせにおいて、インクの保存安定性の向上、高粘度領域での流動性の改善などの効果が得られる。インク組成物への含窒素有機溶剤の添加量は、1〜10重量%程度、好ましくは2〜6重量%である。含窒素複素環式ケトン類が1重量%未満の場合には、上記の効果が得られないので好ましくない。また、含窒素複素環式ケトン類の添加量が10重量%を超える場合には、粘度が高く、分散安定性に劣るので好ましくない。
【0028】
含窒素複素環式ケトン類の好ましい例としては、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノンなどが挙げられる。
また、上記の含窒素複素環式ケトン類以外に、pH調整剤および目詰まり防止剤として、尿素、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの含窒素有機溶剤が好適に用いられる。
【0029】
グリコールエーテル類は、乾燥性を早めるだけではなく、メディア表面に擬1次元結晶性カラー有機顔料を効率的に定着させたり、あるいは普通紙において滲みを防止するといった重要な役割を果たす。また、擬1次元結晶性カラー有機顔料の種類によっては、インク組成物の粘度を飛躍的に低下させる機能を有する。インク組成物へのグリコールエーテル類の添加量は、1〜15重量%程度、好ましくは2〜10重量%である。なお、グリコールエーテル類の添加量が1重量%未満の場合には、上記の効果が得られないので好ましくない。また、含窒素複素環式ケトン類の添加量が15重量%を超える場合には、分散安定性に劣るので好ましくない。
【0030】
グリコールエーテル類の好ましい例としては、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル、メチルカルビトールなどが挙げられる。
【0031】
プロピレングリコール類は、インク組成物の保存安定性、記録特性およびメディアに対する定着性の向上に寄与するだけでなく、前記の含窒素複素環式ケトン類と同様に、インクの乾燥に伴うノズルやオリフィスでの目詰まり防止剤としても機能する。インク組成物へのプロピレングリコール類の添加量は、1〜30重量%程度、好ましくは2〜25重量%である。なお、プロピレングリコール類の添加量が1重量%未満の場合には、上記の効果が得られないので好ましくない。また、プロピレングリコール類の添加量が30重量%を超える場合には、滲み特性や乾燥性に劣るので好ましくない。
【0032】
プロピレングリコール類の好ましい例としては、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0033】
本発明のインク組成物には、界面活性剤としてアセチレンジオール系界面活性剤が好適に用いられる。アセチレンジオール系界面活性剤は、インク組成物の分散安定性を向上させ、普通紙に対する滲みと裏写りを抑止し、耐刷性を向上させる。インク組成物へのアセチレンジオール系界面活性剤の添加量は、0.1〜2重量%程度、好ましくは0.5〜1.5重量%である。なお、アセチレンジオール系界面活性剤の添加量が上記の範囲であれば、より滲みの少ない画像を実現できる。
【0034】
アセチレンジオール系界面活性剤の好ましい例としては、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。具体的には、Air Products and Chemicals Inc.社から上市されているサーフィノール104、82、465、485、504、TGなどが挙げられる。
【0035】
なお、一部のアセチレンジオール系界面活性剤、例えば、サーフィノール104およびサーフィノールTGは、親水性親油性バランス(HLB)が低いために、水に対する溶解度が低くなるが、インク組成物にグリコールエーテル類、グリコール類、他の界面活性剤を添加することで溶解度を改善することができる。
【0036】
本発明のインク組成物には、水溶性樹脂としてスチレン−αメチルスチレン−アクリル酸からなる三元共重合体が好適に用いられる。スチレン−αメチルスチレン−アクリル酸からなる三元共重合体は、インク組成物の耐光性の向上に寄与する。
インク組成物へのスチレン−αメチルスチレン−アクリル酸からなる三元共重合体の添加量は、0.5〜8重量%程度、好ましくは1〜6重量%である。なお、三元共重合体の添加量が0.5重量%未満の場合には、上記の効果が得られないので好ましくない。また、三元共重合体の添加量が8重量%を超える場合には、インク組成物の粘度を低く設定するのが困難になり、また液滴が十分に生成できなくなるので好ましくない。
【0037】
スチレン−αメチルスチレン−アクリル酸からなる三元共重合体は、公知の方法で各モノマーを共重合させることにより得ることができ、アクリル酸1モルに対して、スチレンおよびαメチルスチレンの合計3〜5モルを共重合せしめたものが好ましく、アクリル酸1モルに対して、スチレン1.5〜2.5モルおよびαメチルスチレン1.5〜2.5モルを共重合せしめたものがより好ましく、アクリル酸1モルに対して、スチレン1.7〜2.3モルおよびαメチルスチレン1.8〜2.2モルを共重合せしめたものが特に好ましい。前記の割合で各モノマーを共重合させることにより、優れた分散安定性、耐水性、再溶解性を得ることができる。
【0038】
三元共重合体の重量平均分子量は、インク組成物における擬1次元結晶性カラー有機顔料の分散性およびインク吐出安定性などの点で、2,000〜8,000が好ましく、2,000〜5,000がより好ましい。
三元共重合体の酸価は、紙面における耐水性およびヘッド部でのインクの再溶解性などの点で、90〜130が好ましい。
【0039】
スチレン−αメチルスチレン−アクリル酸からなる三元共重合体の好ましい例としては、ジョンソンポリマー社から上市されているジョンクリル57、ジョンクリル60、ジョンクリル62、ジョンクリル63などが挙げらる。
【0040】
本発明のインク組成物には、上記の三元共重合体をインク組成物の液体成分に安定に溶解させておくために、中和剤を用いるのが好ましい。
中和剤の好ましい例としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、脂肪族アミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、メチルエタノールアミンなどのアルコールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノールなどが挙げられる。このような中和剤を、三元共重合体中のアクリル酸と等モルないし数%過剰に使用することにより、三元共重合体をインク組成物の液体成分に安定に溶解させることができ、また三元共重合体の再溶解性および記録物の耐水性を良好に調整できる。
【0041】
本発明のインク組成物には、上記の成分以外にさらにインクの諸物性を改善するために必要に応じて適当な調整剤を添加することができる。物性調整剤としては、例えば、湿潤剤、浸透剤、粘度調整剤、防カビ剤、防腐剤などが挙げられる。
【0042】
湿潤剤は、インク組成物の保存安定性、記録特性およびメディアに対する定着性の向上にも寄与する。また、含窒素有機溶剤と同様に、インクの乾燥によるノズルやオリフィスでの目詰まり防止剤としても機能する。インク組成物への湿潤剤の添加量は、0.5〜40重量%程度、好ましくは3〜10重量%である。
【0043】
湿潤剤の好ましい例としては、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコール、オクタエチレングリコール、エチレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、へキシレングリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0044】
さらに、上記の湿潤剤に加えて、インク組成物には低沸点有機溶剤を添加するのが好ましい。インク組成物への低沸点有機溶剤の添加量は、0.5〜10重量%程度、好ましくは1.5〜6重量%である。
【0045】
低沸点有機溶剤の好ましい例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、iso−ブタノール、n−ペンタノールなどの1級、2級および3級アルコールが挙げられ、特に1級アルコールが好ましい。
【0046】
浸透剤は、乾燥性を早めるだけではなく、メディア表面に着色剤を効率的に定着させたり、あるいは普通紙において滲みを防止するといった重要な役割を果たす。インク組成物への浸透剤の添加量は、0.1〜5重量%程度、好ましくは0.5〜4重量%である。なお、浸透剤の添加量が前記の範囲外の場合には、乾燥性、滲み防止の効果が劣化するので好ましくない。
【0047】
浸透剤の好ましい例としては、前記のグリコールエーテル類およびアセチレンジオール系界面活性剤以外に、アニオン型であるパーフルオロアルキルスルホン酸アンモニウム塩、パーフルオロアルキルスルホン酸カリウム塩、パーフルオロアルキルカルボン酸カリウム塩 、ないしはノニオン型であるパーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール、パーフルオロアルキルアルコキシレート、フッ素化アルキルエステルなどのフッ素系界面活性剤などが挙げられるが、表面張力を低下させる機能をもつものであれば、これらに限定されるものではない。
【0048】
さらに、上記の浸透剤に加えて浸透性を制御するために、インク組成物には界面活性剤、特にノニオン性界面活性剤を添加するのが好ましい。インク組成物への界面活性剤の添加量は、0.1〜2重量%程度、好ましくは0.2〜1重量%である。なお、界面活性剤の添加量が前記の範囲外の場合には、滲み、裏写りが大きくなるので好ましくない。
カチオン界面活性剤およびアニオン界面活性剤は、本発明の着色剤との組み合わせにおいて、泡立ちし易く、分散安定性が劣化し易く、裏写りが大きくなり易いので好ましくない。
【0049】
ノニオン性界面活性剤の好ましい例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルなどのアルキルエーテル型、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどのアルキルフェノール型、ポリオキシエチレンモノステアレートなどのアルキルエステル型、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノラウレートなどのソルビタンエステル型、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどのソルビタンエステルエーテル型が挙げられる。
【0050】
本発明のインク組成物は、上記の各成分を適宜、適当な方法で水に分散あるいは混合することによって調製することができる。凝集状態の本発明の着色剤(擬1次元結晶性カラー有機顔料)を、本発明において規定する体積平均粒子径の微粒子にまで分散する方法としては、ダイノミル分散法、ペイントシェーカー分散法、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法、ビーズミル分散法、超音波分散法などの通常の方法を採用することができる。
【0051】
本発明によれば、色濃度の高い記録を実現すると同時に、着色剤粒子の光散乱を制御することで鮮やかな色再現(高彩色記録)も得られ、かつ普通紙に記録した場合でも滲みと裏写りが極めて少ない記録が得られる。また、本発明によれば、インク組成物の分散安定性、保存安定性も向上する。
【0052】
【実施例】
本発明を製造例、比較製造例、実施例および比較例に基づいてさらに具体的に説明するが、これらの製造例および実施例により本発明が限定されるものではない。
【0053】
製造例1〜3において得られた擬1次元結晶性カラー有機顔料の分光反射スペクトルを、日本平板機材株式会社製の分光測色計X−Rite938を用いて測定した。
また、製造例1〜9において得られた擬1次元結晶性カラー有機顔料のX線回折パターンを、マックサイエンス社製の粉末X線回折装置MXP−18(X線源:CuKα=0.154050nm)を用いて測定した。
【0054】
(製造例1)
5℃前後に冷却した濃硫酸(98%)約100gに、C.I.ピグメントイエロー180を3g加え、2時間攪拌後、0℃の水中に急速に滴下攪拌して、擬1次元結晶性カラー有機顔料を得た。
得られた顔料の分光反射スペクトルおよびX線回折スペクトルをそれぞれ図1(a)および図2に示す。X線回折スペクトルでは、ブラッグ角(2θ±0.2°)5.4°に最大回折ピーク(半値全幅(FWHM)=0.7°)を示し、2次および3次の回折ピークが10.8°および16.1°に観測された。
【0055】
(製造例2)
濃硫酸を50℃に加熱し、顔料としてC.I.ピグメントレッド185を用いる以外は製造例1と同様にして、擬1次元結晶性カラー有機顔料を得た。
得られた顔料の分光反射スペクトルおよびX線回折スペクトルをそれぞれ図1(b)および図3に示す。X線回折スペクトルでは、ブラッグ角(2θ±0.2°)5.7°に最大回折ピーク(FWHM=0.6°)を示し、2次のブロードな回折ピークが11.8°に観測された。
【0056】
(製造例3)
濃硫酸を150℃に加熱し、顔料としてC.I.ピグメントシアン15:3を用いる以外は製造例1と同様にして、擬1次元結晶性カラー有機顔料を得た。
得られた顔料の分光反射スペクトルおよびX線回折スペクトルをそれぞれ図1(c)および図4に示す。X線回折スペクトルでは、ブラッグ角(2θ±0.2°)5.7°に最大回折ピーク(FWHM=0.9°)が観測されたが、2次以上の高次の明瞭な回折ピークは観測されなかった。
【0057】
(製造例4〜9)
顔料としてC.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントグリーン7およびC.I.ピグメントレッド238をそれぞれ用いて、擬1次元結晶性カラー有機顔料を得た。
得られた顔料のX線回折スペクトルの最大回折ピーク(FWHM)を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
(比較製造例)
顔料として比較的耐光性の弱い顔料(C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントレッド23など)を製造例1〜3と同様にして処理したが、何れの改質技術においても、本発明に使用できる擬1次元結晶性カラー顔料を得ることができなかった。
【0060】
実施例および比較例において得られたインク組成物中の顔料の粒子サイズを、大塚電子株式会社製の電気泳動光散乱光度計ELS−8000を用いて測定し、得られたデータから体積平均粒子径(nm)を求めた。
【0061】
(実施例1)
【0062】
ジエチレングリコール、テトラプロピレングリコール、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、n−プロパノール、尿素、2−ピロリドン、サーフィノール465、ジョンクリル60を除く前記成分を混合し、ペイントコンディショナー装置(レッドレベル社製)により直径0.8mmのジルコニアビーズと共に2時間分散処理を施し、ジルコニアビーズを除去後、残りの構成成分を混合し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過してインク組成物を得た。得られたインク組成物中での顔料の体積平均粒子径は82nmであった。
【0063】
(実施例2)
【0064】
ジエチレングリコール、テトラプロピレングリコール、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、n−プロパノール、尿素、2−ピロリドン、サーフィノール465、ジョンクリル60を除く前記成分を混合し、ペイントコンディショナー装置(レッドレベル社製)により直径0.8mmのジルコニアビーズと共に2時間分散処理を施し、ジルコニアビーズを除去後、残りの構成成分を混合し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過してインク組成物を得た。得られたインク組成物中での顔料の体積平均粒子径は75nmであった。
【0065】
(実施例3)
【0066】
ジエチレングリコール、テトラプロピレングリコール、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、n−プロパノール、尿素、2−ピロリドン、サーフィノール465、ジョンクリル60を除く前記成分を混合し、ペイントコンディショナー装置(レッドレベル社製)により直径0.8mmのジルコニアビーズと共に2時間分散処理を施し、ジルコニアビーズを除去後、残りの構成成分を混合し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過してインク組成物を得た。得られたインク組成物中での顔料の体積平均粒子径は68nmであった。
【0067】
(実施例4)
【0068】
ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、メチルカルビトール、n−プロパノール、尿素、N−メチル−2−ピロリドン、サーフィノール465、ジョンクリル57を除く前記成分を混合し、ペイントコンディショナー装置(レッドレベル社製)により直径0.8mmのジルコニアビーズと共に2時間分散処理を施し、ジルコニアビーズを除去後、残りの構成成分を混合し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過してインク組成物を得た。得られたインク組成物中での顔料の体積平均粒子径は78nmであった。
【0069】
(実施例5)
【0070】
ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、メチルカルビトール、n−プロパノール、尿素、N−メチル−2−ピロリドン、サーフィノール465、ジョンクリル57を除く前記成分を混合し、ペイントコンディショナー装置(レッドレベル社製)により直径0.8mmのジルコニアビーズと共に2時間分散処理を施し、ジルコニアビーズを除去後、残りの構成成分を混合し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過してインク組成物を得た。得られたインク組成物中での顔料の体積平均粒子径は80nmであった。
【0071】
(実施例6)
【0072】
ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、メチルカルビトール、n−プロパノール、尿素、N−メチル−2−ピロリドン、サーフィノール465、ジョンクリル57を除く前記成分を混合し、ペイントコンディショナー装置(レッドレベル社製)により直径0.8mmのジルコニアビーズと共に2時間分散処理を施し、ジルコニアビーズを除去後、残りの構成成分を混合し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過してインク組成物を得た。得られたインク組成物中での顔料の体積平均粒子径は70nmであった。
【0073】
(実施例7)
【0074】
ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテル、イソプロパノール、尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジン、サーフィノール504、ジョンクリル63を除く前記成分を混合し、ペイントコンディショナー装置(レッドレベル社製)により直径0.8mmのジルコニアビーズと共に2時間分散処理を施し、ジルコニアビーズを除去後、残りの構成成分を混合し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過してインク組成物を得た。得られたインク組成物中での顔料の体積平均粒子径は65nmであった。
【0075】
(実施例8)
【0076】
ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテル、イソプロパノール、尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジン、サーフィノール504、ジョンクリル63を除く前記成分を混合し、ペイントコンディショナー装置(レッドレベル社製)により直径0.8mmのジルコニアビーズと共に2時間分散処理を施し、ジルコニアビーズを除去後、残りの構成成分を混合し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過してインク組成物を得た。得られたインク組成物中での顔料の体積平均粒子径は76nmであった。
【0077】
(実施例9)
【0078】
ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテル、イソプロパノール、尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジン、サーフィノール504、ジョンクリル63を除く前記成分を混合し、ペイントコンディショナー装置(レッドレベル社製)により直径0.8mmのジルコニアビーズと共に2時間分散処理を施し、ジルコニアビーズを除去後、残りの構成成分を混合し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過してインク組成物を得た。得られたインク組成物中での顔料の体積平均粒子径は80nmであった。
【0079】
(比較例1)
【0080】
ジエチレングリコール、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、n−プロパノール、尿素、2−ピロリドン、サーフィノール465、ジョンクリル60を除く前記成分を混合し、ペイントコンディショナー装置(レッドレベル社製)により直径0.8mmのジルコニアビーズと共に2時間分散処理を施し、ジルコニアビーズを除去後、残りの構成成分を混合し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過してインク組成物を得た。得られたインク組成物中での顔料の体積平均粒子径は85nmであった。
【0081】
(比較例2)
【0082】
ジエチレングリコール、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、メチルカルビトール、n−プロパノール、尿素、N−メチル−2−ピロリドン、サーフィノール465、ジョンクリル57を除く前記成分を混合し、ペイントコンディショナー装置(レッドレベル社製)により直径0.8mmのジルコニアビーズと共に2時間分散処理を施し、ジルコニアビーズを除去後、残りの構成成分を混合し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過してインク組成物を得た。得られたインク組成物中での顔料の体積平均粒子径は83nmであった。
【0083】
(比較例3)
【0084】
ジエチレングリコール、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテル、イソプロパノール、尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジン、サーフィノール504、ジョンクリル63を除く前記成分を混合し、ペイントコンディショナー装置(レッドレベル社製)により直径0.8mmのジルコニアビーズと共に2時間分散処理を施し、ジルコニアビーズを除去後、残りの構成成分を混合し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過してインク組成物を得た。得られたインク組成物中での顔料の体積平均粒子径は85nmであった。
【0085】
(比較例4)
【0086】
ジエチレングリコール、テトラプロピレングリコール、n−プロパノール、尿素、2−ピロリドン、サーフィノール465、ジョンクリル60を除く前記成分を混合し、ペイントコンディショナー装置(レッドレベル社製)により直径0.8mmのジルコニアビーズと共に2時間分散処理を施し、ジルコニアビーズを除去後、残りの構成成分を混合し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過してインク組成物を得た。得られたインク組成物中での顔料の体積平均粒子径は76nmであった。
【0087】
(比較例5)
【0088】
ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、n−プロパノール、尿素、N−メチル−2−ピロリドン、サーフィノール465、ジョンクリル57を除く前記成分を混合し、ペイントコンディショナー装置(レッドレベル社製)により直径0.8mmのジルコニアビーズと共に2時間分散処理を施し、ジルコニアビーズを除去後、残りの構成成分を混合し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過してインク組成物を得た。得られたインク組成物中での顔料の体積平均粒子径は72nmであった。
【0089】
(比較例6)
【0090】
ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプロパノール、尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジン、サーフィノール504、ジョンクリル63を除く前記成分を混合し、ペイントコンディショナー装置(レッドレベル社製)により直径0.8mmのジルコニアビーズと共に2時間分散処理を施し、ジルコニアビーズを除去後、残りの構成成分を混合し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過してインク組成物を得た。得られたインク組成物中での顔料の体積平均粒子径は74nmであった。
【0091】
(比較例7)
【0092】
ジエチレングリコール、テトラプロピレングリコール、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、n−プロパノール、尿素、サーフィノール465、ジョンクリル60を除く前記成分を混合し、ペイントコンディショナー装置(レッドレベル社製)により直径0.8mmのジルコニアビーズと共に2時間分散処理を施し、ジルコニアビーズを除去後、残りの構成成分を混合し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過してインク組成物を得た。得られたインク組成物中での顔料の体積平均粒子径は70nmであった。
【0093】
(比較例8)
【0094】
ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、メチルカルビトール、n−プロパノール、尿素、サーフィノール465、ジョンクリル57を除く前記成分を混合し、ペイントコンディショナー装置(レッドレベル社製)により直径0.8mmのジルコニアビーズと共に2時間分散処理を施し、ジルコニアビーズを除去後、残りの構成成分を混合し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過してインク組成物を得た。得られたインク組成物中での顔料の体積平均粒子径は71nmであった。
【0095】
(比較例9)
【0096】
ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテル、イソプロパノール、尿素、サーフィノール504、ジョンクリル63を除く前記成分を混合し、ペイントコンディショナー装置(レッドレベル社製)により直径0.8mmのジルコニアビーズと共に2時間分散処理を施し、ジルコニアビーズを除去後、残りの構成成分を混合し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過してインク組成物を得た。得られたインク組成物中での顔料の体積平均粒子径は70nmであった。
【0097】
(比較例10)
【0098】
ジエチレングリコール、テトラプロピレングリコール、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、n−プロパノール、尿素、2−ピロリドン、ジョンクリル60を除く前記成分を混合し、ペイントコンディショナー装置(レッドレベル社製)により直径0.8mmのジルコニアビーズと共に2時間分散処理を施し、ジルコニアビーズを除去後、残りの構成成分を混合し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過してインク組成物を得た。得られたインク組成物中での顔料の体積平均粒子径は72nmであった。
【0099】
(比較例11)
【0100】
ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、メチルカルビトール、n−プロパノール、尿素、N−メチル−2−ピロリドン、ジョンクリル57を除く前記成分を混合し、ペイントコンディショナー装置(レッドレベル社製)により直径0.8mmのジルコニアビーズと共に2時間分散処理を施し、ジルコニアビーズを除去後、残りの構成成分を混合し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過してインク組成物を得た。得られたインク組成物中での顔料の体積平均粒子径は76nmであった。
【0101】
(比較例12)
【0102】
ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテル、イソプロパノール、尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジン、ジョンクリル63を除く前記成分を混合し、ペイントコンディショナー装置(レッドレベル社製)により直径0.8mmのジルコニアビーズと共に2時間分散処理を施し、ジルコニアビーズを除去後、残りの構成成分を混合し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過してインク組成物を得た。得られたインク組成物中での顔料の体積平均粒子径は70nmであった。
【0103】
(比較例13)
【0104】
ジエチレングリコール、テトラプロピレングリコール、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、n−プロパノール、尿素、2−ピロリドン、サーフィノール465を除く前記成分を混合し、ペイントコンディショナー装置(レッドレベル社製)により直径0.8mmのジルコニアビーズと共に2時間分散処理を施し、ジルコニアビーズを除去後、残りの構成成分を混合し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過してインク組成物を得た。得られたインク組成物中での顔料の体積平均粒子径は88nmであった。
【0105】
(比較例14)
【0106】
ジエチレングリコール、テトラプロピレングリコール、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、n−プロパノール、尿素、2−ピロリドン、サーフィノール465を除く前記成分を混合し、ペイントコンディショナー装置(レッドレベル社製)により直径0.8mmのジルコニアビーズと共に2時間分散処理を施し、ジルコニアビーズを除去後、残りの構成成分を混合し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過してインク組成物を得た。得られたインク組成物中での顔料の体積平均粒子径は80nmであった。
【0107】
(比較例15)
【0108】
ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、メチルカルビトール、n−プロパノール、尿素、N−メチル−2−ピロリドン、サーフィノール465を除く前記成分を混合し、ペイントコンディショナー装置(レッドレベル社製)により直径0.8mmのジルコニアビーズと共に2時間分散処理を施し、ジルコニアビーズを除去後、残りの構成成分を混合し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過してインク組成物を得た。得られたインク組成物中での顔料の体積平均粒子径は78nmであった。
【0109】
(比較例16)
【0110】
ジエチレングリコール、テトラプロピレングリコール、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、n−プロパノール、尿素、2−ピロリドン、サーフィノール465、ジョンクリル60を除く前記成分を混合し、ペイントコンディショナー装置(レッドレベル社製)により直径0.8mmのジルコニアビーズと共に4時間分散処理を施し、ジルコニアビーズを除去後、残りの構成成分を混合し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過してインク組成物を得た。得られたインク組成物中での顔料の体積平均粒子径は123nmであった。
【0111】
(比較例17)
【0112】
ジエチレングリコール、テトラプロピレングリコール、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、n−プロパノール、尿素、2−ピロリドン、サーフィノール465、ジョンクリル60を除く前記成分を混合し、ペイントコンディショナー装置(レッドレベル社製)により直径0.8mmのジルコニアビーズと共に4時間分散処理を施し、ジルコニアビーズを除去後、残りの構成成分を混合し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過してインク組成物を得た。得られたインク組成物中での顔料の体積平均粒子径は130nmであった。
【0113】
(比較例18)
【0114】
ジエチレングリコール、テトラプロピレングリコール、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、n−プロパノール、尿素、2−ピロリドン、サーフィノール465、ジョンクリル60を除く前記成分を混合し、ペイントコンディショナー装置(レッドレベル社製)により直径0.8mmのジルコニアビーズと共に4時間分散処理を施し、ジルコニアビーズを除去後、残りの構成成分を混合し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過してインク組成物を得た。得られたインク組成物中での顔料の体積平均粒子径は105nmであった。
【0115】
実施例および比較例で得られたインク組成物の特性を、それぞれ以下に示す方法で評価した。
【0116】
(A)反射濃度
各インク組成物を一定量(1.0ml)採取し、専用コート紙(RW−P4A4)上にアプリケータ塗布したものを乾燥して、反射濃度測定用サンプルを得た。得られたサンプルについて、濃度計RD−918(マクベス社製)を用いて、反射濃度を測定した。1.40以上の値であれば、良好と評価した。
【0117】
(B)裏写り
反射濃度測定用サンプルと同様にして、インク組成物を普通紙(SF−4AM3)上に塗布したものを乾燥して、裏写り評価用サンプルを得た。得られたサンプルの裏面(インク組成物を塗布していない面)の反射濃度を、濃度計RD−918(マクベス社製)を用いて測定し、裏写りの程度を評価した。0.12以下の値であれば、両面印刷が可能と評価した。
【0118】
(C)色特性
反射濃度測定用サンプルについて、分光測色計(Spectrodensitometer)X−Rite938(日本平版機材株式会社製)を用いて、L*a*b*表色系における色特性(明度、色度)を評価した。色の鮮やかさ(彩度C*)は、次式により求めた。
【0119】
【数1】
【0120】
(D)滲み特性
インクジェットプリンターPM750C(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、コピー用紙Xerox P紙(登録商標、富士ゼロックス株式会社製)に格子状の細線を印字し、印字の滲みを目視観察し、以下の基準で滲み特性を評価した。
○ :滲みが発生しなかったもの
△ :滲みが発生したが、実用上許容できる範囲のもの
× :ひげ状の滲みが発生したもの
【0121】
(E)保存安定性
各インク組成物(約20ml)をラボランスクリュー管瓶に入れ、60℃で1ヶ月の保存テストを実施した。1ヶ月後に動的光散乱式粒度分布測定装置LB−500(株式会社堀場製作所製)を用いて、顔料の粒子径を測定した。得られた結果と予め測定しておいた保存テスト前の粒子径とから変化率を求め、以下の基準により保存安定性を評価した。
◎ :変化率が5%以下のもの
○ :変化率が10%以下のもの
△ :変化率が20%以下のもの
× :変化率が20%を超えるもの
【0122】
(F)耐光性
反射濃度測定サンプルを、耐光性試験機Q−SUN Xenon Test Chamberに設置し、0.35W/m2(λ=340nm)の光を300時間照射して、試験前後のΔEを測定した。10未満の値であれば、良好と評価した。
【0123】
(G)吐出安定性
インクジェットプリンターPM750C(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、▲1▼10秒間インク連続吐出および▲2▼一定時間休止を繰り返す、インクの間欠吐出を行い、吐出安定性を以下の基準により評価した。
◎ :21〜30秒間休止してもインクを安定に吐出したもの
○ :11〜20秒間休止してもインクを安定に吐出したもの
△ :10秒以下の休止時間でのみインクを安定に吐出したもの
× :インクを安定に吐出しなかったもの
【0124】
(H)耐水性
インクジェットプリンターPM750C(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、コピー用紙Xerox P紙(登録商標、富士ゼロックス株式会社製)にベタ印字を行い、印字物を1時間自然乾燥した後、印字物を水に浸漬し、濃度計RD−918(マクベス社製)を用いて、印字物の濃度(OD値)を測定した。
得られた結果と予め測定しておいた浸漬前の濃度とから変化率を求め、以下の基準により耐水性を評価した。
◎ :浸漬前後でOD値の変化が0.1未満のもの
○ :浸漬前後でOD値の変化が0.1以上0.3未満のもの
△ :浸漬前後でOD値の変化が0.3以上0.5未満のもの
× :浸漬前後でOD値の変化が0.5以上のもの
【0125】
(I)定着性インクジェットプリンターPM750C(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、OHPシート(セイコーエプソン株式会社製)に専用OHPシートを印字し、印字物を指で擦り、印字の汚れの有無を目視観察し、以下の基準で定着性を評価した。
◎ :印字の汚れが観察されないもの
○ :印字の汚れが若干発生するが、文字の判別が可能なもの
△ :印字の汚れが発生し、文字の判別が困難なもの
× :OHPシート上に定着しなかったもの
【0126】
(J)粘度
粘度計DV−III(ブルックフィールド(BROOKFIELD)社製)を用いて、各インク組成物の粘度(cp)を測定した。
以上の評価結果を表2〜7に示す。
【0127】
【表2】
【0128】
【表3】
【0129】
【表4】
【0130】
【表5】
【0131】
【表6】
【0132】
【表7】
【0133】
この結果より明らかなように、本発明の実施例では、高耐水性、高耐光性を有し、高い反射濃度と色の鮮やかさが得られ、普通紙に対する滲みと裏写りが少なく、定着性が良好で、かつ吐出安定性および保存安定性にも優れたインク組成物が得られることがわかった。
【0134】
【発明の効果】
本発明によれば、X線回折スペクトルにおいて、最大強度を示す回折線とそのn次(n:2以上の整数)の回折線を主要ピークとして有する擬1次元結晶性カラー有機顔料からなる着色剤、水溶性有機溶剤、界面活性剤および水溶性樹脂を主成分として含むインク組成物を用いることにより、普通紙記録に対して滲み、裏写りがなく、耐水性・耐光性・耐擦過性に優れ、色濃度の高い高品質(高精細、高彩度)記録が可能な顔料インク組成物およびそれを用いた両面同時印写の可能な記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】着色剤の理想的な分光反射スペクトルと製造例1〜3の擬1次元結晶性カラー有機顔料の分光反射スペクトルを示す図である。
【図2】製造例1の擬1次元結晶性カラー顔料のX線回折スペクトルである。
【図3】製造例2の擬1次元結晶性カラー顔料のX線回折スペクトルである。
【図4】製造例3の擬1次元結晶性カラー顔料のX線回折スペクトルである。
Claims (3)
- X線回折スペクトルにおいて、最大強度を示す回折線とそのn次(n:2以上の整数)の回折線のピーク面積が全回折線のピーク面積の65%以上である擬1次元結晶性カラー有機顔料からなる着色剤、水溶性有機溶剤、界面活性剤および水溶性樹脂を含有し、
前記擬1次元結晶性カラー有機顔料が、
C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー180およびC.I.ピグメントイエロー194から選択された結晶性イエロー顔料を濃硫酸中で改質することにより得られた擬1次元結晶性イエロー顔料;
C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド190、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド175、C.I.ピグメントレッド176およびC.I.ピグメントレッド185から選択された結晶性マジェンタ顔料を濃硫酸中で改質することにより得られた擬1次元結晶性マジェンタ顔料;
C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3およびC.I.ピグメントブルー15:4から選択される結晶性シアン顔料を濃硫酸中で改質することにより得られた擬1次元結晶性シアン顔料;
C.I.ピグメントブルー60またはC.I.ピグメントブルー15:6の結晶性ブルー顔料を濃硫酸中で改質することにより得られた擬1次元結晶性ブルー顔料;
C.I.ピグメントグリーン7またはC.I.ピグメントグリーン36の結晶性グリーン顔料を濃硫酸中で改質することにより得られた擬1次元結晶性グリーン顔料;および
C.I.ピグメントレッド238またはC.I.ピグメントレッド221の結晶性レッド顔料を濃硫酸中で改質することにより得られた擬1次元結晶性レッド顔料
から選択され、
前記水溶性有機溶剤が、
2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンおよび1,3−ジメチル−イミダゾリジノンから選択される含窒素複素環式ケトン類;
エチレングリコール−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテルおよびメチルカルビトールから選択されるグリコールエーテル類;および
プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールおよびテトラプロピレングリコールから選択されるプロピレングリコール類
を含む有機溶剤であることを特徴とするインク組成物。 - 前記界面活性剤が、アセチレンジオール系界面活性剤である請求項1に記載のインク組成物。
- 前記水溶性樹脂が、スチレン−αメチルスチレン−アクリル酸からなる三元共重合体である請求項1または2に記載のインク組成物。
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