JP2002088291A - 水性インク、インクジェット記録方法及び該インクジェット記録方法により形成された記録画像 - Google Patents

水性インク、インクジェット記録方法及び該インクジェット記録方法により形成された記録画像

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JP2002088291A
JP2002088291A JP2001196187A JP2001196187A JP2002088291A JP 2002088291 A JP2002088291 A JP 2002088291A JP 2001196187 A JP2001196187 A JP 2001196187A JP 2001196187 A JP2001196187 A JP 2001196187A JP 2002088291 A JP2002088291 A JP 2002088291A
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哲也 金子
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延崇 長田
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敏郎 得能
Masayuki Koyano
正行 小谷野
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来に比較して色再現性が良好で透明性が高
く、さらに耐水性や耐光性がよく滲みの少ない均質な画
像が得られ、目詰まりなど信頼性に関する問題を生じ難
い水性インクを提供する。 【解決手段】 少なくとも、下記一般式(I)で表わさ
れる化合物を含有する顔料、エチレンオキサイド基を含
むアニオン系界面活性剤、水溶性有機溶媒を含有するこ
とを特徴とする水性インク。 【化1】 (前式(I)において、R1〜R5は水素、アルキル基、
ニトロ基、アミド基、アセトアミド基、及びハロゲン基
よりなる群から選ばれた少なくとも一種の基である。)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、印刷用、筆記用、
記録計用、インクジェット記録用水性インク組成物及び
それを用いた記録方法、特に色調に優れ透明性が高く鮮
明で、耐水・耐光性等の画像堅牢性に優れた画像を得ら
れ、さらに印字時のヘッドの目詰まりがなく保存安定性
に優れた水性インク組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】液体状のインクをノズルから吐出させて
画像の記録を行なうインクジェット記録法は、普通紙へ
の印字が可能なこと、カラー化への対応が容易なこと、
駆動時の騒音、消費電力が低いことなどから、コンピュ
ーターで作成した文書や画像の出力用プリンターとして
近年急速に普及しつつある。最近ではインクジェット記
録技術の進歩により、写真並みの高品質の画像が得られ
るようになってきているが、それに加え耐水性や耐光性
など画像の耐久性や、高速印字時の吐出安定性など、求
められる性能が多岐に渡るようになってきた。
【0003】現在インクジェット記録方法には着色剤と
して染料を用いたインクが多く使われているが(特開平
5−194889号公報、特開平9−3380号公報、
特開平11−158424号公報)、染料を用いたイン
クは発色が良く色再現域が広いものの、耐水性や耐光性
など画像の耐久性が低いという欠点がある。これに対し
顔料を用いたインクは画像の耐久性は優れているが、染
料に比べ好ましい色相・彩度を持ったものが少なく、フ
ルカラー印字を行う際に彩度の低い色再現域の狭い画像
しか得られなかったり、また顔料の分散安定性が不充分
であるためにインクの吐出不良を生じ易いといった問題
がある。また、透明性が低いためOHPシートに印字し
た際に画像の彩度が非常に低くなることが多い。
【0004】インクジェット記録用として広く用いられ
てきたイエロー顔料としては、ベンジジン系化合物であ
るC.I.ピグメントイエロー12、13、14やモノ
アゾ系化合物のC.I.ピグメントイエロー74、15
4等(特開平10−120956号公報、特開平10−
292139号公報)が挙げられる。前者は色調、分散
姓に優れており扱いやすいが、近年安全性に問題のある
事が指摘され始めた。また後者は色調や耐光性が優れて
いる反面、透明性が不充分であるため普通紙に印字した
際の二次色の再現性が悪かったり、OHPシートへ印字
した場合に彩度が低下するといった問題がある。これら
疎水性表面を持った顔料の水性溶媒に対する分散安定性
を改善する方法としては、両親媒性の高分子や界面活性
剤を顔料表面に吸着させたり、顔料自身に化学的な表面
処理を行い溶媒や分散剤とのぬれ性を向上させるといっ
た試みが挙げられるが(特開平8−283604号公
報、特開平10−183003号公報)、特に高分子系
の分散剤を用いた場合はインク中の溶解ポリマーによる
目詰まり等信頼性の低下を起こしやすく、有機顔料の化
学的表面改質は色調の変化を招きやすいために非常に困
難である。
【0005】このように、現在のところイエロー顔料イ
ンクにおいて画質と画像堅牢度、特に普通紙に印字した
際の画像品質、またOHPに印字した際の透明性、さら
に印字時の吐出安定性や保存安定性といったインクジェ
ット記録用インクに求められる諸性質の全てを満足させ
られるようなインクは存在しない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のよう
な従来用いられてきた顔料インクセットの欠点を解消す
ることのできる、新しい顔料の組み合わせ、及びインク
セットを提供することを目的とするものである。すなわ
ち、従来に比較して色再現性が良好で透明性が高く、さ
らに耐水性や耐光性がよく滲みの少ない均質な画像が得
られ、目詰まりなど信頼性に関する問題を生じ難いイン
クセットを供給することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは一般式
(I)で表わされる顔料、エチレンオキサイド基を含む
アニオン系界面活性剤、さらに水溶性有機溶媒を添加し
たインクが、透明性が高く普通紙に印字した際も色調・
濃度が良好で、さらに印字時のヘッド目詰まりなど信頼
性に関する問題を生じにくいことを見出した。
【化4】 〔前式(I)において、R1〜R5は水素原子、炭素数1
〜7のアルキル基、ニトロ基、アミド基、アセトアミド
基、及びハロゲン原子よりなる群から選ばれた少なくと
も一つを表す。〕
【0008】一般式(I)の化合物を含有する顔料は普
通紙においても彩度の高い理想的なイエローの色調を示
し、またOHPシートに印字した場合にも充分な透明性
を示す。一般的にモノアゾ顔料は多環式顔料に比べ鮮明
性はあるが耐光性が劣るといわれているが、一般式
(I)の顔料は−NHSO2−基を分子中に含むことに
より、モノアゾ構造を持つにも関らず耐光性に優れてお
り、また微粒子化が可能であるため分散安定性が良く吐
出不良を起こしにくい。
【0009】一般式(I)で表される化合物の具体例を
以下に示す。
【化5】 等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、これらは、単独で用いても、複数のものを混合し
て用いてもよい。前式(I)の化合物は公知の方法で合
成することができる。
【0010】本発明に使用される一般式(I)の化合物
を含有する顔料の平均粒子径は0.01〜0.2μmで
あることが望ましい。これよりも大きいと吐出時の目詰
まりや保存安定性など信頼性に問題を生じることがあ
り、小さい場合には耐水性、耐光性など顔料の長所であ
る諸性質が発揮されなかったり、再凝集性が大きくなっ
たりする。ここでいう平均粒子径とは、体積累積パーセ
ント50%の値をさす。体積累積パーセント50%の値
を測定するには、例えば、インク中のブラウン運動を行
っている粒子にレーザー光を照射し、粒子から戻ってく
る光(後方散乱光)の振動数(光の周波数)の変化量か
ら粒子径を求める動的光散乱法(ドップラー散乱光解
析)といわれる方法を用いることができる。
【0011】これら顔料の分散には、ボールミル、サン
ドミル、ロールミル、コロイドミル、超音波ホモジナイ
ザー、高圧ホモジナイザーなどの各種分散装置を用いる
ことが出来る。これらの装置を用い、顔料、溶媒として
の水、さらに一般的にはアニオン性界面活性剤や両親媒
性高分子化合物等の分散剤を混合し、分散することによ
り顔料分散液を得ることができる。
【0012】本発明のインクには、分散剤として一般式
(II)、(III)で示されるアニオン系界面活性剤を用
いることにより、顔料の分散安定性を大幅に向上するこ
とができる。
【化6】 RO(CH2CH2O)nSO3M (II) RO(CH2CH2O)nPO3M (III) 〔前式(II)及び(III)において、Rは水素原子、ア
ルキル基あるいはアルキルフェニル基、Mは水素原子、
アルカリ金属イオン、第四級アンモニウム、第四級ホス
ホニウムあるいはアルカノールアミンを表し、nは4〜
50の整数である。また、アルキル基の炭素数は6〜1
4、アルキルフェニル基のアルキル部分の炭素数は6〜
14が適当である。〕 アニオン界面活性剤は、−SO3Mや−PO3Mが水中で
解離し親水基として働くが、一般式(II)、(III)の
化合物はさらにこれらの親水基に隣接してオキシエチレ
ン鎖を含有しているため、よりいっそう水分子を引き付
けやすく、分散安定効果が向上するのだと考えられる。
この分散安定性の向上により、吐出時のヘッドノズルの
目詰まりや、長期保存時の顔料の凝集が抑制される。
【0013】前式(II)、(III)で表される化合物の
具体例を以下に示す。 化合物(II)−1 C817O(CH2CH2O)52SO3N(C37)4 化合物(II)−2 C91965O(CH2CH2O)31SO3P(CH2O H)4 化合物(II)−3 C25(C25)C122565O(CH2CH2O)84 SO3Na 化合物(III)−1 CH3(CH2)7CH=CH(CH2)8O(CH2CH2 O)52PO3NCH3(C25)3 化合物(III)−2 C91965O(CH2CH2O)31PO3P(C24 OH)4 化合物(III)−3 C122565O(CH2CH2O)84PO3K 等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、これらは、単独で用いても、複数のものを混合し
て用いてもよい。
【0014】また、それぞれのインクに含まれる顔料は
インク全重量に対して0.1〜10重量%であることが
好ましく、さらには1.0〜5.0重量%の範囲である
ことが好ましい。顔料の含有量がこれよりも少ないと普
通紙に印字した際に十分な彩度や画像濃度が得られず、
これより多い場合には画像の明度が低下したり吐出時に
ヘッドノズルの目詰まりなどが起こる可能性がある。ま
た、エチレンオキサイド基を含むアニオン系界面活性剤
は、インク全重量に対して0.05〜10重量%である
ことが好ましい。エチレンオキサイド基を含むアニオン
系界面活性剤の含有量が0.05%以下ではいずれの場
合も他の浸透剤を併用しない場合には2色重ね部の境界
でのにじみが発生し、10重量%以上添加する場合は化
合物自体が低温で析出しやすことがあり信頼性が悪くな
る。
【0015】本発明のインクには、下記一般式(IV)で
示されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリ
コール、特に一般式(IV)中のポリプロピレングリコー
ル基の重量平均分子量が1,200以下であり、なおか
つ分子中のエチレンオキシド基の全分子量中に占める割
合が5〜20%であるポリオキシエチレンポリオキシプ
ロピレングリコールをインク全量に対して0.01〜5
重量%添加し、かつ2−エチル−1,3−ヘキサンジオ
ール又は2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジ
オールをインク全量に対して0.5〜10重量%添加す
ることにより、記録紙表面に対するインクのぬれ性を向
上し、記録紙への浸透速度を高めることが可能であるこ
と、さらに従来の浸透性を高めたインクに比べ、画像に
じみなどの画質低下や裏抜けがきわめて少なくすること
ができる。
【0016】一般式(IV) HO(C24O)l−(C36O)m−(C24O)nH 〔前記(IV)において、mはポリオキシプロピレンユニ
ットのユニット分子量の合計が2500以下であること
を満たす自然数であり、l、nは、ポリオキシエチレン
ユニットの合計分子量が、(IV)式の全分子量に占める
割合として5〜30%を満たす自然数である。〕前記一
般式(IV)で表される化合物の具体例を表3に示す。 化合物(IV)−1 HO(C24O)−(C36O)16−(C24O)2H 化合物(IV)−2 HO(C24O)3−(C36O)20−(C24O)H 化合物(IV)−3 HO(C24O)−(C36O)10−(C24O)H 化合物(IV)−4 HO(C24O)−(C36O)17−(C24O)H 化合物(IV)−5 HO(C24O)−(C36O)18−(C24O)3H 等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、これらは、単独で用いても、複数のものを混合し
て用いてもよい。
【0017】ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン
グリコールの添加量がインク全量に対して0.01重量
%未満であると、浸透性の改善が不十分となり、また5
重量%よりも多いと、インク中で安定に溶解せず、イン
クの保存安定性、インクジェットでの噴射安定性に問題
を生じる。同様に、2−エチル−1,3−ヘキサンジオ
ール、又は2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタン
ジオールの添加量がインク全量に対して、0.5重量%
未満であると、浸透性の改善が不十分となり、10重量
%よりも多いと、インク中で安定に溶解せず、インクの
保存安定性、インクジェットでの噴射安定性に問題を生
じる。
【0018】ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン
グリコールと2−エチル−1,3−ヘキサンジオールと
の混合が相乗効果を発揮し、それぞれを単独で含有した
インクに比べ、少量の添加で高い浸透性を得ることがで
きるため、従来の多価アルコールのエーテル類などを多
量に加えて浸透性をあげたインクに比べ、粘度の上昇が
少ない、溶剤臭が少ないなどの利点もある。また、ポリ
オキシエチレンポリオキシプロピレングリコール単独で
浸透性を向上させた場合と比べても、やはり少量の添加
で高い浸透性を得ることができ、吐出時や保存時の不安
定性といった弊害を少なくできる。
【0019】本発明のインクには、ノズル部での目詰り
を防ぐため湿潤剤として多価アルコールを添加すること
が望ましい。一般的にインクジェットプリンタの湿潤剤
としては、エチレングリコール、ジエチレングリコー
ル、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコー
ル、ポリプロピレングリコール、グリセロールなどの多
価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテ
ル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレ
ングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコー
ルモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチ
ルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエー
テル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどの
多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコー
ルモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノべン
ジルエーテルなどの多価アルコールアリールエーテル
類、N−メチル−2−ビロリドン、N−ヒドロキシエチ
ル−2−ピロリドン、l,3−ジメチルイミイダゾリジ
ノン、ε−カブロラクタム、γ−ブチロラクトンなどの
含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N−メチルホルム
アミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド
類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリ
エタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミ
ン、トリエチルアミンなどのアミン類、ジメチルスルホ
キシド、スルホラン、チオジエタノールなどの含硫黄化
合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレンなど
が、単独であるいは複数混合して用いられる。
【0020】前記多価アルコールはノズル部での水分蒸
発防止効果に加え、他の種類の湿潤剤より一般式(I)
の顔料の分散安定性を向上させる効果がある。これら多
価アルコールのインク中の含有量としてはl〜40重量
%、より好ましくは5〜20重量%である。
【0021】また、本発明のインクには2−ピロリドン
を添加することが望ましい。2−ピロリドンをインクに
添加すると、画像濃度の向上とともに裏抜けを防止する
上で優れた効果が得られる。これは、2−ピロリドンを
含有することで、紙表面に対してインクが濡れ拡がりや
すくなり、相対的に紙の厚み方向への浸透が抑えられる
ため、紙表面近傍に着色剤をとどまりやすくなるためで
あると推測される。さらに、インク中の顔料の分散安定
性も向上する。2−ピロリドンの添加量は、好ましくは
0.05〜8重量%、更に好ましくは0.5〜4重量%
である。
【0022】さらに、本発明の水性インクはC.I.ピ
グメントレッド122を含むマゼンタインク、C.I.
ピグメントブルー15:3を含むシアンインクと組み合
わせたカラーインクセットとして使用することが好まし
い。C.I.ピグメントレッド122は非常に耐光性に
優れたキナクリドン系化合物であり、普通紙に印字した
場合にも鮮明なマゼンタ色相を示し、また透明性も高
い。マゼンタインクにはさらにC.I.ピグメントバイ
オレット19を調色用に併用しても良い。また、C.
I.ピグメントブルー15:3は緑みの強いβ型の銅フ
タロシアニンであるが、耐光性が非常に良く、さらに微
粒子化が容易で分散安定性が良く吐出不良などを起こし
にくく、印刷分野においてよく用いられる顔料である。
【0023】本発明のインク及び、これらの顔料を用い
たカラーインクのセットでは、印字を行った際に一次色
だけではなく二次色など混色部分においても十分な明度
と理想的な色相、透明性を持った画像を得ることができ
る。また耐光性のバランスが良いため、多少褪色した場
合にも人肌が極端に赤味を帯びたりすることがない。さ
らに、イエロー、マゼンタ、シアンを混色した場合に
は、画像濃度に関わらず色相が真の黒色に近いコンポジ
ットブラックが得られる。
【0024】本発明のインクセットはブラックインクと
組み合わせて使用することもできる。ブラックインクの
着色剤としてはファーネスブラック、ランプブラック、
アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボン
ブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、又は
銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタ
ン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメント
ブラック1)等の有機顔料があげられる。好ましくはブ
ラックインク用の顔料はカーボンブラックであることが
好ましい。ブラックインクとしてカーボンブラックは色
調に優れるとともに、耐水性、退光性、分散安定性に優
れ、且つ安価である。
【0025】本発明のインクは、前記のエチレンオキサ
イド基を含むアニオン系界面活性剤の外に、さらに他の
界面活性剤を添加することも可能である。この他の界面
活性剤としては、例としてドデシルベンゼンスルホン酸
ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレ
ンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩等の
アニオン性界面活性剤、第4級アンモニウム塩等のカチ
オン系界面活性剤、イミダゾリン誘導体等の両性界面活
性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキ
シエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチ
レンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルア
ミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリエキシ
エチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪
酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エス
テル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド添加
物等のノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が
単独で、あるいは複数混合して用いられる。インク組成
物中での、エチレンオキサイド基を含むアニオン系界面
活性剤を加えた界面活性剤の添加量は0.01〜5.0
重量%であり、好ましくは0.5〜3重量%である。
0.01重量%未満では添加した効果は無く、5.0重
量%より多い添加では記録媒体への浸透性が必要以上に
高くなり、画像濃度の低下や裏抜けの発生といった問題
がある。
【0026】また、表面張力の調整のために、種々の浸
透剤を用いることができる。具体的には炭素鎖が5〜7
の分岐したアルキル鎖を有するジアルキルスルホ琥珀酸
等のアニオン系界面活性剤、アセチレングリコール系、
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキ
シエチレンアルキルエーテル系等の非イオン系界面活性
剤、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、エタ
ノール、2−プロパノールなどの低級アルコール類など
が、単独であるいは複数混合して用いられる。これら浸
透剤のインク中の含有量は、好ましくは0.5〜5重量
%、より好ましくは0.5〜2重量%である。
【0027】さらに本発明のインクには上記染料、溶剤
の他に従来知られている添加剤、例えば防腐防黴剤、p
H調整剤、キレート試薬、防錆剤や、その他目的に応じ
て紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、水溶性高分子化合物、
染料溶解剤などを添加することができる。
【0028】
【実施例】以下に本発明の実施例及び比較例を示す。%
はすべて重量%である。
【0029】実施例1 各処方の組成物をホモジナイザーにより粗分散を行な
い、次にナノマイザーを用いて分散し顔料分散液1を作
製した。 (顔料分散液1) 化合物(I)−1 10.0% 化合物(II)−1 5.0% イオン交換水 残量 (インク組成物)次に下記処方の組成物を混合した後溶
液をナノマイザーで分散し0.8μmのテフロン(登録
商標)フィルターでろ過し、インクを作製した。 イエローインク1: 前記の顔料分散液1 50.0% 化合物(IV)−1 0.3% 2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0% ジエチレングリコール 10.0% 2−ピロリドン 5.0% イオン交換水 残量
【0030】下記の組成よりなる材料を用いる以外は実
施例1と同様にして実施例2〜3及び比較例1〜3のイ
ンクを作製した。
【0031】 実施例2 (顔料分散液2) 化合物(I)−2 10.0% 化合物(III)−1 5.0% イオン交換水 残量 イエローインク2: 前記の顔料分散液2 40.0% 化合物(IV)−2 0.3% 2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール 2.0% ポリエチレングリコール200 15.0% 2−ピロリドン 5.0% イオン交換水 残量
【0032】 実施例3 (顔料分散液3) 化合物(I)−3 10.0% 化合物(II)−3 5.0% イオン交換水 残量 イエローインク3: 前記の顔料分散液3 50.0% 化合物(IV)−3 0.3% 2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール 2.0% グリセリン 5.0% 2−ピロリドン 0.5% イオン交換水 残量
【0033】 実施例4 (顔料分散液4) 化合物(I)−4 10.0% 化合物(III)−2 5.0% イオン交換水 残量 イエローインク4: 前記顔料分散液4 40.0% 化合物(IV)−4 0.3% 2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール 2.0% グリセリン 5.0% ジエチレングリコール 5.0% 2−ピロリドン 5.0% イオン交換水 残量
【0034】 実施例5 (顔料分散液5) 化合物(I)−5 10.0% 化合物(II)−3 5.0% イオン交換水 残量 イエローインク5: 前記の顔料分散液5 40.0% 化合物(IV)−5 0.3% 2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0% ポリプロピレングリコール 5.0% ジエチレングリコール 5.0% 2−ピロリドン 5.0% イオン交換水 残量
【0035】 実施例6 (顔料分散液6) C.I.ピグメントレッド122 10.0% スチレン無水マレイン酸共重合体 5.0% イオン交換水 残量 (顔料分散液7) C.I.ピグメントブルー15:3 10.0% スチレン無水マレイン酸共重合体 5.0% イオン交換水 残量 マゼンタインク1: 前記の顔料分散液6 40.0% 2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0% ポリプロピレングリコール 5.0% ジエチレングリコール 5.0% 2−ピロリドン 5.0% イオン交換水 残量 シアンインク1: 前記の顔料分散液7 20.0% 2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0% ポリプロピレングリコール 5.0% ジエチレングリコール 5.0% 2−ピロリドン 5.0% イオン交換水 残量 イエローインク1: 前記の顔料分散液1 50.0% 化合物(IV)−1 0.3% 2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0% ジエチレングリコール 10.0% 2−ピロリドン 5.0% イオン交換水 残量
【0036】 比較例1 (顔料分散液8) C.I.Pigment Yellow 74 10.0% 化合物(II)−1 5.0% イオン交換水 残量 イエローインク6: 前記の顔料分散液8 50.0% 2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0% 化合物(IV)−1 0.3% ジエチレングリコール 10.0% 2−ピロリドン 5.0% イオン交換水 残量
【0037】 比較例2 (顔料分散液9) C.I.Pigment Yellow 14 10.0% 化合物(II)−1 5.0% イオン交換水 残量 イエローインク7: 前記の顔料分散液9 50.0% 2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0% 化合物(IV)−1 0.3% ジエチレングリコール 10.0% 2−ピロリドン 5.0% イオン交換水 残量
【0038】 比較例3 (顔料分散液10) 化合物(I)−1 10.0% スチレン無水マレイン酸共重合体 5.0% イオン交換水 残量 イエローインク8: 前記の顔料分散液10 50.0% 化合物(IV)−2 0.3% 2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0% ジエチレングリコール 10.0% 2−ピロリドン 5.0% イオン交換水 残量
【0039】 比較例4 イエローインク9: 顔料分散液2 50.0% サーフィノール465 (商品名、エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ社製) 2.0% ポリエチレングリコール200(平均分子量200) 5.0% 2−ピロリドン 5.0% イオン交換水 残量
【0040】[評価]前記実施例1〜5及び比較例1〜
7について、下記の試験を行なった。 1)一次色及び二次色の色調 インクジェットプリンター(リコー社製インクジェット
プリンター、イプシオジェット300)に各イエローイ
ンクと、実施例6で作製したマゼンタインク、シアンイ
ンクをセットし、市販普通紙にイエロー、マゼンタ、シ
アン、レッド、グリーン、ブルー各色のベタ印字を行な
った。印字した画像サンプルの反射スペクトルをX−R
ite社製反射型カラー分光測色濃度計で測定し、色調
を調べた。その結果、測定値とJapan Color
ver.2との色差ΔEが下式 ΔE={(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)21/2 [L*、a*、b*はCIE1976L*a*b*表色
系の(L*、a*、b*)色度座標] イエロー、マゼンタ、シアンはΔE≦30となり、レッ
ド、グリーン、ブルーは3色のΔEの平均値がΔEav
er≦50となるものについて○印で表に示した。
【0041】2)像濃度・裏抜け濃度 1)で印字した画像サンプルの反射スペクトルをX−R
ite社製反射型カラー分光測色濃度計で測定し、イエ
ロー、レッド、グリーンの画像濃度・裏抜け濃度を調べ
た。レッド、グリーンに関しては、得られたイエロー・
マゼンタ・シアンの分光濃度の最大値を用いた。その結
果、印字面イエローの濃度ODがOD≧0.8となるも
の、またイエロー、レッド、グリーンの裏抜け濃度OD
rがODr≦0.06となるものを○印で示した。
【0042】3)コンポジットブラックの色調 インクジェットプリンター(リコー社製インクジェット
プリンター、イプシオジェット300)に各イエローイ
ンクと、実施例6で作製したマゼンタインク、シアンイ
ンクをセットし、市販普通紙にコンポジットブラックを
印字した。印字した画像サンプルの反射スペクトルをX
−Rite社製反射型カラー分光測色濃度計で測定し、
色調を調べた。その結果、色調が下式
【数1】 [a*、b*はCIE1976L*a*b*表色系の
(a*、b*)色度座標]となるものについて○印で表
に示した。
【0043】4)画像の耐光性 1)で得たイエローの画像サンプルをフェードメーター
(キセノン・アーク灯、63℃)に90時間かけ、光照
射前後の画像濃度をX−Rite社製反射型カラー分光
測色濃度計で測定した。 褪色率(%)=[1−(光照射後の画像濃度/ 光照射前の
画像濃度)]×100
【0044】5)保存安定性 実施例及び比較例の各イエローインクをポリエチレン製
の容器に入れ、−20℃、4℃、20℃、50℃、70
℃、それぞれの条件下で3か月間保存し、保存前後の粘
度、表面張力、電気伝導度の変化及び沈澱物析出の有無
を調べた。どの条件下で保存しても、物性変化、沈澱物
の発生がなかったものを表では○とした。
【0045】6)ノズルの目詰まりテスト(吐出安定
性) 1)で印字した後、印字休止したままで、20℃、65
%RHの環境下で2か月間放置し、放置後再び正常な印
字が可能か否かを調べた。1つのイエローインクサンプ
ルについて3台のプリンターを使用し試験した。表には
3台のプリンターとも正常に印字できた場合を○、3台
中1台又は2台で正常印字ができなかった場合を×で示
した。
【0046】7)透明性 インクジェットプリンター(リコー製インクジェットプ
リンター、イプシオジ ェット300)に各イエローインクと、実施例6で作製
したマゼンタ・シアンインクを充填し、市販OHPにイ
エロー、マゼンタ、シアン、レッド、グリーン、ブルー
各色のベタ印字を行なった。印字した画像サンプルのヘ
イズ度を、スガ試験器(社)製HAZE度計により測定
した。測定したヘイズ度がイエロー、マゼンタ、シアン
ではH≦20、レッド、グリーン、ブルーではH≦30
となるものを○印で示した。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【発明の効果】(1)請求項1 従来のイエロー顔料インクと比較して一次色、二次色、
及びコンポジットブラックの色調が優れ、かつ耐光性、
OHPシートに印字した場合の透明性にも優れる。ま
た、前記のインク組成物はインクジェットプリンター用
インクとして用いた際の吐出安定性、保存安定性も良好
である水性顔料インクが提供された。 (2)請求項2 従来のイエロー顔料インクと比較して保存安定性、吐出
安定性が格段に向上した水性顔料インクが提供された。 (3)請求項3 従来のイエロー顔料インクと比較して色調、濃度、裏抜
けなどの画像品質が格段に向上した水性顔料インクが提
供された。 (4)請求項4 さらに高い保存安定性、吐出安定性を確保することがで
きる水性顔料インクが提供された。 (5)請求項5 画像濃度の向上と、裏抜け濃度の低減、さらに優れた保
存安定性と吐出安定性を確保することができる水性顔料
インクが提供された。 (6)請求項6 さらに優れた透明性、保存安定性、吐出安定性を確保す
ることができる水性顔料インクが提供された。 (7)請求項7 さらに優れた画像品質、透明性、保存安定性、吐出安定
性を確保することができる水性顔料インクが提供され
た。 (8)請求項8 二次色の画像品質、透明性、さらにコンポジットブラッ
クの画像品質を向上させることができるインクジェット
記録方法が提供された。 (9)請求項9二次色の画像品質、透明性、さらにコン
ポジットブラックの画像品質を向上させることができる
記録画像が提供された。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 有田 均 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 (72)発明者 金子 哲也 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 (72)発明者 小西 昭子 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 (72)発明者 長田 延崇 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 (72)発明者 得能 敏郎 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 (72)発明者 小谷野 正行 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 (72)発明者 村上 格二 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 (72)発明者 永井 希世文 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 Fターム(参考) 2C056 FC01 2H086 BA02 BA53 BA55 BA59 BA62 4J039 BA29 BC05 BC07 BC09 BC12 BC16 BC33 BC36 BC40 BC47 BC50 BC54 BC56 BE01 BE12 BE22 CA06 EA15 EA16 EA17 EA33 EA35 EA38 EA41 EA42 EA44 GA24

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも、下記一般式(I)で表わさ
    れる化合物を含有する顔料、エチレンオキサイド基を含
    むアニオン系界面活性剤、水溶性有機溶媒を含有するこ
    とを特徴とする水性インク。 【化1】 〔前式(I)において、R1〜R5は水素原子、炭素数1
    〜7のアルキル基、ニトロ基、アミド基、アセトアミド
    基、及びハロゲン原子よりなる群から選ばれた少なくと
    も一つを表す。〕
  2. 【請求項2】 前記アニオン系界面活性剤が下記一般式
    (II)及び/又は(III)で表わされる化合物から選ば
    れることを特徴とする請求項1記載の水性インク。 【化2】 RO(CH2CH2O)nSO3M (II) RO(CH2CH2O)nPO3M (III) 〔前式(II)及び(III)において、Rは水素原子、炭
    素数6〜14のアルキル基あるいはアルキルフェニルを
    表し、Mは水素原子、アルカリ金属イオン、第四級アン
    モニウム、第四級ホスホニウムあるいはアルカノールア
    ミンを表し、nは4〜50の整数である。〕
  3. 【請求項3】 前記水溶性有機溶媒が、下記一般式(I
    V)で示されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレ
    ングリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオー
    ル、及び2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジ
    オールよりなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物
    であることを特徴とする請求項1又は2記載の水性イン
    ク。 【化3】 HO(C24O)l−(C36O)m−(C24O)nH (IV) 〔前式(IV)において、mはポリオキシプロピレンユニ
    ットのユニット分子量の合計が2500以下であること
    を満たす自然数であり、l、nは、ポリオキシエチレン
    ユニットの合計分子量が、(IV)式の全分子量に占める
    割合として5〜30%を満たす自然数である。〕
  4. 【請求項4】 湿潤剤として多価アルコールを含有する
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水性
    インク。
  5. 【請求項5】 2−ピロリドンを含有することを特徴と
    する請求項1〜4のいずれかに記載の水性インク。
  6. 【請求項6】 一般式(I)で表わされる顔料の平均粒
    子径が、0.01〜0.2μmであることを特徴とする
    請求項1〜5のいずれかに記載の水性インク。
  7. 【請求項7】 一般式(I)で表わされる顔料が、イン
    ク全重量に対して0.1〜10重量%含まれていること
    を特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の水性イン
    ク。
  8. 【請求項8】 インク液滴を吐出し被記録材に付着させ
    るインクジェット記録方法において、一般式(I)で表
    わされる顔料を有するイエローインク、C.I.ピグメ
    ントレッド122を有するマゼンタインク、C.I.ピ
    グメントブルー15:3を有するシアンインク、エチレ
    ンオキサイド基を含むアニオン系界面活性剤、及び水溶
    性有機溶媒を少なくとも含むカラーインクセットを用い
    ることを特徴とするインクジェット記録方法。
  9. 【請求項9】 請求項8記載のインクジェット記録方法
    により形成された記録画像。
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