特許文献1の金型抜き勾配検証システムは、射出成形品における金型に必要な抜き勾配を確認するシステムであり、製品形状の各箇所での勾配量を容易に確認することができるようになっている。しかしながら、その勾配量が適正か否かの判断は作業者に依存している。すなわち、問題点がある部分を表示するものではないので、金型抜き勾配検証システムによって示された勾配量を元に作業者による確認作業が必要であるという問題がある。したがって、作業者による確認作業のために多大な工数と時間を要し、確認漏れが発生する可能性もある。さらに、成形品の設計品質の良し悪しは、金型抜き勾配検証システムよりも作業者の技術力に大きく依存しており、経験の浅い作業者では判断することができないことも予想される。
さらにまた、作業者は金型コストダウンのために製品のアンダーカット領域の確認も実施するが、その確認は作業者が行う必要があり、アンダーカット領域の確認も勾配量確認の場合と同様に、工数増大あるいは確認漏れの可能性がある。
本発明の目的は、設計データに基づいて、金型の抜き勾配およびアンダーカットについて、成形品の形状が射出成形に適しているか否かを人手によらずに評価することができる形状評価装置、方法、プログラムおよび記録媒体を提供することである。
本発明は、金型によって射出成形される成形品の3次元形状の表面を構成する各構成面を表す構成面データ、および金型から成形品を押し出す方向を示す基準ベクトルを決めるための基準ベクトルデータを入力する入力手段と、
入力手段によって入力された構成面データが示す各構成面の法線方向の法線ベクトルを算出する法線ベクトル算出手段と、
入力手段によって入力された基準ベクトルデータによって決まる基準ベクトルと法線ベクトル算出手段によって算出された各法線ベクトルとに基づいて、各構成面について、前記入力された基準ベクトルデータによって決まる基準ベクトルに対する抜き勾配の勾配量を算出する勾配量算出手段と、
勾配量算出手段によって算出された勾配量が予め定める勾配量評価条件を満たしていると、その勾配量の構成面を射出成形に適していると評価する勾配量評価手段と、
各構成面の少なくとも1箇所にサンプリング点を設定し、設定したサンプリング点について法線ベクトル算出手段によって算出された法線ベクトルが、入力手段によって入力された基準ベクトルデータによって決まる基準ベクトルの方向と反対方向の成分を含み、かつその反対方向の成分をその成分の方向に延伸させたベクトルが、その反対方向の成分を含む法線ベクトルの構成面以外の構成面と交差すると、その法線ベクトルの構成面がアンダーカットであることを検出するアンダーカット検出手段と、
勾配量評価手段によって評価された評価結果およびアンダーカット検出手段によって検出された検出結果を出力する出力手段とを含むことを特徴とする形状評価装置である。
本発明に従えば、まず、入力手段によって、金型によって射出成形される成形品の3次元形状の表面を構成する各構成面を表す構成面データ、および金型から成形品を押し出す方向を示す基準ベクトルを決めるための基準ベクトルデータが入力され、法線ベクトル算出手段によって、入力手段によって入力された構成面データが示す各構成面の法線方向の法線ベクトルが算出され、勾配量算出手段によって、入力手段によって入力された基準ベクトルデータによって決まる基準ベクトルと法線ベクトル算出手段によって算出された各法線ベクトルとに基づいて、各構成面について、前記入力された基準ベクトルデータによって決まる基準ベクトルに対する抜き勾配の勾配量が算出され、勾配量評価手段によって、勾配量算出手段によって算出された勾配量が予め定める勾配量評価条件を満たしていると、その勾配量の構成面が射出成形に適していると評価される。
さらに、アンダーカット検出手段によって、各構成面の少なくとも1箇所にサンプリング点を設定し、設定したサンプリング点について法線ベクトル算出手段によって算出された法線ベクトルが、入力手段によって入力された基準ベクトルデータによって決まる基準ベクトルの方向と反対方向の成分を含み、かつその反対方向の成分をその成分の方向に延伸させたベクトルが、その反対方向の成分を含む法線ベクトルの構成面以外の構成面と交差すると、その法線ベクトルの構成面がアンダーカットであることが検出され、出力手段によって、勾配量評価手段によって評価された評価結果およびアンダーカット検出手段によって検出された検出結果が出力されるので、設計データたとえば構成面データに基づいて、金型の抜き勾配およびアンダーカットについて、成形品の形状が射出成形に適しているか否かを人手によらずに評価することができる。
また本発明は、構成面の基準ベクトル方向の高さとその高さに適した勾配量とを関連付けて表す適正勾配量情報を記憶する記憶手段をさらに含み、
前記予め定める勾配量評価条件は、評価対象の構成面について勾配量算出手段によって算出された勾配量が、記憶手段によって記憶される適正勾配量情報が示す勾配量のうちその構成面の高さに関連付けられた勾配量に合致するという条件であることを特徴とする。
本発明に従えば、記憶手段によって、構成面の基準ベクトル方向の高さとその高さに適した勾配量とを関連付けて表す適正勾配量情報が記憶され、予め定める勾配量評価条件は、評価対象の構成面について勾配量算出手段によって算出された勾配量が、記憶手段によって記憶される適正勾配量情報が示す勾配量のうちその構成面の高さに関連付けられた勾配量に合致するという条件であるので、構成面の基準ベクトル方向の高さに基づいて、金型の抜き勾配を評価することができる。
また本発明は、前記出力手段は、前記勾配量評価手段によって射出成形に適していると評価されなかった構成面または前記アンダーカット検出手段によってアンダーカットであることが検出された構成面を、勾配量評価手段によって射出成形に適していると評価され、かつアンダーカット検出手段によってアンダーカットであることが検出されなかった構成面と区別して出力することを特徴とする。
本発明に従えば、出力手段によって、勾配量評価手段によって射出成形に適していると評価されなかった構成面またはアンダーカット検出手段によってアンダーカットであることが検出された構成面が、勾配量評価手段によって射出成形に適していると評価され、かつアンダーカット検出手段によってアンダーカットであることが検出されなかった構成面と区別して出力されるので、射出成形に適していない勾配量の構成面またはアンダーカットである構成面を強調して表示することができる。
また本発明は、前記勾配量評価手段は、前記入力手段によって入力された構成面データが示す各構成面を、金型のキャビティ側にある構成面と、金型のコア側にある構成面とに分け、
前記アンダーカット検出手段は、勾配量評価手段によって分けられたコア側にある構成面について、アンダーカットを検出することを特徴とする。
本発明に従えば、勾配量評価手段によって、入力手段によって入力された構成面データが示す各構成面が、金型のキャビティ側にある構成面と、金型のコア側にある構成面とに分けられ、アンダーカット検出手段によって、勾配量評価手段によって分けられたコア側にある構成面について、アンダーカットが検出されるので、アンダーカットの検出を行う時間を、キャビティ側にある構成面についてアンダーカットの検出を行う時間分短縮することができる。
また本発明は、前記勾配量評価手段は、前記入力手段によって入力された構成面データが示す各構成面を、金型のキャビティ側にある構成面と、金型のコア側にある構成面とに分け、
前記アンダーカット検出手段は、勾配量評価手段によって分けられたキャビティ側にある構成面について、アンダーカットを検出することを特徴とする。
本発明に従えば、勾配量評価手段によって、入力手段によって入力された構成面データが示す各構成面が、金型のキャビティ側にある構成面と、金型のコア側にある構成面とに分けられ、アンダーカット検出手段によって、勾配量評価手段によって分けられたキャビティ側にある構成面について、アンダーカットが検出されるので、アンダーカットの検出を行う時間を、コア側にある構成面についてアンダーカットの検出を行う時間分短縮することができる。
また本発明は、成形品の形状を評価する形状評価装置が処理する形状評価方法であって、
金型によって射出成形される成形品の3次元形状の表面を構成する各構成面を表す構成面データ、および金型から成形品を押し出す方向を示す基準ベクトルを決めるための基準ベクトルデータを入力する入力装置によって入力された構成面データが示す各構成面の法線方向の法線ベクトルを算出する法線ベクトル算出工程と、
入力装置によって入力された基準ベクトルデータによって決まる基準ベクトルと法線ベクトル算出工程で算出された法線ベクトルとに基づいて、各構成面について、前記入力された基準ベクトルデータによって決まる基準ベクトルに対する抜き勾配の勾配量を算出する勾配量算出工程と、
勾配量算出工程で算出された勾配量が予め定める勾配量評価条件を満たしていると、その勾配量の構成面を射出成形に適していると評価する勾配量評価工程と、
各構成面の少なくとも1箇所にサンプリング点を設定し、設定したサンプリング点について法線ベクトル算出工程で算出された法線ベクトルが、入力装置によって入力された基準ベクトルデータによって決まる基準ベクトルの方向と反対方向の成分を含み、かつその反対方向の成分をその成分の方向に延伸させたベクトルが、その反対方向の成分を含む法線ベクトルの構成面以外の構成面と交差すると、その法線ベクトルの構成面がアンダーカットであることを検出するアンダーカット検出工程と、
勾配量評価工程で評価された評価結果およびアンダーカット検出工程で検出された検出結果を出力する出力工程とを含むことを特徴とする形状評価方法である。
本発明に従えば、成形品の形状を評価する形状評価装置が形状評価方法によって成形品の形状を評価するにあたって、まず、法線ベクトル算出工程で、金型によって射出成形される成形品の3次元形状の表面を構成する各構成面を表す構成面データ、および金型から成形品を押し出す方向を示す基準ベクトルを決めるための基準ベクトルデータを入力する入力装置によって入力された構成面データが示す各構成面の法線方向の法線ベクトルを算出し、勾配量算出工程で、入力装置によって入力された基準ベクトルデータによって決まる基準ベクトルと法線ベクトル算出工程で算出された法線ベクトルとに基づいて、各構成面について、前記入力された基準ベクトルデータによって決まる基準ベクトルに対する抜き勾配の勾配量を算出し、勾配量評価工程で、勾配量算出工程で算出された勾配量が予め定める勾配量評価条件を満たしていると、その勾配量の構成面を射出成形に適していると評価する。
さらに、アンダーカット検出工程で、各構成面の少なくとも1箇所にサンプリング点を設定し、設定したサンプリング点について法線ベクトル算出工程で算出された法線ベクトルが、入力装置によって入力された基準ベクトルデータによって決まる基準ベクトルの方向と反対方向の成分を含み、かつその反対方向の成分をその成分の方向に延伸させたベクトルが、その反対方向の成分を含む法線ベクトルの構成面以外の構成面と交差すると、その法線ベクトルの構成面がアンダーカットであることを検出し、出力工程で、勾配量評価工程で評価された評価結果およびアンダーカット検出工程で検出された検出結果を出力するので、設計データたとえば構成面データに基づいて、金型の抜き勾配およびアンダーカットについて、成形品の形状が射出成形に適しているか否かを人手によらずに評価することができる。
また本発明は、コンピュータに前記形状評価方法の各工程を実行させるためのプログラムである。
本発明に従えば、コンピュータに形状評価方法の各工程を実行させるためのプログラムとして提供することができる。
また本発明は、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
本発明に従えば、コンピュータに形状評価方法の各工程を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として提供することができる。
本発明によれば、設計データたとえば構成面データに基づいて、金型の抜き勾配およびアンダーカットについて、成形品の形状が射出成形に適しているか否かを人手によらずに評価することができるので、経験の浅い設計者が間違った勾配量で設計した場合でも、未然に問題点を発見して解決することができ、一定レベルの品質の製品設計を行えるようにすることができる。さらにアンダーカットの箇所が設計の下流工程で行われる金型設計の前に判り、金型のコストダウンのための製品設計の再検討を設計の上流工程で行うことができるようになる。
また本発明によれば、構成面の基準ベクトル方向の高さに基づいて、金型の抜き勾配を評価することができるので、構成面の基準ベクトル方向の高さは、設計データたとえば構成面データに基づいて算出することができるので、人手によらずに金型の抜き勾配を評価することができる。
また本発明によれば、射出成形に適していない勾配量の構成面またはアンダーカットである構成面を強調して表示することができるので、ユーザは、再設計しなければならない構成面を容易に認識することができる。
また本発明によれば、アンダーカットの検出を行う時間を、キャビティ側にある構成面についてアンダーカットの検出を行う時間分短縮することができるので、作業効率を向上することができる。
また本発明によれば、コア側にある構成面についてアンダーカットの検出を行う時間分短縮することができるので、作業効率を向上することができる。
また本発明によれば、設計データたとえば構成面データに基づいて、金型の抜き勾配およびアンダーカットについて、成形品の形状が射出成形に適しているか否かを人手によらずに評価することができるので、経験の浅い設計者が間違った勾配量で設計した場合でも、未然に問題点を発見して解決することができ、一定レベルの品質の製品設計を行えるようにすることができる。さらに、アンダーカットの箇所が設計の下流工程で行われる金型設計の前に判り、金型のコストダウンのための製品設計の再検討を設計の上流工程で行うことができるようになる。
また本発明によれば、コンピュータに形状評価方法の各工程を実行させるためのプログラムとして提供することができる。
また本発明によれば、コンピュータに形状評価方法の各工程を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として提供することができる。
図1は、本発明の実施の一形態である勾配量およびアンダーカット部検出装置1の機能の構成を示す。形状評価装置である勾配量およびアンダーカット部検出装置(以下「検出装置」という)1は、形状評価方法の各工程も処理する。検出装置1は、金型からその金型によって成形された成形品(以下「製品」という)を抜き出す金型抜き方向を図示しない入力装置から取得し、さらに製品の表面を構成する構成面(以下「サーフェス」という)の法線ベクトルを、後述する設計データに基づいて算出するベクトル処理部11、ベクトル処理部11で取得された金型抜き方向で決まる基準ベクトルおよび算出された法線ベクトルを元に、各サーフェスの勾配量を算出し、算出した勾配量を評価する勾配量評価部12、勾配量評価部12で算出された勾配量を元に、アンダーカット領域を検出するアンダーカット検出部13、勾配量評価部12によって評価された評価結果およびアンダーカット検出部13によって検出された検出結果を含むサーフェス情報を保持するサーフェス情報保持部14、ならびにサーフェス情報保持部14にて保持されたサーフェス情報を視覚的に識別することができるように、順次表示する検出サーフェス表示部15を含む。
ベクトル処理部11は、製品の表面を構成する各サーフェスを表すサーフェスデータを含む設計データを記憶する設計データデータベース111と、設計データデータベース111に記憶される設計データが示す製品について、金型から製品を押し出す方向つまり金型抜き方向を示す基準ベクトルを決めるための基準ベクトルデータを取得する基準ベクトル取得手段112と、設計データデータベース111に記憶される設計データから、各サーフェスのサーフェスデータを取得するサーフェスデータ取得手段113と、サーフェスデータ取得手段113によって取得されたサーフェスデータが示すサーフェスの法線ベクトルを算出するサーフェス法線算出手段114と、基準ベクトル取得手段112によって取得された基準ベクトルデータによって決まる基準ベクトルとサーフェス法線算出手段114によって算出された法線ベクトルとの演算処理を行うベクトル演算処理手段115とを含む。
勾配量評価部12は、ベクトル演算処理手段115によって演算処理された演算結果を元に勾配量を算出する勾配量算出手段121と、勾配量算出手段121で算出された勾配量を元に、サーフェスが金型のキャビティ側およびコア側のうちのどちら側に属するかをグルーピングするサーフェスグルーピング手段122と、各サーフェスの金型抜き方向の高さとその高さに適した勾配量とを関連付けて表す適正勾配量情報を記憶するサーフェス高さ/勾配量適正情報データベース123と、勾配量算出手段121によって算出された勾配量を、サーフェス高さ/勾配量適正情報データベース123に記憶された適正勾配量情報に基づいて評価を行う勾配量評価手段124とを含む。各サーフェスの金型抜き方向の高さは、設計データデータベース111に記憶される設計データに含まれるサーフェスデータから求めることができる。
アンダーカット検出部13は、サーフェスグルーピング手段122によってコア側にグルーピングされたサーフェスについて、基準ベクトル取得手段112によって取得された基準ベクトルデータによって決まる基準ベクトルと反対の方向、つまり金型抜き方向と反対の方向に他のサーフェスがあるかどうかを探索し、他のサーフェスがあるサーフェスをアンダーカットのサーフェスとして検出するアンダーカット部検出手段131を含む。
サーフェス情報保持部14は、勾配量算出手段121によって算出された各サーフェスの勾配量と、勾配量評価手段124によって評価された各サーフェスの評価結果と、アンダーカット部検出手段131によって検出されたアンダーカットの検出結果を含むサーフェス情報を記憶しておく検出サーフェス情報保存データベース141を含む。
検出サーフェス表示部15は、検出サーフェス情報保存データベース141によって記憶されたサーフェス情報に基づいて順次色分け等の区別を行ってサーフェスを表示する検出サーフェス表示手段151を含む。
検出装置1は、たとえばプログラムおよびデータを記憶する半導体メモリあるいはハードディスク装置などからなる図示しない記憶装置と、記憶装置に記憶されたプログラムを実行することによって本発明に係る処理を行うCPU(Central Processing Unit)あるいはマイクロプロセッサなどの図示しない処理装置とを含むコンピュータとによって構成される。検出装置1の各手段および各データベースの機能は、処理装置が記憶装置に記憶されたプログラムを実行することによって実現され、検出装置1の各データベースに記憶されるデータは、記憶装置によって記憶される。
検出装置1の電源が投入され、動作可能状態になった後、たとえば図示しないキーボードあるいはマウスなどの入力装置によって、製品の形状が射出成形に適した形状であるか否かの評価の開始、具体的には製品の抜け勾配が射出成形に適しているか否かおよび製品にアンダーカットがあるか否かの検出の開始が指示されると、サーフェスデータ取得手段113は、設計データデータベース111から、図示しない入力装置によって指示された製品の設計データを読み出す。この例では、設計データを設計データデータベース111から読み出しているが、図示しない入力装置によって直接設計データを入力してもよいし、記録媒体に記録された設計データを、記録媒体読取装置によって読み取って入力してもよいし、あるいはネットワークを介して接続される他の装置の記憶装置に記憶されている記憶データをネットワークを介して取得して入力してもよい。
図2は、図1に示した検出装置1の評価対象である製品20の基準ベクトルV1を示す。金型抜き方向を規定するために、たとえば図示しない入力装置によって、金型から成形品を押し出す方向を示す基準ベクトルを決めるための基準ベクトルデータ、たとえば金型抜き方向が法線ベクトルの方向と一致する平面を表すデータを入力して、ニュートラル平面を指定する。この時指定する平面は、製品の表面を構成するサーフェスのうちの1つのサーフェスを指示してもよいし、仮想的な作業用平面のサーフェスであってもよい。基準ベクトル取得手段112は、指定されたニュートラル平面の法線ベクトルを基準ベクトルV1に決定する。図2に示した基準ベクトルV1は、指定されたニュートラル平面の法線ベクトルに一致する単位ベクトルである。
図3は、図2に示した製品20のサーフェス22の勾配量評価のためのサンプリング点および法線ベクトルV2を示す。サーフェス法線算出手段114は、設計データデータベース111に記憶される設計データからサーフェスデータを抽出し、抽出したサーフェスデータが示すサーフェス上でサンプリング点を設定し、設定したサンプリング点での法線ベクトルV2を算出する。サンプリング点の位置は、サーフェス22上で基準点Pを原点とするUV座標で表す。図3に示したサンプリング点として、座標(U,V)=(0.3,0.3)の位置を例として示したが、他の位置であってもよいし、あるいは複数のサンプリング点を使用してもよい。
図4は、図2に示した製品20の各サーフェスの法線ベクトルV2を示す。製品20の各サーフェスにそれぞれ設定されたサンプリング点について、それぞれの法線ベクトルV2が示されている。
図5は、図2に示した製品20の1つのサーフェスの基準ベクトルV1と法線ベクトルV2との角度θを示す。ベクトル演算処理手段115は、基準ベクトル取得手段112によって決定された基準ベクトルV1とサーフェス法線算出手段114によって算出された法線ベクトルV2との内積を各サーフェスについて計算する。勾配量算出手段121は、ベクトル演算処理手段115によって計算された計算結果を元に、基準ベクトルV1と法線ベクトルV2とのなす角度θつまり勾配量をサーフェス毎に計算する。図5に示した角度θは、その1つである。
図6は、図2に示した製品20の抽出キャビティ面23を示す。図7は、図2に示した製品20の抽出コア面24を示す。抽出キャビティ面23は、キャビティ面を表す属性情報つまり金型のキャビティ側にあるサーフェスであることを表す属性情報がサーフェス情報に付加されたサーフェスであり、抽出コア面24は、コア面を表す属性情報つまり金型のコア側にあるサーフェスであることを表す属性情報がサーフェス情報に付加されたサーフェスである。
サーフェスグルーピング手段122は、ベクトル演算処理手段115によって計算された内積の値が正の値であると、現在選択されているサーフェスは、金型のキャビティ側に属しているので、検出サーフェス情報保存データベース141に記憶されるこのサーフェスのサーフェス情報に、キャビティ面であることを表す情報と、勾配量算出手段121によって計算された角度θの値を表す情報とを併せて、属性情報として付加して記憶する。内積の値が負の値であると、現在選択されているサーフェスは、金型のコア側に属しているので、検出サーフェス情報保存データベース141に記憶されるこのサーフェスのサーフェス情報に、コア面であることを表す情報と、勾配量算出手段121によって計算された角度θの値を表す情報とを併せて、属性情報として付加して記憶する。内積の値が「0」であると、現在選択されているサーフェスには勾配が付いていないので、検出サーフェス情報保存データベース141に記憶されるこのサーフェスのサーフェス情報に、勾配が無いことを表す情報と、このサーフェスの角度θの値「0」を表す情報とを併せて、属性情報として付加して記憶する。
図8は、図1に示したサーフェス高さ/勾配量適正情報データベース123に記憶される相関情報を示す。相関情報は、サーフェスの高さとその高さに適した勾配量の相関を表す適正勾配量情報であり、サーフェス高さ/勾配量適正情報データベース123に記憶される。この相関情報は、高さの範囲を示す「高さMIN(mm)以上」および「高さMAX(mm)未満」の2つの項目と、その範囲の高さに適した勾配量(度)を示す項目とを含む。高さ「0」mm以上「3」mm未満の勾配量は、「5」度であり、高さ「3」mm以上「10」mm未満の勾配量は、「3」度であり、高さ「10」mm以上の勾配量は、「1」度である。
製品のすべてのサーフェスについて勾配量の評価が行われた後、勾配量評価手段124は、まず、各サーフェスの金型抜き方向の高さを、設計データから抽出されたサーフェスデータに基づいて算出する。次に、図8に示したサーフェス高さ/勾配量適正情報データベース123に記憶される相関情報から、算出したサーフェス高さに適した適正勾配量を抽出する。さらに、角度θが予め定める勾配量評価条件を満たしているか否かを判定する。たとえば、現在選択されているサーフェスの勾配量つまり角度θと抽出した適正勾配量とを比較し、現在選択されているサーフェスの勾配量が適正量であるか否かを判定する。現在選択されているサーフェスの勾配量が適正量でないと、勾配不適正情報つまり勾配量が不適正であることを表す属性情報を、検出サーフェス情報保存データベース141に記憶されるこのサーフェスのサーフェス情報に付加して記憶する。
図9は、図2に示した製品20のサーフェスの一部についての勾配量の評価結果を示す。勾配量適正サーフェス25は、サーフェスの金型抜き方向の高さが7mm、勾配量が3度である。図8に示したサーフェス高さ/勾配量適正情報データベース123に記憶される相関情報から、高さ7mmに適した勾配量は3度である。したがって、勾配量適正サーフェス25の勾配量3度は、勾配量適正サーフェス25の金型抜き方向の高さ7mmに適している。勾配量不適正サーフェス26は、サーフェスの金型抜き方向の高さが15mm、勾配量が3度である。図8に示したサーフェス高さ/勾配量適正情報データベース123に記憶される相関情報から、高さ15mmに適した勾配量は1度である。したがって、勾配量不適正サーフェス26の勾配量3度は、勾配量不適正サーフェス26の高さ15mmに適していない。
図10は、図3に示したサーフェス22についてのアンダーカット検出のためのサンプリング点を示す。製品のすべてのサーフェスについて勾配量の評価が行われた後、アンダーカット部検出手段131は、検出サーフェス情報保存データベース141から、サーフェスグルーピング手段122によってコア面であることを表す属性情報が付加された各サーフェス上のサンプリング点について、金型抜き方向と反対方向のベクトルV3を抽出する。
図10には、サーフェス22について、座標(0,0)、座標(0,1)、座標(1,0)、および座標(1,1)の4つのサンプリング点が示されている。サンプリング点は、図3に示したようにサーフェス上の1点でもよいが、複数のサンプリング点、たとえば図10に示すようにサーフェスを構成するエッジ上のコーナーの4つのサンプリング点を用いてもよい。もちろんサーフェス内部の複数の点をサンプリング点としてもよい。各座標に示したベクトルが、金型抜き方向と反対方向のベクトルV3である。
さらに、アンダーカット部検出手段131は、抽出したベクトルV3をベクトルV3の方向に延伸したとき、キャビティ面であることを表す属性情報がサーフェス情報に付加されているサーフェスの中に、延伸したベクトルV3と交差するサーフェスがあるか否かを探索する。他のサーフェスと交差すると、現在選択しているサーフェスがアンダーカット部分であるので、検出サーフェス情報保存データベース141に記憶されるこのサーフェスのサーフェス情報に、アンダーカット面であることを示す属性情報を付加して記憶する。
図11は、図2に示した製品20の各サーフェスのベクトルV3とアンダーカットの検出結果を示す。コア面の各サーフェスのいくつかにベクトルV3またはベクトルV3aが示されている。ベクトルV3aも、金型抜き方向と反対方向のベクトルであり、ベクトルV3に含まれるが、ベクトルV3aは、ベクトルV3aを延伸したときキャビティ側のサーフェスと交差する。すなわち、ベクトルV3aのサーフェスは、アンダーカット部検出手段131によって、アンダーカットのサーフェスとして検出されたサーフェスである。
すべてのコア面についてアンダーカットの検出が行われた後、まず、検出サーフェス表示手段151は、検出サーフェス情報保存データベース141から、サーフェス情報に付加された属性情報を抽出する。次に、付加された属性情報を元に、抽出されたサーフェスの色を変更し、サーフェスを順次表示する。
サーフェスの色は、最初すべてのサーフェスの色をクリア、たとえば白色にクリアしておく。次に、アンダーカットのサーフェスを表示する際に、アンダーカットのサーフェスを赤色として順次表示する。さらに、勾配量が適していないサーフェスを表示する際、アンダーカットのサーフェスの赤色をクリアした後、新たに勾配量が不適切なサーフェスの色を赤色として順次表示する。さらに赤色のサーフェスを再度クリアした後、勾配量に応じて異なる色を着色して表示させてもよい。あるいは、一度に表示するための着色ルールを規定しておいて、その着色ルールに従って、一度に表示させてもよい。
図12〜図15は、図1に示した検出装置1が処理するフローチャートを工程毎に分けて示したものである。図12は、図1に示した検出装置1が処理する取得算出工程のフローチャートである。検出装置1の電源が投入され、動作可能状態になった後、たとえば図示しないキーボードあるいはマウスなどの入力装置によって、製品の形状が射出成形に適した形状であるか否かの評価の開始、具体的には製品の抜け勾配が射出成形に適しているか否かおよび製品にアンダーカットがあるか否かの検出の開始が指示されると、ステップS1に進む。
ステップS1では、設計データを読み出す。すなわち、抜け勾配の評価およびアンダーカットの検出に先立ち、サーフェスデータ取得手段113は、設計データデータベース111から、図示しない入力装置によって指示された製品の設計データを読み出す。この例では、設計データを設計データデータベース111から読み出しているが、図示しない入力装置によって直接設計データを入力してもよいし、記録媒体に記録された設計データを、記録媒体読取装置によって読み取って入力してもよいし、あるいはネットワークを介して接続される他の装置の記憶装置に記憶されている記憶データをネットワークを介して取得して入力してもよい。
ステップS2では、ニュートラル平面を指定する。すなわち、金型抜き方向を規定するために、たとえば図示しない入力装置によって、金型から成形品を押し出す方向を示す基準ベクトルを決めるための基準ベクトルデータ、たとえば金型抜き方向が法線ベクトルの方向と一致する平面を表すデータを入力して、ニュートラル平面を指定する。この時指定する平面は、製品の表面を構成するサーフェスのうちの1つのサーフェスを指示してもよいし、仮想的な作業用平面のサーフェスであってもよい。ステップS3では、基準ベクトルV1を決定する。すなわち、基準ベクトル取得手段112は、ステップS2で指定されたニュートラル平面の法線ベクトルを基準ベクトルV1に決定する。基準ベクトルV1は、たとえば図2に示した基準ベクトルV1である。
ステップS4では、サーフェスデータを抽出する。すなわち、サーフェス法線算出手段114は、ステップS1で読み出した設計データから評価対象とする1つのサーフェスのサーフェスデータを抽出する。ステップS5では、サンプリング点の法線ベクトルV2を算出する。すなわち、サーフェス法線算出手段114は、ステップS4で抽出されたサーフェス上でサンプリング点を設定し、設定されたサンプリング点での法線ベクトルV2を算出する。法線ベクトルV2は、たとえば図3および図4に示した法線ベクトルV2である。
ステップS6では、V1とV2の内積を計算する。すなわち、ベクトル演算処理手段115は、ステップS3で決定された基準ベクトルV1とステップS5で算出された法線ベクトルV2との内積を計算し、図13に示すステップS11に進む。
図13は、図1に示した検出装置1が処理する勾配量算出評価工程のフローチャートである。図12に示したステップS6が処理された後、ステップS11に移る。ステップS11では、V1とV2とのなす角度θを計算する。すなわち、勾配量算出手段121は、図12に示したステップS6で計算された計算結果を元に、基準ベクトルV1と法線ベクトルV2とのなす角度θつまり勾配量を計算する。角度θは、たとえば図5に示した角度θである。
ステップS12では、内積が0より大きいか否かを判定する。すなわち、サーフェスグルーピング手段122は、ステップS6で計算された内積の値が正の値か否かを判定する。内積の値が正の値であると、ステップS16に進み、内積の値が正の値でないと、ステップS13に進む。ステップS13では、内積が0より小さいか否かを判定する。すなわち、サーフェスグルーピング手段122は、ステップS6で計算された内積の値が負の値か否かを判定する。内積の値が負の値であると、ステップS17に進み、内積の値が負の値でないと、ステップS14に進む。ステップS14では、「勾配=0」属性を付加する。すなわち、サーフェスグルーピング手段122は、内積の値が「0」であるので、現在選択されているサーフェスには勾配が付いていないと判定する。検出サーフェス情報保存データベース141に記憶されるこのサーフェスのサーフェス情報に、勾配が無いことを表す情報と、このサーフェスの角度θの値「0」を表す情報とを併せて、属性情報として付加して記憶する。
ステップS15では、全サーフェス終了か否かを判定する。すなわち、勾配量評価部12は、製品のすべてのサーフェスについて勾配量の評価が終了したか否かを判定する。製品のすべてのサーフェスについて勾配量の評価が終了すると、図14に示すステップS31に進み、製品のすべてのサーフェスについて勾配量の評価が終了していないと、図12に示したステップS4に戻る。
ステップS16では、キャビティ面属性を付加して、ステップS18に進む。すなわち、サーフェスグルーピング手段122は、内積の値が正の値であるので、現在選択されているサーフェスは、金型のキャビティ側に属していると判定する。検出サーフェス情報保存データベース141に記憶されるこのサーフェスのサーフェス情報に、キャビティ面であることを表す情報と、ステップS11で計算された角度θの値を表す情報とを併せて、属性情報として付加して記憶し、ステップS18に進む。ステップS17では、コア面属性を付加して、ステップS18に進む。すなわち、サーフェスグルーピング手段122は、内積の値が負の値であるので、現在選択されているサーフェスは、金型のコア側に属していると判定する。検出サーフェス情報保存データベース141に記憶されるこのサーフェスのサーフェス情報に、コア面であることを表す情報と、ステップS11で計算された角度θの値を表す情報とを併せて、属性情報として付加して記憶し、ステップS18に進む。
ステップS18では、サーフェス高さを算出する。すなわち、勾配量評価手段124は、現在選択しているサーフェスの金型抜き方向の高さを、図12に示したステップS4で設計データから抽出したサーフェスデータに基づいて算出する。ステップS19では、適正勾配量を抽出する。すなわち、勾配量評価手段124は、図8に示したサーフェス高さ/勾配量適正情報データベース123に記憶される相関情報から、ステップS18で算出されたサーフェス高さに適した適正勾配量を抽出する。
ステップS20では、角度θが適正量か否か判定する。すなわち、勾配量評価手段124は、角度θが予め定める勾配量評価条件を満たしているか否かを判定する。たとえば、現在選択されているサーフェスの勾配量つまり角度θとステップS19で抽出された適正勾配量とを比較し、現在選択されているサーフェスの勾配量が適正量であるか否かを判定する。現在選択されているサーフェスの勾配量が適正量であると、ステップS15に進み、現在選択されているサーフェスの勾配量が適正量でないと、ステップS21に進む。ステップS21では、勾配不適正情報を付加して、ステップS15に進む。すなわち、勾配量評価手段124は、勾配不適正情報つまり勾配量が不適正であることを表す属性情報を、検出サーフェス情報保存データベース141に記憶されるこのサーフェスのサーフェス情報に付加して記憶し、ステップS15に進む。
図14は、図1に示した検出装置1が処理するアンダーカット検出工程のフローチャートである。図13に示したステップS15で、製品のすべてのサーフェスについて勾配量の評価が終了したと判定されると、ステップS31に移る。
ステップS31では、コア面を抽出する。すなわち、アンダーカット部検出手段131は、検出サーフェス情報保存データベース141から、図13に示したステップS17でコア面であることを表す属性情報が付加されたサーフェスの中から1つのサーフェスを抽出する。ステップS32では、サンプリング点の金型抜き方向の反対方向ベクトルV3を抽出する。すなわち、アンダーカット部検出手段131は、ステップS31で抽出されたサーフェス上のサンプリング点について、金型抜き方向と反対方向のベクトルV3を抽出する。ベクトルV3は、たとえば図10に示したベクトルV3である。
ステップS33では、ベクトルV3と他のサーフェスとの交点を探索する。すなわち、アンダーカット部検出手段131は、ステップS32で抽出されたベクトルV3をベクトルV3の方向に延伸したとき、キャビティ面であることを表す属性情報がサーフェス情報に付加されているサーフェスの中に、延伸したベクトルV3と交差するサーフェスがあるか否かを探索する。ステップS34では、交点が存在するか否かを判定する。すなわち、アンダーカット部検出手段131は、ステップS33での探索で、他のサーフェスと交点があったか否かを判定する。交点が存在すると、ステップS36に進み、交点が存在しないと、ステップS35に進む。
ステップS35では、全コア面終了か否かを判定する。すなわち、アンダーカット部検出手段131は、すべてのコア面についてアンダーカットの検出を行ったか否かを判定する。すべてのコア面についてアンダーカットの検出を行ったときは、図15に示すステップS41に進み、すべてのコア面についてアンダーカットの検出を行っていないときは、ステップS31に戻り、次のコア面を抽出する。ステップS36では、アンダーカット面情報を付加して、ステップS35に進む。すなわち、アンダーカット部検出手段131は、現在選択しているサーフェスがアンダーカット部分であるので、検出サーフェス情報保存データベース141に記憶されるこのサーフェスのサーフェス情報に、アンダーカット面であることを示す属性情報を付加して記憶し、ステップS35に進む。
図15は、図1に示した検出装置1が処理する表示工程のフローチャートである。図14に示したステップS35で、すべてのコア面についてアンダーカットの検出を行ったと判定されると、ステップS41に移る。
ステップS41では、属性付加サーフェスを抽出する。すなわち、検出サーフェス表示手段151は、検出サーフェス情報保存データベース141から、図12〜図14に示したフローチャートの処理において、サーフェス情報に付加された属性情報を抽出する。ステップS42では、サーフェス色を変更する。すなわち、検出サーフェス表示手段151は、上述したように、付加された属性情報を元に、抽出されたサーフェスの色を変更する。ステップS43では、サーフェスを順次表示し、終了する。すなわち、検出サーフェス表示手段151は、サーフェスの色を、ステップS42で変更された色に変更して順次表示し、終了する。たとえば図9に示した勾配量不適正サーフェス26および図1に示したベクトルV3aのサーフェスの色が、他のサーフェスの色と区別されて表示される。
上述した実施の形態では、コア側のサーフェスについてのみ、アンダーカットを検出して、キャビティ側のサーフェスについては、アンダーカットを検出していない。これは、アンダーカットのサーフェスは、キャビティ側サーフェスとコア側サーフェスとが向かい合って対になっているので、キャビティ側およびとコア側のうちのいずれかの側のサーフェスについてのみ検出すればよいからである。具体的には、ステップS33において探索された交差するサーフェスのうち、コア側サーフェスに最も近いサーフェスが対になるキャビティ側サーフェスである。したがって、コア側のサーフェスについてのみ、アンダーカットを検出し、キャビティ側のサーフェスについてアンダーカットの検出を行なわないことにすることによって、すべてのサーフェスについてアンダーカットを検出する場合よりも、検出時間を約半分とすることができる。この場合、コア側の1つのサーフェスについて、交差するかどうかを探索する対象となるサーフェスは、コア側のその1つのサーフェスを除くすべてのサーフェスである。
さらに、アンダーカットを検出するサーフェスがコア側のサーフェスの場合、ステップS33で行っているように、コア側の1つのサーフェスについて交差するかどうかを探索する対象のサーフェスを、キャビティ側のサーフェスだけにしてもよい。この場合、コア側のサーフェスを探索の対象から除くので、検出時間をさらに約半分にすることができる。
上述した実施の形態では、コア側のサーフェスについてのみアンダーカットを検出し、キャビティ側のサーフェスについてはアンダーカットを検出していないが、これに替えて、キャビティ側のサーフェスについてのみアンダーカットを検出し、コア側のサーフェスについてはアンダーカットを検出しないようにしてもよい。その場合、交差するかどうかを探索する対象とするサーフェスは、コア側のサーフェスのみでよい。
このように、まず、入力手段であるたとえば図示しない入力装置によって、金型によって射出成形される成形品の3次元形状の表面を構成する各構成面を表す構成面データであるたとえばサーフェスデータ、および金型から成形品を押し出す方向を示す基準ベクトルを決めるための基準ベクトルデータが入力され、法線ベクトル算出手段であるたとえばサーフェス法線算出手段114によって、入力手段によって入力された構成面データが示す各構成面の法線方向の法線ベクトルが算出され、勾配量算出手段であるたとえば勾配量算出手段121によって、入力手段によって入力された基準ベクトルデータによって決まる基準ベクトルと法線ベクトル算出手段によって算出された各法線ベクトルとに基づいて、各構成面について、前記入力された基準ベクトルデータによって決まる基準ベクトルに対する抜き勾配の勾配量が算出され、勾配量評価手段であるたとえば勾配量評価手段124によって、勾配量算出手段によって算出された勾配量が予め定める勾配量評価条件を満たしていると、その勾配量の構成面が射出成形に適していると評価される。
さらに、アンダーカット検出手段であるたとえばアンダーカット部検出手段131によって、法線ベクトル算出手段によって算出された法線ベクトルが、入力手段によって入力された基準ベクトルデータによって決まる基準ベクトルの方向と反対方向の成分を含み、かつその反対方向の成分をその成分の方向に延伸させたベクトルが、その反対方向の成分を含む法線ベクトルの構成面以外の構成面と交差すると、その法線ベクトルの構成面がアンダーカットであることが検出され、出力手段であるたとえば検出サーフェス表示手段151によって、勾配量評価手段によって評価された評価結果およびアンダーカット検出手段によって検出された検出結果が出力されるので、設計データたとえば構成面データに基づいて、金型の抜き勾配およびアンダーカットについて、成形品の形状が射出成形に適しているか否かを人手によらずに評価することができる。したがって、経験の浅い設計者が間違った勾配量で設計した場合でも、未然に問題点を発見して解決することができ、一定レベルの品質の製品設計を行えるようにすることができる。さらにアンダーカットの箇所が設計の下流工程で行われる金型設計の前に判り、金型のコストダウンのための製品設計の再検討を設計の上流工程で行うことができるようになる。
さらに、記憶手段であるたとえばサーフェス高さ/勾配量適正情報データベース123によって、構成面の基準ベクトル方向の高さとその高さに適した勾配量とを関連付けて表す適正勾配量情報が記憶され、予め定める勾配量評価条件は、評価対象の構成面について勾配量算出手段であるたとえば勾配量算出手段121によって算出された勾配量が、記憶手段によって記憶される適正勾配量情報が示す勾配量のうちその構成面の高さに関連付けられた勾配量に合致するという条件であるので、構成面の基準ベクトル方向の高さに基づいて、金型の抜き勾配を評価することができる。したがって、構成面の基準ベクトル方向の高さは、設計データたとえば構成面データに基づいて算出することができるので、人手によらずに金型の抜き勾配を評価することができる。
さらにまた、出力手段であるたとえば検出サーフェス表示手段151によって、勾配量評価手段であるたとえば勾配量評価手段124によって射出成形に適していると評価されなかった構成面またはアンダーカット検出手段であるたとえばアンダーカット部検出手段131によってアンダーカットであることが検出された構成面が、勾配量評価手段によって射出成形に適していると評価され、かつアンダーカット検出手段によってアンダーカットであることが検出されなかった構成面と区別して出力されるので、射出成形に適していない勾配量の構成面またはアンダーカットである構成面を強調して表示することができる。したがって、ユーザは、再設計しなければならない構成面を容易に認識することができる。
さらに、勾配量評価手段であるたとえば勾配量評価手段124によって、入力手段であるたとえば図示しない入力装置によって入力された構成面データであるたとえばサーフェスデータが示す各構成面が、金型のキャビティ側にある構成面と、金型のコア側にある構成面とに分けられ、アンダーカット検出手段であるたとえばアンダーカット部検出手段131によって、勾配量評価手段によって分けられたコア側にある構成面について、アンダーカットが検出されるので、アンダーカットの検出を行う時間を、キャビティ側にある構成面についてアンダーカットの検出を行う時間分短縮することができる。したがって、作業効率を向上することができる。
さらにまた、勾配量評価手段であるたとえば勾配量評価手段124によって、入力手段によって入力された構成面データであるたとえばサーフェスデータが示す各構成面が、金型のキャビティ側にある構成面と、金型のコア側にある構成面とに分けられ、アンダーカット検出手段であるたとえばアンダーカット部検出手段131によって、勾配量評価手段によって分けられたキャビティ側にある構成面について、アンダーカットが検出されるので、アンダーカットの検出を行う時間を、コア側にある構成面についてアンダーカットの検出を行う時間分短縮することができる。したがって、作業効率を向上することができる。
さらに、形状評価方法の発明については、まず、入力工程であるたとえば取得算出工程で、金型によって射出成形される成形品の3次元形状の表面を構成する各構成面を表す構成面データであるたとえばサーフェスデータ、および金型から成形品を押し出す方向を示す基準ベクトルを決めるための基準ベクトルデータを入力し、法線ベクトル算出工程であるたとえば取得算出工程で、入力工程で入力された構成面データが示す各構成面の法線方向の法線ベクトルを算出し、勾配量算出工程であるたとえば勾配量算出評価工程で、入力工程で入力された基準ベクトルデータによって決まる基準ベクトルと法線ベクトル算出工程で算出された法線ベクトルとに基づいて、各構成面について、前記入力された基準ベクトルデータによって決まる基準ベクトルに対する抜き勾配の勾配量を算出し、勾配量評価工程であるたとえば勾配量算出評価工程で、勾配量算出工程で算出された勾配量が予め定める勾配量評価条件を満たしていると、その勾配量の構成面を射出成形に適していると評価する。
さらに、アンダーカット検出工程で、法線ベクトル算出工程で算出された法線ベクトルが、入力工程で入力された基準ベクトルデータによって決まる基準ベクトルの方向と反対方向の成分を含み、かつその反対方向の成分をその成分の方向に延伸させたベクトルが、その反対方向の成分を含む法線ベクトルの構成面以外の構成面と交差すると、その法線ベクトルの構成面がアンダーカットであることを検出し、出力工程であるたとえば表示工程で、勾配量評価工程で評価された評価結果およびアンダーカット検出工程で検出された検出結果を出力するので、設計データたとえば構成面データに基づいて、金型の抜き勾配およびアンダーカットについて、成形品の形状が射出成形に適しているか否かを人手によらずに評価することができる。したがって、経験の浅い設計者が間違った勾配量で設計した場合でも、未然に問題点を発見して解決することができ、一定レベルの品質の製品設計を行えるようにすることができる。さらに、アンダーカットの箇所が設計の下流工程で行われる金型設計の前に判り、金型のコストダウンのための製品設計の再検討を設計の上流工程で行うことができるようになる。
検出装置1の図示しない記憶装置に記憶されたプログラムは、形状評価方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラムである。したがって、本発明は、コンピュータに形状評価方法の各工程を実行させるためのプログラムとして提供することができる。
上述した実施の形態では、検出装置1のプログラムは、検出装置1に含まれる図示しない記録装置たとえばROM(Read Only Memory)などの半導体メモリあるいはハードディスク装置に記憶されているが、これらの記憶装置に限定されるものではなく、コンピュータで読取り可能な記録媒体に格納されていてもよい。記録媒体は、たとえば図示しない外部記憶装置としてプログラム読取装置を設け、そこに記録媒体を挿入することによって読取り可能な記録媒体であってもよいし、あるいは他の装置の記憶装置であってもよい。
いずれの記録媒体であっても、記憶されているプログラムがコンピュータからアクセスされて実行される構成であればよい。あるいはいずれの記録媒体であっても、プログラムが読み出され、読み出されたプログラムが、コンピュータに含まれる記憶装置のプログラム記憶エリアに記憶されて、そのプログラムが実行される構成であってもよい。さらに通信ネットワークを介して他の装置からダウンロードされてプログラム記憶エリアに記憶させてもよい。ダウンロード用のプログラムは、予め検出装置1の記憶装置に格納しておくか、あるいは別な記録媒体からプログラム記憶エリアにインストールしておく。
本体と分離可能に構成される記録媒体は、たとえば磁気テープ/カセットテープなどのテープ系の記録媒体、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスクなどの磁気ディスクもしくはCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)/MO(Magneto Optical disk)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disk)などの光ディスクのディスク系の記録媒体、IC(Integrated Circuit)カード(メモリカードを含む)/光カードなどのカード系の記録媒体、またはマスクROM/EPROM(Erasable
Programmable Read Only Memory)/EEPROM(Electrically Erasable
Programmable Read Only Memory)/フラッシュROMなどの半導体メモリを含む固定的にプログラムを担持する記録媒体であってもよい。
したがって、本発明は、コンピュータに形状評価方法の各工程を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として提供することができる。