JP3725186B2 - 金型設計方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、与えられた基本形状からその形状の成形品を制作するための金型の金型形状を設計する金型設計方法に関し、特に金型形状の製作において、金型で成形したい形状からその金型の可動部形状および固定部形状を求める、金型設計方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の金型設計の分野では、おもに金型組立図の作成、金型の詳細設計製図などの作図作業を容易に行うためにCAD/CAMシステムが利用されている。また、金型製作のために作業者がおこなった処理結果を視覚で確認するためにもCAD/CAMシステムが利用されている。
【0003】
図35は例えば、特開平4−361378号公報に示された、従来の金型設計方法が適用されるCAD/CAMシステムの一例を示すブロック図である。図において、1は当該CAD/CAMシステムの全体制御を行う主制御部である。2はこの主制御部1にデータを入力するデータ入力部であり、3は金型の抜き方向と抜き勾配角を設定する設定部である。4は基本図面に含まれる各基本面毎に識別名称を付加する名称作成部であり、5は各基本面のつながり情報を作成するつながり情報作成部である。6は各基本面の法線ベクトルを算出するベクトル算出部であり、7は算出された各基本面の法線ベクトルと、前記設定部3によって設定された金型の抜き方向とから、抜き勾配を付加する基本面の識別を行う基本面識別部である。8はこの基本面識別部7によって識別された基本面に対して、設定部3によって設定された抜き勾配角だけ傾斜をつける傾斜付加部であり、9は基本面を傾斜させることによって生じる基本面同士の干渉部分を除去して、基本面の修正を行う基本面修正部である。10は主制御部1の処理結果のデータが出力されるデータ出力部である。
【0004】
次に動作について説明する。設定部3によって、あらかじめ金型の抜き方向と抜き勾配角とが設定される。また、名称作成部4では、与えられた基本図面に含まれる各基本面のそれぞれについて、識別名称を作成して付加する。そして、この名称作成部4によって識別名称が付加された基本面のつながり情報を、つながり情報作成部5によって作成する。ここで、このつながり情報は、例えば“「面1」と「面2」とは「辺1」によって接続されている”といった情報である。
【0005】
一方、ベクトル算出部6では、与えられた基本図面に含まれる各基本面の法線ベクトルを算出する。基本面識別部7では、このベクトル算出部6によって算出された各基本面の法線ベクトルと、設定部3によって設定された金型の抜き方向とから、抜き勾配を付加する基本面の識別を行う。例えば、法線ベクトルと金型の抜き方向とのなす角が85〜95(deg)であれば、その基本面は抜き勾配を付加する面であると判定する。
【0006】
傾斜付加部8では、この基本面識別部7によって識別された基本面に、設定部3によって設定された抜き勾配角だけ傾斜をつける。例えば、抜き勾配角の属性によって、ポリプロピレンであれば2度、アクリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂であれば5度の抜き勾配をつける。面修正部9では、この傾斜付加部8によって抜き勾配角だけ傾斜させた隣接する基本面同士の干渉部分を除去して新たな基本面にするとともに、この新たな基本面同士のつながり情報を修正する。
【0007】
以上のように、この金型設計方法は、ある図形に対して設定した抜き方向と抜き勾配角に従って抜き勾配を付加するための、主に作図作業や金型設計のそれぞれの段階における処理に個別に対応したものであり、製品仕様から金型製作までの一貫した思考の流れの中で設計を進めてゆくものではなかった。
【0008】
また、その他にも、例えば、特開平4−371373号公報に示されるようなCAD/CAMシステムも提案されている。しかしながら、これも、金型部品形状の代表値を変更すると関連する要素部品を検索して、代表値の変更に伴うその関連要素部品の値の変更を行う図面変更方法に関するもので、製品仕様から金型製作までの一貫した思考の流れの中で設計を進めてゆくものではなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従来の金型設計方法は以上のように構成されているので、金型設計のそれぞれの段階における処理に個別に対応して、製品仕様から金型製作までの一貫した思考の流れの中で設計を進めてゆくようなものではなく、そのため、入出力データの互換性を考慮する必要があり、また操作手順が複雑なものとなるなどの問題点があった。
【0010】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、金型で成形したい形状をソリッドモデルによって入力し、作業者による設計構想を反映しながら金型製作のための処理を進めてゆくことにより、金型の可動部形状および固定部形状と、その金型から成形される形状とを自動的に作成することができる金型設計方法を得ることを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明に係る金型設計方法は、第1の工程における使用成形材料に関するデータの入力を、あらかじめ登録されている成形材料の中から選択された成形材料で決まる成形収縮率を設定することによって行い、抜き方向に関するデータの入力を、可動部形状の抜き方向を金型より成形品を取り出す際に可動部形状を動かす方向に、固定部形状の抜き方向を可動部形状の抜き方向と反対方向に設定することによって行い、分割に関するデータの入力を、パーティングラインの設定時には、設定されたパーティングラインを構成するエッジによって形成される閉ループを含む面を分割面として設定し、そのときに分割面が作成できない場合があるか否かを判断し、また、分割面の設定時には、設定された特徴的なエッジを含む平面を作成してそれを分割面として設定し、そのときにそのエッジを全て含む平面が作成できるか否かを判断し、また、ノーパーティングラインの設定時には、金型を開いたときのパーティングライン上にあらわれてほしくないエッジをノーパーティングラインとして設定することによって行い、勾配に関するデータの入力を、金型に勾配をつける際の処理で変更されたくない形状データを設定することによって行い、設定されたデータをそれぞれの形状要素に対して属性として持たせるものである。
【0019】
請求項2に記載の発明に係る金型設計方法は、第3の工程における分割処理を、第1の工程で設定された分割面と第2の工程で得られた形状とを積演算して分割面を境界に領域を分割し、分割された領域のいずれに可動部形状または固定部形状が存在するかの判断を行い、さらに、可動部形状側と固定部形状側に存在する形状の数がそれぞれ1つずつであるか否かを判断して、複数あれば、それらの形状のうちで本来は反対側の領域に存在すべき形状を抽出して、反対側の形状との和演算を行うことにより、第2の工程で作成された形状を2つに分割して、それらの境界上に存在するエッジにノーパーティングラインであるエッジが含まれているか否かを判断することによって行うものである。
【0020】
請求項3に記載の発明に係る金型設計方法は、第4の工程におけるアンダカット部の処理を、第3の工程で分割された金型の可動部形状と固定部形状をスィープして作成した形状と金型の可動部形状および固定部形状との積演算を行い、得られた形状をアンダカット部とし、演算結果が空であればアンダカット部は存在しないと判断して、アンダカット部が存在する場合は、分割された形状に対して、さらに割型に分割するか、スライドコアと呼ばれる部分を入子形式にするか、強制的に抜いてしまうかの選択を行い、割型が選択されれば、第3の工程で分割された形状をさらに分割して抽出されたアンダカット部を分割して取り出せるような割型とする際に、その分割する平面と作成された割型の移動方向を設定し、スライドコアが選択されれば、アンダカット部の形状に対して、可動部形状または固定部形状と接している面を抽出し、その面の法線ベクトルの延長線上で可動部形状または固定部形状に対して外側向きをスライドコアの移動方向として設定し、抽出した可動部形状または固定部形状と接している面をスライドコアの移動方向にスィープしてスライドコア形状を生成し、強制抜きが選択されれば、成形材料の弾性率や形状に対するアンダカット部の割合から、抜きやすさの目安となる値を算出するものである。
【0022】
請求項4に記載の発明に係る金型設計方法は、作成された金型の可動部形状および固定部形状に対して金型の構造に必要なデータを設定する際に、成形材料の流入方式、成形品の突き出し方式、および冷却方式のそれぞれについてデータの入力を行い、画面上に表示した金型キャビティセット上にその形状を配置することで、データ設定を行う第6の工程を付加したものである。
【0023】
請求項5に記載の発明に係る金型設計方法は、金型の構造に必要なデータ設定を行う際、ソリッドモデルの集合演算によって設定したデータ形状が金型と干渉しないかどうかの判断を行うものである。
【0024】
請求項6に記載の発明に係る金型設計方法は、処理結果を各工程毎に表示装置に表示して、処理結果が作業者の意図するものでなければ処理をさかのぼり、該当する処理段階に戻ってその処理段階から新たに処理を続けてゆくようにしたものである。
【0033】
【作用】
請求項1に記載の発明における金型設計方法は、金型形状の作成データの入力に際して、使用する成形材料に関するデータについては、登録されたデータ中から選択した成形材料の成形収縮率を設定し、抜き方向に関するデータについては、成形品取り出し時に可動部形状を動かす方向に当該可動部形状の抜き方向を、それとは反対方向に固定部形状の抜き方向を設定し、分割に関するデータについては、パーティングライン設定時にはパーティングラインを構成するエッジによって形成される閉ループを含む面を分割面として設定して、分割面設定時には設定された特徴的なエッジを含む平面を作成してそれを分割面として設定して、ノーパーティングライン設定時には金型を開いたときのパーティングライン上にあらわれてほしくないエッジをノーパーティングラインとして設定し、勾配に関するデータについては、金型に勾配をつける時に変更されたくない形状データを設定し、このようにして設定されたデータをそれぞれの形状要素に対して属性として持たせることにより、金型形状の作成に必要なデータの入力操作を簡便なものとするとともに、前記閉ループを作成する際には分割面が作成できない場合があるかの判断を行い、前記平面を作成する際にはそのような平面を作成できない場合があるかの判断を行うことにより、入力されたデータが不適切なものかどうかを自動的に判断して、作業者の処理を効率のよいものとする。
【0035】
また、請求項2に記載の発明における金型設計方法は、金型の基本となる形状を設定された分割面と積演算することによって分割し、金型の可動部形状と固定部形状を自動的に作成して、それらの形状が金型として不適切でないかどうかを自動的に判断することにより、適切な金型形状を容易に得ることができるようにし、作業者の処理を効率のよいものとする。
【0036】
また、請求項3に記載の発明における金型設計方法は、金型の可動部形状および固定部形状と、それらをスィープして作成した形状との積演算を行ってアンダカット部が存在するかどうかを判断し、アンダカット部が存在する場合にはその処理方法として、割型に分割するか、スライドコアを用いるか、強制抜きを行うかの中より1つを選択して実行することにより、簡単に適切な金型形状を得ることを可能とし、作業者の処理を効率のよいものとする。
【0038】
また、請求項4に記載の発明における金型設計方法は、第6の工程を付加して、成形材料の流入方式、成形品の突き出し方式および冷却方式を金型の構造に必要なデータとして、画面上に表示した金型キャビティセット上に配置することにより、作業者によるデータ設定を容易にし、さらにその処理を行うかどうかのモード選択も可能とする。
【0039】
また、請求項5に記載の発明における金型設計方法は、金型の構造に必要なデータとして設定したデータ形状が、金型と干渉しないかどうかを自動的に判断することにより、作業者の処理をより効率のよいものとする。
【0040】
また、請求項6に記載の発明における金型設計方法は、各工程毎に表示装置に処理結果を表示して確認し、それに基づいて処理をさかのぼってやり直すことにより、処理結果が作業者の意図するものでない場合に、簡単に操作をやり直せるようにする。
【0043】
【実施例】
実施例1.
以下、この発明の実施例1を図面を参照しながら詳細に説明する。図1はこの発明の一実施例による金型設計方法としての、金型キャビティセット部の形状作成方法が実現されるシステムの構成例を示すブロック図でる。図において、11は作業者によって金型の作成に必要なデータなどの入力が行われる入力装置であり、12はこの入力装置11に入力されたデータ類に基づいて処理を実行し、金型キャビティセット部の形状ならびにそれによって得られる製品形状を作成する形状データ作成処理装置である。13はこの形状データ作成処理装置12が処理の過程でデータ類や処理結果などを一時的に格納しておく記憶装置であり、14は形状データ作成処理装置12の処理結果などがその表示画面に表示される表示装置である。
【0044】
ここで、入力装置11には、与えられた基本形状からその形状の成形品を製作するための金型形状を設計する際に、当該基本形状と金型の材料である型材形状とが、作業者によってソリッドモデルで入力される。なお、それ以外には形状要素の隣接関係などといったデータを新たに与える必要はない。この入力装置11においては、さらに金型を作成するために必要な成形材料に関するデータ、パーティングラインに関するデータ、勾配面に関するデータ、および金型構造を設定するのに必要なデータがキーボードやマウスなどを用いて入力される。
【0045】
次に形状データ作成処理装置12の動作について説明する。ここで、図2はその処理の流れを示すフローチャートである。まずステップST1では、入力装置11から金型キャビティセット部の形状を作成するために必要なデータが入力される。このステップST1による処理が第1の工程である。次にステップST2では、ステップST1で入力されたデータに基づいて、成形収縮がおこることを見越して、あらかじめ基本形状に対して拡大処理を行い、その拡大した形状を表示装置14に表示し、ステップST3で作業者の確認をとる。次にステップST4では、ステップST1で入力された型材形状とステップST2で処理された形状との差演算により型材形状に対する削り込み形状を求める。以降の処理はこの削り込み形状をもとにおこなわれる。次にこの削り込み形状を表示装置14に表示し、ステップST5で作業者の確認をとる。このステップST2〜ステップST5による処理が第2の工程である。
【0046】
次にステップST6では、ステップST4で得られた削り込み形状を、ステップST1で入力されたデータから求めたパーティングラインまたは分割面によって、可動部形状と固定部形状とに分割して分割形状を作成する。そして、この分割形状を表示装置14に表示し、ステップST7で作業者の確認をとる。このステップST6、ステップST7による処理が第3の工程である。次にステップST8では、分割形状に対して、アンダカット部の抽出とその回避処理を行い、ステップST10ではさらに、この形状に対して勾配付けを行う。この勾配付けまで行った形状が、それぞれ金型キャビティセット部の固定部形状と可動部形状となる。そして、これらのそれぞれの処理ごとに、処理結果である形状を表示装置14に表示し、ステップST9、ステップST11でそれぞれ作業者の確認をとる。このステップST8、ステップST9による処理が第4の工程であり、ステップST10、ステップST11による処理が第5の工程である。
【0047】
次にステップST12では、ステップST10で求められた金型キャビティセット部の固定部および可動部の形状に対して、金型構造を設定するのに必要なデータを付加する。そして、それぞれの処理結果である形状について表示装置14に表示し、ステップST13で作業者の確認をとる。このステップST12、ステップST13による処理が第6の工程である。次にステップST14では、以上の処理から求められる金型キャビティセット部形状によって作成される製品形状を求める。なお、この製品形状とは成形収縮があった後の実際に得られる成形品の形状を表す。このステップST14による処理が第7の工程である。
【0048】
また、第1〜第6の工程によるそれぞれの処理結果である形状に対して、ステップST3、ステップST5、ステップST7、ステップST9、ステップST11、ステップST13で作業者の確認を行っているが、処理結果が適当でないもの(NGとなったもの)については、作業者はメッセージをだしてその原因となった処理のところまで戻って処理をやり直すことができる。なお、図2においては図示を簡略化するため、各確認処理でNGとなった場合には、すべてステップST1に戻って処理をやり直すように示している。
【0049】
なお、このような、第1〜第6の各工程毎に、処理の結果を表示装置14の表示画面に表示してそれを作業者に確認させ、処理結果が作業者の意図とは異なるものであった場合に、作業者の指示によって処理を後戻りし、その処理段階より新たに処理を続けてゆくモードの他に、第1〜第6の各工程毎に処理結果の確認を行わずに処理を進めてゆくモードも備えて、作業者がそのいずれかのモードを選択できるようにすることもできる。
【0050】
次に、図2のステップST1によるデータ入力の手順について説明する。ここで、図3はこのステップST1による処理の流れの詳細を示すフローチャートである。まずステップST15では、作成しようとしている金型によって製作される成形品の基本形状を、次にステップST16では、その金型の材料となる型材形状を、それぞれソリッドモデル・データにて入力する。このとき、金型材料の種類も同時に入力しておく。
【0051】
次にステップST17では、成形材料およびその成形収縮率の設定を行う。例えば表示装置14の画面上に、あらかじめ記憶装置13に登録されている成形材料の一覧表が図4の例に示すように表示されるので、その中より使用する成形材料を作業者が選択する。これらの成形材料にはそれぞれの成形収縮率が登録されており、選択した成形材料の成形収縮率が設定される。もし、この一覧表の中にない成形材料を用いる場合には、名称とその成形収縮率とを入力すればよく、記憶装置13にその登録処理を行えば、以後は登録した名称で呼び出すことができる。登録方法の例としては、一覧表の中のユーザ登録と書かれた欄を選択するとそれが反転表示され、図示のような新しいウィンドウが生成される。そこでこのウィンドウを用いて必要なデータを入力すればよい。
【0052】
次にステップST18では、金型の分割面を設定するために、金型の抜き方向に関するデータと金型の分割に関するデータが入力される。まず抜き方向に関しては、何も指示されなければ可動部形状と固定部形状とに分割された金型がZ軸方向に開閉されるものとする。なお、Z軸方向以外に抜き方向を設定したければここで設定しておく。すなわち、可動部形状の抜き方向は金型より成形品を取り出す際に当該可動部形状を動かす方向に設定し、固定部形状の抜き方向は可動部形状の抜き方向とは反対の方向に設定する。
【0053】
次に金型の分割に関しては、まずパーティングラインを設定する際に、パーティングラインを構成するエッジを設定し、それらのエッジによって作成される閉ループを含んだ平面を分割面として設定する。なお、この閉ループを作成する際に、閉じたループが作成できなかったり、分岐したループが作成されてしまったりして分割面が作成できない場合について判断をする。あるいは、分割面を設定する際に、特徴的なエッジを設定し、それらのエッジを含むような平面を作成して、それを分割面として設定する。なお、この平面を作成する際に、設定したエッジの全てを含むような平面が作成できない場合について判断をする。また、ノーパーティングラインを設定する際に、金型を開いたときのパーティングライン上にあられてほしくないエッジを、ノーパーティングラインとして設定する。
【0054】
以下にこのようなパーティングラインとノーパーティングラインの要素となるエッジまたは面を設定する例について図5を用いて説明する。なお、図5(1)は入力形状を示しており、図5(2)はパーティングラインの設定例について示している。図5(1)に示す入力形状に対して、図5(2)に示すエッジe1、エッジe2によってパーティングラインを設定したところであり、これら各エッジe1、エッジe2にはパーティングラインであるという属性がつけられる。その後の処理で、このエッジe1とエッジe2を含むような平面で形状を分割することになる。
【0055】
ここで、このようなソリッドモデルで表現される形状を表示装置14の画面上に表示する場合には、表示画面を複数枚数に切り分けて、切り分けられた複数枚数の表示画面のそれぞれに、そのソリッドモデルで表現される形状を異なる視点から見た形状で表示するようにすることも可能であり、そのようにすることによって、作業者は処理中の形状をよりよく認識することができるようになる。
【0056】
次にステップST19では、離形性を考慮して金型の勾配に関するデータが入力される。その際、勾配角の大きさが設定され、離形性を考慮して金型に勾配をつける際の基準となる基準エッジまたは基準面が設定されて、それに基づく属性づけが行われる。図6にその基準エッジまたは基準面を設定する例について示す。ここでいう基準エッジまたは基準面とは、勾配をつける際の形状変形処理によって影響を受けないようなエッジまたは面のことである。勾配をつける勾配面の抽出は、抜き方向に対して垂直な法線ベクトルをもつ面を自動的に抽出するか、作業者が所望の面を抽出するか、のいずれかの方法によって行われる。勾配面として抽出された面は色を変えて表示装置14の表示画面に表示され、作業者はそれを見ながら基準面の設定を行う。この処理により、それぞれの面には勾配面あるいは基準面という属性がつけられる。図6(1)には自動的に抽出された勾配面のうちの作業者側から見える面を表示している。また、図6(2)には基準エッジとしてエッジe3〜エッジe10を設定した例を示している。
【0057】
なお、ステップST17で成形収縮率が設定される際に、形状の各部分で成形収縮率が均一でない場合がある。そのような場合には、それぞれの成形収縮率とそれに対応する形状部分とを作業者が入力装置11のキーボードまたはマウスより入力することで、成形収縮率が不均一な形状にも対応できる。
【0058】
次に、図2のステップST2による基本形状の拡大処理の手順について説明する。ここで、図7はこのステップST2による処理の流れの詳細を示すフローチャートである。実際に得られる成形品の形状は、成形収縮のために金型の彫り込み形状よりも成形収縮率分だけ小さいものになってしまう。そのため、成形収縮率を考慮して、あらかじめ金型の彫り込み形状を大きくしておく。まずステップST20において、彫り込み形状を大きくするための成形収縮率に対する拡大率を求める。この拡大率は、削り込み形状の寸法をL1、成形収縮後の成形品の形状寸法をL2、成形収縮率をtとするとき、次の式(1)が成り立つことから、もとの基本形状を(1+t)倍してやればよい。
【0059】
t=(L1−L2)/L1 ・・・・・・(1)
【0060】
次にこのようにして計算した拡大率に従って形状寸法を拡大する方法の一例を示す。まずステップST21で、拡大の基準となる点P1(x1,y1,z1)を決める。次にステップST22で、形状の要素上の点P(x,y,z)に対して、点P1から点PへのベクトルP1P(x−x1,y−y1,z−z1)を求める。最後にステップST23で、拡大処理後の点Pに対応する点Pa を(xa ,ya ,za )とし、点P1から点Pa へのベクトルP1Pa を(xa −x1,ya −y1,za −z1)とすると、ベクトルP1Pを(1+t)倍した結果である(1+t)*(x−x1,y−y1,z−z1)が、ベクトルP1Pa と等しくなる。すなわち、次の式(2)が成り立つことから、次の式(3)が得られる。形状要素上の各点Pに対してこの処理を行って拡大形状を求める。
【0061】
(xa −x1,ya −y1,za −z1)
=(1+t)*(x−x1,y−y1,z−z1) ・・・(2)
(xa ,ya ,za )=(1+t)*(x,y,z) ・・・(3)
【0062】
図8には、形状中の1つの端点を拡大の基準となる点P1とし、この点P1を基準としてX,Y,Z方向に形状を拡大した例を示す。
【0063】
なお、形状の各部分で成形収縮率が均一でない場合には、それぞれの成形収縮率に応じた拡大率で拡大処理が行われる。しかし、各部分ごとにそれぞれの拡大率で均一に拡大処理を行うと、それらの部分の境界において、なめらかでない形状ができてしまう。そこで、各部分内の各点において、入力された成形収縮率をもとに形状の性質や成形条件を考慮した拡大率の重みづけを行う。これにより、各点で拡大率の異なる形状に変形され、各部分の連結部がなめらかな形状が得られる。
【0064】
次に、図2のステップST4による削り込み形状の作成処理の手順について説明する。ここで、図9はこのステップST4による処理の流れの詳細を示すフローチャートである。まずステップST24では、型材形状中に、図2のステップST2で拡大処理を行った削り込み形状をどのように配置するかを設定する。次にステップST25では、設定された配置で型材形状と拡大処理された削り込み形状との差演算を行う。配置によっては型材形状の領域よりも拡大形状の領域がはみだしてしまい、不正な形状を作成する場合が生じる。そのためステップST26では、演算の結果が不正でないかどうかを判断し、不正な場合にはステップST27でエラーメッセージを表示する。
【0065】
ここで、ステップST24による形状の配置方法としては、型材形状と削り込み形状におけるそれぞれの形状の中心を求め、それらが一致するように自動的に配置する方法と、表示された前記2つの形状のうちの一方の形状を作業者が入力装置11のマウスなどで指示し、他方の形状の上に表示装置14の画面上で移動させることにより配置する方法などが考えられる。図10にはそれぞれの形状中心を一致させるようにして配置させた例を示している。図10(1)は型材形状を、図10(2)は削り込み形状をそれぞれ示しており、図10(3)はそれら両形状を両者の中心で一致させて配置した結果を示している。
【0066】
次に、図2のステップST6による削り込み形状の分割処理の手順について説明する。ここで、図11はこのステップST6による処理の流れの詳細を示すフローチャートである。まずステップST28では、図2のステップST1で入力したパーティングラインに関するデータから分割平面を作成する。作成された分割平面と入力データとに矛盾が生じる場合には、ステップST29でエラーを表示するので、作業者はその後の操作の指示を行う必要がある。矛盾が生じない場合には、次のステップに進み、ステップST28で作成した分割平面と図2のステップST4で作成した削り込み形状との集合演算によって、ステップST30およびステップST31で削り込み形状を分割する。分割された形状のうち、抜き方向に対して、分割平面よりも上方にある形状を金型キャビティセット部の固定部形状、下方にある形状を可動部形状と呼ぶ。それぞれの形状に対する抜き方向は、分割平面を境界として互いに逆向きになる。
【0067】
しかしながら、単純に一つの平面で分割してしまうと、それぞれの分割領域中に存在するべき形状が含まれていなかったり、存在しない形状が含まれていたりする場合がある。ステップST32では、そのような形状が存在しているかどうかを判断し、存在している場合には、ステップST33、ステップST34で修正処理を行う。次にステップST35で、これらの処理結果の形状を表示装置14に表示して作業者に確認する。この段階で作業者の意図に反する場合には、図2のステップST1でのデータ入力処理か、あるいはステップST3での削り込み形状作成処理が不適当であったと考えられるので、それぞれの処理段階にさかのぼって処理をやり直すことができる。
【0068】
次にこの削り込み形状の分割処理を、図12に示す例について具体的に説明する。図2のステップST1で入力したパーティングラインに関するデータに基づいて、図12(1)にPL1で示すパーティングラインの属性がつけられた面あるいはエッジを全て含むような平面をステップST28で作成し、これを分割平面とする。そして、作成した分割平面に矛盾が生じていないかどうかの判断を行う。ここでいう矛盾とは、パーティングライン属性のついた要素が全て分割平面に含まれていないか、あるいは、ノーパーティングライン属性のついた要素が一つでも分割平面に含まれている場合である。矛盾が生じていれば、ステップST29に進み、作業者にエラーが生じていることを知らせる。ここで、作業者はやり直しのために処理の後戻りをすることができる。
【0069】
ステップST30では、ステップST28で作成された分割平面と図2のステップST3で作成した削り込み形状との積演算によって分割形状を作成する。次に分割形状の作成方法について図12(1)を参照しながら説明する。まず分割平面の法線ベクトルがv1で示すものである場合、削り込み形状との積演算によって分割形状b2,b3を得る。さらに、ステップST31で、前記の分割平面の法線ベクトルを逆向きのv2となるように変換した平面と前記削り込み形状との積演算を行って分割形状b4を得る。分割平面の法線ベクトルが逆の場合も同様の処理が行える。以上の処理によって、得られた分割形状に対して、パーティングラインPL1を含む分割平面を境にして、上方にある形状b2,b3を固定部形状、下方にある形状b4を可動部形状と呼ぶことにする。さらに、それぞれの分割形状を作成するときに用いた分割平面の法線ベクトルv1,v2は、図中に示すように分割平面に対して垂直かつ互いに逆向きであり、それぞれの抜き方向に相当する。なお、図中の形状b1は成形材料が注入されて成形品となる部分である。
【0070】
このステップST30、ステップST31で分割された形状を修正する例を図12(2)に示す。ステップST32で、これらの分割形状に修正が必要であるかどうかの判断を行う。分割された領域中に形状が2つ以上存在すれば、修正が必要であると判断される。通常、スライドコアや割型を除けば、原則的に金型キャビティセット部は固定部と可動部の2形状となるはずだからである。さらに、同じ分割領域中に2つ以上存在する形状のうち、どちらの形状が他方の領域に存在すべきなのかの判断も行う。これは、金型キャビティセット部の性質から、形状の存在する領域が最大ではない、つまり、いちばん外側に存在していない形状が他方の領域に含まれるべき形状であると判断する。
【0071】
図12(2)に示す例では、可動部形状の領域に形状b2、b3の2形状が含まれているので、修正を必要とすることがわかる。また、これらの形状のうち、外側に存在していない形状b3が他方の可動部領域に含まれるべき形状であることもわかる。このようにして、ステップST33で、他方の領域に存在すべき形状部分を抽出する。さらに、ステップST34で、他方の領域に含まれるように集合演算を行う。この例では、ステップST30で形状b3が形状b4に含まれるべき形状として判断され、それがステップST33で抽出されるので、ステップST34では形状b3と形状b4との和集合を行い、図12(3)に示すような新しい可動部形状b5を得る。なお、固定部形状は形状b2である。このようにして、図12(3)に示す形状b2と形状b5が、金型キャビテイセット部の固定部形状および可動部形状として得られる。
【0072】
次に、図2のステップST8によるアンダカット部の処理の手順について説明する。ここで、図13はこのステップST8による処理の流れの詳細を示すフローチャートである。分割された削り込み形状を金型キャビティセット部の固定部形状と可動部形状として成形品を作成する際に、それぞれの形状の凹凸部によって金型から成形品を円滑に抜き取れない部分が生じる場合がある。このような部分をアンダカット部と呼ぶ。ステップST36では、このようなアンダカット部が存在するかどうかを判断して、存在する場合はその部分を抽出する。アンダカット部が抽出されるとステップST37に進んで、アンダカット部の処理の選択をする。なお、アンダカット部が存在しない場合には直接ステップST43に進む。また、アンダカット部が存在しなくても、金型キャビティセット部を分割したほうが加工がしやすい場合もステップST36で判断し、ステップST37で処理の選択をする。選択した結果によって、それぞれステップST38からステップST42の処理を行う。ステップST43では、これらの結果を表示装置14に表示して作業者に確認する。作業者の意図と反する場合には、図11のステップST35の処理と同様に、該当する処理段階に戻って、その処理段階より処理をやり直しをすることができる。
【0073】
次にステップST36におけるアンダカット部の抽出方法の例を、図14を用いて説明する。図14(1)に示す例のように、固定部形状である形状b2と可動部形状である形状b5について、それぞれを構成する面のうち分割の境界となる面を抽出する。図14(1)に示すように、形状b2側に属する面として、面f1〜面f7を抽出し、形状b5側に属する面として、面f8〜面f12を抽出する。ここで、成形品形状の高さは図示のd1とする。次に図14(2)で示すように、形状b2側の面と形状b5側の面をそれぞれの抜き方向とは反対の向きに、すなわち形状b2側の面を矢印v1の方向に、形状b5側の面を矢印v2の方向に、それぞれd1だけスィープしたソリッドモデルを作成し、それらを形状b6および形状b7とする。そして図14(3)に示すように、各面の対応がつくようにして、形状b2と形状b6、形状b5と形状b7の積演算を行うことによって、形状b2と形状b6との干渉部分である形状b8をアンダカット部として抽出する。なお、この演算結果が空であればアンダカット部は存在しないと判断する。
【0074】
次にこのアンダカット部が抽出された場合の、ステップST37における処理について説明する。形状b8のようなアンダカット部が存在する場合に、それを処理する手段として、割型と呼ばれるさらに形状を分割する方法を用いるか、スライドコアと呼ばれるアンダカット部を入子式にする方法を用いるか、強制抜きと呼ばれる無理やり抜いてしまう方法を用いるかのいずれかを選択する。スライドコアが選択された場合には、スライドコアと呼ばれる入れ子構造の形状を作成してアンダカット部を回避するため、ステップST38でスライドコア形状を移動させる移動方向を設定し、ステップST39でアンダカット部形状をスィープして、スライドコア形状を作成する。また割型が選択された場合には、金型キャビティセット部の形状をさらに分割してアンダカット部を回避するため、ステップST40で分割線を設定し、ステップST41でその分割線に基づく分割を行う。さらに強制抜きが選択された場合には、金型キャビティセット部の形状の変形処理は行わず、ステップST42で強制抜きの目安となる値の計算を行う。
【0075】
ステップST37におけるアンダカット部の回避方法の選択として、スライドコアを選択した場合の例を図15を用いて具体的に説明する。アンダカット部を回避するためにスライドコアを用いる方法として、スライドコアを外側に抜く方法と内側に抜く方法とがある。内側に抜く場合は加工が困難で作れないことが多いため、通常は外側に抜く方法を用いる。例えばこの図15(1)で示されるように、前記処理で抽出したアンダカット部b8をもつ形状については、図中で示すように、矢印v1で示す方向に対して垂直でかつ外側を向いた、矢印v3で示す方向に抜くことになる。よって、図15(2)に示すように、形状b8に対して矢印v3の方向に形状b2を貫くようにスィープして得られる形状b9がスライドコアの形状である。
【0076】
次にアンダカット部の回避方法の選択として、割型を選択した場合の例を図16を用いて具体的に説明する。図16(1)に示すような取手付きのカップを成形する金型形状に対して、図16(2)に示すように分割面をパーティングラインPL2によるものとした場合、形状b10の部分がアンダカット部となる。図16(3)はそのときの金型キャビティセット部を示すものである。このアンダカット部を回避するために、アンダカット部を含んでいる型形状b11をパーティングラインPL3による分割面でさらに分割する。図16(4)にこの形状b11を分割した結果を示す。
【0077】
次にアンダカット部の回避方法の選択として、強制抜きを選択した場合の例を具体的に説明する。この場合には、金型形状に対する変形処理は行わず、弾性変形によって強制的に成形品を外す処理を行う。その際、温度、成形材料の材質、成形品形状に対するアンダカット部の割合などから強制抜きのしやすさの目安となる数値を計算し、それによって強制抜きできるかどうかの判断をする。
【0078】
次に、図2のステップST10による勾配付けの処理の手順について説明する。ここで、図17はこのステップST10による処理の流れの詳細を示すフローチャートである。ここでは、図2のステップST1で設定した勾配の基準に基づいて、形状に抜き勾配をつける処理を行う。ステップST44では、勾配をつける勾配面を抽出し、ステップST45では、勾配をつけるために勾配面をどちら側に傾ければよいかの判断をし、ステップST46では、勾配面を移動させて実際に勾配をつける。そしてステップST47では、その結果が図2のステップST1で設定した基準面に影響を及ぼしていないかどうかを判断する。影響を及ぼしている場合(矛盾している場合)には、作業者にエラーが生じていることを知らせ、作業者はやり直しのために処理の後戻りをすることができる。矛盾が生じていない場合にはステップST48に進み、これらの勾配付けの結果を表示装置14に表示して作業者の確認をとる。作業者の意図と反する場合には、図11のステップST35、図13のステップST43などと同様に処理を後戻りしてやり直すことができる。以上の処理を、勾配面との属性が付けられた面に対して順次繰り返して行う。
【0079】
形状に勾配をつける例を図18を用いて具体的に説明する。まずステップST44で勾配をつけようとする勾配面を抽出する。ここで、この勾配面とはパーティングラインに対して垂直な面であり、図18(1)の例で示すように面f13〜面f17である。勾配角の大きさθはデフォルト値で設定しておくが、作業者によって変更することもできる。次にステップST45で、形状に対して勾配面をどちら側に傾けるかを判断する。そしてステップST46で、図18(2)の例で示すように、ローカル・オペレーションにより形状の変形処理を行う。ステップST47では、勾配面に勾配をつける際に、図2のステップST1で設定した基準面または基準エッジの寸法が変わるなどの矛盾がないかどうかを判断する。ステップST48では、これらの勾配付けの処理結果を表示して作業者の確認をとる。作業者の意図と反する場合には、前述のように後戻りして処理をやり直すことができる。
【0080】
なお、ステップST45における、勾配面に勾配をつける際にどちら側に勾配面を傾けるかの判断については、パーティングラインを基準として面の法線ベクトルと抜き方向との関係によって行うことが考えられる。金型キャビティセット部の固定部形状および可動部形状として作成された形状は、それぞれソリッドモデルによって表されており、形状中に含まれる面の法線ベクトルは全て形状に対して外側を向いている。この勾配面の法線ベクトルは、属している形状に対する抜き方向とのなす角が垂直である。なお抜き方向は固定なので、この2方向のなす角が(90+θ)゜となるように法線ベクトルの方、つまり勾配面の方を移動させる。
【0081】
この勾配面を移動する向きの判断結果の例について、固定部形状b2の場合を図19に、可動部形状b5の場合を図20にそれぞれ示している。図19(1)において、面f18の法線ベクトルの方向v4と抜き方向v1との角は90゜である。よって、面f18に勾配角θの勾配をつけようとすると、図19(2)に示すように、移動後の面f18a の法線ベクトルの方向v4a と抜き方向v1とのなす角が(90+θ)゜となるように、面f18を移動させる向きが決まる。また、図20(1)における可動部形状b5の場合も同様にして、図20(2)に示すように、移動後の面f20a の法線ベクトルの方向v5a と抜き方向v2とのなす角が(90+θ)゜となるような向きに面f20を移動させる。移動のさいには、それぞれの基準面である面f19、面f21に影響を及ぼさないように移動する。
【0082】
また、上記以外にも、成形品の形状をパーティングラインに平行に切ったときの断面積を基準にすることができる。金型を開いて中にある成形品を取り出すためには、パーティングラインを境界にして、それぞれの抜き方向に向かってパーティングラインから離れるほど、その断面積が小さくなるようでなければならない。図21で示すように、形状b2において、パーティングラインPL1での断面積とパーティングラインPL1から距離d2だけ離れた位置での断面積とを求める。そして、後者の断面積のほうが小さくなるように勾配面に勾配をつける。このとき距離d2は、断面が勾配をつけようとしている面を通る範囲内でなければならない。
【0083】
また、ステップST46での勾配面の移動方法については、図22を用いて具体的に説明する。まず図22(1)に示すように、基準面を面f22、勾配面を面f23とするとき、面f22と面f23との交わりである交線L1を求める。次に図22(2)に示すように、面f23に対して交線L1を軸とした大きさθの回転移動を行い、これを面f23a とする。このとき、どちら側に移動するかは、ステップST45による勾配面の傾け方の判断に基づく。また、面f22を基準として面f23が移動することにより、面f23と隣接する面に対しても形状変形が必要である。この例の場合、面f23と隣接している面は、底面f24と、面f23をはさんでいる面f25および面f26である。
【0084】
次に、面f23の勾配つけに対する底面f24の処理を例にして、形状変形処理について説明する。図22(1)に示すように、基準面となる面f22と勾配面となる面f23との交線L1の端点をそれぞれ点P3およびP4とする。交線L1と点P3、P4は基準面に含まれている要素なので形状変形の影響はうけない。また、面f23と隣接する面f24との交線をL2、その端点をそれぞれ点P5およびP6とする。図22(2)に示すように、面f23を回転移動させた面f23a に対して、点P5、P6に相当する点を点P5a 、P6a とする。次に、直線P3P5a と直線P4P6a を求め、これらの直線と面f24を含む平面との交点P7およびP8を求める。面f23a において、その点P5a を点P7に、点P6a を点P8に移動させて、新たに面f23b を求める。面f24に対しても同様に、点P5を点P7に、点P6を点P8に移動させて面f24a を求める。これらの面f23b と面f24a が勾配つけによる形状変形処理がすんだ面である。面f24と同様に、面f25および面f26に対しても変形処理を行った結果を図22(3)に示す。
【0085】
なお、基準面と勾配面の間がアールで面取りされている場合も同様であり、図23にその場合の例を示す。図23(1)に示すように、基準面f22と勾配面f23の間がアールR1で面取りされている場合、それらの面f22と面f23を延長して交叉する際の交線L3を想定する。次に図23(2)に示すように、この想定された交線L3を軸として傾斜面f23を回転移動させ、移動した勾配面f23a と基準面f22との間をつなげるように新たなアールR2をつけなおす。
【0086】
ここで、この勾配付けによる移動の際に、底面f24が基準面として設定されていれば、面f23の変形によって影響を受けてはならないので、前記のような処理は行えず、面f23の勾配付けは不可能である。このような場合は、処理を中断してステップST47に進む。ステップST47では、その旨のメッセージを表示して作業者に知らせる。作業者は、勾配面と基準面の属性付けの処理を行ったところにまで戻って、新たに処理をやり直すことができる。
【0087】
また、成形品に勾配をつける際に、基準面と勾配面との設定の仕方によってはパーティングラインの位置で金型の固定部形状と可動部形状が食い違う場合が生じる可能性がある。ステップST47では、そのような状態が生じていないかどうかも判断し、生じている場合にはメッセージを出して作業者に知らせる。
【0088】
次に、図2のステップST12による金型の構造に必要なデータの設定処理の手順について説明する。ここで、図24はゲート、ランナ、スプルの設定処理の流れの詳細を示すフローチャート、図25は突き出し方式の設定処理の流れの詳細を示すフローチャート、図26は冷却方式の設定処理の流れの詳細を示すフローチャートである。まず図24に示すフローチャートに従ってゲート、ランナ、スプルの設定について説明する。ステップST49ではゲート、ステップST50ではランナ、ステップST51ではスプルについて、それぞれ方式の選択および設定を行う。また、ステップST52で金型の型締力を、ステップST53で成形材料の射出容量を計算し、その計算結果によって使用する成形機に必要な条件が求まるので、必要ならば、ステップST54で成形機の変更も行える。ステップST55では、選択および設定されたゲート、ランナ、スプルについてのデータを金型キャビティセット部の形状に加えたものを表示装置14に表示して作業者の確認をとる。
【0089】
次に図25に示すフローチャートに従って突き出し方式の設定について説明する。ステップST56では、突き出し方式の選択を行い、選択した突き出し方式に応じてそれぞれ必要なデータをステップST57からステップST64で設定する。すなわち、ステップST56では、ピン突き出し、ストリッパプレート突き出し、エア突き出しの中から1つの方法を選択する。そして、ピン突き出し方式を選択した場合には、ステップST57でピンの種類の選択および設定を行い、ステップST58でピンの形状を、ステップST59でピンの配置位置をそれぞれ設定し、ステップST60で金型キャビティセット部との集合演算によりこれらの設定に基づく金型キャビティセット部形状を求める。
【0090】
また、ストリッパプレート突き出し方式を選択した場合には、ステップST61で材質の選択および設定を行い、ステップST62でストリッパプレートを配置する位置を設定して、ステップST63で金型キャビティセット部との集合演算によりこれらの設定に基づく金型キャビティセット部形状を求める。エア突き出し方式を選択した場合には、ステップST64でエアの吹き出し口を配置する位置を設定し、ステップST65で金型キャビティセット部との集合演算によりこの設定に基づく金型キャビティセット部形状を求める。そして、ステップST66では、選択および設定されたデータに基づいて突き出し機構を追加した金型キャビティセット部の形状を表示装置14に表示し、作業者の確認をとる。
【0091】
次に図26に示すフローチャートに従って冷却方式の設定について説明する。まずステップST67で冷却方式の方法の選択を行い、次にステップST68で冷却温度を、ステップST69で冷却時間を設定する。そしてステップST70で冷却回路の設定を行う。その後ステップST71において、選択および設定したデータに基づいて冷却機構を追加した金型キャビティセット部の形状を表示装置14に表示し、作業者の確認をとる。
【0092】
これらの選択および設定の結果は、金型構造に影響を及ぼす情報として記憶装置13に保持される。また、それぞれの選択方法としては、各方式をテーブル形式で表示した中から選択したり、形状の寸法をパラメトリックに設定したりする方法などが考えられる。また、選択および設定した方法では、金型が不正形状になってしまったり、作業者の確認が得られなかった場合には、ステップST55、ステップST66、あるいはステップST71で選択および設定のやり直しができる。
【0093】
次にステップST49におけるゲートの選択および設定について、図27を用いて具体的に説明する。表示装置14に表示された金型キャビティセット部に対して、ゲートを配置する位置を入力装置11のマウスなどで入力する。次に、表示装置14の画面上に各ゲートの標準的な名称と図が図27のように表示されるので、その中から所望のものを選択する。選択されたゲートに対して、長さと幅の寸法を設定し、所望のゲート形状にする。なお、所望のゲート形状がない場合には、形状をそのままCAD入力することもできる。
【0094】
次にステップST50におけるランナの設定について、図28を用いて具体的に説明する。図28(1)に示すように、表示装置14の画面上にランナの断面形状が表示される。作業者はその中から所望のものを選択し、さらに選択された断面形状中の寸法を設定する。所望のランナの断面形状がない場合には、形状をCAD入力することも可能である。また、多数個取りの場合には、図28(2)に示すように、配置のレイアウトを表示装置14の画面上に表示して、その中から所望のものを選択する。
【0095】
次にステップST51におけるスプルの設定については、通常スプルブッシュとして金型とは別に加工するので、ここでは配置する位置を設定する。表示装置14の画面上に表示されているランナ形状に対して、どの位置にスプルブッシュを設定するかを入力装置11のマウスなどで指示する。
【0096】
なお、ランナは成形材料の温度の低下が最小となるように設計されなければならないので、ランナの断面積とランナの断面の周長との比をランナ効率値とするとき、その値が最大となるようにしなければならない。よって、前記ステップST50におけるランナの設定の際に、選択したランナの断面形状に設定した寸法値からランナ効率値を計算する。そして、その値を表示装置14に表示することで、作業者が設定のやり直しを望む場合には、処理をやり直すことができる。
【0097】
また、ステップST52における金型の型締力の計算については、金型の抜き方向に垂直な面に対する成形品形状の投影面積を求め、これと平均射出圧力との積を計算して、この金型に必要な型締力とする。よって、成形機選定の目安の一つとして、この値以上の型締力をもつ成形機を用いなければならない。ただし、成形材料や成形品の形状や厚みによって必要な型締力は多少かわるので、成形機の型締力には上記の計算結果にある程度の余裕をもたせておく必要がある。
【0098】
さらに、ステップST53における成形材料の射出容量の計算については、作成された金型キャビティセット部の固定部形状および可動部形状以外の空洞部分の形状(図12の図形b1)の容積を集合演算により求め、その容積とスプルおよびランナなどの成形材料の通り道となる部分の容積とを加えた値として算出する。よって、成形機選定の目安の一つとして、この値以上の射出容量をもつ成形機を用いなければならない。なお、これらステップST52およびS53による計算結果から、成形機の変更が必要となった場合には、ステップST54にて成形機の変更を行う。
【0099】
次にステップST56において、突き出し方式としてピン突き出しを選択した場合について、図29および図30を用いて具体的に説明する。ピンの種類および形状については、JIS規格に基づいた市販品をあらかじめ記憶装置13に登録しておく。図29はピン突き出しを設定する時の表示装置14表示画面の一例を示すものであり、図29(1)にはピン突き出しの選択、図29(2)にはピンの寸法入力について例示している。まずピンの一覧表を図29(1)の例で示すように表示装置14の画面上に表示し、その表の中から所望のピンを選択する。ピンの形状データはソリッドモデル・データをもつ。図29(1)の例は、ストレートピンを選択したところであり、これにより表示装置14の画面には、図29(2)で示すように選択したストレートピンの形状が表示される。作業者は表示された図中の各部の寸法を設定して所望のピン形状とする。ここで、記憶装置13には、登録されているピンについて、そのピン穴のためのクリアランスも登録されている。また、記憶装置13に所望のピン形状が登録されていない場合には、CAD入力によって作業者が登録することもできる。
【0100】
また、ピンを配置する位置については、表示装置14の画面上に表示された金型キャビティセット部形状に対して、入力装置11のマウスなどによって指示する。ピン配置の例を図30で説明する。図30(1)が金型キャビティセット部の形状で、図30(2)が設定したピン形状である。まず、図30(3)のように、形状の表示方法のひとつとして、金型キャビティセット部形状のうちの指示した面が正面となるように表示装置14の画面上に表示させる。そして、図30(4)に示すように、金型キャビティセット部形状に対してピン形状b12を入力装置11のマウスなどで移動させる。ピンの配置位置が決まれば、金型キャビティセット部形状に対して集合演算を行う。ここで、金型キャビティセット部形状において求めたいのはピン穴であるので、選択されたピンの形状から、クリアランスを考慮した穴形状データを求める。金型キャビティセット部との集合演算には、この穴形状データを用いる。図30(5)に、金型キャビティセット部の可動部形状に対する処理結果を示す。
【0101】
なお、同様の方法によって、リターンピンの設定も行うことができる。
【0102】
次にステップST56において、突き出し方式としてストリッパプレート突き出しを選択した場合について、図31を用いて具体的に説明する。まず、ストリッパプレートに用いる材質の選択を行う。次に図31(1)に示すように、前記図30で用いた表示方法と同様に、正面方向から見た金型キャビティセット部形状を表示装置14に表示し、その画面上でどの部分にストリッパプレートを配置させるかを設定する。図31(2)の例では、ストリッパプレートの範囲を入力装置11のマウスなどで指示している。この指示した位置にストリッパプレートの上面と底面とが位置するように指示して、図31(3)で示すように金型キャビティセット部の形状修正を行う。なお、図31(3)における形状b13がこのストリッパプレートである。
【0103】
なお、ストリッパプレートの厚みを入力することで、パーティングラインを基準にして厚みの分だけ切りとった形状をストリッパプレートとする方法も考えられる。
【0104】
また、ステップST56において、突き出し方式としてエア突き出しを選択した場合には、前記図30で用いた表示方法と同様にして、表示装置14の画面上に表示した金型キャビティセット部形状のどの位置に、エアの吹き出し口を配置するかを、入力装置11のマウスなどで指示する。
【0105】
なお、突き出し方式として、上記各方法を複合して用いる場合も考えられ、その場合には前記方法を繰り返して選択する。また、同様にして、スプルおよびランナの突き出し方式を設定することもできる。
【0106】
次に、ステップST67における冷却方式の選択については、水冷、ガス冷却、ヒートパイプの中から所望の方法を選択する。そして、ステップST68で冷却温度を、ステップST69で冷却時間を、ステップST70で冷却回路をそれぞれ設定することもできる。冷却回路の設定例としては、表示装置14の画面上にストレート、円周、渦巻、螺旋、平面Uターンなどの各回路のパターン図を表示し、その中から所望のパターン図を選択し、選択したパターン図に対しては、作成した金型キャビティセット部形状にそった大きさになるように、各部位の寸法をパラメトリックに設定して金型に配置する方法などが考えられる。この設定例を図32に示す。図32(1)は金型キャビティセット部形状に対して冷却回路b14を設定した例を上面から見たものであり、図32(2)は正面から見たものである。
【0107】
次に、図2のステップST14による製品形状の作成処理の手順について説明する。ここで、図33はこのステップST14による処理の流れの詳細を示すフローチャートである。図2のステップST6で作成された金型キャビティセット部の形状を閉じたときに、空洞になっている部分が成形材料が注入されて成形品が作成される部分である。よって、ステップST72では、金型キャビティセット部を閉じたときに空洞となる形状を、集合演算によって作成し、これを成形品形状とする。実際に得られる製品形状は、この成形品形状に対して成形収縮が行われた形状なので、ステップST73からステップST75において、図2のステップST2で行われた形状の拡大方法と同様の方法で縮小する。また、ステップST1で均一でない成形収縮率が与えられていた場合には、ステップST2で行われた処理と同様に、その設定された部分ごとに与えられた成形収縮率に基づいて縮小する。
【0108】
次に、この製品形状の作成処理における縮小方法について、その処理結果の表示例を示す図34を用いて具体的に説明する。図34(1)の例で示すような金型キャビティセット部から得られる成形品形状に対して、成形収縮率tで縮小させる。縮小方法の一例として、まずステップST73で、ある点P2(x2,y2,z2)を基準点とする。次にステップST74において、この基準点P2から形状上の各要素の点P(x,y,z)へのベクトルP2P(x−x2,y−y2,z−z2)を求める。そして、ステップST75において、点Pに対して縮小処理を行った点をPa (xa ,ya ,za )とするとき、次の式(4)となることから、変換処理後の点Pa は次の式(5)が成り立つような点であることがわかる。
【0109】
(xa −x2,ya −y2、za −z2)
=(1−t)*(x−x2,y−y2,z−z2) ・・・(4)
(xa ,ya 、za )=(1−t)*(x,y,z) ・・・(5)
【0110】
図34(2)に、上記の方法で形状中の1つの端点を基準点P2とし、この基準点P2を基準としてX,Y,Z方向に形状を縮小した例を示す。
【0111】
実施例2.
なお、上記実施例1では、ソリッドモデルによって入力された形状から金型キャビティセット部の形状を作成するものであったが、各処理で作成された形状を用いて解析やシミュレーションを行うこともできる。作成された金型の型開きによって成形品がとりだされる様子を模したシミュレーションや、設定したゲートおよびランナ方式による流動解析、設定した冷却方式による冷却解析、金型キャビティセット部形状や成形品の強度解析など、形状をソリッドモデルで表現しているので、精度の高い解析を行うことができる。これらのシミュレーションや解析結果を評価することにより、作業者は必要に応じて金型キャビテイセット部形状の変形を行うことができる。
【0112】
実施例3.
また、上記実施例1では、図2のステップST8にてアンダカット部の処理を先に行い、その後ステップST10で勾配付けの処理を行うものを示したが、これらの処理の順番を入れ換えてもよく、上記実施例と同様の効果を奏する。
【0113】
実施例4.
また、上記実施例1では、金型キャビティセット部の形状を作成するために、図2のステップST12において金型の構造に必要なデータの設定処理を行っている場合について説明したが、簡単に金型キャビティセット部の固定部形状と可動部形状が知りたい場合には、この処理を抜かしても有効である。
【0114】
実施例5.
また、上記実施例1では、金型キャビティセット部の形状作成に必要なデータを設定する場合に、あらかじめ保持しているデータの中から選択するものを示したが、これらのデータを処理の途中で記憶させることも可能であり、これにより、標準的なデータ以外にも作業者にとって使用頻度の高いデータに対して効率的な処理が行える。
【0121】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、金型形状の作成データを、使用する成形材料に関するデータは、登録データ中から選択した成形材料の成形収縮率を設定し、抜き方向に関するデータは、成形品取り出し時に可動部形状を動かす方向に基づいて可動部形状と固定部形状の抜き方向を設定し、分割に関するデータは、パーティングライン設定時に、パーティングラインを構成するエッジによって形成される閉ループを含む面を分割面として設定するとともに、その閉ループを作成する際に分割面が作成できない場合があるか判断し、分割面設定時に、設定された特徴的なエッジを含む平面を作成してそれを分割面として設定するとともに、その平面を作成する際にそのような平面を作成できない場合があるか判断し、ノーパーティングライン設定時に、金型を開いたときのパーティングライン上にあらわれてほしくないエッジをノーパーティングラインとして設定し、勾配に関するデータは、勾配をつける時に変更されたくない形状データを設定することによって入力し、その設定されたデータをそれぞれの形状要素に対して属性として持たせるように構成したので、金型形状の作成に必要なデータを作業者が容易に入力することが可能となり、さらに、入力されたデータが不適切なものかどうかが自動的に判断されて、作業者は効率のよい処理を行うことができる効果がある。
【0123】
また、請求項2に記載の発明によれば、設定された分割面との積演算によって金型の基本となる形状を分割して、金型の可動部形状と固定部形状を自動的に作成し、さらにそれらの形状が金型として不適切でないかどうかを自動的に判断するように構成したので、作業者は適切な金型形状を容易に得ることができ、効率のよい処理を行える効果がある。
【0124】
また、請求項3に記載の発明によれば、金型の可動部形状および固定部形状と、それらをスィープして作成した形状との積演算を行ってアンダカット部が存在するかどうかを判断し、アンダカット部が存在すれば、割型に分割する、スライドコアを用いる、強制抜きを行う、の中よりいずれかの方法を選択してアンダカットの処理を行うように構成したので、作業者は適切な金型形状を簡単に得ることができ、効率のよい処理が行える効果がある。
【0126】
また、請求項4に記載の発明によれば、第6の工程を付加し、成形材料の流入方式、成形品の突き出し方式および冷却方式を、画面上に表示した金型キャビティセット上に配置するように構成したので、作業者は容易にデータ設定を行うことができ、さらにその処理を行うかどうかのモード選択も可能となる効果がある。
【0127】
また、請求項5に記載の発明によれば、金型の構造に必要なデータとして設定したデータ形状が、金型と干渉しないかどうかを自動的に判断するように構成したので、作業者はより効率のよい処理を行うことができる効果がある。
【0128】
また、請求項6に記載の発明によれば、各工程毎に処理結果を表示装置に表示して確認し、確認結果に基づいて処理をさかのぼってやり直すように構成したので、金型キャビティセット部の形状作成処理の途中で、処理が正常に行えなくなった場合や、処理結果である形状が不正形状となった場合には、それらの異常が発生した段階で、作業者はどのような異常がどこに生じたかを知ることができ、その箇所を修正できる段階まで処理を後戻りして、引き続き正常な処理を行うことが可能となり、このように、修正できる段階まで処理を戻すことができるため、処理を最初からやり直す必要がなくなり、作業者が作業に携わる時間が短縮されて、作業の効率化がはかれる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施例1による金型設計方法が適用されるシステムを示すブロック図である。
【図2】 上記実施例の基本作動の流れを示すフローチャートである。
【図3】 上記実施例のデータ入力処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】 上記実施例におけるデータ入力処理のための成形材料の一覧表の表示例を示す説明図である。
【図5】 上記実施例におけるデータ入力処理のためのパーティングラインの設定方法の一例を示す説明図である。
【図6】 上記実施例におけるデータ入力処理のための勾配の基準となる面の設定方法の一例を示す説明図である。
【図7】 上記実施例の基本形状の拡大処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】 上記実施例における基本形状の拡大処理の処理方法の一例を示す説明図である。
【図9】 上記実施例の削り込み形状の作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】 上記実施例における削り込み形状作成処理のための形状配置の処理方法の一例を示す説明図である。
【図11】 上記実施例の削り込み形状の分割処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】 上記実施例における削り込み形状分割処理の処理方法の一例を示す説明図である。
【図13】 上記実施例のアンダカット部の処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】 上記実施例におけるアンダカット部の処理のためのアンダカット部抽出処理方法の一例を示す説明図である。
【図15】 上記実施例におけるアンダカット部の処理のためのスライドコアによるアンダカット部回避処理方法の一例を示す説明図である。
【図16】 上記実施例におけるアンダカット部の処理のための割型によるアンダカット部回避処理方法の一例を示す説明図である。
【図17】 上記実施例の勾配付け処理の流れを示すフローチャートである。
【図18】 上記実施例における勾配付け処理のための勾配面の傾け方の処理方法の一例を示す説明図である。
【図19】 上記実施例における勾配付け処理のための勾配面の傾け方の処理方法の一例を示す説明図である。
【図20】 上記実施例における勾配付け処理のための勾配面の傾け方の処理方法の一例を示す説明図である。
【図21】 上記実施例における勾配付け処理のための勾配面の傾け方の判断方法の一例を示す説明図である。
【図22】 上記実施例における勾配付け処理のための勾配をつける処理方法の一例を示す説明図である。
【図23】 上記実施例における勾配付け処理のための勾配をつける処理方法の一例を示す説明図である。
【図24】 上記実施例のデータ設定処理のうちのゲート、ランナ、スプルの設定のための処理の流れを示すフローチャートである。
【図25】 上記実施例のデータ設定処理のうちの突き出し方式の設定のための処理の流れを示すフローチャートである。
【図26】 上記実施例のデータ設定処理のうちの冷却方式の設定のための処理の流れを示すフローチャートである。
【図27】 上記実施例におけるデータ設定処理のためのゲート設定時の表示例を示す説明図である。
【図28】 上記実施例におけるデータ設定処理のためのランナ設定時の表示例を示す説明図である。
【図29】 上記実施例におけるデータ設定処理のためのピン突き出し設定時の表示一例を示す説明図である。
【図30】 上記実施例におけるデータ設定処理のためのピン突き出しの設定方法の一例を示す説明図である。
【図31】 上記実施例におけるデータ設定処理のためのストリッパプレートの設定方法の一例を示す説明図である。
【図32】 上記実施例におけるデータ設定処理のための冷却方式の設定方法の一例を示す説明図である。
【図33】 上記実施例の製品形状作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図34】 上記実施例における製品形状作成処理の処理方法の一例を示す説明図である。
【図35】 従来の金型設計方法が適用されるシステムの一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
14 表示装置、e1,e2 パーティングラインを構成するエッジ、P1 基準点、PL1,PL2 パーティングライン、v1,v2 抜き方向ベクトル、v3 スライドコアのスィープ方向、v4,v4a ,v5,v5a 法線ベクトル、f13〜f18,f20,f23 勾配をつける面(勾配面)、f22 勾配面に隣接する面(基準面)、f24 勾配面に隣接する面(底面)、f25,f26 勾配面に隣接する面、b1 成形品の形状に相当する形状、b2 固定部形状、b3,b4 形状、b5 可動部形状、b6,b7 スィープした形状、b8,b10 アンダカット部、b9 スライドコア形状。
【産業上の利用分野】
この発明は、与えられた基本形状からその形状の成形品を制作するための金型の金型形状を設計する金型設計方法に関し、特に金型形状の製作において、金型で成形したい形状からその金型の可動部形状および固定部形状を求める、金型設計方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の金型設計の分野では、おもに金型組立図の作成、金型の詳細設計製図などの作図作業を容易に行うためにCAD/CAMシステムが利用されている。また、金型製作のために作業者がおこなった処理結果を視覚で確認するためにもCAD/CAMシステムが利用されている。
【0003】
図35は例えば、特開平4−361378号公報に示された、従来の金型設計方法が適用されるCAD/CAMシステムの一例を示すブロック図である。図において、1は当該CAD/CAMシステムの全体制御を行う主制御部である。2はこの主制御部1にデータを入力するデータ入力部であり、3は金型の抜き方向と抜き勾配角を設定する設定部である。4は基本図面に含まれる各基本面毎に識別名称を付加する名称作成部であり、5は各基本面のつながり情報を作成するつながり情報作成部である。6は各基本面の法線ベクトルを算出するベクトル算出部であり、7は算出された各基本面の法線ベクトルと、前記設定部3によって設定された金型の抜き方向とから、抜き勾配を付加する基本面の識別を行う基本面識別部である。8はこの基本面識別部7によって識別された基本面に対して、設定部3によって設定された抜き勾配角だけ傾斜をつける傾斜付加部であり、9は基本面を傾斜させることによって生じる基本面同士の干渉部分を除去して、基本面の修正を行う基本面修正部である。10は主制御部1の処理結果のデータが出力されるデータ出力部である。
【0004】
次に動作について説明する。設定部3によって、あらかじめ金型の抜き方向と抜き勾配角とが設定される。また、名称作成部4では、与えられた基本図面に含まれる各基本面のそれぞれについて、識別名称を作成して付加する。そして、この名称作成部4によって識別名称が付加された基本面のつながり情報を、つながり情報作成部5によって作成する。ここで、このつながり情報は、例えば“「面1」と「面2」とは「辺1」によって接続されている”といった情報である。
【0005】
一方、ベクトル算出部6では、与えられた基本図面に含まれる各基本面の法線ベクトルを算出する。基本面識別部7では、このベクトル算出部6によって算出された各基本面の法線ベクトルと、設定部3によって設定された金型の抜き方向とから、抜き勾配を付加する基本面の識別を行う。例えば、法線ベクトルと金型の抜き方向とのなす角が85〜95(deg)であれば、その基本面は抜き勾配を付加する面であると判定する。
【0006】
傾斜付加部8では、この基本面識別部7によって識別された基本面に、設定部3によって設定された抜き勾配角だけ傾斜をつける。例えば、抜き勾配角の属性によって、ポリプロピレンであれば2度、アクリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂であれば5度の抜き勾配をつける。面修正部9では、この傾斜付加部8によって抜き勾配角だけ傾斜させた隣接する基本面同士の干渉部分を除去して新たな基本面にするとともに、この新たな基本面同士のつながり情報を修正する。
【0007】
以上のように、この金型設計方法は、ある図形に対して設定した抜き方向と抜き勾配角に従って抜き勾配を付加するための、主に作図作業や金型設計のそれぞれの段階における処理に個別に対応したものであり、製品仕様から金型製作までの一貫した思考の流れの中で設計を進めてゆくものではなかった。
【0008】
また、その他にも、例えば、特開平4−371373号公報に示されるようなCAD/CAMシステムも提案されている。しかしながら、これも、金型部品形状の代表値を変更すると関連する要素部品を検索して、代表値の変更に伴うその関連要素部品の値の変更を行う図面変更方法に関するもので、製品仕様から金型製作までの一貫した思考の流れの中で設計を進めてゆくものではなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従来の金型設計方法は以上のように構成されているので、金型設計のそれぞれの段階における処理に個別に対応して、製品仕様から金型製作までの一貫した思考の流れの中で設計を進めてゆくようなものではなく、そのため、入出力データの互換性を考慮する必要があり、また操作手順が複雑なものとなるなどの問題点があった。
【0010】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、金型で成形したい形状をソリッドモデルによって入力し、作業者による設計構想を反映しながら金型製作のための処理を進めてゆくことにより、金型の可動部形状および固定部形状と、その金型から成形される形状とを自動的に作成することができる金型設計方法を得ることを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明に係る金型設計方法は、第1の工程における使用成形材料に関するデータの入力を、あらかじめ登録されている成形材料の中から選択された成形材料で決まる成形収縮率を設定することによって行い、抜き方向に関するデータの入力を、可動部形状の抜き方向を金型より成形品を取り出す際に可動部形状を動かす方向に、固定部形状の抜き方向を可動部形状の抜き方向と反対方向に設定することによって行い、分割に関するデータの入力を、パーティングラインの設定時には、設定されたパーティングラインを構成するエッジによって形成される閉ループを含む面を分割面として設定し、そのときに分割面が作成できない場合があるか否かを判断し、また、分割面の設定時には、設定された特徴的なエッジを含む平面を作成してそれを分割面として設定し、そのときにそのエッジを全て含む平面が作成できるか否かを判断し、また、ノーパーティングラインの設定時には、金型を開いたときのパーティングライン上にあらわれてほしくないエッジをノーパーティングラインとして設定することによって行い、勾配に関するデータの入力を、金型に勾配をつける際の処理で変更されたくない形状データを設定することによって行い、設定されたデータをそれぞれの形状要素に対して属性として持たせるものである。
【0019】
請求項2に記載の発明に係る金型設計方法は、第3の工程における分割処理を、第1の工程で設定された分割面と第2の工程で得られた形状とを積演算して分割面を境界に領域を分割し、分割された領域のいずれに可動部形状または固定部形状が存在するかの判断を行い、さらに、可動部形状側と固定部形状側に存在する形状の数がそれぞれ1つずつであるか否かを判断して、複数あれば、それらの形状のうちで本来は反対側の領域に存在すべき形状を抽出して、反対側の形状との和演算を行うことにより、第2の工程で作成された形状を2つに分割して、それらの境界上に存在するエッジにノーパーティングラインであるエッジが含まれているか否かを判断することによって行うものである。
【0020】
請求項3に記載の発明に係る金型設計方法は、第4の工程におけるアンダカット部の処理を、第3の工程で分割された金型の可動部形状と固定部形状をスィープして作成した形状と金型の可動部形状および固定部形状との積演算を行い、得られた形状をアンダカット部とし、演算結果が空であればアンダカット部は存在しないと判断して、アンダカット部が存在する場合は、分割された形状に対して、さらに割型に分割するか、スライドコアと呼ばれる部分を入子形式にするか、強制的に抜いてしまうかの選択を行い、割型が選択されれば、第3の工程で分割された形状をさらに分割して抽出されたアンダカット部を分割して取り出せるような割型とする際に、その分割する平面と作成された割型の移動方向を設定し、スライドコアが選択されれば、アンダカット部の形状に対して、可動部形状または固定部形状と接している面を抽出し、その面の法線ベクトルの延長線上で可動部形状または固定部形状に対して外側向きをスライドコアの移動方向として設定し、抽出した可動部形状または固定部形状と接している面をスライドコアの移動方向にスィープしてスライドコア形状を生成し、強制抜きが選択されれば、成形材料の弾性率や形状に対するアンダカット部の割合から、抜きやすさの目安となる値を算出するものである。
【0022】
請求項4に記載の発明に係る金型設計方法は、作成された金型の可動部形状および固定部形状に対して金型の構造に必要なデータを設定する際に、成形材料の流入方式、成形品の突き出し方式、および冷却方式のそれぞれについてデータの入力を行い、画面上に表示した金型キャビティセット上にその形状を配置することで、データ設定を行う第6の工程を付加したものである。
【0023】
請求項5に記載の発明に係る金型設計方法は、金型の構造に必要なデータ設定を行う際、ソリッドモデルの集合演算によって設定したデータ形状が金型と干渉しないかどうかの判断を行うものである。
【0024】
請求項6に記載の発明に係る金型設計方法は、処理結果を各工程毎に表示装置に表示して、処理結果が作業者の意図するものでなければ処理をさかのぼり、該当する処理段階に戻ってその処理段階から新たに処理を続けてゆくようにしたものである。
【0033】
【作用】
請求項1に記載の発明における金型設計方法は、金型形状の作成データの入力に際して、使用する成形材料に関するデータについては、登録されたデータ中から選択した成形材料の成形収縮率を設定し、抜き方向に関するデータについては、成形品取り出し時に可動部形状を動かす方向に当該可動部形状の抜き方向を、それとは反対方向に固定部形状の抜き方向を設定し、分割に関するデータについては、パーティングライン設定時にはパーティングラインを構成するエッジによって形成される閉ループを含む面を分割面として設定して、分割面設定時には設定された特徴的なエッジを含む平面を作成してそれを分割面として設定して、ノーパーティングライン設定時には金型を開いたときのパーティングライン上にあらわれてほしくないエッジをノーパーティングラインとして設定し、勾配に関するデータについては、金型に勾配をつける時に変更されたくない形状データを設定し、このようにして設定されたデータをそれぞれの形状要素に対して属性として持たせることにより、金型形状の作成に必要なデータの入力操作を簡便なものとするとともに、前記閉ループを作成する際には分割面が作成できない場合があるかの判断を行い、前記平面を作成する際にはそのような平面を作成できない場合があるかの判断を行うことにより、入力されたデータが不適切なものかどうかを自動的に判断して、作業者の処理を効率のよいものとする。
【0035】
また、請求項2に記載の発明における金型設計方法は、金型の基本となる形状を設定された分割面と積演算することによって分割し、金型の可動部形状と固定部形状を自動的に作成して、それらの形状が金型として不適切でないかどうかを自動的に判断することにより、適切な金型形状を容易に得ることができるようにし、作業者の処理を効率のよいものとする。
【0036】
また、請求項3に記載の発明における金型設計方法は、金型の可動部形状および固定部形状と、それらをスィープして作成した形状との積演算を行ってアンダカット部が存在するかどうかを判断し、アンダカット部が存在する場合にはその処理方法として、割型に分割するか、スライドコアを用いるか、強制抜きを行うかの中より1つを選択して実行することにより、簡単に適切な金型形状を得ることを可能とし、作業者の処理を効率のよいものとする。
【0038】
また、請求項4に記載の発明における金型設計方法は、第6の工程を付加して、成形材料の流入方式、成形品の突き出し方式および冷却方式を金型の構造に必要なデータとして、画面上に表示した金型キャビティセット上に配置することにより、作業者によるデータ設定を容易にし、さらにその処理を行うかどうかのモード選択も可能とする。
【0039】
また、請求項5に記載の発明における金型設計方法は、金型の構造に必要なデータとして設定したデータ形状が、金型と干渉しないかどうかを自動的に判断することにより、作業者の処理をより効率のよいものとする。
【0040】
また、請求項6に記載の発明における金型設計方法は、各工程毎に表示装置に処理結果を表示して確認し、それに基づいて処理をさかのぼってやり直すことにより、処理結果が作業者の意図するものでない場合に、簡単に操作をやり直せるようにする。
【0043】
【実施例】
実施例1.
以下、この発明の実施例1を図面を参照しながら詳細に説明する。図1はこの発明の一実施例による金型設計方法としての、金型キャビティセット部の形状作成方法が実現されるシステムの構成例を示すブロック図でる。図において、11は作業者によって金型の作成に必要なデータなどの入力が行われる入力装置であり、12はこの入力装置11に入力されたデータ類に基づいて処理を実行し、金型キャビティセット部の形状ならびにそれによって得られる製品形状を作成する形状データ作成処理装置である。13はこの形状データ作成処理装置12が処理の過程でデータ類や処理結果などを一時的に格納しておく記憶装置であり、14は形状データ作成処理装置12の処理結果などがその表示画面に表示される表示装置である。
【0044】
ここで、入力装置11には、与えられた基本形状からその形状の成形品を製作するための金型形状を設計する際に、当該基本形状と金型の材料である型材形状とが、作業者によってソリッドモデルで入力される。なお、それ以外には形状要素の隣接関係などといったデータを新たに与える必要はない。この入力装置11においては、さらに金型を作成するために必要な成形材料に関するデータ、パーティングラインに関するデータ、勾配面に関するデータ、および金型構造を設定するのに必要なデータがキーボードやマウスなどを用いて入力される。
【0045】
次に形状データ作成処理装置12の動作について説明する。ここで、図2はその処理の流れを示すフローチャートである。まずステップST1では、入力装置11から金型キャビティセット部の形状を作成するために必要なデータが入力される。このステップST1による処理が第1の工程である。次にステップST2では、ステップST1で入力されたデータに基づいて、成形収縮がおこることを見越して、あらかじめ基本形状に対して拡大処理を行い、その拡大した形状を表示装置14に表示し、ステップST3で作業者の確認をとる。次にステップST4では、ステップST1で入力された型材形状とステップST2で処理された形状との差演算により型材形状に対する削り込み形状を求める。以降の処理はこの削り込み形状をもとにおこなわれる。次にこの削り込み形状を表示装置14に表示し、ステップST5で作業者の確認をとる。このステップST2〜ステップST5による処理が第2の工程である。
【0046】
次にステップST6では、ステップST4で得られた削り込み形状を、ステップST1で入力されたデータから求めたパーティングラインまたは分割面によって、可動部形状と固定部形状とに分割して分割形状を作成する。そして、この分割形状を表示装置14に表示し、ステップST7で作業者の確認をとる。このステップST6、ステップST7による処理が第3の工程である。次にステップST8では、分割形状に対して、アンダカット部の抽出とその回避処理を行い、ステップST10ではさらに、この形状に対して勾配付けを行う。この勾配付けまで行った形状が、それぞれ金型キャビティセット部の固定部形状と可動部形状となる。そして、これらのそれぞれの処理ごとに、処理結果である形状を表示装置14に表示し、ステップST9、ステップST11でそれぞれ作業者の確認をとる。このステップST8、ステップST9による処理が第4の工程であり、ステップST10、ステップST11による処理が第5の工程である。
【0047】
次にステップST12では、ステップST10で求められた金型キャビティセット部の固定部および可動部の形状に対して、金型構造を設定するのに必要なデータを付加する。そして、それぞれの処理結果である形状について表示装置14に表示し、ステップST13で作業者の確認をとる。このステップST12、ステップST13による処理が第6の工程である。次にステップST14では、以上の処理から求められる金型キャビティセット部形状によって作成される製品形状を求める。なお、この製品形状とは成形収縮があった後の実際に得られる成形品の形状を表す。このステップST14による処理が第7の工程である。
【0048】
また、第1〜第6の工程によるそれぞれの処理結果である形状に対して、ステップST3、ステップST5、ステップST7、ステップST9、ステップST11、ステップST13で作業者の確認を行っているが、処理結果が適当でないもの(NGとなったもの)については、作業者はメッセージをだしてその原因となった処理のところまで戻って処理をやり直すことができる。なお、図2においては図示を簡略化するため、各確認処理でNGとなった場合には、すべてステップST1に戻って処理をやり直すように示している。
【0049】
なお、このような、第1〜第6の各工程毎に、処理の結果を表示装置14の表示画面に表示してそれを作業者に確認させ、処理結果が作業者の意図とは異なるものであった場合に、作業者の指示によって処理を後戻りし、その処理段階より新たに処理を続けてゆくモードの他に、第1〜第6の各工程毎に処理結果の確認を行わずに処理を進めてゆくモードも備えて、作業者がそのいずれかのモードを選択できるようにすることもできる。
【0050】
次に、図2のステップST1によるデータ入力の手順について説明する。ここで、図3はこのステップST1による処理の流れの詳細を示すフローチャートである。まずステップST15では、作成しようとしている金型によって製作される成形品の基本形状を、次にステップST16では、その金型の材料となる型材形状を、それぞれソリッドモデル・データにて入力する。このとき、金型材料の種類も同時に入力しておく。
【0051】
次にステップST17では、成形材料およびその成形収縮率の設定を行う。例えば表示装置14の画面上に、あらかじめ記憶装置13に登録されている成形材料の一覧表が図4の例に示すように表示されるので、その中より使用する成形材料を作業者が選択する。これらの成形材料にはそれぞれの成形収縮率が登録されており、選択した成形材料の成形収縮率が設定される。もし、この一覧表の中にない成形材料を用いる場合には、名称とその成形収縮率とを入力すればよく、記憶装置13にその登録処理を行えば、以後は登録した名称で呼び出すことができる。登録方法の例としては、一覧表の中のユーザ登録と書かれた欄を選択するとそれが反転表示され、図示のような新しいウィンドウが生成される。そこでこのウィンドウを用いて必要なデータを入力すればよい。
【0052】
次にステップST18では、金型の分割面を設定するために、金型の抜き方向に関するデータと金型の分割に関するデータが入力される。まず抜き方向に関しては、何も指示されなければ可動部形状と固定部形状とに分割された金型がZ軸方向に開閉されるものとする。なお、Z軸方向以外に抜き方向を設定したければここで設定しておく。すなわち、可動部形状の抜き方向は金型より成形品を取り出す際に当該可動部形状を動かす方向に設定し、固定部形状の抜き方向は可動部形状の抜き方向とは反対の方向に設定する。
【0053】
次に金型の分割に関しては、まずパーティングラインを設定する際に、パーティングラインを構成するエッジを設定し、それらのエッジによって作成される閉ループを含んだ平面を分割面として設定する。なお、この閉ループを作成する際に、閉じたループが作成できなかったり、分岐したループが作成されてしまったりして分割面が作成できない場合について判断をする。あるいは、分割面を設定する際に、特徴的なエッジを設定し、それらのエッジを含むような平面を作成して、それを分割面として設定する。なお、この平面を作成する際に、設定したエッジの全てを含むような平面が作成できない場合について判断をする。また、ノーパーティングラインを設定する際に、金型を開いたときのパーティングライン上にあられてほしくないエッジを、ノーパーティングラインとして設定する。
【0054】
以下にこのようなパーティングラインとノーパーティングラインの要素となるエッジまたは面を設定する例について図5を用いて説明する。なお、図5(1)は入力形状を示しており、図5(2)はパーティングラインの設定例について示している。図5(1)に示す入力形状に対して、図5(2)に示すエッジe1、エッジe2によってパーティングラインを設定したところであり、これら各エッジe1、エッジe2にはパーティングラインであるという属性がつけられる。その後の処理で、このエッジe1とエッジe2を含むような平面で形状を分割することになる。
【0055】
ここで、このようなソリッドモデルで表現される形状を表示装置14の画面上に表示する場合には、表示画面を複数枚数に切り分けて、切り分けられた複数枚数の表示画面のそれぞれに、そのソリッドモデルで表現される形状を異なる視点から見た形状で表示するようにすることも可能であり、そのようにすることによって、作業者は処理中の形状をよりよく認識することができるようになる。
【0056】
次にステップST19では、離形性を考慮して金型の勾配に関するデータが入力される。その際、勾配角の大きさが設定され、離形性を考慮して金型に勾配をつける際の基準となる基準エッジまたは基準面が設定されて、それに基づく属性づけが行われる。図6にその基準エッジまたは基準面を設定する例について示す。ここでいう基準エッジまたは基準面とは、勾配をつける際の形状変形処理によって影響を受けないようなエッジまたは面のことである。勾配をつける勾配面の抽出は、抜き方向に対して垂直な法線ベクトルをもつ面を自動的に抽出するか、作業者が所望の面を抽出するか、のいずれかの方法によって行われる。勾配面として抽出された面は色を変えて表示装置14の表示画面に表示され、作業者はそれを見ながら基準面の設定を行う。この処理により、それぞれの面には勾配面あるいは基準面という属性がつけられる。図6(1)には自動的に抽出された勾配面のうちの作業者側から見える面を表示している。また、図6(2)には基準エッジとしてエッジe3〜エッジe10を設定した例を示している。
【0057】
なお、ステップST17で成形収縮率が設定される際に、形状の各部分で成形収縮率が均一でない場合がある。そのような場合には、それぞれの成形収縮率とそれに対応する形状部分とを作業者が入力装置11のキーボードまたはマウスより入力することで、成形収縮率が不均一な形状にも対応できる。
【0058】
次に、図2のステップST2による基本形状の拡大処理の手順について説明する。ここで、図7はこのステップST2による処理の流れの詳細を示すフローチャートである。実際に得られる成形品の形状は、成形収縮のために金型の彫り込み形状よりも成形収縮率分だけ小さいものになってしまう。そのため、成形収縮率を考慮して、あらかじめ金型の彫り込み形状を大きくしておく。まずステップST20において、彫り込み形状を大きくするための成形収縮率に対する拡大率を求める。この拡大率は、削り込み形状の寸法をL1、成形収縮後の成形品の形状寸法をL2、成形収縮率をtとするとき、次の式(1)が成り立つことから、もとの基本形状を(1+t)倍してやればよい。
【0059】
t=(L1−L2)/L1 ・・・・・・(1)
【0060】
次にこのようにして計算した拡大率に従って形状寸法を拡大する方法の一例を示す。まずステップST21で、拡大の基準となる点P1(x1,y1,z1)を決める。次にステップST22で、形状の要素上の点P(x,y,z)に対して、点P1から点PへのベクトルP1P(x−x1,y−y1,z−z1)を求める。最後にステップST23で、拡大処理後の点Pに対応する点Pa を(xa ,ya ,za )とし、点P1から点Pa へのベクトルP1Pa を(xa −x1,ya −y1,za −z1)とすると、ベクトルP1Pを(1+t)倍した結果である(1+t)*(x−x1,y−y1,z−z1)が、ベクトルP1Pa と等しくなる。すなわち、次の式(2)が成り立つことから、次の式(3)が得られる。形状要素上の各点Pに対してこの処理を行って拡大形状を求める。
【0061】
(xa −x1,ya −y1,za −z1)
=(1+t)*(x−x1,y−y1,z−z1) ・・・(2)
(xa ,ya ,za )=(1+t)*(x,y,z) ・・・(3)
【0062】
図8には、形状中の1つの端点を拡大の基準となる点P1とし、この点P1を基準としてX,Y,Z方向に形状を拡大した例を示す。
【0063】
なお、形状の各部分で成形収縮率が均一でない場合には、それぞれの成形収縮率に応じた拡大率で拡大処理が行われる。しかし、各部分ごとにそれぞれの拡大率で均一に拡大処理を行うと、それらの部分の境界において、なめらかでない形状ができてしまう。そこで、各部分内の各点において、入力された成形収縮率をもとに形状の性質や成形条件を考慮した拡大率の重みづけを行う。これにより、各点で拡大率の異なる形状に変形され、各部分の連結部がなめらかな形状が得られる。
【0064】
次に、図2のステップST4による削り込み形状の作成処理の手順について説明する。ここで、図9はこのステップST4による処理の流れの詳細を示すフローチャートである。まずステップST24では、型材形状中に、図2のステップST2で拡大処理を行った削り込み形状をどのように配置するかを設定する。次にステップST25では、設定された配置で型材形状と拡大処理された削り込み形状との差演算を行う。配置によっては型材形状の領域よりも拡大形状の領域がはみだしてしまい、不正な形状を作成する場合が生じる。そのためステップST26では、演算の結果が不正でないかどうかを判断し、不正な場合にはステップST27でエラーメッセージを表示する。
【0065】
ここで、ステップST24による形状の配置方法としては、型材形状と削り込み形状におけるそれぞれの形状の中心を求め、それらが一致するように自動的に配置する方法と、表示された前記2つの形状のうちの一方の形状を作業者が入力装置11のマウスなどで指示し、他方の形状の上に表示装置14の画面上で移動させることにより配置する方法などが考えられる。図10にはそれぞれの形状中心を一致させるようにして配置させた例を示している。図10(1)は型材形状を、図10(2)は削り込み形状をそれぞれ示しており、図10(3)はそれら両形状を両者の中心で一致させて配置した結果を示している。
【0066】
次に、図2のステップST6による削り込み形状の分割処理の手順について説明する。ここで、図11はこのステップST6による処理の流れの詳細を示すフローチャートである。まずステップST28では、図2のステップST1で入力したパーティングラインに関するデータから分割平面を作成する。作成された分割平面と入力データとに矛盾が生じる場合には、ステップST29でエラーを表示するので、作業者はその後の操作の指示を行う必要がある。矛盾が生じない場合には、次のステップに進み、ステップST28で作成した分割平面と図2のステップST4で作成した削り込み形状との集合演算によって、ステップST30およびステップST31で削り込み形状を分割する。分割された形状のうち、抜き方向に対して、分割平面よりも上方にある形状を金型キャビティセット部の固定部形状、下方にある形状を可動部形状と呼ぶ。それぞれの形状に対する抜き方向は、分割平面を境界として互いに逆向きになる。
【0067】
しかしながら、単純に一つの平面で分割してしまうと、それぞれの分割領域中に存在するべき形状が含まれていなかったり、存在しない形状が含まれていたりする場合がある。ステップST32では、そのような形状が存在しているかどうかを判断し、存在している場合には、ステップST33、ステップST34で修正処理を行う。次にステップST35で、これらの処理結果の形状を表示装置14に表示して作業者に確認する。この段階で作業者の意図に反する場合には、図2のステップST1でのデータ入力処理か、あるいはステップST3での削り込み形状作成処理が不適当であったと考えられるので、それぞれの処理段階にさかのぼって処理をやり直すことができる。
【0068】
次にこの削り込み形状の分割処理を、図12に示す例について具体的に説明する。図2のステップST1で入力したパーティングラインに関するデータに基づいて、図12(1)にPL1で示すパーティングラインの属性がつけられた面あるいはエッジを全て含むような平面をステップST28で作成し、これを分割平面とする。そして、作成した分割平面に矛盾が生じていないかどうかの判断を行う。ここでいう矛盾とは、パーティングライン属性のついた要素が全て分割平面に含まれていないか、あるいは、ノーパーティングライン属性のついた要素が一つでも分割平面に含まれている場合である。矛盾が生じていれば、ステップST29に進み、作業者にエラーが生じていることを知らせる。ここで、作業者はやり直しのために処理の後戻りをすることができる。
【0069】
ステップST30では、ステップST28で作成された分割平面と図2のステップST3で作成した削り込み形状との積演算によって分割形状を作成する。次に分割形状の作成方法について図12(1)を参照しながら説明する。まず分割平面の法線ベクトルがv1で示すものである場合、削り込み形状との積演算によって分割形状b2,b3を得る。さらに、ステップST31で、前記の分割平面の法線ベクトルを逆向きのv2となるように変換した平面と前記削り込み形状との積演算を行って分割形状b4を得る。分割平面の法線ベクトルが逆の場合も同様の処理が行える。以上の処理によって、得られた分割形状に対して、パーティングラインPL1を含む分割平面を境にして、上方にある形状b2,b3を固定部形状、下方にある形状b4を可動部形状と呼ぶことにする。さらに、それぞれの分割形状を作成するときに用いた分割平面の法線ベクトルv1,v2は、図中に示すように分割平面に対して垂直かつ互いに逆向きであり、それぞれの抜き方向に相当する。なお、図中の形状b1は成形材料が注入されて成形品となる部分である。
【0070】
このステップST30、ステップST31で分割された形状を修正する例を図12(2)に示す。ステップST32で、これらの分割形状に修正が必要であるかどうかの判断を行う。分割された領域中に形状が2つ以上存在すれば、修正が必要であると判断される。通常、スライドコアや割型を除けば、原則的に金型キャビティセット部は固定部と可動部の2形状となるはずだからである。さらに、同じ分割領域中に2つ以上存在する形状のうち、どちらの形状が他方の領域に存在すべきなのかの判断も行う。これは、金型キャビティセット部の性質から、形状の存在する領域が最大ではない、つまり、いちばん外側に存在していない形状が他方の領域に含まれるべき形状であると判断する。
【0071】
図12(2)に示す例では、可動部形状の領域に形状b2、b3の2形状が含まれているので、修正を必要とすることがわかる。また、これらの形状のうち、外側に存在していない形状b3が他方の可動部領域に含まれるべき形状であることもわかる。このようにして、ステップST33で、他方の領域に存在すべき形状部分を抽出する。さらに、ステップST34で、他方の領域に含まれるように集合演算を行う。この例では、ステップST30で形状b3が形状b4に含まれるべき形状として判断され、それがステップST33で抽出されるので、ステップST34では形状b3と形状b4との和集合を行い、図12(3)に示すような新しい可動部形状b5を得る。なお、固定部形状は形状b2である。このようにして、図12(3)に示す形状b2と形状b5が、金型キャビテイセット部の固定部形状および可動部形状として得られる。
【0072】
次に、図2のステップST8によるアンダカット部の処理の手順について説明する。ここで、図13はこのステップST8による処理の流れの詳細を示すフローチャートである。分割された削り込み形状を金型キャビティセット部の固定部形状と可動部形状として成形品を作成する際に、それぞれの形状の凹凸部によって金型から成形品を円滑に抜き取れない部分が生じる場合がある。このような部分をアンダカット部と呼ぶ。ステップST36では、このようなアンダカット部が存在するかどうかを判断して、存在する場合はその部分を抽出する。アンダカット部が抽出されるとステップST37に進んで、アンダカット部の処理の選択をする。なお、アンダカット部が存在しない場合には直接ステップST43に進む。また、アンダカット部が存在しなくても、金型キャビティセット部を分割したほうが加工がしやすい場合もステップST36で判断し、ステップST37で処理の選択をする。選択した結果によって、それぞれステップST38からステップST42の処理を行う。ステップST43では、これらの結果を表示装置14に表示して作業者に確認する。作業者の意図と反する場合には、図11のステップST35の処理と同様に、該当する処理段階に戻って、その処理段階より処理をやり直しをすることができる。
【0073】
次にステップST36におけるアンダカット部の抽出方法の例を、図14を用いて説明する。図14(1)に示す例のように、固定部形状である形状b2と可動部形状である形状b5について、それぞれを構成する面のうち分割の境界となる面を抽出する。図14(1)に示すように、形状b2側に属する面として、面f1〜面f7を抽出し、形状b5側に属する面として、面f8〜面f12を抽出する。ここで、成形品形状の高さは図示のd1とする。次に図14(2)で示すように、形状b2側の面と形状b5側の面をそれぞれの抜き方向とは反対の向きに、すなわち形状b2側の面を矢印v1の方向に、形状b5側の面を矢印v2の方向に、それぞれd1だけスィープしたソリッドモデルを作成し、それらを形状b6および形状b7とする。そして図14(3)に示すように、各面の対応がつくようにして、形状b2と形状b6、形状b5と形状b7の積演算を行うことによって、形状b2と形状b6との干渉部分である形状b8をアンダカット部として抽出する。なお、この演算結果が空であればアンダカット部は存在しないと判断する。
【0074】
次にこのアンダカット部が抽出された場合の、ステップST37における処理について説明する。形状b8のようなアンダカット部が存在する場合に、それを処理する手段として、割型と呼ばれるさらに形状を分割する方法を用いるか、スライドコアと呼ばれるアンダカット部を入子式にする方法を用いるか、強制抜きと呼ばれる無理やり抜いてしまう方法を用いるかのいずれかを選択する。スライドコアが選択された場合には、スライドコアと呼ばれる入れ子構造の形状を作成してアンダカット部を回避するため、ステップST38でスライドコア形状を移動させる移動方向を設定し、ステップST39でアンダカット部形状をスィープして、スライドコア形状を作成する。また割型が選択された場合には、金型キャビティセット部の形状をさらに分割してアンダカット部を回避するため、ステップST40で分割線を設定し、ステップST41でその分割線に基づく分割を行う。さらに強制抜きが選択された場合には、金型キャビティセット部の形状の変形処理は行わず、ステップST42で強制抜きの目安となる値の計算を行う。
【0075】
ステップST37におけるアンダカット部の回避方法の選択として、スライドコアを選択した場合の例を図15を用いて具体的に説明する。アンダカット部を回避するためにスライドコアを用いる方法として、スライドコアを外側に抜く方法と内側に抜く方法とがある。内側に抜く場合は加工が困難で作れないことが多いため、通常は外側に抜く方法を用いる。例えばこの図15(1)で示されるように、前記処理で抽出したアンダカット部b8をもつ形状については、図中で示すように、矢印v1で示す方向に対して垂直でかつ外側を向いた、矢印v3で示す方向に抜くことになる。よって、図15(2)に示すように、形状b8に対して矢印v3の方向に形状b2を貫くようにスィープして得られる形状b9がスライドコアの形状である。
【0076】
次にアンダカット部の回避方法の選択として、割型を選択した場合の例を図16を用いて具体的に説明する。図16(1)に示すような取手付きのカップを成形する金型形状に対して、図16(2)に示すように分割面をパーティングラインPL2によるものとした場合、形状b10の部分がアンダカット部となる。図16(3)はそのときの金型キャビティセット部を示すものである。このアンダカット部を回避するために、アンダカット部を含んでいる型形状b11をパーティングラインPL3による分割面でさらに分割する。図16(4)にこの形状b11を分割した結果を示す。
【0077】
次にアンダカット部の回避方法の選択として、強制抜きを選択した場合の例を具体的に説明する。この場合には、金型形状に対する変形処理は行わず、弾性変形によって強制的に成形品を外す処理を行う。その際、温度、成形材料の材質、成形品形状に対するアンダカット部の割合などから強制抜きのしやすさの目安となる数値を計算し、それによって強制抜きできるかどうかの判断をする。
【0078】
次に、図2のステップST10による勾配付けの処理の手順について説明する。ここで、図17はこのステップST10による処理の流れの詳細を示すフローチャートである。ここでは、図2のステップST1で設定した勾配の基準に基づいて、形状に抜き勾配をつける処理を行う。ステップST44では、勾配をつける勾配面を抽出し、ステップST45では、勾配をつけるために勾配面をどちら側に傾ければよいかの判断をし、ステップST46では、勾配面を移動させて実際に勾配をつける。そしてステップST47では、その結果が図2のステップST1で設定した基準面に影響を及ぼしていないかどうかを判断する。影響を及ぼしている場合(矛盾している場合)には、作業者にエラーが生じていることを知らせ、作業者はやり直しのために処理の後戻りをすることができる。矛盾が生じていない場合にはステップST48に進み、これらの勾配付けの結果を表示装置14に表示して作業者の確認をとる。作業者の意図と反する場合には、図11のステップST35、図13のステップST43などと同様に処理を後戻りしてやり直すことができる。以上の処理を、勾配面との属性が付けられた面に対して順次繰り返して行う。
【0079】
形状に勾配をつける例を図18を用いて具体的に説明する。まずステップST44で勾配をつけようとする勾配面を抽出する。ここで、この勾配面とはパーティングラインに対して垂直な面であり、図18(1)の例で示すように面f13〜面f17である。勾配角の大きさθはデフォルト値で設定しておくが、作業者によって変更することもできる。次にステップST45で、形状に対して勾配面をどちら側に傾けるかを判断する。そしてステップST46で、図18(2)の例で示すように、ローカル・オペレーションにより形状の変形処理を行う。ステップST47では、勾配面に勾配をつける際に、図2のステップST1で設定した基準面または基準エッジの寸法が変わるなどの矛盾がないかどうかを判断する。ステップST48では、これらの勾配付けの処理結果を表示して作業者の確認をとる。作業者の意図と反する場合には、前述のように後戻りして処理をやり直すことができる。
【0080】
なお、ステップST45における、勾配面に勾配をつける際にどちら側に勾配面を傾けるかの判断については、パーティングラインを基準として面の法線ベクトルと抜き方向との関係によって行うことが考えられる。金型キャビティセット部の固定部形状および可動部形状として作成された形状は、それぞれソリッドモデルによって表されており、形状中に含まれる面の法線ベクトルは全て形状に対して外側を向いている。この勾配面の法線ベクトルは、属している形状に対する抜き方向とのなす角が垂直である。なお抜き方向は固定なので、この2方向のなす角が(90+θ)゜となるように法線ベクトルの方、つまり勾配面の方を移動させる。
【0081】
この勾配面を移動する向きの判断結果の例について、固定部形状b2の場合を図19に、可動部形状b5の場合を図20にそれぞれ示している。図19(1)において、面f18の法線ベクトルの方向v4と抜き方向v1との角は90゜である。よって、面f18に勾配角θの勾配をつけようとすると、図19(2)に示すように、移動後の面f18a の法線ベクトルの方向v4a と抜き方向v1とのなす角が(90+θ)゜となるように、面f18を移動させる向きが決まる。また、図20(1)における可動部形状b5の場合も同様にして、図20(2)に示すように、移動後の面f20a の法線ベクトルの方向v5a と抜き方向v2とのなす角が(90+θ)゜となるような向きに面f20を移動させる。移動のさいには、それぞれの基準面である面f19、面f21に影響を及ぼさないように移動する。
【0082】
また、上記以外にも、成形品の形状をパーティングラインに平行に切ったときの断面積を基準にすることができる。金型を開いて中にある成形品を取り出すためには、パーティングラインを境界にして、それぞれの抜き方向に向かってパーティングラインから離れるほど、その断面積が小さくなるようでなければならない。図21で示すように、形状b2において、パーティングラインPL1での断面積とパーティングラインPL1から距離d2だけ離れた位置での断面積とを求める。そして、後者の断面積のほうが小さくなるように勾配面に勾配をつける。このとき距離d2は、断面が勾配をつけようとしている面を通る範囲内でなければならない。
【0083】
また、ステップST46での勾配面の移動方法については、図22を用いて具体的に説明する。まず図22(1)に示すように、基準面を面f22、勾配面を面f23とするとき、面f22と面f23との交わりである交線L1を求める。次に図22(2)に示すように、面f23に対して交線L1を軸とした大きさθの回転移動を行い、これを面f23a とする。このとき、どちら側に移動するかは、ステップST45による勾配面の傾け方の判断に基づく。また、面f22を基準として面f23が移動することにより、面f23と隣接する面に対しても形状変形が必要である。この例の場合、面f23と隣接している面は、底面f24と、面f23をはさんでいる面f25および面f26である。
【0084】
次に、面f23の勾配つけに対する底面f24の処理を例にして、形状変形処理について説明する。図22(1)に示すように、基準面となる面f22と勾配面となる面f23との交線L1の端点をそれぞれ点P3およびP4とする。交線L1と点P3、P4は基準面に含まれている要素なので形状変形の影響はうけない。また、面f23と隣接する面f24との交線をL2、その端点をそれぞれ点P5およびP6とする。図22(2)に示すように、面f23を回転移動させた面f23a に対して、点P5、P6に相当する点を点P5a 、P6a とする。次に、直線P3P5a と直線P4P6a を求め、これらの直線と面f24を含む平面との交点P7およびP8を求める。面f23a において、その点P5a を点P7に、点P6a を点P8に移動させて、新たに面f23b を求める。面f24に対しても同様に、点P5を点P7に、点P6を点P8に移動させて面f24a を求める。これらの面f23b と面f24a が勾配つけによる形状変形処理がすんだ面である。面f24と同様に、面f25および面f26に対しても変形処理を行った結果を図22(3)に示す。
【0085】
なお、基準面と勾配面の間がアールで面取りされている場合も同様であり、図23にその場合の例を示す。図23(1)に示すように、基準面f22と勾配面f23の間がアールR1で面取りされている場合、それらの面f22と面f23を延長して交叉する際の交線L3を想定する。次に図23(2)に示すように、この想定された交線L3を軸として傾斜面f23を回転移動させ、移動した勾配面f23a と基準面f22との間をつなげるように新たなアールR2をつけなおす。
【0086】
ここで、この勾配付けによる移動の際に、底面f24が基準面として設定されていれば、面f23の変形によって影響を受けてはならないので、前記のような処理は行えず、面f23の勾配付けは不可能である。このような場合は、処理を中断してステップST47に進む。ステップST47では、その旨のメッセージを表示して作業者に知らせる。作業者は、勾配面と基準面の属性付けの処理を行ったところにまで戻って、新たに処理をやり直すことができる。
【0087】
また、成形品に勾配をつける際に、基準面と勾配面との設定の仕方によってはパーティングラインの位置で金型の固定部形状と可動部形状が食い違う場合が生じる可能性がある。ステップST47では、そのような状態が生じていないかどうかも判断し、生じている場合にはメッセージを出して作業者に知らせる。
【0088】
次に、図2のステップST12による金型の構造に必要なデータの設定処理の手順について説明する。ここで、図24はゲート、ランナ、スプルの設定処理の流れの詳細を示すフローチャート、図25は突き出し方式の設定処理の流れの詳細を示すフローチャート、図26は冷却方式の設定処理の流れの詳細を示すフローチャートである。まず図24に示すフローチャートに従ってゲート、ランナ、スプルの設定について説明する。ステップST49ではゲート、ステップST50ではランナ、ステップST51ではスプルについて、それぞれ方式の選択および設定を行う。また、ステップST52で金型の型締力を、ステップST53で成形材料の射出容量を計算し、その計算結果によって使用する成形機に必要な条件が求まるので、必要ならば、ステップST54で成形機の変更も行える。ステップST55では、選択および設定されたゲート、ランナ、スプルについてのデータを金型キャビティセット部の形状に加えたものを表示装置14に表示して作業者の確認をとる。
【0089】
次に図25に示すフローチャートに従って突き出し方式の設定について説明する。ステップST56では、突き出し方式の選択を行い、選択した突き出し方式に応じてそれぞれ必要なデータをステップST57からステップST64で設定する。すなわち、ステップST56では、ピン突き出し、ストリッパプレート突き出し、エア突き出しの中から1つの方法を選択する。そして、ピン突き出し方式を選択した場合には、ステップST57でピンの種類の選択および設定を行い、ステップST58でピンの形状を、ステップST59でピンの配置位置をそれぞれ設定し、ステップST60で金型キャビティセット部との集合演算によりこれらの設定に基づく金型キャビティセット部形状を求める。
【0090】
また、ストリッパプレート突き出し方式を選択した場合には、ステップST61で材質の選択および設定を行い、ステップST62でストリッパプレートを配置する位置を設定して、ステップST63で金型キャビティセット部との集合演算によりこれらの設定に基づく金型キャビティセット部形状を求める。エア突き出し方式を選択した場合には、ステップST64でエアの吹き出し口を配置する位置を設定し、ステップST65で金型キャビティセット部との集合演算によりこの設定に基づく金型キャビティセット部形状を求める。そして、ステップST66では、選択および設定されたデータに基づいて突き出し機構を追加した金型キャビティセット部の形状を表示装置14に表示し、作業者の確認をとる。
【0091】
次に図26に示すフローチャートに従って冷却方式の設定について説明する。まずステップST67で冷却方式の方法の選択を行い、次にステップST68で冷却温度を、ステップST69で冷却時間を設定する。そしてステップST70で冷却回路の設定を行う。その後ステップST71において、選択および設定したデータに基づいて冷却機構を追加した金型キャビティセット部の形状を表示装置14に表示し、作業者の確認をとる。
【0092】
これらの選択および設定の結果は、金型構造に影響を及ぼす情報として記憶装置13に保持される。また、それぞれの選択方法としては、各方式をテーブル形式で表示した中から選択したり、形状の寸法をパラメトリックに設定したりする方法などが考えられる。また、選択および設定した方法では、金型が不正形状になってしまったり、作業者の確認が得られなかった場合には、ステップST55、ステップST66、あるいはステップST71で選択および設定のやり直しができる。
【0093】
次にステップST49におけるゲートの選択および設定について、図27を用いて具体的に説明する。表示装置14に表示された金型キャビティセット部に対して、ゲートを配置する位置を入力装置11のマウスなどで入力する。次に、表示装置14の画面上に各ゲートの標準的な名称と図が図27のように表示されるので、その中から所望のものを選択する。選択されたゲートに対して、長さと幅の寸法を設定し、所望のゲート形状にする。なお、所望のゲート形状がない場合には、形状をそのままCAD入力することもできる。
【0094】
次にステップST50におけるランナの設定について、図28を用いて具体的に説明する。図28(1)に示すように、表示装置14の画面上にランナの断面形状が表示される。作業者はその中から所望のものを選択し、さらに選択された断面形状中の寸法を設定する。所望のランナの断面形状がない場合には、形状をCAD入力することも可能である。また、多数個取りの場合には、図28(2)に示すように、配置のレイアウトを表示装置14の画面上に表示して、その中から所望のものを選択する。
【0095】
次にステップST51におけるスプルの設定については、通常スプルブッシュとして金型とは別に加工するので、ここでは配置する位置を設定する。表示装置14の画面上に表示されているランナ形状に対して、どの位置にスプルブッシュを設定するかを入力装置11のマウスなどで指示する。
【0096】
なお、ランナは成形材料の温度の低下が最小となるように設計されなければならないので、ランナの断面積とランナの断面の周長との比をランナ効率値とするとき、その値が最大となるようにしなければならない。よって、前記ステップST50におけるランナの設定の際に、選択したランナの断面形状に設定した寸法値からランナ効率値を計算する。そして、その値を表示装置14に表示することで、作業者が設定のやり直しを望む場合には、処理をやり直すことができる。
【0097】
また、ステップST52における金型の型締力の計算については、金型の抜き方向に垂直な面に対する成形品形状の投影面積を求め、これと平均射出圧力との積を計算して、この金型に必要な型締力とする。よって、成形機選定の目安の一つとして、この値以上の型締力をもつ成形機を用いなければならない。ただし、成形材料や成形品の形状や厚みによって必要な型締力は多少かわるので、成形機の型締力には上記の計算結果にある程度の余裕をもたせておく必要がある。
【0098】
さらに、ステップST53における成形材料の射出容量の計算については、作成された金型キャビティセット部の固定部形状および可動部形状以外の空洞部分の形状(図12の図形b1)の容積を集合演算により求め、その容積とスプルおよびランナなどの成形材料の通り道となる部分の容積とを加えた値として算出する。よって、成形機選定の目安の一つとして、この値以上の射出容量をもつ成形機を用いなければならない。なお、これらステップST52およびS53による計算結果から、成形機の変更が必要となった場合には、ステップST54にて成形機の変更を行う。
【0099】
次にステップST56において、突き出し方式としてピン突き出しを選択した場合について、図29および図30を用いて具体的に説明する。ピンの種類および形状については、JIS規格に基づいた市販品をあらかじめ記憶装置13に登録しておく。図29はピン突き出しを設定する時の表示装置14表示画面の一例を示すものであり、図29(1)にはピン突き出しの選択、図29(2)にはピンの寸法入力について例示している。まずピンの一覧表を図29(1)の例で示すように表示装置14の画面上に表示し、その表の中から所望のピンを選択する。ピンの形状データはソリッドモデル・データをもつ。図29(1)の例は、ストレートピンを選択したところであり、これにより表示装置14の画面には、図29(2)で示すように選択したストレートピンの形状が表示される。作業者は表示された図中の各部の寸法を設定して所望のピン形状とする。ここで、記憶装置13には、登録されているピンについて、そのピン穴のためのクリアランスも登録されている。また、記憶装置13に所望のピン形状が登録されていない場合には、CAD入力によって作業者が登録することもできる。
【0100】
また、ピンを配置する位置については、表示装置14の画面上に表示された金型キャビティセット部形状に対して、入力装置11のマウスなどによって指示する。ピン配置の例を図30で説明する。図30(1)が金型キャビティセット部の形状で、図30(2)が設定したピン形状である。まず、図30(3)のように、形状の表示方法のひとつとして、金型キャビティセット部形状のうちの指示した面が正面となるように表示装置14の画面上に表示させる。そして、図30(4)に示すように、金型キャビティセット部形状に対してピン形状b12を入力装置11のマウスなどで移動させる。ピンの配置位置が決まれば、金型キャビティセット部形状に対して集合演算を行う。ここで、金型キャビティセット部形状において求めたいのはピン穴であるので、選択されたピンの形状から、クリアランスを考慮した穴形状データを求める。金型キャビティセット部との集合演算には、この穴形状データを用いる。図30(5)に、金型キャビティセット部の可動部形状に対する処理結果を示す。
【0101】
なお、同様の方法によって、リターンピンの設定も行うことができる。
【0102】
次にステップST56において、突き出し方式としてストリッパプレート突き出しを選択した場合について、図31を用いて具体的に説明する。まず、ストリッパプレートに用いる材質の選択を行う。次に図31(1)に示すように、前記図30で用いた表示方法と同様に、正面方向から見た金型キャビティセット部形状を表示装置14に表示し、その画面上でどの部分にストリッパプレートを配置させるかを設定する。図31(2)の例では、ストリッパプレートの範囲を入力装置11のマウスなどで指示している。この指示した位置にストリッパプレートの上面と底面とが位置するように指示して、図31(3)で示すように金型キャビティセット部の形状修正を行う。なお、図31(3)における形状b13がこのストリッパプレートである。
【0103】
なお、ストリッパプレートの厚みを入力することで、パーティングラインを基準にして厚みの分だけ切りとった形状をストリッパプレートとする方法も考えられる。
【0104】
また、ステップST56において、突き出し方式としてエア突き出しを選択した場合には、前記図30で用いた表示方法と同様にして、表示装置14の画面上に表示した金型キャビティセット部形状のどの位置に、エアの吹き出し口を配置するかを、入力装置11のマウスなどで指示する。
【0105】
なお、突き出し方式として、上記各方法を複合して用いる場合も考えられ、その場合には前記方法を繰り返して選択する。また、同様にして、スプルおよびランナの突き出し方式を設定することもできる。
【0106】
次に、ステップST67における冷却方式の選択については、水冷、ガス冷却、ヒートパイプの中から所望の方法を選択する。そして、ステップST68で冷却温度を、ステップST69で冷却時間を、ステップST70で冷却回路をそれぞれ設定することもできる。冷却回路の設定例としては、表示装置14の画面上にストレート、円周、渦巻、螺旋、平面Uターンなどの各回路のパターン図を表示し、その中から所望のパターン図を選択し、選択したパターン図に対しては、作成した金型キャビティセット部形状にそった大きさになるように、各部位の寸法をパラメトリックに設定して金型に配置する方法などが考えられる。この設定例を図32に示す。図32(1)は金型キャビティセット部形状に対して冷却回路b14を設定した例を上面から見たものであり、図32(2)は正面から見たものである。
【0107】
次に、図2のステップST14による製品形状の作成処理の手順について説明する。ここで、図33はこのステップST14による処理の流れの詳細を示すフローチャートである。図2のステップST6で作成された金型キャビティセット部の形状を閉じたときに、空洞になっている部分が成形材料が注入されて成形品が作成される部分である。よって、ステップST72では、金型キャビティセット部を閉じたときに空洞となる形状を、集合演算によって作成し、これを成形品形状とする。実際に得られる製品形状は、この成形品形状に対して成形収縮が行われた形状なので、ステップST73からステップST75において、図2のステップST2で行われた形状の拡大方法と同様の方法で縮小する。また、ステップST1で均一でない成形収縮率が与えられていた場合には、ステップST2で行われた処理と同様に、その設定された部分ごとに与えられた成形収縮率に基づいて縮小する。
【0108】
次に、この製品形状の作成処理における縮小方法について、その処理結果の表示例を示す図34を用いて具体的に説明する。図34(1)の例で示すような金型キャビティセット部から得られる成形品形状に対して、成形収縮率tで縮小させる。縮小方法の一例として、まずステップST73で、ある点P2(x2,y2,z2)を基準点とする。次にステップST74において、この基準点P2から形状上の各要素の点P(x,y,z)へのベクトルP2P(x−x2,y−y2,z−z2)を求める。そして、ステップST75において、点Pに対して縮小処理を行った点をPa (xa ,ya ,za )とするとき、次の式(4)となることから、変換処理後の点Pa は次の式(5)が成り立つような点であることがわかる。
【0109】
(xa −x2,ya −y2、za −z2)
=(1−t)*(x−x2,y−y2,z−z2) ・・・(4)
(xa ,ya 、za )=(1−t)*(x,y,z) ・・・(5)
【0110】
図34(2)に、上記の方法で形状中の1つの端点を基準点P2とし、この基準点P2を基準としてX,Y,Z方向に形状を縮小した例を示す。
【0111】
実施例2.
なお、上記実施例1では、ソリッドモデルによって入力された形状から金型キャビティセット部の形状を作成するものであったが、各処理で作成された形状を用いて解析やシミュレーションを行うこともできる。作成された金型の型開きによって成形品がとりだされる様子を模したシミュレーションや、設定したゲートおよびランナ方式による流動解析、設定した冷却方式による冷却解析、金型キャビティセット部形状や成形品の強度解析など、形状をソリッドモデルで表現しているので、精度の高い解析を行うことができる。これらのシミュレーションや解析結果を評価することにより、作業者は必要に応じて金型キャビテイセット部形状の変形を行うことができる。
【0112】
実施例3.
また、上記実施例1では、図2のステップST8にてアンダカット部の処理を先に行い、その後ステップST10で勾配付けの処理を行うものを示したが、これらの処理の順番を入れ換えてもよく、上記実施例と同様の効果を奏する。
【0113】
実施例4.
また、上記実施例1では、金型キャビティセット部の形状を作成するために、図2のステップST12において金型の構造に必要なデータの設定処理を行っている場合について説明したが、簡単に金型キャビティセット部の固定部形状と可動部形状が知りたい場合には、この処理を抜かしても有効である。
【0114】
実施例5.
また、上記実施例1では、金型キャビティセット部の形状作成に必要なデータを設定する場合に、あらかじめ保持しているデータの中から選択するものを示したが、これらのデータを処理の途中で記憶させることも可能であり、これにより、標準的なデータ以外にも作業者にとって使用頻度の高いデータに対して効率的な処理が行える。
【0121】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、金型形状の作成データを、使用する成形材料に関するデータは、登録データ中から選択した成形材料の成形収縮率を設定し、抜き方向に関するデータは、成形品取り出し時に可動部形状を動かす方向に基づいて可動部形状と固定部形状の抜き方向を設定し、分割に関するデータは、パーティングライン設定時に、パーティングラインを構成するエッジによって形成される閉ループを含む面を分割面として設定するとともに、その閉ループを作成する際に分割面が作成できない場合があるか判断し、分割面設定時に、設定された特徴的なエッジを含む平面を作成してそれを分割面として設定するとともに、その平面を作成する際にそのような平面を作成できない場合があるか判断し、ノーパーティングライン設定時に、金型を開いたときのパーティングライン上にあらわれてほしくないエッジをノーパーティングラインとして設定し、勾配に関するデータは、勾配をつける時に変更されたくない形状データを設定することによって入力し、その設定されたデータをそれぞれの形状要素に対して属性として持たせるように構成したので、金型形状の作成に必要なデータを作業者が容易に入力することが可能となり、さらに、入力されたデータが不適切なものかどうかが自動的に判断されて、作業者は効率のよい処理を行うことができる効果がある。
【0123】
また、請求項2に記載の発明によれば、設定された分割面との積演算によって金型の基本となる形状を分割して、金型の可動部形状と固定部形状を自動的に作成し、さらにそれらの形状が金型として不適切でないかどうかを自動的に判断するように構成したので、作業者は適切な金型形状を容易に得ることができ、効率のよい処理を行える効果がある。
【0124】
また、請求項3に記載の発明によれば、金型の可動部形状および固定部形状と、それらをスィープして作成した形状との積演算を行ってアンダカット部が存在するかどうかを判断し、アンダカット部が存在すれば、割型に分割する、スライドコアを用いる、強制抜きを行う、の中よりいずれかの方法を選択してアンダカットの処理を行うように構成したので、作業者は適切な金型形状を簡単に得ることができ、効率のよい処理が行える効果がある。
【0126】
また、請求項4に記載の発明によれば、第6の工程を付加し、成形材料の流入方式、成形品の突き出し方式および冷却方式を、画面上に表示した金型キャビティセット上に配置するように構成したので、作業者は容易にデータ設定を行うことができ、さらにその処理を行うかどうかのモード選択も可能となる効果がある。
【0127】
また、請求項5に記載の発明によれば、金型の構造に必要なデータとして設定したデータ形状が、金型と干渉しないかどうかを自動的に判断するように構成したので、作業者はより効率のよい処理を行うことができる効果がある。
【0128】
また、請求項6に記載の発明によれば、各工程毎に処理結果を表示装置に表示して確認し、確認結果に基づいて処理をさかのぼってやり直すように構成したので、金型キャビティセット部の形状作成処理の途中で、処理が正常に行えなくなった場合や、処理結果である形状が不正形状となった場合には、それらの異常が発生した段階で、作業者はどのような異常がどこに生じたかを知ることができ、その箇所を修正できる段階まで処理を後戻りして、引き続き正常な処理を行うことが可能となり、このように、修正できる段階まで処理を戻すことができるため、処理を最初からやり直す必要がなくなり、作業者が作業に携わる時間が短縮されて、作業の効率化がはかれる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施例1による金型設計方法が適用されるシステムを示すブロック図である。
【図2】 上記実施例の基本作動の流れを示すフローチャートである。
【図3】 上記実施例のデータ入力処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】 上記実施例におけるデータ入力処理のための成形材料の一覧表の表示例を示す説明図である。
【図5】 上記実施例におけるデータ入力処理のためのパーティングラインの設定方法の一例を示す説明図である。
【図6】 上記実施例におけるデータ入力処理のための勾配の基準となる面の設定方法の一例を示す説明図である。
【図7】 上記実施例の基本形状の拡大処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】 上記実施例における基本形状の拡大処理の処理方法の一例を示す説明図である。
【図9】 上記実施例の削り込み形状の作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】 上記実施例における削り込み形状作成処理のための形状配置の処理方法の一例を示す説明図である。
【図11】 上記実施例の削り込み形状の分割処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】 上記実施例における削り込み形状分割処理の処理方法の一例を示す説明図である。
【図13】 上記実施例のアンダカット部の処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】 上記実施例におけるアンダカット部の処理のためのアンダカット部抽出処理方法の一例を示す説明図である。
【図15】 上記実施例におけるアンダカット部の処理のためのスライドコアによるアンダカット部回避処理方法の一例を示す説明図である。
【図16】 上記実施例におけるアンダカット部の処理のための割型によるアンダカット部回避処理方法の一例を示す説明図である。
【図17】 上記実施例の勾配付け処理の流れを示すフローチャートである。
【図18】 上記実施例における勾配付け処理のための勾配面の傾け方の処理方法の一例を示す説明図である。
【図19】 上記実施例における勾配付け処理のための勾配面の傾け方の処理方法の一例を示す説明図である。
【図20】 上記実施例における勾配付け処理のための勾配面の傾け方の処理方法の一例を示す説明図である。
【図21】 上記実施例における勾配付け処理のための勾配面の傾け方の判断方法の一例を示す説明図である。
【図22】 上記実施例における勾配付け処理のための勾配をつける処理方法の一例を示す説明図である。
【図23】 上記実施例における勾配付け処理のための勾配をつける処理方法の一例を示す説明図である。
【図24】 上記実施例のデータ設定処理のうちのゲート、ランナ、スプルの設定のための処理の流れを示すフローチャートである。
【図25】 上記実施例のデータ設定処理のうちの突き出し方式の設定のための処理の流れを示すフローチャートである。
【図26】 上記実施例のデータ設定処理のうちの冷却方式の設定のための処理の流れを示すフローチャートである。
【図27】 上記実施例におけるデータ設定処理のためのゲート設定時の表示例を示す説明図である。
【図28】 上記実施例におけるデータ設定処理のためのランナ設定時の表示例を示す説明図である。
【図29】 上記実施例におけるデータ設定処理のためのピン突き出し設定時の表示一例を示す説明図である。
【図30】 上記実施例におけるデータ設定処理のためのピン突き出しの設定方法の一例を示す説明図である。
【図31】 上記実施例におけるデータ設定処理のためのストリッパプレートの設定方法の一例を示す説明図である。
【図32】 上記実施例におけるデータ設定処理のための冷却方式の設定方法の一例を示す説明図である。
【図33】 上記実施例の製品形状作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図34】 上記実施例における製品形状作成処理の処理方法の一例を示す説明図である。
【図35】 従来の金型設計方法が適用されるシステムの一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
14 表示装置、e1,e2 パーティングラインを構成するエッジ、P1 基準点、PL1,PL2 パーティングライン、v1,v2 抜き方向ベクトル、v3 スライドコアのスィープ方向、v4,v4a ,v5,v5a 法線ベクトル、f13〜f18,f20,f23 勾配をつける面(勾配面)、f22 勾配面に隣接する面(基準面)、f24 勾配面に隣接する面(底面)、f25,f26 勾配面に隣接する面、b1 成形品の形状に相当する形状、b2 固定部形状、b3,b4 形状、b5 可動部形状、b6,b7 スィープした形状、b8,b10 アンダカット部、b9 スライドコア形状。
Claims (6)
- 与えられた基本形状からその形状の成形品を制作するための金型の金型形状を設計する金型設計方法において、
前記基本形状と前記金型の材料である型材形状とをソリッドモデルによって入力し、さらに前記金型形状の作成データを入力する第1の工程と、前記基本形状を拡大もしくは縮小変形した形状と前記型材形状の差演算を行う第2の工程と、前記第2の工程における差演算によって求められた形状を、前記金型を開くためのパーティングラインもしくは分割面のデータに基づいて、可動部形状と固定部形状とに分割する第3の工程と、前記第3の工程による処理によって求められた形状に対してアンダカット部を持つか否かを判定し、当該判定の結果によって当該形状の分割を行う第4の工程と、前記第4の工程による処理によって求められた形状の所定の面に抜き勾配をつける第5の工程とを備え、
前記第1の工程において入力される前記金型形状の作成データは、
あらかじめ登録されている成形材料の中から選択した成形材料について、その選択された成形材料によって決定される成形収縮率を設定する成形材料に関するデータと、
可動部形状の抜き方向を、金型より成形品を取り出す際に可動部形状を動かす方向に設定し、固定部形状の抜き方向を、前記可動部形状の抜き方向とは反対の方向に設定する前記金型の抜き方向に関するデータと、
パーティングラインの設定に際して、パーティングラインを構成するエッジを設定し、それらのエッジによって作成される閉ループを含んだ平面を分割面として設定し、そのとき、閉じたループが作成できなかったり、分岐したループが作成されたりして、前記分割面が作成できない場合があるか否かの判断を行い、また、分割面の設定に際して、特徴的なエッジを設定してそれらのエッジを含んだ平面を作成し、それを前記分割面として設定し、そのとき、設定したエッジを全て含む平面が作成できるか否かの判断を行い、また、ノーパーティングラインの設定に際して、金型を開いたときのパーティングライン上にあらわれてほしくないエッジをノーパーティングラインとして設定する前記金型の分割に関するデータと、
勾配角の大きさを設定するとともに、金型に勾配をつける際の処理によって変更されたくない形状データを設定する前記金型の勾配に関するデータを含み、
前記設定されたデータに基づいてそれぞれの形状要素に対する属性付けを行う金型設計方法。 - 与えられた基本形状からその形状の成形品を制作するための金型の金型形状を設計する金型設計方法において、
前記基本形状と前記金型の材料である型材形状とをソリッドモデルによって入力し、さらに前記金型形状の作成データを入力する第1の工程と、前記基本形状を拡大もしくは縮小変形した形状と前記型材形状の差演算を行う第2の工程と、前記第2の工程における差演算によって求められた形状を、前記金型を開くためのパーティングラインもしくは分割面のデータに基づいて、可動部形状と固定部形状とに分割する第3の工程と、前記第3の工程による処理によって求められた形状に対してアンダカット部を持つか否かを判定し、当該判定の結果によって当該形状の分割を行う第4の工程と、前記第4の工程による処理によって求められた形状の所定の面に抜き勾配をつける第5の工程とを備え、
前記第1の工程において入力される前記金型形状の作成データは、成形品に使用される成形材料に関するデータと、成形品取り出し時に可動部形状を動かす方向に基づいて可動部形状と固定部形状の抜き方向を設定する前記金型の抜き方向に関するデータと、前記金型の分割に関するデータと、前記金型の勾配に関するデータを含み、
前記第3の工程において、
前記第1の工程で入力された金型の分割に関するデータを用いて、金型の可動部形状および固定部形状を作成すると共に、
前記第1の工程で設定された分割面と前記第2の工程にて差演算を行った結果得られた形状との積演算を行って、分割面を境界として領域を分割し、
前記分割された領域中に存在する形状が前記分割面を境にしてどちら側に存在するかを判断して、分割された領域のいずれに可動部形状または固定部形状が存在するかの判断を行い、
前記分割された領域のうち、前記可動部形状側と固定部形状側に存在する形状の数がそれぞれ1つずつであるか否かを判断し、前記可動部形状側又は前記固定部形状側のいずれかに複数の形状が存在する場合、これらの形状のうち他方の形状部側に存在すべき形状を抽出して、これを当該他方の形状部側に存在する形状と和演算することにより、前記第2の工程にて作成された形状を2つに分割し、この2つに分割された形状の境界上に存在するエッジに、前記第1の工程で設定されたノーパーティングラインであるエッジが含まれているか否かを判断するものであることを特徴とする金型設計方法。 - 与えられた基本形状からその形状の成形品を制作するための金型の金型形状を設計する金型設計方法において、
前記基本形状と前記金型の材料である型材形状とをソリッドモデルによって入力し、さらに前記金型形状の作成データを入力する第1の工程と、前記基本形状を拡大もしくは縮小変形した形状と前記型材形状の差演算を行う第2の工程と、前記第2の工程における差演算によって求められた形状を、前記金型を開くためのパーティングラインもしくは分割面のデータに基づいて、可動部形状と固定部形状とに分割する第3の工程と、前記第3の工程による処理によって求められた形状に対してアンダカット部を持つか否かを判定し、当該判定の結果によって当該形状の分割を行う第4の工程と、前記第4の工程による処理によって求められた形状の所定の面に抜き勾配をつける第5の工程とを備え、
前記第4の工程において、
前記第3の工程で分割された前記金型の可動部形状と固定部形状について、前記第1の工程で入力されたデータに基づいて、抜き方向に対してアンダカットとなる部分の存在を、ソリッドモデルで表される前記金型の可動部形状および固定部形状の集合演算を用いて判定するにあたり、前記金型の可動部形状と固定部形状について、それぞれのスィープを行い、このスィープによって作成されたそれぞれの形状と前記金型の可動部形状および固定部形状との積演算を行い、それぞれの演算結果が空であれば、アンダカット部は存在しないと判断し、空でなければ、前記演算結果として得られた形状がアンダカット部であると判断し、
前記アンダカット部が存在する場合、前記分割された形状に対して、さらに割型に分割するか、スライドコアと呼ばれる部分を入子形式にするか、強制的に抜いてしまうかの選択を行い、
割型を選択した場合には、前記第3の工程で分割された形状をさらに分割し、抽出された前記アンダカット部を分割して取り出せるような割型とする際に、その分割する平面と作成された前記割型の移動方向を設定し、
スライドコアを選択した場合には、抽出された前記アンダカット部の形状に対して、可動部形状または固定部形状と接している面を抽出し、その面の法線ベクトルを求めて、その延長線上で前記可動部形状または固定部形状に対して外側向きを前記スライドコアの移動方向として設定し、抽出した前記可動部形状または固定部形状と接している面を前記スライドコアの移動方向にスィープしてスライドコア形状を作成し、
強制抜きを選択した場合には、成形材料の弾性率や形状に対するアンダカット部の割合から、抜きやすさの目安となる値を算出することを特徴とする金型設計方法。 - 作成された前記金型の可動部形状および固定部形状に対して、金型の構造に必要なデータを設定するために、成形材料の流入方式、成形品の突き出し方式、および冷却方式についてのデータを入力し、さらに、その形状を表示装置の画面上に表示した金型キャビティセット上に配置することによって、金型の構造に必要なデータ設定を行う第6の工程を備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の金型設計方法。
- 金型の構造に必要なデータ設定を行う際に、設定したデータ形状が金型と干渉しないかどうかを、ソリッドモデルの集合演算によって判断することを特徴とする請求項4記載の金型設計方法。
- 前記各工程毎に、処理の結果を表示装置に表示し、表示された処理結果が作業者の意図するものでなかった場合には、作業者の指示によって処理をさかのぼり、該当する処理段階に戻ってその処理段階より新たに処理を続けてゆくことを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載の金型設計方法。
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