JP4514904B2 - 磁気情報転写箔およびそれを用いた磁気情報形成方法 - Google Patents

磁気情報転写箔およびそれを用いた磁気情報形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、磁気情報転写箔およびそれを用いた磁気情報形成方法に関する。詳しくは、樹脂フィルム基材上に必要により離型層を介して、表面が粗面化されるようなインキで粗化部を設け、当該樹脂フィルム基材上または離型層または粗化部上に強磁性材薄膜層を設けたことを特徴とする磁気情報転写箔とそれを用いた磁気情報形成方法に関する。
このような磁気情報転写箔は、塩化ビニルやPETのプラスチック基材に転写してクレジットカードやプリペイドカードとして使用することができ、各種印刷物に転写して商品券、ギフト券、証明書、パスポート、チケット、投票券、切符、ラベル等の各種セキュリティ媒体に使用することができる。
【0002】
【従来技術】
各種セキュリティ媒体の偽造防止策として、磁気情報を担持した情報記録媒体が従来から使用されている。磁気情報記録媒体カードとして国内で最も多く利用されているプリペイドカードには、テレホンカードやパチンコ遊技カードなどがある。しかし、これらのカードは変造、改ざんがされやすい問題がある。
この変造、改ざん防止対策として特開平6−286368号公報が提案する技術は、通常では入手できない組成と、その素材特有の磁気特性を利用することと、カードの第二記録領域に書換できないように予め書き込んであるセキュリティーコードを利用する方法が提案されている。このセキュリティーコードを書き込むためには、磁気的に読み取れる磁気パターンを形成する必要がある。
この磁気パターンを形成する方法としては、▲1▼磁性体にレーザを照射して、磁性体を消失させるかまたは磁気特性を変化させる。▲2▼フォトリソグラフィー・印刷等を利用したエッチングで磁性体を除去する。▲3▼強磁性膜からなる転写箔を熱と圧力をかけてパターン状に転写する。等の方法がとられているが、パターニングに長時間を要するかまたはコスト高を招くという問題がある。
【0003】
そのため、より高度の偽造防止構造を有するデータ記録担体として、粗化部と磁性膜を組み合せた構造として、特開平10−64051号公報では、磁気パターニングされた磁性体板等が提案されている。
そこで、本発明はこのような磁性体板にさらに改良を加えた磁気情報転写箔やそれを用いた磁気情報形成方法を提供することで一層の偽造防止効果を図ろうとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の要旨の第1は、支持体となる樹脂フィルム基材上に必要により離型層を介して、粗面化インキによる粗化部を設け、当該樹脂フィルム基材上または離型層上に強磁性材薄膜層を設けることにより、該強磁性材薄膜層に、当該樹脂フィルム基材上または離型層上での角型比が0.8〜1.0であって、当該租化部上での角型比が0.5以下である、該粗化部パターンに応じた特徴的な磁気情報特性を保持させ、さらに該強磁性材薄膜層上にヒートシール剤層または粘着剤層を形成したことを特徴とする磁気情報転写箔、にある。かかる磁気情報転写箔であるため、被転写媒体に転写して高度の偽造防止を図ることができる。
【0005】
このような磁気情報転写箔は、粗化部の有る部分と無い部分とが一定の読み出し信号を与えるように組み合わされた構成とすることができ、粗化部の中心線平均粗さRaが、1.0μmから20μmの範囲であるようにすれば確実に粗化部の効果を与えることができる。また、強磁性材薄膜層または粗化部と樹脂フィルム基材または離型層との間に光反射層を備えれば、光輝性転写箔の効果を与えることができ、隠蔽層を設ければ磁性層を隠蔽することができる。さらに、強磁性材薄膜層は、アモルファス強磁性材料とすることができる。
【0006】
上記課題を解決するための本発明の要旨の第2は、上記磁気情報転写箔を被転写媒体に転写することを特徴とする磁気情報形成方法、にある。かかる磁気情報形成方法であるため、偽造困難な磁気情報を容易に形成できる。上記において、部分的に粗化部パターンを破壊するようにして磁気情報転写箔を転写すること、ができ、この場合は一層偽造が困難な磁気情報を形成できる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明は、樹脂フィルムからなる基材上に必要により離型層を介して粗化部を設け、その表面に強磁性材薄膜をスパッタ等の気相法で形成した磁気情報転写箔とそれを使用した磁気情報形成方法に関する。
本発明で利用する強磁性材薄膜層は基本的には蒸着またはスパッタ等の気相成長による薄膜であるため、その薄膜の磁気特性を検出する場合には、その薄膜を形成する樹脂フィルム基材の表面粗さはおよそ数μm以下でなければ、本来その磁性体が有する磁気特性が現れてこない。例えば、樹脂フィルム基材としては表面粗さが0.01〜0.1μm程度の平坦な表面領域を有するPETフィルムが必要となるが、このとき基材の表面粗さが数μm以上で多孔質状にした非平坦な領域に磁性体を成膜すると、その成膜された磁性体の本来の磁気特性が現れず、磁気検出信号が弱くなるか消失してしまう。本発明はこのような現象を利用し、エッチング等の複雑な工程を省き、離型性を有する基材上に粗面化インキによる粗化部を設け、当該粗化部上に磁性膜を形成して磁気情報転写箔に利用したものである。
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明することにする。図1は、本発明の磁気情報転写箔の一実施形態を示す断面図である。この実施形態の場合、磁気情報転写箔10は、樹脂フィルムからなる基材11上に必要により離型層17を介して粗面化インキによる粗化部13が形成され、当該樹脂フィルム基材表面または離型層上および粗化部表面上にかけては、強磁性材薄膜層15が粗化部13に追従するように被着されて設けられている。前記のように粗化部13部分は磁気ヘッドによって角型比の小さい0.5以下の磁気特性を与え、粗面化インキの無い平滑な部分では角型比の大きい0.8〜1.0の磁気特性を与えて読み取られる。粗化部13の表面は粗面であることが要求されるが、粗化部の樹脂フィルム基材表面からの厚みΔh自体は磁気特性に重要な影響を与える要素ではない。ここで「追従する」とは、粗面化インキによる粗化部凹凸上に強磁性材薄膜層を気相成膜したときに、当該薄膜表面が概ね前記粗化部形状に平行し、かつ近似した状態で断続することなく連続した膜面を有する薄膜になることをいう。
【0009】
本発明の好ましい実施形態では、後述するように粗化部13が、有る部分と無い部分とが組み合わされた構成からなり、その固有パターン構成から読み出し磁気特性に対してそれぞれ固有の識別情報を与えることにある。
さらに強磁性材薄膜層15上面には、被転写媒体に接着するためのヒートシール剤層または粘着剤層18を設ける。
【0010】
以下、磁気情報転写箔の各構成要素についてさらに詳細に説明する。
樹脂フィルム基材11としては、耐溶剤性および耐熱性のある樹脂フィルムが使用でき、一般的にはポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムをはじめとしてその他のポリエステル樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂フィルム、ポリサルホン樹脂フィルム、ポリフェニレンサルファイド樹脂フィルム、セルロース系樹脂フィルム、等が挙げられる。厚さは、5〜300μm程度、好ましくは、10〜50μmの厚さが推奨できる。
【0011】
離型層17は、粗化部13や強磁性材薄膜層15を基材11に剥離性を有して密着させるためのものであって、転写後には樹脂層をある程度保護する役割をも有するものである。この層の材質としては、十分な透明性があり、耐摩擦性、耐汚染性、耐溶剤性を有する樹脂、例えば(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラニン系樹脂、ポリエステル系樹脂の単体、混合物および共重合体が用いられる。また、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の離型剤から形成してもよい。離型層17の形成は、上記のような樹脂に必要な添加剤を加えたものを適当な溶剤に溶解または分散して調整したインキを、基材上に公知の手段により塗布、乾燥させて行うことができる。このような離型層17の厚さは、0.5〜5μm程度が好ましく、さらに好ましくは、1〜3μmの範囲である。
なお、離型層17と粗化部13との間に、両層の接着性を高め、かつ、樹脂層の耐久性を高めるために、オーバープリント層を形成してもよい。
【0012】
粗面化インキは、非磁性金属、カーボン、セラミック、あるいはアルミナ、シリカ、チタニア等の酸化物、炭酸カルシウム、樹脂粉などのサブミクロン〜数十μm、好ましくは1〜30μmの粒子12Pをバインダー(樹脂等)で結合させ、溶剤に溶解してインキ化したものである。インキは基材表面を凹凸化や粗面化することが目的であるため着色の必要はない。
本発明においては、この粗面化インキによる粗化部表面の粗さが強磁性材薄膜層15の厚さに比べて十分大きくなることが好ましい。粗面化インキによる粗化部は二次元的に点在するものであっても良く、一定の凹凸ストライプが一定方向に配列するように形成しても良い。ただし、ストライプ状であっても印刷で設けるような粗いピッチであるため回折格子のような効果を生じることはない。
【0013】
粗面化インキによる粗化部の厚みΔhは、1μm〜数十μmとなるので、強磁性材薄膜層15の厚さに比べて十分厚いものとすることができる。ただし、インキ層の厚みが大きくなるとインキ層のクラック、磁性膜のクラック等が発生することから、測定に影響を及ぼすため50μm程度が限界と考えられる。また、粗面化インキによる印刷面の表面粗さRa(中心線平均粗さ)が1μm以下になると、上記の磁気異方性を減少させる効果が小さくなるため、このRaが1μm〜20μmの範囲であることがより好ましい。下限は磁気異方性減少効果が顕著に発現してくる範囲であるためであり、上限はこれ以上表面粗さを増加させるためには、より大きな粒径粒子を含むインクが必要になり分散性が悪くインクの製造が困難となるためである。このような粗面化インキの印刷は、シルクスクリーン印刷やグラビア印刷等の凹版印刷により印刷することができる。
【0014】
次に、強磁性材薄膜層15は、結晶性あるいはアモルファスのものであっても良く、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)のいずれか1種または2種以上の組み合わせからなる磁性材料を主成分として、これに、ほう素(B)、炭素(C)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、珪素(Si)、燐(P)、硫黄(S)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブテン(Mo)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、インジウム(In)、錫(Sn)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)、鉛(Pb)から選ばれた数種の金属または非金属元素の添加物から構成されている。
【0015】
強磁性材薄膜層の形成は、主成分となる鉄、コバルト、ニッケルからなる合金と添加元素からなる材料あるいはこれらの混合物をターゲット材または蒸着源として、スパッタリング、蒸着、イオンプレーティングなどの真空プロセスを用いた手段で粗化部上に形成する。強磁性材としては、コバルトCo−ジルコニウムZr系あるいは鉄Fe−珪素Si系によるもので代表される。
強磁性材薄膜層の厚みは、50〜500nmが適切である。当該層の下限値が50nm以下となる理由は、磁性体層の厚みが薄くなるため、磁性体の絶対量の減少と共に飽和磁束が減少し、磁気信号が小さくなるためであり、真偽判定に用いる磁気信号を得るためには磁性体の厚みは、50nm以上が必要となるためである。また、500nmが上限値となる理由は、他の方法で作製した磁性体膜(通常は厚さ1μm以上)と明確な区別をつけるためであり、これ以上厚くすることは避けることが好ましいからである。さらに、これ以上の厚さとなる場合は、膜の内部応力によるカール等で磁気情報転写箔の特性が悪くなり、しわ、クラックが発生する場合があるからである。
強磁性材薄膜層の生産性および磁気信号の安定性から、好ましい当該層の厚さは、150nm〜300nm(1500〜3000Å)の範囲である。
【0016】
このような強磁性材薄膜層は、Hc(保磁力)、Bm(飽和磁束密度)において特異な特性を示し、その磁気特性から通常印加の磁界強度とその磁界によって磁化される磁性体の磁束密度とは非線形のB−H特性(ヒステリシス曲線)を有するので、一般の磁性材料とは明確に区別することができる。本発明に使用する強磁性材薄膜層は、Hc(保磁力)が、40〜4000A/m(0.5〜50Oe)、Rsq(角型比)が、0.75〜1.0であることが好ましい。
図2は、強磁性材薄膜層のヒステリシス曲線を示すもので、平滑で凹凸のない基材面では、図2(A)のように、強磁性材薄膜層15は、保磁力Hcが小さく、かつ高角型比(0.8〜1.0)のB−Hヒステリシス曲線が得られる。一方、凹凸のある基材面や粗化部上では、図2(B)のように、飽和磁束密度Bmが減少し低角型比(0.5以下)のヒステリシス特性が得られる。
なお、角型比Rsqは、
Rsq=Br(残留磁束密度)/Bm(飽和磁束密度)
で表される。
【0017】
強磁性材薄膜層15または粗化部13と樹脂フィルム基材11または離型層17との間には、光反射層として非磁性金属膜を設けることができる。すなわち、離型層を設けた場合は当該層上に、設けない場合は基材11上に直接、強磁性材薄膜層15または粗面化インキ層を設ける前に、それらの上に光反射層を全面に設ける。このようにする場合には転写後に強磁性体薄膜の色に影響されることなしに、非磁性金属の光沢色が反射光として外部から観測されるようになり、外見上は一般の光輝性転写箔と変わらない磁気情報転写箔が与えられる。このような光反射層は反射性の非磁性金属材料が使用され、金、銀、アルミニウム、クロム、ニッケル等が使われる。一般的にはコストとよび技術上の問題からアルミニウムが好ましく採用され、その厚さは、10nm〜200nm程度の厚みに形成できるが、好ましくは20nm〜100nm程度の厚みである。
【0018】
光反射層と同様に、強磁性材薄膜層15または粗化部13と樹脂フィルム基材11または離型層17との間には、隠蔽層を設けることができる。一般に磁性材料は茶色や黒色を呈するので、被転写媒体に転写した場合に外観を損なう場合もある。そこで、磁性材層を隠蔽するための層を予め磁気情報転写箔に設けておくことが望まれる場合がある。この隠蔽層は隠蔽効果の高い酸化チタンによる白色インキを印刷したり、絵柄を同時に印刷したり、あるいはアルミ粉、酸化珪素などの隠蔽性顔料を含む印刷インキで印刷したり、アルミ蒸着を施した上で白色インキの印刷を行う等の方法で隠蔽層を形成することが行われる。隠蔽層の厚みは、磁性層を隠蔽できる厚みがあればよく、1〜数μmの範囲である。
【0019】
図3は、磁気情報転写箔の粗化部の例を示す平面図である。前記のように特定の磁気特性を与えるように組み合わされた構成のパターンを示すものであり、粗化部13と粗化部の「無い」部分13nが、磁気ヘッドの走査方向または転写箔の長さ方向に対して異なる読み取り磁気特性を与えるようにされている。
図3(A)では、粗化部の「有る」部分13と「無い」部分13nとが転写箔の長さ方向に対して交互に繰り返す周期的パターンに形成されている。前記のように、粗化部が有る部分は磁気信号が弱くなるか消失するので、この粗化部の「有る」部分を「0」、「無い」部分を「1」とすれば、0,1,0,1の繰り返し信号が得られることになる。
図3(B)では、粗化部の「有る」部分13と「無い」部分13nとが転写箔の長さ方向に対して2個、1個の順で繰り返す周期的パターンに形成されている。この粗化部の「有る」部分を「0」、「無い」部分を「1」とすれば、0,0,1,0,0,1の繰り返し信号が得られることになる。
【0020】
ヒートシール剤層または粘着剤層18は、磁気情報転写箔10を所定の被転写媒体に転写した際に、十分な接着強度を得るためのものであり、用途に合わせて従来より公知の感熱接着剤や粘着剤が用いられる。感熱接着剤としては、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂があげられ、また、粘着剤としては、アクリル系、ゴム系のものがあげられる。その塗布厚みは、1〜数μm以内のものであってよい。
通常、当該層が粘着剤層である場合は、転写箔媒体上に設ける保護用剥離紙に粘着剤を付与してから、この保護用剥離紙と転写箔を一体にし、転写箔を使用する際に、剥離紙を除去すると強磁性材薄膜層上に粘着剤が転移して使用できる状態になる。従って、強磁性材薄膜層上に直接、粘着剤を塗布する工程を行うことは少ない。
【0021】
図4は、磁気情報転写箔を被転写媒体に転写する状態を示す断面図である。
磁気情報転写箔10を被転写媒体30に転写する際は、接着剤層がヒートシール剤である場合は、熱ロール等で加熱加圧しながらあるいはホットスタンプ箔を転写する状態で箔押しするようにして被転写媒体30に転写する。接着剤層が粘着剤である場合は、保護用剥離紙を剥離して粘着剤層を直接、被転写媒体30に加圧して接触させることにより転写できる。この際、基材11は離型層17から剥離して除去されるので、磁気情報転写箔の薄層の部分だけを転写することができる。離型層17は、前記のように被転写媒体30側に残るようにして保護被覆の機能を持たせることが好ましい。
【0022】
磁気情報転写箔は、レーザー光線またはサーマルヘッド等によるドライプロセスにより部分的に強磁性材薄膜層を破壊するようにして磁気情報転写箔を転写することができる。例えば、照射エネルギー数ワット、ビーム径50μmのYAGレーザー(波長1064nm)を用いて速度100mm/secでスキャンする場合にはラインアンドスペース0.2mmのパターニングを容易に行うことができる。多くの場合、強磁性材薄膜層をバーコードの形状にパターニングすることにより、有用な偽造防止効果を果たすことができる。
【0023】
図5は、読取り装置を説明する図である。図5(A)は、磁気ヘッド41を交流励磁し(5〜10kHz,2〜5Vpp)、検知コイル43で出力電圧を検知する装置、図5(B)は、磁気ヘッド41を交流励磁し参照コイル44の信号波形と、検知コイル出力波形(図5(C))を比較して検知する場合を示す。
図6、図7は、磁気情報の読取り方法を説明する図である。
図6(A)は、図5(A)の装置での入力交流波形、図6(B)は、検知コイルの出力波形を示す。磁気情報記録部に対応して出力波形にはパルスPが現れる。この状態で入出力の位相、強度を合わせて差分をとれば、図6(C)のパルス信号が得られる。このパルスのピーク高さ、半値幅、位置さらには周波数成分を見れば真偽判定を行うことができる。
図5(B)の装置で参照電極の出力と比較する場合も同様に差分をとってパルス信号を見ることになる。
【0024】
磁気情報転写箔を転写し所定の信号を記録した後、磁気ヘッドで読取れば、強磁性材薄膜層部分は高角型比磁気特性により、図7(A)のように高いパルス信号が出現し、粗化部ではパルス強度が低下し、半値幅が増加した信号を現す(図7(B))。この転写部分を磁気ヘッド走査すれば、図7(C)の信号波形を示し、閾値を設定すれば粗化部パターンに応じて、0,1,0,・・の信号として読み取ることができる。
【0025】
【実施例】
以下、本発明の実施例1〜4、および比較例1を図面を参照して説明する。実施例1〜3は、粗面化インキの粒状物の粒径の異なるものを使用した場合、実施例4は、実施例1に光反射層を加えた場合、比較例1は、粒状物の粒径を細粒にした場合を示す。
従って、実施例2以下において使用する基材、離型層の形成、粗面化インキの印刷条件、強磁性材薄膜層の形成、ヒートシール剤層の形成条件は実施例1と同条件である。
(実施例1)
<磁気情報転写箔の作製>
磁気情報転写箔の樹脂フィルム基材フィルム11として、平滑性が良く透明なポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製「ルミラー25T60」)〔厚み;25μm〕に、剥離性を与えるため、メチルメタクリレート系アクリル樹脂をトルエンに希釈してグラビア印刷法により薄層の離型層17として塗工した。
【0026】
続いて、下記組成の粗面化インキにより、幅2mmのストライプ状の粗化部をグラビア印刷法により印刷し乾燥した。乾燥後の粗化部の厚みΔhは、7μmとなるようにした。なお、粗化部は、転写箔に切断した際に図3(A)のように、粗化部の「無い」部分13nと、粗化部13の「有る」部分とが転写箔の長さ方向に対して繰り返されるように印刷した。
〔インキ組成〕
バインダー;塩酢ビ/ウレタン系樹脂 100重量部
粒状物 ;マイクロシリカ(粒径5.5μm) 10重量部
【0027】
続いて、この粗化部上および粗化部のない樹脂フィルム基材表面上に、鉄Fe−珪素Si系からなる強磁性材薄膜層15をスパッタリング法で、膜厚0.2μmになるように成膜した。
【0028】
比較例2)
<磁気情報転写箔の作製>実施例1と同様に、同一の基材に同一条件で離型層17を塗工し、さらに、次の組成の粗面化インキにより、粗化部を実施例1と同一条件で設けた。
〔インキ組成〕
バインダー;塩酢ビ/ウレタン系樹脂 100重量部
粒状物 ;マイクロシリカ(粒径2.5μm) 10重量部
【0029】
続いて、この粗化部上および粗化部のない樹脂フィルム基材表面上に、鉄Fe−珪素Si系からなる強磁性材薄膜層15をスパッタリング法で、膜厚0.2μmになるように成膜した。
【0030】
(実施例3)
<磁気情報転写箔の作製>
実施例1と同様に、同一の基材に同一条件で離型層17を塗工し、さらに、次の組成の粗面化インキにより、粗化部を実施例1と同一条件で設けた。
〔インキ組成〕
バインダー;塩酢ビ/ウレタン系樹脂 100重量部
粒状物 ;マイクロシリカ(粒径25μm) 10重量部
【0031】
続いて、この粗化部上および粗化部のない樹脂フィルム基材表面上に、鉄Fe−珪素Si系からなる強磁性材薄膜層15をスパッタリング法で、膜厚0.2μmになるように成膜した。
【0032】
(実施例4)
<磁気情報転写箔の作製>
実施例1と同様に、同一の基材に同一条件で離型層17を塗工した後、Alによる蒸着膜による光反射層14を厚み、30nm(300Å)に形成した。
その後、次の組成の粗面化インキにより、粗化部を実施例1と同一条件で設けた。
〔インキ組成〕
バインダー;塩酢ビ/ウレタン系樹脂 100重量部
粒状物 ;マイクロシリカ(粒径5.5μm) 10重量部
【0033】
続いて、この粗化部上および粗化部のない樹脂フィルム基材表面上に、鉄Fe−珪素Si系からなる強磁性材薄膜層15をスパッタリング法で、膜厚0.2μmになるように成膜した。
【0034】
(比較例1)
<磁気情報転写箔の作製>
実施例1と同様に、同一の基材に同一条件で離型層17を塗工し、さらに、次の組成の粗面化インキにより、粗化部を実施例1と同一条件で設けた。
〔インキ組成〕
バインダー;塩酢ビ/ウレタン系樹脂 100重量部
粒状物 ;マイクロシリカ(粒径0.8μm) 10重量部
【0035】
続いて、この粗化部上および粗化部のない樹脂フィルム基材表面上に、鉄Fe−珪素Si系からなる強磁性材薄膜層15をスパッタリング法で、膜厚0.2μmになるように成膜した。
【0036】
実施例1、3、4および比較例1、2の磁気情報転写箔のヒートシール剤塗布前の磁気特性および表面粗さRa(中心線平均粗さ)の測定を行った。その結果、粗面化インキによる粗化部の無い平滑部13nでの角型比はいずれの場合も0.9であった。また、粗化部13での角型比、保磁力、Raおよび評価は次表のようになった。なお、保磁力の単位はA/mである。
実施例1 比較例2 実施例3 実施例4 比較例1
角型比 0.2 0.6 0.2 0.2 0.8
保磁力 3200 2800 2400 3200 1200
Ra 5μm 2.2μm 18μm 5μm 0.5μm
評価 ◎ 〇 △ ◎ ×
なお、角型比の測定は、VSM(試料振動型磁束計)の直流磁場による計測であるが、交流磁場による計測でも同じ結果となった。保磁力はB−Hアナライザー(岩崎通信機株式会社製)による計測 また、表面粗さは、スローン社製デックタック表面粗さ計によった。保磁力の単位は、A/mである。
評価; ◎ 低角型比効果が顕著。 〇 低角型比効果が良好。
× 低角型比効果が認められない。 △ インキ化、印刷困難。
【0037】
〈被転写媒体への転写〉実施例13、および比較例1、2の強磁性材薄膜層15面に、塩酢ビ系ホットメルト型ヒートシール剤を1μmの厚みに塗布した後、スリッタ機を使用して、粗化部のストライプに直交するように幅10mmにスリッタして、本発明の磁気情報転写箔を完成した。その後、実施例1、3、4および比較例1、2の磁気情報転写箔を図4のように、塩化ビニル製のカード基材に加熱ローラを使用して135°C、0.7秒に加熱して転写した。その際、基材11を離型層17から剥離して除去した。
【0038】
実施例1〜4および比較例1の磁気情報転写箔を塩化ビニル性カードに転写した後の磁気特性の測定を行った。その結果、粗面化インキによる粗化部の無い平滑部13nでの角型比はいずれも0.9であった。
また、粗化部の角型比および保磁力は以下のとおりであった。なお、保磁力の単位はA/mである。
実施例1 比較例2 実施例3 実施例4 比較例1
角型比 0.2 0.6 0.2 0.2 0.8
保磁力 3200 2800 2400 3200 1200
測定機器は前記の場合と同一である。
【0039】
以上の結果、粗化部では、一般に低角型比化することが認められ、磁気読取り性が低下するが、添加粒状物が微粒化すると粗化部表面が平滑化するため低角型比化の効果が減少することが認められた。ただし、添加粒状物が粗粒になると角型比は低下するが、インキ化や印刷自体が困難となる。
【0040】
【発明の効果】
本発明の磁気情報転写箔は、樹脂フィルム基材上に粗面化インキによる粗化部を形成して、当該粗化部上および粗化部でない樹脂フィルム基材上に強磁性体薄膜層が形成されているので特有の磁気特性、すなわち当該租化部でない基材上に形成された強磁性体薄膜層は磁化されたときに高い角型比0.8〜1.0を示すが、当該租化部上に形成された強磁性体薄膜層は磁化されたときに低角型比0.5以下を示すという特性を与えることができ、通常の磁気転写箔や光輝性転写箔では得られない偽造防止効果を有する。本発明の磁気情報形成方法によれば、本発明の磁気情報転写箔を利用して偽造、改ざん困難な磁気情報を各種媒体に容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の磁気情報転写箔の一実施形態を示す断面図である。
【図2】 強磁性材薄膜層のヒステリシス曲線を示すものである。
【図3】 磁気情報転写箔の粗化部の例を示す平面図である。
【図4】 磁気情報転写箔を被転写媒体に転写する状態を示す断面図である。
【図5】 磁気情報の読取り装置を説明する図である。
【図6】 磁気情報の読取り方法を説明する図である。
【図7】 磁気情報の読取り方法を説明する図である。
【符号の説明】
10 磁気情報転写箔
11 基材
12P 粒子
13 粗化部
15 強磁性材薄膜層
17 離型層
18 ヒートシール剤層または粘着剤層
30 被転写媒体
40 読取り装置
41 磁気ヘッド

Claims (8)

  1. 支持体となる樹脂フィルム基材上に必要により離型層を介して、粗面化インキによる粗化部を設け、当該樹脂フィルム基材上または離型層上に強磁性材薄膜層を設けることにより、該強磁性材薄膜層に該粗化部パターンに応じた特徴的な磁気情報特性を保持させ、さらに該強磁性材薄膜層上にヒートシール剤層または粘着剤層を形成した磁気情報転写箔において、当該磁気特性が、当該樹脂フィルム基材上または離型層上での角型比が0.8〜1.0であって、当該租化部上での角型比が0.5以下であることを特徴とする磁気情報転写箔。
  2. 粗化部の有る部分と無い部分とが一定の読み出し信号を与えるように組み合わされた構成とされていることを特徴とする請求項1記載の磁気情報転写箔。
  3. 粗化部の中心線平均粗さRaが、1.0μmから20μmの範囲であることを特徴とする請求項1から請求項2記載の磁気情報転写箔。
  4. 強磁性材薄膜層または粗化部と樹脂フィルム基材または離型層との間に光反射層を備えていることを特徴とする請求項1から請求項3記載の磁気情報転写箔。
  5. 強磁性材薄膜層または粗化部と樹脂フィルム基材または離型層との間に隠蔽層を備えていることを特徴とする請求項1から請求項3記載の磁気情報転写箔。
  6. 前記強磁性材薄膜層がアモルファス強磁性材料により形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5記載の磁気情報転写箔。
  7. 請求項1ないし請求項6記載の磁気情報転写箔を被転写媒体に転写することを特徴とする磁気情報形成方法。
  8. 部分的に粗化部パターンを破壊するようにして磁気情報転写箔を転写することを特徴とする請求項7記載の磁気情報形成方法。
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