JP4510912B2 - 非水電解液電池 - Google Patents
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Description
しかし、近年、電池を用いた機器の応用範囲は拡大しており、それに伴い機器の使用温度範囲も拡大する傾向にある。例えば車載用機器に用いられる電池としては、使用環境温度を最大125℃と想定した場合にも一定期間は機能を保つことができ、また−40℃程度の低温でも動作する一次電池が要望されている。
CR系電池は、一般的に、低温での負荷特性に優れているが、高温特性が低い。具体的には、60℃以上の高温では、電池内の微量水分の存在下で二酸化マンガンの触媒作用により、非水電解液が分解されて、ガスが発生する。このため、電池の膨れによる電池内部の緊縛性の低下により、電池の内部抵抗が大幅に上昇する場合がある。
特許文献2、3および非特許文献1では、いずれもフッ化黒鉛表面に炭素層を形成することでフッ化黒鉛に導電性を付与している。これにより、放電初期に電圧の極小点が現れる現象を抑制できるとされている。
また、本発明は、放電容量を低下させることなく、フッ化黒鉛の放電初期における電圧の低下を改善することを目的とする。
負極活物質を含み、負極活物質は、金属リチウムまたはリチウム合金を含む、負極と、
正極と負極との間に配されるセパレータと、
非水電解液と、を備えた非水電解液電池を提供する。
(式中、0.4≦x≦1.15であり、nは1以上の整数である)
で表されることが好ましい。
このようなフッ化黒鉛を用いることで、低温放電特性の改善効果および放電容量の向上効果をより大きくすることができる。
第1フッ化黒鉛は、体積累積粒度分布における体積分率50%のときの粒子径D50が、0.2μm以上、7μm以下であることがより好ましい。
第2フッ化黒鉛は、体積累積粒度分布における体積分率50%のときの粒子径D50が、10μm以上、30μm以下であることがより好ましい。
正極中における第1フッ化黒鉛と第2フッ化黒鉛との混合重量比は、10:90〜90:10であることが好ましい。
第1フッ化黒鉛は、第2フッ化黒鉛よりも電位が高いことが好ましい。
本発明によれば、高温保存特性を低下させることなく、放電特性、特に低温環境下での大電流パルス放電特性に優れた非水電解液電池を提供することができる。
本発明によれば、放電容量を低下させることなく、フッ化黒鉛の放電初期における電圧の低下を改善することができる。
図1に、本発明の一実施形態に係る非水電解液電池の縦断面図を示す。電池10は、正極12と、負極14と、正極と負極との間に配置されたセパレータ13と、非水電解液(図示せず)と、これらを収容する電池ケース11と、周縁部に絶縁ガスケット15を備える封口板16とを含む。
いての狭域スペクトルを求める。所定のピークの面積を求め、その面積から、炭素原子濃度およびフッ素原子濃度を求めることができる。また、前記内部標準により、帯電補正を行うことができる。
XPSの測定試料には、例えば試料粉末(フッ化黒鉛)の一部を金でコーティングしたものを用いる。
測定試料の広域スペクトルおよび狭域スペクトルは、例えば理学電機工業(株)製のXPS−7000を用い、線源としてMg−Kα線を使用して測定することができる。広域スペクトル測定は、例えば5kV、5mAの条件で行い、狭域スペクトル測定は、例えば10kV、10mAの条件で行う。帯電補正は、例えば試料に蒸着した金のAu4fピーク位置を基準にして行う。フッ化黒鉛のC1sスペクトルでは、C−F結合、および炭素成分に由来する2つのピークが観測される。炭素成分のピーク位置が284.2eVからずれる場合は、炭素成分のピーク位置を284.2eVとして、さらに補正を行えばよい。
ここで、例えば、フッ化黒鉛(CFx)nにおけるx値とは、フッ化黒鉛に含まれる炭素原子のモル数に対するフッ素原子のモル数の比のことである。
あることが好ましい。第1フッ化黒鉛内部の細孔を増加させることで、その結晶構造における結晶子の間の隙間が増加する。このため、第1フッ化黒鉛内部におけるイオン拡散が容易になり、低温パルス放電特性を向上することができる。
隙間が少ないため、低温パルス放電特性の向上効果を十分に得られないことがある。全細孔容積が1.0cm3/gより大きい場合、第1フッ化黒鉛が非水電解液を吸収して大きく膨潤することがある。ペレット状の正極の場合、正極活物質の膨潤により、正極内の導電ネットワークが損なわれ、放電特性が低下することがある。
全細孔容積は、例えば、BET法(窒素吸着法)により測定することができる。
第2フッ化黒鉛は、このような炭素材料をフッ素化することで得られる。
なかでも、(CFx)n(式中、0.4≦x≦1.15であり、nは1以上の整数である)で表される第2フッ化黒鉛を用いることが好ましい。このようなフッ化黒鉛を用いることで、高温保存特性をより改善することができ、放電容量をより大きくすることができる。x値、つまりフッ化度が1.15を超えると、フッ素の含有量が多くなるため、過電圧を小さくする効果が小さくなり、十分な放電特性が得られない場合がある。また、フッ化度が0.4未満であると、フッ化黒鉛の重量あたりの放電容量が小さくなり、十分なエネルギー密度が得られない場合がある。x値は、0.90≦x≦1.15を満たすことがより好ましい。
このような混合物を用いる場合、優れた放電特性および高温保存特性を確実に得る観点から、第1フッ化黒鉛と第2フッ化黒鉛との混合重量比は、10:90〜90:10であることが好ましく、25:75〜75:25であることがより好ましい。第1フッ化黒鉛の混合重量比が、第1フッ化黒鉛および第2フッ化黒鉛の合計100重量部あたり10重量部未満であると、第1フッ化黒鉛の量が不十分となり、放電特性の改善効果が十分に得られない場合がある。一方、第1フッ化黒鉛の混合重量比が、第1フッ化黒鉛および第2フッ化黒鉛の合計100重量部あたり90重量部を超えると、高温保存特性が若干低下する場合がある。
正極は、例えば、正極活物質と導電材と結着剤とを混合して得た正極合剤を、ディスク状に成型及び乾燥することにより、作製することができる。
導電材としては、例えば、黒鉛類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維、金属繊維などが用いられる。
リチウム合金の作製方法は、特に限定されない。放電容量の確保と内部抵抗を安定化させる観点から、リチウム合金において、リチウム以外の金属元素の含有量は、0.2重量%〜15重量%が望ましい。
《実施例1A》
(1)正極活物質の作製
粒子径D50が20μmの石油コークスを、フッ素ガス雰囲気中で加熱処理することにより、表面フッ化度が1.8の第2フッ化黒鉛(CF1.15)nを作製した。反応条件は、フッ素ガスの圧力を0.5気圧(5.07×104Pa)とし、加熱温度を400℃とし、反応時間を12時間とした。
得られた第1フッ化黒鉛、導電剤であるアセチレンブラック、及び結着剤であるスチレンブタジエンゴムを、固形分重量比84:8:8の比率で混合した。得られた混合物を、80℃で乾燥し、粉砕した。このようにして得られた粉末を所定の成型金型内に充填し、油圧プレス機にて加圧圧縮し、直径16mmで厚み3mmの正極ペレット12を作製した。電池の組立てに使用する前に、正極ペレット12を150℃の熱風で5時間乾燥して、水分を除去した。
厚み1.3mmの金属リチウムからなるシートを直径18mmの円板状に打抜き、円板状の金属リチウムが封口板16と同芯になるようにして封口板16の内側に圧着し、負極を作製した。
の濃度で溶解した溶液を用いた。
[粒子径D50]
フッ化黒鉛の体積累積粒度分布を、堀場製作所(株)製のレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920を用い、フッ化黒鉛をエタノールに分散させて測定した。得られた粒度分布から粒子径D50を求めた。測定は、20℃で行った。
フッ化黒鉛におけるフッ素原子のモル比xの測定は次に示す手順で行った。フッ化黒鉛の粉末試料を自動燃焼装置(三菱化学製AQF−100)を用いて1200℃で加熱分解し、発生したガスを所定量の過酸化水素水に吸収させた。得られた吸収液(測定試料)中のフッ化物イオン濃度を、日本ダイオネクス(株)製ICS−1500を用いて、イオンクロマトグラフ法で定量した。測定試料中のフッ素含有量および用いたフッ化黒鉛の量を元に、フッ化黒鉛におけるフッ素原子と炭素原子との組成比を求めた。
フッ化黒鉛の表面フッ化度(表面での濃度比(モル比)([F]/[C]))の測定は、次に示す手順で行った。フッ化黒鉛の試料粉末を、8mm角のアルミニウム基板上に貼った導電性両面接着テープ上に保持した。中央にφ1mmの穴を空けたアルミニウム板マスクを、フッ化黒鉛の試料粉末上に被せて金を蒸着し、試料粉末の一部分上に金をコーティングした。このようにして作製した測定試料の広域スペクトルおよび狭域スペクトルを、理学電機工業製XPS−7000および線源としてMg−Kα線を使用して測定した。広域スペクトル測定は、5kV、5mAの条件で行い、狭域スペクトル測定は、10kV、10mAの条件で行った。測定は、0〜1000eVの範囲の広域スペクトル測定を行った後、C1s、F1sおよびO1s各ピークの狭域スペクトル測定を行った。
フッ化黒鉛のC1sスペクトルでは、C−F結合、および炭素成分に由来する2つのピークが観測される。炭素成分のピーク位置が284.2eVからずれる場合は、炭素成分のピーク位置を284.2eVとして、帯電補正を行った。帯電補正は、試料に蒸着した金のAu4fピーク位置(84eV)を基準にして行った。
C1sおよびF1sの各ピークにおいてバックグラウンド補正を行い、C1sおよびF1sの各ピーク面積の積分強度を求め、炭素元素およびフッ素元素の感度係数を用いて、炭素原子およびフッ素原子の濃度を求めた。得られた値を用いて、フッ化黒鉛表面のフッ素原子と炭素原子との濃度比([F]/[C])を求めた。
フッ化黒鉛の全細孔容積は、島津製作所(株)製の自動比表面積/細孔分布測定装置トライスター3000を用いて、窒素ガス吸着によって測定した。
実施例1Aで行った、表面フッ化度1.80の(CF1.15)nへの紫外線照射の時間を20分間に変更して、第1フッ化黒鉛である表面フッ化度1.70の(CF1.15)nを得た。この第1フッ化黒鉛を用いたこと以外、実施例1Aと同様の手順で、実施例2Aの電池を作製した。
実施例1Aで行った、表面フッ化度1.80の(CF1.15)nへの紫外線照射の時間を1時間に変更して、第1フッ化黒鉛である表面フッ化度1.30の(CF1.15)nを得た。この第1フッ化黒鉛を用いたこと以外、実施例1Aと同様の手順で、実施例3Aの電池を作製した。
実施例1Aで行った、表面フッ化度1.80の(CF1.15)nへの紫外線照射の時間を2時間に変更して、第1フッ化黒鉛である表面フッ化度1.10の(CF1.09)nを得た。この第1フッ化黒鉛を用いたこと以外、実施例1Aと同様の手順で、実施例4Aの電池を作製した。
実施例1Aで行った、表面フッ化度1.80の(CF1.15)nへの紫外線照射の時間を3時間に変更して、第1フッ化黒鉛である表面フッ化度1.00の(CF0.90)nを得た。この第1フッ化黒鉛を用いたこと以外、実施例1Aと同様にして、実施例5Aの電池を作製した。
粒子径D50が20μmの石油コークスを、フッ素ガス雰囲気中で加熱処理することにより、表面フッ化度1.80の第2フッ化黒鉛(CF1.20)nを作製した。反応条件は、フッ素ガスの圧力を0.5気圧とし、加熱温度を400℃とし、反応時間を16時間とした。
粒子径D50が20μmの石油コークスを、フッ素ガス雰囲気中で加熱処理することにより、表面フッ化度1.80の第2フッ化黒鉛(CF1.10)nを作製した。反応条件は、フッ素ガスの圧力を0.5気圧とし、加熱温度を400℃とし、反応時間を10時間とした。
粒子径D50が20μmの石油コークスを、フッ素ガス雰囲気中で加熱処理することにより、表面フッ化度1.8の第2フッ化黒鉛(CF0.80)nを作製した。反応条件は、フッ素ガスの圧力を1気圧とし、加熱温度を400℃とし、反応時間を6時間とした。
粒子径D50が20μmの石油コークスを、フッ素ガス雰囲気中で加熱処理することにより、表面フッ化度1.80の第2フッ化黒鉛(CF0.50)nを作製した。反応条件は、フッ素ガスの圧力を1気圧とし、加熱温度を340℃とし、反応時間を8時間とした。
粒子径D50が20μmの石油コークスを、フッ素ガス雰囲気中で加熱処理することにより、表面フッ化度1.80の第2フッ化黒鉛(CF0.40)nを作製した。反応条件は、フッ素ガスの圧力を1気圧とし、加熱温度を340℃とし、反応時間を5時間とした。
粒子径D50が20μmの石油コークスを、フッ素ガス雰囲気中で加熱処理することにより、表面フッ化度1.80の第2フッ化黒鉛(CF0.30)nを作製した。反応条件は、フッ素ガスの圧力を1気圧とし、加熱温度を340℃とし、反応時間を3時間とした。
実施例7Aで作製した第2フッ化黒鉛である表面フッ化度1.80の(CF1.10)nと
非イオン性界面活性剤Triton X−100の1wt%水溶液とを、重量比10:90の割合で混合して、第2フッ化黒鉛を前記水溶液に分散させた。
次に、(株)シンマルエンタープライズ製の湿式粉砕・分散機DYNO−MILL TYPE KD−6およびφ0.65mmのジルコニアビーズを用いて、第2フッ化黒鉛を湿式粉砕し、表面フッ化度を低下させた。粉砕は、粒子径D50が15μmとなるまで行った。このようにして、第1フッ化黒鉛である表面フッ化度1.30の(CF1.10)nを得た。この第1フッ化黒鉛を用いたこと以外、実施例1Aと同様の手順で、実施例12Aの電池を作製した。
実施例12Aで行った湿式粉砕による処理回数を増加して、第2フッ化黒鉛を、粒子径D50が10μmとなるまで粉砕した。こうして、第1フッ化黒鉛である表面フッ化度1.30の(CF1.10)nを得た。この第1フッ化黒鉛を用いたこと以外、実施例1Aと同様の手順で、実施例13Aの電池を作製した。
実施例12Aで行った湿式粉砕による処理回数を増加して、第2フッ化黒鉛を、粒子径D50が3μmとなるまで粉砕した。こうして、第1フッ化黒鉛である表面フッ化度1.30の(CF1.10)nを得た。この第1フッ化黒鉛を用いたこと以外、実施例1と同様の手順で、実施例14Aの電池を作製した。
実施例12Aで行った湿式粉砕による処理回数を増加して、第2フッ化黒鉛を、粒子径D50が1μmとなるまで粉砕した。こうして、第1フッ化黒鉛である表面フッ化度1.30の(CF1.10)nを得た。この第1フッ化黒鉛を用いたこと以外、実施例1Aと同様の手順で、実施例15Aの電池を作製した。
実施例12Aで行った湿式粉砕による処理回数を増加して、第2フッ化黒鉛を、粒子径D50が0.5μmとなるまで粉砕した。こうして、第1フッ化黒鉛である表面フッ化度1.30の(CF1.10)nを得た。この第1フッ化黒鉛を用いたこと以外、実施例1Aと同様の手順で、実施例16Aの電池を作製した。
実施例12Aで行った湿式粉砕による処理回数を増加して、第2フッ化黒鉛を、粒子径D50が0.1μmとなるまで粉砕した。こうして、第1フッ化黒鉛である表面フッ化度1.30の(CF1.10)nを得た。この第1フッ化黒鉛を用いたこと以外、実施例1Aと同様の手順で、実施例17Aの電池を作製した。
(1)正極活物質の作製
粒子径D50が20μmの石油コークスを、フッ素ガス雰囲気中で加熱処理することにより、第2フッ化黒鉛(CF0.30)nを作製した。反応条件は、フッ素ガスの圧力を0.5気圧とし、加熱温度を400℃とし、反応時間を2時間とした。第2フッ化黒鉛のC−F結合に帰属されるC1sピークは、290.1eVであった。C−F結合に帰属されるF1sピークは、688.6eVであった。
得られた第1フッ化黒鉛、導電材であるアセチレンブラック、および結着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)を、固形分重量比84:8:8の比率で混合した。得られた混合物を80℃で乾燥後、粉砕し、目開き500μmの篩いを通過させた。このようにして得られた粉末を、ペレット成型金型の内部に充填し、油圧プレス機にて加圧圧縮し、直径16mmで厚み3mmの正極ペレット12を作製した。電池の組立てに使用する前に、正極ペレット12を150℃の熱風で5時間乾燥して、水分を除去した。
得られた正極を用いたこと以外、実施例1Aと同様の手順で実施例1Bの電池を作製した。
粒子径D50が30μmの石油コークスを、フッ素ガス雰囲気中で加熱処理することにより、粒子径D50が30μmの第2フッ化黒鉛(CF0.30)nを作製した。反応条件は、フッ素ガスの圧力を0.5気圧とし、加熱温度を400℃とし、反応時間を2.5時間とした。第2フッ化黒鉛のC−F結合に帰属されるC1sピークは、290.2eVであった。C−F結合に帰属されるF1sピークは、688.7eVであった。
粒子径D50が40μmの石油コークスを、フッ素ガス雰囲気中で加熱処理することにより、粒子径D50が40μmの第2フッ化黒鉛(CF0.30)nを作製した。反応条件は、フッ素ガスの圧力を0.5気圧とし、加熱温度を400℃とし、反応時間を3時間とした。第2フッ化黒鉛のC−F結合に帰属されるC1sピークは、290.2eVであった。C−F結合に帰属されるF1sピークは、688.7eVであった。
粒子径D50が45μmの石油コークスを、フッ素ガス雰囲気中で加熱処理することにより、粒子径D50が40μmの第2フッ化黒鉛(CF0.30)nを作製した。反応条件は、フッ素ガスの圧力を0.5気圧とし、加熱温度を400℃とし、反応時間を3.2時間とした。第2フッ化黒鉛のC−F結合に帰属されるC1sピークは、290.2eVであった。C−F結合に帰属されるF1sピークは、688.8eVであった。
実施例1Bで作製したD50が20μmの(CF0.30)nを、実施例1Bと同様の方法により、粒子径D50が10μmとなるまで乾式粉砕して、第1フッ化黒鉛(CF0.30)nを作製した。第1フッ化黒鉛の表面フッ化度は、1.50であった。また、第1フッ化黒鉛のC−F結合に帰属されるC1sピークは、289.7eVであった。C−F結合に帰属されるF1sピークは、688.3eVであった。この第1フッ化黒鉛を用いたこと以外、実施例1Bと同様の手順で、実施例5Bの電池を作製した。
実施例1Bで作製したD50が20μmの(CF0.30)nを、実施例1と同様の方法により、粒子径D50が3μmとなるまで乾式粉砕して、第1フッ化黒鉛(CF0.30)nを作製した。第1フッ化黒鉛の表面フッ化度は、1.35であった。また、第1フッ化黒鉛のC−F結合に帰属されるC1sピークは、289.5eVであった。C−F結合に帰属されるF1sピークは、688eVであった。この第1フッ化黒鉛を用いたこと以外、実施例1Bと同様の手順で、実施例6Bの電池を作製した。
実施例1Bで作製したD50が20μmの(CF0.30)nを、実施例1と同様の方法により、粒子径D50が1μmとなるまで乾式粉砕して、第1フッ化黒鉛(CF0.30)nを作製した。第1フッ化黒鉛の表面フッ化度は、1.20であった。また、第1フッ化黒鉛のC−F結合に帰属されるC1sピークは、289eVであった。C−F結合に帰属されるF1sピークは、687.5eVであった。この第1フッ化黒鉛を用いたこと以外、実施例1Bと同様の手順で、実施例7Bの電池を作製した。
実施例1Bで作製したD50が20μmの(CF0.30)nを、実施例1と同様の方法により、粒子径D50が0.5μmとなるまで乾式粉砕して、第1フッ化黒鉛(CF0.30)nを作製した。第1フッ化黒鉛の表面フッ化度は、1.15であった。また、第1フッ化黒鉛のC−F結合に帰属されるC1sピークは、288.5eVであった。C−F結合に帰属されるF1sピークは、687eVであった。この第1フッ化黒鉛を用いたこと以外、実施例1Bと同様の手順で、実施例8Bの電池を作製した。
実施例1Bで作製したD50が20μmの(CF0.30)nを、実施例1と同様の方法により、粒子径D50が0.1μmとなるまで乾式粉砕して、第1フッ化黒鉛(CF0.30)nを作製した。第1フッ化黒鉛の表面フッ化度は、1.05であった。また、第1フッ化黒鉛のC−F結合に帰属されるC1sピークは、288eVであった。C−F結合に帰属されるF1sピークは、686.5eVであった。この第1フッ化黒鉛を用いたこと以外、実施例1Bと同様の手順で、実施例9Bの電池を作製した。
実施例9Bで作製したD50が0.1μmの(CF0.30)nとイソプロピルアルコールとを、重量比20:80の割合で混合し、フッ化黒鉛をイソプロピルアルコールに分散させた。(株)マツボー製の湿式遠心分級機LC−1000を用いてフッ化黒鉛を分級し、粒子径D50が0.05μmの第1フッ化黒鉛(CF0.30)nを得た。第1フッ化黒鉛の表面フッ化度は、1.00であった。また、第1フッ化黒鉛のC−F結合に帰属されるC1sピークは、287.9eVであった。C−F結合に帰属されるF1sピークは、686.3eVであった。この第1フッ化黒鉛を用いたこと以外、実施例1Bと同様の手順で、実施例10Bの電池を作製した。
粒子径D50が20μmの石油コークスを、フッ素ガス雰囲気中で加熱処理することにより、粒子径D50が20μmの第2フッ化黒鉛(CF1.20)nを作製した。反応条件は、フッ素ガスの圧力を0.5気圧とし、加熱温度を400℃とし、反応時間を16時間とした。第2フッ化黒鉛のC−F結合に帰属されるC1sピークは、290.3eVであった。C−F結合に帰属されるF1sピークは、688.8eVであった。
粒子径D50が20μmの石油コークスを、フッ素ガス雰囲気中で加熱処理することにより、粒子径D50が20μmの第2フッ化黒鉛(CF1.15)nを作製した。反応条件は、フッ素ガスの圧力を0.5気圧とし、加熱温度を400℃とし、反応時間を14時間とした。第2フッ化黒鉛のC−F結合に帰属されるC1sピークは、290.2eVであった。C−F結合に帰属されるF1sピークは、688.7eVであった。
粒子径D50が20μmの石油コークスを、フッ素ガス雰囲気中で加熱処理することにより、粒子径D50が20μmの第2フッ化黒鉛(CF1.10)nを作製した。反応条件は、フッ素ガスの圧力を0.5気圧とし、加熱温度を400℃とし、反応時間を11時間とした。第2フッ化黒鉛のC−F結合に帰属されるC1sピークは、290.2eVであった。C−F結合に帰属されるF1sピークは、688.6eVであった。
粒子径D50が20μmの石油コークスを、フッ素ガス雰囲気中で加熱処理することにより、粒子径D50が20μmの第2フッ化黒鉛(CF0.90)nを作製した。反応条件は、フッ素ガスの圧力を0.5気圧とし、加熱温度を400℃とし、反応時間を9時間とした。第2フッ化黒鉛のC−F結合に帰属されるC1sピークは、290.2eVであった。C−F結合に帰属されるF1sピークは、688.6eVであった。
粒子径D50が20μmの石油コークスを、フッ素ガス雰囲気中で加熱処理することにより、粒子径D50が20μmの第2フッ化黒鉛(CF0.50)nを作製した。反応条件は、フッ素ガスの圧力を0.5気圧とし、加熱温度を400℃とし、反応時間を4.5時間とした。第2フッ化黒鉛のC−F結合に帰属されるC1sピークは、290.1eVであった。C−F結合に帰属されるF1sピークは、688.6eVであった。
粒子径D50が20μmの石油コークスを、フッ素ガス雰囲気中で加熱処理することにより、粒子径D50が20μmの第2フッ化黒鉛(CF0.40)nを作製した。反応条件は、フッ素ガスの圧力を1気圧とし、加熱温度を400℃とし、反応時間を4時間とした。第2フッ化黒鉛のC−F結合に帰属されるC1sピークは、290.1eVであった。C−F結合に帰属されるF1sピークは、688.5eVであった。
(1)正極活物質の作製
平均粒子径D50が13μmの石油コークスを、フッ素ガス雰囲気中で加熱処理して、フッ化黒鉛(CF1.0)nの第2フッ化黒鉛を作製した。反応条件は、フッ素ガスの圧力を0.5気圧とし、加熱温度を400℃とし、反応時間を10時間とした。上記で得られた第2フッ化黒鉛を、(株)アイシンナノテクノロジーズ製のナノジェットマイザーNJ−100を用いて乾式粉砕し、平均粒子径D50が0.2μmの第1フッ化黒鉛を作製した。第1フッ化黒鉛および第2フッ化黒鉛の表面フッ化度は、それぞれ1.00および1.85であった。上記で得られた第1フッ化黒鉛および第2フッ化黒鉛を重量比50:50で混合し、正極活物質とした。
上記で得られた正極活物質、導電材であるアセチレンブラック、および結着剤であるダイキン工業(株)製のネオフロンND−1を、固形分重量比85:8:7の割合で混合し、正極合剤を得た。この正極合剤を70℃で乾燥した後、粉砕し、目開き500μmの篩いに通過させ、粉末を得た。この粉末をペレット成型金型に充填し、油圧プレス機にて加圧圧縮し、ペレット状の正極12(直径16mm、厚み3mm)を作製した。電池の組立て前に、正極12を250℃の熱風で5時間乾燥して、水分を除去した。
得られた正極を用いたこと以外、実施例1Aと同様の手順で実施例1Cの電池を作製した。
実施例1Cの平均粒子径D50が13μmの第2フッ化黒鉛を乾式粉砕し、平均粒子径D50が0.5μmの第1フッ化黒鉛を作製した。第1フッ化黒鉛の表面フッ化度は、1.05であった。この第1フッ化黒鉛を用いた以外、実施例1Cと同様の方法により電池を作製した。
実施例1Cの平均粒子径D50が13μmの第2フッ化黒鉛を乾式粉砕し、平均粒子径D50が1μmの第1フッ化黒鉛を作製した。第1フッ化黒鉛の表面フッ化度は、1.20であった。この第1フッ化黒鉛を用いた以外、実施例1Cと同様の方法により電池を作製した。
実施例1Cの平均粒子径D50が13μmの第2フッ化黒鉛を乾式粉砕し、平均粒子径D50が3μmの第1フッ化黒鉛を作製した。第1フッ化黒鉛の表面フッ化度は、1.35であった。この第1フッ化黒鉛を用いた以外、実施例1Cと同様の方法により電池を作製した。
実施例1Cの平均粒子径D50が13μmの第2フッ化黒鉛を乾式粉砕し、平均粒子径D50が7μmの第1フッ化黒鉛を作製した。第1フッ化黒鉛の表面フッ化度は、1.40であった。この第1フッ化黒鉛を用いた以外、実施例1Cと同様の方法により電池を作製した。
平均粒子径D50が10μmの石油コークスを、フッ素ガス雰囲気中で加熱処理して、フッ化黒鉛(CF1.0)nの第2フッ化黒鉛を作製した。反応条件は、フッ素ガスの圧力を0.5気圧とし、加熱温度を400℃とし、反応時間を9時間とした。この第2フッ化黒鉛を用いた以外、実施例3Cと同様の方法により電池を作製した。第1フッ化黒鉛および第2フッ化黒鉛の表面フッ化度は、それぞれ1.20および1.85であった。
平均粒子径D50が30μmの石油コークスを、フッ素ガス雰囲気中で加熱処理して、フッ化黒鉛(CF1.0)nの第2フッ化黒鉛を作製した。反応条件は、フッ素ガスの圧力を0.5気圧とし、加熱温度を400℃とし、反応時間を12時間とした。この第2フッ化黒鉛を用いた以外、実施例3Cと同様の方法により電池を作製した。第1フッ化黒鉛および第2フッ化黒鉛の表面フッ化度は、それぞれ1.20および1.90であった。
第1フッ化黒鉛および第2フッ化黒鉛の混合重量比を10:90とした以外、実施例3Cと同様の方法により電池を作製した。
第1フッ化黒鉛および第2フッ化黒鉛の混合重量比を25:75とした以外、実施例3Cと同様の方法により電池を作製した。
第1フッ化黒鉛および第2フッ化黒鉛の混合重量比を40:60とした以外、実施例3Cと同様の方法により電池を作製した。
第1フッ化黒鉛および第2フッ化黒鉛の混合重量比を60:40とした以外、実施例3Cと同様の方法により電池を作製した。
第1フッ化黒鉛および第2フッ化黒鉛の混合重量比を75:25とした以外、実施例3Cと同様の方法により電池を作製した。
第1フッ化黒鉛および第2フッ化黒鉛の混合重量比を90:10とした以外、実施例3Cと同様の方法により電池を作製した。
実施例1Cの平均粒子径D50が13μmの第2フッ化黒鉛を、平均粒子径D50が0.1μmとなるまで乾式粉砕して、第1フッ化黒鉛を作製した。第1フッ化黒鉛の表面フッ化度は、1.05であった。この第1フッ化黒鉛を用いた以外、実施例1Cと同様の方法により電池を作製した。
実施例1Cの平均粒子径D50が13μmの第2フッ化黒鉛を、平均粒子径D50が9μmとなるまで乾式粉砕して、第1フッ化黒鉛を作製した。第1フッ化黒鉛の表面フッ化度は、1.45であった。この第1フッ化黒鉛を用いた以外、実施例1Cと同様の方法により電池を作製した。
平均粒子径D50が5μmの石油コークスを、フッ素ガス雰囲気中で加熱処理して、フッ化黒鉛(CF1.0)nの第2フッ化黒鉛を作製した。反応条件は、フッ素ガスの圧力を0.5気圧とし、加熱温度を400℃とし、反応時間を8時間とした。この第2フッ化黒鉛を用いた以外、実施例3Cと同様の方法により電池を作製した。第1フッ化黒鉛および第2フッ化黒鉛の表面フッ化度は、それぞれ1.20および1.83であった。
平均粒子径D50が40μmの石油コークスを、フッ素ガス雰囲気中で加熱処理して、フッ化黒鉛(CF1.0)nの第2フッ化黒鉛を作製した。反応条件は、フッ素ガスの圧力を0.5気圧とし、加熱温度を400℃とし、反応時間を16時間とした。この第2フッ化黒鉛を用いた以外、実施例3Cと同様の方法により電池を作製した。第1フッ化黒鉛および第2フッ化黒鉛の表面フッ化度は、それぞれ1.20および1.90であった。
実施例1Aで作製した第2フッ化黒鉛(表面フッ化度1.80の(CF1.15)n)だけを正極活物質としたこと以外、実施例1Aと同様の手順で、比較例1Aの電池を作製した。
実施例1Aで行った紫外線照射の時間を24時間として、表面フッ化度0.90の(CF0.76)nを得た。このフッ化黒鉛だけを用いたこと以外、実施例1Aと同様の手順で、比較例2Aの電池を作製した。
実施例1Bで作製した第2フッ化黒鉛(粒子径D50が20μmの(CF0.30)n)だけを正極活物質としたこと以外、実施例1Bと同様の手順で、比較例1Bの電池を作製した。第2フッ化黒鉛の表面フッ化度は、1.85であった。
実施例2Bで作製した第2フッ化黒鉛(粒子径D50が30μmの(CF0.30)n)だけを正極活物質としたこと以外、実施例1Bと同様の手順で、比較例2Bの電池を作製した。第2フッ化黒鉛の表面フッ化度は、1.88であった。
実施例3Bで作製した第2フッ化黒鉛(粒子径D50が40μmの(CF0.30)n)だけを正極活物質としたこと以外、実施例1Bと同様の手順で、比較例3Bの電池を作製した。第2フッ化黒鉛の表面フッ化度は、1.90であった。
実施例4Bで作製した第2フッ化黒鉛(粒子径D50が45μmの(CF0.30)n)だけを正極活物質としたこと以外、実施例1Bと同様の手順で、比較例4Bの電池を作製した。第2フッ化黒鉛の表面フッ化度は、1.95であった。
粒子径D50が12μmの石油コークスを、フッ素ガス雰囲気中で加熱処理することにより、粒子径D50が12μmのフッ化黒鉛(CF0.30)nを作製した。反応条件は、フッ素ガスの圧力を0.5気圧とし、加熱温度を400℃とし、反応時間を1.5時間とした。フッ化黒鉛のC−F結合に帰属されるC1sピークは、290.2eVであった。C−F結合に帰属されるF1sピークは、688.7eVであった。このフッ化黒鉛を正極活物質としたこと以外、実施例1Bと同様の手順で、比較例5Bの電池を作製した。このフッ化黒鉛の表面フッ化度は、1.85であった。
実施例12Bで作製した第2フッ化黒鉛(粒子径D50が20μmの(CF1.15)n)だけを正極活物質としたこと以外、実施例1Bと同様の手順で、比較例6Bの電池を作製した。第2フッ化黒鉛の表面フッ化度は、1.85であった。
実施例13Bで作製した第2フッ化黒鉛(粒子径D50が20μmの(CF1.10)n)だけを正極活物質としたこと以外、実施例1Bと同様の手順で、比較例7Bの電池を作製した。第2フッ化黒鉛の表面フッ化度は、1.85であった。
実施例14Bで作製した第2フッ化黒鉛(粒子径D50が20μmの(CF0.90)n)だけを正極活物質としたこと以外、実施例1Bと同様の手順で、比較例8Bの電池を作製した。第2フッ化黒鉛の表面フッ化度は、1.85であった。
実施例16Bで作製した第2フッ化黒鉛(粒子径D50が20μmの(CF0.40)n)だけを正極活物質としたこと以外、実施例1Bと同様の手順で、比較例9Bの電池を作製した。第2フッ化黒鉛の表面フッ化度は、1.85であった。
第2フッ化黒鉛を正極活物質に用いずに、実施例1Cの平均粒子径D50が0.2μmの第1フッ化黒鉛のみを正極活物質に用いた以外、実施例1Cと同様の方法により電池を作製した。
第2フッ化黒鉛を正極活物質に用いずに、実施例2Cの平均粒子径D50が0.5μmの第1フッ化黒鉛のみを正極活物質に用いた以外、実施例1Cと同様の方法により電池を作製した。
第2フッ化黒鉛を正極活物質に用いずに、実施例3Cの平均粒子径D50が1μmの第1フッ化黒鉛のみを正極活物質に用いた以外、実施例1Cと同様の方法により電池を作製した。
第2フッ化黒鉛を正極活物質に用いずに、実施例4Cの平均粒子径D50が3μmの第1フッ化黒鉛のみを正極活物質に用いた以外、実施例1Cと同様の方法により電池を作製した。
第2フッ化黒鉛を正極活物質に用いずに、実施例5Cの平均粒子径D50が7μmの第1フッ化黒鉛のみを正極活物質に用いた以外、実施例1Cと同様の方法により電池を作製した。
第1フッ化黒鉛を正極活物質に用いずに、実施例6Cの平均粒子径D50が10μmの第2フッ化黒鉛のみを正極活物質に用いた以外、実施例1Cと同様の方法により電池を作製した。 第2フッ化黒鉛の表面フッ化度は、1.85であった。
第1フッ化黒鉛を正極活物質に用いずに、実施例3Cの平均粒子径D50が13μmの第2フッ化黒鉛のみを正極活物質に用いた以外、実施例1Cと同様の方法により電池を作製した。第2フッ化黒鉛の表面フッ化度は、1.85であった。
第1フッ化黒鉛を正極活物質に用いずに、実施例7Cの平均粒子径D50が30μmの第2フッ化黒鉛のみを正極活物質に用いた以外、実施例1Cと同様の方法により電池を作製した。第2フッ化黒鉛の表面フッ化度は、1.88であった。
上記の実施例1A〜17Aおよび比較例1A〜2Aで用いたフッ化黒鉛の各物性値を表1に示す。なお、比較例1Aについては、第2フッ化黒鉛の物性値を示す。
上記の実施例1B〜16Bおよび比較例1B〜9Bで用いたフッ化黒鉛の各物性値を表2に示す。なお、比較例1B〜4Bおよび6B〜9Bについては、第2フッ化黒鉛の物性値を示す。
上記の実施例1C〜22Cおよび比較例1C〜3Cで用いたフッ化黒鉛の各物性値を表3および表5に示す。実施例1C〜22Cおよび比較例1C〜3Cにおける第1フッ化黒鉛および第2フッ化黒鉛の粒子径D50および混合重量比を表4および表6に示す。なお、比較例1C〜3Cについては、第2フッ化黒鉛の物性値を示す。
(電池の開回路電圧(OCV)および内部抵抗)
以上のようにして得られた実施例1A〜17A、1B〜16B、1C〜22Cならびに比較例1A〜2A、1B〜9Bおよび1C〜3Cの電池の内部抵抗(1kHzでのインピーダンス)を測定した。結果をそれぞれ表7、表8、表9および表10に示す。
電池のOCVは、直流電圧計を用いて測定した。電池の内部抵抗は、交流インピーダンス法を用いて測定した。交流インピーダンス測定では、鶴賀電機(株)製の抵抗計MODEL3566を用い、交流4端子法によって1kHzでのインピーダンスの値を測定した。そして、各電池のOCVおよび内部抵抗の値を、5個の電池の平均値として求めた。結果を表7〜表10に示す。
内部抵抗の測定後、低温パルス放電特性について、以下のような評価を実施した。
実施例1A〜17A、比較例1A〜2A、実施例1B〜16Bおよび比較例1B〜9Bについては、−40℃において、10mAで100m秒間の放電が1分に1回行われるパターンを、300時間繰り返した。300時間中のパルス放電での最低電圧をその電池のパルス放電電圧とした。各実施例および比較例について、5個ずつの電池を放電し、その平均値を、パルス放電電圧とした。
実施例1C〜22Cおよび比較例1C〜3Cについては、−40℃において、10mAで20m秒間の放電が1分に1回行われるパターンを、300時間繰り返したこと以外、実施例AおよびBと同様に評価を実施した。結果を表7〜表10に示す。
高温保存特性について、以下のような評価を実施した。
実施例1A〜17A、比較例1A〜2A、実施例1B〜16Bおよび比較例1B〜9Bについては、120℃の恒温槽内に、電池を10日間保存し、保存後の電池の内部抵抗(1kHzでのインピーダンス)を測定した。各実施例および比較例について、5個ずつの電池の高温保存試験を行い、その平均値を、内部抵抗値とした。
実施例1C〜22Cおよび比較例1C〜3Cについては、125℃の恒温槽を用いたこと以外、実施例AおよびBと同様に評価を実施した。結果を表7〜表10に示す。
実施例4B、実施例11Bおよび比較例1Bの電池を、20℃の環境下、電流500μAで連続放電して放電特性の比較を行った。図2は、フッ化黒鉛の利用率と電圧との関係を示した図である。
同様に、x値が0.30のフッ化黒鉛を用いた実施例11Aの電池のパルス放電電圧と比較して、実施例3A、7A〜10Aの電池のパルス放電電圧は高い。なお、実施例11Aの電池において、パルス放電での最低電圧は、放電初期に生じた。これは、x値が低いフッ化黒鉛は表面に遊離しやすいフッ素原子を有しており、そのフッ素原子が非水電解液に溶出して、負極リチウムと反応して、負極リチウム表面に抵抗被膜が形成されて、電池の内部抵抗が上昇したのが原因と考えられる。
また、紫外線照射等の外部エネルギーを加えることで表面の炭素−フッ素結合を切断して表面フッ化度を低下する方法では、エネルギーが過剰に加えられることで内部の炭素−フッ素結合まで切断され、x値の低下が生じた。
なお、全細孔容積を1.0cm3/gより大きくしたフッ化黒鉛を用いると、非水電解
液の吸収による正極の膨潤が著しく大きくなり、電極が割れる現象が観察された。
従って、低温環境における大電流パルス放電特性の向上に対しては、フッ化黒鉛の全細孔容積を0.05〜1.0cm3/gの範囲とするのが最適である。
実施例1B〜4Bの電池に用いた第1フッ化黒鉛は、それぞれ、比較例1B〜4Bの電池に用いたフッ化黒鉛を乾式粉砕したものである。各実施例における第1フッ化黒鉛のC−F結合に帰属されるC1sピークは290eV以下の範囲に存在し、C−F結合に帰属されるF1sピークは688.5eV以下の範囲に存在する。
実施例1B〜4Bの電池を高温保存後、分解し、負極のリチウムをジメチルカーボネート(DMC)で洗浄し、その表面を、XPSを用いて深さ方向に対して分析した。
その結果、実施例1B〜3Bの電池における水素ガスの発生量は0.1mL以下であった。一方、実施例4Bの電池の水素ガスの発生量は、0.5mLであり、実施例1B〜3Bの電池のそれよりも多かった。高温保存によって水素ガスの発生量が多くなるメカニズムは明らかではないが、Li−Fの被膜生成反応に付随して、水素ガスが発生していると推測される。
実施例5B〜10Bの電池では、フッ化黒鉛の粒子径が小さくなるのに伴い、結合力の弱いC−F結合が、フッ化黒鉛の表面に露出したと考えられる。これにより、表面のC−F結合の結合力が低下したため、パルス放電電圧が高くなっていた。ここでは、フッ化黒鉛に対して乾式粉砕を行っているため、粒子径D50を小さくしてもフッ化度の低下が起こらず、表面のC−F結合の結合力のみが低下したと考えられる。第2フッ化黒鉛の内部には、C−F結合が完全な共有結合になる前の遷移状態の部分が、フッ化黒鉛の表面よりも多く存在する。第2フッ化黒鉛を粉砕することで、遷移状態にあるC−F結合が表面に露出されたため、C−F結合に帰属されるC1sピークおよびC−F結合に帰属されるF1sピークが低エネルギー側へシフトしたと考えられる。
実施例4Bの電池は、放電初期に電圧の極小点が現れず、比較例1Bよりも放電電圧が高くなった。
実施例11Bの電池は、放電初期に電圧の極小点が現れず、実施例2Bよりも放電電圧が更に高くなり、フッ化黒鉛の利用率もより高くなった。以上の結果から、粒子径D50を小さくすることで、フッ化黒鉛の利用率が更に向上することがわかった。
実施例1C〜5Cの電池に用いた正極活物質は、実施例18C〜22Cの電池に用いた第1フッ化黒鉛、および比較例2Cの電池に用いた平均粒子径D50が13μmの第2フッ化黒鉛を重量比50:50で混合したものと同じである。これらの電池のパルス放電電圧は、微粉末のみを用いた実施例18C〜22Cの電池のパルス放電電圧に非常に近い。
以上の結果から、正極活物質に、放電開始直後からリチウムとの反応性の高い第1フッ化黒鉛と、放電の進行に伴って導電性が増大する第2フッ化黒鉛とを混合して用いることによって、低温での大電流パルス放電特性がさらに向上することがわかった。
実施例1C〜5Cの電池の比較から、第1フッ化黒鉛の平均粒子径D50が小さいほど、パルス放電電圧が高くなる傾向を示すことがわかった。これは、第1フッ化黒鉛の表面積が大きいほど、フッ化黒鉛のリチウムとの反応性が高まったためであると考えられる。
また、実施例3Cおよび8C〜13Cの電池を比較すると、実施例8Cの電池はパルス放電電圧の向上効果が小さく、実施例13Cの電池は高温保存後に比較的高い内部抵抗を示した。従って、第1フッ化黒鉛と第2フッ化黒鉛とは25:75〜75:25の重量比で混合するのが更に好ましいことがわかった。
実施例3C、6C、および7Cの電池が、比較例1C〜3Cの電池よりもパルス放電電圧が高い理由の一つには、実施例3C、6C、および7Cの電池のOCVが高いことが考えられる。第2フッ化黒鉛の電位よりも高い微粉末を混ぜることにより、粗粉末を単独で用いた場合よりもパルス放電電圧を高くすることができる。
11 電池ケース
12 正極
13 セパレータ
14 負極
15 絶縁ガスケット
16 封口板
Claims (14)
- 正極活物質を含み、前記正極活物質は、第1フッ化黒鉛を含み、前記第1フッ化黒鉛は、表面におけるフッ素原子と炭素原子との濃度比([F]/[C])が、1.0以上、1.8未満のフッ化黒鉛である、正極と、
負極活物質を含み、前記負極活物質は、金属リチウムまたはリチウム合金を含む、負極と、
前記正極と前記負極との間に配されるセパレータと、
非水電解液と、を備えた非水電解液電池。 - 前記第1フッ化黒鉛が、X線光電子分光法において、290eV以下の範囲に、C−F結合に帰属されるC1sピークを有し、688.5eV以下の範囲に、C−F結合に帰属されるF1sピークを有する、請求項1記載の非水電解液電池。
- 前記正極活物質は、更に、表面におけるフッ素原子と炭素原子との濃度比([F]/[C])が1.8より大きい第2フッ化黒鉛を含み、前記第1フッ化黒鉛と前記第2フッ化黒鉛とが混在している、請求項1または2記載の非水電解液電池。
- 前記第1フッ化黒鉛が、表面におけるフッ素原子と炭素原子との濃度比([F]/[C])が1.8より大きい第2フッ化黒鉛を粉砕処理することによって得られたものである、請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解液電池。
- 前記第2フッ化黒鉛が、X線光電子分光法において、290eVより大きい範囲に、C−F結合に帰属されるC1sピークを有し、688.5eVより大きい範囲に、C−F結合に帰属されるF1sピークを有する、請求項3または4記載の非水電解液電池。
- 前記第1フッ化黒鉛の全細孔容積が、0.05cm3/g以上、1.0cm3/g以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の非水電解液電池。
- 前記第1フッ化黒鉛は、体積累積粒度分布における体積分率50%のときの粒子径D50が、0.1〜10μmである、請求項1〜6のいずれかに記載の非水電解液電池。
- 前記第1フッ化黒鉛が、式(1):(CFx)n
(式中、0.4≦x≦1.15であり、nは1以上の整数である)
で表される、請求項1〜7のいずれかに記載の非水電解液電池。 - 前記C−F結合に帰属されるC1sピークが、288〜290eVの範囲に存在し、前記C−F結合に帰属されるF1sピークが、686.5〜688.5eVの範囲に存在する、請求項2記載の非水電解液電池。
- 前記第1フッ化黒鉛が、X線光電子分光法において、更に、530〜534eVの範囲に、C−O結合に帰属されるO1sピークを有する、請求項2記載の非水電解液電池。
- 前記第1フッ化黒鉛は、体積累積粒度分布における体積分率50%のときの粒子径D50が、0.2μm以上、7μm以下である、請求項1〜10のいずれかに記載の非水電解液電池。
- 前記第2フッ化黒鉛は、体積累積粒度分布における体積分率50%のときの粒子径D50が、10μm以上、30μm以下である、請求項3〜5のいずれかに記載の非水電解液電池。
- 前記正極中における前記第1フッ化黒鉛と前記第2フッ化黒鉛との混合重量比は、10:90〜90:10である、請求項3記載の非水電解液電池。
- 前記第1フッ化黒鉛は、前記第2フッ化黒鉛よりも電位が高い、請求項3〜5のいずれかに記載の非水電解液電池。
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