JP4510551B2 - 生分解性難燃性不織布及びフィルター - Google Patents
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Description
(i) 非ハロゲンリン酸エステル化合物を含むポリ乳酸エマルジョンを用いて生分解性の繊維または不織布を難燃処理してなる生分解性難燃性不織布であって、不織布構成繊維100重量部に対して非ハロゲンリン酸エステルを15〜50重量部使用して難燃処理されたものは、この比率で非ハロゲンリン酸エステルを含むことにより優れた難燃性を有するとともに、形態が安定しており、フィルターなどとして水平に設置して使用する場合にも変形し難い。また、この生分解性難燃性不織布は、不織布、難燃剤、及びバインダーである樹脂の全てが生分解性であるため、生分解性に優れる。
(ii) 特に、生分解性不織布として、レーヨン、羊毛、ポリ乳酸、水溶性ポリビニルアルコールを主構成繊維とするものを用いることにより、一層良好な難燃性を有する不織布となる。
(iii) 非ハロゲンリン酸エステル化合物を含む溶液用いて生分解性の不織布を難燃処理してなる生分解性難燃性不織布も同様の効果が得られる。
(iv)生分解性繊維を構成繊維とするウェブ又はこれを複数枚重ねたラップに非ハロゲンリン酸エステル化合物を含む溶液を塗布、噴霧した後、又は生分解性繊維を構成繊維とするウェブ若しくはこれを複数枚重ねたラップを非ハロゲンリン酸エステル化合物を含む溶液に浸漬した後、乾燥することによって繊維間を結合して不織布を得ることにより行われている項8に記載の生分解性難燃性不織布。
不織布を構成する繊維
短繊維不織布は、一般的に、合成繊維、天然繊維、半合成繊維または再生繊維などの繊維を、絡合させたり、結合剤の使用や熱融着により互いに接着させたりして作られる。
不織布
短繊維不織布は、通常、ウェブ形成と繊維間接着の2工程で製造される。本発明における不織布の繊維長さは特に限定されないが、例えば15〜100mm程度の短繊維よりシート状のウェブを作成すればよい。次いで、ウェブを、用途に応じた枚数、通常4〜200枚程度重ねてラップを形成する。ラップの目付量は、用途により異なるが、10〜2000g/m2程度が好ましい。
難燃処理
本発明において、生分解性不織布の難燃処理は、以下の(i)〜(iv)のいずれかの方法で行う。
(i) ポリ乳酸エマルジョン中に非ハロゲンリン酸エステル化合物を含む難燃性付与エマルジョンを接着剤(バインダー)として用いて樹脂接着法により繊維間を接着させて不織布を作製する方法。
(ii) 生分解性不織布に、ポリ乳酸エマルジョン中に非ハロゲンリン酸エステル化合物を含む難燃性付与エマルジョンを塗布、噴霧した後乾燥するか、又はこのエマルジョンに生分解性不織布を浸漬した後乾燥する方法。
(iii) 生分解性不織布に、非ハロゲンリン酸エステル化合物を含む溶液からなる難燃性付与溶液を塗布、噴霧した後、乾燥するか、又はこの溶液に生分解性不織布を浸漬した後、乾燥する方法。
(iv) 生分解性繊維を用いたウェブ若しくはこれを複数枚重ねたラップに、上記難燃性付与溶液を塗布、噴霧し、乾燥することによって繊維間を結合させるか、又はこの溶液に前記のウェブ若しくはこれを複数枚重ねたラップを浸漬し、乾燥することによって繊維間を結合させることにより、不織布にする方法。この場合、使用する生分解性繊維の一部を低融点生分解性繊維にすればよい。
難燃性付与エマルジョン
非ハロゲンリン酸エステル化合物を含むポリ乳酸エマルジョン(難燃性付与エマルジョン)は、媒体である水中に、バインダーとしてのポリ乳酸、難燃剤としての非ハロゲンリン酸エステル、その他の添加剤を分散させたエマルジョンである。
<ポリ乳酸>
ポリ乳酸の分子量は、エマルジョンを調製できる範囲であれば良い。
<非ハロゲンリン酸エステル化合物>
本発明においては、生分解され易い非ハロゲンリン酸エステル化合物を難燃剤として使用する。
(i)バインダーを用いた繊維間接着
バインダーを用いて繊維間を接着する場合、通常、繊維をシート状にしたラップにバインダーと難燃剤の混合液を樹脂接着し、乾燥することにより不織布を作成する。本発明においては、バインダーとして前述した難燃性付与エマルジョンを、繊維に対するポリ乳酸及び非ハロゲンリン酸エステルの使用量が前述した範囲になるようにして使用する。その他は、常法に従い、不織布を作製すればよい。
前述した公知の不織布を作製した後、上記の難燃性付与エマルジョンを塗布若しくは噴霧するか、またはこのエマルジョンに不織布を浸漬した後、乾燥する。塗布には、グラビアなどの印刷や、泡加工も含まれる。
難燃性付与溶液
難燃性付与溶液は、非ハロゲンリン酸エステルを水、有機溶媒、又はこれらの混合液中に溶解させた溶液である。本発明の生分解性難燃性不織布は、この溶液を用いて生分解性不織布を難燃処理したものであってもよい。
前述した公知の不織布を作製した後、上記の難燃性付与溶液を塗布若しくは噴霧するか、またはこの溶液に不織布を浸漬する。難燃性付与溶液の繊維に対する使用量は、前述した通りである。乾燥は、自然乾燥によることもできるが、エマルジョンを使用する場合と同様の温度、時間で乾燥させてもよい。
前述した公知の方法でウェブ又はさらにラップを作製した後、上記の難燃性付与溶液を塗布若しくは噴霧するか、または上記の難燃性付与溶液にウェブまたはラップを浸漬し、乾燥することにより繊維間を結合して不織布を作製することもできる。難燃性付与溶液の使用量は、前述した通りである。乾燥は、自然乾燥によることもできるが、エマルジョンを使用する場合と同様の温度、時間で乾燥させてもよい。
フィルター
本発明のフィルターは、前述した本発明の不織布を用いたフィルターである。フィルターとしては、エアフィルターのような気体フィルター又は液体フィルターが挙げられる。本発明の生分解性難燃性不織布は、エアフィルター、特に排気口フィルターとして好適に使用できる。
実施例
以下、本発明を実施例及び試験例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特に断りのない限り、%は重量%を指し、部は重量部を指す。
<材料>
実施例で使用した材料を以下に示す。
(1)生地
羊毛/ポリ乳酸/ビニロン(重量比)=45:30:25の組成のラップを使用した。ラップを形成する繊維の羊毛は株式会社トーメン社のウールブロークントップ60番手、ポリ乳酸 はユニチカ株式会社製の商品名「テラマックPL−80」、ビニロンは株式会社クラレ製の商品名「クラロンK−II WN8」を使用した。
(2)バインダー成分
ポリ乳酸エマルジョンとして、第一工業製薬株式会社製、商品名「プラセマL110」(不揮発分50%)を使用した。
(3)難燃剤成分
大八化学株式会社製、商品名「トリクレジルホスフェート(TCP)」を使用した。
<難燃性試験>
実施例及び比較例で得られた各不織布について、JIS L1091 A−1法 区分3に準じて、以下の(a)〜(f)の手順で難燃性を評価した。
(a) サンプルより約350mm×250mmの試験片を、長さ方向と幅方向とに各3枚ずつカットする。
(b) カットした試験片を乾燥剤入りのデシケータに入れて2時間放置する。
(c) 試験片を1枚ずつ取り出し、45度傾斜のフレームに弛みのないように張り付ける。
(d) 予めガスバーナーに火を付け、空気穴を閉鎖して炎の高さを4.5cmに調整しておく。
(e) ガスバーナーを所定の位置に置き試験片を1分間加熱する。
(f) 残炎時間(加熱終了時から、試験片が炎をあげて燃え続ける時間)、残じん時間(加熱終了時から、試験片が無炎燃焼を停止するまでの時間)、燃焼長さ、及び炭化面積を測定する。
・残炎時間 :3秒間以下
・残じん時間:5秒間以下
・燃焼長さ :20cm以下
・炭化面積 :30cm2以下
燃焼試験の合否は、炭化面積が10cm2以下である場合を「非常に良好:◎」とし、10cm2 を超えて20cm2以下である場合を「良好:○」とし、20cm2 を超えて30cm2以下である場合を「やや不良:△」とし、30cm2 を超える場合を「不良:×」とした。
<形態安定性試験>
本発明の不織布を、例えば台所のレンジフードのフィルターとして用いる場合に、使用中に下方に垂れてくるか否かを調べるために、実施例及び比較例で得られた各不織布について、以下の(a)〜(g)の手順で形態安定性を簡易評価した。
(a) サンプルより50mm×200mmの試験片をカットし、その試験片の中央に100mmの間隔で2本の線A及びBを入れる。
(b) 内径105mm、内容量1000mlのビーカーに水200mlを入れる。
(c) 上記(a)の試験片をビーカーの上部の解放部分にゴムバンド等で固定する。
(d) ビーカーに固定した試験片の中央に、6mm角、長さ5cm、重さ4.9gのアルミ棒の重しを乗せる。
(e) 試験片を固定したビーカーをガスレンジで加熱し、2分間沸騰後、火を止めて1分間そのまま放置する。
(f) テスト後の試験片をビーカーから取り外し、2本の線AとBとの間隔Cをmm単位まで測定する。
(g) 形態安定率を下記の式により算出する。
上記で求めた形態安定率より下記の評価基準にてフィルターとして使用した場合の形態安定性を評価した。
○ 形態安定率6〜12%未満、使用して問題ない
× 形態安定率12%以上、使用できない
<上市可否>
難燃性試験及び形態安定性試験の結果を総合勘案して、上市可能であるか否かを以下のように評価した。
○問題ない
×商品として販売不可
Claims (9)
- 非ハロゲンリン酸エステル化合物を含むポリ乳酸エマルジョンを用いて生分解性の繊維または不織布を難燃処理してなる生分解性難燃性不織布であって、不織布構成繊維100重量部に対して非ハロゲンリン酸エステル化合物を15〜50重量部使用して難燃処理されたものである生分解性難燃性不織布。
- 難燃処理が、非ハロゲンリン酸エステル化合物を含むポリ乳酸エマルジョンを用いて生分解性繊維間を接着することにより行われている請求項1に記載の生分解性難燃性不織布。
- 難燃処理が、生分解性繊維を構成繊維とするウェブ又はこれを複数枚重ねたラップに非ハロゲンリン酸エステル化合物を含むポリ乳酸エマルジョンを塗布、噴霧した後、又は生分解性繊維を構成繊維とするウェブ若しくはこれを複数枚重ねたラップを非ハロゲンリン酸エステル化合物を含むポリ乳酸エマルジョンに浸漬した後、乾燥により繊維間を結合して不織布を得ることにより行われている請求項2に記載の生分解性難燃性不織布。
- 難燃処理が、生分解性不織布に非ハロゲンリン酸エステル化合物を含むポリ乳酸エマルジョンを塗布、噴霧した後、又は生分解性不織布を非ハロゲンリン酸エステル化合物を含むポリ乳酸エマルジョンに浸漬した後、乾燥することにより行われている請求項1に記載の生分解性難燃性不織布。
- 生分解性不織布が、レーヨン、綿、羊毛、ポリ乳酸、水溶性ポリビニルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維を用いた不織布である請求項1〜4のいずれかに記載の生分解性難燃性不織布。
- 生分解性不織布が、レーヨン、綿、羊毛、ポリ乳酸、水溶性ポリビニルアルコールからなる群より選ばれる2種以上の繊維を用いた不織布である請求項1〜5のいずれかに記載の生分解性難燃性不織布。
- 非ハロゲンリン酸エステル化合物が、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシリルジフェニルホスフェート、ナフチルジフェニルホスフェート、レゾルシンビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシンビス(ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1〜6のいずれかに記載の生分解性難燃性不織布。
- JIS L1091 A-1法の区分3において合格とされる難燃性を有する請求項1〜7のいずれかに記載の生分解性難燃性不織布。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の生分解性難燃性不織布を備えるフィルター。
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