JP3771504B2 - 耐ドリップ性に優れた難燃性フィルター - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は難燃性フィルター、特に換気扇,レンジフードなどに使用して好適な耐ドリップ性に優れた難燃性フィルターに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にキッチン等で調理時に発生する油煙,塵埃は排気ファンによって外部に排出されるが、最近では、この排出される油煙や塵埃は排気ファンである換気扇やレンジフードにフィルターを取り付けて除去するようになって来ている。
この換気扇やレンジフードに取り付けられるフィルターは当然の如く、高熱や、高温の油煙等に接するために燃焼の恐れがあり、フィルターには通常、難燃性能が付与されている。
【0003】
かかる難燃性能が付与されたレンジフードあるいは換気扇のフィルターとしては、従来、ポリクラール繊維や難燃アクリル繊維を主体にした繊維ウエブを難燃性熱可塑性樹脂で結合せしめたものが知られており、また難燃性能を有しない繊維を使用する場合には難燃性を有する樹脂をコーティングすることにより難燃性能を付与する方法が広く用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記ポリクラール繊維あるいは難燃アクリル繊維を主体としたフィルターは高温(230℃)の熱風を受けるとフィルター自体に穴があいて了う。
また、難燃性を付与した難燃セルロース繊維を主体とする繊維ウエブを難燃性熱可塑性樹脂により結合したフィルターにおいては、熱風によって穴が開かないにしても炎にさらされた時に煙を多く発生する問題がある。
【0005】
一方、難燃性能を有しない繊維としてはポリエステル,ナイロン,ポリプロピレン,ポリエチレンがあり、これら繊維を使用して難燃性能を有する換気扇フィルターを得ることができるが、これら合成繊維は高温に曝されると溶融し、溶融物が垂れ落ちる、いわゆるポリマードロップ現象が起きる。
このポリマードロップが発生すると、換気扇やレンジ周りを汚すだけでなく、場合によっては人身に火傷を負わせることがあるので問題となっている。
そこで、上述の如き問題に対処し、これを解決すべく本発明者らは種々の検討を重ね、その結果、さきに難燃性繊維の各種組み合わせによるフィルターを提案して来た。
【0006】
本発明は更に上記検討を発展させ、特にPETボトルの回収による再生PET繊維(再生ポリエステル繊維)の利用促進を付加することにより、回収されたPETボトルの利用による資源の活用と、レンジフード,換気扇フィルターとして有効な耐ドリップ性及び難燃性の改善された、環境に優しく、かつ火傷の恐れのないフィルターを提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
即ち、上記目的に適合する本発明フィルターの基本的特徴は、溶融性合成繊維と、非溶融性繊維からなり、非溶融性繊維を5〜15重量%含有する繊維ウエブを難燃性熱可塑性樹脂をバインダーとして繊維間結合してなる不織布よりなる耐ドリップ性に優れた難燃性フィルターにある。
ここで上記溶融性合成繊維と、非溶融性繊維の太さは何れも2〜20デニールであることが好ましい。
また、上記溶融性合成繊維としては回収PETボトルにより得られた再生PET繊維(再生ポリエステル繊維)を含有させることが好ましく、この場合、上記の再生PET繊維は40%以上含有させることが好適である。
【0008】
一方、望ましい非溶融性繊維としては、通常、レーヨン繊維が用いられる。
また、上記の繊維間結合に用いられるバインダーとしての難燃性熱可塑性樹脂としては、非ハロゲン系難燃加工剤であって、リン酸エステル,亜リン酸エステルから選ばれた少なくとも1つの含リン化合物又は尿素,グワニジン,グワニール尿素,メラニンのリン付加化合物から選ばれた少なくとも 1 つの含窒素リン化合物で沸点が140℃以上である難燃剤を添加した樹脂組成物である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、更に本発明の具体的態様について詳述する。
【0010】
本発明は前記のように溶融性合成繊維と、非溶融性繊維からなり、非溶融性繊維を5〜15重量%含有する繊維ウエブを難燃性熱可塑性樹脂で繊維間結合し、一体化せしめた不織布構成よりなるフィルターである。
この場合、上記各繊維は太さが2〜20デニール、好ましくは3〜7デニールで、繊維長が50〜75mm位であることが好ましく、これらを互いに混綿して繊維ウエブに形成される。
用いる溶融性合成繊維としては、ポリエステル繊維、即ちポリエチレンテレフタレート(PET)繊維やポリエチレン(PE)繊維,ポリプロピレン(PP)繊維など挙げられ、これら繊維より選ばれた少なくとも1種又は2種以上の混合が用いられるが、最も一般的な繊維はPET繊維である。更に非ハロゲン難燃剤を含む繊維を含有せしめてもよい。
【0011】
特に、用いるPET繊維としては、回収PETボトルの再生より得られた再生PET繊維を一部に用いることが好ましく、とりわけこの再生PET繊維を40%又はそれ以上使用することは資源活用用の見地から効果的である。
また、この再生PET繊維に難燃剤を練り込んで難燃性を向上することもでき、この場合、難燃剤を25%前後、含有させることができる。
更に、低融点タイプの再生PET繊維の使用もでき、40%前後、該変成PETを混合することができる。
【0012】
一方、非溶融性繊維としては綿,ビスコースレーヨン,ポリノジックなどの繊維素系繊維、あるいはビニロンの如きポリビニルアルコール系繊維などが挙げられるが、特にレーヨン繊維は最も実用的である。
【0013】
この非溶融性繊維は容易に燃焼し、親水性を有するため、バインダー組成中の難燃剤を吸収し保持することにより難燃性を高め、また、接炎部分が炭化、ないし一部炭化し、ドリップを防止する。
従って、例えば溶融性合成繊維が100%のフィルターでは燃焼したときにドリップし、火傷などする恐れがあり、本来ならば溶融性合成繊維、例えばPET繊維を出来るだけ多く使用したいが、最小限、上記非溶融性繊維を混ぜることによってドリップを防いでいる。
そのため本発明においては前述のように非溶融性繊維が溶融性合成繊維に対し5〜15重量%含有される。
もし、5重量%以下であればドリップ防止に乏しい恐れがあり、15重量%以上であれば耐ドリップ性は良好であるが、難燃フィルターとしての性能を弱化する恐れがあるので、5〜15重量%程度が効果的である。
なお、非溶融性繊維混用の効果としてはレーヨン繊維,ビニロン,アクリロニトリル系繊維ともに夫々、ドリップを防止する効果を有するが、なかでもレーヨン繊維は最も効果が大である。
そして、上記溶融性合成繊維と非溶融性繊維からなる繊維ウエブに対し繊維間結合のためバインダーが付与されるが、バインダーには前述の如く難燃性熱可塑性樹脂が用いられる。
【0014】
かかる難燃性熱可塑性樹脂としては、非ハロゲン系難燃加工剤であって、リン酸エステル,亜リン酸エステルから選ばれた少なくとも1つの含リン化合物又は尿素,グワニジン,グワニール尿素,メラニンのリン付加化合物から選ばれた少なくとも1つの含窒素リン化合物で、沸点が140℃以上である難燃剤を添加した組成物で、具体的にはアクリルあるいは酢酸ビニル系樹脂もしくはその混合物(混合比50:50〜90:10),スチレンブタジエン樹脂,アクリロニトリルブタジエン樹脂,メチルメタクリレートブタジエン樹脂又はポリビニルアルコール溶液などに上記難燃剤を添加した樹脂が有効である。
これらはエマルジョンなどの溶液を用いてスプレー,コーティング,含浸などによって繊維ウエブに付与され、乾燥及び熱処理によって繊維間を結合させる。
【0015】
上記樹脂に添加される難燃剤としては、リン系,ホウ素系などの有機、無機系の加工剤が挙げられ、特にリン系の水溶性難燃化合物は好適である。
これら難燃剤は樹脂に対して難燃剤/樹脂=30:70〜10:90であるが、特に繊維ウエブと難燃性熱可塑性樹脂との割合は製品中において難燃性熱可塑性樹脂が15〜30%、好ましくは20〜30%であり、製品中の樹脂量が15%のときは溶融性合成繊維として再生PET繊維を80%まで含有させることができ、また、樹脂量が30%のときは製品中の再生PET繊維を66.5%まで含有させることができる。
かくして得られるフィルターは特にレンジフード,換気扇フィルターとして好適な空隙率を有し、圧力差損も40Pa以下が可能で、極めて実用性に富んでいる。
【0016】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示し、比較例と対比する。
【0017】
6dの再生PET繊維50%と3dの再生PET繊維40%と3dのレーヨン繊維10%とからなる目付26g/mの繊維ウエブにアクリル酸エステル50%とリン酸グアニジン系50%からなるバインダーを9g/mの割合でスプレーし、乾燥して、目付35g/mのフィルターを得た。
【0018】
実施例2
6dの難燃剤20%含有難燃再生PET繊維20%と3dの再生PET繊維70%と7dのレーヨン繊維5%と7dのビニロン繊維5%からなる目付30g/mの繊維ウエブにアクリル酸エステル6%,リン酸グアニジン40%からなるバインダーを10g/mの割合でスプレーし、乾燥して、目付40g/mのフィルターを得た。
【0019】
実施例3
3dの再生PET繊維40%と6dの再生PET繊維45%と低融点成分を40%含有した4dの熱接着再生PET繊維10%と7dのレーヨン繊維5%からなる目付60g/mの繊維ウエブに上記と同じアクリル酸エステルとリン酸グアニジン系各50%からなるバインダーを20g/mの割合でスプレーし、乾燥して、目付80g/mのフィルターを得た。
【0020】
比較例1
次に比較のため、3dの再生PET繊維30%と、7dの再生PET繊維70%からなる目付32g/mの繊維ウエブに実施例1と同組成のバインダーを8g/mスプレーし、乾燥して、目付40g/mのフィルターを得た。
【0021】
次に上記各例で得た夫々のフィルターについて下記により難燃性,ドリップ性を観察した。
難燃性 ; JIS−L−1091 A−1法による。
ドリップ性; 5cm×20cmの試料を垂直にセットし、下からライターの炎(2cm)を近づけドリップするか観察した。
結果を表1に示す。
【0022】
【表1】
Figure 0003771504
【0023】
上記対比結果より本発明に係るフィルターは難燃性,ドリップ性ともに優れていることが分かる。
【0024】
本発明は以上のように溶融性合成繊維に対し非溶融性繊維を5〜15重量%含み形成した繊維ウエブを難燃性熱可塑性樹脂により結合せしめて所定の性能を付与させたものであり、両繊維の所要量の混合よりなるため高温に曝されても溶融し、ドリップすることがなく、従って周辺を汚すこともなく、また、人身に火傷を負わせることがないと共に、難燃性熱可塑性樹脂で繊維相互を結合しているため燃える心配もなく、230℃の熱風に対しても充分、耐熱性を有して形状を保持することができる効果を有している。
本発明は一般の難燃・耐熱フィルターとして有用性を発揮するが、特にレンジフード,換気扇フィルターに使用し、極めて効果的である。

Claims (5)

  1. 溶融性合成繊維と、非溶融性繊維からなり、非溶融性繊維を5〜15重量%含有する繊維ウエブを難燃性熱可塑性樹脂をバインダーとして繊維間結合してなる不織布よりなることを特徴とする耐ドリップ性に優れた難燃性フィルター。
  2. 溶融性合成繊維と非溶融性繊維の太さが夫々2〜20デニールである請求項1記載の耐ドリップ性に優れた難燃性フィルター。
  3. 溶融性合成繊維が回収PETボトルより得られた再生PET繊維を少なくとも40%含有する請求項1または2記載の耐ドリップ性に優れた難燃性フィルター。
  4. 非溶融性繊維がレーヨン繊維である請求項1,2または3記載の耐ドリップ性に優れた難燃性フィルター。
  5. 難燃性熱可塑性樹脂よりなるバインダーが難燃加工剤であって、リン酸エステル,亜リン酸エステルから選ばれた少なくとも1つの含リン化合物又は尿素,グワニジン,グワニール尿素,メラニンのリン付加化合物から選ばれた少なくとも1つの含窒素リン化合物で、沸点が140℃以上である難燃剤を添加した樹脂組成物である請求項1〜4の何れかの項に記載の耐ドリップ性に優れた難燃性フィルター。
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