JP4450278B2 - 通気性と保油性に優れた換気扇フィルター用不織布 - Google Patents

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本発明は、家庭用レンジフードの通気口にセットする通気性と保油性に優れた換気扇フィルター用不織布に関する。
従来より、調理の際に発生するオイルミストによる換気扇自体の汚れを低減する目的で、不織布製フィルターが、レンジフードの通気口に取り付けて使用されている。
従来の換気扇フィルター用不織布は、実用上の強力を付与するため、ケミカルバインダーを使用し、また難燃性を持たせるために、このケミカルバインダーに難燃剤を添加していた。例えば、下記特許文献1には、構成繊維群相互間を、粉末状リン系難燃剤が含有されているバインダー樹脂で結合した不織布よりなる難燃性フィルター材が開示されている。
しかしながら、ケミカルバインダーにより繊維間結合した不織布は、一般的に繊維交絡点に水かき状のバインダー皮膜が形成される上に、不織布密度が高くなる傾向があるので、通気抵抗が大、つまり換気性に悪い影響が出やすい。また、繊維表面に存在するケミカルバインダーの皮膜によって保油性にも影響が出る。つまり、従来品は換気性や、保油性などが犠牲になっていた。
また、従来は、難燃剤としてハロゲン系難燃剤が用いられているものが多く、環境上問題があった。
特開2000―126523号公報(特許請求の範囲)
本発明は、通気性、保油性に優れ、廃棄しても環境汚染の恐れのない換気扇フィルター用不織布を提供するものである。
本発明は、繊度が3〜30デシテックスの非ハロゲン系の難燃剤が練り込まれた難燃複合繊維50重量%〜97重量%、ならびに3〜30デシテックスのビニロン繊維、3〜30デシテックスのポリエステル繊維、および3〜30デシテックスのアクリル繊維から選ばれる少なくとも1種3重量%〜50重量%(ただし、難燃複合繊維+ビニロン繊維、ポリエステル繊維、およびアクリル繊維から選ばれる少なくとも1種=100重量%)からなり、熱風によって熱処理されてなるものであって、米坪(1m 当りの重量、以下同じ)が20〜50g/m2、通気抵抗が0〜0.004kPa・s/m、密度が0.01〜0.04g/cm3、下記に定義した保油量が10〜30g/100cm2であることを特徴とする通気性と保油性に優れた換気扇フィルター用不織布に関する。
保油量:室温25℃でサラダ油に浸けた10cm×10cmの試料を水平な2メッシュ金網上にのせて1時間油切りした後に保持している油の量
ここで、難燃複合繊維としては、芯/鞘型複合繊維が好ましい。
さらに、ポリエステル繊維としては、再生ポリエステル繊維が好ましい。
本発明の換気扇フィルター用不織布は、従来タイプのケミカルバインダー使用不織布に較べて、通気抵抗が小さいので換気性に優れる。また、保油能力が大なので、調理で発生する油煙中の油分の捕集能力に優れている。
更に、難燃剤として非ハロゲン系を用いることにより、廃棄しても環境汚染の恐れもなくなるので好ましい。
本発明において、難燃複合繊維は、非ハロゲン系の難燃剤が練り込まれている。
非ハロゲン系の難燃剤としては、リン酸アンモニウム、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリエチルホスフェート(TEP)、クレジルジフェニルホスフェート(CDP)、キシレニルジフェニルホスフェート(XDP)、酸性リン酸エステル、含窒素リン化合物、HALSなどがあるが非ハロゲンで実質的に難燃効果を発揮するものであれば、これらに限定されるものではない。
これらの難燃剤は、複合繊維100重量部中に、好ましくは1〜50重量部、さらに好ましくは2〜40重量部練り込まれる。この練り込み量が1重量部未満では、難燃性が不充分であり、一方、50重量部を超えると難燃性能が頭打ちになるため添加した難燃剤が無駄となり、好ましくない。
難燃剤を練りこむ複合繊維としては、芯/鞘型の複合型繊維が好ましい。
ここで、芯成分としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのような線状芳香族ポリエステルや、ポリプロピレンのようなポリオレフィンが好ましく、鞘成分よりも高融点である必要がある。鞘成分としては、ポエチレンイソフタレートなどが共重合された低融点の線状芳香族ポリエステルや、ポリエチレンなどのポリオレフィンが挙げられるが、芯成分の融点未満の加熱によって繊維交絡点で熱結合するものである必要がある。このような組合わせの例で好ましいものとしては、PP/共重合PP、PP/PE、PET/PEなどが挙げられる。
このような芯/鞘の複合型繊維の場合、難燃剤は芯のみ、鞘のみ、あるいは両方に練り込むことが出来る。
使用する難燃複合繊維の繊度は3〜30デシテックスであり、好ましくは4〜20デシテックス、さらに好ましくは5〜10デシテックスである。繊度が3dt(デシテックス、以下同様)未満の場合、不織布密度が上昇して通気抵抗が高くなり換気扇用フィルターとしては不適となり、一方、繊度が30dtを超えると空隙が大きくなることにより保油量が減少するため好ましくない。
本発明の換気扇フィルター用不織布は、上記の難燃複合繊維50重量%〜97重量%、ならびに3〜30dtのビニロン繊維、3〜30dtのポリエステル繊維、および3〜30dtのアクリル繊維から選ばれる少なくとも1種50重量%〜3重量%からなる。上記のような難燃複合繊維だけで構成した場合、万が一換気扇フィルターが高熱にさらされた時に溶融ドリップする現象が激しく生じる傾向があって、換気扇フィルターとしての実用性に問題を生じやすいが、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、およびアクリル繊維から選ばれる少なくとも1種を混綿しておくことにより改善することができる。ビニロン繊維、ポリエステル繊維およびアクリル繊維から選ばれる少なくとも1種が、3重量%未満ではこの効果が少なく、一方、50重量%を超えると難燃性能が悪化する。
ビニロン繊維、ポリエステル繊維や、アクリル繊維は、特に限定されず、通常、入手可能な、いかなるものも使用することができる。ポリエステル繊維として、ペットボトルを再生したポリエステル繊維を使用すれば、廃棄物問題にも配慮した環境商品となるので、更に好ましい。
ビニロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維の繊度は、3〜30dtであり、好ましくは4〜20dt、さらに好ましくは5〜10dtである。繊度が3dt未満の場合、不織布密度が上昇して通気抵抗が高くなり換気扇用フィルターとしては不適となり、一方、繊度が30dtを超えると空隙が大きくなることにより保油量が減少するため好ましくない。
本発明の換気扇フィルター用不織布は、いわゆるサーマルボンド不織布と呼ばれるものであって、熱風によって熱処理して得る。熱処理の温度は、複合繊維の鞘成分の融点以上の温度が必要である。具体的には120〜180℃が好ましく、さらに好ましくは140〜160℃である。熱風によって熱処理することにより、繊維と繊維を熱融着して不織布とするのであれば、製法はどのような方法であってもよい。
具体的には、例えば、難燃複合繊維、ならびにビニロン繊維、ポリエステル繊維、およびアクリル繊維から選ばれる少なくとも1種からなるウェブを熱風(例えば、熱風乾燥炉)などで熱処理して得ることができる。また、難燃複合繊維のみからなるウェブと、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、およびアクリル繊維から選ばれる少なくとも1種のウェブとを別に製造し、両者のウェブを重ねて熱風(例えば、熱風乾燥炉)で熱処理して得ることもできる。
本発明の換気扇フィルター用不織布の米坪は、20〜50g/m2であり、好ましくは25〜48g/m2、さらに好ましくは30〜45g/m2である。米坪が20g/m2未満の場合、厚さが減少して保油量が不十分となり、一方、50g/m2を超えると通気抵抗が高くなるため好ましくない。
また、通気抵抗は、0〜0.004kPa・s/mであり、好ましくは0〜0.0035kPa・s/m、さらに好ましくは0〜0.0030kPa・s/mである。0.004kPa・s/mを超えるような場合、換気量の減少を招くため好ましくない。
さらに、密度は0.01〜0.04g/cm3であり、好ましくは0.012〜0.035g/cm3、さらに好ましくは0.015〜0.03g/cm3である。密度が0.04g/cm3を超えると通気抵抗の上昇、または保油量の低下となるため好ましくない。一方、0.01g/cm3未満の場合、あまりにも嵩高過ぎ、かつ風合いも柔らかくなって、取扱い性が悪化するので、実用的ではない。
保油量は、10〜30g/100cm2である。ここで、保油量とは、室温25℃でサラダ油に浸けた10cm×10cmの試料を水平な2メッシュ金網上にのせて1時間油切りした後に保持している油の量である。保油量が10g/100cm2未満の場合は、調理で発生する油煙中の油分をキャッチし保持する能力が不十分であり、一方、30g/100cm2を超える能力を保有している場合は、万が一付着している油分に着火するような不測の事態において延焼する危険性が増大するので、好ましいとはいえない。好ましい保油量は、8〜20g/100cm2、さらに好ましくは10〜18g/100cm2である。
従来のような、ケミカルバインダーにより繊維間結合した不織布は、一般的に繊維交絡点に水かき状のバインダー皮膜が形成されるので、通気性に悪い影響が出るばかりか、繊維表面のバインダー皮膜によって保油性にも影響がでる。これに対して、本発明のように難燃複合繊維を用いて熱風によって熱処理すると、嵩高となり、通気性と保油性に優れた換気扇フィルターを得ることができる。更に、難燃剤として非ハロゲン系を用いることにより、廃棄しても環境汚染の恐れも無くなるので好ましい。
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の%は特に断らない限り重量基準である。
実施例1
難燃剤を練り込んだ、芯/鞘がPP/PEである複合繊維(5.6dt×51mm)〔繊維形成性樹脂成分が96重量%、難燃剤としてクレジルジフェニルホスフェート(CDP)を4重量%(合計100重量%)からなる〕80重量%と、ビニロン繊維(7.8dt×64mm)20重量%のウェブを150℃の熱風で熱処理して不織布を作成した。
実施例2
10dt、15g/m2のポリエステルスパンボンド不織布上に実施例1のPP/PE難燃複合繊維(11dt×5mm)100重量%のウェブ 30g/m2をのせて150℃の熱風で熱処理して不織布を作成した。
比較例1
再生ポリエステル繊維(3.3dt×51mm)70重量%、ビニロン(5.6dt×78mm)30重量%のウェブにスチレンアクリル樹脂(ガンツ化成社製、KBX2A 17重量%)と非ハロゲン系難燃剤(丸菱油化社製、ノンネン984 10重量%)の純分合計で27重量%となる混合液を含浸させ、その後150℃で乾燥、熱処理して繊維が約60重量%、樹脂成分が約40重量%の不織布を作成した。
表1に実施例1〜2、比較例で得られた各々の不織布について、米坪、密度、下記の方法により測定された厚さ、燃焼性、保油量、通気抵抗の値を示す。
測定の方法
厚さ;20g/cm2荷重で測定した。
燃焼性;JIS L1091A−1法(45℃ミクロバーナー法)により測定した。
保油量;室温25℃でサラダ油に浸けた10cm×10cmの試料を水平な2メッシュ金網上に乗せて1時間油切りした後に保持している油の量を測定した。
通気抵抗;AUTOMATIC AIR−PERMEABILITY TESTER(カトーテック KES−F8−AP1)を使用し、通気穴面積2πcm3に定流量空気を送り試料を通して放出、吸引させることにより測定し、デジタルメータに表示された通気抵抗を読んだ。
Figure 0004450278
本発明の換気扇用フィルター不織布は、保油量が大きく、家庭の台所、レストランなどの調理場の換気扇用フィルターなどとして好適に用いることができる。

Claims (3)

  1. 繊度が3〜30デシテックスの非ハロゲン系の難燃剤が練り込まれた難燃複合繊維50重量%〜97重量%、ならびに3〜30デシテックスのビニロン繊維、3〜30デシテックスのポリエステル繊維、および3〜30デシテックスのアクリル繊維から選ばれる少なくとも1種50重量%〜3重量%(ただし、難燃複合繊維+ビニロン繊維、ポリエステル繊維、およびアクリル繊維から選ばれる少なくとも1種=100重量%)からなり、熱風によって熱処理されてなるものであって、米坪(1m 当りの重量)が20〜50g/m2、通気抵抗が0〜0.004kPa・s/m、密度が0.01〜0.04g/cm3、下記に定義した保油量が10〜30g/100cm2であることを特徴とする通気性と保油性に優れた換気扇フィルター用不織布。
    保油量:室温25℃でサラダ油に浸けた10cm×10cmの試料を水平な2メッシュ金網上にのせて1時間油切りした後に保持している油の量
  2. 難燃複合繊維が芯/鞘型複合繊維である請求項1記載の通気性と保油性に優れた換気扇フィルター用不織布。
  3. ポリエステル繊維が、再生ポリエステル繊維である請求項1または2記載の通気性と保油性に優れた換気扇フィルター用不織布。
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