ところで、上述したように、加工装置に配設されたワーククランプ装置にあっては、該加工装置による切削加工で生じた切削屑が、該ワーククランプ装置に付着したり堆積してしまう。この切削屑は、切削加工後にワークをワーククランプ装置から取り外した後に、エアー流出口に侵入し易く、該エアー流出口を塞ぐことともなり得る。このようにエアー流出口が切削屑で塞がれた状態で、次のワークを配置して固持した場合には、例えば、着座位置に付着した切削屑によってワークが着座位置からずれて固持されていても、エアー流出口が切削屑で塞がれていることから、圧力センサによって正しく固持されていると判定されることともなり得る。そして、この場合には切削加工不良となるが、この不良品も次工程に搬送されてしまい、不良品が正常品に混じって出荷されることも懸念される。また、当然ながら、製品の不良率を低減することもできない。尚、このような誤った判定は、上述したクランプ片の当接位置にエアー流出口を設けた構成でも、同様に起こり得る。
例えば、自動車用ホイールの製造工程にあっては、アルミニウム合金から鋳造成形されたホイール中継体(ワーク)を、旋盤により表面を切削加工して所望の形状に整える切削加工工程が設けられている。この旋盤による切削加工工程では、上述したワーククランプ装置が用いられて、自動化されていることが一般的となっている。ところで、この切削加工工程のワーククランプ装置では、自動車用ホイールを、リムフランジ部の円環状端面を予め定められた着座位置に配置して、固持するようにしている。ここで、着座位置に設けられるエアー流出口は、リムフランジ部の円環状端面により閉塞できるように、比較的小径なものとなっている。このようなエアー流出口には、旋盤による切削加工で生成された細かな切削屑が侵入し易く、該エアー流出口を容易に塞いでしまうことともなり得る。したがって、上述した従来のクランプ補償機能では、この自動車用ホイールの切削加工工程にあって、ワークの着座位置での固持状態を適正に判定する作用に乏しく、切削加工不良を低減することに限界がある。このため、製品の不良率を低減するためには、切削加工工程で頻繁にエアー流出口を清掃する必要があり、作業が繁雑化することともなっている。
本発明は、かかる上記問題点を解決し、ワークの着座位置での固持状態を正確に判定でき、加工不良の低減、加工不良品の選別を行い得るワーククランプ装置を提案するものである。
本発明は、予め定められた着座位置に、ワークを配置して固持することにより、該ワークを位置決めするワーククランプ装置において、所定の圧力でエアーを供給するエアー供給源と連通し、前記着座位置に配設された複数のエアー流出口と、前記エアー供給源とエアー流出口との間に設けられた、エアー圧力値を検出する圧力センサと、ワークの適正非着座状態でのエアー圧力値の上限値である第一圧力閾値と、ワークの適正着座状態でのエアー圧力値の下限値である第二圧力閾値とが設定されており、ワークを着座位置に配する前又は取り外した後に圧力センサにより検出されるエアー圧力値が、第一圧力閾値に比して低い圧力であり、かつ、ワークを着座位置に配した後のエアー圧力値が第二圧力閾値に比して高い圧力であると、当該ワークの着座位置での固持状態を正常と判定する着座判定手段とを備えていることを特徴とするワーククランプ装置である。ここで、エアー流出口、エアー供給源、圧力センサ、着座判定手段により、いわゆるクランプ補償機能を構成している。
ここで、第一圧力閾値は、ワークが着座位置に配されておらず、かつ、エアー供給源から流れたエアーがエアー流出口から適正に流出可能な状態(いわゆる、ワークの適正非着座状態)で、該エアー供給源から所定圧力で供給されているエアーが流れている場合の、エアー圧力値の上限値を設定したものである。すなわち、ワークが着座位置に配されていない場合に、圧力センサにより検出されたエアー圧力値が、この第一圧力閾値に比して低ければ、エアー流出口からエアーが正しく流出していることがわかる。しかし、このエアー圧力値が、第一圧力閾値に比して高ければ、エアー供給源からエアー流出口までの間で切削屑等の異物により目詰まりが生じていることや、エアー流出口が切削屑等の異物により閉塞していること等によって、エアーが適正に流れていないことがわかる。したがって、ワークを着座位置に配する前又は取り外した後に、第一圧力閾値に比してエアー圧力値が高いか低いかを調べ、該エアー圧力値が低くなっていることを確認することによって、エアー供給源から所定圧力で供給されたエアーがエアー流出口から適正に流出している状態であることを判定している。
一方、第二圧力閾値は、ワークが着座位置に配されて、該ワークによってエアー流出口が閉鎖されている状態(いわゆる、ワークの適正着座状態)で、エアー供給源から所定圧力で供給されているエアーが、該エアー流出口から流出できずに圧力上昇した場合の、エアー圧力値の下限値を設定したものである。すなわち、ワークが着座位置に配されている場合に、圧力センサにより検出されたエアー圧力値が、この第二圧力閾値に比して高ければ、エアー流出口がワークにより適正に閉鎖されていることがわかる。しかし、このエアー圧力値が、第二圧力閾値に比して低ければ、エアー流出口からエアー漏れが生じており、ワークが着座位置に正しく配されていないことがわかる。したがって、ワークを着座位置に配した後に、第二圧力閾値に比してエアー圧力値が高いか低いかを調べ、該エアー圧力値が高くなっていることを確認することによって、ワークが着座位置に適正に配置されている状態であることを判定している。
このように、かかる構成の着座判定手段にあっては、ワークを着座位置に配する前又は取り外した後に、エアー供給源から流れたエアーがエアー流出口から適正に流出可能な状態であることを確認することによって、ワークが着座位置に配された後に該ワークの着座位置を確認する判定が、正しいか否かを判断できることとなっている。したがって、これら両者の判定結果がそれぞれ適正な状態であることを示した場合に、ワークが着座位置に正常に固持されていることを、正確に判断することができる。ここで、ワークを着座位置に配する前に、第一圧力閾値に比してエアー圧力値が高いか低いかを調べ、エアーの流れが適正か否かの判定を行うようにすれば、該エアー圧力値が低く、エアーが適正に流れている状態である場合だけ、ワークを着座位置に配置するようにする。これにより、ワークの着座位置が適正か否かの判定結果が常に正しいこととなるから、ワークの着座位置が誤っていることによる、加工不良等が発生することを防止でき、不良品の発生率を著しく低減でき得る。一方、ワークを着座位置から取り外した後に、エアーの流れが適正か否かの判定を行うようにすれば、該エアーの流れが正常でないと判定された場合には、当該ワークを精査する作業を行うことにより、加工不良品が正常品に混入してしまうことを防止でき、不良品が誤って出荷されることをほぼ確実に防ぎ得る。
尚、本発明のワーククランプ装置にあっては、エアーの流れを確認するための第一圧力閾値と、ワークの着座位置を確認するための第二圧力閾値とを夫々に設けるようにしたものであるから、例えば圧力閾値が一点だけ設定されている場合に比して、これら閾値の設定を一層厳密に行うことも可能である。例えば、エアー供給源から供給するエアーの圧力を比較的高く設定し、この高い圧力で供給されるエアーに応じて、ワークの適正非着座状態での上限値と、ワークの適正着座状態での下限値とを設けることができる。これにより、上述した着座判定手段による判定結果がさらに正確なものとなり、本発明の作用効果が一層向上する。さらに、エアー供給源から高い圧力で供給するエアーが常に流れるようにすれば、ワークを切削加工することにより生ずる切削屑等がエアー流出口に流入し難くなるため、該切削屑による、エアー供給源からエアー流出口までの間の目詰まりや、エアー流入口が塞がれることを防止できるという優れた利点も生ずる。
また、このようなワーククランプ装置にあって、着座判定手段が、ワークを着座位置に配する前又は取り外した後のエアー圧力値が第一圧力閾値に比して高い圧力であると、高圧力エアーをエアー供給源から供給する制御内容を備えた構成が提案される。ここで、エアー圧力値が第一圧力閾値より高くなっている状態は、エアー供給源から供給されたエアーがエアー流出口から適正に流出していない状態であり、エアー供給源からエアー流出口までの間で切削屑等の異物が目詰まりしていることや、エアー流入口が切削屑等の異物により塞がれていることが考えられる。かかる構成は、エアー圧力値が第一圧力閾値より高い場合には、判定を行うための所定圧力に比して、高い圧力でエアーを供給することにより、前記目詰まりや閉塞している切削屑等の異物を取り除くことができるようにしたものである。これにより、ワークの適正非着座状態に回復するための作業に人員を要せず、また、作業に要する時間も短縮できることから、当該回復作業の作業効率が向上する。また、本構成は、エアー流出口から適正にエアーが流出しない状態が生じても、自動的に、ワークの適正非着座状態に復帰できるようにしたものであるから、当該ワーククランプ装置を設けた加工工程の自動化をさらに進めることができ得る。
一方、ワークに所定の加工を施す加工装置に配設され、該加工装置の加工基準に合わせて着座位置が設けられたワーククランプ装置にあって、着座判定手段が、ワークを着座位置に配した後のエアー圧力値が第二圧力閾値に比して低い圧力であると、前記加工装置による当該ワークへの加工を行わないように前記加工装置を作動制御するようにした構成も提案される。ここで、エアー圧力値が第二圧力閾値より低くなっている状態は、ワークが着座位置に正しく配置されていない状態である。かかる構成にあっては、加工装置に配設された当該ワーククランプ装置が、ワークを着座位置に正しく配置できていない場合に、該加工装置による加工を行わないことにより、加工不良品が発生することを防止するようにしている。このように、加工しない制御を行うことにより、ワークが着座位置に正しく配置されていない状態が生じた場合には、自動的にワークの加工開始が中止されることから、当該ワーククランプ装置を設けた加工工程の自動化を一層進めることができるという優れた利点も有する。
ところで、例えば旋盤のように、ワークを回転させながら切削加工する回転加工装置にあっては、ワークを固持する着座位置が設けられた回転盤と、該回転盤の回動軸と連繋して該回転盤を回動制御する駆動装置と、回転盤の着座位置にワークを保持するワーククランプ装置とを備えている。そして、従来、クランプ補償機能として、着座位置に設けられた複数のエアー流出口に、一つのエアー供給源からエアーを流し、圧力センサにより検出されたエアー圧力値を、予め設定された一点の圧力閾値に比較することによって、複数のエアー流出口からエアー漏れが生じているか否かを一元的に判定する構成を有していた。このような従来構成のクランプ補償機能では、複数のエアー流出口のエアー漏れを、厳密に判定することができなく、上述したように、加工不良が発生し易く、また、加工不良品が正常品に混在することもあった。また、ワークを回転させる回転加工装置には、前記したエアー漏れを厳密に判定できるように、エアー供給源と各エアー流出口とを夫々に連通する連通路を別々に配設し、各連通路毎に圧力センサを配設する構成も考え得る。しかしながら、このように各エアー流出口の連通路毎に別々に圧力センサを設ける構成にあっては、実用上の加工装置としての装置費用や加工精度等を考慮すると困難であった。
このような回転加工装置に、上述した本発明にかかるワーククランプ装置を配設することにより、上記問題を適正に解決することが可能となる。すなわち、このワーククランプ装置にあって、回動軸内に軸方向に沿って回動連通路を設け、該回動連通路を、回転盤内に設けられた分岐路を介して複数のエアー流出口に連通すると共に、回動連通路とエアー供給源とを回転盤の回転中も常に連通する回動連通手段を備えてなり、着座判定手段に用いるエアー圧力値を検出する圧力センサが、前記回動連通手段の上流側に設けられた構成を備えるものとする。かかる構成にあっては、上述したように、エアーの流れを確認するための第一圧力閾値と、ワークの着座位置を確認するための第二圧力閾値とを夫々に設け、これらに従って判定する着座判定手段を備えていることから、複数のエアー流出口にエアーを分岐しても、回転軸の上流側に設けた圧力センサにより検出したエアー圧力値に基づき、ワークの固持状態が正常であるか否かの判定を正確に行うことができ得る。したがって、回転加工装置の実用上の要求(装置費用や加工精度等)を満足しつつ、不良品の発生率を低減したり、不良品が誤って出荷されることを防止できる。
ここで、回動連通手段としては、例えばエアー供給源と連通する連通口と、回動連通路が連通し、回動軸の周方向に沿って設けられた周溝とからなり、かつ、回動軸の回動に従って周回する周溝が、回動盤の回動中も連通口と常に連通する構成とすることができる。これにより、エアー供給源からエアーを、回動軸を介して複数のエアー流出口に適正に流すことができるから、上流側に配設した圧力センサにより正確なエアー圧力値を検出できることとなる。尚、回動連通手段としては、これ以外にも様々な構成とすることができ、いわゆるスリップリングを応用した構成が好適である。
また、着座判定手段が、ワークを着座位置に配した後のエアー圧力値が第二圧力閾値に比して低い圧力であると、回転加工装置の駆動装置が駆動しないように制御するようにした構成も提案される。かかる構成にあっては、ワークが着座位置に正しく配置されていない状態と判定された場合に、回転盤を回転させないことにより、当該回転加工装置によるワークの切削加工が行わず、加工不良品が生成されることを防止している。このように、着座判定手段に従って、自動的に回転加工装置の切削加工を中止する構成とすることにより、当該ワーククランプ装置を設けた加工工程の自動化を一層進めることができる。
本発明のワーククランプ装置は、上述したように、エアー供給源と連通する、着座位置に配設された複数のエアー流出口と、前記エアー供給源とエアー流出口との間に設けられた、エアー圧力値を検出する圧力センサとを備えると共に、ワークの適正非着座状態でのエアー圧力値の上限値である第一圧力閾値と、ワークの適正着座状態でのエアー圧力値の下限値である第二圧力閾値とが設定されており、ワークを着座位置に配する前又は取り外した後に圧力センサにより検出されるエアー圧力値が、第一圧力閾値に比して低い圧力であり、かつ、ワークを着座位置に配した後のエアー圧力値が第二圧力閾値に比して高い圧力であると、当該ワークの着座位置での固持状態を正常と判定する着座判定手段を備えたものである。このワーククランプ装置によれば、第二圧力閾値による、ワークの着座位置を確認する判定結果が、第一圧力閾値による、エアーが適正に流れていることを確認した判定結果によって、正しい結果であると認められるため、ワークの着座位置での固持状態を常に正確に判断することができる。したがって、ワークを着座位置に配する前に、第一圧力閾値による判定を行うようにすると、ワークの着座位置が誤っていることによる加工不良等の発生を防止でき、不良品の発生率を著しく低減でき得る。また、ワークを着座位置から取り外した後に、第一圧力閾値による判定を行うようにすると、加工不良品が正常品に混入してしまうことを防止でき、不良品が誤って出荷されることをほぼ確実に防ぎ得る。
また、このようなワーククランプ装置にあって、着座判定手段が、ワークを着座位置に配する前又は取り外した後のエアー圧力値が第一圧力閾値に比して高い圧力であると、高圧力エアーをエアー供給源から供給する制御内容を備えた構成にあっては、切削屑等の異物による、エアー供給源からエアー流出口までの間で生じた目詰まりや、エアー流出口が塞がれた状態を、高圧力エアーにより該異物を取り除くことによって、ワークの適正非着座状態に回復させることができる。したがって、当該回復作業に人員を要さず、かつ、作業時間も短縮できるため、作業効率が向上する。
一方、加工装置に配設された、上述したワーククランプ装置にあって、着座判定手段が、ワークを着座位置に配した後のエアー圧力値が第二圧力閾値に比して低い圧力であると、記加工装置による当該ワークへの加工を行わないように前記加工装置を作動制御する加工制御内容を備えた構成にあっては、ワークを着座位置に正しく配置できていない場合に、加工装置による加工を行わないことにより、加工不良品が発生することを防止でき、不良率を一層低減することができる。
このようなワーククランプ装置にあって、回動軸に設けた回動連通路を、分岐路を介してエアー流出口に連通すると共に、エアー供給源と回転盤の回転中も常に連通する回動連通手段を備え、圧力センサが該回動連通手段の上流側に配した構成として、回動加工装置に配設されるものとした場合には、上述した着座判定手段により、複数のエアー流出口に分岐して流れるエアーの圧力状態に従って、ワークの固持状態が正常であるか否かを正確に判定することができ得る。而して、かかる構成によれば、回転加工装置の実用上の要求を満足しつつ、不良品の発生率を低減したり、不良品が誤って出荷されることを防止できる。
またここで、着座判定手段が、ワークを着座位置に配した後のエアー圧力値が第二圧力閾値に比して低い圧力であると、回転加工装置の駆動装置が駆動しないように制御するようにした構成にあっては、ワークが着座位置に正しく配置されていない状態と判定された場合に、回転盤を回転させないことにより、当該回転加工装置によるワークの切削加工が行わず、加工不良品が生成されることを防止でき得る。
本発明の一実施形態例を添付図面を用いて詳述する。
図1は、旋盤20に配設された、本発明にかかるワーククランプ装置1を表す概略図である。この旋盤20は、鋳造成形されたアルミニウム合金製のホイール中継体Wを、ワーククランプ装置1の予め定められた着座位置X(図2参照)に配置して固持した状態で、その表面を旋盤の切削刃(図示省略)で切削加工することにより所望の自動車用ホイールの形状に成形する切削工程を行うものである。そして、この旋盤20によるホイール中継体Wの切削工程は、鋳造成形された該ホイール中継体Wが順次搬入されてきて、ワーククランプ装置1に配置され、切削加工されて次工程に搬出されるようになっており、アルミニウム合金製ホイールの生産ライン内で自動化されている。尚、本実施形態例の旋盤20が本発明にかかる回転加工装置であり、ホイール中継体Wが本発明にかかるワークである。
ここで、旋盤20には、ホイール中継体Wを固持する回転盤25と、該回転盤25に中心軸線Lに沿って設けられた回動杆部22と、該回動杆部22に外嵌して回転盤25に一体的に接合された回動軸24と、該回動軸24と連繋して回転盤25を回転制御する駆動装置21とが配設されている。この回動軸24には、その外周に一体的に周成されたプーリ23が設けられており、駆動装置21が、図示しないVベルトを介して回転駆動を該プーリ23に伝達する。また、この回動軸24の直下には、後述する三個のクランプ片3を上下作動させる油圧シリンダー26が、回動杆部22に接合されている。そして、駆動装置21の駆動により、プーリ23を介して、回動軸24と、回転盤25と、回動杆部22と、油圧シリンダー26とが中心軸線Lを回転中心として一体的に回転するようになっている。一方、回転盤25には、上面にホイール中継体Wを配置させる着座位置Xを設定したワーク着座2が、ホイール周方向にほぼ均等間隔で三箇所配設されている(図1では、二箇所を省略)。ここで、着座位置Xは、ホイール中継体Wの中心軸が、前記中心軸線Lに一致するように設定されており、当該旋盤20による切削加工基準に適合させている。そして、各ワーク着座2には、着座位置Xにエアー流出口4が各一個毎設けられている(図2参照)。この三箇所のエアー流出口4は、それぞれに通ずる副連通路7が分岐路9により一本の主連通路6に集約されて、所定圧力でエアーを流出するエアー供給源5に連通している。ここで、主連通路6は、分岐路9の上流側で、前記回動杆部22の内部に軸方向に沿って形成された回動連通路30と、該回動連通路30からエアー供給源5に至る連通管35とを備えている。この連通管35は、回動杆部22の外周に、該回動杆部22を摺動可能に支持する摺動支持部36を備え、該摺動支持部36に連通口32が形成されている。そして、回動杆部22の、この摺動支持部36により支持される外周面には、周方向に沿って周溝33が形成されており、該回動杆部22が回動している場合も、周溝33が常に摺動支持部36の連通口32に当接するようになっている。これにより、駆動装置21により回転盤25が回転している場合も、エアー供給源5からエアー流出口4に常時適正にエアーを流すことができる。このように摺動支持部36、その連通口32、周溝33により、本発明にかかる回動連通手段が構成されている。また、前記回動連通路30とエアー供給源5とを連通する連通管35に、予め設定されたエアー圧力値に従ってスイッチがON−OFF作動する圧力センサ8が配設されている。この圧力センサ8には、二系統のスイッチ回路PS1,PS2(図5参照)が設けられており、それぞれに異なるエアー圧力値(第一圧力閾値、第二圧力閾値)が設定されている。
また、このワーククランプ装置1には、回転盤25に配設される三箇所のワーク着座2の径方向外側に、着座位置Xに配置されたホイール中継体Wを固持するクランプ片3がそれぞれ設けられている(図2参照)。各クランプ片3には、径内方に屈曲してホイール中継体Wと直に接触する係止片部14と、上記した油圧シリンダー26に枢軸ピン17を介して枢支された作用基部15とを備えており、さらに、該係止片部14と作用基部15との略中間位置に、略上下方向から内側下方に折曲したくの字形状の案内孔16が形成されている。そして、このクランプ片3は、回転盤25の、ワーク着座2の外側位置に形成された摺動凹部27に配された摺動ピン28により、前記案内孔16を貫通して支持される。ここで、三箇所のクランプ片3は、油圧シリンダー26により同期して上下方向に移動するようになっている(図示省略)。ここで、クランプ片3は、上下方向移動に従って、枢軸ピン17により径方向に傾動可能としていることから、くの字形状の案内孔16に従って上下方向と内外方向に作動可能となっている。すなわち、各クランプ片3は、油圧シリンダー26により下方向へ移動することによって、着座位置Xに配置されたホイール中継体W(又は、加工後のホイール中継体W1)を、径方向に固定しつつ、下方向に引き込み、該着座位置Xに固持できるようになっている。一方、上方向に移動させることにより(図1中の矢印方向)、ホイール中継体Wを開放するようになっている。
さらに、ワーククランプ装置1には、図1のように、上記したエアー供給源5のエアー流出制御と、圧力センサ8のON−OFF作動確認と、図示しない油圧式シリンダーの作動制御とを行う制御装置10も設けられている。この制御装置10は、圧力センサ8のON−OFF作動に従って、エアー供給源5から供給するエアーの圧力を制御する制御内容や、旋盤20の駆動装置21を回転作動させない制御内容等を備えている。このため、ワーククランプ装置1の制御装置10は、旋盤20の切削加工を制御する制御装置(図示省略)と接続しており、前記制御内容に従って所定の信号を送受信できるようになっている。
ここで、圧力センサ8にあっては、上述したように二系統のスイッチ回路PS1,PS2から構成されており、それぞれに設定したエアー圧力値に従ってON−OFF状態が切り替わることによって、エアー供給源5とエアー流出口4との間のエアー圧力状態を検出するようにしている。すなわち、一方のスイッチ回路PS1には、図5(イ)のように、所定の圧力でエアーがエアー供給源5から供給されている場合に、全てのエアー流出口4が開放されており、該エアーが正常に流出している状態におけるエアー圧力値の上限値となる第一圧力閾値が設定されている。そして、図5(ロ)のように、このスイッチ回路PS1は、エアー供給源5とエアー流出口4との間の圧力状態が、第一圧力閾値より高い圧力であるとON状態となり、低い圧力であるとOFF状態となるように作動する。また、他方のスイッチ回路PS2には、図5(イ)のように、所定の圧力でエアーがエアー供給源5から供給されている場合に、全てのエアー流出口4が閉鎖されおり、該エアーが全く流出できない状態におけるエアー圧力値の下限値となる第二圧力閾値が設定されている。そして、図5(ロ)のように、このスイッチ回路PS2は、エアー供給源5とエアー流出口4との間の圧力状態が、第二圧力閾値より高い圧力であるとON状態となり、低い圧力であるとOFF状態となるように作動する。
このような二系統のスイッチ回路PS1,PS2は、図5(ロ)のように、ホイール中継体Wが着座位置Xに配置されておらず、かつ、エアー供給源5から供給されたエアーが主連通路6と副連通路7を通じてエアー流出口4から流出する、エアーの流れが適正な状態で、両方共にOFF状態となる。一方、ホイール中継体Wが正しく着座位置Xに配されていると、該ホイール中継体Wのリムフランジ部51によって全てのエアー流出口4が閉塞され、該エアー流出口4からエアーが流出できなくなる。このようにホイール中継体Wが着座位置Xに正しく配置されている状態では、両方のスイッチ回路PS1,PS2がON状態を示す。ここで、前記した全てのエアー流出口4が開放されている状態が、本発明にかかるワークの適正非着座状態であり、また、前記した全てのエアー流出口4が閉鎖されている状態が、本発明にかかるワークの適正着座状態である。
また、ホイール中継体Wが配置されている状態や、該ホイール中継体Wが配置されていない状態で、スイッチ回路PS1がON状態であり、かつ、スイッチ回路PS2がOFF状態である場合(図5(ロ)参照)には、ホイール中継体Wが正しく配置されておらず、一箇所又は二箇所のエアー流出口4からエアーが流出している状態か、主連通路6と副連通路7及びエアー流出口4に切削屑等の異物が詰まる等して、一箇所又は二箇所のエアー流出口4からエアーが流出できない状態を示している(図5(イ)参照)。尚、このような圧力センサ8、制御装置10等により本発明にかかる着座判定手段が構成されている。
この圧力センサ8に設定されている第一圧力閾値と第二圧力閾値とは、上述したように、全エアー流出口4の開放状態における上限値と、全エアー流出口4の閉鎖状態における下限値とを定めたものであるから、上記した各圧力状態を正確に示し得るエアー圧力値として厳密に設定することが可能である。例えば、エアー供給源5から供給するエアーの圧力を比較的高い圧力に設定し、該圧力に応じて、前記開放状態の上限値と閉鎖状態の下限値とを設定する(図5参照)。これにより、上記した着座判定手段は、全エアー流出口4の開放状態及び閉鎖状態と、これらの中間状態とを判定する精度が高く、本実施形態例の旋盤20にあっても、ホイール中継体Wの着座位置Xでの固持状態を正確に判定することができ得る。
また、本実施形態例のワーククランプ装置1にあっては、ワーク着座2に、図示しない着座センサが配設されており、ホイール中継体Wが着座位置Xに配置されているか否かを検出できるようにしている。この着座センサは制御装置10に接続されており(図示省略)、該制御装置10は、ホイール中継体Wが配置されたことを確認すると、上記したクランプ片3を進出作動させて該ホイール中継体Wを固持するようにしている。
次に、ホイール中継体Wの切削加工工程における、上述した本実施形態例のワーククランプ装置1の作動を、図6に従って説明する。
アルミニウム合金製の自動車用ホイールを製造する生産ラインにあって、本ワーククランプ装置1は、上述したように、鋳造成形されたホイール中継体Wを切削加工して、所望のホイール形状に整える切削加工工程に設けられた旋盤20に配設されており、順次搬入されるホイール中継体Wを、該旋盤20の加工基準に合わせた着座位置Xに固持するものである。ここで、本実施形態例のワーククランプ装置1では、制御装置10により、生産ラインが作動している場合には常時エアー供給源5から所定の圧力によりエアーが供給されるように制御している。このため、圧力センサ8もエアー供給源5からエアー流出口4に至る領域の圧力状態を、上述したON−OFF作動により常時検出している。
生産ライン上の前工程からホイール中継体Wが、当該切削加工工程に搬入されてくると、当該ホイール中継体Wがワーククランプ装置1のワーク着座2に載る前で待機させる。そして、制御装置10は、上述した着座センサ(図示省略)がホイール中継体Wを検出していないことを確認すると共に、圧力センサ8のON−OFF状態を確認する。ここで、制御装置10が、圧力センサ8の両スイッチ回路PS1,PS2がOFF状態であることを確認すると、エアー供給源5から供給された所定圧力のエアーがエアー流出口4から流出している正常状態(ワークの適正非着座状態)である(図3(イ))と判定する。この判定結果が得られると、ワーク着座2の前で待機させていたホイール中継体Wをワーク着座2の着座位置Xに配置する。そして、着座センサ(図示省略)により配置が確認されると、制御装置10は、油圧シリンダー26によりクランプ片3を下方移動させ、当該ホイール中継体Wを固持する。
一方、ここで、ホイール中継体Wがワーク着座2に載る前に、制御装置10が圧力センサ8のスイッチ回路PS1のON状態を確認した場合には、例えば、エアー流出口4に切削屑等の異物pが目詰まりし、エアー流出口4から正しくエアーが流出していない異常状態である(図3(ロ))と判定される。この判定結果が得られると、制御装置10は、ホイール中継体Wを待機させたまま、エアー供給源5から高圧力エアーを所定時間流す。これにより、主連通路6から副連通路7を介したエアー流出口4までの間で、エアーの流れを妨げていた切削屑等の異物pを、除去するようにしている。その後、常態の所定圧力でエアーを流出させた後、再び、圧力センサ8のON−OFF状態を確認し、両スイッチ回路PS1,PS2がOFF状態であると、正常状態(図3(イ)参照)であると判定し、上述と同様に、ホイール中継体Wを着座位置Xに配置して固持する。尚ここで、前記スイッチ回路PS1のON状態が切削屑の詰まりが原因でない場合、又は、詰まっている異物pを除去できない場合には、再度の確認でも、スイッチ回路PS1はON状態が継続することとなり得る。この場合には、図示しない報知装置を作動させ、作業員に異常発生を報知する。
上述したようにワークの適正非着座状態が判定され、ホイール中継体Wをワーク着座2の着座位置Xに固持すると、制御装置10は、圧力センサ8のON−OFF状態を確認する。ここで、制御装置10が、圧力センサ8の両スイッチ回路PS1,PS2がON状態であることを確認すると、当該ホイール中継体Wが着座位置Xに正しく配置されている状態(ワークの適正着座状態)である(図4(イ))と判定する。この判定結果が得られると、制御装置10はホイール中継体Wの着座位置Xでの固持状態が正常であると判断し、旋盤20の切削加工を制御する制御装置に、切削加工の開始を認める信号を送信する。これにより、駆動装置21が駆動し、ホイール中継体Wを固持した回転盤25が回転し、図示しない切削刃による切削加工が行われる。
一方、ここで、制御装置10が、ホイール中継体Wを固持した後に、圧力センサ8のスイッチ回路PS2のOFF状態を確認した場合には、当該ホイール中継体Wが着座位置Xに正しく配置されていない異常状態である(図4(ロ))と判定する。そして、制御装置10は、旋盤20の切削加工を制御する制御装置に、切削加工を行わない信号を送信すると共に、油圧シリンダー26によりクランプ片3を上方移動させ、ホイール中継体Wを開放する。そして、ホイール中継体Wをワーク着座2から離脱させた後、ワーク着座2及びホイール中継体Wのリムフランジ部51を清掃する。その後、上述のように、再び、圧力センサ8のON−OFF状態を確認し、ホイール中継体Wを着座位置Xに配置して固持する。そして、圧力センサ8のON−OFF状態を確認し、ホイール中継体Wの着座位置Xでの固持状態が正常であると判断すると、上記のように、切削加工が開始されることとなる。
そして、旋盤20による切削加工が終了すると、制御装置10は油圧シリンダー26によりクランプ片3を開放し、加工後のホイール中継体W1の固持状態を解除する。この切削加工したホイール中継体W1は、ワーク着座2の着座位置Xから取り外して、待機させる。ここで、生産ラインでは、次々とホイール中継体Wが切削加工工程に搬送されてくるため、前記直前の判定は、切削加工直後にエアー流出が正常か否かを判定していることと、実質的に同じである。このため、切削加工後のホイール中継体W1を待機させると、次のホイール中継体Wを搬入させて待機させる。そして、上述したように、エアー流出が正常であるか否かの判定を行う。この判定結果が、エアー流出の正常状態(ワークの適正非着座状態)であると、待機中の次のホイール中継体Wを着座位置Xに配して固持すると共に、切削加工後に待機しているホイール中継体W1を次工程に搬出する。尚ここで、エアー流出が異常状態であると判定された場合には、上述したように高圧力エアーの流出を行うと共に、切削加工後に待機させていた加工後のホイール中継体W1は、ライン外に取り出され、形状寸法の確認作業を行うようにしている。
このように、本実施形態例のワーククランプ装置1にあっては、順次搬送されてくるホイール中継体Wを、着座位置Xに配置する直前にエアー流出が正常か否かを判定し、正常の場合に、着座位置Xに固持し、その後正しく配置されているか否かを判定し、正常である場合に切削加工を行うようにしていることから、切削加工による加工不良の発生を防止できる。さらに、切削加工の直後に、次のホイール中継体Wを配置する直前に行うエアー流出が正常か否かの判定結果に従って、正常である場合には次工程に搬出し、異常である場合には当該切削加工後のホイール中継体W1をライン外に取り出すようにしていることから、加工不良品が正常品に混在してライン上を流れていくことも防止できる。
一方、自動車用ホイールは、リム径の異なる複数種類のホイールが存在する。このため、リム径の異なる複数種類のホイール中継体に応じて夫々に着座位置が設定されているワーク着座を用いることにより、生産ラインが、異なるリム径のホイール中継体を搬送するように切り替わった場合でも、ワーク着座を取り替える作業を省略できる。例えば、図7のように、ワーククランプ装置41に、三種類の異なるリム径のホイール中継体Wa,Wb,Wcに応じた着座位置Xa,Xb,Xcが設定されたワーク着座42を配設している。ここで、着座位置Xa,Xb,Xcには、それぞれ、周方向に沿って均等間隔で三箇所に設けられたエアー流出口44a,44b,44cが径方向に沿うように配設されている。このワーククランプ装置41にあっても、エアー供給源5に接続された連通管35に、圧力センサ8が配設されている。この圧力センサ8は、上述と同様に、二系統のスイッチ回路PS1,PS2とを備えてなり、それぞれに設定された第一圧力閾値と第二圧力閾値とに従って、ON−OFF状態に変換するようになっている。スイッチ回路PS1の第一圧力閾値は、全てのエアー供給源5から流れる所定圧力のエアーがエアー流出口44a,44b,44cから流出している正常状態(ワークの適正非着座状態)でのエアー圧力値である上限値に設定されている(図5参照)。一方、スイッチ回路PS2の第二圧力閾値は、全九箇所の中で一つの着座位置に存在する三箇所のエアー流出口(44a,44b,44cのいずれか)からエアーが流出できない状態(ワークの適正着座状態)でのエアー圧力値である下限値に設定されている。
例えば、所定リム径のホイール中継体Waを切削加工する場合にあって、ワーククランプ装置41は、搬入されてきたホイール中継体Waが着座位置Xaに配置される直前に、エアー流出が正常状態(ワークの適正非着座状態)であることを、両スイッチ回路PS1,PS2のOFF状態によって確認すると、ホイール中継体Waを着座位置Xaに配置して固持する。その後、制御装置10が、両スイッチ回路PS1,PS2がON状態であることを確認すると、エアー流出口44aが閉鎖されている状態(ワークの適正着座状態)であると判定し、ホイール中継体Waの固持状態が正常であると判断する。その後、旋盤による切削加工が行われるようにしている。リム径の異なるホイール中継体Wb,Wcの場合も同様に、ワーク適正非着座状態を確認後、着座位置Xb,Xcに固持して、ワークの適正着座状態を確認することにより、適正に切削加工が行われる。尚ここで、リム径の異なるホイール中継体Wa,Wb,Wcがそれぞれの着座位置Xa,Xb,Xcに着座されると、各着座位置のエアー流出口44a,44b,44cのいずれか三箇所が閉塞されることから、固持状態が正しく判断できることとなっている。このようなワーク着座42を配設することにより、リム径の異なるホイールに切り替わった場合も、ワーク着座42を変更する作業を要せず、この作業にかかる時間と費用とを低減することができる。
尚、このようにリム径の異なるホイール中継体Wa,Wb,Wcを正しく着座位置Xa,Xb,Xcに固持でき得るワーククランプ装置41にあっては、ワーク着座42の変更と、第一圧力閾値及び第二圧力閾値の変更とを行った以外は、上述した一種類のリム径に対応するワーククランプ装置1と同じ構成であり、これらについては説明を省略している。
上述したように、本発明にかかるワーククランプ装置1(及び41)にあっては、ワークの適正非着座状態を示す第一圧力閾値と、ワークの適正着座状態を示す第二圧力閾値とを設定した圧力センサ8により、ホイール中継体Wの着座位置Xに配置する直前又は取り外した直後と、ホイール中継体Wを着座位置Xに配した後とで、エアー供給源5とエアー流出口4との間のエアー圧力値を検出している。そして、このエアー圧力値に従って、エアーの流れが正常であるか否かの判定と、ホイール中継体Wが正しく着座位置Xに配置されているか否かの判定とを行い、ホイール中継体Wの着座位置Xでの固持状態を判断できるようにしている。したがって、切削屑等の異物が詰まっている異常状態や、ホイール中継体Wが着座位置Xから僅かにずれている異常状態などを正確に判定することができ、旋盤により切削加工されるホイール中継体Wは、着座位置Xに正常に固持されていることとなる。而して、旋盤等の切削加工による加工不良を著しく低減できると共に、仮に加工不良を生じても当該不良品が正常品に混在したまま次工程に搬送されることを防止でき得る。
また、上述した実施形態例のワーククランプ装置1にあっては、当該生産ラインが作動している時にはエアー供給源5からエアーを供給するようにしていることから、例え、ホイール中継体Wが搬入していない場合にあっても、切削屑等の異物がエアー流出口4に流入し難くなっている。特に、本実施形態例では、上述したように、比較的高い圧力でエアーを供給していることから、この効果が高く発揮される。
また、上述した実施形態例のワーククランプ装置1にあっては、実質的に、ホイール中継体Wの着座位置Xへの配置直前と、切削加工直後にエアー流出が正常であるか否かを判定するようにした構成であるが、着座位置Xへの配置直前、又は切削加工直後のいずれか一方に判定する構成としても良い。着座位置Xへの配置直前のみに判定すれば、加工不良の発生を防止できることとなり、また、切削加工直後のみに判定すれば、加工不良品が正常品に混在してしまうことを防止できる。いずれの構成であっても、加工不良品が、正常品と共に客先に送られることを防ぐことができるため、客先との間で高い信頼関係を維持することができ得る。
一方、旋盤等の回転加工装置では、従来、前記三箇所のエアー流出口に対して、エアー圧力値を一元的に判定するようにしたクランプ補償機能が設けられていた。すなわち、上述した従来構成のように、ワークを着座位置に固持した時に、所定の圧力値を基準として、検出したエアー圧力値が高いか低いかにより、三箇所のエアー流出口全ての着座確認を行っていた。このため、例えば、ワークが着座位置から僅かにずれて固持されていた場合等でも目詰まり等が生じていると、正常と判定されることもあり、厳密に着座状態を判定することができていなかった。ここで、三箇所のエアー流出口毎に圧力センサを設け、判定精度を向上させることもあり得るが、特に回転加工装置では、ワークを回転させて切削加工する装置の構成上、エアー流出口に連通する連通路を別々に配設することが、実用上の装置費用や加工精度等を考慮すれば困難であった。これに対して、本実施形態例は、上述したように、ホイール中継体Wを回転させて切削加工する旋盤20に、第一圧力閾値と第二圧力閾値とを設定した着座判定手段を備えたワーククランプ装置1を配設した構成としている。かかる構成により、着座位置Xに少なくとも三箇所設けられるエアー流出口4から流れるエアーのエアー圧力値を基に、この着座判定手段により、精度の高い判定を適正に行うことができ得ることとなっている。
また、上述した実施形態例にあっては、ホイール中継体Wの切削加工する旋盤にワーククランプ装置1が配置された構成であるが、該ホイール中継体Wだけでなく、様々な製品の加工装置に用いることができる。また、上述のように、生産ライン上でワークが順次搬送されてくる場合の他、不定期的にワークが搬送されるライン上でも用いることが可能である。このように不定期的に搬送されてくる場合には、ワークが着座位置に配置される直前又は取り外された直後のいずれかに限定して、ワークの適正非着座状態であるか否かを判定するようにしても良い。