JP4510234B2 - 液体吐出ヘッドの製造方法、該製造方法により製造された液体吐出ヘッド、および微小機械装置の製造方法 - Google Patents

液体吐出ヘッドの製造方法、該製造方法により製造された液体吐出ヘッド、および微小機械装置の製造方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱エネルギーを液体に作用させることで起こる気泡の発生によって、所望の液体を吐出する液体吐出ヘッドおよび該液体吐出ヘッドの製造方法等に関する。特に、本発明は、気泡の発生を利用して変位する可動部材を有する液体吐出ヘッドの製造方法、該製造方法により製造された液体吐出ヘッド、および微小機械装置の製造方法に関する。
【0002】
また、本発明は、紙、糸、繊維、布、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミック等の被記録媒体に対して記録を行う、プリンタ、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリンタ部を有するワードプロセッサ等の装置、さらには各種処理装置と複合的に組み合わされた産業用記録装置に適用することができるものである。
【0003】
なお、本発明における「記録」とは、文字や図形等のように意味を持つ画像を被記録媒体に対して付与することだけでなく、パターン等のように意味を持たない画像を付与することをも意味するものである。
【0004】
【従来の技術】
図12は、従来の液体吐出ヘッドを、一部を破断した状態で示す斜視図である。
【0005】
図12に示すように、従来の液体吐出ヘッドは、液体に気泡を発生させるための熱エネルギーを与える気泡発生素子である複数個のヒーター1005が並列に設けられた基板1004と、この基板1004上に接合された天板1001とを有している。
【0006】
基板1004は、シリコン等の基体上に絶縁および蓄熱を目的とした酸化シリコン膜または窒化シリコン膜を成膜し、その上に、ヒーター1005を構成する電気抵抗層および配線電極をパターニングしたものである。この配線電極から電気抵抗層に電圧を印加し、電気抵抗層に電流を流すことでヒーター1005が発熱する。なお、基板1004上には、ヒーター1005へ電流を供給する外部端子(不図示)が接続される実装用電極1003が設けられている。
【0007】
天板1001は、各ヒーター1005に対応した複数の液流路1007および各液流路1007に液体を供給するための共通液室1010を構成するためのもので、天井部分から各ヒーター1005の間に延びる流路側壁1001aが一体的に設けられている。また、天板1001の上面には、外部から供給された液体を共通液室1010に流入させるためのインク供給連絡口1002が設けられている。天板1001はシリコン系の材料で構成され、液流路1007および共通液室1010のパターンをエッチングで形成し、シリコン基板上にCVD等の公知の成膜方法により窒化シリコン、酸化シリコン等の流路側壁1001aとなる材料を堆積した後に、液流路1007の部分をエッチングして形成することができる。
【0008】
天板1001の先端面には壁部が設けられており、この壁部には、各液流路1007に対応しそれぞれ液流路1007を介して共通液室1010に連通する複数の吐出口1006が形成されている。
【0009】
図13は、従来の液体吐出ヘッドの他の例を、一部を破断した状態で示す斜視図である。
【0010】
図13に示す液体吐出ヘッドは、ヒーター2005に対面して配置された片持梁状の可動部材2009が設けられている。可動部材2009は、窒化シリコンや酸化シリコン等のシリコン系の材料、あるいは弾性に優れたニッケル等で形成された薄膜からなる。この可動部材2009は、ヒーター2005よりも上流側に支点を有し、さらにこの支点に対して下流側に自由端を持つように、ヒーター2005から所定の距離を隔てて配されている。
【0011】
なお、液体吐出ヘッドの天板2001、インク供給連絡口2002、実装用電極2003、基板2004、ヒーター2005、吐出口2006、液流路2007、および共通液室2013の構成は図12に示した液体吐出ヘッドと同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0012】
図14は、図13に示した液体吐出ヘッドによる液体吐出方法を説明するための、流路方向に沿った断面図である。
【0013】
図14(a)に示すように、ヒーター2005を発熱させると可動部材2009とヒーター2005との間のインクに熱が作用し、これによりヒーター2005に膜沸騰現象に基づく気泡2008が発生して成長する。この気泡2008の成長に伴う圧力は可動部材2009に優先的に作用し、可動部材2009は同図(b)に示すように支点を中心に吐出口2006側に大きく開くように変位する。可動部材2009の変位もしくは変位した状態によって、気泡2008の発生に基づく圧力の伝播や気泡2008自身の成長が吐出口2006側に導かれ、同図(c)に示すように吐出口2006から液体が吐出する。
【0014】
このように、ヒーター2005上に、液流路2007内の液体の流れの上流側(共通液室側)に支点を持ち下流側(吐出口2006側)に自由端を持つ可動部材2009を設けることによって、気泡2008の圧力伝播方向が下流側へ導かれ、気泡2008の圧力が直接的に効率よく吐出に寄与することになる。そして、気泡2008の成長方向自体も圧力伝播方向と同様に下流方向に導かれ、上流より下流で大きく成長する。このように、気泡2008の成長方向自体を可動部材2009によって制御し、気泡2008の圧力伝播方向を制御することで、吐出効率や吐出力または吐出速度などの根本的な吐出特性を向上させることができる。
【0015】
一方、同図(d)に示すように、気泡2008が消泡工程に入ると、可動部材2009自身の弾性力との相乗効果で気泡2008は急速に消泡し、可動部材2009も最終的には同図(a)に示した初期位置に復帰する。このとき、気泡の収縮体積を補うため、また、吐出された液体の体積分を補うために、上流側すなわち共通液室側から液体が流れ込み、液流路2007への液体の充填(リフィル)が行われるが、この液体のリフィルは、可動部材2009の復帰作用に伴って効率よく合理的かつ安定して行われる。
【0016】
図15は、図13に示した従来の液体吐出ヘッドの製造方法を説明するための斜視図である。
【0017】
図15に示す従来の液体吐出ヘッドの製造方法では、まず最初に、ヒーター2005等が設けられた基板2004の上に可動部材2009を形成する。可動部材2009は、例えば、犠牲層アルミパターンの形成、可動部材2009を成すSiN層の形成、およびSiN層のパターニングからなる一連の半導体プロセスによって作成される。このように、基板2004の表面には可動部材等のデバイスが設けられることから、基板2004の表面は3〜10μm程度の高さの凹凸を有することとなる。
【0018】
次に、基板2004と天板2001との間に液流路2007および共通液室2013(共に図13参照)を構成するためのノズル壁材2010を、基板2004上に接合する。そして、ノズル壁材2010の天板2001が接合される上面を平坦化する。
【0019】
次に、ノズル壁材2010の上面に天板2001を接合し、吐出口2006が形成されたオリフィスプレート2011を、液流路2007が開口している端面に接合する。以上の工程により、図13に示した従来の液体吐出ヘッドが製造される。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図15を参照して説明した製造方法では、ノズル壁材2010を基板2004上に精度良く接合させることが必要であり、さらに、天板2001の接合前にノズル壁材2010の上面を平坦化させる必要があるため、製造工程が煩雑となっていた。
【0021】
また、この壁材を有機材料で形成する場合には、ドライフィルムを用いれば上記の厚さの厚膜を形成することができるものの、基板の表面には上記の通りに凹凸があるため、壁材上面の平坦化を図ることが困難であるだけでなく、可動部材がドライフィルムによって変形してしまう虞があった。さらに、従来のウェットプロセスを用いて数十μmの厚膜を形成することは困難であった。
【0022】
そこで本発明は、壁部材の上面を平坦化しかつ製造時間を短縮することができ、さらに、数十μmの厚膜に形成された壁部材を備えた液体吐出ヘッド、該液体吐出ヘッドの製造方法、微小機械装置および該微小機械装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の液体吐出ヘッドの製造方法は、液体を吐出するための吐出口と、該吐出口に液体を供給するために前記吐出口に連通された液流路を構成する壁部材と、前記液体に気泡を発生させるための発熱体が備えられた基板と、前記吐出口側を自由端として前記基板に支持固定されるとともに、前記液流路内の前記発熱体に対面する位置に前記基板との間に間隙をおいて設けられた片持梁状の可動部材と、を有し、前記気泡を発生させることにより生じる圧力によって、前記可動部材の自由端を前記基板と離れる方向に変位させて前記圧力を前記吐出口側に導き、前記吐出口から液体を吐出させる液体吐出ヘッドの製造方法であって、前記可動部材を備える基板を用意する工程と、光硬化性樹脂を、前記可動部材と前記基板との間の前記間隙を埋め、かつ、前記可動部材を被覆するように、スピンコートにて前記基板に塗布する工程と、前記光硬化性樹脂の少なくとも前記壁部材に相当する箇所を露光し、硬化させる工程と、前記基板を切断する工程と、前記光硬化性樹脂の未露光部を除去する工程と、をこの順に有することを特徴とする。
【0024】
本発明の液体吐出ヘッドの製造方法によれば、SiNやSiO等の無機材料を成膜することによって壁部材を形成する場合に比べて製造時間を短縮することが可能となる。さらに、本発明によれば、壁部材は、基板上にスピンコートによって塗布された液状の光硬化性樹脂のうちの所定の箇所を露光して硬化させ、未露光の硬化していない部分を除去することによって形成されるため、従来のウェットプロセスとは異なり数十μmの厚膜に形成することが可能となる。
【0025】
さらに、光硬化性樹脂の未露光部を除去する工程の後に、硬化した光硬化性樹脂の融点以上の温度で樹脂のベークを行う工程を更に有することにより、壁部材の上面のレベリングフローが高精度に行われる。そのため、壁部材の上面を後工程の研磨等によって平坦化を行う必要がなく、液体吐出ヘッドの製造工程が簡素化され、ひいては液体吐出ヘッドを安価に製造することが可能になる。
【0026】
さらには、樹脂は、50%以上の固形成分を含み、平均分子量が1万以下である構成とすることにより、樹脂の粘性が比較的に低くなり、スピンコートによる塗布工程において樹脂を良好に平坦化させることが可能になるとともに、基板と可動部材との間の隙間にも樹脂を良好に流入させることができる。そのため、樹脂をスピンコートによって塗布する際に可動部材に撓みや曲がりが起こるおそれを低減することができる。
【0027】
また、本発明の液体吐出ヘッドは、上記本発明の液体吐出ヘッドの製造方法によって製造されたものである。
【0028】
また、本発明の微小機械装置の製造方法は、流路を構成する壁部材が表面に設けられた第1の基板と、前記第1の基板上の前記流路に前記第1の基板との間に間隙をおいて一方の端部を自由端として前記第1の基板に支持固定された可動部材と、前記壁部材の上面に接合される第2の基板とを有する微小機械装置の製造方法であって、前記可動部材を備える第1の基板を用意する工程と、硬化性樹脂を、前記可動部材と前記基板との間隙を埋め、かつ、前記可動部材を被覆するように、スピンコートにて前記第1の基板に塗布する工程と、前記光硬化性樹脂の少なくとも前記壁部材に相当する箇所を露光し、硬化させる工程と、前記光硬化性樹脂の未露光部を除去する工程と、を有することを特徴とする。
【0029】
上記の発明において、光硬化性樹脂の未露光部を除去する工程の後に、硬化した光硬化性樹脂の融点以上の温度で樹脂のベークを行う工程を更に有することが好ましい。
【0030】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に適用可能な一実施形態として、液体を吐出する複数の吐出口と、互いに接合されることでそれぞれ吐出口と連通する複数の液流路を構成するための第1の基板および第2の基板と、電気エネルギーを液流路内の液体の吐出エネルギーに変換するために各液流路内に配された複数のエネルギー変換素子と、エネルギー変換素子の駆動条件を制御するための、機能が異なる複数の素子あるいは電気回路とを有し、上記素子あるいは電気回路がその機能に応じて第1の基板と第2の基板とに振り分けられている液体吐出ヘッドの説明を行う。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態である液体吐出ヘッドの液流路方向に沿った断面図である。
【0032】
図1に示すように、この液体吐出ヘッドは、液体に気泡を発生させるための熱エネルギーを与える複数個(図1では1つのみ示す)の発熱体2が並列に設けられた素子基板1と、この素子基板1上に接合された天板3と、素子基板1および天板3の前端面に接合されたオリフィスプレート4と、素子基板1と天板3とで構成される液流路7内に設置された可動部材6とを有する。
【0033】
素子基板1は、シリコン等の基板上に絶縁および蓄熱を目的としたシリコン酸化膜または窒化シリコン膜を成膜し、その上に、発熱体2を構成する電気抵抗層および配線をパターニングしたものである。この配線から電気抵抗層に電圧を印加し、電気抵抗層に電流を流すことで発熱体2が発熱する。
【0034】
天板3は、各発熱体2に対応した複数の液流路7および各液流路7に液体を供給するための共通液室8を素子基板1との間に構成するためのものである。素子基板1上に複数の液流路7および共通液室8を構成する流路側壁9は、図8および図9を参照して後に説明するように、ネガ型の感光性エポキシ樹脂によって素子基板1上に設けられる。
【0035】
オリフィスプレート4には、各液流路7に対応しそれぞれ液流路7を介して共通液室8に連通する複数の吐出口5が形成されている。オリフィスプレート4もシリコン系の材料からなるものであり、例えば、吐出口5を形成したシリコン基板を10〜150μm程度の厚さに削ることにより形成される。なお、オリフィスプレート4は本発明には必ずしも必要な構成ではなく、オリフィスプレート4を設ける代わりに、天板3に液流路7を形成する際に天板3の先端面にオリフィスプレート4の厚さ相当の壁を残し、この部分に吐出口5を形成することで、吐出口付きの天板とすることもできる。
【0036】
可動部材6は、液流路7を吐出口5に連通した第1の液流路7aと、発熱体2を有する第2の液流路7bとに分けるように、発熱体2に対面して配置された片持梁状の薄膜であり、窒化シリコンや酸化シリコンなどのシリコン系の材料で形成される。
【0037】
この可動部材6は、液体の吐出動作によって共通液室8から可動部材6を経て吐出口5側へ流れる大きな流れの上流側に支点6aを持ち、この支点6aに対して下流側に自由端6bを持つように、発熱体2に面した位置に発熱体2を覆うような状態で発熱体2から所定の距離を隔てて配されている。この発熱体2と可動部材6との間が気泡発生領域10となる。
【0038】
上記構成に基づき、発熱体2を発熱させると、可動部材6と発熱体2との間の気泡発生領域10の液体に熱が作用し、これにより発熱体2上に膜沸騰現象に基づく気泡が発生し、成長する。この気泡の成長に伴う圧力は可動部材6に優先的に作用し、可動部材6は図1に破線で示されるように、支点6aを中心に吐出口5側に大きく開くように変位する。可動部材6の変位もしくは変位した状態によって、気泡の発生に基づく圧力の伝搬や気泡自身の成長が吐出口5側に導かれ、吐出口5から液体が吐出する。
【0039】
つまり、気泡発生領域10上に、液流路7内の液体の流れの上流側(共通液室8側)に支点6aを持ち下流側(吐出口5側)に自由端6bを持つ可動部材6を設けることによって、気泡の圧力伝搬方向が下流側へ導かれ、気泡の圧力が直接的に効率よく吐出に寄与することになる。そして、気泡の成長方向自体も圧力伝搬方向と同様に下流方向に導かれ、上流より下流で大きく成長する。このように、気泡の成長方向自体を可動部材によって制御し、気泡の圧力伝搬方向を制御することで、吐出効率や吐出力または吐出速度等の根本的な吐出特性を向上させることができる。
【0040】
一方、気泡が消泡工程に入ると、可動部材6の弾性力との相乗効果で気泡は急速に消泡し、可動部材6も最終的には図1に実線で示した初期位置に復帰する。このとき、気泡発生領域10での気泡の収縮体積を補うため、また、吐出された液体の体積分を補うために、上流側すなわち共通液室8側から液体が流れ込み、液流路7への液体の充填(リフィル)が行われるが、この液体のリフィルは、可動部材6の復帰作用に伴って効率よく合理的かつ安定して行われる。
【0041】
また、本実施形態の液体吐出ヘッドは、発熱体2の駆動を制御するための回路や素子を有する。これら回路や素子は、その機能に応じて素子基板1または天板3に分担して配置されている。また、これら回路や素子は、素子基板1および天板3がシリコン材料で構成されていることから、半導体ウェハプロセス技術を用いて容易かつ微細に形成することができる。
【0042】
以下に、半導体ウェハプロセス技術を用いて形成された素子基板1の構造について説明する。
【0043】
図2は、図1に示す液体吐出ヘッドに用いられる素子基板の断面図である。図2に示すように、本実施形態の液体吐出ヘッドに用いられる素子基板1では、シリコン基板301の表面に、蓄熱層としての熱酸化膜302および、蓄熱層を兼ねる層間膜303がこの順番で積層されている。層間膜303としては、SiO2膜またはSi34膜が用いられている。層間膜303の表面に部分的に抵抗層304が形成され、抵抗層304の表面に部分的に配線305が形成されている。配線305としては、Al、またはAl−Si,Al−CuなどのAl合金配線が用いられている。この配線305、抵抗層304および層間膜303の表面に、SiO2膜またはSi34膜から成る保護膜306が形成されている。保護膜306の表面の、抵抗層304に対応する部分およびその周囲には、抵抗層304の発熱に伴う化学的および物理的な衝撃から保護膜306を守るための耐キャビテーション膜307が形成されている。抵抗層304表面の、配線305が形成されていない領域は、抵抗層304の熱が作用する部分となる熱作用部308である。
【0044】
この素子基板1上の膜は半導体の製造技術によりシリコン基板301の表面に順に形成され、シリコン基板301に熱作用部308が備えられている。
【0045】
図3は、図2に示す素子基板1の主要素子を縦断するように素子基板1を切断した模式的断面図である。
【0046】
図3に示すように、P導電体であるシリコン基板301の表層にはN型ウェル領域422およびP型ウェル領域423が部分的に備えられている。そして、一般的なMosプロセスを用いてイオンプラテーションなどの不純物導入および拡散によって、N型ウェル領域422にP−Mos420が、P型ウェル領域423にN−Mos421が備えられている。P−Mos420は、N型ウェル領域422の表層に部分的にN型あるいはP型の不純物を導入してなるソース領域425およびドレイン領域426や、N型ウェル領域422の、ソース領域425およびドレイン領域426を除く部分の表面に厚さ数百Åのゲート絶縁膜428を介して堆積されたゲート配線435などから構成されている。また、N−Mos421は、P型ウェル領域423の表層に部分的にN型あるいはP型の不純物を導入してなるソース領域425およびドレイン領域426や、P型ウェル領域423の、ソース領域425およびドレイン領域426を除く部分の表面に厚さ数百Åのゲート絶縁膜428を介して堆積されたゲート配線435などから構成されている。ゲート配線435は、CVD法により堆積した厚さ4000Å〜5000Åのポリシリコンから成るものである。これらのP−Mos420およびN−Mos421からC−Mosロジックが構成されている。
【0047】
P型ウェル領域423の、N−Mos421と異なる部分には、電気熱変換素子駆動用のN−Mosトランジスタ430が備えられている。N−Mosトランジスタ430も、不純物導入および拡散などの工程によりP型ウェル領域423の表層に部分的に備えられたソース領域432およびドレイン領域431や、P型ウェル領域423の、ソース領域432およびドレイン領域431を除く部分の表面にゲート絶縁膜428を介して堆積されたゲート配線433などから構成されている。
【0048】
本実施形態では、電気熱変換素子駆動用のトランジスタとしてN−Mosトランジスタ430を用いたが、複数の電気熱変換素子を個別に駆動できる能力を持ち、かつ、上述したような微細な構造を得ることができるトランジスタであれば、このトランジスタに限られない。
【0049】
P−Mos420とN−Mos421との間や、N−Mos421とN−Mosトランジスタ430との間などの各素子間には、5000Å〜10000Åの厚さのフィールド酸化により酸化膜分離領域424が形成されており、その酸化膜分離領域424によって各素子が分離されている。酸化膜分離領域424の、熱作用部308に対応する部分は、シリコン基板301の表面側から見て一層目の蓄熱層434としての役割を果たす。
【0050】
P−Mos420、N−Mos421およびN−Mosトランジスタ430の各素子の表面には、厚さ約7000ÅのPSG膜またはBPSG膜などから成る層間絶縁膜436がCVD法により形成されている。熱処理により層間絶縁膜436を平坦化した後に、層間絶縁膜436およびゲート絶縁膜428を貫通するコンタクトホールを介して第1の配線層となるAl電極437により配線が行われている。層間絶縁膜436およびAl電極437の表面には、厚さ10000Å〜15000ÅのSiO2膜から成る層間絶縁膜438がプラズマCVD法により形成されている。層間絶縁膜438の表面の、熱作用部308およびN−Mosトランジスタ430に対応する部分には、厚さ約1000ÅのTaN0.8,hex膜から成る抵抗層304がDCスパッタ法により形成されている。抵抗層304は、層間絶縁膜438に形成されたスルーホールを介してドレイン領域431の近傍のAl電極437と電気的に接続されている。抵抗層304の表面には、各電気熱変換素子への配線となる第2の配線層としての、Alの配線305が形成されている。
【0051】
配線305、抵抗層304および層間絶縁膜438の表面の保護膜306は、プラズマCVD法により形成された厚さ10000ÅのSi34膜から成るものである。保護膜306の表面に形成された耐キャビテーション膜307は、厚さ約2500ÅのTaなどの膜から成るものである。
【0052】
このようにして得られた液体吐出ヘッドをヘッドカートリッジや液体吐出装置に搭載する場合には、図4に示すように、プリント配線基板23が搭載されたベース基板22上に固定し、液体吐出ヘッドユニット20とされる。図4において、プリント配線基板23には、液体吐出装置のヘッド制御部と電気的に接続される複数の配線パターン24が設けられ、これら配線パターン24は、ボンディングワイヤー25を介して外部コンタクトパッド15と電気的に接続される。外部コンタクトパッド15は素子基板1のみに設けられているので、液体吐出ヘッド21と外部との電気的接続は、従来の液体吐出ヘッドと同様にして行うことができる。ここでは、外部コンタクトパッド15を素子基板1に設けた例について説明したが、素子基板1ではなく天板3のみに設けてもよい。
【0053】
次に、フォトリソグラフィプロセスを利用した、素子基板への可動部材の製造方法について説明する。
【0054】
図5は、図1に基づいて説明した液体吐出ヘッドへの可動部材6の製造方法の一例を説明するための図であり、図5では、図1に示した液流路7の流路方向に沿った断面が示されている。図5に基づいて説明する製造方法では、素子基板1上に可動部材6を形成してなるものと、天板に流路側壁を形成してなるものとを接合することで、図1に示した構成の液体吐出ヘッドを製造する。従って、この製造方法では、可動部材6が作り込まれた素子基板1に天板を接合する前に、天板に流路側壁が作り込まれる。
【0055】
まず、図5(a)では、素子基板1の発熱体2側の面全体に、発熱体2との電気的な接続を行うための接続用パッド部分を保護するための第1の保護層としてのTiW膜76をスパッタリング法によって約5000Åの厚さで形成する。
【0056】
次に、図5(b)では、TiW膜76の表面に、間隙形成部材71aを形成するためのAl膜をスパッタリング法によって約4μmの厚さで形成する。間隙形成部材71aは、後述する図5(d)の工程において、SiN膜72aがエッチングされる領域までに延在されている。
【0057】
形成されたAl膜を、周知のフォトリソグラフィプロセスを用いてパターニングすることで、そのAl膜の、可動部材6の支持固定部に対応する部分のみを除去し、TiW膜76の表面に間隙形成部材71aを形成する。従って、TiW膜76表面の、可動部材6の支持固定部に対応する部分が露出することになる。この間隙形成部材71aは、素子基板1と可動部材6との間の間隙を形成するための、Al膜からなるものである。間隙形成部材71aは、図1に示した発熱体2と可動部材6との間の気泡発生領域10に対応する位置を含む、TiW膜76の表面の、可動部材6の支持固定部に対応する部分を除く部分全てに形成されている。従って、この製造方法では、TiW膜76の表面の、流路側壁に対応する部分にまで間隙形成部材71aが形成されている。
【0058】
この間隙形成部材71aは、後述するようにドライエッチングにより可動部材6を形成する際のエッチングストップ層として機能する。これは、TiW膜76や、素子基板1における耐キャビテーション膜としてのTa膜、および抵抗体上の保護層としてのSiN膜が、液流路7を形成するために使用するエッチングガスによりエッチングされてしまうからであり、それらの層や膜のエッチングを防止するために、このような間隙形成部材71aを素子基板1上に形成する。これにより、可動部材6を形成するためにSiN膜のドライエッチングを行う際にTiW膜76の表面が露出することがなく、そのドライエッチングによるTiW膜76および、素子基板1内の機能素子の損傷が間隙形成部材71aによって防止される。
【0059】
次に、図5(c)では、間隙形成部材71aの表面全体および、TiW膜76の、露出した面全体に、プラズマCVD法を用いて、可動部材6を形成するための材料膜である厚さ約4.5μmのSiN膜72aを、間隙形成部材71aを被覆するように形成する。ここで、プラズマCVD装置を用いてSiN膜72aを形成する際には、図6を参照して次に説明するように、素子基板1を構成するシリコン基板などを介して、素子基板1に備えられたTaからなる耐キャビテーション膜を接地する。これにより、プラズマCVD装置の反応室内でのプラズマ放電により分解されたイオン種およびラジカルの電荷に対して素子基板1内の発熱体2やラッチ回路などの機能素子を保護することができる。
【0060】
図6に示すように、SiN膜72aを形成するためのプラズマCVD装置の反応室83a内には、所定の距離をおいて互いに対向するRF電極82aおよびステージ85aが備えられている。RF電極82aには、反応室83aの外部のRF電源81aによって電圧が印加される。一方、ステージ85aのRF電極82a側の面上には素子基板1が取り付けられており、素子基板1の発熱体2側の面がRF電極82aと対向している。ここで、素子基板1が有する、発熱体2の面上に形成されたTaからなる耐キャビテーション膜は、素子基板1のシリコン基板と電気的に接続されており、間隙形成部材71aは、素子基板1のシリコン基板、およびステージ85aを介して接地されている。
【0061】
このように構成されたプラズマCVD装置においては、前記耐キャビテーション膜が接地された状態で供給管84aを通して反応室83a内にガスを供給し、素子基板1とRF電極82aとの間にプラズマ46を発生させる。反応室83a内でのプラズマ放電により分解されたイオン種やラジカルが素子基板1上に堆積することで、SiN膜72aが素子基板1上に形成される。その際、イオン種やラジカルにより素子基板1上に電荷が発生するが、上述したように耐キャビテーション膜が接地されていることにより、素子基板1内の発熱体2やラッチ回路などの機能素子がイオン種やラジカルの電荷によって損傷することが防止される。
【0062】
次に、図5(d)では、SiN膜72aの表面に、スパッタリング法によりAl膜を約6100Åの厚さで形成した後、形成されたAl膜を、周知のフォトリソグラフィプロセスを用いてパターニングし、SiN膜72a表面の、可動部材6に対応する部分に第2の保護層としてのAl膜(不図示)を残す。その第2の保護層としてのAl膜は、可動部材6を形成するためにSiN膜72aのドライエッチングを行う際の保護層(エッチングストップ層)すなわちマスクとなる。
【0063】
そして、誘電結合プラズマを使ったエッチング装置を用い、前記第2の保護層をマスクにしてSiN膜72aをパターニングすることで、そのSiN膜72aの残った部分で構成される可動部材6を形成する。そのエッチング装置ではCF4とO2の混合ガスを用いており、SiN膜72aをパターニングする工程では、図1に示したように可動部材6の支持固定部が素子基板1に直接固定されるようにSiN膜72aの不要な部分を除去する。可動部材6の支持固定部と素子基板1との密着部の構成材料には、パッド保護層の構成材料であるTiW、および素子基板1の耐キャビテーション膜の構成材料であるTaが含まれる。
【0064】
ここで、ドライエッチング装置を用いてSiN膜72aをエッチングする際には、図7を参照して次に説明するように素子基板1などを介して間隙形成部材71aを接地する。これにより、ドライエッチングの際にCF4ガスの分解により生じるイオン種およびラジカルの電荷が間隙形成部材71aに留まることを防止して、素子基板1の発熱体2やラッチ回路などの機能素子を保護することができる。また、このエッチングの工程において、SiN膜72aの不要な部分を除去することで露出する部分、すなわちエッチングされる領域には、上述したように間隙形成部材71aが形成されているため、TiW膜76の表面が露出することがなく、間隙形成部材71aによって素子基板1が確実に保護される。
【0065】
図7に示すように、SiN膜72aをエッチングするためのドライエッチング装置の反応室83b内には、所定の距離をおいて互いに対向するRF電極82bおよびステージ85bが備えられている。RF電極82bには、反応室83bの外部のRF電源81bによって電圧が印加される。一方、ステージ85bのRF電極82b側の面上には素子基板1が取り付けられており、素子基板1の発熱体2側の面がRF電極82bと対向している。ここで、Al膜からなる間隙形成部材71aは、素子基板1に備えれたTaからなる耐キャビテーション膜と電気的に接続されており、かつ、その耐キャビテーション膜は、前述したように素子基板1のシリコン基板と電気的に接続されており、間隙形成部材71aは、素子基板1の耐キャビテーション膜やシリコン基板、およびステージ85bを介して接地されている。
【0066】
このように構成されたドライエッチング装置において、間隙形成部材71aが接地された状態で供給管84aを通して反応室83a内にCF4とO2の混合ガスを供給し、SiN膜72aのエッチングを行う。その際、CF4ガスの分解により生じるイオン種やラジカルによって素子基板1上に電荷が発生するが、上述したように間隙形成部材71aが接地されていることにより、素子基板1内の発熱体2やラッチ回路などの機能素子がイオン種やラジカルの電荷によって損傷することが防止される。
【0067】
本実施形態では、反応室83aの内部に供給するガスとして、CF4とO2の混合ガスを用いたが、O2が混合されていないCF4ガスまたはC26ガス、あるいはC26とO2の混合ガスなどを用いてもよい。
【0068】
次に、図5(e)では、酢酸、りん酸および硝酸の混酸を用いて、可動部材6に形成したAl膜からなる前記第2の保護層や、Al膜からなる間隙形成部材71aを溶出して除去し、素子基板1上に可動部材6を作り込む。その後、過酸化水素を用いて、素子基板1に形成したTiW膜76の、気泡発生領域10およびパッドに対応する部分を除去する。
【0069】
以上のようにして、可動部材6が設けられた素子基板1が製造される。ここでは、図1に示したように可動部材6の支持固定部が素子基板1に直接固定されているものを製造する場合で説明したが、この製造方法を適用して、可動部材が台座部を介して素子基板に固定された液体吐出ヘッドを製造することもできる。この場合、図5(b)に示した間隙形成部材71aを形成する工程の前に、可動部材の、自由端と反対側の端部を素子基板に固定するための台座部を素子基板の発熱体側の面上に形成する。この場合でも、台座部と素子基板との密着部の構成材料には、パッド保護層の構成材料であるTiW、および素子基板の耐キャビテーション膜の構成材料であるTaが含まれる。
【0070】
次に、上記のように可動部材6が形成された素子基板1(図8(a)、図9(a)参照)の上に、下記の表1に示す材料からなるネガ型の感光性エポキシ樹脂100をスピンコートによって50μmの厚さで塗布する(図8(b)、図9(b)参照)。
【0071】
【表1】
Figure 0004510234
これにより、感光性エポキシ樹脂100を可動部材6と素子基板1との間に設けるとともに、可動部材6の表面にも設けることができるため、樹脂による可動部材6の変形を抑制し信頼性の高い可動部材6を有する液体吐出ヘッドを製造することが可能となる。
【0072】
次に、本発明に用いる壁部材の材料について説明する。壁部材の材料としては液流路をフォトリソグラフィーで容易にかつ精度よく形成できることから、感光性樹脂が好ましい。このような感光性樹脂は、構造材料としての高い機械的強度、素子基板1との密着性、及び耐インク性、と同時に、液流路の微細なパターンを高アスペクトでパターニングするための高い解像性が要求される。ここで、本発明者は、鋭意検討の結果、エポキシ樹脂のカチオン重合硬化物が構造材料として優れた強度、密着性、耐インク性を有し、また、前記エポキシ樹脂が常温にて固体状であれば、優れたパターニング特性を有することを見い出した。常温で固体状のエポキシ樹脂を用いる場合は、塗布の際には溶媒に溶かして液状とする。
【0073】
まず、エポキシ樹脂のカチオン重合硬化物は、通常の酸無水物もしくはアミンによる硬化物に比較して高い架橋密度(高Tg)を有するため、構造材として優れた特性を示す。
【0074】
また、常温にて固体状のエポキシ樹脂を用いることで、光照射によりカチオン重合開始剤より発生した重合開始種のエポキシ樹脂中への拡散が抑えられ、優れたパターニング精度、形状を得ることができる。
【0075】
ここで、可動部材6のような片持ち梁状の弁部材が表面に設けられている場合には、粘性が高い樹脂をスピンコートによって塗布しようとすると、樹脂が拡散する際に弁部材が撓んだり曲がったりするおそれがある。しかしながら、本実施形態におけるネガ型の感光性エポキシ樹脂として用いられる上記の材料は比較的に粘性が低いので、スピンコートによって塗布する際に弁部材に撓みや曲がりが起こるおそれがなく、さらに、素子基板1と可動部材6との間の隙間にも樹脂を良好に流し込むことができる。
【0076】
そして、本発明者らは、可動部材の変形を防止し、かつ、光硬化性樹脂の塗布表面を平滑にするために、上述のような光硬化性樹脂の材料としては、固形成分が十分に多くかつ塗布工程でのレベリング(平坦化)がし易い材料であること、具体的には50%以上の固形成分を含んでいる材料が好ましいことが判った。さらに、スピンコートによる塗布を可能にするには、樹脂の分子量が小さいこと、具体的には樹脂の平均分子量が1万以下であることが好ましいことが判った。
【0077】
なお、このスピンコート工程において、余分な樹脂コート材料(光硬化性樹脂)が、外周部の空気抵抗との関係から飛びきれないために、ウェハー周辺部が盛り上がる傾向にある。これは、コートの膜厚が厚くなればなる程、精度における問題となる。そこで、本実施形態では、図10に示すように、樹脂コート材料を溶解するアセトンおよびIPA(イソプロピルアルコール)の混合液等をウェハーの周辺部に滴下することにより(サイドリンス工程)、ウェハー上の樹脂コート膜の厚さの均一性を向上することができた。
【0078】
続いて、上記の表1に示すように、ホットプレートを用いて90℃,5分の条件で感光性エポキシ樹脂100のプリベークを行った後に、露光装置(MPA600)を用いて2[J/cm2]の露光光量で感光性エポキシ樹脂100を所定のパターンに露光する(図8(c)参照)。
【0079】
ネガ型の感光性樹脂である光硬化性樹脂は、露光された部分100bが硬化し、露光されない部分100aは硬化しない。そのため、上記の露光工程ではマスク101により流路側壁9を形成すべき箇所のみを露光し、その他の箇所は露光しない。なお、可動部材6と素子基板1との間の領域に流入している樹脂は、マスク101によって露光光が遮られるために硬化しない。また、上記のようにスピンコート工程(塗布工程)とサイドリンス工程とを同時に行うことにより、可動部材6が素子基板1との間に間隙形成部を形成した後に壁部材を平坦に形成することができる(図11参照)。さらに、可動部材6と素子基板1との間に流れ込んだネガ型の樹脂は硬化しないので、簡単に除去することができる。
【0080】
そして、再びホットプレートを用いて90℃,5分の条件で感光性エポキシ樹脂100のPEBを行い、上記の現像液を用いてエッチングを行った後に、200℃,1時間の条件で本ベークを行う。ここで、光硬化後の樹脂のレベリングを行う工程(本ベーク工程)では、上述のように樹脂の融点(上記の樹脂では90℃)以上の温度でベークを行ってレベリングフローをさせることが、レベリングの精度を向上させるために有効である。
【0081】
以上の工程により、図8(d)、図9(c)に示すように、表面に可動部材6および流路側壁9が設けられた素子基板1が形成される。
【0082】
この後、素子基板1をダイシングによって所定の形状に切断し、素子基板1に天板3およびオリフィスプレート4を接着剤によって接合する。なお、上記のような条件で本ベークを行うことにより、流路側壁9の高さ精度を±0.5μm以下とすることができるので、天板3を接合する際に流路側壁9の上面に塗布する接着剤層の厚さを薄くすることができる。
【0083】
ここでは素子基板1の切断を、感光性エポキシ樹脂100の未露光部を除去して流路側壁9が形成された後、天板3が接合される前に行っているが、感光性エポキシ樹脂100の露光後であれば、天板3を接合した後に切断してもよいし、感光性エポキシ樹脂100の未露光部が除去される前、すなわち液流路部分に未硬化樹脂が充填されている状態で切断してもよい。
【0084】
以上説明した実施形態では本発明を液体吐出ヘッドに適用した例について説明したが、本発明が適用されるのは上記のような液体吐出ヘッドに限られず、例えば、液流路を構成する壁部材が表面に設けられた第1の基板と、第1の基板上の液流路に第1の基板との間に間隙をおいて一方の端部を自由端として第1の基板に支持固定された可動部材と、壁部材の上面に接合される第2の基板とを有する微小機械装置全般に適用することができる。
【0085】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、基板上に設けられる壁部材が、露光されると硬化するネガ型の感光性樹脂によって構成されているので、SiNやSiO等の無機材料を成膜することによって壁部材を形成する場合に比べて製造時間を短縮することができ、さらに、従来のウェットプロセスとは異なり数十μmの厚膜を形成することができる。
【0086】
また、硬化した樹脂の融点以上の温度でその樹脂のベークを行うことにより、壁部材の上面のレベリングフローが高精度に行われるため、壁部材の上面を研磨等によって後工程で平坦化を行う必要がなく、製造工程が簡素化され、ひいては製造コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である液体吐出ヘッド構造を説明するための、液流路方向に沿った断面図である。
【図2】図1に示した液体吐出ヘッドに用いられる素子基板の断面図である。
【図3】図2に示した素子基板の主要素子を縦断するように素子基板を切断した模式的断面図である。
【図4】図1に示す液体吐出ヘッドを搭載した液体吐出ヘッドユニットの平面図である。
【図5】素子基板上に可動部材を形成する方法を説明するための図である。
【図6】プラズマCVD装置を用いて素子基板上にSiN膜を形成する方法を説明するための図である。
【図7】ドライエッチング装置を用いてSiN膜を形成する方法を説明するための図である。
【図8】素子基板上に可動部材及び流路側壁を形成する方法を説明するための工程を示す、液流路の横断面図である。
【図9】素子基板上に可動部材及び流路側壁を形成する方法を説明するための斜視図である。
【図10】流路側壁の形成工程におけるサイドリンス工程を説明するための図である。
【図11】流路側壁の形成工程において、スピンコート工程およびサイドリンス工程を行った後の状態を示す図である。
【図12】従来の液体吐出ヘッドを、一部を破断した状態で示す斜視図である。
【図13】従来の液体吐出ヘッドの他の例を、一部を破断した状態で示す斜視図である。
【図14】図13に示した液体吐出ヘッドによる液体吐出方法を説明するための、流路方向に沿った断面図である。
【図15】図13に示した従来の液体吐出ヘッドの製造方法を説明するための斜視図である。
【符号の説明】
1 素子基板
2 発熱体
3 天板
4 オリフィスプレート
5 吐出口
6 可動部材
6a 支点
6b 自由端
7 液流路
7a 第1の液流路
7b 第2の液流路
8 共通液室
9 流路側壁
10 気泡発生領域
15 外部コンタクトパッド
20 液体吐出ヘッドユニット
21 液体吐出ヘッド
22 ベース基板
23 プリント配線基板
24 配線パターン
25 ボンディングワイヤー
71a 間隙形成部材
72a SiN膜
76 TiW膜
100 感光性エポキシ樹脂
101 マスク

Claims (8)

  1. 液体を吐出するための吐出口と、
    該吐出口に液体を供給するために前記吐出口に連通された液流路を構成する壁部材と、前記液体に気泡を発生させるための発熱体が備えられた基板と、
    前記吐出口側を自由端として前記基板に支持固定されるとともに、前記液流路内の前記発熱体に対面する位置に前記基板との間に間隙をおいて設けられた片持梁状の可動部材と、を有し、
    前記気泡を発生させることにより生じる圧力によって、前記可動部材の自由端を前記基板と離れる方向に変位させて前記圧力を前記吐出口側に導き、前記吐出口から液体を吐出させる液体吐出ヘッドの製造方法であって、
    前記可動部材を備える前記基板を用意する工程と、
    光硬化性樹脂を、前記可動部材と前記基板との間の前記間隙を埋め、かつ、前記可動部材を被覆するように、スピンコートにて前記基板に塗布する工程と、
    前記光硬化性樹脂の少なくとも前記壁部材に相当する箇所を露光し、硬化させる工程と、
    前記基板を切断する工程と、
    前記光硬化性樹脂の未露光部を除去する工程と、をこの順に有することを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
  2. 前記光硬化性樹脂の未露光部を除去する前記工程の後に、硬化した前記光硬化性樹脂の融点以上の温度で前記樹脂のベークを行う工程をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  3. 前記可動部材は、SiN膜からなることを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  4. 前記基板を切断する前記工程では、前記壁部材上にさらに天板が接合された状態で、前記基板を切断することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  5. 前記光硬化性樹脂は、常温で固体状のエポキシ樹脂を溶媒に溶かした状態で塗布されることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  6. 前記壁部材は、エポキシ樹脂のカチオン重合硬化物であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  7. 前記光硬化性樹脂は、50%以上の固形成分を含み、平均分子量が1万以下であることを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  8. 前記基板および前記天板は、シリコン材料により形成されることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
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