JP4507290B2 - 非水溶媒系二次電池用電極及びそれを用いた非水溶媒系二次電池 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、電池容量を大きくでき、充放電を繰り返しても活物質の剥離,脱落を抑制することにより、電池の容量低下が小さい電池用の非水溶媒系バインダ組成物を形成した電極およびそれを用いた非水溶媒系二次電池に関する。
【従来の技術】
【0002】
電子技術の進歩により、電子機器の性能が向上し、小型、ポータブル化が進み、電源として高エネルギー密度の電池が望まれている。従来の二次電池として、鉛蓄電池、ニッケル、カドミウム電池が挙げられるが、エネルギー密度の高い電池を得ると云う点では未だ不十分である。そこで、これらの電池に替わるものとして、高エネルギー密度の有機電解液二次電池(以下リチウム二次電池と云う)が開発され、急速に普及している。
【0003】
リチウム二次電池は、正極にリチウムコバルト複合酸化物等のリチウム複合金属酸化物を、負極にはリチウムを吸蔵放出可能で優れた可とう性や、リチウムの析出の恐れが少ない炭素材料が用いられ、これらとバインダ樹脂とをN−メチルー2−ピロリドン(NMP)に分散させてスラリとしたものを集電体である金属箔上に両面塗布し、溶剤を乾燥した後、ローラープレスにて圧縮成形し正,負極板を得ている。バインダとしては主にポリフッ化ビニリデン(PVDF)が多く使用されている。しかしながら、ポリフッ化ビニリデンをバインダとして使用した場合、集電体と合剤層との界面の密着、および、合剤層相互間の密着性が劣るため、極板の裁断工程や捲回工程等の製造工程時に、合剤の一部が集電体から剥離,脱落して微少短絡や電池容量ばらつきの原因となる。
【0004】
また、充放電を繰り返すことによって、特に、負極の炭素材料は膨張,収縮するため、合剤が集電体から剥離,脱落したり、合剤相互間の密着の低下により、集電効率の低下、リチウムとの反応の不均一等が生じて電池容量が次第に低下すると云う問題があった。さらに特開平6−172452号公報に記載されているように、フッ化ビニリデンを主成分とする単量体と、不飽和二塩基性モノエステルとを共重合して得られたフッ化ビニリデン系共重合体をバインダとする場合、集電体との密着強度は向上するものの、高電圧下での異常温度上昇により分解してフッ化水素が発生し、負極板表面のリチウム層間化合物(GIC)や、析出した金属リチウムと反応して異常発熱し、電池が破裂,爆発する恐れがあった。ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂以外のバインダとして、例えば、特開平5−74461号公報に記載されているスチレンブタジエンゴム(SBR)系合成ゴム、特開平9−87571号公報に記載されているジエン系ゴムを含む合成ゴムや、特開平6−163031号公報に記載されているポリイミド樹脂等の熱可塑性樹脂の使用が提案されている。
【0005】
しかし、これらは電解液に対して溶解、もしくは大きく膨潤して、集電体と合剤層との界面の密着および合剤層相互間の密着を長期間維持できない。また、ポリイミド樹脂を合剤層に用いると可とう性が低く、作製した電極を捲回する際に合剤層の割れや剥離が生じて容量を低下させる。スチレンブタジエンゴム等のジエン系合成ゴムは、耐電解液性を有するものの、活物質とバインダ等との均一分散が非常に困難であり、セルロースや界面活性剤等の添加が必要で、これらが電解液に溶解して電池の充放電効率を低下させる。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、集電体と合剤層との界面の密着および合剤層相互間の密着性を向上させて、微少短絡や電池容量のばらつきを抑制しつつ、バインダ添加量の低減により、電池の高容量化を図り、充放電サイクルによる電池容量低下の改善と、かつ、電池内温度が異常昇温した場合でも破裂,爆発等の危険性の小さい安全な非水電解液二次電池及びそれに用いられる電極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の要旨は次のとおりである。
〔1〕ジイソシアネートまたはジアミン(a)とジカルボン酸および/またはトリカルボン酸無水物(b)とを有機溶媒中で反応させて得られるポリアミド系樹脂中間体(A)、エポキシ樹脂(B)およびポリオキシアルキレンモノアミン(C)とを反応させて得られる側鎖に(C)成分残基を有するバインダ樹脂を非水溶媒に溶解および/または分散させた非水溶媒系バインダ組成物と活物質とを混合し、電極基体表面に塗布後、非水溶媒を除去した非水溶媒系バインダ組成物を形成した非水溶媒系二次電池の電極。
〔2〕更に、多官能化合物および/または熱可塑性樹脂とを添加した非水溶媒系バインダ組成物を使用した上記電極。
〔3〕前記活物質が、充放電により可逆的にリチウムイオンを挿入,放出できるものである前記電極。
〔4〕前記活物質が、充放電により可逆的にリチウムイオンを挿入,放出できる遷移金属酸化物で、該遷移金属酸化物が一般式LixMnyO o (xは0.2≦x≦2.5であり、yは0.8≦y≦1.25である)で示されるリチウムマンガン複合酸化物である前記の電極。
〔5〕非水溶媒系二次電池の少なくとも一方の極に、前記の電極を用いたことを特徴とする非水溶媒系二次電池。
【発明の実施の形態】
【0009】
ポリアミド系樹脂中間体(A)としては特に制限はないが、ジイソシアネートまたはジアミン(a)とジカルボン酸および/またはトリカルボン酸無水物(b)成分中のカルボキシル基が1当量/(A)成分中のイソシアネート基またはアミノ基が1当量未満となるような割合で反応させて得たものが挙げられる。これらの(A)成分は、単独または二種
以上組合せて用いられる。上記ジイソシアネートまたはジアミンは、いずれを使用してもよいが、(A)成分の製造の容易さ、収率向上等の点ではジイソシアネートの方が好ましい。
【0010】
上記ジイソシアネートは、例えば、芳香族ジイソシアネートとしては4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。脂肪族ジイソシアネートとしては1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。脂環式ジイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添化4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、水添化m−キシリレンジイソシアネート等)、複素環式ジイソシアネート(3,9−ビス(3−イソシアネートプロピル)−2,4,8,10−テトラスピロ〔5,5〕ウンデカン等)などが挙げられる。上記の中でも、耐熱性向上等の点で芳香族ジイソシアネートが好ましい。
【0011】
また、ジアミンとしては、例えば、脂肪族ジアミン(アルキレンジアミン、ジアミノポリジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレンジアミン等)、脂環式ジアミン(イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン等)、複素環式ジアミン(3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラスピロ〔5,5〕ウンデカン等)、芳香族ジアミン(p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、4,4’−(または3,4’−、3,3’−、2,4’−、2,2’−)ジアミノジフェニルメタン、4,4’−(または3,4’−、3,3’−、2,4’−、2,2’−)ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(または3,4’−、3,3’−、2,4’−、2,2’−)ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−(または3,4’−、3,3’−、2,4’−、2,2’−)ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−(または3,3’−)ベンゾフェノンジアミン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’−ジアミノベンズアニリド等)などが挙げられる。これらの(a)ジイソシアネートまたはジアミンは、1種以上用いることができる。(b)ジカルボン酸および/またはトリカルボン酸無水物としては、特に制限はなく、例えば、脂肪族ジカルボン酸としてコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、エイコサン二酸、アルキレンエーテル結合含有ジカルボン酸、アルキレンカーボネート結合含有ジカルボン酸、ブタジエン結合含有ジカルボン酸、水添ブタジエン結合含有ジカルボン酸、ジメチルシロキサン結合含有ジカルボン酸等が挙げられる。
【0012】
また、脂環式ジカルボン酸(ダイマー酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等)、複素環式ジカルボン酸(ピリジンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸、ビス(4−カルボキシメトキシフェニル)ジメチルメタン、トリメリット酸無水物/ジアミン=2モル/1モル反応生成物であるイミド結合含有ジカルボン酸等)、芳香族トリカルボン酸無水物(トリメリット酸無水物等)などが挙げられる。これらの(b)ジカルボン酸および/またはトリカルボン酸無水物は、1種以上用いることができる。(A)成分を製造するための(a)ジイソシアネートまたはジアミンと、(b)ジカルボン酸との配合割合〔(b)成分中のカルボキシル基/(a)成分中のイソシアネート基またはアミノ基〕は、1当量/1当量未満とすることが好ましく、1当量/0.5当量〜1当量/0.97当量がより好ましく、1当量/0.67当量〜1当量/0.95当量が特に好ましく、1当量/0.75当量〜1当量/0.91当量とすることが極めて好ましい。
【0013】
この配合割合が1当量/1当量以上であると、(a)成分が未反応物として残留し易い傾向があり、また、反応生成物の末端がカルボン酸となりにくく、(A)成分の収率が低下する傾向がある。(a)成分と(b)成分の反応は、有機溶媒中で行うことができる。有機溶媒としては、特に制限はなく、例えば、アミド系溶媒(N−メチルー2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等)、尿素系溶媒(N,N−ジメチルエチレンウレア、N,N−ジメチルプロピレンウレア、テトラメチル尿素等)、ラクトン系溶媒(γ−ブチロラクトン、γ−カプロラクトン等)、カーボネート系溶媒(プロピレンカーボネート等)、ケトン系溶媒(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチルカルビトールアセテート等)、グライム系溶媒(ジグライム、トリグライム、テトラグライム等)、炭化水素系溶媒(トルエン、キシレン、シクロヘキサン等)、スルホン系溶媒(スルホラン等)などが挙げられる。上記の中でも、高溶解性、高反応促進性等の点で、アミド系溶媒、尿素系溶媒が好ましく、これらの中では、(a)成分と(b)成分の反応を阻害し易い活性水素をもたない等の点で、N−メチルー2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルエチレンウレア、N,N−ジメチルプロピレンウレア、テトラメチル尿素がより好ましく、この中では、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。
【0014】
有機溶媒の使用量は、(a)成分と(b)成分との総量100重量部に対して、30〜2000重量部が好ましく、50〜1000重量部がより好ましく、70〜400が特に好ましい。この溶媒の使用量が30重量部未満では溶解性が乏しく、反応系の不均一化や高粘度化を起こし易い傾向があり、2000重量部を超えると反応が進みにくく、反応が完結しにくい傾向がある。これらの有機溶媒は、1種以上用いることができる。
【0015】
(a)成分と(b)成分の反応温度は、40〜300℃が好ましく、100〜250℃がより好ましく、120〜220℃が特に好ましい。この反応温度が40℃未満では反応が進みにくく、反応が完結しにくい傾向があり、300℃を超えると副反応によるゲル化等が起こり易く、反応が制御しにくい傾向がある。
【0016】
本発明に用いる(B)エポキシ樹脂は、特に制限はなく、例えば、二官能芳香族グリシジルエーテルとしてビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等が挙げられる。多官能芳香族グリシジルエーテルとしてはフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂等が、二官能脂肪族グリシジルエーテルとしてはポリエチレングリコール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、ネオペンチルグリコール型エポキシ樹脂、ジブロモネオペンチルグリコール型エポキシ樹脂、ヘキサンジオール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0017】
二官能脂環式グリシジルエーテル(水添化ビスフェノールA型エポキシ樹脂等)、多官能脂肪族グリシジルエーテル(トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、ソルビトール型エポキシ樹脂、グリセリン型エポキシ樹脂等)、二官能芳香族グリシジルエステル(フタル酸ジグリシジルエステル等)、二官能脂環式グリシジルエステル(テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等)、二官能芳香族グリシジルアミン(N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトリフルオロメチルアニリン等)、多官能芳香族グリシジルアミン(N,N,N’,N’−テトラグリシジルー4,4−ジアミノジフェニルメタン、1,3−ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール等)、二官能脂環式エポキシ樹脂(アリサイクリックジエポキシアセタール、アリサイクリックジエポキシアジペート、アリサイクリックジエポキシカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキシド等)、二官能複素環式エポキシ樹脂(ジグリシジルヒダントイン等)、多官能複素環式エポキシ樹脂(トリグリシジルイソシアヌレート等)、二官能または多官能ケイ素含有エポキシ樹脂(オルガノポリシロキサン型エポキシ樹脂等)などが挙げられ、その中でも、反応の制御し易さ等の点で、二官能エポキシ樹脂が好ましい。
【0018】
二官能エポキシ樹脂の中でも、耐熱性向上等の点で、二官能芳香族グリシジルエーテルがより好ましく、その中でも、廉価等の点でビスフェノールA型エポキシ樹脂が特に好ましい。これらの(B)エポキシ樹脂は、1種以上用いられる。本発明に用いる(C)ポリオキシアルキレンモノアミンとしては、特に制限はなく、例えば一般式〔1〕
【化1】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、nは正の整数)で表されるポリオキシアルキレンモノアミンが挙げられ、その中でも、より低弾性率で柔軟性に優れた樹脂が得られるなどの点でポリオキシアルキレンモノアミンの分子量600〜2000のものが好ましい。このようなポリオキシアルキレンモノアミンとしては、例えば、ハンツマンコーポレーション製商品名ジェファーミンM−600、M−1000、M−2005、M−2070等が挙げられる。
【0019】
これらの(C)ポリオキシアルキレンモノアミンは、1種以上用いられる。(A)成分、(B)成分および(C)成分の配合割合は、(B)成分中のエポキシ基/〔(A)成分中のカルボキシル基由来の活性水素と(C)成分中のアミノ基由来の活性水素の総量)〕は、1当量/1当量未満とすることが好ましく、1当量/0.25当量〜1当量/0.90当量とすることがより好ましく、1当量/0.33当量〜1当量/0.83当量とすることが特に好ましく、1当量/0.45当量〜1当量/0.67当量とすることが極めて好ましい。
【0020】
この配合割合が1当量/1当量以上であると、熱硬化性が損われ易く、耐薬品性が低下する傾向がある。(A)成分、(B)成分および(C)成分の反応において、(A)成分と(C)成分とは直接反応させないことが好ましい。具体的には、(B)成分と(C)成分とを反応させた後、この反応生成物に(A)成分を反応させることがより好ましく、特に、(A)成分と(B)成分との反応生成物に(C)成分を反応させることが好ましい。(A)成分と(C)成分とを直接反応させると、末端に(C)成分残基を有する樹脂が副生し易く、側鎖に(C)成分残基を有する本発明の熱硬化性ポリアミド系樹脂の収率が低下する傾向がある。
【0021】
(A)成分、(B)成分および(C)成分の反応は、有機溶媒中で実施される。有機溶媒としては、特に制限はなく、例えば、先に述べた(A)成分を製造する際に用いることのできる有機溶媒が挙げられる。これらの中では、高溶解性、高反応促進性等の点で、含窒素系極性溶媒(アミド系溶媒、尿素系溶媒)が好ましく、これらの中では、(A)成分、(B)成分および(C)成分の反応を阻害し易い活性水素を持たない等の点で、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルエチレンウレア、N,N−ジメチルプロピレンウレア、テトラメチル尿素がより好ましく、この中では、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。
【0022】
有機溶媒の使用量は、(A)成分、(B)成分および(C)成分との総量100重量部に対して、30〜2000重量部が好ましく、50〜1000重量部がより好ましく、70〜400が特に好ましい。有機溶媒量が30重量部未満では溶解性が乏しく、反応系の不均一化や高粘度化を起こし易い傾向があり、2000重量部を超えると反応が進みにくく、反応が完結しにくい傾向がある。これらの有機溶媒は、1種以上用いられる。
【0023】
(A)成分、(B)成分および(C)成分の反応温度は、40〜300℃が好ましく、100〜250℃がより好ましく、120〜220℃が特に好ましい。この反応温度が40℃未満では反応が進みにくく、反応が完結しにくい傾向があり、反応温度が300℃を超えると副反応によるゲル化等が起こり易く、反応が制御しにくい傾向がある。本発明においては、必要に応じて触媒を用いることができる。反応触媒としては、例えば、三級アミンとしてトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルフォリン、N−エチルモルフォリン、N,N’−ジメチルピペラジン、ピリジン、ピコリン、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウンデセン−7等が挙げられる。イミダゾール化合物として2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、1−アジン−2−メチルイミダゾール等がある。有機スズ化合物(ジブチルチンジラウレート、1,3−ジアセトキシテトラブチルジスタノキサン等)、四級オニウム塩(臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化トリオクチルメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化ドデシルトリメチルアンモニウム、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムアセテート、塩化テトラフェニルホスホニウム、塩化トリフェニルメチルホスホニウム、臭化テトラメチルホスホニウム等)、有機リン化合物(3−メチル−1−フェニル−2−ホスフォレン−1−オキシド等)、有機酸アルカリ金属塩(安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム等)、無機塩(塩化亜鉛、塩化鉄、塩化リチウム、臭化リチウム等)、金属カルボニル化合物(オクタカルボニル二コバルト(コバルトカルボニル)等)などが挙げられる。
【0024】
これらの触媒は、1種以上用いることができる。以上に述べた方法で得られるバインダ樹脂は、そのアミド結合の窒素原子と炭素原子の結合間に高い極性と強い水素結合を有し、大きな結合エネルギーを持っていることから耐熱性、接着性および耐電解液性に優れている。また、側鎖のポリオキシアルキレンモノアミン(C)成分残基により可とう性に優れている。これら非水溶媒系バインダ組成物に、さらに上記のエポキシ樹脂やビスマレイミド、ブロックイソシアネート化合物、メラミン化合物等の多官能化合物を架橋剤として添加することにより、耐熱性、接着性および耐電解液性がより優れた非水溶媒系バインダ組成物が得られる。
【0025】
エポキシ樹脂としては、前記エポキシ樹脂(B)を用いることができる。ブロックイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびこれらの誘導体などがあり、例えば、日本ポリウレタン工業(株)製コロネート2513、2507、2515、2512、住友バイエルウレタン(株)製デスモジュールBL3175、BL4165などが挙げられる。メラミン化合物としては、アメリカン・サイアナミド社や三井東圧サイメル社製のメラミン、例えばサイメル(登録商標)300、301、303、350、370、380、1116および1130、サイメル(登録商標)1123および1125のようなベンゾグアナミン、グリコルリル樹脂サイメル(登録商標)1170、1171および1172、並びに、尿素ベースの樹脂ビートル(登録商標)60、65および80が挙げられる。ビスマレイミドとしては、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパンなどが挙げられる。多官能化合物の添加量としては、非水溶媒系バインダ組成物100重量部に対し0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部添加することが望ましい。
【0026】
また、非水溶媒系バインダ組成物とポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等の熱可塑性樹脂とを混合したバインダ組成物は、優れた耐熱性、接着性および耐電解液性を維持させたまま、良好な可とう性を付与することが可能である。但し、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素原子を含む熱可塑性樹脂を混合すると、高温下でフッ化水素を発生する恐れがあるため、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂等のフッ素原子を含まない熱可塑性樹脂の方が好ましい。
【0027】
上記非水溶媒系バインダ組成物と活物質とを混合し、電極基体表面に塗布し、極性非水溶媒を除去した電極は、活物質を含む合剤層と電極基体である金属箔との密着性に優れ、耐電解液性および耐熱性に優れ、高温下で使用されても長期間電極基体と合剤層および合剤層相互間の密着強度を維持できる。電極基体と合剤層および合剤層相互間の密着強度が向上すると、合剤中の非水溶媒系バインダ組成物の添加量を低減でき、その結果、活物質量を増やすことが可能で、こうした電極を用いた電池は体積エネルギー密度を増大できる。
【0028】
長期間の電極基体と合剤層および合剤層相互間の密着強度を維持した電極を用いた電池は、充放電を繰り返しても電極基体と合剤層および合剤層相互間の導電ネットワークを維持でき、充電反応および放電反応が均一に行えるので、サイクル寿命特性も向上できる。前記の活物質としては、可逆的にリチウムイオンを挿入,放出できる遷移金属酸化物であればよく、リチウムコバルト複合酸化物,リチウムニッケル複合酸化物並びにこれらの混合物でもよい。
【0029】
また、リチウムニッケル複合酸化物においても、Al、V、Cr、Fe、Co、Sr、Mo、W、Mn、B、Mgから選ばれる1種の金属で、ニッケルサイトまたはリチウムサイトを置換したリチウムニッケル複合酸化物でもよい。リチウムマンガン複合酸化物においても、Li、Al、V、Cr、Fe、Co、Ni、Mo、W、Zn、B、Mgから選ばれる少なくとも1種の金属でマンガンサイトまたはリチウムサイトを置換したリチウムマンガン複合酸化物でもよい。一方、負極炭素材料としてはピッチコークス、石油コークス、黒鉛、炭素繊維、活性炭等もしくはこれらの混合物でもよい。
【0030】
分散溶媒として、N−メチル−2−ピロリドンを用いたが、非水溶媒系バインダ組成物を均一に溶解または分散できる有機溶媒であればよく、複数の有機溶媒の混合液でも構わない。使用できる溶媒は、バインダ樹脂の合成に用いることのできる前記の溶媒がそのまま使用できるが、N−メチル−2−ピロリドンおよびN−メチル−2−ピロリドンとエステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチルカルビトールアセテート等)あるいはグライム系溶媒(ジグライム、トリグライム、テトラグライム等)との混合溶媒が特に好ましい。
【参考例及び実施例】
【0031】
1.非水溶媒系バインダ組成物の調製本発明で用いる非水溶媒系バインダ組成物の代表的な参考例を挙げて具体的に説明する。
〔調製例1〕
【0032】
撹拌機、温度計、冷却コンデンサおよび窒素ガス導入管を装備した1リットルのセパラブルフラスコ内に、窒素雰囲気下で(a)ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート115.87g(0.463モル)、(b)ジカルボン酸および/またはトリカルボン酸無水物としてアジピン酸24.36g(0.167モル)、セバシン酸44.95g(0.222モル)、ドデカン二酸38.39g(0.167モル)および有機溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン252.8gを仕込んで130℃まで昇温した。
【0033】
途中、約100℃で反応系が均一な溶液状態になり、アミド化反応に伴う炭酸ガスが発生し始めた。130℃で2時間、次いで170℃で2時間反応を進めると炭酸ガスの発生がなくなり、(A)ポリアミド系樹脂中間体の溶液が得られた。続いて、この(A)ポリアミド系樹脂中間体の溶液を170℃に保温した状態で、これに(B)エポキシ樹脂としてN−メチル−2−ピロリドン92.6gに溶解させたビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量187g/eq.)88.75g(0.238モル)の溶液を5分間かけて滴下した。
【0034】
同温度で1時間反応を進めたところで、ここに(C)ポリオキシアルキレンモノアミンとしてN−メチル−2−ピロリドン103.8gに溶解させたハンツマンコーポレーション製商品名ジェファーミンM−1000(前記一般式〔1〕でn:22、R:水素原子/メチル基=19/3、一級アミノ基換算分子量:1205、以上カタログ値)27.90g(0.023モル)の溶液を5分間かけて滴下した。同温度でさらに1時間反応を進めた後、N−メチル−2−ピロリドン249.6gを添加して冷却し、側鎖に(C)成分残基を有する本発明の非水溶媒系バインダ組成物を得た。
〔調製例2〕
【0035】
撹拌機、温度計、冷却コンデンサおよび窒素ガス導入管を装備した1リットルのセパラブルフラスコ内に、窒素雰囲気下(a)ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート100.10g(0.400モル)(b)ジカルボン酸および/またはトリカルボン酸無水物としてアジピン酸21.04g(0.144モル)、セバシン酸38.83g(0.192モル)、ドデカン二酸33.16g(0.144モル)および有機溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン218.4gを仕込んで130℃まで昇温した。
【0036】
途中、約100℃で反応系が均一な溶液状態になり、アミド化反応に伴なう炭酸ガスが発生し始めた。130℃で2時間、次いで170℃で2時間反応を進めると炭酸ガスの発生がなくなり、(A)ポリアミド系樹脂中間体の溶液が得られた。続いて、この(A)ポリアミド系樹脂中間体の溶液を170℃に保温した状態とし、これに(B)エポキシ樹脂としてN−メチル−2−ピロリドン120gに溶解させたビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量187g/eq.)92.00g(0.246モル)の溶液を5分間かけて滴下した。
【0037】
同温度で1時間反応を進めたところで、ここに(C)ポリオキシアルキレンモノアミンとしてN−メチル−2−ピロリドン108.8gに溶解させたハンツマンコーポレーション製商品名ジェファーミンM−1000(前記一般式〔1〕でn:22、R:水素原子/メチル基=19/3、一級アミノ基換算分子量:1205、以上カタログ値)48.20g(0.040モル)の溶液を5分間かけて滴下した。同温度でさらに1時間反応を進めた後、N−メチル−2−ピロリドン248.5gを添加して冷却し、側鎖に(C)成分残基を有する本発明の非水溶媒系バインダ組成物を得た。
〔調製例3〕
【0038】
撹拌機、温度計、冷却コンデンサおよび窒素ガス導入管を装備した1リットルのセパラブルフラスコ内に、窒素雰囲気下(a)ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート115.12g(0.460モル)(b)ジカルボン酸および/またはトリカルボン酸無水物としてアジピン酸24.20g(0.166モル)、セバシン酸44.66g(0.221モル)、ドデカン二酸38.14g(0.166モル)および有機溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン251.2gを仕込んで130℃まで昇温した。
【0039】
途中、約100℃で反応系が均一な溶液状態になり、アミド化反応に伴う炭酸ガスが発生し始めた。130℃で2時間、次いで170℃で2時間反応を進めると炭酸ガスの発生がなくなり、(A)ポリアミド系樹脂中間体の溶液が得られた。続いて、この(A)ポリアミド系樹脂中間体の溶液を170℃に保温した状態とし、これに(B)エポキシ樹脂としてN−メチル−2−ピロリドン105.3gに溶解させたビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量187g/eq.)61.93g(0.166モル)の溶液を5分間かけて滴下した。
【0040】
同温度で1時間反応を進めたところで、ここに(C)ポリオキシアルキレンモノアミンとしてN−メチル−2−ピロリドン92.0gに溶解させたハンツマンコーポレーション製商品名ジェファーミンM−1000(前記一般式〔1〕でn:22、R:水素原子/メチル基=19/3、一級アミノ基換算分子量:1205、以上カタログ値)55.43g(0.046モル)の溶液を5分間かけて滴下した。同温度でさらに1時間反応を進めた後、N−メチル−2−ピロリドン249.2gを添加して冷却し、側鎖に(C)成分残基を有する本発明の非水溶媒系バインダ組成物を得た。
〔調製例4〕
【0041】
調製例1で得られたバインダ樹脂のN−メチル−2−ピロリドン溶液100.0g(固形分42%)にブロックポリイソシアネート架橋剤(ヘキサメチレンジイソシアネート三量体の2−ブタノンオキシムブロック体)8.3gを添加し、バインダ組成物溶液を得た。
〔調製例5〕
【0042】
調製例1で得られたバインダ樹脂のN−メチル−2−ピロリドン溶液100.0g(固形分42%)にメラミン樹脂架橋剤(へキサメトキシメチロールメラミン)8.3gを添加し、バインダ組成物溶液を得た。
〔調製例6〕
【0043】
調製例1で得られたバインダ樹脂のN−メチル−2−ピロリドン溶液100.0g(固形分42%)にエポキシ樹脂架橋剤(4,4’−イソプロピリデンビスフェノールジグリシジルエーテル)8.3gを添加し、バインダ組成物溶液を得た。
〔調製例7〕
【0044】
調製例1で得られたバインダ樹脂のN−メチル−2−ピロリドン溶液100.0g(固形分42%)にビスマレイミド架橋剤(ビス(4−マレイミドフェニル)メタン)8.3gを添加し、バインダ組成物溶液を得た。調製例1〜7で得られたバインダ組成物溶液、および、比較樹脂組成物としてポリフッ化ビニリデンのN−メチル−2−ピロリドン溶液(呉羽化学製KF−1100)を、乾燥膜厚約30μmとなるように、圧延銅箔またはアルミ箔上に、アプリケーター法で流延した後、90℃で10分間予備乾燥し、次いで、150℃で1時間乾燥硬化させて、硬化塗膜を作製した。
【0045】
この硬化塗膜上に二液硬化型エポキシ樹脂接着剤を塗布して、塗布面をガラス板に押付け、室温で12時間硬化させて得られた両面接着硬化塗膜を得た。この硬化塗膜について、接着性(圧延銅箔面またはアルミ箔面に対するピール強度)を評価した。
【表1】
【0046】
調製例1〜3に示した樹脂組成物では、バインダ樹脂組成物の基材に対する接着力が、比較樹脂組成物であるポリフッ化ビニリデンに比べ向上した。また、調製例1の樹脂に対し各種の架橋剤を添加した調製例4〜7では、架橋剤の添加により更なる接着力の向上が観測された。
2.正極電極の作製
〔実施例1〕
【0047】
平均粒径10μmのマンガン酸リチウムと、平均粒径3μmの炭素粉末と、調製例1の非水溶媒系バインダ組成物とを80:10:10割合(体積%)で混合し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてスラリ状の溶液を作製し、厚み20μmのアルミニウム箔の両面に上記溶液を塗布、乾燥する。合剤塗布量は片面290g/m2である。合剤嵩密度が2.6g/cm3になるように、ロールプレス機で圧延し、54mm幅に切断して短冊状の正極合剤電極シートを作製した。
【0048】
上記正極合剤電極シートの端部にアルミニウム製の集電タブを超音波溶着し、その後、電極内の残留溶媒、吸着水の除去並びに非水溶媒系バインダ組成物の架橋のため、150℃で16時間真空乾燥して正極合剤電極を得た。なお、本実施例では可逆的にリチウムイオンを挿入,放出できる遷移金属酸化物としてLi1.12Mn1.88O4と云う組成のリチウムマンガン複合酸化物を用いた。
〔実施例2〕
【0049】
スラリ状の溶液の作製時に用いる分散溶媒として、N−メチル−2−ピロリドンとトリグライムを60:40重量%混合液を用いる以外は、実施例1と同様にして正極電極を得た。
〔実施例3〕
【0050】
スラリ状の溶液の作製時に用いる分散溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンとエチルカルビトールアセテートを60:40重量%混合液を用いる以外は実施例1と同様にして正極電極を得た。
〔実施例4〕
【0051】
非水溶媒系バインダ組成物として調製例2のものを用いる以外は実施例1と同様にして正極電極を得た。
〔実施例5〕
【0052】
非水溶媒系バインダ組成物として調製例3のものを用いる以外は実施例1と同様にして正極電極を得た。
〔実施例6〕
【0053】
平均粒径10μmのマンガン酸リチウムと、平均粒径3μmの炭素粉末と調製例1で得られたバインダ樹脂と、ブロックポリイソシアネート架橋剤(ヘキサメチレンジイソシアネート三量体の2−ブタノンオキシムブロック体)とを80:10:8:2の割合(体積%)で混合し、N−メチル−2−ピロリドンに投入混合しスラリ状の溶液を作製する。厚み20μmのアルミニウム箔の両面にこの溶液を塗布、乾燥する。
【0054】
合剤塗布量は片面290g/m2である。合剤嵩密度が2.6g/cm3になるように、ロールプレス機で圧延し、54mm幅に切断して短冊状の正極合剤電極シートを作製した。正極合剤電極シートの端部にアルミニウム製の集電タブを超音波溶着し、その後、電極内の残留溶媒や吸着水の除去およびバインダ樹脂の熱硬化のため、150℃で16時間真空乾燥して正極合剤電極を得た。
〔実施例7〕
【0055】
平均粒径10μmのマンガン酸リチウムと、平均粒径3μmの炭素粉末と、調製例1で得られたバインダ樹脂と、メラミン樹脂架橋剤(へキサメトキシメチロールメラミン)とを80:10:9.5:0.5の割合(体積%)で混合し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてスラリ状の溶液を作製する。厚み20μmのアルミニウム箔の両面にこの溶液を塗布、乾燥する。
【0056】
合剤塗布量は片面290g/m2である。合剤嵩密度が2.6g/cm3になるように、ロールプレス機で圧延し、54mm幅に切断して短冊状の正極合剤電極シートを作製した。正極合剤電極シートの端部にアルミニウム製の集電タブを超音波溶着し、その後、電極内の残留溶媒や吸着水の除去およびバインダ樹脂の熱硬化のため、150℃で16時間真空乾燥して正極合剤電極を得た。
〔実施例8〕
【0057】
平均粒径10μmのマンガン酸リチウムと、平均粒径3μmの炭素粉末と、調製例1で得られたバインダ樹脂と、エポキシ樹脂架橋剤(4,4’−イソプロピリデンビスフェノールジグリシジルエーテル)とを80:10:9.5:0.5の割合(体積%)で混合し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてスラリ状の溶液を作製する。厚み20μmのアルミニウム箔の両面にこの溶液を塗布、乾燥する。
【0058】
合剤塗布量は片面290g/m2である。合剤嵩密度が2.6g/cm3になるように、ロールプレス機で圧延し、54mm幅に切断して短冊状の正極合剤電極シートを作製した。正極合剤電極シートの端部にアルミニウム製の集電タブを超音波溶着し、その後、電極内の残留溶媒や吸着水の除去およびバインダ樹脂の熱硬化のため、150℃で16時間真空乾燥して正極合剤電極を得た。
〔実施例9〕
【0059】
平均粒径10μmのマンガン酸リチウムと、平均粒径3μmの炭素粉末と、調製例1で得られたバインダ樹脂と、ビスマレイミド架橋剤〔ビス(4−マレイミドフェニル)メタン〕とを80:10:9.5:0.5の割合(体積%)で混合し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてスラリ状の溶液を作製する。厚み20μmのアルミニウム箔の両面にこの溶液を塗布、乾燥する。合剤塗布量は片面290g/m2である。
【0060】
合剤嵩密度が2.6g/cm3になるように、ロールプレス機で圧延し、54mm幅に切断して短冊状の正極合剤電極シートを作製した。正極合剤電極シートの端部にアルミニウム製の集電タブを超音波溶着し、その後、電極内の残留溶媒や吸着水の除去およびバインダ樹脂の熱硬化のため、150℃で16時間真空乾燥して正極合剤電極を得た。
〔実施例10〕
【0061】
平均粒径10μmのコバルト酸リチウムと、平均粒径3μmの炭素粉末と、調製例1の非水溶媒系バインダ組成物とを80:10:10の割合(体積%)で混合し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてスラリ状の溶液を作製する。厚み20μmのアルミニウム箔の両面にこの溶液を塗布、乾燥する。合剤塗布量は片面289g/m2である。合剤嵩密度が3.6g/cm3になるように、ロールプレス機で圧延し、54mm幅に切断して短冊状の正極合剤電極シートを作製した。
【0062】
正極合剤電極シートの端部にアルミニウム製の集電タブを超音波溶着し、その後電極内の残留溶媒、吸着水の除去および非水溶媒系バインダ組成物の架橋のため、150℃で16時間真空乾燥して正極合剤電極を得た。
〔実施例11〕
【0063】
平均粒径10μmのニッケル酸リチウムと、平均粒径3μmの炭素粉末と、調製例1の非水溶媒系バインダ組成物とを80:10:10の割合(体積%)で混合し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてスラリ状の溶液を作製する。厚み20μmのアルミニウム箔の両面にこの溶液を塗布、乾燥する。合剤塗布量は片面220g/m2である。
【0064】
合剤嵩密度が3.5g/cm3になるように、ロールプレス機で圧延し、54mm幅に切断して短冊状の正極合剤電極シートを作製した。正極合剤電極シートの端部にアルミニウム製の集電タブを超音波溶着し、その後電極内の残留溶媒、吸着水の除去および非水溶媒系バインダ組成物の架橋のため、150℃で16時間真空乾燥して正極合剤電極を得た。
〔比較例1〕
【0065】
平均粒径10μmのマンガン酸リチウムと、平均粒径3μmの炭素粉末と、ポリフッ化ビニリデン樹脂とを80:10:10の割合(体積%)で混合し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてスラリ状の溶液を作製する。厚み20μmのアルミニウム箔の両面にこの溶液を塗布、乾燥する。
【0066】
合剤塗布量は片面290g/m2である。合剤嵩密度が2.6g/cm3になるように、ロールプレス機で圧延し、54mm幅に切断して短細状の正極合剤電極シートを作製した。正極合剤電極シートの端部にアルミニウム製の集電タブを超音波溶着し、その後電極内の残留溶媒や吸着水の除去およびバインダ樹脂の熱硬化のため、150℃で16時間真空乾燥して正極合剤電極を得た。
〔比較例2〕
【0067】
正極活物質として平均粒径10μmのコバルト酸リチウムを用いる以外は比較例1と同様にして正極電極を得た。
〔比較例3〕
【0068】
正極活物質として平均粒径10μmのニッケル酸リチウムを用いる以外は比較例1と同様にして正極電極を得た。
3.負極電極の作製
〔実施例12〕
【0069】
平均粒径20μmの非晶質炭素と調製例1の非水溶媒系バインダ組成物とを90:10の割合(体積%)で混合し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて、スラリ状の溶液を作製する。厚み10μmの銅箔の両面にこの溶液を塗布、乾燥する。合剤塗布量は片面65g/m2である。
【0070】
合剤嵩密度が1.0g/cm3になるように、ロールプレス機で圧延し、56mm幅に切断して短冊状の負極合剤電極シートを作製した。負極合剤電極シートの端部にニッケル製の集電タブを超音波溶着し、その後、電極内の残留溶媒、吸着水の除去および非水溶媒系バインダ組成物の架橋のため、150℃で16時間真空乾燥して負極合剤電極を得た。
〔実施例13〕
【0071】
スラリ状の溶液の作製時に用いる分散溶媒として、N−メチル−2−ピロリドンとトリグライムを60:40重量%混合液を用いる以外は、実施例12と同様にして負極電極を得た。
〔実施例14〕
【0072】
スラリ状の溶液の作製時に用いる分散溶媒として、N−メチル−2−ピロリドンとエチルカルビトールアセテートを60:40重量%混合液を用いる以外は、実施例12と同様にして負極電極を得た。
〔実施例15〕
【0073】
非水溶媒系バインダ組成物として、調製例2のものを用いる以外は、実施例12と同様にして負極電極を得た。
〔実施例16〕
【0074】
非水溶媒系バインダ組成物として調製例3のものを用いる以外は、実施例12と同様にして負極電極を得た。
〔実施例17〕
【0075】
平均粒径20μmの非晶質炭素と、調製例1の非水溶媒系バインダ組成物と、ブロックポリイソシアネート架橋剤(ヘキサメチレンジイソシアネート三量体の2−ブタノンオキシムブロック体)とを90:8:2の割合(体積%)で混合し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて、スラリ状の溶液を作製する。厚み10μmの銅箔の両面にこの溶液を塗布、乾燥する。
【0076】
合剤塗布量は片面65g/m2である。合剤嵩密度が1.0g/cm3になるように、ロールプレス機で圧延し、56mm幅に切断して短冊状の負極合剤電極シートを作製した。負極合剤電極シートの端部にニッケル製の集電タブを超音波溶着し、その後、電極内の残留溶媒、吸着水の除去および非水溶媒系バインダ組成物の架橋のため、150℃で16時間真空乾燥して負極合剤電極を得た。
〔実施例18〕
【0077】
平均粒径20μmの非晶質炭素と、調製例1の非水溶媒系バインダ組成物と、メラミン樹脂架橋剤(へキサメトキシメチロールメラミン)とを90:9.5:0.5の割合(体積%)で混合し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて、スラリ状の溶液を作製する。厚み10μmの銅箔の両面にこの溶液を塗布、乾燥する。
【0078】
合剤塗布量は片面65g/m2である。合剤嵩密度が1.0g/cm3になるように、ロールプレス機で圧延し、56mm幅に切断して短冊状の負極合剤電極シートを作製した。負極合剤電極シートの端部にニッケル製の集電タブを超音波溶着し、その後、電極内の残留溶媒、吸着水の除去および非水溶媒系バインダ組成物の架橋のため、150℃で16時間真空乾燥して負極合剤電極を得た。
〔実施例19〕
【0079】
平均粒径20μmの非晶質炭素と、調製例1の非水溶媒系バインダ組成物と、エポキシ樹脂架橋剤(4,4’−イソプロピリデンビスフェノールジグリシジルエーテル)とを90:9.5:0.5の割合(体積%)で混合し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて、スラリ状の溶液を作製する。厚み10μmの銅箔の両面にこの溶液を塗布、乾燥する。合剤塗布量は片面65g/m2である。合剤嵩密度が1.0g/cm3になるように、ロールプレス機で圧延し、56mm幅に切断して短冊状の負極合剤電極シートを作製した。負極合剤電極シートの端部にニッケル製の集電タブを超音波溶着し、その後、電極内の残留溶媒、吸着水の除去および非水溶媒系バインダ組成物の架橋のため、150℃で16時間真空乾燥して負極合剤電極を得た。
〔実施例20〕
【0080】
平均粒径20μmの非晶質炭素と、調製例1の非水溶媒系バインダ組成物と、ビスマレイミド架橋剤〔ビス(4−マレイミドフェニル9メタン〕とを90:9.5:0.5の割合(体積%)で混合し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて、スラリ状の溶液を作製する。厚み10μmの銅箔の両面にこの溶液を塗布、乾燥する。
【0081】
合剤塗布量は片面65g/m2である。合剤嵩密度が1.0g/cm3になるように、ロールプレス機で圧延し、56mm幅に切断して短冊状の負極合剤電極シートを作製した。負極合剤電極シートの端部にニッケル製の集電タブを超音波溶着し、その後、電極内の残留溶媒、吸着水の除去および非水溶媒系バインダ組成物の架橋のため、150℃で16時間真空乾燥して負極合剤電極を得た。
〔実施例21〕
【0082】
平均粒径20μmの人造黒鉛と、調製例1の非水溶媒系バインダ組成物とを90:10の割合(体積%)で混合し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて、スラリ状の溶液を作製する。厚み10μmの銅箔の両面にこの溶液を塗布、乾燥する。
【0083】
合剤塗布量は正極電極と対向する単位面積当りの活物質利用率が負極/正極が1以上になるように塗布した。実施例1などの正極活物質にリチウムマンガン複合酸化物を用いた場合、片面130g/m2で、実施例11の正極活物質にリチウムニッケル複合酸化物を用いた場合、片面150g/m2である。合剤嵩密度はいずれの場合も1.5g/cm3になるように、ロールプレス機で圧延し、56mm幅に切断して短冊状の負極合剤電極シートを作製した。負極合剤電極シートの端部にニッケル製の集電タブを超音波溶着し、その後、電極内の残留溶媒、吸着水の除去および非水溶媒系バインダ組成物の架橋のため、150℃で16時間真空乾燥して負極合剤電極を得た。
〔比較例4〕
【0084】
負極は平均粒径20μmの非晶質炭素と、ポリフッ化ビニリデン樹脂とを90:10の割合(体積%)で混合し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて、スラリ状の溶液を作製する。厚み10μmの銅箔の両面にこの溶液を塗布、乾燥する。合剤塗布量は正極電極と対向する単位面積当りの活物質利用率が負極/正極が1以上になるように塗布した。
【0085】
実施例1などの正極活物質にリチウムマンガン複合酸化物を用いた場合、片面65g/m2で、実施例10の正極活物質にリチウムコバルト複合酸化物を用いた場合、片面100g/m2である。合剤嵩密度はいずれの場合も1.0g/cm3になるように、ロールプレス機で圧延し、56mm幅に切断して短冊状の負極合剤電極シートを作製した。負極合剤電極シートの端部にニッケル製の集電タブを超音波溶着し、その後、電極内の残留溶媒や吸着水の除去およびバインダ樹脂の熱硬化のため、150℃で16時間真空乾燥して負極合剤電極を得た。
〔比較例5〕
【0086】
非水溶媒系バインダ組成物に替えて、ポリフッ化ビニリデン樹脂を用いる以外は実施例21と同様にして負極電極を得た。得られた電極について、耐電解液性を評価した。なお、これに用いた電解液として、(1)N−メチル−2−ピロリドン、または、(2)濃度が1MとなるようにLiPF6を溶解させたエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート=1/2(体積比)の混合液を用い、これらに50℃で24時間浸漬後の電子顕微鏡(倍率1000倍)による外観異常の有無を調べた。これらの結果をまとめて表2に示した。
【表2】
【0087】
表2に示したとおり、ポリフッ化ビニリデンをバインダ樹脂として用いた場合、電極合剤を50℃で電解液に浸漬すると表面のバインダ樹脂が膨潤し、電極合剤の基材からの剥離やバインダ樹脂が活物質を被覆する状況が観察されたのに対し、実施例1〜21ではバインダ樹脂組成物の電解液に対する耐性が向上し、これらの現象は観察されなかった。
4.電池の作製上記実施例1〜11、および、比較例1で作製した正極合剤電極と、実施例12〜21、および、比較例2で作製した負極合剤電極を表3に示すように組み合わせて、厚さ25μm×幅58mmのポリエチレン微多孔膜からなるセパレータを介して捲回し、スパイラル状の捲回群を作製する。
【表3】
【0088】
上記スパイラル状の捲回群を電池缶に挿入し、予め、負極集電体の銅箔に溶接しておいたニッケルタブ端子を電池缶底に溶接する。次に、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートを体積比で1:1に混合した溶液にLiPF6を1mol/lの濃度で溶解した電解液を電池容器に5ml注入した。
【0089】
次に、予め正極集電体のアルミニウム箔に溶接したアルミニウムタブ端子を蓋に溶接して、蓋を絶縁性のガスケットを介して電池缶の上部に配置し、この部分をかしめて密閉し、直径18mm×高さ65mmの円筒型電池を作製した。本実施例では、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートを体積比で1:1に混合した溶液にLiPF6を1mol/lの濃度で溶解した電解液を用いたが、有機溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ケトン類、ラクトン類、ニトリル類、アミン類、アミド類、硫黄化合物類、塩素化炭化水素類、スルホラン系化合物類などが挙げられる。この中でも、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2―ジメトキシエタン、1,2―ジエトキシエタン、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、スルホラン、アセトニトリル等を1種以上用いられ、特に、混合溶媒が好ましい。電解質もLiClO4、LiPF6、LiPF4、LiBF4、LiCl、LiBr、CH3SO3Li、LiAsF6等が使用できる。
【0090】
本発明品1〜15、および、比較品1の電池は、充電電流400mA、制限電圧4.2Vで定電圧充電した後、放電電流800mAで放電終止電圧2.7Vに至るまで放電して初回容量を測定した。また、正極活物質から電解液へのマンガン溶出量を確認するため、完全充電状態の電池を解体し、正極電極のみを新しい電解液に浸漬して密閉する。50℃に設定した恒温槽内に7日間放置して、電解液中に溶出したマンガン量をプラズマ発光分光分析装置(ICP)を用いて測定した。
【0091】
本発明品16、17および比較品2の電池は、充電電流750mA、制限電圧4.2Vで定電圧充電した後、放電電流1500mAで放電終止電圧2.5Vに至るまで放電して初回容量を測定した。本発明品18、および、比較品3の電池は、充電電流900mA、制限電圧4.15Vで定電圧充電した後、放電電流1800mAで放電終止電圧3.0Vに至るまで放電して初回容量を測定した。これらの条件での充電・放電を1サイクルとして、周囲温度50℃で充放電を初回容量の70%以下に至るまで繰り返し、サイクル寿命試験を行った。その結果を表4並びに図1に示す。
【表4】
【0092】
表4および図1が示すように、活物質としてマンガン酸リチウム、バインダとしてポリフッ化ビニリデン樹脂を用いた正極と、バインダとしてポリフッ化ビニリデン樹脂を用いた負極とを組み合わせた比較品1の電池は、100サイクルで寿命に至った。上記に対し、正極、負極の少なくとも一方の電極のバインダを、非水溶媒系バインダ組成物を用いた非水電解液二次電池(本発明品1〜15,19,20)は、200サイクル以上とその寿命が延びていることが分かる。特に、負極バインダに非水溶媒系バインダ組成物を用いた非水電解液二次電池(本発明品1,3,4,6,8,10,12〜15,19,20)は、サイクル寿命特性が向上している。
【0093】
また、分散溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン単独より、トリグライムやエチルカルビトールアセテートなどの貧溶媒との混合溶媒を用いた電池(本発明品4〜7)は、さらにサイクル寿命特性が向上している。これは、貧溶媒を混合することによって、分散溶媒除去時において非水溶媒系バインダ組成物の表面への移行・偏析を抑制し、正極または負極合剤中の非水溶媒系バインダ組成物の分布を均一にしているためと考える。
【0094】
寿命後の電池を解体すると、比較品1は負極合剤が電極基体である銅箔から剥離し、この部分に金属リチウムの析出が確認されたが、本発明の非水溶媒系バインダ組成物を用いた電極には見られない。このことから、本発明の非水溶媒系バインダ組成物を用いた電池は、電極基体と合剤層界面および合剤層相互間の優れた密着性を維持しているため、容量低下が小さいものと考える。次に、充電状態の正極電極を50℃で7日間放置した後、電解液に溶出したマンガン量の測定結果を表5に示す。
【表5】
【0095】
活物質としてマンガン酸リチウム、バインダとして本発明の非水溶媒系バインダ組成物を用いた正極電極は、比較例1の正極電極に比べ、電解液中に溶出したマンガン量が小さい。これは、リチウムマンガン複合酸化物の粒子表面の一部を覆うようにバインダが存在するため、電解液との接触面積が低下し、正極活物質から溶出するマンガン量を低減できたと考える。
【0096】
正極活物質からのマンガンの溶出を抑制できると、正極活物質の結晶構造が安定して電子伝導性を確保し、一方で溶出したマンガンによる負極の劣化も抑制できることから、本発明品1,2,4〜15,19の電池は、サイクル寿命特性が向上したと考える。
【発明の効果】
【0097】
本発明のジイソシアネートまたはジアミン(a)とジカルボン酸および/またはトリカルボン酸無水物(b)とを有機溶媒中で反応させて得られるポリアミド系樹脂中間体(A)、エポキシ樹脂(B)およびポリオキシアルキレンモノアミン(C)とを反応させて得た非水溶媒系バインダ組成物は、そのアミド結合の窒素原子と炭素原子の結合間に高い極性と強い水素結合を有し、大きな結合エネルギーを持っていることから、接着性および高温での耐電解液性に優れている。
【0098】
非水溶媒系バインダ組成物に、さらにエポキシ樹脂,ビスマレイミドやブロックイソシアネート化合物,メラミン化合物等の多官能化合物を架橋剤として添加すると、さらに接着性および高温での耐電解液性の優れた非水溶媒系バインダ組成物が得られる。上記非水溶媒系バインダ組成物を用いた電極、および、この電極を用いた電池は、活物質を含む合剤層と電極基体である金属箔との密着性に優れ、耐電解液性および耐熱性に優れ、高温下で使用されても長期間電極基体と合剤層および合剤層相互間の密着強度を維持できる。
【0099】
電極基体と合剤層および合剤層相互間の密着強度が向上すると、合剤中の非水溶媒系バインダ組成物の添加量を低減でき、その結果、活物質量を増やすことが可能で、この電極を用いた電池は体積エネルギー密度を増大できる。
【0100】
長期間電極基体と合剤層および合剤層相互間の密着強度を維持した電極を用いた電池は、充放電を繰り返しても電極基体と合剤層および合剤層相互間の導電ネットワークを維持でき、充電反応および放電反応を均一に行うことができるので、サイクル寿命特性も向上できる。特に可逆的にリチウムイオンを挿入,放出できる遷移金属酸化物として、一般式LixMnyO2(xは0.2≦x≦2.5で、yは0.8≦y≦1.25)で示されるリチウムマンガン複合酸化物を、正極活物質として用いた有機電解液二次電池は、リチウムマンガン複合酸化物の粒子表面の一部を覆うように非水溶媒系バインダ組成物が存在するため、正極活物質から溶出するMn量を低減でき、正極の電子伝導性を確保し、一方で溶出したMnによる負極の劣化も抑制できるため、充放電サイクルによる電池容量低下を改善した有機電解液二次電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明品及び比較品の非水電解液二次電池のサイクル寿命試験結果を示した図である。
Claims (5)
- ジイソシアネートまたはジアミン(a)とジカルボン酸および/またはトリカルボン酸無水物(b)とを有機溶媒中で反応させて得られるポリアミド系樹脂中間体(A)、エポキシ樹脂(B)およびポリオキシアルキレンモノアミン(C)とを反応させて得られる側鎖に(C)成分残基を有するバインダ樹脂を非水溶媒に溶解および/または分散させた非水溶媒系バインダ組成物と活物質とを混合し、電極基体表面に塗布後、非水溶媒を除去した非水溶媒系バインダ組成物を形成したことを特徴とする非水溶媒系二次電池の電極。
- 前記非水溶媒系バインダ組成物は更に、多官能化合物および/または熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の非水溶媒系二次電池の電極。
- 前記活物質が、充放電により可逆的にリチウムイオンを挿入,放出できるものである請求項1又は2に記載の電極。
- 前記活物質が、充放電により可逆的にリチウムイオンを挿入、放出できる遷移金属酸化物で、該遷移金属酸化物が一般式LixMnyO 2 (xは0.2≦x≦2.5であり、yは0.8≦y≦1.25である)で示されるリチウムマンガン複合酸化物である請求項1又は2に記載の非水溶媒系二次電池の電極。
- 非水溶媒系二次電池の少なくとも一方の極に、請求項1〜4のいずれかに記載の電極を用いたことを特徴とする非水溶媒系二次電池。
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