JP4507182B2 - 燃料電池用セパレーター - Google Patents

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Description

本発明は、導電性ペースト、電気製品、機械部品及び車両部品等の各種用途、特に燃料電池用セパレーターに適用可能な硬化性樹脂組成物及びそれを用いた燃料電池用セパレーターに関するものである。
従来、成形材料、積層板、鋳物用樹脂、接着剤及び塗料等の多くの分野で使用されているフェノール樹脂は、熱又は酸により硬化させるレゾール型フェノール樹脂と、ヘキサミンで代表される架橋剤を用いて硬化させるノボラック型フェノール樹脂とに分類される。
しかしながら、これらのフェノール樹脂は、硬化時に発生する水、ホルムアルデヒド及びアンモニア等のような揮発性物質が成形時にピンホールやボイドを発生させたり、また硬化後の耐水性が十分でないために水溶出成分が増加したりすることがある。
一方、近年注目されている燃料電池において、フェノール樹脂を燃料電池用セパレーターとして使用することが検討されている。この燃料電池には、電解質の種類によりアルカリ型、リン酸型、固体高分子型、溶融炭酸塩型及び固体電解質型等の種類がある。これら燃料電池は、水素含有ガスと酸素含有ガスとの電気化学反応により起電力を生じる単電池と、積層された単電池の隣り合う単電池の間に介在し、隣り合う単電池双方の電極を接触させて単電池間を電気的に接続すると共に、反応ガスを分離するセパレーターとから構成されている。
これら燃料電池の中で、固体高分子型燃料電池は、他の型の燃料電池と比べて低温で作動するので、電池を構成する部品の材料面での腐食の心配が少なく、また低温作動の割に比較的大電流が放電可能であるという特徴を有しており、家庭用定置型や車載用の内燃機関の代替として注目を集めている。
固体高分子型燃料電池に用いるセパレーターは、一般的に、導電性平板の両面又は片面に複数の平行する溝が形成されている。このセパレーターは、燃料電池セル内のガス拡散電極で発電した電気を外部へ伝達すると共に、発電の過程で生成した水を排水し、また該溝は燃料電池セルへ流入する反応ガスの流路としての役割を担っている。
このようなセパレーターは、過去に多くの検討がなされており、例えば、特定のアスペクト比と粒度とを有する黒鉛粉末100重量部に対し、フェノール樹脂のような熱硬化性樹脂12〜34重量部を加えて、混練し、成形した後、硬化した成形体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、この成形体は、製造時の硬化時間が長く、十分な生産性が得られないばかりか、硬化時に縮合水分や低分子物がガスとなって遊離し、成形体中に泡、ピンホール及び内部ボイド等を発生させることがあるので、セパレーター用としては問題が多い。
そこで、硬化時にガスを発生しない硬化性樹脂組成物として、フェノール系ノボラック樹脂と、N−メチロールアクリルアミド化合物及び/又はそのアルキルエーテル化合物とを酸性触媒の存在下で反応させて得られる変性フェノール樹脂及び重合触媒を含むものが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、この樹脂組成物は、フェノール性水酸基がすべて残存しているため、得られる硬化物の耐水性(特に、固体高分子型燃料電池用セパレーターに必要な低水溶出性)や柔軟性が不十分である。
さらに、通常のノボラック型フェノール樹脂とエポキシとの組み合わせにおいては、得られる硬化物の耐水性及び柔軟性については比較的良好であるが、硬化速度が遅く、硬化物の生産性が低いという問題がある。
また、硬化時の内部ボイド等の発生を抑えたセパレーターとして、開環重合により硬化したフェノール樹脂中に炭素材料を分散させたものが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、このようなフェノール樹脂を用いた場合には、硬化後に200℃程度のアフターキュアを必要としており、生産性が低いという問題がある。
特開昭59−213610号公報 特公平6−81776号公報 特開平11−354135号公報
従って、本発明は、以上の背景のもとになされたものであり、その目的とするところは、速硬化性に優れ、且つ耐水性及び柔軟性に優れた硬化物を与える硬化性樹脂組成物、並びに前記特性に加えて、さらに導電性にも優れた硬化物を与える硬化性樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明は、耐水性、柔軟性及び導電性に優れた燃料電池用セパレーターを提供することも目的とする。
本発明の燃料電池用セパレーターは、(A)ノボラック型フェノール樹脂のフェノール性水酸基100に対して、N−メチロールアクリルアミド化合物及び/又はそのアルキルエーテル化合物20〜200当量を反応させることにより得られる変性ノボラック型フェノール樹脂、(B)分子内に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物(C)ラジカル重合開始剤及び(D)炭素系充填材を含み且つ前記(A)変性ノボラック型フェノール樹脂のフェノール性水酸基に対する前記(B)エポキシ化合物のエポキシ基の当量比が0.1〜1.5である硬化性樹脂組成物を硬化して得られることを特徴とする。
本発明によれば、所定の(A)変性ノボラック型フェノール樹脂、(B)エポキシ化合物及び(C)ラジカル重合開始剤を所定量で含むことにより、速硬化性に優れ、且つ耐水性及び柔軟性に優れた硬化物を与える硬化性樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、(D)炭素系充填材をさらに含むことにより、速硬化性に優れ、且つ耐水性及び柔軟性に優れると共に、導電性にも優れた硬化物を与える硬化性樹脂組成物を提供することができる。
さらに、本発明によれば、耐水性、柔軟性及び導電性に優れた燃料電池用セパレーターを提供することができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、所定の(A)変性ノボラック型フェノール樹脂、(B)エポキシ化合物及び(C)ラジカル重合開始剤を含む。
本発明の(A)変性ノボラック型フェノール樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂とN−メチロールアクリルアミド化合物及び/又はアルキルエーテル化合物との反応によって得ることができる。
本発明のノボラック型フェノール樹脂としては、1分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有するモノマー、オリゴマー及びポリマー等であり、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、キシリレン変性フェノール樹脂及びジクロロペンタジエン変性フェノール樹脂等が挙げられる。
また、本発明のN−メチロールアクリルアミド化合物及び/又はアルキルエーテル化合物としては、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メチロール−α−ブチルアクリルアミド、及びこれらのメチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル等が例示されるが、中でも反応性等の観点からN−メチロールアクリルアミド又はN−メチロールメタクリルアミドが好ましい。
ノボラック型フェノール樹脂とN−メチロールアクリルアミド化合物及び/又はアルキルエーテル化合物とを反応させる際の配合割合は、ノボラック型フェノール樹脂のフェノール性水酸基100に対して、N−メチロールアクリルアミド化合物及び/又はアルキルエーテル化合物が20〜200当量であり、N−メチロールアクリルアミドが40〜150当量であることがより好ましい。N−メチロールアクリルアミド化合物及び/又はアルキルエーテル化合物の配合割合が20当量未満であると、不飽和基が不足することによって架橋密度が低下し、硬化物の機械的強度が低下するので好ましくない。一方、N−メチロールアクリルアミド化合物及び/又はアルキルエーテル化合物の配合割合が200当量を超えると、N−メチロールアクリルアミド化合物及び/又はアルキルエーテル化合物同士の縮合反応が進行することによって低分子化合物が増加し、硬化物の機械的強度が低下するので好ましくない。
前記ノボラック型フェノール樹脂とN−メチロールアクリルアミド化合物及び/又はアルキルエーテル化合物との反応は、触媒を使用し、溶媒中で70℃〜150℃、好ましくは75℃〜100℃の温度範囲で行うことができる。反応温度が、70℃未満であると、反応時間が長くなってしまい、また150℃を超えると、樹脂がゲル化してしまうので好ましくない。
触媒としては、特に限定されることはないが、例えば、塩酸、硫酸及びリン酸等の無機塩、フェノールスルホン酸、パラトルエンスルホン酸及びクロル酢酸の有機酸、ホウ酸亜鉛及び塩化アルミニウム等の酸性金属塩等の酸性触媒を使用することが好ましい。また触媒の配合割合は、ノボラック型フェノール樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましい。触媒の配合割合が、0.1質量部未満であると、反応時間が長くなってしまい、また10質量部を超えると、反応の制御が難しくなるので好ましくない。
溶媒としては、メチルエチルケトンのようなケトン類、メタノールのようなアルコール類、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリルアミド、アクリル酸エチル、アクリル酸及びメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル等のラジカル重合性希釈剤等を使用することが好ましい。また、溶媒の配合割合は、ノボラック型フェノール樹脂100質量部に対して5〜150質量部であることが好ましい。溶媒の配合割合が、5質量部未満であると、樹脂の粘度が高く、混合性が悪くなってしまうので好ましくない。また、150質量部を超えると、反応器の大きさに対する収量が低下し、コストアップとなるので好ましくない。
反応時間としては、反応物の種類及び反応性、触媒の種類及び量、反応温度等の条件に応じて適宜選択すればよいが、通常2〜10時間である。
なお、前記反応においては、反応中のゲル化を防止する目的や、生成物の保存安定性、更には硬化性の調整の目的で、例えば、ハイドロキノンや、t−ブチルカテコールのような重合禁止剤を用いることもできる。
前記反応により得られた変性ノボラック型フェノール樹脂(A)は、200〜10000のポリスチレン換算重量平均分子量を有している。ポリスチレン換算重量平均分子量が、200未満であると、硬化物の強度低下となり、また10000を超えると、反応時に樹脂がゲル化してしまう可能性があるので好ましくない。ここでポリスチレン換算重量平均分子量とは、溶離液としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。
本発明の(B)エポキシ化合物としては、分子内に複数のエポキシ基を有するものであればよく、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン及びエポキシ化エラストマー等が例示されるが、中でも耐熱性の観点からクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
本発明の(B)エポキシ化合物の配合割合は、(A)変性ノボラック型フェノール樹脂のフェノール性水酸基に対する(B)エポキシ化合物のエポキシ基の当量比[エポキシ基/フェノール性水酸基]が0.1〜1.5であり、0.2〜1.0がより好ましい。当量比が、0.1未満であると、硬化物の耐水性及び柔軟性が十分に改善されず、また1.5を超えると、硬化性樹脂組成物の硬化速度が遅く、硬化物の十分な機械的強度が得られないので好ましくない。
本発明の(C)ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物及びアゾビス系化合物等が使用される。有機過酸化物としては、ジアルキルパーオキサイド、アシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ケトンパーオキサイド及びパーオキシエステル等の公知のもの、例えばベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、2,5−ジメチル−2,5ジ(2−エチルヘキサノイル)パーオキシヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド及び2,5−ジメチル−2,5ジブチルパーオキシヘキサンを使用することができる。また、アゾビス系化合物としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル等を使用することができる。これらのラジカル重合開始剤は1種でも、2種以上混合して使用してもよい。
本発明の(C)ラジカル重合開始剤の配合割合は、(A)変性ノボラック型フェノール樹脂及び(B)エポキシ化合物の合計100質量部に対して、0.05〜10質量部であり、0.1〜5質量部がより好ましい。(C)ラジカル重合開始剤の配合割合が、0.05質量部未満であると、硬化性樹脂組成物が十分に硬化せず、また10質量部を超えると、硬化物の強度が低下するので好ましくない。
また、本発明の硬化性樹脂組成物には、機械的強度や導電性を向上させるために、充填材をさらに配合することができる。
充填材としては、例えば、セルロース繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、カーボン繊維、ガラス繊維及び金属繊維等の繊維質充填材、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、酸化マグネシウム、マイカ等の粉末状或いは板状の無機系充填材、カーボンブラック、人造黒鉛、天然黒鉛、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー(例えばVGCF等)、カーボン短繊維及びグラッシーカーボン等の(D)炭素系充填材を挙げることができる。これらの充填材の配合割合は、(A)、(B)及び(C)成分と充填材との合計100質量部に対して、30〜95質量部であることが好ましい。充填材の配合割合が30質量部未満であると、機械的強度や導電性が十分に向上せず、95質量部を超えると樹脂成分が少なくなりすぎ、硬化物の機械的強度が低下してしまうので好ましくない。
特に、本発明の硬化性樹脂組成物を燃料電池用セパレーターとして使用する場合には、導電性の観点から、(D)炭素系充填材を使用することが好ましく、より優れた導電性の観点から、(D)炭素系充填材として黒鉛粉末を使用することが好ましい。このような黒鉛粉末の平均粒径は、3〜200μmであることが好ましい。平均粒径が3μm未満であると、樹脂との混合時の粘度が高く、混練りが難しくなるので好ましくない。また200μmを超えると、硬化物の強度が低下してしまうので好ましくない。
また、(D)炭素充填材の配合割合は、(A)、(B)、(C)及び(D)成分の合計100質量部に対して、60〜95質量部であり、70〜90質量部であることが好ましい。(D)炭素充填材の配合割合が60質量部未満であると、電気特性が劣り、また95質量部を超えると、樹脂成分が少なくなりすぎ、硬化物の機械的強度が低下してしまうので好ましくない。
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化速度を向上させる観点からエポキシ樹脂の硬化促進剤、硬化物の架橋密度を上げて強度を向上させる観点からラジカル重合可能な一般的なビニルエステル樹脂や(メタ)アクリル酸エステルモノマー等の第三モノマーを含んでもよい。
エポキシ樹脂の硬化促進剤としては、例えば、1−シアノエチル−2−エチル−4(5)−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾールアミン、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール及び2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン及びジアミノジフェニルサルホン等の芳香族アミン化合物、並びにトリフェニルフォスフィン、ジシアンジアミド等を挙げることができる。
このエポキシ樹脂の硬化促進剤の配合割合は、(A)変性ノボラック型フェノール樹脂及び(B)エポキシ化合物の合計100質量部に対して、0.05〜10質量部であり、0.1〜5質量部がより好ましい。エポキシ樹脂の硬化促進剤の配合割合が、0.05質量部未満であると、十分な硬化速度が得られず、また10質量部を超えると、硬化物の強度が低下してしまうので好ましくない。
第三モノマーとしては、例えば、フェノキシエチルメタクリレート、イソボニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート及び1,6−ヘキサンジオールジアクリレート等、フェノール性水酸基との反応可能なイソシアネート基含有の化合物、並びに分子内に複数のオキサジン環を持つ多価オキサジン化合物等を挙げることができる。
この第三モノマーの配合割合は、(A)変性ノボラック型フェノール樹脂及び(B)エポキシ化合物の合計100質量部に対して、150質量部以下が好ましい。第三モノマーの配合割合が150質量部を超えると、硬化物の耐熱性が低下してしまうので好ましくない。
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記各成分を均一に混合させることによって得ることができる。(A)変性ノボラック型フェノール樹脂、(B)エポキシ化合物及び(C)ラジカル重合開始剤の混合において、(A)と(B)との混合は、粉末−粉末状、液体−液体状、液体−粉末状等のいずれでもよいが、充填材との混合性等の観点から、粉末−粉末状であることが好ましい。この場合、例えば、(B)固体状のノボラック型エポキシ樹脂に(C)ジクミルパーオキサイドを溶融ブレンドし、それを粉砕して粉末とした後、(A)粉末状の変性ノボラック型フェノール樹脂と混合することが好ましい。
上記成分の混合に使用される装置としては、ロール、ニーダー、バンバリミキサー、ヘンシェルミキサー及びプラネタリミキサー等の当該技術分野で一般的に用いられている混合機を使用することができる。
混合条件としては、40〜120℃の温度で、30〜90分間行うことが好ましい。混合温度が40℃未満であると、粘度が高いために混合が不十分となり、120℃を超えると、組成物の硬化が進行してしまうので好ましくない。同様に、混合時間が30分間未満であると、混合が不十分となり、90分間を超えると、組成物の硬化が一部進行してしまうので好ましくない。
このようにして得られた本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)変性ノボラック型フェノール樹脂中にラジカル重合性の不飽和基を有しているので、硬化物を作製する際には、(C)ラジカル重合開始剤の存在によって硬化速度が早くなり、生産性を向上させることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、125〜250℃で加熱することによって硬化物を得ることができるが、その方法については、特に制限はなく、所望の形状の金型等を利用し、圧縮成形及び押出し成形等によって容易に成形体とすることも可能である。
このようにして得られた硬化物は、不飽和基のラジカル重合性成分が樹脂骨格中に含まれるので、フェノール樹脂特有の脆さが解消され、さらに(B)エポキシ化合物成分によって優れた柔軟性を有することができる。また、この硬化物の耐熱性は、通常のフェノール樹脂に匹敵するものであり、またフェノール性水酸基とエポキシ基との反応により、水酸基が減少して硬化物の耐水性が向上し、低水溶出性となる。また、本発明の硬化性樹脂組成物は、好適な粘度(流動性が良好)であり、硬化速度が速く、硬化時にガスの発生が無いので、本発明の硬化物は、凹凸のない良好な表面状態を有し、長期耐久性にも優れている。
すなわち、(A)〜(C)を含む硬化性樹脂組成物(ただし、充填材を含まない)により得られた硬化物は、45MPa以上の曲げ強度、2.0GPa以下の曲げ弾性率、4.0%以上の曲げたわみ率、水溶出試験における30μS未満の電気伝導度を有していることが好ましい。曲げ強度が45MPa未満及び曲げ弾性率が2.0GPaを超えると、充填材を組成物に添加した際に、硬化物の強度が不十分となってしてしまい、また曲げたわみ率が4.0%未満であると、充填材を組成物に添加した際に、硬化物に割れが生じてしまうので好ましくない。また電気伝導度が30μSを超えると、硬化物の耐水性が不十分であり、水との接触によって硬化物が劣化してしまうので好ましくない。
また、(A)〜(C)を含む硬化性樹脂組成物(ただし、充填材を含まない)により得られた硬化物は、曲げ強度、曲げ弾性率及び曲げ弾性率に優れているので、さらに(D)炭素充填材を含む硬化性樹脂により得られた硬化物であっても、比較的優れた曲げ強度、曲げ弾性率及び曲げ弾性率を有している。
さらに、(D)炭素充填材を含む硬化性樹脂組成物により得られた硬化物は、優れた導電性も有している。すなわち、(D)炭素充填材を含む硬化性樹脂組成物からなる硬化物は、50mΩcm以下、好ましくは30mΩcm以下の体積固有抵抗を有している。体積固有抵抗が50mΩcmを超えると、硬化物の導電性が低下し、例えば、燃料電池用セパレーターとしての性能が低下してしまうので好ましくない。
前記(D)炭素充填材を含む硬化性樹脂組成物により得られた硬化物は、耐水性、柔軟性及び導電性に優れているので、特に燃料電池用セパレーターとして使用することが好ましい。
前記セパレーターは、熱成形等により作製することができるが、その方法に特に制限はなく、所望のセパレーター形状に対応する金型等を使用し、圧縮成形及び射出成形等によって簡単に成形することができる。また、予め成形体を作成し、これを切削して所望の形状と大きさのセパレーターにすることもできる。また、セパレーターの大きさ、厚さ、形状等にも特に制限はなく、例えば図1に示すような、ガスが通過する溝部を有する形状のものを使用することができる。
このようにして得られた本発明の燃料電池用セパレーターは、固体高分子型、アルカリ型、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型等の種々の形式の燃料電池用セパレーターとして使用可能であるが、特に低温作動性及び放電特性等の観点から、固体高分子型燃料電池用セパレーターにおいて使用することが好ましい。
以下に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例1及び2は参考例である。
実施例及び比較例における硬化性樹脂組成物からなる硬化物及び燃料電池用セパレーターの各物性は、次の方法で測定又は確認した。
(1)水溶出試験
硬化性樹脂組成物を180℃で1時間硬化させ、密封性容器に硬化した樹脂3gに対してイオン交換水400g入れた後、121℃のプレッシャークッカー試験機中に入れて、100時間の溶出試験を行なった。得られた溶出液における電気伝導度を測定し、その値が低いほど抽出成分が少ないと判断した。
(2)曲げ強度、曲げ弾性率及び曲げたわみ率
曲げ強度及び曲げ弾性率は、JIS K6911に準拠して測定した。
曲げたわみ率は、以下の式により算出した。
曲げたわみ率(%)={6×試験片の高さ(mm)×曲げ最大変位(mm)/スパン(mm)}×100
(3)体積固有抵抗値
JIS H0602に準拠し、4端子測定法により測定した。
(4)表面状態
成形物を金型から脱型する時の金型上の硬化物付着の有無を、目視により確認した。金型上に硬化物の付着が無い状態を◎とし、金型上に硬化物の付着がある状態を×とした。
[(A)変性ノボラック型フェノール樹脂の調製]
(合成例1)
ポリスチレン換算重量平均分子量が3000のノボラック型フェノール樹脂 100質量部、Nメチロールアクリルアミド 144質量部(この時のノボラック型フェノール樹脂のフェノール性水酸基とN−メチロールアクリルアミドとの当量比は、約100:150に相当する)、反応触媒としてパラトルエンスルホン酸 1質量部を、MEK溶媒50質量部中、80℃で7時間反応させて、(A)変性ノボラック型フェノール樹脂[I]を得た。
このようにして得られた(A)変性ノボラック型フェノール樹脂[I]は、約5000のポリスチレン換算重量平均分子量、及び171の水酸基当量を有していた。ここで、水酸基当量とは、JIS K0070に準拠し、測定した水酸基価の値より算出されたものであって、水酸基価とは、試料1gをアセチル化した際に、水酸基と結合した酢酸を中和する水酸化カリウムのmg数である。
(合成例2)
ポリスチレン換算重量平均分子量が3000のノボラック型フェノール樹脂 100質量部、Nメチロールアクリルアミド 72質量部(この時のノボラック型フェノール樹脂のフェノール性水酸基とN−メチロールアクリルアミドとの当量比は、約100:75に相当する)、反応触媒としてパラトルエンスルホン酸 1質量部を用いた以外は、合成例1と同様の条件で反応させて、(A)変性ノボラック型フェノール樹脂[II]を得た。
このようにして得られた(A)変性ノボラック型フェノール樹脂[II]は、約5000のポリスチレン換算重量平均分子量、及び146の水酸基当量を有していた。
[(A)〜(C)成分を含む硬化性樹脂組成物及びその硬化物の調製]
(実施例1〜2、比較例1〜2)
表1の配合割合に従い、粉末状の各成分を配合した後、小型ニーダーを用いて、70℃で30分間混合することによって硬化性樹脂組成物を得た。なお、表1の配合割合は、全て質量部単位である。
得られた硬化性樹脂組成物を、180℃で3分間、ゲージ圧で6MPaの圧力を加えながら加熱成形することによって、厚さ4mm、幅10mm、長さ100mmの硬化物を得た。この硬化物について、曲げ強度、曲げ弾性率、曲げたわみ率及び電気伝導度を測定した。これらの結果を表1に示す。
Figure 0004507182
表1に示されるように、実施例1〜2の硬化物は、比較例1〜2の硬化物よりも、曲げ強度及び曲げたわみ率が大きく、曲げ弾性率及び電気伝導度が小さかった。すなわち、実施例1〜2の硬化性組成物から得られる硬化物は、耐水性及び柔軟性に優れていた。
[(A)〜(D)成分を含む硬化性樹脂組成物及びその硬化物、並びに燃料電池用セパレーターの調製]
(実施例3〜7、比較例3〜8)
表2の配合割合に従い、粉末状の各成分を配合した後、小型ニーダーを用いて、70℃で30分間混合することによって硬化性樹脂組成物を得た。なお、表1の配合割合は、全て質量部単位である。なお、表2の配合割合は、全て質量部単位である。
得られた硬化性樹脂組成物を、180℃で3分間、ゲージ圧で6MPaの圧力を加えながら加熱成形することによって、厚さ4mm、幅10mm、長さ100mmの硬化物を得た。この硬化物について、曲げ強度、曲げ弾性率、曲げたわみ率及び電気伝導度を測定した。
また、図1に示すような形状の燃料電池用セパレーター(最大厚み2.0mm、最小厚み1.0mm、溝深さ1.0mm、溝幅2mm、条幅2mm)を、該形状に対応する金型を用い、180℃で3分間、30MPaの圧力を加えながら硬化性樹脂組成物を加熱成形することによって得た。なお、アフターキュアは行わなかった。この燃料電池用セパレーターについて、体積固有抵抗値を測定し、また表面状態を確認した。さらに、成形性を見るために、180℃−2分以内での脱型の可否の確認を行なった。これらの結果を表2に示す。
Figure 0004507182
表2に示されるように、比較例6〜7の硬化性樹脂組成物は、硬化不良が生じたために、硬化物及び燃料電池用セパレーターを得ることができなかった。
比較例8の硬化物は、表面状態が悪く、曲げ強度、曲げ弾性率及び曲げたわみ率等の良好な値が得られなかった。
実施例3〜7の硬化物は、比較例3〜5の硬化物の体積固有抵抗値、表面状態及び成形性と同程度であったが、比較例3〜5の硬化物よりも曲げ強度及び曲げたわみ率が大きく、曲げ弾性率及び電気伝導度が小さかった。
すなわち、実施例3〜7の硬化性樹脂組成物から得られる硬化物は、耐水性、柔軟性及び導電性に優れていた。
従って、(A)〜(C)成分を含む本発明の硬化性樹脂組成物は、速硬化性に優れ、且つ耐水性及び柔軟性に優れた硬化物を与えることができた。また、(A)〜(D)成分を含む本発明の硬化性樹脂組成物は、速硬化性に優れ、且つ耐水性及び柔軟性に優れると共に、導電性にも優れた硬化物を与えることができた。
さらに、前記硬化性樹脂組成物により得られた硬化物は、耐水性及び柔軟性に優れ、さらには導電性にも優れており、燃料電池用セパレーターとしての用途に適するものであった。
実施例3〜7、並びに比較例3〜5及び8において調製した燃料電池用セパレーターの斜視図である。

Claims (5)

  1. (A)ノボラック型フェノール樹脂のフェノール性水酸基100に対して、N−メチロールアクリルアミド化合物及び/又はそのアルキルエーテル化合物20〜200当量を反応させることにより得られる変性ノボラック型フェノール樹脂、(B)分子内に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物(C)ラジカル重合開始剤及び(D)炭素系充填材を含み且つ前記(A)変性ノボラック型フェノール樹脂のフェノール性水酸基に対する前記(B)エポキシ化合物のエポキシ基の当量比が0.1〜1.5である硬化性樹脂組成物を硬化してなることを特徴とする燃料電池用セパレーター
  2. 前記(A)変性ノボラック型フェノール樹脂及び前記(B)エポキシ化合物の合計100質量部に対して、前記(C)ラジカル重合開始剤が0.05〜10質量部含まれることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用セパレーター
  3. 前記(B)分子内に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物が、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン又はエポキシ化エラストマーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池用セパレーター
  4. 前記(C)ラジカル重合開始剤が、有機過酸化物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料電池用セパレーター
  5. 前記(A)、(B)、(C)及び(D)成分の合計100質量部に対して、前記(D)炭素系充填材が60〜95質量部含まれることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の燃料電池用セパレーター。
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