以下、本発明に一実施形態について説明する。
図1は、燃料電池セパレータ(以下、セパレータという)20を備える固体高分子型燃料電池の単セル構造の一例を示す。2枚のセパレータ20,20の間に、固体高分子電解質膜などの電解質4とガス拡散電極(燃料電極31と酸化剤電極32)などからなる膜−電極複合体(MEA)5が介在することで、単電池(単位セル)が構成されている。セパレータ20と膜−電極複合体5の電解質4との間には、ガスケット12が介在している。この単位セルを数十個〜数百個並設されることで電池本体(セルスタック)が構成される。
セパレータ20には、燃料である水素ガス等と、酸化剤である酸素ガス等の流路であるガス供給排出用の溝2が形成される。
セパレータ20は、片面のみにガス供給排出用の溝2を有するアノード側セパレータと、前記アノード側セパレータとは反対側の片面のみにガス供給排出用の溝2を有するカソード側セパレータとで構成されてもよい。このアノード側セパレータとカソード側セパレータとが重ねられることで、図1に示すような両面にガス供給排出用の溝2を有するセパレータ20が構成される。アノード側セパレータとカソード側セパレータとの間には冷却水が流通する流路が形成されてもよい。この場合、アノード側セパレータとカソード側セパレータとの間にはガスケットが介在することが好ましい。
セパレータ20の、ガス供給排出用の溝2が形成されている領域を取り囲む外周部分には、六個のマニホールド13(二つの燃料用マニホールド131、二つの酸化剤用マニホールド132、及び二つの冷却用マニホールド133)が形成されている。燃料用マニホールド131,131は二つ形成されており、各燃料用マニホールド131,131はセパレータ20の燃料電極31と重なる面におけるガス供給排出用の溝2の両端にそれぞれ連通する。酸化剤用マニホールド132,132も二つ形成されており、各酸化剤用マニホールド132,132はセパレータ20の酸化剤電極32と重なる面におけるガス供給排出用の溝2の両端にそれぞれ連通する。この外周部分には、二つの冷却用マニホールド133も形成されている。セパレータ20がアノード側セパレータとカソード側セパレータとで構成される場合、アノード側セパレータとカソード側セパレータの間にある冷却水が流通する流路に、冷却用マニホールド133が連通する。
本実施形態では、図1に示されるように、セパレータ20にはストレートタイプのガス供給排出用の溝2が形成されている。一般に、セパレータ20におけるガス供給排出用の溝2としては、屈曲を有するサーペンタインタイプの溝と屈曲を有さないストレートタイプの溝とがある。勿論、図1に示されるセパレータ20において、このセパレータ20にサーペンタインタイプのガス供給排出用の溝2が形成されてもよい。
セパレータ20の厚みは例えば0.5〜3.0mmの範囲に形成される。セパレータ20のガス供給排出用の溝2の幅は例えば1.0〜1.5mm、深さは例えば0.5〜1.5mmの範囲に形成される。マニホールド13の開口面積は例えば0.5〜5.0cm2の範囲に形成される。
また、後述するようにシート状の成形材料が用いられる場合には、セパレータ20の薄型化が可能であり、この場合は例えば0.2〜1.0mmの範囲のセパレータ1を製造することができる。
ガスケット12は、セパレータ20の外周部分に、シーリングのために積層される。このガスケット12はその略中央部に膜−電極複合体5における燃料電極31や酸化剤電極32を収容するための開口15を有し、この開口15においてセパレータ20のガス供給排出用の溝2が露出する。ガスケット12には、開口15の外周側の、前記セパレータ20の燃料用マニホールド131と合致する位置に燃料用貫通孔141が、酸化剤用マニホールド132に合致する位置に酸化剤用貫通孔142が、冷却用マニホールド133と合致する位置に冷却用貫通孔143が、それぞれ形成されている。
膜−電極複合体5における電解質4にも、その外周部分の、前記セパレータ20の燃料用マニホールド131と合致する位置に燃料用貫通孔161が、酸化剤用マニホールド132と合致する位置に酸化剤用貫通孔162が、冷却用マニホールド133と合致する位置に冷却用貫通孔163が、それぞれ形成されている。
この単セル構造では、セパレータ20の燃料用マニホールド131、ガスケット12の燃料用貫通孔141、及び電解質4の燃料用貫通孔161が連通することで、燃料電極への燃料の供給及び排出のための燃料用流路が構成される。また、セパレータ20の酸化剤用マニホールド132、ガスケット12の酸化剤用貫通孔142、及び電解質4の酸化剤用貫通孔162が連通することで、酸化剤電極への酸化剤の供給及び排出のための酸化剤用流路が構成される。また、セパレータ20の冷却用マニホールド133、ガスケット12の冷却用貫通孔143、及び電解質4の冷却用貫通孔163が連通することで、冷却水等が流通する冷却用流路が構成される。
燃料電極31と酸化剤電極32、並びに電解質4は、燃料電池のタイプに応じた公知の材料で形成される。固体高分子型燃料電池の場合、燃料電極31及び酸化剤電極32は例えばカーボンクロス、カーボンペーパー、カーボンフェルト等の基材が触媒を担持することで構成される。燃料電極31における触媒としては例えば白金触媒、白金・ルテニウム触媒、コバルト触媒等が挙げられ、酸化剤電極32における触媒としては白金触媒、銀触媒等が挙げられる。また、固体高分子型燃料電池の場合、電解質4は例えばプロトン伝導性の高分子膜から形成され、特にメタノール直接型燃料電池の場合は例えばプロトン伝導性が高く、電子導電性やメタノール透過性を殆ど示さないフッ素系樹脂等から形成される。
ガスケット12は、例えば天然ゴム、シリコーンゴム、SIS共重合体、SBS共重合体、SEBS、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(HNBR)、クロロプレンゴム、アクリルゴム、フッ素系ゴム等などから選択されるゴム材料から形成される。このゴム材料には粘着付与剤が配合されてもよい。
セパレータ20にガスケット12を積層するにあたっては、例えば予めシート状又は板状に形成されたガスケット12がセパレータ20に接着や融着されるなどして接合される。セパレータ20の表面上でガスケット12を形成するための材料が成形されることによって、セパレータ20にガスケット12が積層されてもよい。例えば未加硫のゴム材料がスクリーン印刷等によりセパレータ20の表面上の所定位置に塗布され、このゴム材料の塗膜を加硫されることで、セパレータ20の表面上の所定位置に所望の形状のガスケット12が形成される。前記加硫にあたっては、加熱、電子線などの放射線の照射、或いはその他適宜の加硫方法が採用される。この場合、薄型のセパレータ20に対してもガスケット12が容易に積層される。また、セパレータ20が金型内にセットされ、このセパレータ20の表面上の所定位置に未加硫のゴム材料が射出されると共にこのゴム材料が加熱されるなどして加硫されることで、セパレータ20の表面上の所定位置に所望の形状のガスケット12が形成されてもよい。このように金型成形によりガスケット12が形成されるにあたっては、トランスファー成形、コンプレッション成形、インジェクション成形、スクリーン印刷法等の成形法が採用され得る。
セパレータ20は、樹脂成分、黒鉛粒子、及び粒子状架橋エラストマーを含有する成形用材料の硬化物から形成される。
成形用材料は、第一アミン及び第二アミンを含有しないことが好ましい。すなわち、この成形用材料が、置換基−NH及び−NH2を有する化合物を含有しないことが好ましい。更に成形用材料は第三アミンを含有しないことが好ましい。このように成形用材料がアミンを含有しないと、成形用材料から形成されるセパレータ20が燃料電池中の白金触媒を被毒することがなく、燃料電池が長時間使用される場合の起電力の低下が抑制される。
成形用組成物が含有する樹脂成分は、熱硬化性樹脂であることが好ましい。熱硬化性樹脂が使用される場合、熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂と熱硬化性フェノール樹脂のうち少なくとも一方を含有することが好ましい。エポキシ樹脂及び熱硬化性フェノール樹脂は良好な溶融粘度を有すると共に不純物が少なく、特にイオン性不純物が少ない点で優れている。
熱硬化性樹脂全量に対するエポキシ樹脂及び熱硬化性フェノール樹脂の含有量は50〜100質量%の範囲にあることが好ましい。熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂のみ、熱硬化性フェノール樹脂のみ、或いはエポキシ樹脂と熱硬化性フェノール樹脂のみを含むのであれば特に好ましい。
エポキシ樹脂は固形状であることが好ましく、特に融点が70〜90℃の範囲であることが好ましい。これにより、材料の変化が少なくなり、成形時の成形用材料の取り扱い性が向上する。この融点が70℃未満であると、成形用材料中で凝集が生じやすくなって、取り扱い性が低下するおそれがある。また、エポキシ樹脂として溶融粘度が低粘度の樹脂が選択されれば、成形用材料の良好な成形性が維持されつつ、成形用材料及びセパレータ20中に黒鉛粒子が高充填され得る。尚、前記作用が発揮される範囲内でエポキシ樹脂の一部が液状であってもよい。
エポキシ樹脂としては、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等が用いられることが好ましい。オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂は、良好な溶融粘度を有すると共に不純物が少なく、特にイオン性不純物が少ない点で優れている。
特にエポキシ樹脂が、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂のみからなり、或いはオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂と、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂から選択される少なくとも一種からなる成分(第一成分という)を含むことが好ましい。オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が必須の成分であると、成形用材料の成形性が向上すると共に、セパレータ20の耐熱性が向上する。更に、製造コストが低減され得る。第一成分中のオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の割合は、前記成形性の向上、セパレータ20の耐熱性の向上、製造コストの低減の観点から、50〜100質量%の範囲であることが好ましく、特に50〜70質量%の範囲であることが好ましい。
オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂と共に、ビスフェノール型エポキシ樹脂やビフェニル型エポキシ樹脂やビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂が併用されることも好ましい。この場合、成形用材料の溶融粘度が更に低減し、更に薄型のセパレータ20が作製される場合にはその靱性が向上し得る。
特にビスフェノールF型エポキシ樹脂が使用されると、成形用材料の粘度が低減し、成形用材料の成形性が特に高くなる。この場合の第一成分中におけるビスフェノールF型エポキシ樹脂の含有量は30〜50質量%の範囲であることが好ましい。
ビフェニル型エポキシ樹脂が使用されると、このビフェニル型樹脂は溶融粘度が低いため、成形用材料の流動性が著しく向上し、成形用材料の薄型成形性が特に向上する。この場合の第一成分中におけるビフェニル型エポキシ樹脂の含有量は30〜50質量%の範囲であることが好ましい。
ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂が使用されると、セパレータ20の強度及び靱性が向上し、更にセパレータ20の吸湿性が低減し得る。このため、セパレータ20の機械的特性、導電性、並びに長期使用時の特性の安定性が向上する。この場合の第一成分中におけるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂の割合は、30〜50質量%の範囲であることが好ましい。
成形用材料中の熱硬化性樹脂全量に対する第一成分の含有量は50〜100質量%の範囲にあることが好ましい。
前記第一成分は熱硬化性樹脂中のエポキシ樹脂の少なくとも一部として成形用材料中に含有される。すなわち、この第一成分以外の他の熱硬化性樹脂として、例えば前記第一成分以外のエポキシ樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂等から選択される一種又は複数種の樹脂が用いられてもよい。但し、エステル結合を含む樹脂は耐酸性環境下で加水分解するおそれがあるため、使用されないことが望ましい。また、熱硬化性樹脂として、セパレータ20の耐熱性や耐酸性の向上に寄与する点で、ポリイミド樹脂も適している。ポリイミド樹脂としては、特にビスマレイミド樹脂などが用いられることも好ましく、例えば、4,4−ジアミノジフェニルビスマレイミドが用いられることが好ましい。4,4−ジアミノジフェニルビスマレイミドが用いられると、セパレータ20の耐熱性が更に向上する。
熱硬化性フェノール樹脂が用いられる場合には、特に開環重合により重合反応が進行するフェノール樹脂が用いられることが好ましい。このようなフェノール樹脂としては、例えばベンゾオキサジン樹脂等が挙げられる。この場合は、成形用材料の成形工程で脱水によるガスが発生しないので成形品中にボイドが発生せず、このためセパレータ20のガス透過性の低下が抑制される。また、レゾール型フェノール樹脂が用いられることも好ましく、例えば13C−NMR分析で、オルト−オルト25〜35%、オルト−パラ60〜70%、パラ−パラ5〜10%の構造を有するレゾール型フェノール樹脂が用いられることが好ましい。レゾール樹脂は通常液状であるが、レゾール型フェノール樹脂の軟化点は容易に調整され得るため、融点が70〜90℃のレゾール型フェノール樹脂が容易に得られる。融点が70〜90℃のレゾール型フェノール樹脂が使用されることで、成形用材料の変質が抑制され、成形時の成形用材料の取り扱い性が向上する。この融点が70℃未満であると、成形用材料中で凝集が生じやすくなって、取り扱い性が低下するおそれがある。
エポキシ樹脂及び熱硬化性フェノール樹脂以外の他の樹脂が併用されてもよい。例えばポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂等から選択される一種又は複数種の樹脂が用いられてもよい。但し、エステル結合を含む樹脂は耐酸性環境下で加水分解する恐れがあるため、使用されないことが望ましい。
熱硬化性樹脂として、セパレータ20の耐熱性や耐酸性の向上に寄与する点で、ポリイミド樹脂も適している。このようなポリイミド樹脂としては、特にビスマレイミド樹脂なども好ましく、その具体例として例えば、4,4−ジアミノジフェニルビスマレイミドが挙げられる。このような樹脂が併用されることで、セパレータ20の耐熱性が更に向上され得る。
エポキシ樹脂が使用される場合、樹脂成分は硬化剤を含有することが好ましく、この硬化剤はフェノール系化合物を含有することが好ましい。このフェノール系化合物としては、ノボラック型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、多官能フェノール樹脂、アラルキル変性フェノール樹脂等が挙げられる。ノボラック型フェノール樹脂が用いられる場合は、オルソノボラック型フェノール樹脂、パラノボラック型フェノール樹脂のいずれが用いられてもよい。
硬化剤全量に対するフェノール系化合物の含有量は、エポキシ樹脂の使用量に依存して決定される。また、硬化剤がフェノール系化合物のみであれば特に好ましい。
フェノール系化合物以外の硬化剤が使用される場合、硬化剤として非アミン系の化合物が用いられることが好ましい。この場合、セパレータ20の電気伝導度が高い状態に維持されると共に、燃料電池の触媒の被毒が抑制される。硬化剤として酸無水物系の化合物が用いられないことも好ましい。酸無水物系の化合物が使用される場合は硬化物が硫酸酸性環境下等の酸性環境下で加水分解して、セパレータ20の電気伝導度の低下が引き起こされたり、セパレータ20からの不純物の溶出が増大してしまうおそれがある。
熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂が用いられる場合は、熱硬化性樹脂におけるエポキシ樹脂と硬化剤におけるフェノール系化合物とは、前記フェノール系化合物に対する前記エポキシ樹脂の当量比が0.8〜1.2の範囲となるように配合されることが好ましい。
炭素質粒子は、セパレータ20の電気比抵抗を低減して、セパレータ20の導電性を向上させるために使用される。炭素質粒子は黒鉛粒子であることが好ましい。黒鉛粒子としては、高い導電性を示すものであれば制限なく用いられ、例えば、メソカーボンマイクロビーズなどの炭素質を黒鉛化したもの、石炭系コークスや石油系コークスを黒鉛化したものの他、黒鉛電極や特殊炭素材料の加工粉、天然黒鉛、キッシュ黒鉛、膨張黒鉛等のような、適宜のものが用いられる。このような黒鉛粒子は、一種のみが用いられるほか、複数種が併用される。
黒鉛粒子は、人造黒鉛粉、天然黒鉛粉のいずれでもよい。天然黒鉛粉は導電性が高いという利点を有し、また人造黒鉛粉は天然黒鉛粉に比べて導電性は多少劣るものの、異方性が少ないという利点がある。
黒鉛粒子は、天然黒鉛粉、人造黒鉛粉のいずれの場合であっても、精製されていることが好ましく、この場合は、灰分やイオン性不純物が低いため、成形品であるセパレータ20からの不純物の溶出が抑制される。
黒鉛粒子は、精製されていることが好ましい。この場合は、黒鉛粒子中の灰分やイオン性不純物が低いため、セパレータ20からの不純物の溶出が抑制される。黒鉛粒子における不純物である灰分は0.05質量%以下であることが好ましく、灰分が0.05質量%を超えると、セパレータ20を備える燃料電池の特性が低下するおそれがある。
黒鉛粒子の平均粒径は15〜100μmの範囲であることが好ましい。この平均粒径が15μm以上であることで成形用材料の成形性が向上し、平均粒径が100μm以下となることでセパレータ20の表面平滑性が向上する。成形性の向上のためには、特に前記平均粒径が30μm以上であることが好ましく、またセパレータ20の表面平滑性が特に向上して後述するようにセパレータ20の表面の算術平均高さRa(JIS B0601:2001)が0.4〜1.6μmの範囲、特に1.0μm未満となるためには前記平均粒径が70μm以下であることが好ましい。特に前記平均粒径が30〜70μmの範囲であることが好ましい。
特に薄型のセパレータ20が作製される場合には、黒鉛粒子は100メッシュ篩(目開き150μm)を通過する粒径を有することが好ましい。この黒鉛粒子中に100メッシュ篩を通過しない粒子が含まれていると、成形用材料中に粒径の大きい黒鉛粒子が混入してしまい、特に成形用材料が薄型のシート状に成形される際の成形性が低下してしまう。
黒鉛粒子のアスペクト比は10以下であることが好ましく、この場合、セパレータ20に異方性が生じることが抑制される共に反りなどの変形も抑制される。
尚、セパレータ20の異方性の低減に関しては、セパレータ20における成形時の成形用材料の流動方向(セパレータ20の厚み方向と直交する方向)と、この流動方向と直交する方向(セパレータ20の厚み方向)との間での接触抵抗の比が、2以下となることが好ましい。
黒鉛粒子全体は、特に2種以上の粒度分布を有すること、すなわち黒鉛粒子全体が平均粒径の異なる2種以上の粒子群の混合物であることも好ましい。この明細書において、粒子群とは、黒鉛粒子全体のうちの少なくとも一部を構成する複数の粒子の集合を意味する。黒鉛粒子全体が、特に平均粒径1〜50μmの範囲の粒子群と、平均粒径30〜100μmの粒子群との混合物であることが好ましい。このような粒度分布を有する黒鉛粒子が用いられると、粒径の大きい粒子は表面積が小さいため、樹脂成分の含有量が少量であっても成形用材料の混練が可能になることが期待される。更に粒径の小さい粒子によって粒子同士の接触性が向上すると共に、セパレータ20の強度向上も期待され、これにより、セパレータ20の密度の向上、導電性の向上、ガス不透過性の向上、強度の向上等といった、性能の向上が図られる。平均粒径1〜50μmの粒子群と平均粒径30〜100μmの粒子群との混合比は、適宜調整されるが、特に前者対後者の混合質量比が40:60〜90:10、特に65:35〜85:15であることが好ましい。
尚、黒鉛粒子の平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分析計(日機装株式会社製のマイクロトラックMT3000IIシリーズなど)でレーザー回折散乱法により測定される体積平均粒径である。
成形用材料中の黒鉛粒子の割合は、成形用材料中の固形分全体に対して70〜80質量%の範囲であることが好ましい。すなわち、セパレータ20中の黒鉛粒子の割合はセパレータ20全体に対して70〜80質量%の範囲であると共にそれに伴ってセパレータ20中の熱硬化性樹脂硬化物の含有量が20〜30質量%の範囲であることが好ましい。このように黒鉛粒子の割合が70質量%以上であると、セパレータ20に充分に優れた導電性が付与されと共に、セパレータ20の機械的強度が充分に向上する。またこの割合が80質量%以下であると、成形用材料に充分に優れた成形性が付与されると共にセパレータ20に充分に優れたガス透過性が付与される。黒鉛粒子の割合が75質量%以上であると共にそれに伴って熱硬化性樹脂硬化物の割合が25質量%以下であれば更に好ましい。
粒子状架橋エラストマーは架橋されているエラストマーからなる粒子である。この粒子状架橋エラストマーは、成形材料中の樹脂成分のうち少なくとも一部との反応性を有する官能基を表面に備える。このような粒子状架橋エラストマーが使用されることで、セパレータ20の機械的強度が非常に高くなる。その理由は次の通りであると考えられる。
上記のような粒子状架橋エラストマーは成形材料中で凝集しにくく、分散性に優れている。更に成形材料が加熱されても粒子状架橋エラストマーは樹脂成分と相溶しにくく、このため成形材料が成形されてセパレータ20が形成される過程において、樹脂成分と粒子状架橋エラストマーとが相分離した状態が維持される。更に、成形材料の成形時に粒子状架橋エラストマーの官能基と樹脂成分のうち少なくとも一部とが反応して結合する。このため、セパレータ20中では粒子状架橋エラストマーが単離して分散性よく分散して存在すると共に樹脂成分の硬化物と化学的に結合する。これにより、粒子状架橋エラストマーはセパレータ20中に分散性よく、強固且つ安定的に配置されることになり、そのことにより、セパレータ20の弾性率が低下すると共に応力が加えられた場合に大きく歪みやすくなり、このため割れが生じにくくなると考えられる。
尚、例えば粒子状架橋エラストマーではなく液状エラストマーが用いられる場合には、セパレータ20の機械的強度は十分には向上せず、またセパレータ20の機械的強度にむらが生じやすくなってしまう。更に、粒子状架橋エラストマーが使用される場合にはセパレータ20の耐熱性に目立った悪影響が及ぼされることはないが、液状エラストマーが使用されるとセパレータ20の耐熱性が低下しやすくなる。これは、液状エラストマーが使用されると、成形材料が成形されてセパレータ20が形成される過程において、加熱時に成形材料中の液状エラストマーが一旦樹脂成分と相溶してから再び相分離する現象が起こるためと考えられる。すなわち、このような現象が生じると、液状エラストマーの析出状態にむらが生じてしまってセパレータ20中のエラストマーの分散性が悪くなってしまうことでセパレータ20の機械的強度が充分に向上しなくなると共に機械的強度にもむらが生じてしまうと考えられる。また液状エラストマーの一部が樹脂成分の硬化物中に相溶したままになることで樹脂硬化物のガラス転移温度(Tg)が低下し、このためにセパレータ20の耐熱性が悪化してしまうと考えられる。また、そのために熱時強度も悪化して高温に曝された場合にクラックが生じやすくなると考えられる。更に、ガラス転移温度(Tg)が低下、強度が大きく低下すると考えられる。
粒子状架橋エラストマーが備える官能基は、樹脂成分の種類に応じて適宜選択される。例えば樹脂成分がエポキシ樹脂を含有する場合に、カルボキシル基などのエポキシ基と反応する官能基を備える粒子状架橋エラストマーが使用されることができる。また樹脂成分がフェノール系化合物を含有する場合に、エポキシ基などのフェノール性水酸基と反応する官能基を備える粒子状架橋エラストマーが使用されることができる。
また、粒子状架橋エラストマーを構成する架橋エラストマーとしては、特に制限されるものではないが、架橋されているニトリルゴム(NBR)、架橋されているアクリレートブタジエンゴム(ABR)などが挙げられる。すなわち、粒子状架橋エラストマーとして、ニトリルゴム粒子、アクリレートブタジエンゴム粒子などが使用され得る。粒子状架橋エラストマーとして一種のみが用いられても二種以上が併用されてもよい。粒子状架橋エラストマーには例えばグラフト重合法などにより官能基が導入される。
粒子状架橋エラストマーが備える官能基の反応性に関しては、エポキシ基よりもカルボキシル基の方が反応性が良い。このため、樹脂成分がエポキシ樹脂を含有し、且つ粒子状架橋エラストマーがカルボキシル基を備える場合に、成形材料及びセパレータ20中の粒子状架橋エラストマーの分散性が更に良好になり、このためセパレータ20の機械的強度が更に高くなる。また、樹脂成分がエポキシ樹脂を含有する場合には、アクリレートブタジエンゴム粒子が使用されることが好ましい。この場合、エポキシ樹脂とアクリレートブタジエンゴムとの親和性が高いため、成形材料及びセパレータ20中の粒子状架橋エラストマーの分散性が更に良好になり、このためセパレータ20の機械的強度が更に高くなる。特に、樹脂成分がエポキシ樹脂を含有する場合に、カルボキシル基を備えるアクリレートブタジエンゴム粒子が使用されると、成形材料及びセパレータ20中の粒子状架橋エラストマーの分散性が非常に良好になり、このためセパレータ20の機械的強度が非常に高くなる。
粒子状架橋エラストマーが備える官能基の量は、特に制限されないが、粒子状架橋エラストマーを構成するモノマーに由来する構成単位のモル数に対する官能基のモル比率が0.1〜5mol%の範囲であることが好ましい。
粒子状架橋エラストマーの粒径は、特に制限されないが、その体積基準のメディアン径(50体積%累積中位径)が30〜500nmであることが好ましく、40〜200nmであることがより好ましく、45〜150nmであることが特に好ましい。このメディアン径は、超微粒子粒度分布計(Leeds & Northrup製 MICROTRAC UPA150)を用いて測定できる。
官能基を備える粒子状架橋エラストマーとしては、市販品が適宜使用可能である。使用可能な粒子状架橋エラストマーとしては、例えばカルボキシル基を備えるニトリルゴム粒子であるJSR株式会社製のXER−91、カルボキシル基を備えるアクリレートブタジエンゴム粒子であるJSR株式会社製のXER−92、エポキシ基を備えるニトリルゴム粒子であるJSR株式会社製のXER−81などが挙げられる。
成形材料中の粒子状架橋エラストマーの割合は、樹脂成分に対して0.2〜17質量%(0.2〜17phr)であることが好ましく、すなわちセパレータ20中の粒子状架橋エラストマーの割合は樹脂成分の硬化物に対して0.2〜17質量%であることが好ましい。この場合、成形時には成形材料の良好な流動性が確保されて成形性が良好になると共に、セパレータ20の機械的強度が充分に高くなる。この粒子状架橋エラストマーの割合は、更に0.2〜6質量%の範囲であることが好ましい。
成形用材料は、必要に応じて硬化触媒、ワックス(離型剤)、カップリング剤等の添加剤を含有してもよい。
硬化触媒(硬化促進剤)としては、特に制限されないが、成形用材料が第一アミン及び第二アミンを含有しないためには、非アミン系の化合物が用いられることが好ましい。例えば、アミン系のジアミノジフェニルメタンなどは残存物が燃料電池の触媒を被毒する恐れがあり、好ましくない。また、イミダゾール類は硬化後、塩素イオンを放出しやすくなるので、不純物溶出を低減する観点からはあまり好ましくない。
但し、測定開始温度30℃、昇温速度10℃/分、保持温度120℃、保持温度での保持時間30分の条件で加熱された場合の重量減少が5%以下であり、且つ2位に炭化水素基を有する置換イミダゾールが用いられることは、成形用材料の保存安定性が向上する点で好ましい。更に、特に薄型のセパレータ20が作製される場合には、ワニス状に調製された成形用材料からシート状のセパレータ20が形成される際の溶剤の揮発性、セパレータ20の平滑性などが良好となる。この置換イミダゾールとして、特に2位の炭化水素基の炭素数が6〜17の置換イミダゾールが使用されることが好ましく、その具体例としては、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール等が挙げられる。このうち、2−ウンデシルイミダゾール及び2−ヘプタデシルイミダゾールが好適である。これらの化合物は一種単独で用いられ、或いは二種以上が併用される。このような置換イミダゾールの含有量は適宜調整され、それにより成形硬化時間が調整され得る。この置換イミダゾールの含有量は好ましくは成形用材料中の熱硬化性樹脂と硬化剤の合計量に対して、0.5〜3質量%の範囲であることが好ましい。
また、硬化触媒として、好ましくはリン系化合物が用いられる。リン系化合物と前記置換イミダゾールとが併用されてもよい。リン系化合物の一例として、トリフェニルホスフィンが挙げられる。このようなリン系化合物が用いられると、セパレータ20からの塩素イオンの溶出が抑制される。
成形用材料は、硬化促進剤として、次の[化1]で示される化合物を含有することも好ましい。この場合、セパレータ20の耐湿性が向上する。しかも、この構造式(1)で示される化合物は、セパレータ20のガラス転移温度の低下や、熱時剛性の低下や、連続成形性の悪化などを引き起こすことがない。むしろこの構造式[化1]で示される化合物が使用されることにより、セパレータ20のガラス転移温度が上昇し、熱時剛性が向上し、更に成形用組成物の成形時の離型性が向上して連続成形性が向上し得る。
更に、この構造式[化1]で示される化合物からは、イオン性不純物の溶出が生じにくい。このため、構造式[化1]で示される化合物が使用されることで、セパレータ20からのイオン性不純物の溶出が抑制され、不純物の溶出による燃料電池の起動電圧低下等の特性低下が抑制される。構造式[化1]で示される化合物からイオン性不純物の溶出が生じにくいのは、この化合物の酸解離定数(pKa)が小さいためであると推察される。
構造式[化1]で示される化合物の、硬化促進剤全量に対する割合は、20〜100質量%の範囲であることが好ましい。この割合が20質量%未満であると、セパレータ20のガラス転移温度(Tg)の上昇が充分ではないおそれがある。
このような硬化触媒の含有量は適宜調整されるが、好ましくは成形用材料中のエポキシ樹脂に対して0.5〜3質量部の範囲とする。
カップリング剤としては、特に制限されないが、成形用材料が第一アミン及び第二アミンを含有しないためには、アミノシランが用いられないことが好ましい。アミノシランが用いられると、燃料電池の触媒が被毒される恐れがあり好ましくない。カップリング剤としてメルカプトシランが用いられないことも好ましい。このメルカプトシランが用いられる場合も、同様に燃料電池の触媒が被毒される恐れがある。
カップリング剤の例としては、シリコン系のシラン化合物、チタネート系、アルミニウム系のカップリング剤が挙げられる。例えばシリコン系のカップリング剤としては、エポキシシランが適している。
エポキシシランカップリング剤が使用される場合の使用量は、成形用材料の固形分中の含有量が0.5〜1.5質量%となる範囲であることが好ましい。この範囲において、カップリング剤がセパレータ20の表面にブリードすることを充分に抑制することができる。
カップリング剤は黒鉛粒子の表面に予め噴霧等により付着されていてもよい。その場合の添加量は、黒鉛粒子の比表面積と、カップリング剤の単位質量当たりの被覆可能面積(カップリング剤によって被覆され得る面積)とを考慮して適宜設定される。カップリング剤の添加量は、特にカップリング剤の被覆可能面積の総量が黒鉛粒子の表面積の総量の0.5〜2倍の範囲となるように調整されることが好ましい。この範囲において、セパレータ20の表面におけるカップリング剤のブリードが充分に抑制され、これにより金型表面の汚染が抑制される。
ワックス(内部離型剤)としては、特に制限されないが、120〜190℃で成形用材料中の熱硬化性樹脂及び硬化剤と相溶せずに相分離する内部離型剤が用いられることが好ましい。このような内部離型剤として、ポリエチレンワックス、カルナバワックス、及び長鎖脂肪酸系のワックスから選ばれる少なくとも一種が挙げられる。このような内部離型剤が成形用材料の成形過程で熱硬化性樹脂及び硬化剤と相分離することで、セパレータ20の離型性が向上する。
内部離型剤の含有量は、セパレータ20の形状の複雑さ、溝深さ、抜き勾配など金型面との離形性の容易さなどに応じて適宜設定されるが、成形用材料中の固形分全量に対して0.1〜2.5質量%の範囲であることが好ましい。この含有量が0.1質量%以上であることで金型成形時にセパレータ20が十分な離型性を発揮し、またこの含有量が2.5質量%以下であることでセパレータ20の親水性が充分に高く維持される。このワックスの含有量は0.1〜1質量%の範囲であれば更に好ましく、0.1〜0.5質量%の範囲であれば特に好ましい。
セパレータ20中のイオン性不純物の含有量は、成形用材料全量に対して質量比率でナトリウム含量5ppm以下、塩素含量5ppm以下とであることが好ましい。そのためには成形用材料のイオン性不純物の含有量が、成形用材料全量に対して質量比率でナトリウム含量5ppm以下、塩素含量5ppm以下であることが好ましい。この場合、セパレータ20からのイオン性不純物の溶出が抑制され、このため不純物の溶出による燃料電池の起動電圧低下等の特性低下が抑制される。
セパレータ20及び成形用材料のイオン性不純物の含有量が上記のように低減するためには、成形用材料を構成する熱硬化性樹脂、硬化剤、黒鉛、その他添加剤等の各成分のそれぞれのイオン性不純物の含有量が、各成分に対して質量比率でナトリウム含量5ppm以下、塩素含量5ppm以下であることが好ましい。
イオン性不純物の含有量は、対象物(成形用材料、熱硬化性樹脂など)から溶出したイオン性不純物を含む抽出水中の、イオン性不純物の量に基づいて導出される。抽出水は、イオン交換水中に対象物が対象物10gに対してイオン交換水100mlの割合となるように投入された状態で、このイオン交換水及び対象物が90℃で50時間加熱されることで、得られる。抽出水中のイオン性不純物は、イオンクロマトグラフィで評価される。この抽出水中のイオン性不純物量が対象物に対する質量比に換算されることで、対象物中のイオン性不純物の量が導出される。
成形用材料は、この組成物から形成されるセパレータ20のTOC(total organic carbon)が100ppm以下となるように調製されることが好ましい。
TOCは、イオン交換水中にセパレータ20が、セパレータ20の質量10gに対してイオン交換水100mlの割合で投入され、このイオン交換水及びセパレータ20が90℃で50時間加熱されることで得られる溶液から測定される数値である。このようなTOCは、例えばJIS K0102に準拠して島津製全有機炭素分析装置「TOC−50」などで測定され得る。測定にあたっては、サンプルの燃焼により発生したCO2濃度が非分散型赤外線ガス分析法で測定され、これによりサンプル中の炭素濃度が定量される。炭素濃度が測定されることによって、間接的にセパレータ20が含有する有機物質濃度が測定される。サンプル中の無機炭素(IC)、全炭素(TC)が測定されると、全炭素と無機炭素の差(TC−IC)から全有機炭素(TOC)が導出される。
上記のTOCが100ppm以下であると、燃料電池の特性低下が更に抑制される。
TOCの値は、成形用材料を構成する各成分として高純度の成分が選択されたり、樹脂の当量比が調整されたり、成形時に後硬化処理が施されたりすることによって、低減され得る。
また、原料成分中には不純物として金属成分が混入している可能性があり、成形用材料及びセパレータ20には不純物として原料成分に由来する金属成分、製造時に混入する金属成分などが混入している可能性がある。セパレータ20に金属成分が混入していると、セパレータ20の表面に金属酸化物(錆)が生じ、この金属酸化物から金属イオンが脱離する殊で、電解質4のプロトン伝導性の低下や電解質4の分解が引き起こされるおそれがある。また、この金属成分によりセパレータ20の腐食電流が増大してしまう。そこで、セパレータ20が製造されるにあたり、原料成分、成形用材料、及びセパレータ20のうち少なくともいずれかに対し、金属成分の含有量を低減するための処理を施すことが好ましい。この場合、セパレータ20の金属成分の含有量が低減する。特に、少なくとも成形用材料に対し、金属成分の含有量を低減するための処理施すことが好ましい。
原料成分に対する、金属成分の含有量を低減するための処理の一例として、原料成分中の金属成分を磁石を用いて吸引する処理が挙げられる。原料成分のうち、特に黒鉛粒子に対する、金属成分の含有量を低減するための処理としては、黒鉛粒子を、pH2以下の強酸性溶液を用いて洗浄する処理も挙げられる。強酸性溶液としては、例えば濃度69質量%の濃硝酸と濃度36質量%の濃塩酸とを体積比で1:3の割合で混合して得られる王水、濃度15質量%以上の塩酸水、濃度15質量%以上の硫酸水、及び濃度15質量%以上の硝酸水から選ばれる少なくとも一種を使用することができる。この場合、黒鉛粒子中の金属成分の含有量が容易に低減される。前記塩酸水、硫酸水及び硝酸水の濃度は、操作性の観点から30質量%以下であることが好ましい。
成形用材料に対する、金属成分の含有量を低減するための処理としては、原料成分に対する金属成分の含有量を低減するための処理と同様に、成形用材料中の金属成分を磁石を用いて吸引する処理などが挙げられる。
前記のような原料成分が配合されることで成形用材料が調製され、この成形用材料が成形されることでセパレータ20が得られる。成形用材料は、粒状、シート状等の適宜の形状に形成される。
成形用材料が粒状である場合には、上記のような原料成分が例えば攪拌混合機などで攪拌混合され、或いは更に整粒機などで整粒されることで、成形用材料が得られる。
成形用材料はシート状であってもよい。特に薄型のセパレータ20が作製される場合には、シート状の成形用材料が使用されることが好ましい。シート状の成形用材料が使用されると、例えば0.2〜1.0mmの厚みの薄型のセパレータ20が容易に得られ、しかもこのセパレータ20の厚み精度が高くなる。
シート状の成形用材料の調製のためには、まず上記のような原料成分を含有する液状の組成物が調製される。液状の組成物は必要に応じて溶媒を含有する。溶媒としては、たとえばメチルエチルケトン、メトキシプロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒が好ましい。溶媒は一種のみが用いられても二種以上が併用されてもよい。溶媒の使用量は成形性等を考慮して適宜設定されるが、好ましくは液状の組成物の粘度が1000〜5000cpsの範囲となるように調整される。尚、前記の通り溶媒は必要に応じて使用されていればよく、原料成分中の熱硬化性樹脂が液状樹脂である場合などには、溶媒が使用されなくてもよい。また、液状の組成物が、必要に応じて陽イオン界面活性剤、陰イオン海面下性剤、非イオン性界面活性剤などの界面活性剤を分散剤として含有することも好ましい。
この液状の組成物がシート状に成形されることで、シート状の成形用材料が得られる。液状の組成物が、例えばキャスティング(展進)成形によりシート状に成形されると共に、キャスティングにともなって加熱されることで乾燥され、或いは半硬化することにより、シート状の成形用材料が得られる。このシート状の成形用材料は、必要に応じて所定の平面寸法にカット(切断)もしくは打ち抜かれることで適当な寸法に形成される。
キャスティング法によりシート状の成形用材料が形成される際には、複数種の膜厚調節手段が適用され得る。このような複数種の膜厚調節手段が用いられるキャスティング法は、例えばすでに実用化されているマルチコータを用が用いられることで実現される。キャスティングのための膜厚調節手段としては、スリットダイとともに、ドクターナイフおよびワイヤーバーの少なくともいずれか、すなわちいずれか一方もしくは両方を用いることが好ましい。このシート状の成形用材料の厚みは、0.05mm以上であることが好ましく、0.1mm以上であれば更に好ましい。また、この厚みは0.5mm以下であることが好ましく、0.3mm以下であれば更に好ましい。このようにシート状の成形用材料の厚みが0.5mm以下であると、セパレータ20の薄型化や軽量化、並びにそれによる低コスト化が達成され、特に厚みが0.3mm以下であれば溶媒を使用する場合のシート状の成形用材料内部の溶媒の残存が効果的に抑制される。またこの厚みが0.05mm未満の場合にはセパレータ20の製造にあたっての有利さが充分に発揮されなくなり、特に成形性を考慮するとこの厚みは0.1mm以上であることが好ましい。
このようにシート状の成形材料が調製される過程で液状の組成物が調製される場合には、この組成物中に粒子状架橋エラストマーを、その良好な分散性を維持したままその含有量を増大させることが容易となる。ひいては成形材料並びにセパレータ20中の粒子状架橋エラストマーの良好な分散性を維持したままその含有量を増大させることが容易となる。このため、セパレータ20の機械的強度が更に向上し得る。またシート状の成形材料からは薄型のセパレータ20を製造することが容易であり、このため薄型でありながら機械的強度の高いセパレータ20を得ることができる。
成形用材料のディスクフローは80mm以上であることが好ましい。この場合、特に圧縮成形時の成形用材料の流動性が高くなり、このため成形時間の短縮化及び未充填の抑制が図れる。このディスクフローの上限は特に制限されないが、圧縮成形時の金型からの成形用材料の過度の流出を抑制する観点からは100mm以下であることが好ましい。ディスクフローは、平面上の一箇所に3gの成形用材料を密集させて配置し、これを温度170℃、圧力5MPaの条件で30秒間圧縮した場合に形成される成形体の、長径(最も長い径)の測定値である。成形用材料のディスクフローは、成形用材料の組成を変更することで適宜調整し得る。例えば、成形用材料中の黒鉛含有量が減少すればディスクフローは増大し、黒鉛含有量が増大すればディスクフローは減少する。成形用材料中の硬化促進剤の含有量が減少すればディスクフローは増大し、成形用材料中の硬化促進剤の含有量が増大すればディスクフローは低減する。更に成形用材料中の成分の種類が適宜変更されると、それに応じてディスクフローが増減する。
成形用材料が成形されることで、セパレータ20が得られる。成形法としては、射出成形法や圧縮成形法などが挙げられるが、圧縮成形法が採用されることが好ましい。圧縮成形法が採用される場合、成形材料が適宜の圧縮成形金型により加熱圧縮されることで、セパレータ20が得られる。このようにして得られるセパレータ20は、既に説明した通り、内部に粒子状架橋エラストマーが分散性よく分散して存在すると共にこの粒子状架橋エラストマーがセパレータ20内に強固且つ安定的に配置され、このためセパレータ20の機械的強度が高くなる。
セパレータ20には、ブラスト処理が施されるなどして、表層のスキン層が除去されると共にこのセパレータ20の表面粗さが調整されることが好ましい。セパレータ20の表面の算術平均高さRa(JIS B0601:2001)は、0.4〜1.6μmの範囲に調整されることが好ましい。この場合、セパレータ20の腐食電流が小さくなり、セパレータ20の耐食性が向上する。更に、セパレータ20とガスケット12との接合部でのガスリークが抑制される。このためウエットブラスト処理時にセパレータ20におけるガスケット12と接合する部位をマスクする必要がなくなり、セパレータ20の生産効率が向上する。尚、前記算術平均高さRaが0.4μm未満となることは困難であり、またこの値が1.6μmより大きいと前記ガスリークが充分に抑制されなくなるおそれがある。このセパレータ20の表面の算術平均高さRaは特に1.2μm以下であることが好ましい。更にこのセパレータ20の表面の算術平均高さRaが1.0μm未満であると、前記ガスリークが特に抑制され、セパレータ20の薄型化に伴ってセルスタック作製時の締結力が低くなっても、前記ガスリークが充分に抑制される。セパレータ20の表面の算術平均高さRaは前記のとおり0.4μm以上であることが好ましく、0.6μm以上であれば更に好ましい。
セパレータ20の表面の接触抵抗は15mΩcm2以下であることが好ましい。この場合、燃料電池で発電された電気エネルギーを外部へ伝達するというセパレータ20の機能が高いレベルで維持される。
前記ブラスト処理時には、セパレータ20にウエットブラスト処理が施されると共に、この処理においてアルミナ粒子等の砥粒を含むスラリーから磁石で金属成分が吸引されることが好ましい。ブラスト処理に用いられる砥粒には不純物として金属成分が混入している可能性があり、またブラスト処理時に砥粒を含むスラリーに金属成分が混入することがある。このような金属成分を含むスラリー用いてブラスト処理が施されると、セパレータ20の表面に砥粒から金属成分が打ち込まれてしまう。しかし、前記のようにスラリーから磁石により金属成分が吸引されながら、この砥粒によりウエットブラスト処理が施されると、ブラスト処理時にセパレータ20に金属成分が付着しにくくなる。すなわち、ウエットブラスト処理によってスキン層の除去や表面粗さの調整などがされつつ、このウエットブラスト処理時に、スラリー中の砥粒に含まれる金属異物などの金属成分がセパレータ20へ打ち込まれにくくなる。また、このウエットブラスト処理において、スラリーが循環されながら繰り返し使用されると共に、このスラリーの循環時にスラリーから金属成分が磁石などで吸引されると、スラリー中の砥粒から磁石により金属成分が吸引されながら、この砥粒によってウエットブラスト処理が施される。
更に、黒鉛粒子の金属成分の含有量を低減するための処理と同様に、セパレータ20から金属成分が磁石によって吸引されてもよい。この場合、例えばセパレータ20が一対の磁石の間に配置されることで、セパレータ20から金属成分が吸引される。尚、磁石を用いた吸引以外の適宜の方法でセパレータ20から金属成分が除去されてもよい。但し、強酸性溶液によって洗浄する方法ではセパレータ20を構成する樹脂が溶解してしまうおそれがあり、また超音波洗浄ではセパレータ20から黒鉛粒子が脱離してしまうおそれがあるため、好ましくない。
ウエットブラスト処理後のセパレータ20はイオン交換水等で洗浄されてもよい。
以上のようにして得られるセパレータ20における、金属成分の付着の程度は、このセパレータ20を90℃の温水で1時間洗浄した後、90℃の温度で1時間加熱乾燥する処理を施した後に、このセパレータ20の表面を観察することで確認される。セパレータ20に金属成分が付着していると、前記処理によりセパレータ20の表面に金属酸化物(錆)が生成する。前記処理後のセパレータ20の表面が目視で観察されても前記金属酸化物(錆)の存在が確認されないことが好ましい。特に、前記処理後のセパレータ20の表面に、直径100μmより大きい金属酸化物が存在しないことが好ましく、直径50μmより大きい金属酸化物が存在しなければ更に好ましい。また、直径30μmより大きい金属酸化物が存在しなければ特に好ましい。
また、このセパレータ20の表面に表出しているFe、Co、及びNiの総量が0.01μg/cm2以下となっていることが好ましい。更に、このセパレータ20の表面に表出しているCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びZnの総量が0.01μg/cm2以下となっていることが好ましい。
セパレータ20には、ウエットブラスト処理に続いて大気圧プラズマ処理が施されることも好ましい。この場合、セパレータ20の表面の親水性が向上すると共に、この高い親水性が長期に亘って維持されるようになる。セパレータ20への大気圧プラズマ処理は、リモート方式での大気圧プラズマ処理であることが好ましい。この場合、セパレータ20の表面に向けてプラズマが吹き付けられ、このためセパレータ20のガス供給排出用溝2の内面まで充分に処理がなされる。またプラズマ処理時にセパレータ20が放電に直接曝されなくなり、このためセパレータ20がプラズマ処理時に損傷しにくくなる。
ウエットブラスト処理後のセパレータ20には、大気圧プラズマ処理に先立って乾燥処理が施されることが好ましい。この場合、水分子によってセパレータ20への大気圧プラズマ処理が阻害されることが抑制され、大気圧プラズマ処理の効率が向上する。この乾燥処理では、セパレータ20がエアブローなどにより風乾されることが好ましい。この乾燥処理により、セパレータ20が、吸湿率0.1%以下になるまで乾燥されることが好ましい。
大気圧プラズマ処理後のセパレータ20の表面と水とを接触させることが好ましい。この場合、セパレータ20の表面の親水性が更に向上する。
上記のような表面処理により、処理後のセパレータ20の表面の水との静的接触角が0°〜50°の範囲となるようにすることが好ましい。この静的接触角は特に0°〜10°の範囲であることが好ましく、0°〜5°の範囲であれば更に好ましい。この水との静的接触角は、表面処理条件を適宜設定することにより調整することができる。これにより、セパレータ20の表面に充分に高い親水性を付与することができる。
表面処理により、セパレータ20の前記表面処理された面の接触抵抗が15mΩcm2以下となるようにすることも好ましい。この接触抵抗も、表面処理条件を適宜設定することにより調整することができる。これにより、燃料電池で発電した電気エネルギーを外部へ伝達するというセパレータ20の機能を高いレベルで維持することができる。
図2は複数の単セルからなる燃料電池40(セルスタック)の一例を示す。この燃料電池40は、燃料用流路に連通する燃料の供給口171及び排出口172と、酸化剤用流路に連通する酸化剤の供給口181及び排出口182と、冷却用流路に連通する冷却水の供給口191及び排出口192とを有する。
この燃料電池40の燃料の供給口171から水素ガス等の燃料が、酸化剤の供給口181から酸素ガス等の酸化剤が、それぞれ供給されることにより、燃料電池40が作動する。燃料電池40が作動する間、燃料電池に冷却水の供給口191から冷却水が供給され、このため、燃料電池の温度が運転のための適正な温度に調節される。冷却水としては、純水が使用されることが好ましい。
各実施例及び比較例につき、表1に示す成分、並びに溶媒(メチルエチルケトン)を攪拌混合機(ダルトン製「5XDMV−rr型」)に表1に示す組成となるように入れて攪拌混合し、粘度1000−5000cpsの範囲のスラリー状の樹脂組成物を得た。
尚、表1中の各成分の配合量は、断りのない限り、溶媒を除く全成分(固形分)を基準にした配合量である。
前記樹脂組成物から、シート製造のための装置としてマルチコータ(ヒラノテクシード社製、品番M−400)を用いて成形用シートを製造した。この装置では、スリットダイとともに、ドクターナイフ並びにワイヤーバーによるキャスティングと2段階での膜厚調節が行われる。各段階での膜厚調節後には乾燥ゾーンにおいて93℃、10分(第1乾燥ゾーン)、128℃、10分(第2乾燥ゾーン)の乾燥過熱が施される。
これにより得られた厚み0.1mmの成形用シート2枚を重ね、これを170℃、20MPa、5分間の条件で圧縮成形した。
この圧縮成形により、セパレータを100mm×100mm、厚み0.2mmの寸法に形成した。
このセパレータの表面に、マコー株式会社製のウエットブラスト処理装置(形式PFE−300T/N)を用い、砥粒としてアルミナ粒子を含むスラリー用いてブラスト処理を施した後、イオン交換水で洗浄し、更に温風乾燥した。この処理後のセパレータの表面の算術平均高さRa(JIS B0601:2001)を測定した結果を表1に示す。
[ディスクフロー評価]
各実施例及び比較例における成形材料のディスクフローを測定した。その結果を表1に示す。
[曲げ強度評価]
各実施例及び比較例において、セパレータを作製する場合と同じ方法で80mm×10mm×4mmの寸法の曲げ強度測定用の成形品を作製し、JIS K6911に準拠して曲げ強度を測定した。支点間距離は64mm、クロスヘッドスピードは2mm/分とした。
[曲げ弾性率評価]
上記曲げ強度評価の測定時に、同時にJIS K6911に準拠して曲げ弾性率を測定した。
[ガラス転移温度評価]
各実施例及び比較例において得られた評価用成形品を5×50mmに切り出し、粘弾性スペクトロメータにより動的粘弾性挙動を測定した。これにより得られたtanδの分散曲線のピーク温度をガラス転移温度とした。
[不純物溶出性評価]
各実施例及び比較例におけるセパレータをメタノールにて1分間洗浄した後、イオン交換水で1分間洗浄した。次いで、ポリエチレン製容器中にセパレータとイオン交換水とを、セパレータの質量10gに対してイオン交換水が100mlとなるように入れ、90℃で50時間処理した。処理後のイオン交換水(抽出水)の塩化物イオン濃度を、イオンクロマトグラフィ(島津製作所社製「CDD−6A」)で測定した。
[燃料電池の起電圧変動評価]
アセチレンブラック粉末に、平均粒径が約3nmの白金粒子を担持した触媒粉末(田中貴金属製、Pt/C標準品)を用意した。なお、この触媒粉末中の白金粒子の含有量は25質量%であった。この触媒粉末をイソプロパノ−ルに分散させた後、この分散溶液と、パーフルオロカーボンスルホン酸の粉末をエタノールに分散させた分散溶液とを混合し、触媒ペーストを調製した。
また、平面視寸法14cm×14cm、厚み360μmのカ−ボン不織布(東レ製、TGP−H−120)を、フッ素樹脂を含む水性ディスパージョン(ダイキン工業製、ネオフロンND1)に含浸した後、これを乾燥し、400℃で30分間加熱して、拡散層となる撥水性のカーボンペーパーを作製した。
続いて、このカーボンペーパーの片面上に、上述した触媒ペーストをスクリ−ン印刷法により塗布して触媒層を形成し、触媒層とカーボンペーパーとが積層された電極を一対作製した。触媒層の一部は、カーボンペーパーの中に埋まり込んでいた。なお、触媒層表面に表出した白金粒子及びパーフルオロカーボンスルホン酸の量は、それぞれ0.6mg/cm2及び1.2mg/cm2であった。
高分子電解質膜としてパーフルオロカーボンスルホン酸膜(ジャパンコアテックス製、外寸15cm×15cm、厚み30μm)を別途用意し、この高分子電解質膜の両面上に上述した一対の電極を重ねた。一対の電極はカーボンペーパー(拡散層)が外面側に配置されるようにした。これらをホットプレスで接合し、膜−電極複合体を得た。
実施例2の組成及び条件でセパレータを作製した。このセパレータ上の外周部分にエチレン−プロピレン−ジエンゴムをスクリーン印刷により塗布した後、加熱加硫することでガスケットを形成した。上記膜−電極複合体の両側に前記セパレータを重ね、財団法人日本自動車研究所標準単セル(電極面積25cm2)からなる燃料電池を作製した。
この燃料電池に、外部回路を接続した状態で、燃料ガスとして空気を2.0NL/minの流量で、酸化剤ガスとして水素を0.5NL/minの流量でそれぞれ供給することで、燃料電池を1000時間連続的に動作させた。この燃料電池の作動時の起電圧(V)の経時的な変動を調査した。その結果、変動後の起電圧の、初期値に対する百分率((E1/E0)×100(%);E1は変動後の起電圧、E0は初期の起電圧)の値は、93%であった。
表中の各成分の詳細は次の通りである。
・エポキシ樹脂:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製「EOCN−1020−75」、エポキシ当量199、融点75℃)。
・硬化剤:ノボラック型フェノール樹脂(群栄化学社製「PSM6200」、OH当量105)。
・硬化促進剤:トリフェニルホスフィン(北興化学社製「TPP」)。
・エラストマーA:カルボキシル基を備える架橋ニトリルゴム粒子(JSR株式会社製、XER−91、50体積%累積中位径70nm)。
・エラストマーB:カルボキシル基を備える架橋アクリレートブタジエンゴム粒子(JSR株式会社製、XER−92、50体積%累積中位径70nm)。
・エラストマーC:エポキシ基を備える架橋ニトリルゴム粒子(JSR株式会社製、XER−81、50体積%累積中位径12μm)。
・エラストマーD:非架橋ニトリルゴム粒子(JSR株式会社製、N220SH)。
・天然黒鉛:平均粒子径50μm。
・人造黒鉛:平均粒子径50μm。
・カップリング剤:エポキシシラン(日本ユニカー社製「A187」)、
・ワックスA:天然カルナバワックス(大日化学社製「H1−100」、融点83℃)。
・ワックスB:モンタン酸ビスアマイド(大日化学社製「J−900」、融点123℃)。