以下、本発明の、より具体的な実施形態を説明する。
図1は、本実施形態における燃料電池用のセパレータ20(以下、セパレータ20という)、及びセパレータ20を備える固体高分子型燃料電池の単位セルの構造を、概略的に示す。単位セルは、セパレータ20、ガスケット12、並びに膜−電極複合体5が重ねられることで構成されている。膜−電極複合体5は、酸化剤電極31、燃料電極32、及び電解質4から構成される。
セパレータ20には、ガス(燃料ガス又は酸化剤ガス)又は冷媒(冷却水等)を流通させるための溝2が形成されている。本実施形態では、一つの単位セルは、セパレータ20として、カソード側セパレータ21とアノード側セパレータ22とを備える。カソード側セパレータ21とアノード側セパレータ22の各々は、その厚み方向の第一の面と、この第一の面とは反対側にある第二の面とを有する。
単位セル内においては、カソード側セパレータ21の第一の面は酸化剤電極31と重なるように配置され、アノード側セパレータ22の第一の面は燃料電極32と重なるように配置される。アノード側セパレータ22は、燃料ガスを流通させるための溝2(202)が形成されている領域と、この領域を取り囲む外周部分とを有する。溝202は、アノード側セパレータ22の第一の面に形成されている。また、カソード側セパレータ21は、酸化剤ガスを流通させるための溝2(201)が形成されている領域と、この領域を取り囲む外周部分とを有する。酸化剤ガスを流通させるための溝2(201)は、図1には図示はされていないが、カソード側セパレータ21の第一の面に形成されている(図3,4参照)。また、カソード側セパレータ21の第二の面には、冷却水を流通させるための溝2(203)が形成されている。
二つの単位セルが重ねられる際には、一方の単位セルにおけるカソード側セパレータ21の第二の面と、他方の単位セルにおけるアノード側セパレータ22の第二の面とが、重ねられる。このカソード側セパレータ21と、アノード側セパレータ22との間には、溝203から構成される、冷却水を流通させるための流路が、形成される。
尚、本実施形態では、上記の通り冷却水を流通させるための溝203がカソード側セパレータ21の第二の面に形成されているが、冷却水を流通させるための溝がアノード側セパレータ22の第二の面に形成されていてもよい。また、カソード側セパレータ21の第二の面に冷却水を流通させるための溝が形成され、且つアノード側セパレータ22の第二の面にも冷却水を流通させるための溝が形成されていてもよい。
セパレータ20には、このセパレータ20を貫通する孔からなるマニホールド13が形成されている。本実施形態では、セパレータ20には、六個のマニホールド13が形成されている。これらのマニホールド13は、セパレータ20の第一の面と第二の面の各々の外周部分で開口している。六個のマニホールド13は、二つの燃料用マニホールド131、二つの酸化剤用マニホールド132、及び二つの冷却用マニホールド133を含んでいる。カソード側セパレータ21における二つの酸化剤用貫通孔131,131は、カソード側セパレータ21の第一の面における溝に連通する。アノード側セパレータ22における二つの燃料用貫通孔132,132は、アノード側セパレータ22の第一の面における溝202に連通する。また、カソード側セパレータ21における二つの冷却用マニホールド133は、カソード側セパレータ21の第二の面における溝203に連通する。
本実施形態では、図1に示されるように、セパレータ20にはストレートタイプの溝2が形成されている。一般に、セパレータ20における溝2としては、屈曲を有するサーペンタインタイプの溝と屈曲を有さないストレートタイプの溝とがある。勿論、図1に示されるセパレータ20において、このセパレータ20にサーペンタインタイプの溝が形成されてもよい。
セパレータ20の厚みは例えば0.5〜3.0mmの範囲に形成される。セパレータ20の溝2の幅は例えば1.0〜1.5mm、深さは例えば0.5〜1.5mmの範囲に形成される。また、溝2の幅(A)と深さ(B)との比(A/B)が1以上であることが好ましい。この場合、後述する親水化処理の効率が高くなる。また、マニホールド13の開口面積は例えば0.5〜5.0cm2の範囲に形成される。
ガスケット12は、カソード側セパレータ21の第一の面とアノード側セパレータ22の第一の面との各々における外周部分上に重ねられる。これにより、燃料ガス及び酸化剤ガスのガスリークが抑制される。ガスケット12には、その略中央部に、膜−電極複合体5における酸化剤電極31又は燃料電極32を収容するための開口15が形成されている。この開口15において、セパレータ20の溝2が露出する。また、ガスケット12には、セパレータ20の酸化剤用貫通孔131、燃料用貫通孔132及び冷却用貫通孔133と合致する位置に、貫通孔141,142,143が、それぞれ形成されている。
また、二つの単位セルが重ねられる場合の、一方の単位セルにおけるカソード側セパレータ21の第二の面と、他方の単位セルにおけるアノード側セパレータ22の第二の面との間にも、ガスケット12が介在する。このガスケット12によって、冷却水の漏出が抑制される。このガスケット12の略中央部にも、開口15が形成されている。この開口15において、セパレータ20の溝2が露出する。また、このガスケット12にも、セパレータ20の酸化剤用貫通孔131、燃料用貫通孔132及び冷却用貫通孔133と合致する位置に、貫通孔141,142,143が、それぞれ形成されている。
尚、カソード側セパレータ21の第二の面と、アノード側セパレータ22の第二の面との間は、接着剤で接着されてもよく、この場合はカソード側セパレータ21の第二の面と、アノード側セパレータ22の第二の面との間にガスケットが介在しなくても、冷却水の漏出が抑制される。接着剤としては、特に限定されないが、オレフィン系樹脂接着剤が用いられることが好ましい。この場合、接着剤からの不純物の溶出が抑制され、また、燃料電池の耐久性が高くなる。
膜−電極複合体5における電解質4の外周部分には、セパレータ20の酸化剤用貫通孔131、燃料用貫通孔132及び冷却用貫通孔133と合致する位置に、貫通孔161,162,163がそれぞれ形成されている。
図2は、セパレータ20と膜−電極複合体5とを備える複数の単位セルから構成される燃料電池40(セルスタック)の一例を示す。この燃料電池40は、セパレータ20の酸化剤用貫通孔131に連通する酸化剤の供給口171及び排出口172と、セパレータ20の燃料用貫通孔132に連通する燃料の供給口181及び排出口182と、セパレータ20の冷却用貫通孔133に連通する冷却水の供給口191及び排出口192とを有する。
以下、本実施形態に係るセパレータ及びその製造方法について、更に詳しく説明する。
セパレータ20は、導電部61と絶縁部62とで構成される。導電部61は、導電性を有する。この導電部61に、ガス又は冷媒が流通する溝2が形成されている。一方、絶縁部62は、電気的絶縁性を有する。この絶縁部62にマニホールド13が形成されている。絶縁部62は、導電部61の外縁に接合されている。これにより、絶縁部62は、導電部61を取り囲んで、セパレータ20の外周部分を構成する。
このようにセパレータ20は絶縁部62を備えるため、この絶縁部62によって、セパレータ20を備えるセルスタックとその外部との間の電気的絶縁性を確保することができる。また、絶縁部62によってマニホールド13の周辺の電気的絶縁性が確保されるため、マニホールド13の周囲を構成する部材が溶出することによる腐食(電解腐食)を抑制することができる。
導電部61は、例えば熱硬化性樹脂成分と黒鉛粒子とを含有する導電性成形材料を成形することで作製される。また、導電部61は、金属製のプレート等の金属材を加工することで作製されてもよい。
導電性成形材料から形成される導電部61について説明する。図3に、導電性成形材料から形成される導電部61を備えるセパレータ20の断面構造の一例を示す。
この場合、導電部61は、熱硬化性樹脂成分の硬化物と黒鉛粒子とを含有する。この導電部61は、熱硬化性樹脂成分と黒鉛粒子とを含有する導電性成形材料から形成される。
黒鉛粒子は、導電部61の電気比抵抗を低減して導電部61の導電性を向上するために使用される。導電部61中の黒鉛粒子の割合は、導電部61に対して70〜90質量%の範囲であることが好ましい。すなわち、導電性成形材料中の黒鉛粒子は、導電性成形材料中の固形分全量に対して70〜90質量%の範囲であることが好ましい。黒鉛粒子の割合が70質量%以上であることで導電部61に充分に優れた導電性が付与されるようになり、この割合が90質量%以下であることで、導電性成形材料から導電部61が形成される際に充分に優れた成形性が付与されると共に導電部61に充分に優れたガス透過性が付与される。この黒鉛粒子の割合は、70〜85質量%の範囲であれば更に好ましい。
高い導電性を示すのであれば、各種の黒鉛粒子が制限なく用いられる。例えば、メソカーボンマイクロビーズなどの炭素質を黒鉛化して得られる黒鉛粒子、石炭系コークスや石油系コークスを黒鉛化して得られる黒鉛粒子、黒鉛電極や特殊炭素材料の加工粉、天然黒鉛、キッシュ黒鉛、膨張黒鉛等の、適宜の黒鉛粒子が用いられる。このような各種の黒鉛粒子は、一種単独で用いられ、或いは複数種が併用される。
黒鉛粒子は、人造黒鉛粉、天然黒鉛粉、膨張黒鉛粉のいずれであってもよい。天然黒鉛粉には導電性が高いという利点があり、人造黒鉛粉には天然黒鉛粉に比べて導電性は多少劣るものの、異方性が少ないという利点がある。
黒鉛粒子は、精製されていることが好ましい。この場合は、黒鉛粒子中の灰分やイオン性不純物の含有量が低くなるため、導電部61からの不純物の溶出が抑制される。黒鉛粒子中の灰分の含有量は特に0.05質量%以下であることが好ましい。この灰分が0.05質量%を超えると、セパレータを備える燃料電池の特性低下が引き起こされるおそれがある。
黒鉛粒子の平均粒径は10〜100μmの範囲であることが好ましい。この平均粒径が10μm以上であることで導電性成形材料の成形性が優れたものとなり、この平均粒径が100μm以下となることで導電部61の表面平滑性が更に向上する。導電性成形材料の成形性が特に向上するためには前記平均粒径が30μm以上であることが好ましい。また、導電部61の表面平滑性が特に向上して後述するように導電部61の表面の算術平均高さRaが0.4〜1.2μmの範囲となるためには、前記平均粒径が70μm以下であることが好ましい。
特に薄型のセパレータが得られる場合には、黒鉛粒子は100メッシュ篩(目開き150μm)を通過する粒径を有することが好ましい。この黒鉛粒子中に100メッシュ篩を通過しない粒子が含まれていると、導電性成形材料中に粒径の大きい黒鉛粒子が混入してしまい、特に導電性成形材料が薄型のシート状に成形される際の成形性が低下してしまう。
黒鉛粒子のアスペクト比は10以下であることが好ましい。この場合、導電部61に異方性が生じることが抑制されると共に、導電部61の反りなどの変形も抑制される。
尚、導電部61の異方性の低減に関しては、導電部61における、成形時の導電性成形材料の流動方向と、この流動方向と直交する方向との間での接触抵抗の比が、2以下となることが好ましい。
黒鉛粒子は、特に二種以上の粒度分布を有することが好ましい。すなわち、黒鉛粒子が、平均粒径の異なる二種以上の粒子群を含んでいることが好ましい。この場合、特に黒鉛粒子は平均粒径1〜50μmの範囲の粒子群と、平均粒径30〜100μmの粒子群とを含んでいることが好ましい。このような粒度分布を有する黒鉛粒子が用いられると、平均粒径の大きい粒子群は表面積が小さいため、この粒子群により、樹脂量が少量であっても導電性成形材料の混練が可能となる。更に平均粒径の小さい粒子群によって、黒鉛粒子同士の接触性が高まると共に、成形品の強度が向上する。これにより、導電部61の嵩密度の向上、導電性の向上、ガス不透過性の向上、強度の向上等といった、性能の向上が図られる。平均粒径1〜50μmの粒子群と平均粒径30〜100μmとの粒子群の混合比は、適宜調整されるが、特に前者対後者の混合質量比が40:60〜90:10、特に65:35〜85:15であることが好ましい。
尚、黒鉛粒子の平均粒径は、レーザ回折・散乱式粒度分析計(日機装株式会社製のマイクロトラックMT3000IIシリーズなど)でレーザ回折散乱法により測定される体積平均粒径である。
熱硬化性樹脂成分には、エポキシ樹脂とフェノール樹脂のうち少なくとも一方を含む熱硬化性樹脂が含まれていることが好ましい。エポキシ樹脂及び熱硬化性フェノール樹脂は良好な溶融粘度を有すると共に不純物が少なく、特にイオン性不純物が少ない点で優れている。この熱硬化性樹脂成分中には、必要に応じて使用される硬化剤及び触媒(硬化促進剤)も含まれる。導電性成形材料中の熱硬化性樹脂成分の含有量は、導電性成形材料中の固形分全量に対して10〜30質量%の範囲であることが好ましく、15〜28質量%の範囲であれば更に好ましい。
熱硬化性樹脂成分中の熱硬化性樹脂全体に対するエポキシ樹脂及び熱硬化性フェノール樹脂の合計量の割合は、50〜100質量%の範囲にあることが好ましい。熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂のみ、熱硬化性フェノール樹脂のみ、或いはエポキシ樹脂と熱硬化性フェノール樹脂のみであれば、特に好ましい。
エポキシ樹脂は固形状であることが好ましく、特に融点が70〜90℃の範囲であることが好ましい。これにより、材料の変化が少なくなり、成形時の導電性成形材料の取り扱い性が向上する。この融点が70℃未満であると、導電性成形材料中で凝集が生じやすくなって、取り扱い性が低下するおそれがある。また、エポキシ樹脂の溶融粘度が低粘度であると、成形用組成物の良好な成形性が維持されつつ、導電性成形材料及び導電部61中に黒鉛粒子が高充填されることが可能となる。尚、このような作用が発揮される範囲内で、エポキシ樹脂の一部が液状であってもよい。
エポキシ樹脂が、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、及びビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂から選択される、一種以上を含有することが好ましい。このオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂は、良好な溶融粘度を有すると共に不純物が少なく、特にイオン性不純物が少ない点で優れている。
特にエポキシ樹脂が、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂からなる成分、或いはオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂と、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂から選択される少なくとも一種とからなる成分を、含有することが好ましい。これらの成分の、熱硬化性樹脂全量に対する割合は、50〜100質量%の範囲にあることが好ましい。
エポキシ樹脂が使用される場合、導電性成形材料は、必要に応じてエポキシ樹脂の硬化剤を含有する。硬化剤は、導電性成形材料が含有するエポキシ樹脂を硬化させる能力を有するのであれば特に限定されないが、フェノール系化合物を必須成分とすることが好ましい。このフェノール系化合物は、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等の各種多価フェノール樹脂から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
硬化剤全量に対するフェノール系化合物の含有量は、エポキシ樹脂の使用量に依存して決定される。また、硬化剤がフェノール系化合物のみであれば特に好ましい。特に、フェノール系化合物に対するエポキシ樹脂の当量比が0.8〜1.2の範囲となることが好ましい。
硬化剤が、フェノール系化合物と共に、非アミン系の化合物を含有することも好ましい。この場合、導電部61の電気伝導度が高い状態に維持されると共に、燃料電池における電極触媒の被毒が抑制される。また硬化剤が酸無水物系の化合物を含有しないことが好ましい。
熱硬化性樹脂として熱硬化性フェノール樹脂が用いられる場合は、特に開環重合により重合反応が進行するフェノール樹脂が用いられることが好ましい。このようなフェノール樹脂としては、例えばベンゾオキサジン樹脂等が挙げられる。この場合は、成形工程で脱水によるガスが発生しないので成形品中にボイドが発生しにくくなり、導電部61のガス透過性の低下が抑制される。また、レゾール型フェノール樹脂が用いられることも好ましく、例えば13C−NMR分析の結果、オルト−オルト結合割合25〜35%、オルト−パラ結合割合60〜70%、パラ−パラ結合割合5〜10%である構造を有するレゾール型フェノール樹脂が用いられることが好ましい。レゾール樹脂は通常液状であるが、レゾール型フェノール樹脂は軟化点を容易に調整され、融点が70〜90℃のレゾール型フェノール樹脂も容易に得られる。これにより、導電性成形材料の変化が少なくなり、成形時の取り扱い性が向上する。この融点が70℃未満であると、導電性成形材料中で成分の凝集が生じやすくなって、取り扱い性が低下するおそれがある。
熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂及び熱硬化性フェノール樹脂以外の樹脂が併用されてもよい。例えばポリイミド樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂等から選択される一種又は複数種の樹脂が用いられる。但し、エステル結合を含む樹脂は、耐酸性環境下で加水分解する恐れがあるため、使用されないことが好ましい。
また、熱硬化性樹脂が、ポリイミド樹脂を含有してもよい。この場合、導電部61の耐熱性及び耐酸性が向上する。ポリイミド樹脂としては、特にビスマレイミド樹脂が挙げられる。その具体例として、4,4−ジアミノジフェニルビスマレイミドが挙げられる。このような他の樹脂が併用されると、導電部61の耐熱性が更に高まる。
熱硬化性樹脂成分は、上記のとおり必要に応じて触媒(硬化促進剤)を含有する。硬化促進剤は、例えばトリフェニルホスフィン(TPP)、トリ−p−トリルホスフィン(TPTP)等の有機ホスフィン類、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の三級アミン類、並びに2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類から選択される一種以上の化合物を含有する。
特に硬化促進剤が、有機ホスフィン類を含有することが好ましい。この場合、有機ホスフィン類は塩化物イオン等の不純物の含有量が少ないため、導電部61中のイオン性不純物の含有量が少なくなる。このため、導電部61からの不純物溶出量が少なくなり、これにより燃料電池の耐久性が向上する。更に、特に硬化促進剤として、トリ−p−トリルホスフィン(TPTP)が使用されると、導電性成形材料が加熱硬化される際の硬化速度が充分に高くなり、且つ導電性成形材料の硬化物である導電部61のガラス転移点が充分に高くなる。このため、導電部61の生産効率が向上し、また導電部61の耐熱性も向上する。
導電性成形材料中の硬化促進剤の含有量は適宜調整され、それにより導電性成形材料の成形硬化時間が適宜調整される。特に導電性成形材料中の硬化促進剤の含有量が、導電性成形材料中の熱硬化性樹脂と硬化剤の合計量に対して0.5〜3質量%の範囲であることが好ましい。
導電性成形材料は、更に内部離型剤を含有してもよい。内部離型剤としては適宜のものが用いられるが、特に120〜190℃において、導電性成形材料中の熱硬化性樹脂及び硬化剤と相溶せずに相分離する内部離型剤が好ましい。このような内部離型剤として、ポリエチレンワックス、カルナバワックス、および長鎖脂肪酸系のワックスから選ばれる少なくとも一種が用いられることが好ましい。内部離型剤の割合は、導電性成形材料全量に対して0.1〜2.5質量%の範囲であることが好ましい。
導電性成形材料は、必要に応じてカップリング剤等の添加剤を含有してもよい。カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤などが挙げられる。特にシリコン系カップリング剤のうち、エポキシランカップリング剤が適している。カップリング剤は黒鉛粒子の表面に予め噴霧等により付着されていてもよい。エポキシランカップリング剤の使用量は、導電性成形材料の固形分全体に対して、0.5〜1.5質量%の範囲であることが好ましい。この範囲において、カップリング剤が導電部61表面にブリードすることが、充分に抑制される。
導電性成形材料は溶媒を含有してもよい。特に薄型の導電部61が作製される場合には、導電性成形材料が溶媒を含有することで、この導電性成形材料が液状(ワニス状及びスラリー状を含む)に調製されてもよい。溶媒としては、たとえばメチルエチルケトン、メトキシプロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒が好ましい。溶媒は一種のみが用いられても、二種以上が併用されてもよい。溶媒の使用量は、導電性成形材料からシート状の導電部61を作製する際の成形性を考慮して適宜設定される。特に、導電性成形材料の粘度が1000〜5000cPの範囲となるように、溶媒の使用量が設定されることが好ましい。尚、溶媒は必要に応じて使用されればよく、熱硬化性樹脂として液状樹脂が使用されるなどにより導電性成形材料が液状に調製されるならば、溶媒が使用されなくてもよい。
導電部61中のイオン性不純物の含有量は少ないことが好ましく、特に質量比率でナトリウムイオン含量が5ppm以下、塩化物イオン含量が5ppm以下であることが好ましい。そのためには、導電性成形材料中のイオン性不純物の含有量が低いことが好ましく、特に導電性成形材料の固形分全量に対する質量比率で、ナトリウムイオン含量が5ppm以下、塩化物イオン含量が5ppm以下であることが好ましい。この場合、導電部61からのイオン性不純物の溶出が抑制され、不純物の溶出による燃料電池の起動電圧低下等の特性低下が抑制される。
導電部61及び導電性成形材料のイオン性不純物の含有量が上記のように低減されるためには、導電性成形材料を構成する熱硬化性樹脂、硬化剤、黒鉛、その他添加剤等の各成分それぞれのイオン性不純物の含有量が低いことが好ましく、特に各成分に対する質量比率で、ナトリウムイオン含量が5ppm以下、塩化物イオン含量が5ppm以下であることが好ましい。
尚、イオン性不純物の含有量は、対象物(導電部61又は導電性成形材料)の抽出水中のイオン性不純物の量に基づいて導出される。前記抽出水は、対象物10gに対してイオン交換水100mlの割合で、イオン交換水中に対象物を投入し、90℃で50時間処理することで得られる。抽出水中のイオン性不純物は、イオンクロマトグラフィにて評価される。この抽出水中のイオン性不純物量に基づいて、対象物中のイオン性不純物の量が、対象物に対する質量比に換算して導出される。
導電性成形材料は、この導電性成形材料から形成される導電部61のTOC(total organic carbon)が100ppm以下となるように調製されることが好ましい。TOCは、導電部61の質量10gに対してイオン交換水100mlの割合で、イオン交換水中に導電部61が投入され、90℃で50時間処理された後の水溶液を用いて測定される数値である。TOCは、例えばJIS K0102に準拠して、株式会社島津製作所製の全有機炭素分析装置「TOC−50」などで測定される。測定にあたっては、サンプルの燃焼により発生するCO2濃度が非分散型赤外線ガス分析法で測定され、サンプル中の炭素濃度が定量される。この炭素濃度の測定によって、有機物質濃度が間接的に測定され、サンプル中の無機炭素(IC)、全炭素(TC)が測定され、全炭素と無機炭素の差(TC−IC)から全有機炭素(TOC)が計測される。導電部61のTOCが100ppm以下となると、燃料電池の特性低下が更に抑制される。TOCの値は、導電性成形材料を構成する各成分として高純度の成分が選択されたり、更に樹脂の当量比が調整されたり、成形時に後硬化処理がおこなわれたりすることで、低減される。
本実施形態では、例えば純度の高い(例えば純度99.9%以上)天然黒鉛及び人造黒鉛を使用したり、天然黒鉛と膨張黒鉛の配合量を適宜調節したりすることで、導電部61のTOCが容易に低減され得る。
導電性成形材料は、上記のような各成分が適宜の手法で混合され、必要に応じて混練・造粒等されることで調製される。この導電性成形材料が成形されることで、導電部61が得られる。
また、ワニス状に調製された導電性成形材料がシート状に成形されるなどして、導電部成形用シート(成形用シート)が形成され、この成形用シートが成形されることで薄型の導電部61が得られてもよい。この場合、導電性成形材料は、例えばキャスティング(展進)成形によりシート状に成形される。成形用シートの厚みは、0.05〜0.5mmであることが好ましく、0.1〜0.3mmであれば更に好ましい。導電部61の作製にあたっては、1枚の成形用シートから導電部61が作製されてもよく、複数枚の成形用シートから導電部61が作製されてもよい。このように成形用シートが使用されることで、薄型の導電部61の製造が可能となり、特に厚み0.2〜1.0mmの範囲の導電部61の製造も可能となる。また、薄型の導電部61が製造される場合でも成形性及び厚み精度が高くなる。
尚、導電部61の作製時には、成形用シートと適宜の導電性基材とが積層されてもよい。導電性基材が用いられると、導電部61の機械的強度が向上する。導電性基材としては、たとえば、カーボンペーパー、カーボンプリプレグ、カーボンフェルト等が挙げられる。これらの導電性基材は、導電性を損なわない範囲で、ガラス、樹脂等の基材成分を含有してもよい。
ワニス状の導電性成形材料は、成形用シートの作製を経て薄型の導電部61が製造される場合だけでなく、成形用シートの作製を経ることなく導電部61が製造される場合にも有用である。この場合、導電性成形材料の保存安定性や成形性が優れたものになる。
導電性成形材料(導電性成形材料から形成された成形用シートを含む)から導電部61を得るためには、減圧条件下又は真空条件下での圧縮成形が採用されることが好ましい。上述のような組成を有する導電性成形材料から、減圧条件下又は真空条件下での圧縮成形により導電部61が作製されることで、密度ばらつきが少なく、且つ厚み精度の高い導電部61が得られる。
圧縮成形時の加熱温度及び圧縮圧力は、導電性成形材料の組成、導電性基材の有無及び種類、成形厚みなどにもよるが、例えば加熱温度120〜190℃の範囲、圧縮圧力1〜40MPaの範囲で設定されることが好ましい。また、成形時間が15秒〜600秒の範囲で設定されることが好ましい。
圧縮成形により得られた導電部61に、更に加熱処理が施されてもよい。この加熱処理における加熱温度は150〜180℃の範囲であることが好ましく、加熱時間は30秒〜1時間の範囲であることが好ましい。
このようにして、溝2を有する導電部61が作製される。この導電部61の、絶縁部62に接合される面は、図3(a)及び図3(b)に示されるように凹凸状に形成されることが好ましい。この場合、導電部61と絶縁部62との接触面積が増大し、或いは更に絶縁部62と導電部61とが噛み合う。これにより、導電部61と絶縁部62との密着性が向上し、このためセパレータの耐久性が向上する。
図3(a)に示す導電部61では、絶縁部62に接合される面は、一段の階段状の凹凸形状を有するが、この面の形状はこれに限定されない。例えば、絶縁部62に接合される面は、図3(b)に示すような多段の階段状の凹凸形状を有してもよいし、絶縁部62に接合される面に凸条又は凹条が形成されていてもよい。
導電部61には、更にこの導電部61の表面を粗化する粗化処理が施されることが好ましい。この場合、導電部61の表層のスキン層が除去されると共に導電部61の表面粗さが調整される。尚、良好な耐久性を確保する観点からは、導電部61への粗化処理は、絶縁部62が形成される前に行われることが好ましいが、絶縁部62が形成されてから行われてもよい。
粗化処理としては、ブラスト処理、アルゴンガスプラズマ処理等が挙げられる。ブラスト処理としては、サンドブラスト処理及びウエットブラスト処理が挙げられる。
この粗化処理によって、特に導電部61における絶縁部62に接合される面を粗化することが好ましい。この場合、導電部61と絶縁部62との密着性が向上し、このためセパレータ20の耐久性が向上する。
この粗化処理によって、導電部61における絶縁部62に接合される面の算術平均高さRa(JIS B0601:2001)が、1.0〜5.0μmの範囲に調整されることが好ましい。この場合、導電部61と絶縁部62との密着性が特に向上する。導電部61の表面における絶縁部62に接合される面以外の部分の算術平均高さRa(JIS B0601:2001)も、同様に1.0〜5.0μmの範囲に調整されてもよい。尚、本実施形態では、セパレータ20とガスケット12とが重ねられる際には、ガスケット12は絶縁部62に重ねられるため、導電部61の粗化処理にあたって、セパレータ20とガスケット12との間のリークを確保することを考慮する必要はなく、このようなリーク確保の観点からは導電部61の表面粗度は制限されない。
ブラスト処理後の導電部61に、親水化処理が施されることが好ましい。また、ブラスト処理の後、導電部61に洗浄処理が施され、或いは更に乾燥処理が施されることも、好ましい。洗浄処理では、例えば導電部61が、イオン交換水等により洗浄される。乾燥処理では、導電部61がエアブローなどにより風乾されることが好ましい。また、乾燥処理にあたっては、導電部61をシリカゲル等の乾燥剤を入れたデシケータ中に静置する方法、導電部61を室温以上(例えば50℃)の温度の乾燥機中に静置する方法、真空乾燥機を使用して導電部61から水分を除去する方法等が採用されてもよい。
金属材から導電部61を形成する場合について説明する。
図4に、金属材から形成される導電部61を備えるセパレータ20の断面構造の一例を示す。導電部61は、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、各種合金等の、適宜の金属から形成される。例えば金属製のプレートを、折り曲げ成形、プレス成形等により、波板状に成形することで、導電部61が得られる。この場合、導電部61の両面に溝2が形成される。この導電部61は、セパレータにおける、溝2が形成されている領域を構成する。導電部61を構成する金属製のプレートの厚みは、0.05〜0.30mmの範囲であることが好ましい。
金属材から形成される導電部61には、耐食処理を施すことが好ましい。耐食処理としては、例えば金めっき処理、導電性フィラーを含む樹脂によるコーティング等の、一般的な処理が採用される。
このように金属製のプレート等の金属材から導電部61が形成されると、金属材を折り曲げ成形したりプレス成形したりすることによって、複雑な形状を有する溝2を容易に形成することができる。
この導電部61の、絶縁部62に接合される面に、カップリング剤を塗布することも好ましい。この場合、導電部61と絶縁部62との密着性が向上し、このためセパレータの耐久性が向上する。このカップリング剤は、例えばシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、及びアルミネート系カップリング剤から選ばれる一種以上を含有することができる。特にカップリング剤が、エポキシシランカップリング剤及びメルカプトシランカップリング剤から選択される少なくとも1つ以上を含有することが好ましい。
絶縁部62は、熱硬化性の絶縁性成形材料の硬化物から形成される。この絶縁部62は、枠状であり、すなわち絶縁部62には、導電部61に合致する開口が形成されている。この絶縁部62は、セパレータ20における、溝2が形成されている領域を取り囲む外周部分を構成する。絶縁部62には、六個のマニホールド13(二つの燃料用マニホールド131、二つの酸化剤用マニホールド132、及び二つの冷却用マニホールド133)が形成されている。
このように絶縁部62が熱硬化性の絶縁性成形材料から形成されることで、導電部61と絶縁部62との密着性が向上し、これによりセパレータ20の耐久性が向上する。一方、ポリプロピレン(PP)やポリフェニレンスルフィド(PPS)等の熱可塑性樹脂から絶縁部62が形成されると、このような熱可塑性樹脂から形成される部材は、他の部材との密着性に劣るため、導電部61と絶縁部62との良好な密着性が確保されなくなってしまう。
絶縁性成形材料は、エポキシ樹脂と熱硬化性フェノール樹脂のうち少なくとも一方を含む熱硬化性樹脂が含まれていることが好ましい。エポキシ樹脂及び熱硬化性フェノール樹脂の各々は、良好な溶融粘度を有すると共に不純物が少なく、特にイオン性不純物が少ない点で優れている。
絶縁性成形材料がエポキシ樹脂を含有する場合、エポキシ樹脂としては、従来公知の樹脂が使用可能である。このエポキシ樹脂は、例えば、O−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、フェニレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、及びトリフェニルメタン型エポキシ樹脂から選択される一種以上の樹脂を含有することができる。特に、エポキシ樹脂が、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、及びビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂から選択される一種以上を含有することが好ましい。このオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂は、良好な溶融粘度を有すると共に不純物が少なく、特にイオン性不純物が少ない点で優れている。
絶縁性成形材料がエポキシ樹脂を含有する場合、絶縁性成形材料が更に硬化剤を含有することが好ましい。硬化剤は、フェノール系化合物であることが好ましい。このフェノール系化合物は、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等の、各種多価フェノール樹脂から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
絶縁性成形材料中のフェノール系化合物の含有量は、特に限定されないが、特に、フェノール系化合物に対するエポキシ樹脂の当量比が0.8〜1.4であることが好ましく、0.9〜1.2であればより好ましい。フェノール系化合物の配合割合が過度に大きい、フェノール系化合物が過多となって経済的に不利となる傾向があり、この配合割合が過度に小さいと、フェノール系化合物が過少となって硬化不足となる傾向がある。
絶縁性成形材料は、硬化促進剤を含有することが好ましい。硬化促進剤は、エポキシ樹脂のエポキシ基と硬化剤の水酸基との反応(硬化反応)を促進させる化合物である。硬化促進剤は、例えばトリフェニルホスフィン(TPP)、トリ−p−トリルホスフィン(TPTP)等の有機ホスフィン類、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の三級アミン類、並びに2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
特に硬化促進剤が、有機ホスフィン類を含有することが好ましい。この場合、有機ホスフィン類は塩化物イオン等の不純物の含有量が少ないため、絶縁部62中のイオン性不純物の含有量が少なくなる。このため、絶縁部62からの不純物溶出量が少なくなり、これにより燃料電池の耐久性が向上する。更に、特に硬化促進剤として、トリ−p−トリルホスフィン(TPTP)が使用されると、絶縁性成形材料が加熱硬化される際の硬化速度が充分に高くなり、且つ絶縁性成形材料の硬化物である絶縁部62のガラス転移点が充分に高くなる。このため、絶縁部62の生産効率が向上し、また絶縁部62の耐熱性も向上する。
絶縁性成形材料中の硬化促進剤の含有量は、絶縁性成形材料中のエポキシ樹脂と硬化剤との合計量に対して0.4〜3重量%であることが好ましい。硬化促進剤の含有量がこれより少ないと、硬化促進効果が不足する傾向があり、これより多いと、成形性に不具合が生じる傾向がある。
絶縁性成形材料が熱硬化性樹脂として熱硬化性フェノール樹脂を含有する場合、特に開環重合により重合反応が進行するフェノール樹脂が用いられることが好ましい。このようなフェノール樹脂としては、例えばベンゾオキサジン樹脂等が挙げられる。この場合は、成形工程で脱水によるガスが発生しないので成形品中にボイドが発生しにくくなる。また、レゾール型フェノール樹脂が用いられることも好ましい。レゾール樹脂は通常液状であるが、レゾール型フェノール樹脂の軟化点は容易に調整され、融点が70〜90℃のレゾール型フェノール樹脂も容易に得られる。これにより、絶縁性成形材料の変化が少なくなり、成形時の取り扱い性が向上する。この融点が70℃未満であると、絶縁性成形材料中で成分の凝集が生じやすくなって、取り扱い性が低下するおそれがある。
また、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂及び熱硬化性フェノール樹脂以外の樹脂が併用されてもよい。エポキシ樹脂及び熱硬化性フェノール樹脂以外の樹脂としては、例えばポリイミド樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、及びジアリルフタレート樹脂から選択される一種又は複数種の樹脂が用いられる。但し、エステル結合を含む樹脂は、耐酸性環境下で加水分解する恐れがあるため、使用されないことが好ましい。
絶縁性成形材料は、無機充填材を含有することが好ましい。この場合、無機充填材によって絶縁部62の熱膨張係数を調整することができ、また、原材料コストを低減することもできる。無機充填材としては、特に限定なく、従来公知の無機充填材を用いることができる。具体的には、無機充填材は、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、微粉シリカ、アルミナ、窒化珪素、及びマグネシアから選択される一種以上を含有することができる。無機充填材のアスペクト比は、10以下であることが好ましい。この場合、絶縁性成形材料の硬化物に異方性が生じる場合でも、絶縁部62に加熱冷却による歪みが生じにくくなる。同じ理由により、無機充填材は、異方性を有するガラス粒子を含有しないことが好ましい。特に無機充填材は、絶縁性成形材料の低粘度化と流動特性との向上の点から、球状の溶融シリカを含有することが好ましい。また、無機充填材が球状である場合、例えば、球状の溶融シリカの場合、その平均粒子径が0.2〜30μmであることが好ましく、0.2〜5μmであればより好ましい。なお、この平均粒子径は、レーザ回折散乱法により測定される。また、絶縁性成形材料中の無機充填材の割合は、60〜90質量%であることが好ましい。
また、絶縁部62の強度を向上するためには、無機充填材が、溶融シリカ、結晶シリカ、微粉シリカ等のシリカと、アルミナとのうち、少なくとも一方を含有することが好ましい。この場合、シリカ及びアルミナの粒子強度は、黒鉛の10〜100倍であるため、絶縁部62の強度が導電部61に較べて大きく向上する。このような高強度の絶縁部62が燃料電池セパレータ20の外周部分を構成すると、燃料電池セパレータ20の破損が抑制される。更に、後述するように絶縁部62にガスケット12が積層される場合には、ガスケット12が積層される際に絶縁部62に応力がかかっても、セパレータ20の損傷が抑制される。
絶縁性成形材料は、従来公知の添加剤、例えば、カップリング剤、着色剤、消泡剤、及び改質剤等を必要に応じて含有してもよい。カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤などが挙げられる。特にシリコン系カップリング剤のうち、エポキシランカップリング剤が適している。カップリング剤は溶融シリカ粒子の表面に予め噴霧等により付着されていてもよい。エポキシランカップリング剤の使用量は、絶縁性成形材料の固形分全体に対して、0.5〜1.5質量%の範囲であることが好ましい。この範囲において、カップリング剤が導電部61表面にブリードすることが、充分に抑制される。
絶縁性成形材料を調製する場合には、例えばまず上記のような原料を配合し、これらをミキサ等で混練し、続いて、ロールやニーダ等によって混練し、或いは更にスプレードライ法にて造粒することで、絶縁性成形材料が得られる。混合時及び混練時には、必要に応じて加熱処理や冷却処理を施してもよい。
熱硬化性の絶縁性成形材料を、導電部61の周囲で成形することで、絶縁部62を形成することができる。これにより、絶縁部62を形成すると同時に導電部61と絶縁部62とを接合することができる。
また、熱硬化性の成形材料である絶縁性成形材料から絶縁部62が形成されるため、絶縁部62を備えるセパレータ20が燃料電池に組み込まれることによって絶縁部62が高温温水に曝露されたり、酸性雰囲気下に曝露されたり、或いは腐食条件下に曝露されたりしても、絶縁部62の良好な耐久性が確保され、ひいてはセパレータ20の良好な耐久性が確保される。セパレータ20の耐久性を特に向上するためには、絶縁性成形材料が熱硬化性樹脂として特にエポキシ樹脂を含有することが好ましい。
絶縁性成形材料から形成される絶縁部62中のイオン性不純物の含有量は少ないことが好ましく、特に質量比率でナトリウムイオン含量が5ppm以下、塩化物イオン含量が5ppm以下であることが好ましい。そのためには、絶縁性成形材料中のイオン性不純物の含有量が低いことが好ましく、特に絶縁性成形材料の固形分全量に対する質量比率で、ナトリウムイオン含量が5ppm以下、塩化物イオン含量が5ppm以下であることが好ましい。この場合、絶縁部62からのイオン性不純物の溶出が抑制され、不純物の溶出による燃料電池の起動電圧低下等の特性低下が抑制される。
絶縁部62及び絶縁性成形材料のイオン性不純物の含有量が上記のように低減されるためには、絶縁性成形材料を構成する熱硬化性樹脂、硬化剤、無機充填材、その他添加剤等の各成分それぞれのイオン性不純物の含有量が低いことが好ましく、特に各成分に対する質量比率で、ナトリウムイオン含量が5ppm以下、塩化物イオン含量が5ppm以下であることが好ましい。
尚、イオン性不純物の含有量は、対象物(絶縁部62又は絶縁性成形材料)の抽出水中のイオン性不純物の量に基づいて導出される。前記抽出水は、対象物10gに対してイオン交換水100mlの割合で、イオン交換水中に対象物を投入し、90℃で50時間処理することで得られる。抽出水中のイオン性不純物は、イオンクロマトグラフィにて評価される。この抽出水中のイオン性不純物量に基づいて、対象物中のイオン性不純物の量が、対象物に対する質量比に換算して導出される。
上記のように絶縁性成形材料及び絶縁部62中のイオン性不純物を低減するためには、絶縁性成形材料が熱硬化性樹脂として特にエポキシ樹脂を含有することが好ましい。
絶縁性成形材料は、この絶縁性成形材料から形成される絶縁部62のTOC(total organic carbon)が100ppm以下となるように調製されることが好ましい。TOCは、絶縁部62の質量10gに対してイオン交換水100mlの割合で、イオン交換水中に絶縁部62が投入され、90℃で50時間処理された後の水溶液を用いて測定される数値である。TOCは、例えばJIS K0102に準拠して、株式会社島津製作所製の全有機炭素分析装置「TOC−50」などで測定される。測定にあたっては、サンプルの燃焼により発生するCO2濃度が非分散型赤外線ガス分析法で測定され、サンプル中の炭素濃度が定量される。この炭素濃度の測定によって、有機物質濃度が間接的に測定され、サンプル中の無機炭素(IC)、全炭素(TC)が測定され、全炭素と無機炭素の差(TC−IC)から全有機炭素(TOC)が計測される。絶縁部62のTOCが100ppm以下となると、燃料電池の特性低下が更に抑制される。TOCの値は、導電性成形材料を構成する各成分として高純度の成分が選択されたり、更に樹脂の当量比が調整されたり、成形時に後硬化処理がおこなわれたりすることで、低減される。
また、絶縁性成形材料から形成される絶縁部62のガラス転移点が、150℃以上であることが好ましい。この場合、絶縁部62の耐熱性が高くなり、それによりセパレータ20の耐久性が向上する。また、絶縁性成形材料から形成される絶縁部62の荷重たわみ温度が、250℃以上であることも好ましい。この場合も、絶縁部62の耐熱性が高くなり、それによりセパレータ20の耐久性が向上する。絶縁性成形材料から形成される絶縁部62のガラス転移点が150℃以上であり、且つこの絶縁部62の荷重たわみ温度が250℃以上であれば、特に好ましい。
絶縁性成形材料から絶縁部62を形成するにあたっては、適宜の樹脂成形法が採用され得る。例えば金型を用いたトランスファ成形法が採用され得る。この場合、例えば導電部61を金型のキャビティ内にインサートし、その状態でキャビティ内に溶融状態の絶縁性成形材料を所定の圧力で注入し、キャビティ内に充満させる。この場合、注入圧力が例えば4〜7MPaに設定され、金型温度が例えば160〜190℃に設定され、成形時間が例えば45〜300秒に設定される。次に、型開きして成形物すなわちセパレータを取り出す。絶縁性成形材料を金型内でトランスファ成形した後、無加圧条件下にて後硬化(ポストキュア)を行ってもよい。この後硬化において、加熱温度が例えば160〜190℃に設定され、加熱時間が例えば2〜8時間に設定される。これらの成形条件は、成形材料の組成等に応じて適宜設定される。
トランスファ成形が採用される場合は、例えばポリフェニレンサルファイド等の熱可塑性樹脂を射出成形することで絶縁部を形成する場合と較べて、低い圧力で絶縁部62を成形することができる。このため、絶縁部62を形成する際に導電部61の破損が抑制される。また、このように低い圧力で絶縁部62が形成されるため、絶縁部62に異方性が生じにくくなる。
また、金型を用いた圧縮成形法が採用されてもよい。この場合、例えば導電部61を圧縮成形用の金型にインサートし、その状態で金型内で絶縁性成形材料を圧縮成形することで、絶縁部62を作製することができる。
絶縁性成形材料を、導電部61の周囲で成形するにあたり、まず導電性成形材料の硬化反応を完了させることなく導電性成形材料から導電部61を形成し、続いて、絶縁部62を形成する際に、絶縁性成形材料を成形しながら前記導電性成形材料の硬化反応を完了させてもよい。すなわち、例えば絶縁性成形材料をトランスファ成形、圧縮成形等により成形する際、絶縁性成形材料を熱硬化させるために加熱すると同時に、導電部61も加熱することで、導電性成形材料の硬化反応を完了させてもよい。この場合、導電性成形材料の硬化反応が完了していない状態で導電部61に絶縁性成形材料が接触し、この状態で導電性成形材料の硬化反応が完了し、且つ絶縁性成形材料が硬化して絶縁部62が形成されることで、導電部61と絶縁部62との密着性が更に向上する。このため、セパレータ20の耐久性が更に向上する。
また、導電性成形材料から導電部61を形成する場合には、絶縁性成形材料にエポキシ樹脂とフェノール系化合物とを含有させ、且つ導電性成形材料にエポキシ樹脂とフェノール系化合物とを含有させることも好ましい。この場合、導電部61と絶縁部62との親和性が向上することで、導電部61と絶縁部62との密着性が更に向上する。このため、セパレータの耐久性が更に向上する。
更に、絶縁性成形材料におけるフェノール系化合物に対するエポキシ樹脂の当量比を1より大きくすると共に、導電性成形材料におけるフェノール系化合物に対するエポキシ樹脂の当量比を1より小さくすることも、好ましい。例えば、絶縁性成形材料におけるフェノール系化合物に対するエポキシ樹脂の当量比を1より大きく且つ1.4以下とすると共に、導電性成形材料におけるフェノール系化合物に対するエポキシ樹脂の当量比を0.8以上1未満とすることが、好ましい。この場合、絶縁部62に未反応のエポキシ基が残存しやすくなると共に、導電部61に未反応のフェノール性水酸基が残存しやすくなり、このエポキシ基とフェノール性水酸基とが導電部61と絶縁部62との接合部で反応することで、導電部61と絶縁部62との密着性が更に向上する。このため、セパレータ20の耐久性が更に向上する。
また、絶縁性成形材料におけるフェノール系化合物に対するエポキシ樹脂の当量比を1より小さくすると共に、導電性成形材料におけるフェノール系化合物に対するエポキシ樹脂の当量比を1より大きくすることも、好ましい。例えば、絶縁性成形材料におけるフェノール系化合物に対するエポキシ樹脂の当量比を0.8以上1未満とすると共に、導電性成形材料におけるフェノール系化合物に対するエポキシ樹脂の当量比を1より大きく且つ1.2未満とすることが、好ましい。この場合、絶縁部62に未反応のフェノール性水酸基が残存しやすくなると共に、導電部61に未反応のエポキシ基が残存しやすくなり、このエポキシ基とフェノール性水酸基とが導電部61と絶縁部62との接合部で反応することで、導電部61と絶縁部62との密着性が更に向上する。このため、セパレータ20の耐久性が更に向上する。
導電部61の熱膨張係数と絶縁部62の熱膨張係数は、できるだけ近似していることが好ましい。この場合、セパレータ20の温度が変化した場合でも導電部61と絶縁部62との接合が良好に確保され、このためセパレータ20の耐久性が更に向上する。尚、絶縁部62の熱膨張係数の値は、例えば絶縁性成形材料に配合される無機充填材の種類及び割合等が適宜設定されることで、容易に調整される。
セパレータ20の外周部分を構成する絶縁部62上にガスケット12が積層されてもよい。ガスケット12は、例えば天然ゴム、シリコーンゴム、SIS共重合体、SBS共重合体、SEBS、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(HNBR)、クロロプレンゴム、アクリルゴム、フッ素系ゴム等などから選択されるゴム材料から形成される。このゴム材料には粘着付与剤が配合されてもよい。セパレータ20の耐久性を向上する観点からは、ガスケット12がフッ素系ゴム又はエチレン−プロピレン−ジエンゴムから形成されることが好ましく、特にフッ素系ゴムから形成されることが好ましい。
セパレータ20の絶縁部62にガスケット12を積層するにあたっては、例えば予めシート状又は板状に形成されたガスケット12が絶縁部62に接着や融着されるなどして接合される。絶縁部62の表面上でガスケット12を形成するための材料が成形されることによって、セパレータ20にガスケット12が積層されてもよい。例えば未加硫のゴム材料がスクリーン印刷等により絶縁部62上に塗布され、このゴム材料の塗膜が加硫されることで、絶縁部62上に所望の形状のガスケット12が形成される。ゴム材料の加硫にあたっては、加熱、電子線などの放射線の照射、或いはその他適宜の加硫方法が採用される。この場合、薄型のセパレータ20に対してもガスケット12が容易に積層される。また、セパレータ20が金型内にセットされ、このセパレータ20の絶縁部62上で未加硫のゴム材料が射出されると共にこのゴム材料が加熱されるなどして加硫されることで、絶縁部62上に所望の形状のガスケット12が形成されてもよい。このように金型成形によりガスケット12が形成されるにあたっては、トランスファ成形のほか、コンプレッション成形、インジェクション成形等の成形法が採用され得る。
特に金型成形によりガスケット12が形成される場合は、絶縁部62を形成するための絶縁性成形材料中の無機充填材にシリカとアルミナとのうち少なくとも一方を含有させること、すなわち絶縁部62中の無機充填材にシリカとアルミナとのうち少なくとも一方を含有させることが、好ましい。この場合、上述のように絶縁部62の強度が向上するため、ガスケット12を金型成形により形成することで絶縁部62に応力がかかっても、絶縁部62が損傷しにくくなる。
絶縁部62の表面を粗化してから絶縁部62上にガスケット12を積層してもよい。この場合、ガスケット12と絶縁部62との密着性が向上する。絶縁部62の表面を粗化するためには、例えばウエットブラスト処理が採用される。
セパレータ20にガスケット12を積層してから、セパレータ20に親水化処理を施すことも好ましい。親水化処理は、セパレータ20の表面の親水性を向上させるための処理である。これによりセパレータ20の表面に高い親水性が付与されると、セパレータ20における溝2が結露水で閉塞されにくくなる。このため燃料電池の高い発電効率が長期間維持される。
親水化処理としては、セパレータ20の表面の親水性を向上させることが可能な処理であれば、特に制限されない。親水化処理は、例えばセパレータ20をプラズマに曝露するプラズマ処理、セパレータ20をオゾンガスに曝露するオゾンガス処理、セパレータ20をSO3に曝露するSO3処理、セパレータ20をフッ素を含有するガスに曝露させるフッ素処理、ケイ素化合物又はアルミニウム化合物を含む改質剤化合物を含む気体を燃焼させながらセパレータ20に吹き付けるフレイム処理、並びにセパレータ20にオゾン水を接触させるオゾン水処理から、一種以上が選択される。
親水化処理として、特にプラズマ処理が採用されることが好ましい。プラズマ処理としては、大気圧プラズマ処理が施されることが好ましく、特にリモート方式でのプラズマ処理が施されることが好ましい。プラズマ処理後の成形体は、そのまま大気中に放置されてもよいが、成形体をイオン交換水などの水に浸漬させるなどしてこの成形体の表面と水と接触させる水接触処理が施されることが好ましく、この場合、セパレータ20の表面の親水性が更に向上する。
また、セパレータ20にガスケット12を積層してから、セパレータ20に親水化処理を施す前に、セパレータ20にウエットブラスト処理を施すことも好ましい。この場合、セパレータ20上にガスケット12が積層される際にガスケットを形成するための材料に由来する成分が不純物としてセパレータ20上に付着しても、この不純物をウエットブラスト処理によって除去することができる。これにより、セパレータ20の表面における不純物の付着量を低減することができる。
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明はこれらの実施例には限定されない。
[実施例1]
(1)導電部の形成
エポキシ樹脂とフェノール系化合物とを、フェノール系化合物に対するエポキシ樹脂の当量比が後掲の表に示す値となるように配合し、更に硬化促進剤、黒鉛粒子、カップリング剤、及びワックスを、後掲の表に示す固形分比率で配合した。これにより得られた混合物を、攪拌混合機(ダルトン製「5XDMV−rr型」)で攪拌混合した。続いて、この混合物を整粒機で粒径500μm以下に粉砕することで、導電性成形材料を得た。
この導電性成形材料を用いて、次のようにして導電部を作製した。まず、真空チャンバー内で圧縮成形用の金型に成形材料を配置してから、5秒間経過した時点で、真空チャンバー内の減圧を開始し、10秒間かけて真空チャンバー内を97kPaの真空度まで到達させた。続いて、金型の上型を下型に向けて降下させて型締めすることで、成形材料を圧縮成形した。圧縮成形条件は、金型温度170℃、成形圧力35.3MPa、成形時間3分間とした。次に金型を閉じたまま除圧し、30秒間保持した後に金型を開き、続いて金型から導電部を取り出した。
得られた導電部の形状は、平面視175mm×225mmの矩形状であり、厚みは最も厚い箇所で1.5mm、最も薄い箇所で0.5mmであった。また、圧縮成形によって、導電部の片側の面(第一の面)には幅1mm、深さ0.5mmの溝を25本形成し、導電部における第一の面とは反対側の面(第二の面;水路面)には幅0.5mm、深さ0.5mmの溝を25本形成した。また、導電部の外周面を、図3(a)に示すように階段状に形成した。
続いて、導電部の表面全体に、ウエットブラスト処理を施すことで、導電部の表面の算術平均高さRa(JIS B0601:2001)を、後掲の表に示す値に調整した。ウエットブラスト処理にあたっては、マコー株式会社製のウエットブラスト処理装置(形式PFE−300T/N)を用い、砥粒としてアルミナ粒子を含むスラリーを用いた。アルミナ粒子としては、昭和電工株式会社製のホワイトモランダム(登録商標)WAシリーズを用いた。続いて、導電部をイオン交換水で洗浄し、更に温風乾燥した。
(2)絶縁部の形成
エポキシ樹脂とフェノール系化合物とを、フェノール系化合物に対するエポキシ樹脂の当量比が後掲の表に示す値となるように配合し、更に硬化促進剤、無機充填材、カップリング剤、及びワックスを、後掲の表に示す固形分比率で配合した。
尚、このとき使用した原料は、次の通りである。
・エポキシ樹脂:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製、品番EOCN−1020−75、エポキシ当量199、融点75℃。
・フェノール系化合物:ノボラック型フェノール樹脂、群栄化学工業株式会社製、品番PSM6200、OH当量105。
・硬化促進剤:トリフェニルホスフィン、北興化学工業株式会社製、品番TPP。
・無機充填材:溶融シリカ、電気化学工業株式会社製、品番FB60、平均粒径15μm、最大粒径74μm。
・カップリング剤:エポキシシラン、日本ユニカー株式会社製、品番A187。
・ワックス:天然カルナバワックス、大日化学工業株式会社製、品番H1−100、融点83℃。
これにより得られた混合物をブレンダーで30分間混合し均一化した後、80℃に加熱した2本ロールで溶融させながら混練し、冷却後、粉砕機で所定粒度に粉砕し、更にポット内で加圧することで、タブレット状の絶縁性成形材料を得た。
上記導電部を、トランスファ成形用の金型内にインサートし、この状態で、絶縁性成形材料を、金型温度175℃、型締圧力20MPa、注入圧力7MPaの条件でトランスファ成形した。
このトランスファ成形により、導電部の周囲で絶縁性成形材料を成形することで、外形寸法200mm×250mm、であり、厚み寸法1.5mmであり、且つ開口面積3.5cm2の六個のマニホールドが形成されている枠状の形状を有する絶縁部を形成した。
これにより、絶縁部を形成すると共に、導電部と絶縁部とを接合して、セパレータを得た。
得られたセパレータを金型中に配置し、この状態で金型内に硬化性フッ素ゴムを射出し、金型を170℃で5分間加熱することで、セパレータの第一の面上及び第二の面上の各々の外周部分に、ガスケットを形成した。続いて金型からセパレータを取り出してから、170℃で1時間加熱することで、ガスケットの硬化反応を更に進めた。
続いて、セパレータに対して、リモート方式の大気圧プラズマ処理を施した。大気圧プラズマ処理にあたり、プラズマ処理装置としては積水化学工業株式会社製のAP−Tシリーズを使用した。処理条件は、処理幅:300mm、プラズマユニット数:1個、サンプル−電極間距離:3mm、プラズマ生成用ガス種:窒素、ガス中の酸素含有量:1000ppm、ガス流量:150L/分、サンプル搬送速度:0.25m/分、処理時温度:25℃とした。
[実施例2]
(1)導電部の形成
金属製プレートとして、SUSからなるコア材と、このコア材に積層されているTiからなる表層とを備える、0.3mmの圧延クラッド材を用意した。この金属製プレートにプレス加工を施すことで波板状に成形することにより、導電部を形成した。この導電部の寸法は、175mm×225mm×1.0mmであった。また、導電部の両面には、前記プレス成形により、幅1mm、長さ180mm、深さ0.6mmの寸法の溝を57本形成した。
続いて、導電部の外周部の表面に、この外周部の全周に亘って、カップリング剤(エポキシシラン、日本ユニカー株式会社製、品番A187)を塗布した。
(2)絶縁部の形成
エポキシ樹脂とフェノール系化合物とを、フェノール系化合物に対するエポキシ樹脂の当量比が後掲の表に示す値となるように配合し、更に硬化促進剤、無機充填材、カップリング剤、及びワックスを、後掲の表に示す固形分比率で配合した。これにより得られた混合物をブレンダーで30分間混合し均一化した後、80℃に加熱した2本ロールで溶融させながら混練し、冷却後、粉砕機で所定粒度に粉砕した。これにより、粉状の絶縁性成形材料を得た。
上記導電部を、トランスファ成形用の金型内にインサートし、この状態で、絶縁性成形材料を、金型温度175℃、型締圧力20MPa、注入圧力7MPaの条件でトランスファ成形した。
このトランスファ成形により、絶縁部を、外形寸法200mm×250mm、開口の寸法165mm×200mm、厚み寸法1.0mmの枠状に形成した。更に、このトランスファ成形により、絶縁部には、開口面積3.5cm2の六個のマニホールドを形成した。
これにより、絶縁部を形成すると共に、導電部と絶縁部とを接合して、セパレータを得た。
得られたセパレータを金型中に配置し、この状態で金型内に硬化性フッ素ゴムを射出し、金型を170℃で5分間加熱することで、セパレータの第一の面上及び第二の面上の各々の外周部分に、ガスケットを形成した。続いて金型からセパレータを取り出してから、170℃で1時間加熱することで、ガスケットの硬化反応を更に進めた。
続いて、セパレータに対して、リモート方式の大気圧プラズマ処理を施した。大気圧プラズマ処理にあたり、プラズマ処理装置としては積水化学工業株式会社製のAP−Tシリーズを使用した。処理条件は、処理幅:300mm、プラズマユニット数:1個、サンプル−電極間距離:3mm、プラズマ生成用ガス種:窒素、ガス中の酸素含有量:1000ppm、ガス流量:150L/分、サンプル搬送速度:0.25m/分、処理時温度:25℃とした。
[実施例3〜7]
実施例1において、導電性成形材料の組成、導電性成形材料の成形条件、ウエットブラスト処理後の導電部の表面の算術平均高さRa(μm)、及び絶縁性成形材料の組成の条件を、後掲の表に示すようにした。それ以外は実施例1と同じ条件で、セパレータを得た。
[実施例8]
実施例1と同じ方法で、導電部を形成した。
また、エポキシ樹脂とフェノール系化合物とを、フェノール系化合物に対するエポキシ樹脂の当量比が後掲の表に示す値となるように配合し、更に硬化促進剤、無機充填材、カップリング剤、及びワックスを、後掲の表に示す固形分比率で配合した。これにより得られた混合物をブレンダーで30分間混合し均一化した後、80℃に加熱した2本ロールで溶融させながら混練し、冷却後、粉砕機で所定粒度に粉砕し、更にポット内で加圧することで、タブレット状の絶縁性成形材料を得た。
上記導電部を、圧縮成形用の金型内にインサートし、この状態で、絶縁性成形材料を、金型温度170℃、成形圧力35.3MPa、成形時間3分間の条件で、圧縮成形した。
この圧縮成形により、導電部の周囲で絶縁性成形材料を成形することで、外形寸法200mm×250mm、であり、厚み寸法1.5mmであり、且つ開口面積3.5cm2の六個のマニホールドが形成されている枠状の形状を有する絶縁部を形成した。
これにより、絶縁部を形成すると共に、導電部と絶縁部とを接合して、セパレータを得た。
得られたセパレータを金型中に配置し、この状態で金型内に硬化性フッ素ゴムを射出し、金型を170℃で5分間加熱することで、セパレータの第一の面上及び第二の面上の各々の外周部分に、ガスケットを形成した。続いて金型からセパレータを取り出してから、170℃で1時間加熱することで、ガスケットの硬化反応を更に進めた。
続いて、セパレータに対して、リモート方式の大気圧プラズマ処理を施した。大気圧プラズマ処理にあたり、プラズマ処理装置としては積水化学工業株式会社製のAP−Tシリーズを使用した。処理条件は、処理幅:300mm、プラズマユニット数:1個、サンプル−電極間距離:3mm、プラズマ生成用ガス種:窒素、ガス中の酸素含有量:1000ppm、ガス流量:150L/分、サンプル搬送速度:0.25m/分、処理時温度:25℃とした。
[実施例9]
実施例1と同じ方法で、導電部を形成した。
また、熱硬化性フェノール樹脂、無機充填材、カップリング剤、及びワックスを、後掲の表に示す固形分比率で配合した。これにより得られた混合物をブレンダーで30分間混合し均一化した後、80℃に加熱した2本ロールで溶融させながら混練し、冷却後、粉砕機で所定粒度に粉砕し、更にポット内で加圧することで、タブレット状の絶縁性成形材料を得た。
尚、このとき使用した原料は、次の通りである。
・熱硬化性フェノール樹脂:レゾール型フェノール樹脂、群栄化学工業社製「サンプルA」、融点75℃。
・無機充填材:溶融シリカ、電気化学工業株式会社製、品番FB60、平均粒径15μm、最大粒径74μm。
・カップリング剤:エポキシシラン、日本ユニカー株式会社製、品番A187。
・ワックス:天然カルナバワックス、大日化学工業株式会社製、品番H1−100、融点83℃。
上記導電部を、トランスファ成形用の金型内にインサートし、この状態で、絶縁性成形材料を、金型温度175℃、型締圧力20MPa、注入圧力7MPaの条件でトランスファ成形した。
このトランスファ成形により、導電部の周囲で絶縁性成形材料を成形することで、外形寸法200mm×250mm、であり、厚み寸法1.5mmであり、且つ開口面積3.5cm2の六個のマニホールドが形成されている枠状の形状を有する絶縁部を形成した。
これにより、絶縁部を形成すると共に、導電部と絶縁部とを接合して、セパレータを得た。
続いて、セパレータの第一の面の外周部分上(すなわち絶縁部上)にエチレン−プロピレン−ジエンゴムをスクリーン印刷法により塗布した後、加熱加硫することでガスケットを形成した。
続いて、セパレータに対して、リモート方式の大気圧プラズマ処理を施した。大気圧プラズマ処理にあたり、プラズマ処理装置としては積水化学工業株式会社製のAP−Tシリーズを使用した。処理条件は、処理幅:300mm、プラズマユニット数:1個、サンプル−電極間距離:3mm、プラズマ生成用ガス種:窒素、ガス中の酸素含有量:1000ppm、ガス流量:150L/分、サンプル搬送速度:0.25m/分、処理時温度:25℃とした。
[実施例10]
実施例1と同じ方法で、導電部及び絶縁部を形成することで、セパレータを得た。
続いて、セパレータの第一の面の外周部分上(すなわち絶縁部上)にエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)をスクリーン印刷法により塗布した後、加熱加硫することでガスケットを形成した。
[比較例1]
実施例1と同じ方法で、導電部を形成した。
ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、無機充填材、カップリング剤及びワックスを、後掲の表に示す固形分比率で配合し、これらをヘンシェルミキサーで均一に混合した後に、スクリュー径40mmの2軸混練押出機で、シリンダー温度300℃の条件で押し出すことで、樹脂ペレットを作製した。
尚、このとき使用した原料は、次の通りである。
・ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂:トープレン製「LG01G」直鎖型PPS樹脂 溶融粘度6.0Pa・s(パラレルレート法:温度300℃ 角速度100rad/s)。
・無機充填材:溶融シリカ、電気化学工業株式会社製、品番FB60、平均粒径15μm、最大粒径74μm。
・カップリング剤:エポキシシラン、日本ユニカー株式会社製、品番A187。
・ワックス:天然カルナバワックス、大日化学工業株式会社製、品番H1−100、融点83℃。
導電部を、射出成形用の金型内にインサートし、この状態で、樹脂ペレットを、シリンダ温度300℃、金型温度120℃、射出圧力49.03MPa(500kgf/cm2)の条件で、射出成形した。
この射出成形により、導電部の周囲でポリフェニレンスルフィドを成形することで、外形寸法200mm×250mm、であり、厚み寸法1.5mmであり、且つ開口面積3.5cm2の六個のマニホールドが形成されている枠状の形状を有する絶縁部を形成した。
これにより、絶縁部を形成すると共に、導電部と絶縁部とを接合して、セパレータを得た。
得られたセパレータを金型中に配置し、この状態で金型内に硬化性フッ素ゴムを射出し、金型を170℃で5分間加熱することで、セパレータの第一の面上及び第二の面上の各々の外周部分に、ガスケットを形成した。続いて金型からセパレータを取り出してから、170℃で1時間加熱することで、ガスケットの硬化反応を更に進めた。
続いて、セパレータに対して、リモート方式の大気圧プラズマ処理を施した。大気圧プラズマ処理にあたり、プラズマ処理装置としては積水化学工業株式会社製のAP−Tシリーズを使用した。処理条件は、処理幅:300mm、プラズマユニット数:1個、サンプル−電極間距離:3mm、プラズマ生成用ガス種:窒素、ガス中の酸素含有量:1000ppm、ガス流量:150L/分、サンプル搬送速度:0.25m/分、処理時温度:25℃とした。
[比較例2]
実施例2と同じ方法で、導電部を形成した。
また、比較例1と同じ方法で、樹脂ペレットを作製した。
導電部を、射出成形用の金型内にインサートし、この状態で、樹脂ペレットを、シリンダ温度300℃、金型温度120℃、射出圧力49.03MPa(500kgf/cm2)の条件で、射出成形した。
この射出成形により、導電部の周囲でポリフェニレンスルフィドを成形することで、外形寸法200mm×250mm、であり、厚み寸法1.5mmであり、且つ開口面積3.5cm2の六個のマニホールドが形成されている枠状の形状を有する絶縁部を形成した。
これにより、絶縁部を形成すると共に、導電部と絶縁部とを接合して、セパレータを得た。
得られたセパレータを金型中に配置し、この状態で金型内に硬化性フッ素ゴムを射出し、金型を170℃で5分間加熱することで、セパレータの第一の面上及び第二の面上の各々の外周部分に、ガスケットを形成した。続いて金型からセパレータを取り出してから、170℃で1時間加熱することで、ガスケットの硬化反応を更に進めた。
続いて、セパレータに対して、リモート方式の大気圧プラズマ処理を施した。大気圧プラズマ処理にあたり、プラズマ処理装置としては積水化学工業株式会社製のAP−Tシリーズを使用した。処理条件は、処理幅:300mm、プラズマユニット数:1個、サンプル−電極間距離:3mm、プラズマ生成用ガス種:窒素、ガス中の酸素含有量:1000ppm、ガス流量:150L/分、サンプル搬送速度:0.25m/分、処理時温度:25℃とした。
[絶縁部のガラス転移点]
各実施例及び比較例において、絶縁性成形材料を、絶縁部を形成する場合と同じ条件で成形することで、5mm×5mm×3mmの寸法のサンプルを得た。このサンプルを、SII製の熱機械分析装置(TMA)を用いて、10℃/分の昇温速度で240℃まで昇温させた。この場合の、30℃から50℃までの平均線膨張の近似直線と200℃から240℃までの平均線膨張の近似直線の交点を、ガラス転移点とした。
[絶縁部の荷重たわみ温度]
各実施例及び比較例において、絶縁性成形材料を、絶縁部を形成する場合と同じ条件で成形することで、10mm×80mm×4mmのサンプルを得た。このサンプルに、セパレータの作製時と同じ条件で親水処理を施してから、このサンプルの荷重たわみ温度を、ASTM D648に準拠して測定した。この場合、HDT試験装置3M‐2(株式会社東洋精機製作所社製)を用いてサンプル、ASTM D648に準拠して、1.85MPaの一定荷重をかけて2℃/分℃の割合で昇温させて、試験片の撓みが0.26mmに達した温度を測定する。
[絶縁部の水溶性イオン分析]
各実施例及び比較例において、セパレータの絶縁部から切り出したサンプルを、メタノールにて1分間洗浄した後、イオン交換水で1分間洗浄した。次いで、ポリエチレン製容器中にサンプルとイオン交換水とを、サンプルの質量10gに対してイオン交換水が100mlとなるように入れ、90℃で50時間処理した。処理後のイオン交換水(抽出水)をイオンクロマトグラフィ(株式会社島津製作所製「CDD−6A」)で測定した。この結果に基づいて、セパレータ中のナトリウムイオン含有量及び塩化物イオン含有量を評価した。その結果を後掲の表に示す。
[絶縁部のTOC評価]
各実施例及び比較例において、絶縁部のTOCを、JIS K0551−4.3に準拠して評価した。この場合、まずセパレータの絶縁部から切り出したサンプルを、メタノールで1分間洗浄した後、イオン交換水にて1分間洗浄した。次いで、ガラス製容器中にサンプルとイオン交換水とを、サンプルの質量10gに対してイオン交換水が100mlとなるように入れ、90℃で50時間処理した。処理後のイオン交換水中に燐酸を添加してpH2以下に調整した後、湿式酸化−赤外線式TOC測定法(東レエンジニアリング社製「東レアストロTOC自動分析計MODEL1800」を使用)にて、有機炭酸量を測定した。その結果を後掲の表に示す。
[外観評価]
各実施例及び比較例で得られたセパレータにおける絶縁部と導電部との境界部分を目視で観察した。その結果、絶縁部の導電部への浸出が認められない場合を“A”、絶縁部の導電部への浸出が認められる場合を“B”と評価した。
[破断試験(初期)]
形成された直後のセパレータにおける導電部と絶縁部に、3点曲げ強度試験に準じて応力をかけることで、セパレータを破断した。これにより、導電部又は絶縁部のみに破断が生じ、導電部と絶縁部との界面では破断が生じなかった場合を“A”、導電部又は絶縁部に破断が生じ、且つ導電部と絶縁部との界面でも破断が生じる場合を“B”、導電部と絶縁部との界面のみで破断が生じる場合を“C”と、評価した。
[破断試験(耐久試験後)]
各実施例及び比較例において、形成された直後のセパレータを、−55℃の雰囲気に30分曝露してから125℃の雰囲気に30分間曝露する処理を、1000回繰り返した。続いて、このセパレータに対し、上記“破断試験(初期)”と同じ評価試験を実施した。
また、処理を3000回繰り返した場合についても、同様に評価試験を実施した。
[燃料電池の起電圧変動評価]
各実施例及び比較例において、二つのセパレータの間に、電解質とガス拡散電極(燃料電極と酸化剤電極)とからなる膜−電極複合体を介在させて、財団法人日本自動車研究所標準単セル(電極面積25cm2)からなる燃料電池を作製した。この燃料電池に、外部回路を接続した状態で、燃料ガスとして空気を2.0NL/minの流量で、酸化剤ガスとして水素を0.5NL/minの流量でそれぞれ供給することで、燃料電池を1000時間連続的に動作させた。この燃料電池の作動時の起電圧(V)の経時的な変動の様子を調査した。その結果を、変動後の起電圧の、初期値に対する百分率((E1/E0)×100(%)の値で表示した。前記E1は変動後の起電圧、E0は初期の起電圧である。
尚、表中の導電性成形材料の原料の詳細は次の通りである。表中の配合割合は、全ての原料を固形分に換算した割合である。
・エポキシ樹脂:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製、品番EOCN−1020−75、エポキシ当量199、融点75℃。
・フェノール系化合物:ノボラック型フェノール樹脂、群栄化学工業株式会社製、品番PSM6200、OH当量105。
・硬化促進剤:トリフェニルホスフィン、北興化学工業株式会社製、品番TPP。
・黒鉛粒子:平均粒径50μm、人造黒鉛、真比重2.25g/cm3。
・カップリング剤:エポキシシラン、日本ユニカー株式会社製、品番A187。
・ワックス:天然カルナバワックス、大日化学工業株式会社製、品番H1−100、融点83℃。