JP2006117890A - 硬化性樹脂組成物及びそれを用いた燃料電池用セパレーター - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)ノボラック型フェノール樹脂のフェノール性水酸基100に対して、N−メチロールアクリルアミド化合物及び/又はそのアルキルエーテル化合物20〜200当量を反応させることにより得られる変性ノボラック型フェノール樹脂、(B)分子内に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物及び(C)ラジカル重合開始剤を含む硬化性樹脂組成物であって、前記(A)変性ノボラック型フェノール樹脂のフェノール性水酸基に対する前記(B)エポキシ化合物のエポキシ基の当量比が0.1〜1.5であることを特徴とする前記硬化性樹脂組成物とする。
【選択図】なし
Description
しかしながら、これらのフェノール樹脂は、硬化時に発生する水、ホルムアルデヒド及びアンモニア等のような揮発性物質が成形時にピンホールやボイドを発生させたり、また硬化後の耐水性が十分でないために水溶出成分が増加したりすることがある。
しかしながら、この成形体は、製造時の硬化時間が長く、十分な生産性が得られないばかりか、硬化時に縮合水分や低分子物がガスとなって遊離し、成形体中に泡、ピンホール及び内部ボイド等を発生させることがあるので、セパレーター用としては問題が多い。
しかしながら、この樹脂組成物は、フェノール性水酸基がすべて残存しているため、得られる硬化物の耐水性(特に、固体高分子型燃料電池用セパレーターに必要な低水溶出性)や柔軟性が不十分である。
さらに、通常のノボラック型フェノール樹脂とエポキシとの組み合わせにおいては、得られる硬化物の耐水性及び柔軟性については比較的良好であるが、硬化速度が遅く、硬化物の生産性が低いという問題がある。
しかしながら、このようなフェノール樹脂を用いた場合には、硬化後に200℃程度のアフターキュアを必要としており、生産性が低いという問題がある。
また、本発明は、耐水性、柔軟性及び導電性に優れた燃料電池用セパレーターを提供することも目的とする。
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、さらに充填材、特に(D)炭素系充填材を含むことを特徴とする。
さらに、本発明の燃料電池用セパレーターは、前記(D)炭素系充填材を含む硬化性樹脂組成物を硬化して得られることを特徴とする。
また、本発明によれば、(D)炭素系充填材をさらに含むことにより、速硬化性に優れ、且つ耐水性及び柔軟性に優れると共に、導電性にも優れた硬化物を与える硬化性樹脂組成物を提供することができる。
さらに、本発明によれば、耐水性、柔軟性及び導電性に優れた燃料電池用セパレーターを提供することができる。
本発明の(A)変性ノボラック型フェノール樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂とN−メチロールアクリルアミド化合物及び/又はアルキルエーテル化合物との反応によって得ることができる。
触媒としては、特に限定されることはないが、例えば、塩酸、硫酸及びリン酸等の無機塩、フェノールスルホン酸、パラトルエンスルホン酸及びクロル酢酸の有機酸、ホウ酸亜鉛及び塩化アルミニウム等の酸性金属塩等の酸性触媒を使用することが好ましい。また触媒の配合割合は、ノボラック型フェノール樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましい。触媒の配合割合が、0.1質量部未満であると、反応時間が長くなってしまい、また10質量部を超えると、反応の制御が難しくなるので好ましくない。
溶媒としては、メチルエチルケトンのようなケトン類、メタノールのようなアルコール類、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリルアミド、アクリル酸エチル、アクリル酸及びメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル等のラジカル重合性希釈剤等を使用することが好ましい。また、溶媒の配合割合は、ノボラック型フェノール樹脂100質量部に対して5〜150質量部であることが好ましい。溶媒の配合割合が、5質量部未満であると、樹脂の粘度が高く、混合性が悪くなってしまうので好ましくない。また、150質量部を超えると、反応器の大きさに対する収量が低下し、コストアップとなるので好ましくない。
反応時間としては、反応物の種類及び反応性、触媒の種類及び量、反応温度等の条件に応じて適宜選択すればよいが、通常2〜10時間である。
なお、前記反応においては、反応中のゲル化を防止する目的や、生成物の保存安定性、更には硬化性の調整の目的で、例えば、ハイドロキノンや、t−ブチルカテコールのような重合禁止剤を用いることもできる。
充填材としては、例えば、セルロース繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、カーボン繊維、ガラス繊維及び金属繊維等の繊維質充填材、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、酸化マグネシウム、マイカ等の粉末状或いは板状の無機系充填材、カーボンブラック、人造黒鉛、天然黒鉛、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー(例えばVGCF等)、カーボン短繊維及びグラッシーカーボン等の(D)炭素系充填材を挙げることができる。これらの充填材の配合割合は、(A)、(B)及び(C)成分と充填材との合計100質量部に対して、30〜95質量部であることが好ましい。充填材の配合割合が30質量部未満であると、機械的強度や導電性が十分に向上せず、95質量部を超えると樹脂成分が少なくなりすぎ、硬化物の機械的強度が低下してしまうので好ましくない。
また、(D)炭素充填材の配合割合は、(A)、(B)、(C)及び(D)成分の合計100質量部に対して、60〜95質量部であり、70〜90質量部であることが好ましい。(D)炭素充填材の配合割合が60質量部未満であると、電気特性が劣り、また95質量部を超えると、樹脂成分が少なくなりすぎ、硬化物の機械的強度が低下してしまうので好ましくない。
エポキシ樹脂の硬化促進剤としては、例えば、1−シアノエチル−2−エチル−4(5)−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾールアミン、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール及び2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン及びジアミノジフェニルサルホン等の芳香族アミン化合物、並びにトリフェニルフォスフィン、ジシアンジアミド等を挙げることができる。
このエポキシ樹脂の硬化促進剤の配合割合は、(A)変性ノボラック型フェノール樹脂及び(B)エポキシ化合物の合計100質量部に対して、0.05〜10質量部であり、0.1〜5質量部がより好ましい。エポキシ樹脂の硬化促進剤の配合割合が、0.05質量部未満であると、十分な硬化速度が得られず、また10質量部を超えると、硬化物の強度が低下してしまうので好ましくない。
この第三モノマーの配合割合は、(A)変性ノボラック型フェノール樹脂及び(B)エポキシ化合物の合計100質量部に対して、150質量部以下が好ましい。第三モノマーの配合割合が150質量部を超えると、硬化物の耐熱性が低下してしまうので好ましくない。
上記成分の混合に使用される装置としては、ロール、ニーダー、バンバリミキサー、ヘンシェルミキサー及びプラネタリミキサー等の当該技術分野で一般的に用いられている混合機を使用することができる。
混合条件としては、40〜120℃の温度で、30〜90分間行うことが好ましい。混合温度が40℃未満であると、粘度が高いために混合が不十分となり、120℃を超えると、組成物の硬化が進行してしまうので好ましくない。同様に、混合時間が30分間未満であると、混合が不十分となり、90分間を超えると、組成物の硬化が一部進行してしまうので好ましくない。
このようにして得られた硬化物は、不飽和基のラジカル重合性成分が樹脂骨格中に含まれるので、フェノール樹脂特有の脆さが解消され、さらに(B)エポキシ化合物成分によって優れた柔軟性を有することができる。また、この硬化物の耐熱性は、通常のフェノール樹脂に匹敵するものであり、またフェノール性水酸基とエポキシ基との反応により、水酸基が減少して硬化物の耐水性が向上し、低水溶出性となる。また、本発明の硬化性樹脂組成物は、好適な粘度(流動性が良好)であり、硬化速度が速く、硬化時にガスの発生が無いので、本発明の硬化物は、凹凸のない良好な表面状態を有し、長期耐久性にも優れている。
さらに、(D)炭素充填材を含む硬化性樹脂組成物により得られた硬化物は、優れた導電性も有している。すなわち、(D)炭素充填材を含む硬化性樹脂組成物からなる硬化物は、50mΩcm以下、好ましくは30mΩcm以下の体積固有抵抗を有している。体積固有抵抗が50mΩcmを超えると、硬化物の導電性が低下し、例えば、燃料電池用セパレーターとしての性能が低下してしまうので好ましくない。
前記セパレーターは、熱成形等により作製することができるが、その方法に特に制限はなく、所望のセパレーター形状に対応する金型等を使用し、圧縮成形及び射出成形等によって簡単に成形することができる。また、予め成形体を作成し、これを切削して所望の形状と大きさのセパレーターにすることもできる。また、セパレーターの大きさ、厚さ、形状等にも特に制限はなく、例えば図1に示すような、ガスが通過する溝部を有する形状のものを使用することができる。
このようにして得られた本発明の燃料電池用セパレーターは、固体高分子型、アルカリ型、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型等の種々の形式の燃料電池用セパレーターとして使用可能であるが、特に低温作動性及び放電特性等の観点から、固体高分子型燃料電池用セパレーターにおいて使用することが好ましい。
実施例及び比較例における硬化性樹脂組成物からなる硬化物及び燃料電池用セパレーターの各物性は、次の方法で測定又は確認した。
(1)水溶出試験
硬化性樹脂組成物を180℃で1時間硬化させ、密封性容器に硬化した樹脂3gに対してイオン交換水400g入れた後、121℃のプレッシャークッカー試験機中に入れて、100時間の溶出試験を行なった。得られた溶出液における電気伝導度を測定し、その値が低いほど抽出成分が少ないと判断した。
(2)曲げ強度、曲げ弾性率及び曲げたわみ率
曲げ強度及び曲げ弾性率は、JIS K6911に準拠して測定した。
曲げたわみ率は、以下の式により算出した。
曲げたわみ率(%)={6×試験片の高さ(mm)×曲げ最大変位(mm)/スパン(mm)2}×100
(3)体積固有抵抗値
JIS H0602に準拠し、4端子測定法により測定した。
(4)表面状態
成形物を金型から脱型する時の金型上の硬化物付着の有無を、目視により確認した。金型上に硬化物の付着が無い状態を◎とし、金型上に硬化物の付着がある状態を×とした。
(合成例1)
ポリスチレン換算重量平均分子量が3000のノボラック型フェノール樹脂 100質量部、Nメチロールアクリルアミド 144質量部(この時のノボラック型フェノール樹脂のフェノール性水酸基とN−メチロールアクリルアミドとの当量比は、約100:150に相当する)、反応触媒としてパラトルエンスルホン酸 1質量部を、MEK溶媒50質量部中、80℃で7時間反応させて、(A)変性ノボラック型フェノール樹脂[I]を得た。
このようにして得られた(A)変性ノボラック型フェノール樹脂[I]は、約5000のポリスチレン換算重量平均分子量、及び171の水酸基当量を有していた。ここで、水酸基当量とは、JIS K0070に準拠し、測定した水酸基価の値より算出されたものであって、水酸基価とは、試料1gをアセチル化した際に、水酸基と結合した酢酸を中和する水酸化カリウムのmg数である。
ポリスチレン換算重量平均分子量が3000のノボラック型フェノール樹脂 100質量部、Nメチロールアクリルアミド 72質量部(この時のノボラック型フェノール樹脂のフェノール性水酸基とN−メチロールアクリルアミドとの当量比は、約100:75に相当する)、反応触媒としてパラトルエンスルホン酸 1質量部を用いた以外は、合成例1と同様の条件で反応させて、(A)変性ノボラック型フェノール樹脂[II]を得た。
このようにして得られた(A)変性ノボラック型フェノール樹脂[II]は、約5000のポリスチレン換算重量平均分子量、及び146の水酸基当量を有していた。
(実施例1〜2、比較例1〜2)
表1の配合割合に従い、粉末状の各成分を配合した後、小型ニーダーを用いて、70℃で30分間混合することによって硬化性樹脂組成物を得た。なお、表1の配合割合は、全て質量部単位である。
得られた硬化性樹脂組成物を、180℃で3分間、ゲージ圧で6MPaの圧力を加えながら加熱成形することによって、厚さ4mm、幅10mm、長さ100mmの硬化物を得た。この硬化物について、曲げ強度、曲げ弾性率、曲げたわみ率及び電気伝導度を測定した。これらの結果を表1に示す。
(実施例3〜7、比較例3〜8)
表2の配合割合に従い、粉末状の各成分を配合した後、小型ニーダーを用いて、70℃で30分間混合することによって硬化性樹脂組成物を得た。なお、表1の配合割合は、全て質量部単位である。なお、表2の配合割合は、全て質量部単位である。
得られた硬化性樹脂組成物を、180℃で3分間、ゲージ圧で6MPaの圧力を加えながら加熱成形することによって、厚さ4mm、幅10mm、長さ100mmの硬化物を得た。この硬化物について、曲げ強度、曲げ弾性率、曲げたわみ率及び電気伝導度を測定した。
また、図1に示すような形状の燃料電池用セパレーター(最大厚み2.0mm、最小厚み1.0mm、溝深さ1.0mm、溝幅2mm、条幅2mm)を、該形状に対応する金型を用い、180℃で3分間、30MPaの圧力を加えながら硬化性樹脂組成物を加熱成形することによって得た。なお、アフターキュアは行わなかった。この燃料電池用セパレーターについて、体積固有抵抗値を測定し、また表面状態を確認した。さらに、成形性を見るために、180℃−2分以内での脱型の可否の確認を行なった。これらの結果を表2に示す。
比較例8の硬化物は、表面状態が悪く、曲げ強度、曲げ弾性率及び曲げたわみ率等の良好な値が得られなかった。
実施例3〜7の硬化物は、比較例3〜5の硬化物の体積固有抵抗値、表面状態及び成形性と同程度であったが、比較例3〜5の硬化物よりも曲げ強度及び曲げたわみ率が大きく、曲げ弾性率及び電気伝導度が小さかった。
すなわち、実施例3〜7の硬化性樹脂組成物から得られる硬化物は、耐水性、柔軟性及び導電性に優れていた。
さらに、前記硬化性樹脂組成物により得られた硬化物は、耐水性及び柔軟性に優れ、さらには導電性にも優れており、燃料電池用セパレーターとしての用途に適するものであった。
Claims (8)
- (A)ノボラック型フェノール樹脂のフェノール性水酸基100に対して、N−メチロールアクリルアミド化合物及び/又はそのアルキルエーテル化合物20〜200当量を反応させることにより得られる変性ノボラック型フェノール樹脂、(B)分子内に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物及び(C)ラジカル重合開始剤を含む硬化性樹脂組成物であって、
前記(A)変性ノボラック型フェノール樹脂のフェノール性水酸基に対する前記(B)エポキシ化合物のエポキシ基の当量比が0.1〜1.5であることを特徴とする前記硬化性樹脂組成物。 - 前記(A)変性ノボラック型フェノール樹脂及び前記(B)エポキシ化合物の合計100質量部に対して、前記(C)ラジカル重合開始剤が0.05〜10質量部含まれることを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
- 前記(B)分子内に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物が、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン又はエポキシ化エラストマーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
- 前記(C)ラジカル重合開始剤が、有機過酸化物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
- 充填材を更に含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
- 前記充填材が、(D)炭素系充填材であることを特徴とする請求項5に記載の硬化性樹脂組成物。
- 前記(A)、(B)、(C)及び(D)成分の合計100質量部に対して、前記(D)炭素系充填材が60〜95質量部含まれることを特徴とする請求項6に記載の硬化性樹脂組成物。
- 請求項6又は7に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなることを特徴とする燃料電池用セパレーター。
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