JP4506021B2 - 空気入りタイヤセット - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は4本の空気入りバイアスタイヤからなる空気入りタイヤセットに関し、更に詳しくは特にレーシングカートに装着するタイヤとして、優れた操縦安定性を発揮する空気入りタイヤセットに関する。
【0002】
【従来の技術】
レーシングカートは、出来るだけ軽量化してエンジンに対する負荷を少なくするため、サスペンションを装備せずに、前後輪共に直接車体に取付けられている。そのため走行時の振動が直接ハンドル(ステアリングホイール)に伝わるため、操舵が難しく、操縦安定性が非常に悪い。例えば、前輪操舵、後輪駆動で、かつ後輪の外径を前輪よりも大きくした四輪のレーシングカートの場合、前輪がステアリングにジョイントを通じて直接取付けられ、後輪がチェーン等で直接エンジンに取り付けられているため、走行時の振動、衝撃が車体に非常に伝わりやすい構造になっているからである。
【0003】
上記事情からレーシングカート用のタイヤには衝撃吸収性に優れた空気入りバイアスタイヤが一般的に使われているが、操縦安定性の改善には限界があった。すなわち、空気入りバイアスタイヤのカーカスコードには、ナイロンコードかポリエステルコードが使用されているが、ナイロンコードを使用した場合は、ダンピング特性が良く、乗り心地や粘り感に優れる一方、外径が大きい後輪用のタイヤでは寸法安定性に劣るという問題があった。またポリエステルコードを使用した場合は、寸法安定性は良好であるが、タイヤ自体の剛性が高過ぎるため、前輪のタイヤ振動が直接ハンドルに伝わって、操縦安定性を阻害するという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、寸法安定性の問題を生じることなく、操縦安定性を向上した空気入りタイヤセットを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の空気入りタイヤセットは、前輪操舵、後輪駆動で、かつ後輪の外径が前輪よりも大きいサスペンションなしの四輪車両に使用される空気入りバイアスタイヤであって、前記前輪に使用される空気入りバイアスタイヤのカーカスコードをナイロンコードとし、前記後輪に使用される空気入りバイアスタイヤのカーカスコードをポリエステルコードとし、前記前輪に使用される空気入りバイアスタイヤのカーカスコードの中間伸度を5%〜12%とし、前記後輪に使用される空気入りバイアスタイヤのカーカスコードの中間伸度を、前記前輪に使用される空気入りバイアスタイヤのカーカスコードの中間伸度の40〜70%の大きさにしたことを特徴とする。
【0006】
このように、前輪に中間伸度の大きなカーカスコードを使用し、後輪に中間伸度の小さなカーカスコードを使用したので、前輪のタイヤについては、カーカスコードの中間伸度が大きいために振動を吸収し、タイヤの振動がハンドルに伝わり難く、良好な操縦安定性を得ることができる。かつ、前輪のタイヤは外径が小さいため中間伸度が大きくても寸法安定性の問題は生じない。他方、後輪については、カーカスコードの中間伸度が小さいため寸法安定性は良好であり、かつ操舵輪でないためカーカスコードの中間伸度が小さくても操縦安定性を大きく阻害することはない。そのため、本発明空気入りタイヤセットによれば、寸法安定性の問題を生じることなく、操縦安定性を向上することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0008】
図1は本発明の空気入りタイヤセットに使用される空気入りバイアスタイヤの一例であり、トレッド部の子午線半断面を示している。
【0009】
本発明の空気入りタイヤセットを構成する各空気入りタイヤは、左右一対のビード部3,3間に2層のカーカス層4がトレッド部1とサイドウォール2に渡るように装架され、そのタイヤ幅方向端部がビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げられている。ビードコア5のタイヤ径方向外側には硬質ゴムからなるビードフィラー6が設けられている。2層のカーカス層4はカーカスコードをタイヤ周方向に対し斜めに交差させ、層間で互いに逆方向に交差させたバイアス構造になっている。カーカス層4は2層に限定されず、少なくとも2層あればよい。
【0010】
上記カーカス層4を構成するカーカスコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は27°〜37°が好ましい。27°未満であるとタイヤ幅方向の剛性が低下し、37°を超えるとタイヤ周方向の剛性が低下するため好ましくない。
【0011】
本発明の空気入りタイヤセットは、上述した構造を有する空気入りバイアスタイヤを四輪のレーシングカートの前輪と後輪に対し、カーカスコードを次のように異ならせて装着する。
【0012】
図2に示すレーシングカート7は前輪8と後輪9とをサスペンションを設けることなく直接車体に取り付けている。操舵輪である前輪8はジョイントを通じてステアリングに直結されており、駆動輪である後輪9は前輪8よりも直径が大きく、エンジン12にチェーン等で直結されている。
【0013】
前輪8及び後輪9に使用される空気入りバイアスタイヤは、それぞれ互いに中間伸度が異なるカーカスコードが使用され、後輪9の空気入りバイアスタイヤのカーカスコードの中間伸度は、前輪8の空気入りバイアスタイヤのカーカスコードの中間伸度の40〜70%、好ましくは50〜60%の大きさにしてある。換言すると、前輪タイヤのカーカスコードの中間伸度を100とした場合に、後輪タイヤのカーカスコードの中間伸度を40〜70、好ましくは50〜60にしてある。後輪タイヤのカーカスコードの中間伸度が前輪タイヤのカーカスコードの中間伸度の40%未満であると後輪タイヤの剛性が高くなり過ぎるため、乗り心地性が悪くなり、70%を超えると寸法安定性が低下するため好ましくない。
【0014】
前輪8に使用される空気入りバイアスタイヤのカーカスコードの中間伸度としては、5%〜12%が好ましい。前輪タイヤのカーカスコードの中間伸度が5%未満であると、タイヤ剛性が高くなり過ぎるため操縦安定性を阻害し、12%を超えると寸法安定性が低下する。
【0015】
尚、本発明において中間伸度とは、JIS L1017に従い、引張試験機により一定荷重時の伸び率を求めたものである。ここで一定荷重(F)は次式で求められる。
【0016】
F=44×(d2/d1)
F:一定荷重(N:ニュートン)
d1:JIS L1017表4に示す基準繊度(dtex)
d2:測定対象試料の表示繊度(dtex)
上述したカーカスコードの中間伸度を満たすため、前輪8に使用する空気入りバイアスタイヤ側のカーカスコードは、ナイロンコードが好ましい。ナイロンコードは大きめの中間伸度が得やすく、カーカスコードとして使用すると、ダンピング特性が良好であるため、振動を吸収し、前輪のタイヤ振動をハンドル11に伝わり難くするため、操縦安定性を良好にすることができる。ナイロンコードは中間伸度が大きいため、寸法安定性に劣るが、前輪は外径が小さいため、問題は少ない。
【0017】
後輪9に使用する空気入りバイアスタイヤのカーカスコードは、上記中間伸度を満たすためポリエステルコードが好ましい。ポリエステルコードは小さい中間伸度を得やすいため外径の大きい後輪であっても寸法安定性を良好にすることができる。また、ポリエステルコードは中間伸度が小さく、振動吸収性は低いが、操舵輪でないため操縦安定性に影響することはない。
【0018】
【実施例】
実施例1、比較例1〜3
タイヤサイズを前輪4.5/10.0−5、後輪を7.1/11.0−5とする点を共通にし、カーカスコードとして、中間伸度8%のナイロンコードと中間伸度4.5%のポリエステルコードとを、表1の通り異ならせた4種類(実施例1、比較例1〜3)の空気入りバイアスタイヤを製作し、各タイヤセットについて下記測定法の操縦安定性とラップタイムを測定した。結果を表1に示す。
ラップタイム:
タイヤセットをタイヤ空気圧を120Kpaにして、テクニカ社製レーシングカートに装着し、5人のプロのドライバーが競技用サーキットにて運転するときのラップタイムを測定した。
操縦安定性試験:
比較例1を基準タイヤとして、各ドライバーが4種類のタイヤ全てにて、15LAP(15周)走行し、ベストタイム、平均タイムとドライバーのフィーリングを加味して評価点を付けた。その点を平均して表1の評価結果とした。
【0019】
表1において操縦安定性については比較例1の結果を100とする指数で表し、数値が大きい程優れている。ラップタイムについては比較例1の測定結果の逆数を100とする指数で表し、数値が大きい程ラップタイムが速いことを示している。
【0020】
【表1】
Figure 0004506021
表1より、実施例1が比較例1〜3と比較して、操縦安定性、ラップタイム共に優れており、特に操縦安定性に優れていることがわかる。
【0021】
【発明の効果】
上述したように本発明の空気入りタイヤセットによれば、前輪に中間伸度の大きなカーカスコードを使用し、後輪に中間伸度の小さなカーカスコードを使用したので、前輪のタイヤについては、カーカスコードの中間伸度が大きいために振動を吸収し、タイヤの振動がハンドルに伝わり難く、良好な操縦安定性を得ることができる。かつ、前輪のタイヤは外径が小さいため中間伸度が大きくても寸法安定性の問題は生じない。他方、後輪については、カーカスコードの中間伸度が小さいため寸法安定性は良好であり、かつ操舵輪でないためカーカスコードの中間伸度が小さくても操縦安定性を大きく阻害することはない。そのため、本発明空気入りタイヤセットによれば、寸法安定性の問題を生じることなく、操縦安定性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の空気入りタイヤセットに使用される空気入りバイアスタイヤの一例であり、トレッド部の子午線半断面を示している。
【図2】本発明の空気入りタイヤセットを装着したレーシングカートの側面図である。
【符号の説明】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 レーシングカート
8 前輪
9 後輪
10 空気入りタイヤセット

Claims (3)

  1. 前輪操舵、後輪駆動で、かつ後輪の外径が前輪よりも大きいサスペンションなしの四輪車両に使用される空気入りバイアスタイヤであって、前記前輪に使用される空気入りバイアスタイヤのカーカスコードをナイロンコードとし、前記後輪に使用される空気入りバイアスタイヤのカーカスコードをポリエステルコードとし、前記前輪に使用される空気入りバイアスタイヤのカーカスコードの中間伸度を5%〜12%とし、前記後輪に使用される空気入りバイアスタイヤのカーカスコードの中間伸度を、前記前輪に使用される空気入りバイアスタイヤのカーカスコードの中間伸度の40〜70%の大きさにした空気入りタイヤセット。
  2. 前記前後輪に使用される空気入りバイアスタイヤのいずれもが、少なくとも2層のカーカス層を有し、かつカーカスコードのタイヤ周方向に対する角度が27〜37度である請求項に記載の空気入りタイヤセット。
  3. 前記四輪車両がレーシングカートである請求項1又は2に記載の空気入りタイヤセット。
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