JP4499957B2 - 床の構造および構築方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スチールハウス、木造住宅などの各種建物における床の構造にかかり、特に、衝撃力等による振動抑制対策を施した床の構造および構築方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的な床構造は、図9、図10に示す構造のものが一般的である。図10に示すように、端根太(壁上)1と側根太(壁上)2が矩形に組まれ、端根太1間に所定の間隔をあけて平行に配置された複数の床根太3が架設され、床根太3の上に合板からなる床板4が載置され、ファスナー(図示省略)で固定されている。
【0003】
住宅の床には、歩行等による衝撃力や、道路を走行する車両などによる交通振動が常時作用している。例えば、図9に示すように、矢印の下向きの衝撃力が床板4に作用した時、この床構造では、衝撃力が作用した直下の一本の床根太3aが抵抗するだけであるので、この床根太3aだけでは衝撃力(図10(イ)で示す)に対して剛性が低く、剛性抵抗、慣性重量抵抗の範囲(図10(ロ)で示す)が狭く、図9に示すように動たわみ(衝撃が作用したときの最初のたわみ)が大になり、振動感覚評価が悪くなる。床根太のスパンが大になるに従い、前記の問題が一層顕著に現れる。
【0004】
前記の問題を解決するために、床根太である合板の板厚を上げて、剛性抵抗、慣性重量抵抗の範囲(ロ)を広げる方法もあるが、板厚に上限があることから曲げ剛性に限界があり、さらに、設計用固定重量増による床根太断面の見直しや、それらに関連して床根太および床合板がコスト高になる等のデメリットが生じる。
【0005】
前記の問題を解決する別手段として、(1)、特開平11−310974号公報に開示の床の振動防止構造、(2)、図11に示す振動防止構造がある。
【0006】
(1)、特開平11−310974号公報に開示の床の振動抑制構造では、床の振動を抑えるために、床根太の軸方向と直角方向に略V字の金物を配置し、V字の底部で床根太を保持すると共に、V字の上端部を床に固定することで、床根太の水平振動を抑制している。しかし、この構造ではV字の金物自体は、床根太全体の剛性向上には寄与していないことから、床に衝撃力が作用した場合の動たわみを有効に低減するには至っていない。
【0007】
(2)図11に示すのは、シンプソン社(Simpson Storong−Tie Company,Inc)の金物である。これは複数本の剛性のある金物5を床根太3の軸方向と直交方向に設置すると共に、各床根太3間でX字(ブレース状)に交差配置し、各金物5の端部を床根太3の上下端に固定し、床板に加わる衝撃力が、床根太3を介して当該金物5に圧縮および引張として作用にするようにしている。
【0008】
しかし、この振動抑制構造は、施工時における金物5と床根太3との接合部のゆるみや、繰り返し加わる衝撃力による当該接合部のゆるみにより、人の床歩行のような衝撃力による微小振動や、より大きな床板の振動、床板の初期たわみ等が当該金物5に有効に伝達されず、金物5が抵抗部材として床板の動たわみを抑えるという本来の制振機能を発揮が出来ない場合がでる。さらに、木製床根太の場合、木材クリープ等の経年変化によっても、金物5と床根太3との接合部のゆるみが増大し、前述と同様、床板の動たわみを有効に抑えることが出来ない場合が生じる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
前述のとおり、従来の床の振動抑制構造は、床根太全体の剛性を上げる構造でなく、また、床に作用する衝撃力による動たわみを有効に抑えることが難しい。さらに、動たわみを有効に抑えることができても、それを長期間にわたって保持することが難しいなどの問題があった。
【0010】
本発明は、前記の課題を解決した床の構造を提供することを目的とする。
【0011】
【問題を解決するための手段】
前記の課題を解決するため、本発明は次のように構成する。
【0012】
第1の発明は、2条で1組をなす鋼製帯状のテンション構造体を平行に配設した複数の床根太の軸方向と直交方向に設置し、かつ、隣合う床根太の間で交差させてブレース状に設けたうえ、各床根太の上下部を狭持するように緊張して配設することで、当該テンション構造体を介して各床根太を一体化し、2条のテンション構造体の間に一方のテンション構造体を他側に近づけるように引張り可能なテンション追加金物を設け、さらに、テンション構造体と床根太の上下の端面をファスナーで接合していることを特徴とする。
【0015】
の発明は、第1の発明において、前記テンション追加金物は、互いに交差してブレース状に配設された2条のテンション構造体を挿通する長尺ボルトと、一方のテンション構造体を他側に近づけるように前記長尺ボルトに螺合したナットから構成されたことを特徴とする。
【0016】
の発明は、第1発明において、前記テンション追加金物は、互いに交差してブレース状に配設された2条のテンション構造体を挿通する右ねじと左ねじを持つ上下の締め付け部材と、両締め付け部材に螺合する右ねじと左ねじを持つ継手部材とからなるターンバックル構造であることを特徴とする。
【0017】
第4の発明は、2条で1組をなす鋼製帯状のテンション構造体を、床根太の軸方向と直交方向に設置すると共に、平行に配設の複数の床根太間で交差させてブレース状に設けたうえ、各床根太の上下部を狭持するように配設し、さらに、各テンション構造体の両端部を側根太に接合し、その後、両テンション構造体の間に配設のテンション追加金物により一方のテンション構造体を他側に近づけるように引張ることで両テンション構造体に張力を入力して、さらにその後、ファスナーでテンション構造体と各床根太の上下の端面を接合することを特徴とする。
【0018】
【作用】
本発明によると、テンション構造体に張力が与えられていることで、当該テンション構造体を介して床根太全体が一体化され、衝撃力等による微小振動に対しても床全体で抵抗でき、動たわみを有効に低減できる。さらに、木材のクリープ等の経年変化により、テンション構造体のたわみや接合部のゆるみが生じてもテンション追加金物にて張力を入力し、衝撃力等による微小振動に対しても床全体で抵抗でき、動たわみを有効に低減できる。
【0019】
テンション構造体の張設時、十分な張力が入らないためテンション構造体がたわむ場合には、テンション構造体の両端を側根太に接合した後、テンション追加金物にて張力を入力し、その後、テンション構造体と床根太とを接合する。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。
【0021】
図1は、実施形態に係る振動抑制対策を施した床の側面説明図、図2は、図1の根太枠組みの平面説明図、図3は、振動抑制構造の部分斜視図、図4、図5は、テンション構造体のテンション追加金物の設置説明図、図6は、テンション構造体とテンション追加金物との係合部の拡大断面図、図7は、テンション追加金物の他の例の設置説明図、図8は、床への衝撃力付加時の剛性抵抗、慣性重量抵抗範囲を示す根太枠組みの平面説明図である。
【0022】
本発明において、床構造は従来と同様で、図1、図2に示すように、端根太(壁上)1と側根太(壁上)2が矩形に組まれ、端根太1間に所定の間隔をあけて平行に配置された複数の床根太3が架設されて根太枠組み7が構築され、根太枠組み7上に合板からなる床板4が載置され、ファスナー(図示省略)で根太枠組み7に固定されている。
【0023】
本発明では、根太枠組み7において、テンション構造体8を用いて床根太3に振動抑制構造10を構築している。テンション構造体8は、板厚1.0mm程度以下の可撓性を適度に有する帯状の薄鋼板で構成する。この帯状の薄鋼板製のテンション構造体8を2条で1組とし、床根太3の軸方向と直交方向に緊張して設置する。すなわち、2条で1組をなす各テンション構造体8は、隣り合う床根太3間で互いに交差してブレース状をなすように配設され、かつ、各床根太3の上下端面と接してジグザグに伸びていて、各床根太3の上下端面は、2条で1組の各テンション構造体8でしっかりと挟持されている。
【0024】
したがって、各床根太3は、テンション構造体8で結合されて全体が一体化されるので、複数本の床根太3のうちの、何れか1つの床根太3aに衝撃力や振動が作用したとき、テンション構造体8を介して他の全ての床根太3に均等に伝わり、図8に示すように、床における剛性抵抗、慣性重量抵抗の範囲(ロ)が従来に比べて拡大する。
【0025】
次に、テンション構造体8を根太枠組み7へ緊張して設置する工程および、テンション構造体8と床根太3との接合部の構造を説明する。まず最初、2条のテンション構造体8を各床根太3の上下部をくぐらせながら、隣合う床根太3間で互いに交差させブレース状に配置したうえ、当該テンション構造体8の両端部11を側根太2の上端面および下端面に当てがい、この当接部にファスナーを打設して接合する。この段階では、テンション構造体8の中間部は床根太3に接合しないでおく。これは、前以てテンション構造体8の中間部寄りの位置を各床根太3に接合しておくと、テンション追加金物13(後述する)を用いてテンション構造体8に張力を入力する際、その張力がテンション構造体8の全長に均等に伝わらないからである。
【0026】
前述のテンション構造体8の両端部11を側根太2に接合するだけでは、テンション構造体8にはまだ十分な張力が入らず、当該テンション構造体8がたわむので、これを防止するためテンション追加金物13を用いて張力を入力する。その後、テンション構造体8の中間部を各床根太3の上下端面に接合する。
【0027】
図4〜図6に示すように、テンション追加金物13は、長尺ボルト13aとナット13bおよび、ボルト頭部13hの首部に嵌合されたワッシャー13cとから構成されている。ワッシャー13cは図に示すように、長尺ボルト13aの軸線に対し傾いて配置されるテンション構造体8の側面を円滑に押えることが出来るように、円周方向の一部13dを円弧状に曲げ形成してある。他方、帯状の薄鋼板製のテンション構造体8には、床根太3の側方に位置してボルト挿通孔14が開設されている。そして、床根太3の近傍において、ブレース状に配置され上下に離れて位置する2条の各テンション構造体8に開設された前記ボルト挿通孔14に長尺ボルト13aを挿通し、ナット13bを締結する。
【0028】
ナット13bを締結することにより、上下に離れて位置する2条のテンション構造体8が互いに近づくように引張られる。それにより、各床根太3の上下端面と接してジグザグに伸びる2条のテンション構造体8が一層緊張されると共に、各床根太3の上下端面をより強く挟持する。このようにしてテンション構造体8に大きな張力が付加されることで、複数の床根太3が当該テンション構造体4を介して強固に一体化される。その結果、各床根太3の剛性が向上するので、床板4に作用する衝撃力等による微小振動に対しても床全体で抵抗でき、動たわみを有効に低減できる。このように、床に衝撃力が加わった場合の床における剛性抵抗、慣性重量抵抗の範囲(ロ)を図8のように拡大でき、床全体で抵抗し動たわみを低減できる。
【0029】
テンション追加金物13でテンション構造体8を緊張したのち、図3に部分拡大図で示すように、ファスナー12をテンション構造体8から床根太3の上下の端面に打設することで、床根太3とテンション構造体8との接合を確実にできる。
【0030】
テンション追加金物13は、テンション構造体8を床根太3に張設した後は、簡単な操作で増し締めができるので、さらに次のメリットがある。すなわち、床根太3が木製の場合、木材のクリープ等の経年変化により、テンション構造体8のたわみや、テンション構造体8と床根太3との接合部のゆるみが生じてもテンション追加金物13により簡単に張力を入力でき、床に加わる衝撃力等による微小振動に対しても床全体で抵抗し、動たわみを有効に低減する作用を長期間にわたって保持できる。
【0031】
テンション追加金物13は、長尺ボルト13aの他に、例えば図7に示すように、ターンバックル方式のテンション追加金物13iとすることが出来る。この例では、右ねじと左ねじを持つ上下の締め付け部材13e、13eが、上下2条のテンション構造体8の開孔に挿入されると共に、両部材13e、13eは右ねじと左ねじを持つ継手部材13fで結合されている。この上下の締め付け部材13e、13eは、軸端部に頭部13gを有し、首部にはワッシャー13cが嵌合されている。したがって、継手部材13fを回して上下の締め付け部材13e、13eを互いに近づけることで、2条のテンション構造体8を同時に緊張することが出来る。
【0032】
図8に示す例では、1つの根太枠組み7に対し、2条1組のテンション構造体8を1組配設した例が示されているが、複数組配設してもよい。また、図示例では、1組のテンション構造体8に対し、1つのテンション追加金物13を設ける例が示されているが、テンション追加金物13は間隔をあけて複数設けてもよい。また、本発明において、端根太1と側根太2と床根太3の全て又は何れかは、木製であってもよいし、溝形鋼等の鋼製でもよい。
【0033】
【発明の効果】
本発明の床の構造は、2条で1組をなす鋼製帯状のテンション構造体を床根太の軸方向と直角に配置し、かつ互いに交差してブレース状に配置されながら各床根太の上下部を通ってジグザグに伸びるように配置したので、床根太の剛性を全体的かつ平均的に上げることができて、それにより剛性抵抗、慣性重量抵抗範囲を拡げることができると共に、床に作用する衝撃力による動たわみを有効に抑えることができ、しかも、動たわみ抑制の効果を長期間にわたって有効に保持することができる。さらに、きわめて簡潔な振動抑制構造であるから、床構造の軽量化、低コスト化、パネル化、工場生産化に適する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る振動抑制対策を施工した床の側面説明図である。
【図2】図1の根太枠組みの平面説明図である。
【図3】振動抑制構造の部分斜視図である。
【図4】テンション構造体のテンションを付加する前のテンション追加金物の設置説明図である。
【図5】テンション構造体のテンションを付加した後のテンション追加金物の設置説明図である。
【図6】テンション構造体とテンション追加金物との係合部の拡大断面図である。
【図7】テンション追加金物の他の例を示す設置説明図である。
【図8】床へ衝撃力を付加した時の剛性抵抗、慣性重量抵抗範囲を示す根太枠組みの平面説明図である。
【図9】従来の一般的な床の側面説明図である。
【図10】図9において、床への衝撃力付加時の剛性抵抗、慣性重量抵抗範囲を示す根太枠組みの平面説明図である。
【図11】(A)、(B)は、従来の床の振動抑制構造の斜視図と、振動抑制金物の斜視図である。
【符号の説明】
1 端根太
2 側根太
3 床根太
4 床板
5 金物
6 接合部
7 根太枠組み
8 テンション構造体
9 ファスナー
10 振動抑制構造
11 両端部
12 ファスナー
13 テンション追加金物
13a 長尺ボルト
13b ナット
13c ワッシャ-
13d テンション追加金物
13e 上下の締め付け金物
13f 継手部材
13i テンション追加金物
14 ボルト挿通孔

Claims (4)

  1. 2条で1組をなす鋼製帯状のテンション構造体を平行に配設した複数の床根太の軸方向と直交方向に設置し、かつ、隣合う床根太の間で交差させてブレース状に設けたうえ、各床根太の上下部を狭持するように緊張して配設することで、当該テンション構造体を介して各床根太を一体化し、2条のテンション構造体の間に一方のテンション構造体を他側に近づけるように引張り可能なテンション追加金物を設け、さらに、テンション構造体と床根太の上下の端面をファスナーで接合していることを特徴とする床の構造。
  2. 前記テンション追加金物は、互いに交差してブレース状に配設された2条のテンション構造体を挿通する長尺ボルトと、一方のテンション構造体を他側に近づけるように前記長尺ボルトに螺合したナットから構成されたことを特徴とする請求項1記載の床の構造。
  3. 前記テンション追加金物は、互いに交差してブレース状に配設された2条のテンション構造体を挿通する右ねじと左ねじを持つ上下の締め付け部材と、両締め付け部材に螺合する右ねじと左ねじを持つ継手部材とからなるターンバックル構造であることを特徴とする請求項1記載の床の構造。
  4. 2条で1組をなす鋼製帯状のテンション構造体を、床根太の軸方向と直交方向に設置すると共に、平行に配設の複数の床根太間で交差させてブレース状に設けたうえ、各床根太の上下部を狭持するように配設し、さらに、各テンション構造体の両端部を側根太に接合し、その後、両テンション構造体の間に配設のテンション追加金物により一方のテンション構造体を他側に近づけるように引張ることで両テンション構造体に張力を入力して、さらにその後、ファスナーでテンション構造体と各床根太の上下の端面を接合することを特徴とする床の構築方法。
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