JP4497667B2 - クレーンのフック格納装置およびフック格納時のサージ圧力防止方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウインチによってワイヤを巻き上げおよび巻き下げされるワイヤの下端に吊り下げられたフックを自動的に格納させるクレーンのフック格納技術に関し、例えば、トラックに搭載されるクレーンのフック格納装置に利用して有効な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
トラックに搭載されるクレーンにおいては、ワイヤの先端に吊り下げられたフックが走行中に揺れるのを防止するために、フックをブーム先端の格納部に格納するクレーンのフック格納装置が装備されている。
【0003】
従来のクレーンのフック格納装置は、クレーンのワイヤがウインチによって上限まで巻き上げられると、フックが過巻き防止スイッチに接触して過巻き防止スイッチが作動し、スイッチ作動信号によりコントローラが第一電磁弁および第三電磁弁への通電をオフにしてウインチ切換弁を中立位置に戻してワイヤロープの過巻を防止している。ここで、従来のクレーンのフック格納装置の構成を図2を基にして説明すると、次の通りである。なお、括弧内の符号は図2の符号に対応している。
すなわち、クレーンのフック格納装置は、ポンプ(12)に接続されたポンプ通路(13)と、タンク(14)に接続されたタンク通路(15)と、前記ポンプ通路(13)および前記タンク通路(15)にウインチ切換弁(30)を介して接続されたウインチ(6)の油圧モータ(5)の給排通路(5A、5B)と、前記ポンプ通路(13)の前記ウインチ切換弁(30)よりも上流側に前記ウインチ切換弁(30)を迂回してタンク通路(15)に接続されたバイパス通路(16)と、このバイパス通路(16)に介設されパイロット圧力の制御によって作動する差圧弁(17)と、この差圧弁(17)のベント回路(18)に介設された高圧リリーフ弁(19)と、前記ベント回路(18)における前記差圧弁(17)と前記高圧リリーフ弁(19)との間から分岐されて前記タンク通路(15)に接続されたベント通路(20)と、このベント通路(20)に介設された低圧リリーフ弁(21)と、前記ベント通路(20)に前記低圧リリーフ弁(21)と並列に接続された迂回通路(22)と、この迂回通路(22)に介設された通常時に開でクレーン通常作動時およびフック格納作動時に閉じる第一電磁弁(24)と、前記ベント通路(20)における前記迂回通路(22)よりも前記低圧リリーフ弁(21)寄りに前記低圧リリーフ弁(21)と直列に介設された通常時に閉でフック格納作動時に開く第二電磁弁(25)とを備えており、クレーンのワイヤ(7)がウインチ(6)によって上限まで巻き上げられると、フック(8)が過巻き防止スイッチ(42)に接触して過巻き防止スイッチ(42)が作動し、当該スイッチ作動信号によりコントローラ(40)が第一電磁弁(24)への通電をオフにして油圧モータ(5)の駆動を停止させ、ワイヤロープ(7)の過巻きを防止している。また、この状態でフック格納スイッチ(41)をオンにすれば、コントローラ(40)が第一電磁弁(24)および第二電磁弁(25)に通電して各電磁弁を切換え、油圧モータ(5)を低圧リリーフ弁(21)で設定された低圧(弱い力)で駆動して、フック(8)を図1の実線図示の如くあたかもブーム(4)の下に折曲げたような状態に格納するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記したクレーンのフック格納装置においては、フックが過巻き防止スイッチを作動させる位置に達し、フックが停止した後にフック格納操作ボタンを押してフックを折り曲げて格納する作業が完了し、ボタンの操作を止めるとき、制御回路の電磁弁の作動遅れによって、ウインチの作動圧力が高圧リリーフ弁(ウインチの通常作動の圧力を設定するための弁)の設定圧力に瞬間的に上昇する所謂サージ圧力が発生し、ワイヤに負荷が加わることがある。
【0005】
本発明の目的は、フック格納完了時にワイヤに負荷が加わるのを防止することができるクレーンのフック格納装置およびフック格納時のサージ圧力防止方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するための第一手段は、ポンプに接続されたポンプ通路と、タンクに接続されたタンク通路と、前記ポンプ通路および前記タンク通路にウインチ切換弁を介して接続されたウインチの油圧モータの給排通路と、前記ポンプ通路の前記ウインチ切換弁よりも上流側に前記ウインチ切換弁を迂回してタンク通路に接続されたバイパス通路と、このバイパス通路に介設されパイロット圧力の制御によって作動する差圧弁と、この差圧弁のベント回路に介設された高圧リリーフ弁と、前記ベント回路における前記差圧弁と前記高圧リリーフ弁との間から分岐されて前記タンク通路に接続されたベント通路と、このベント通路に介設された低圧リリーフ弁と、前記ベント通路に前記低圧リリーフ弁と並列に接続された迂回通路と、この迂回通路に介設された通常時に開でクレーン通常作動時およびフック格納作動時に閉じる第一電磁弁と、前記ベント通路における前記迂回通路よりも前記低圧リリーフ弁寄りに前記低圧リリーフ弁と直列に介設された通常時に閉でフック格納作動時に開く第二電磁弁とを備えており、
前記第二電磁弁はフック格納作動後の閉じ作動に際して、前記第一電磁弁の開き作動よりも遅れて閉じるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
前記の課題を解決するための第二手段は、前記第二電磁弁の遅延閉じ作動がコントローラの制御によって実行されることを特徴とする。
【0008】
前記の課題を解決するための第三手段は、ポンプに接続されたポンプ通路と、タンクに接続されたタンク通路と、前記ポンプ通路および前記タンク通路にウインチ切換弁を介して接続されたウインチの油圧モータの給排通路と、前記ポンプ通路の前記ウインチ切換弁よりも上流側に前記ウインチ切換弁を迂回してタンク通路に接続されたバイパス通路と、このバイパス通路に介設されパイロット圧力の制御によって作動する差圧弁と、この差圧弁のベント回路に介設された高圧リリーフ弁と、前記ベント回路における前記差圧弁と前記高圧リリーフ弁との間から分岐されて前記タンク通路に接続されたベント通路と、このベント通路に介設された低圧リリーフ弁と、前記ベント通路に前記低圧リリーフ弁と並列に接続された迂回通路と、この迂回通路に介設された通常時に開でクレーン通常作動時およびフック格納作動時に閉じる第一電磁弁と、前記ベント通路における前記迂回通路よりも前記低圧リリーフ弁寄りに前記低圧リリーフ弁と直列に介設された通常時に閉でフック格納作動時に開く第二電磁弁と、前記第一電磁弁および第二電磁弁を制御するコントローラと、フックを格納するためのフック格納操作スイッチとを備えており、前記コントローラは前記フック格納操作スイッチがオフになったとき、
前記第一電磁弁の開き作動が完了した後に前記第二電磁弁を閉じ作動させるよう制御することを特徴とする。
【0009】
前記の課題を解決するための第四手段は、ポンプに接続されたポンプ通路と、タンクに接続されたタンク通路と、前記ポンプ通路および前記タンク通路にウインチ切換弁を介して接続されたウインチの油圧モータの給排通路と、前記ポンプ通路の前記ウインチ切換弁よりも上流側に前記ウインチ切換弁を迂回してタンク通路に接続されたバイパス通路と、このバイパス通路に介設されパイロット圧力の制御によって作動する差圧弁と、この差圧弁のベント回路に介設された高圧リリーフ弁と、前記ベント回路における前記差圧弁と前記高圧リリーフ弁との間から分岐されて前記タンク通路に接続されたベント通路と、このベント通路に介設された低圧リリーフ弁と、前記ベント通路に前記低圧リリーフ弁と並列に接続された迂回通路と、この迂回通路に介設された通常時に開でクレーン通常作動時およびフック格納作動時に閉じる第一電磁弁と、前記ベント通路における前記迂回通路よりも前記低圧リリーフ弁寄りに前記低圧リリーフ弁と直列に介設された通常時に閉でフック格納作動時に開く第二電磁弁と、前記ウインチ切換弁を切換駆動するシリンダ装置と、通常時に前記シリンダ装置の巻上げ側ポートを前記タンク通路に接続してウインチ切換弁を中立位置に切換え、巻き上げ作動の指令時に巻上げ側ポートを前記ポンプ通路に接続してウインチ切換弁を巻き上げ位置に切換える第三電磁弁と、前記第一電磁弁、前記第二電磁弁および第三電磁弁を制御するコントローラと、フックを格納するためのフック格納操作スイッチとを備えており、
前記コントローラは前記フック格納操作スイッチがオフになったとき、前記第三電磁弁の巻き上げ作動の指令を解除して前記ウインチ切換弁を中立位置に切り換えた後に、前記第一電磁弁を閉じ作動させるように制御することを特徴とする。
【0010】
前記した第一乃至第三の手段によれば、フック格納作動後にフック格納操作スイッチから手を離したときに、第二電磁弁は第一電磁弁の開動作より遅れて閉じるので、高圧作動とはならず、サージ圧力は発生しない。したがってワイヤに大きな負担が加わることはない。
【0011】
前記した第四の手段によれば、フック格納操作スイッチから手を離したときに、第三電磁弁の巻き上げ作動の指令を解除してウインチ切換弁を中立位置に戻した後に、第一電磁弁を閉じ作動させるので、サージ圧が発生しない。したがってワイヤに大きな負担が加わることもない。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面に即して本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1に示されているように、本実施の形態に係るクレーンのフック格納装置はトラック1に搭載されたクレーン2に装備されている。クレーン2はトラック1の運転室と荷台との間に立設されたポスト3を備えており、ポスト3の上端部には伸縮するブーム4の後端部が回動するように軸支されている。ポスト3の上端部内には油圧モータ5によって駆動されるウインチ6が設備されており、ウインチ6はブーム4に張られたワイヤ7を繰り出し巻き取るようになっている。ワイヤ7の先端にはフック8が滑車を介して吊持されている。フック8が過巻き防止スイッチ42から垂れ下がっている重り42Aに接すると、過巻き防止スイッチ42が作動し、ウインチの巻き上げは停止される。ここで、フック格納操作スイッチ41を押すと、フック8は後述する弱い力で再び巻き上げられるが、フック8の滑車のブロックがフック格納部材9に接すると、このフック格納部材9を支点として、あたかも折り曲げられたかのようにブーム4の下側に格納されるようになっている。
【0014】
図1のトラック1に搭載されたクレーン2の駆動は油圧式であって、クレーン2を運転するための操作装置(以下、操作装置という。)10の油圧回路は、図2に符号11で示されているように構成されている。すなわち、操作装置10の油圧回路11はポンプ12から圧油を供給されるポンプ通路13と、タンク14に接続されたタンク通路15とを備えている。ポンプ通路13とタンク通路15との間にはウインチ切換弁30が介装されており、このウインチ切換弁30にはウインチ6を駆動する油圧モータ5に圧油を供給し、または、排出する給排通路5Aおよび5Bが接続されている。なお、クレーンの伸縮、起伏、旋回等の切換弁は省略されている。
【0015】
ポンプ通路13のウインチ切換弁30よりも上流側にはウインチ切換弁30を迂回してタンク通路15に連絡したバイパス通路16が接続されており、バイパス通路16にはパイロット圧力の制御によって作動する差圧弁17が介設されている。差圧弁17のベント回路18はタンク通路15に接続されており、ベント回路18には通常時に閉である高圧リリーフ弁19が介設されている。高圧リリーフ弁19はベント回路18の圧力がウインチその他のアクチュエータの最高使用圧力(例えば、19.6MPa)以上の高圧になった時に開くように構成されている。
【0016】
ベント回路18の差圧弁17と高圧リリーフ弁19との間からはベント通路20が分岐されており、ベント通路20の他端はタンク通路15に接続されている。ベント通路20の途中には低圧リリーフ弁21が介設されており、低圧リリーフ弁21はベント通路20の圧力がフック格納時の最高圧力(例えば、3.92MPa)以上になった時に開くように構成されている。
【0017】
ベント通路20には迂回通路22が低圧リリーフ弁21を迂回するように低圧リリーフ弁21と並列に接続されており、迂回通路22には2ポート・2位置・電磁操作式切換弁によって構成された第一電磁弁24がコック弁23を介して介設されている。第一電磁弁24は機構的にはポペット弁によって構成されており、通常時に開放でクレーンの通常作動およびフック格納作動の指令時に閉じるようになっている。
【0018】
ベント通路20における迂回通路22よりも低圧リリーフ弁21寄りには2ポート・2位置・電磁操作式切換弁によって構成された第二電磁弁25が低圧リリーフ弁21と直列に介設されている。第二電磁弁25は機構的にはスプール弁によって構成されており、通常時に閉止でフック格納作動の指令時に開くようになっている。
【0019】
図2に示されているように、ウインチ6の巻き上げ巻き下げを切り換えるためのウインチ切換弁30は後述する無線のリモートコントロール(以下、リモコンという。)で駆動されるシリンダ装置31または手動操作によって操作されるように構成されており、中立位置(切換弁の符号に添字aが付されて示されている。)と、その両脇の切換位置(同じく、添字b、cが付されて示されている。)とがそれぞれ設定されている。ウインチ切換弁30のポンプポートにはポンプ通路13が接続され、タンクポートにはタンク通路15が接続され、二つの負荷ポートには油圧モータ5の給排通路5Aおよび5Bがそれぞれ接続されている。つまり、ウインチ6の油圧モータ5はウインチ切換弁30の位置3bでウインチ6のワイヤ7を巻き上げるように回転し、位置3cでワイヤ7を巻き下げるように回転するようになっている。
【0020】
ウインチ切換弁30にはウインチ切換弁30を駆動するシリンダ装置31が連設されている。このシリンダ装置31はシリンダ室32を備えており、シリンダ室32にはピストン33が摺動自在に嵌入されている。ウインチ切換弁30のスプールに連結されたピストンロッド34はシリンダ室32の軸心線に沿って挿通されて、摺動自在に支承されている。なお、図2においては、ウインチ切換弁30とシリンダ装置31とはピストンロッド34を介して連結されているが、このピストンロッド34を省略してウインチ切換弁30とシリンダ装置31とを一体に形成してもよい。
【0021】
シリンダ室32のウインチ切換弁30側の端部に開設された巻き上げ側ポート35には3ポート・2位置・パイロットオフセット・電磁操作式切換弁によって構成された第三電磁弁26の負荷ポートが接続されている。第三電磁弁26のポンプポートはポンプ通路13に接続されており、タンクポートはタンク通路15に接続されている。第三電磁弁26は機構的にはポペット弁によって構成されており、通常時には負荷ポートがタンク通路15に接続してウインチ切換弁30を中立位置30aに位置させ、巻き上げ作動の指令時には負荷ポートがポンプ通路13に接続してウインチ切換弁30を巻き上げ位置30bに切換えるようになっている。
【0022】
シリンダ室32のウインチ切換弁30と反対側の端部に開設された巻き下げ側ポート36には3ポート・2位置・パイロットオフセット・電磁操作式切換弁によって構成された第四電磁弁27の負荷ポートが接続されている。第四電磁弁27のポンプポートはポンプ通路13に接続されており、タンクポートはタンク通路15に接続されている。第四電磁弁27は機構的にはポペット弁によって構成されており、通常時には負荷ポートがタンク通路15に接続してウインチ切換弁30を中立位置30aに位置させ、巻き下げ作動の指令時には負荷ポートがポンプ通路13に接続してウインチ切換弁30を巻き下げ位置30cに切換えるようになっている。
【0023】
第一電磁弁24、第二電磁弁25、第三電磁弁26および第四電磁弁27の各ソレノイド部は、マイクロコンピュータ等によって構成されたコントローラ40によって制御されるようになっている。コントローラ40にはフック格納操作スイッチ41が接続されている。また、過巻防止スイッチ42およびリモコンアンテナ43が接続されている。コントローラ40はフック格納操作スイッチ41、過巻防止スイッチ42、または図示しないリモコン発信器からリモコンアンテナ43を経由してコントローラ40に操作信号が入力されると、コントローラ40は第一電磁弁24、第二電磁弁25、第三電磁弁26および第四電磁弁27のうち指令された操作に必要な電磁弁に信号を送るようになっている。
【0024】
なお、操作装置10はブーム4を伸縮させるための油圧シリンダ装置やブーム4を起伏させるための油圧シリンダ装置、ブーム4を右旋回左旋回させるための油圧モータおよびアウトリガを上下動させるための油圧ジャッキを備えており、操作装置10の油圧回路11にはこれらの切換弁もそれぞれ設けられているが、それらの図示および説明は省略する。また、44はリモコン用のシリンダ装置31の駆動に必要な一定の油圧を発生させるための背圧弁、45は減圧弁、46はリリーフ弁、47はフィルタ、48はフィルタ47が詰まった時のためのフィルタ用リリーフ弁である。
【0025】
以上の構成に係るクレーンのフック格納装置の作用および効果を説明する。なお、図4はフック格納操作時のフローチャートを示しており、S1〜S11はフローチャートの各ステップを示す。
【0026】
図2において、図示しないリモコン発信器からウインチ6の巻上げ信号を送信すると、アンテナ43を経由してコントローラ40に入力され、コントローラ40は第一電磁弁24および第三電磁弁26に信号を送り、第一電磁弁24を開から閉に切り換え、第三電磁弁26を矢印Aで示す方向に切り換える。
【0027】
第三電磁弁26が切り換えられると、ウインチ切換弁30は巻き上げ位置30bに切り換えられるため、ポンプ通路13の圧油が油圧モータ5に給排通路5Aを通じて供給され、油圧モータ5がウインチ6を巻き上げ方向に回転させることによりワイヤ7を巻き上げる。
【0028】
ウインチ6のワイヤ7の巻き上げによって、フック8がブーム4の先端部近くの過巻き防止スイッチ42の重り42Aに接すると、過巻き防止スイッチ42はオンとなり、コントローラ40は第一電磁弁24および第三電磁弁26への通電を中止する。このため、ウインチ切換弁は中立位置に戻り、油圧モータ5は停止し、ウインチ6の巻上げも停止する(図4のS1、S2)。
【0029】
フック8を格納するために、フック格納操作スイッチ41をオンにすると、コントローラ40は第一電磁弁24、第二電磁弁25および第三電磁弁26に通電し、図3に示されている各電磁弁を切り換える(図4のS3〜S5)。すなわち、第一電磁弁24は開から閉に切り換えられ、第二電磁弁25は閉から開に切り換えられ、第三電磁弁は矢印Aで示す方向に切り換えられ、ウインチ切換弁30を矢印Bで示された方向に切り換える。第二電磁弁25が開になったことにより、ベント通路20の圧油は低圧リリーフ弁21を経由して流れ、これによって、差圧弁17すなわちバイパス通路16には低圧リリーフ弁21で設定された圧油が流れる。したがって、油圧モータ5にも低圧リリーフ弁で設定された低圧の圧油が供給されるので、ドラム6は弱い力で巻き上げられ、フック8を図1の二点鎖線で示されている状態から実線で示されているようにあたかもブーム4の下に折り曲げられたような形状で格納される(S6〜S7)。
【0030】
ところで、第一電磁弁24、第二電磁弁25および第三電磁弁26への通電が同時に停止されると、第一電磁弁24、第二電磁弁25および第三電磁弁26の構造が相違することによって中立位置へ戻る時間に差が発生し、第二電磁弁25→第一電磁弁24→第三電磁弁26の順序で切り換わることがあるため、一瞬の間、第一電磁弁24も第二電磁弁25も閉となる瞬間が生ずる。第一電磁弁24および第二電磁弁25がともに閉になると、高圧リリーフ弁19で設定されたリリーフ圧力となる。また、第三電磁弁26によって切り換えられるウインチ切換弁30も中立位置に戻っていないので、油圧モータ5の給排通路5Aの圧力がサージ的に上昇して一瞬だけ高圧リリーフ弁19の設定圧力になる。その結果、油圧モータ5に大きなトルクが発生し、ワイヤ7に大きな張力が作用する。
【0031】
しかし、本実施の形態に係るクレーンのフック格納装置においては、第二電磁弁25が開から閉に切り換わる時が図3に示されているように第一電磁弁24が閉から開に切り換わる時よりも遅延されているため、油圧モータ5に大きなトルクが発生することは防止され、その結果、ワイヤ7に大きな張力が作用するのを防止することができる。
【0032】
すなわち、フック格納操作スイッチ41がオンされる(S4)と、図3(d)に示されているように、ウインチ切換弁30のポンプポートの圧力はアンローディング圧力P1から上昇し始め、油圧モータ5が作動する油圧モータ作動圧力P2に達し、ウインチ6を回転させワイヤを巻き上げてフック格納作動をする。
【0033】
図3(e)に示されているように、フックイン部材9にフック8のブロックが当接して図1に実線で示されているようにフックが格納されると、図3(d)に示されているように、ウインチ切換弁30のポンプポートの圧力は油圧モータ作動圧力P2から低圧リリーフ弁21の設定圧力P3まで上昇し、その圧力P3を維持した状態になる。
【0034】
図3(a)に示されているように、フック格納操作スイッチ41がオフになる(S8)と、図3(b)に示されているように、第一電磁弁24はコントローラ40からの通電が切れるので、閉から開に切り換わる(図4のS9)。この時、図3(c)に示されているように、第二電磁弁25はコントローラ40によってオンの状態を維持され、所定時間(20ms)後にオフされる(図4のS10)。このため、図3(d)に示されているように、ウインチ切換弁30のポンプポートの圧力は低圧リリーフ弁21の設定圧力P3から瞬時にアンローディング圧力P1まで下降する。つまり、フック格納作動完了後に油圧モータ5に大きなトルクが作用することはない。
【0035】
図2において、フック格納操作スイッチ41のオフと同時に第一電磁弁24のソレノイドがオフすると、第一電磁弁24が迂回通路22を開くため、ポンプポートの圧力はアンローディング状態になる。つまり、ウインチ切換弁30のポンプポートの圧力はサージ的に上昇することなくアンローディング状態まで下降することになる。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態によれば、フック格納作動時における第二電磁弁25の閉じ作動を第一電磁弁24の開作動よりも遅延させることにより、フック格納作動時に油圧モータ5に大きなトルクが発生するのを防止することができるため、ワイヤ7に大きな張力が作用するのを未然に防止することができる。
【0037】
フック格納作動時における第二電磁弁25の閉じ作動をコントローラ40によって遅延させることにより、クレーンのフック格納装置のハードウエアを改造しなくても済むため、クレーンのフック格納装置やクレーン全体の製造コストの増加を防止することができる。
【0038】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0039】
例えば、フック格納作動時における第二電磁弁25の閉じ作動は、コントローラ40によって遅延させるように構成するに限らず、電気的な遅延回路によって遅延させるように構成してもよいし、機械的に遅延させてもよい。
【0040】
また、第一電磁弁24および第二電磁弁25を切り換えるタイミングを第三電磁弁26が切り換わった後すなわち、ウインチ切換弁30が完全に中立位置に戻った後に第一電磁弁を切り換えるようにしてもよい。ウインチ切換弁30が完全に中立位置に戻っていれば、第一電磁弁24や第二電磁弁25の切り換えによって油圧回路にサージ圧力が発生することはない。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、フック格納作動時にウインチに大きなトルクが発生するのを防止することができ、ワイヤに負担が加わるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態であるクレーンのフック格納装置を備えたトラッククレーンの外観を示す側面図である。
【図2】クレーンの操作装置の油圧回路を示す回路図である。
【図3】フック格納操作スイッチと電磁弁の開閉のタイミングとの関係およびバルブ入口の圧力、フックの移動量の関係等を示す線図である。
【図4】フック格納作動を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…トラック、2…クレーン、3…ポスト、4…ブーム、5…油圧モータ、5A、5B…給排通路、6…ウインチ、7…ワイヤ、8…フック、9…フック格納部材、10…操作装置、11…油圧回路、12…ポンプ、13…ポンプ通路、14…タンク、15…タンク通路、16…バイパス通路、17…差圧弁、18…ベント回路、19…高圧リリーフ弁、20…ベント通路、21…低圧リリーフ弁、22…迂回通路、23…コック弁、24…第一電磁弁、25…第二電磁弁、26…第三電磁弁、27…第四電磁弁、30…ウインチ切換弁、30a…中立位置、30b…巻き上げ位置、30c…巻き下げ位置、31…ウインチ切換弁駆動用シリンダ装置、32…シリンダ室、33…ピストン、34…ピストンロッド、35…巻き上げ側ポート、36…巻き下げ側ポート、40…コントローラ、41…フック格納操作スイッチ、42…過巻き防止スイッチ、42A…重り、43…リモコンアンテナ、44…背圧弁、45…減圧弁、46…リリーフ弁、47…フィルタ、48…フィルタ用リリーフ弁。
Claims (4)
- ポンプに接続されたポンプ通路と、タンクに接続されたタンク通路と、前記ポンプ通路および前記タンク通路にウインチ切換弁を介して接続されたウインチの油圧モータの給排通路と、前記ポンプ通路の前記ウインチ切換弁よりも上流側に前記ウインチ切換弁を迂回してタンク通路に接続されたバイパス通路と、このバイパス通路に介設されパイロット圧力の制御によって作動する差圧弁と、この差圧弁のベント回路に介設された高圧リリーフ弁と、前記ベント回路における前記差圧弁と前記高圧リリーフ弁との間から分岐されて前記タンク通路に接続されたベント通路と、このベント通路に介設された低圧リリーフ弁と、前記ベント通路に前記低圧リリーフ弁と並列に接続された迂回通路と、この迂回通路に介設された通常時に開でクレーン通常作動時およびフック格納作動時に閉じる第一電磁弁と、前記ベント通路における前記迂回通路よりも前記低圧リリーフ弁寄りに前記低圧リリーフ弁と直列に介設された通常時に閉でフック格納作動時に開く第二電磁弁とを備えており、
前記第二電磁弁はフック格納作動後の閉じ作動に際して、前記第一電磁弁の開き作動よりも遅れて閉じるように構成されていることを特徴とするクレーンのフック格納装置。 - 前記第二電磁弁の遅延閉じ作動がコントローラの制御によって実行されることを特徴とする請求項1に記載のクレーンのフック格納装置。
- ポンプに接続されたポンプ通路と、タンクに接続されたタンク通路と、前記ポンプ通路および前記タンク通路にウインチ切換弁を介して接続されたウインチの油圧モータの給排通路と、前記ポンプ通路の前記ウインチ切換弁よりも上流側に前記ウインチ切換弁を迂回してタンク通路に接続されたバイパス通路と、このバイパス通路に介設されパイロット圧力の制御によって作動する差圧弁と、この差圧弁のベント回路に介設された高圧リリーフ弁と、前記ベント回路における前記差圧弁と前記高圧リリーフ弁との間から分岐されて前記タンク通路に接続されたベント通路と、このベント通路に介設された低圧リリーフ弁と、前記ベント通路に前記低圧リリーフ弁と並列に接続された迂回通路と、この迂回通路に介設された通常時に開でクレーン通常作動時およびフック格納作動時に閉じる第一電磁弁と、前記ベント通路における前記迂回通路よりも前記低圧リリーフ弁寄りに前記低圧リリーフ弁と直列に介設された通常時に閉でフック格納作動時に開く第二電磁弁と、前記第一電磁弁および第二電磁弁を制御するコントローラと、フックを格納するためのフック格納操作スイッチとを備えており、
前記コントローラは前記フック格納操作スイッチがオフになったとき、前記第一電磁弁の開き作動が完了した後に前記第二電磁弁を閉じ作動させるように制御することを特徴とするクレーンのフック格納時のサージ圧力防止方法。 - ポンプに接続されたポンプ通路と、タンクに接続されたタンク通路と、前記ポンプ通路および前記タンク通路にウインチ切換弁を介して接続されたウインチの油圧モータの給排通路と、前記ポンプ通路の前記ウインチ切換弁よりも上流側に前記ウインチ切換弁を迂回してタンク通路に接続されたバイパス通路と、このバイパス通路に介設されパイロット圧力の制御によって作動する差圧弁と、この差圧弁のベント回路に介設された高圧リリーフ弁と、前記ベント回路における前記差圧弁と前記高圧リリーフ弁との間から分岐されて前記タンク通路に接続されたベント通路と、このベント通路に介設された低圧リリーフ弁と、前記ベント通路に前記低圧リリーフ弁と並列に接続された迂回通路と、この迂回通路に介設された通常時に開でクレーン通常作動時およびフック格納作動時に閉じる第一電磁弁と、前記ベント通路における前記迂回通路よりも前記低圧リリーフ弁寄りに前記低圧リリーフ弁と直列に介設された通常時に閉でフック格納作動時に開く第二電磁弁と、前記ウインチ切換弁を切換駆動するシリンダ装置と、通常時に前記シリンダ装置の巻き上げ側ポートを前記タンク通路に接続してウインチ切換弁を中立位置に切換え、巻き上げ作動指令時に巻上げ側ポートを前記ポンプ通路に接続してウインチ切換弁を巻き上げ位置に切換える第三電磁弁と、前記第一電磁弁、前記第二電磁弁および第三電磁弁を制御するコントローラと、フックを格納するためのフック格納操作スイッチとを備えており、
前記コントローラは前記フック格納操作スイッチがオフになったとき、前記第三電磁弁の巻き上げ作動の指令を解除して前記ウインチ切換弁を中立位置に切り換えた後に、前記第一電磁弁を閉じ作動させるように制御することを特徴とするクレーンのフック格納時のサージ圧力防止方法。
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