JP4497390B2 - 地中遮断板の貫入方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、止水などを目的とする地中遮断壁構築工法において、既設遮断板に後続の遮断板を円滑に貫入する地中遮断板の貫入方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、廃棄物による地下汚染の拡大防止、調整池や河川堤防の封じ込めなどを目的として、地中遮断壁を構築する場合、通常、地中に適宜幅の矢板、止水板などの遮断板を幅方向に順次に接続しながら打設する方法が採られている。
【0003】
遮断板は、主として厚さが薄くても剛性を示す鋼板や可撓性の合成樹脂製のシートが使用され、例えば、図1に示すように、遮断板の有効幅Wが約1〜1.5m、板長Hが打設深度により異なる有効長さを有するシート本体部1と、貫入フレームにセットする際の下部掴みしろ16と、隣接の遮断板と係合する両端の係合部2、3を有する遮断板10a、10bが知られている。
【0004】
そして、遮断板の地中への貫入は、貫入フレームを使用して行い、遮断板のメス係合部の下端部を地中縦方向に既に埋設されている遮断板のオス係合部に係合させながら地中に連行する。この場合、該メス係合部の下端部は地盤の抵抗を受けるため変形し易く、この変形によって、オス係合部とメス係合部の係合が円滑に行われず、遂には該係合が噛み合わず、係合が行われないまま後続の遮断板が地中に貫入されることがある。
【0005】
この問題を解決するものとして、メス係合部の外周を覆ってメス係合部の変形を阻止する補強具を可撓性遮断板のメス係合部の下端に設け、地中連行時における形状変形を阻止する方法が開示されている(実公平7−35860号公報)。また、上記オス係合部とメス係合部の係合状態が正常か否かを判断する方法として、特開2000−136529号公報には、後続の遮水シートを既設の遮水シートに係合するに際し、小型の先行ピースを予め既設の遮水シート側に係合しておき、後続の遮水シートの貫入により押されて既設の遮水シートに沿って下降される先行ピースの移動量を計測することにより、既設の遮水シートに対する後続の遮水シートの係合状態が正常か、否かを判断する方法が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、補強具を遮断板のメス係合部の下端に付設する方法は、地中連行時における形状変形を阻止する点でそれになりの効果を奏するものの、係合部内に周辺の土砂などを噛み込むことに起因する貫入抵抗の増大や貫入不能の問題までは解決できない。また、先行ピースの付設により係合状態の正常異常を判断する方法は、オス係合部とメス係合部の係合状態が正常か否かを簡易に判断できる点で有用な技術ではあるものの、係合状態が不具合となる要因を除去するものではない。すなわち、上述のような係合部内の周辺の土砂などの噛み込みは到底防止できるものではない。また、先行ピースは既設の遮水シートのオス係合部に付設されるが、かかる係合部に周辺の土砂などが進入し噛み込んでしまうと、以後の先行ピースの移動が制限され、その機能を発揮できないという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、地中縦方向に貫入された既設の遮断板に対し、後続の遮断板を互いに隣接するオス係合部とメス係合部を係合しつつ貫入し地中遮断壁を構築する方法において、既設遮断板に後続の遮断板を円滑に貫入する地中遮断板の貫入方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、後続の遮断板を既設の遮断板に係合する際、前記既設遮断板の未係合のオス係合部、換言すれば、係合直前のオス係合部周りを圧力流体のジェット噴流で洗浄し土砂などを排除し、その洗浄されたオス係合部に後続の遮断板を係合し貫入させれば、既設遮断板に後続の遮断板を円滑に貫入することができることなどを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明(1)は、遮断板の縦方向両側部にオス係合部とメス係合部の一方をそれぞれ有し、地中縦方向に貫入された既設の遮断板に対し、貫入フレームの一側面に着脱自在に取付けられた後続の遮断板を互いに隣接するオス係合部とメス係合部を係合しつつ貫入し地中遮断壁を構築する方法において、前記既設遮断板の係合前状態にあるオス係合部周りに圧力流体を噴射し、該オス係合部を洗浄しながら、該既設の遮断板に前記後続の遮断板を係合しつつ貫入する方法において、前記圧力流体は、前記貫入フレームの下方の係合位置側近傍に付設された圧力流体噴射口から噴射される地中遮断板の貫入方法を提供するものである。かかる構成を採ることにより、後続の遮断板を既設の遮断板に係合する際、係合直前のオス係合部周りを圧力流体のジェットで洗浄し土砂などを排除でき、その洗浄されたオス係合部に後続の遮断板を係合し貫入させるため、既設遮断板に後続の遮断板を極めて円滑に貫入することができる。また、洗浄対象である係合前のオス係合部近傍には、貫入フレームの係合位置側の端部が貫入深度にかかわらず常に近接しているため、この貫入フレームに圧力流体噴射口及び圧力流体噴射口に連通する流体通路を設けることが容易であり、既存設備の少しの改良で極めて円滑な係合状態を得ることができる。
【0010】
また、本発明(2)は、前記圧力流体噴射口は、前記貫入フレームの両側端を画する鋼管部材の内部に付設された該鋼管部材よりも小径の鋼管部材の分岐管の噴射口である前記地中遮断板の貫入方法を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態における地中遮断板の貫入方法を図1〜図3を参照して説明する。図1は本実施の形態例における地中遮断板の貫入方法を説明する図、図2は図1の係合部周りの拡大図、図3は図2のA−A線に沿って見た図をそれぞれ示す。
【0012】
本発明の地中遮断板の貫入方法は、公知の方法が適用される。具体的には、先ず複数の地中遮断板10a、10b・・が準備される。図1〜図3で示されるように地中遮断板10a、10bは、互いに同形状であり、シート本体部1の縦方向両側部に係合オス部材2と係合メス部材3の一方をそれぞれ溶着してなる可撓性の合成樹脂製遮断板である。係合オス部材2は、オス係合部4と、このオス係合部4と一体化されシート本体部1に溶着する基部5とからなる。係合メス部材3は、メス係合部8と、このメス係合部8と一体化されシート本体部1に溶着する基部7とからなる。オス係合部4とメス係合部8は、互いに係合可能な構造である。また、本実施の形態例における遮断板10bのメス係合部側の下方部は洗浄ジェット噴射口65からのジェット噴流の障害とならないようその一部101が切り欠かれている。
【0013】
貫入フレーム6は図では省略するベースマシンなどにより起立支持された支持リーダー14に沿って昇降されるものであり、支持基板部61と、支持基板部61に一体化され両側端を画するガイド部62、62からなる。ガイド部62は、鋼管部材であり、その内部には小径の鋼管部材である圧力流体通路63が付設されている。圧力流体通路63は上方側は圧力流体供給源に接続され、下方側は下方噴射口67と、下方噴射口67のやや上方から斜め下方に分岐し、係合貫入時の既設遮断板10aのオス係合部4に向けて開口する洗浄ジェット噴射口65にそれぞれ連接している。なお、洗浄ジェット噴射口65の噴射角度は、上記斜め下方向に限定されず、水平方向あるいは下方噴射口67の直上に設け、斜め上方向としてもよい。
【0014】
圧力流体通路63に供給される圧力流体としては、空気、水及び空気と水の混合物などの加圧されたものが挙げられ、このうち、ポンプによる圧送水が使いやすさ、噴射後の取扱性などの点で好適である。下方噴射口67は本発明では任意の構成要素であるが、貫入フレーム6の下端の複数箇所に設置することが、後続の遮断板10bの貫入抵抗を低減する点で好ましい。
【0015】
遮断板10bの貫入フレーム6への取付けは、公知の方法で行えばよい。すなわち、遮断板10bの掴みしろ16の裏面に断面がL字状の係合片を幅方向に設け、これを貫入フレーム6の下端に引っかけてシート本体部を上方に引っ張り緊張状態とする。次いで、遮断板10bの上方に設けたフック状係合片12をその緊張状態を維持して、貫入フレーム6へ取付ける。
【0016】
遮断板10aの貫入は、貫入機により剛性に富む貫入フレーム6と共に地中に貫入し、所定深さに貫入した後、遮断板10aを残して貫入フレームを引き上げることにより行われる。次で、遮断板10bを同様の方法で貫入する。この遮断板10bの貫入は、貫入する遮断板10bのメス係合部8の下端部を地中縦方向に既に貫入されている遮断板10aのオス係合部4に係合させ、且つ紐状のシール材13をオス係合部4の先端でメス係合部8内に配しながら行う。この場合、圧力流体通路63に圧力流体を供給し、下方噴射口67及び洗浄ジェット噴射口65からそれぞれ圧力流体を噴射する。下方噴射口67から圧力流体を噴射することにより、貫入地盤を緩い地盤として後続遮断板10bの貫入抵抗を低減することができる。また、洗浄ジェット噴射口65から圧力流体を既設遮断板10aのオス係合部に向けて噴射することにより、該オス係合部に付着している土砂類を吹き飛ばし、洗浄されたオス係合部4を後続遮断板10bのメス係合部8と係合させることができる。
【0017】
本発明において、後続の遮断板を既設の遮断板に係合するに際し、小型の先行ピースを予め既設の遮断板側に係合しておき、後続の遮断板の貫入により押されて既設の遮断板に沿って下降される先行ピースの移動量を計測することにより、既設の遮断板に対する後続の遮断板の係合状態が正常か、否かを判断する方法を使用してもよい。この場合、洗浄ジェット噴射口65からの圧力流体の噴射は、先行ピースより下方のオス係合部とすることが、洗浄されたオス係合部と先行ピースの係合も円滑に行える点で好適である。
【0018】
上記の施工方法により得られた遮断板10aの係合部と遮断板10bの係合形態は、図3に示されるように、係合オス部材2と係合メス部材3(図3では二点鎖線で示される)の係合が確実に行われており、且つ係合隙間に水膨張性シール材13を介在せしめて高い水密性を保持する構造を採っている。従って、廃棄物による地下汚染の拡大防止、調整池や河川堤防の封じ込めを目的とする地中遮断板を確実に構築できる。
【0019】
【発明の効果】
本発明によれば、後続の遮断板を既設の遮断板に係合する際、係合直前のオス係合部周りを流体のジェット噴流で洗浄し土砂などを排除でき、その洗浄されたオス係合部に後続の遮断板を係合し貫入させるため、既設遮断板に後続の遮断板を極めて円滑に貫入することができる。
また、本発明によれば、洗浄対象である係合前のオス係合部近傍には、貫入フレームの係合位置側の端部が常に近接しており、この貫入フレームに圧力流体噴射口及び圧力流体噴射口に連通する流体通路を設けることも容易であり、既存設備の少しの改良で極めて優れた係合状態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態例における地中遮断板の貫入方法を説明する図である。
【図2】図1の係合部周りの拡大図である。
【図3】図2のA−A線に沿って見た図である。
【符号の説明】
1 シート本体部
2 係合オス部材
3 係合メス部材
4 オス係合部
5 基部(オス側)
6 貫入フレーム
7 基部(メス側)
8 メス係合部
10a、10b 地中遮断板
13 水膨潤性シール材
16 掴みしろ
61 支持基板部
62 ガイド部
63 圧力流体通路
64、66 ジェット噴流
65 洗浄ジェット噴射口
67 下方噴射口
Claims (2)
- 遮断板の縦方向両側部にオス係合部とメス係合部の一方をそれぞれ有し、地中縦方向に貫入された既設の遮断板に対し、貫入フレームの一側面に着脱自在に取付けられた後続の遮断板を互いに隣接するオス係合部とメス係合部を係合しつつ貫入し地中遮断壁を構築する方法において、前記既設遮断板の係合前状態にあるオス係合部周りに圧力流体を噴射し、該オス係合部を洗浄しながら、該既設の遮断板に前記後続の遮断板を係合しつつ貫入する方法において、
前記圧力流体は、前記貫入フレームの下方の係合位置側近傍に付設された圧力流体噴射口から噴射されることを特徴とする地中遮断板の貫入方法。 - 前記圧力流体噴射口は、前記貫入フレームの両側端を画する鋼管部材の内部に付設された該鋼管部材よりも小径の鋼管部材の分岐管の噴射口であることを特徴とする請求項1に記載の地中遮断板の貫入方法。
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