以下、本発明を詳細に説明する。
[電子写真用トナーセット]
[結着樹脂]
画像出力媒体上に不可視情報を含む画像を形成する場合、一般的に可視画像、すなわちカラー画像が主である。特にフルカラー画像では図版、写真等を含む場合が多く、高画質の観点から、最終画質に対しては高い光沢度を持つことが要求され、トナー材料、特に結着樹脂は画像出力媒体表面との光沢度差であるΔグロスが大きくなるように材料設計される。
対して不可視画像は該カラー画像に情報を付加するものであって、情報の検出以外の手段では顕在化しない、すなわち目視で確認されないことが必要となる。ところが、不可視を顕像化するトナー粒子に対して同様の結着樹脂を含む材料設計を適用した場合、画像自体が着色されていなくても画像出力媒体表面との光沢度差異から、少なくても不可視情報を記録している部位が目視で認識できてしまう。
よって、カラー画像、特にフルカラー画像を顕像化するシステムでは、可視画像は高光沢度で再現され、不可視情報記録画像は画像出力媒体との光沢度差が小さいほうが望ましい。
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、カラートナー粒子、及び不可視情報を付与させる為の近赤外材料を内部に分散したトナー粒子(以後、不可視トナーと表記)の各々に重量平均分子量の異なる結着樹脂を用い、且つ下記式のような関係を持たせることで課題を改善できることを見出し、発明を完成するに至った。
本発明には、トナー粒子は顕像化目的のカラートナー粒子、及び不可視トナー粒子によって構成されるトナーセットが適用され、該トナーに用いられる結着樹脂の分子量は下記式の関係を満足している。
(数2)
式(1):2.0 ≦MwI/MwC≦6.0
式(3):8000 ≦MwC ≦35000
式中、MwI:不可視トナー粒子に用いられる結着樹脂の重量平均分子量、
MwC:カラートナー粒子に用いられる結着樹脂の重量平均分子量
上記式(1)中の重量平均分子量の範囲が2.0未満である場合、不可視トナー及び作像媒体(画像出力媒体、記録媒体ともいう)表面のΔグロスが大きくなり、カラー画像同様に高光沢度を呈する為本来なら不可視としたい情報の存在が、目視で認識できてしまう。さらに画像出力媒体へ加熱定着時に、カラー画像及び不可視画像双方の結着樹脂が、部分的に相溶を発生させ易く、顔料及び近赤外光吸収材料が混合されてしまうことで、不可視部分に付与された情報が一部もしくは全部読み出せなくなる可能性がある。
上記式(1)の値が6.0より大きい場合、カラー画像に対するΔ光沢度が大きく、カラー画像及び不可視画像が重なった場合に、カラー画像の高光沢度を阻害してしまう場合がある。また該カラートナー及び不可視トナーは同一のシステムにて加熱定着を行うことを前提としているが、加熱定着温度は、高画質の観点からカラー画像がオフセットを発生させるような高温域には設定出来ない。そのため高分子量である不可視情報記録部位が十分な強度を得ることができず、情報欠損或いは画像出力媒体より完全に脱利する可能性もある。本懸念に対しては各々に対し適した定着システムを用意することで一応は回避できるが、システム自体が大型化、複雑化してしまい、機体の制御性が悪くなってしまう為、現実的ではない。
上記式(3)中の重量平均分子量が8000未満である場合、加熱溶融定着時にカラートナー粒子の粘弾性が低下してオフセット等のトラブルを発生させ易くなり、さらに式(1)の範囲で不可視トナー粒子の結着樹脂の重量平均分子量が規定されることから、不可視画像自体の光沢度が高くなり、目視による視認性が高くなるという懸念が有る。
上記式(3)中の重量平均分子量が35000より大きい場合、カラートナー粒子が加熱溶融定着時に十分に溶融出来ず、結果としてカラー画像表面の平滑性を得られなくなり画質低下を発生させてしまう。また、不可視画像に於いても式(1)で規定される重量平均分子量上限近傍では、カラートナー粒子に適する定着可能温度域では十分な定着強度を得られず、画像欠損などが生ずる可能性が有る。
[離型剤]
不可視情報はカラー画像に認識されないように付加されるものであって、本来の主たる目的は高画質のカラー画像を得ることであることは前述している。結着樹脂の分子量を前述のように規定することで、不可視情報を含む画像が目視で認識されず、且つ正確に情報を付加できるが、一方で高画質を要求されるカラー画像と不可視画像が重なる領域に於いては、各々の分子量差による溶融性の違いによる不可視情報画像及びカラー画像間の密着性低下や、また、表面光沢度差異による不可視画像の不可視性手悪化といった問題を生じる。 特に、視認されないという観点から、不可視画像はカラー画像層の下側に位置するように作像するのが最適であるが、画像間の密着性悪化により画像全体の強度が低下し、結果としてストレスを受けた際の画像破壊や情報欠落をも発生させる懸念が有る。
本発明のトナーセットを構成するトナー粒子には離型剤が必須成分として含有されており、加熱定着時の加熱部材から画像を剥離させる際のストレスを低減させて、カラー画像を高画質に保ちながら、且つ不可視情報の欠損を抑止する機能を果たしている。一方で画像層間に存在する離型剤は、画像間の密着性をも阻害することから、本発明は上記を鑑みてなされており、トナー粒子に含有される離型剤量について下記の関係を持たせることで発明を完成させるに至った。
(数3)
式(2):0.2 ≦WI/WC≦0.5
式中、WI:不可視トナー粒子への離型剤の添加量、
WC:カラートナー粒子への離型剤の添加量
上記式(2)中の離型剤含有範囲が0.2未満である場合、加熱溶融定着時に、不可視トナー粒子の定着部材に対する剥離性を十分には得ることが出来なくなり、不可視画像のオフセットによる情報の欠損を発生させてしまう。また、上記式(2)中の離型剤含有範囲が0.5以上である場合、本発明に於いて期待する効果であるところの、カラー画像及び不可視画像間の密着性が十分には得られなくなり、前述した様な不具合を回避できなくなってしまう。
離型剤としては公知のものを使用することができ、例えば、パラフィンワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、マイクロクリスタリンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュワックス及びその誘導体、ポリオレフィンワックス及びその誘導体等である。この誘導体には、酸化物、ビニルモノマーとの重合体、グラフト変性物が含まれる。この他にも、アルコール、脂肪酸、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、エステルワックス、酸アミド等が挙げられるが、これらに何ら限定されるものではない。
[近赤外光吸収材料]
また、本発明の不可視トナー粒子は、上記重量平均分子量範囲の結着樹脂に加え、不可視情報を記録し、必要に応じて検出可能とする為に近赤外光吸収材料を含有している。
近赤外光吸収材料としては、 無機材料系では、例えば、燐酸、シリカ、ホウ酸等の可視域の波長を透過する公知のガラス網目形成成分に、遷移金属イオンや、無機及び/又は有機化合物からなる色素等の材料を添加したガラスや、これを熱処理により結晶化した結晶化ガラス等の無機材料が挙げられる。これらの無機材料は可視領域の光を良く反射して、不可視の画像を得ることができるが、反面、赤外光域の吸収が十分でなく単位面積当りのトナー量を多くする必要がある。
また、有機系の近赤外光吸収材料においては、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物等の有色材料、アミニウム塩系化合物、ナフタロシアニン系化合物等の無色の材料が挙げられる。前者は添加により画像を着色してしまうことから、不可視の情報記録には適さないが、後者は無機材料に比較し、赤外光域の吸収が十分に大きいことから添加量を抑えられ、結果としてカラー画像の画質を損ねないという利点がある。
以上のような理由から、本発明における近赤外光吸収材料としては、アミニウム塩系化合物及びナフタロシアニン系化合物の少なくとも1種を用いることが好ましい。また、該近赤外光吸収材料はトナー粒子中に分散して含有することがより好ましい実施形態である。
該材料をトナー表面に外部固着或いはトナー粒子群に混合添加した場合、トナー粒子及び現像剤中で材料凝集などを発生させる可能性が有り、さらにバルクとして必要量添加してもトナー表面に外部固着或いは現像剤調整の段階で、機器への付着などで失われ、不可視画像中の近赤外光吸収材料が不足または偏在等することで情報を正確且つ安定に読み出せなくなってしまう。また、遊離した近赤外光吸収材料が機内、特に感光体等を汚染することで現像、転写などの他工程に悪影響を与える可能性も考えられる。
特に前述の有機系近赤外光吸収材料を用いる場合、無機系材料に比べ結着樹脂に対する分散性が良く、画像出力媒体上に形成された不可視画像中に均一に分散し、可視域においてより不可視性を損なうことなく、赤外域においては十分な吸収を示すことで情報が高密度に記録でき、且つトナー中への分散性が良いことから不可視画像の機械読み取り・復号化処理が長期間わたり安定に行うことが可能となった。
本発明に用いられるフタロシアニン系化合物としては、以下の式(4)及び式(5)に例示するような化合物が好適である。
(式(4)において、Mは、金属原子又は金属酸化物を表し、R1、R5及びR7は、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、シクロヘキシルアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アシルオキシアルキル基、アシルアミノアルキル基、ハロゲン化アルキル基、シアノアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基を表し、R2、R3、R4及びR5は、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、シクロアルキル基、直鎖もしくは分岐鎖のアルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシアルコキシ基、アラルキル基又はハロゲン原子を表し、また、R2とR3又はR4とR5が組み合わさって環状基を形成していてもよく、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基又は水酸基を表し、lは、1〜4の整数であり、mは、0〜5の整数であり、そしてnは、0〜14の整数であり、但し、2l+m+nは16である)
(式(5)において、Metは、2個の水素原子、2価の金属原子、3価もしくは4価の置換金属原子を表し、A1〜A8は、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のアルキルチオ基又は置換もしくは非置換のアリールチオ基を表し、但し、A1とA2、A3とA4、A5とA6、A7とA8の各組み合わせにおいて、その両方が同時に水素原子又はハロゲン原子になることはなく、Y1〜Y16は、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のアルキルチオ基、置換もしくは非置換のアリールチオ基、置換もしくは非置換のアルキルアミノ基、置換もしくは非置換のジアルキルアミノ基、置換もしくは非置換のアリールアミノ基、置換もしくは非置換のジアリールアミノ基、置換もしくは非置換のアルキルアリールアミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ニトロ基、ニトリル基、オキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノカルボニル基又はモノもしくはジ置換アミノカルボニル基を表す)
またアミニウム系化合物としては、以下の式(6)及び式(7)に例示するような化合物が好適に用いられる。
本発明における近赤外光吸収材料としては、上記に例示したような化合物が好適であるが、アミニウム塩系化合物、及びナフタロシアニン系化合物から選択される有機系材料粒子であれば、何ら限定されるものではない。
さらに本発明におけるトナーセットは、画像出力媒体上に形成したトナー画像を、140℃乃至210℃、好ましくは160℃乃至200℃の温度域で加熱定着させる工程を有する。定着温度域が上記範囲以上の場合には、主たるカラー画像の画質が維持できなくなる。すなわち降温オフセットを発生させることで、画像表面が荒れてしまい、もしくは画像自体が欠損し、画質に対する要求を満たすことが出来なくなる。また温度域を下回ると、不可視トナー粒子の定着性強度が低下してしまい、不可視画像の乱れや欠落を発生させ、不可視情報の正確な読み取りが出来なくなってしまう。
加熱定着温度を本発明の温度域に制御することで、主たる可視化画像であるカラー画像において高画質を維持しつつ、不可視情報を付与する画像の目視による視認を抑制することが可能となる。
さらに、トナーセットに用いられる共通の材について、以下に詳細に説明する。
<結着樹脂>
本発明のトナーセットにおけるトナー粒子に使用し得る結着樹脂としては特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等のエチレン系樹脂、ポリスチレン、αポリ(α−チルスチレン)等を主成分とするスチレン系樹脂、ポリメチルメタアクリレート、ポリアクリロニトリル等を主成分とする(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂及びこれらの共重合樹脂が挙げられるが、電子写真用トナーとして用いる際の帯電安定性や現像耐久性の観点からスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合樹脂及びポリエステル樹脂が好ましい。
前記ポリエステル樹脂に用いる縮合性単量体としては、例えば、高分子データハンドブック:基礎編」(高分子学会編:培風館)に記載されているような縮合性単量体成分であり、従来公知の2価又は3価以上のカルボン酸と、2価又は3価以上のアルコールがある。2価のカルボンの酸具体例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の二塩基酸、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の脂肪族不飽和ジカルボン酸などが挙げられる。3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステルなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
2価のアルコールとしては、例えば、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシド又は(及び)プロピレンオキシド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、必要に応じて、酸価や水酸基価の調整等の目的で、酢酸、安息香酸等の1価の酸や、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等の1価のアルコールも使用することができる。
前記ポリエステル樹脂は、前記の縮合性単量体成分の中から任意の組合せで、例えば、「重縮合」(化学同人)、「高分子実験学(重縮合と重付加)」(共立出版)や「ポリエステル樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社編)等に記載された従来公知の方法を用いて合成することができ、エステル交換法や直接重縮合法等を単独で、又は、組み合せて用いることができる。
また前述のように樹脂の分子骨格にカルボキシル基を残留させることが好ましいが、ポリエステル樹脂は製法上分子側鎖へのカルボキシル基の導入が困難であるため、樹脂分子の両末端をカルボキシル基にすることによって、銅化合物に対する含有量の制御に対して一定の効果をあげることができる。したがって、樹脂の酸価はより高いほうが好ましく、具体的には5〜50mgKOH/gの範囲が好ましい。より好ましくは10〜40mgKOH/gである。
また前述のスチレン系樹脂及び(メタ)アクリル系樹脂、特にスチレン−(メタ)アクリル系共重合樹脂を構成する重合性単量体としては、以下のようなものが挙げられる。
スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレンや、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン等のアルキル鎖を持つアルキル置換スチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン等のハロゲン置換スチレン、4−フルオロスチレン、2,5−ジフルオロスチレン等のフッ素置換スチレン等がある。スチレン系単量体としては、スチレンが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、(メタ)アクリル酸n−メチル、(メタ)アクリル酸n−エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸n−ラウリル、(メタ)アクリル酸n−テトラデシル、(メタ)アクリル酸n−ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸n−オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソヘキシル、(メタ)アクリル酸イソヘプチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ビフェニル、(メタ)アクリル酸ジフェニルエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルフェニル、(メタ)アクリル酸ターフェニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−β−カルボキシエチル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等がある。(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、アクリル酸n−ブチルが好ましい。
前記スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂及びスチレン−(メタ)アクリル系共重合樹脂にカルボキシル基を含有させる場合は、カルボキシル基を有する重合性単量体を共重合させることによって得ることができる。
このようなカルボキシル基含有重合性単量体の具体例としては、アクリル酸、アコニット酸、アトロパ酸、アリルマロン酸、アンゲリカ酸、イソクロトン酸、イタコン酸、10−ウンデセン酸、エライジン酸、エルカ酸、オレイン酸、オルト−カルボキシケイ皮酸、クロトン酸、クロロアクリル酸、クロロイソクロトン酸、クロロクロトン酸、クロロフマル酸、クロロマレイン酸、ケイ皮酸、シクロヘキセンジカルボン酸、シトラコン酸、ヒドロキシケイ皮酸、ジヒドロキシケイ皮酸、チグリン酸、ニトロケイ皮酸、ビニル酢酸、フェニルケイ皮酸、4−フェニル−3−ブテン酸、フェルラ酸、フマル酸、ブラシジン酸、2−(2−フリル)アクリル酸、ブロモケイ皮酸、ブロモフマル酸、ブロモマレイン酸、ベンジリデンマロン酸、ベンゾイルアクリル酸、4−ペンテン酸、マレイン酸、メサコン酸、メタクリル酸、メチルケイ皮酸、メトキシケイ皮酸等であり、重合体形成反応の容易性などからアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ケイ皮酸、フマル酸などが好ましく、アクリル酸がより好ましい。
本発明のトナーセットにおけるトナー粒子に用いる結着樹脂は、その重合時に連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に制限はないが、チオール成分を有する化合物を用いることができる。具体的には、ヘキシルメルカプタン、ヘプチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン、デシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類が好ましく、特に分子量分布が狭く、そのため高温時のトナーの保存性が良好になる点で好ましい。
本発明のトナーセットにおけるトナー粒子に用いる結着樹脂のうち、重合性単量体のラジカル重合により製造することができるものはラジカル重合用開始剤を用いて重合することができる。
ここで用いるラジカル重合用開始剤としては、特に制限はない。具体的には、過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化tert−ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1−フェニル−2−メチルプロピル−1−ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸tert−ブチルヒドロペルオキシド、過蟻酸tert−ブチル、過酢酸tert−ブチル、過安息香酸tert−ブチル、過フェニル酢酸tert−ブチル、過メトキシ酢酸tert−ブチル、過N−(3−トルイル)カルバミン酸tert−ブチル等の過酸化物類、2,2’−アゾビスプロパン、2,2’−ジクロロ−2,2’−アゾビスプロパン、1,1’−アゾ(メチルエチル)ジアセテート、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)硝酸塩、2,2’−アゾビスイソブタン、2,2’−アゾビスイソブチルアミド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオン酸メチル、2,2’−ジクロロ−2,2’−アゾビスブタン、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、1,1’−アゾビス(1−メチルブチロニトリル−3−スルホン酸ナトリウム)、2−(4−メチルフェニルアゾ)−2−メチルマロノジニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸、3,5−ジヒドロキシメチルフェニルアゾ−2−メチルマロノジニトリル、2−(4−ブロモフェニルアゾ)−2−アリルマロノジニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルバレロニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸ジメチル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサンニトリル、2,2’−アゾビス−2−プロピルブチロニトリル、1,1’−アゾビス−1−クロロフェニルエタン、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、1,1’−アゾビス−1−シクロへプタンニトリル、1,1’−アゾビス−1−フェニルエタン、1,1’−アゾビスクメン、4−ニトロフェニルアゾベンジルシアノ酢酸エチル、フェニルアゾジフェニルメタン、フェニルアゾトリフェニルメタン、4−ニトロフェニルアゾトリフェニルメタン、1,1’−アゾビス−1,2−−ジフェニルエタン、ポリ(ビスフェノールA−4,4’−アゾビス−4−シアノペンタノエート)、ポリ(テトラエチレングリコール−2,2’−アゾビスイソブチレート)等のアゾ化合物類、1,4−ビス(ペンタエチレン)−2−テトラゼン、1,4−ジメトキシカルボニル−1,4−ジフェニル−2−テトラゼン等が挙げられる。
上記の共重合体のガラス転移温度は50〜70℃であることが好ましい。
本発明のトナーセットにおけるトナー粒子には、トナーの内部に含有・分散させて使用する内部添加剤として、帯電を調整する帯電制御剤等を含有してもよい。
<帯電制御剤>
帯電制御剤としては、公知のものを使用することができるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤を用いることができる。湿式製法でトナーを製造する場合、イオン強度の制御と廃水汚染の低減との点で、水に溶解しにくい素材を使用するのが好ましい。なお、本発明におけるトナーは、磁性材料を内包する磁性トナー及び磁性材料を含有しない非磁性トナーのいずれであってもよい。
<着色剤>
本発明のトナーセットにおいて、可視画像形成用に使用するカラートナー粒子は、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン色及び、レッド、ブルー、グリーン等、所望する色の公知のものを用いることができるが、近赤外光吸収材料を含有する不可視トナーとの併用を前提としていることより、近赤外光領域における吸収率(近赤外光吸収率)が、5%以下であるカラートナー粒子を用いることが、不可視情報の読み取り精度確保の観点で好ましい。
可視トナーの近赤外光吸収率が5%以上である場合には、画像出力媒体表面に、不可視画像と、カラー画像(以下、可視化画像と記載)とが形成された画像形成面を、赤外光照射により機械読み取りする場合において、可視画像も、不可視画像として誤認されてしまう場合がある。特に、画像形成面の不可視画像が形成された領域を特定せずに機械読み取りする場合や、可視画像と、画像出力媒体表面と、の間に不可視画像を形成する場合においては、不可視画像の情報のみを読み取って正確に複号化することが困難になる場合がある。
この可視トナーの近赤外光吸収率は、既述した不可視トナーの場合と同様に分光反射率測定機を用いて、前記可視トナーにより形成された可視画像の近赤外域の分光反射率をVT(i)、画像出力媒体の分光反射率をM(i)と測定することにより、下式(7)に示したように求められる。
式(7):可視トナーの近赤外光吸収率=VT(i)−M(i)
上記したような可視トナーを得るために用いる着色剤としては、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、マラカイトグリーン・オキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3などを代表的なものとして例示することができる。
また、必要に応じて染料を用いることもできる。該染料としては、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料、例えば、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等が挙げられ、これらの単独、もしくは混合した状態で使用できる。
また、不可視画像の読み取り精度を高めるためには、不可視画像を形成する不可視トナーの近赤外光吸収率は、可視画像を形成する可視トナーの近赤外光吸収率よりも15%以上大きいことが好ましく、30%以上大きいことがより好ましい。
不可視画像と、可視画像と、の近赤外光吸収率差が15%よりも小さい場合には、不可視画像の近赤外吸収率と、可視画像の近赤外吸収率と、の間の吸収率域において、機械読み取りする際に不可視画像か否かを識別して読み取るために一定のコントラスト(閾値)を境界として2値化処理して、不可視画像のみを認識して読み取ることが困難となる場合がある。即ち、このような場合、可視画像が、不可視画像の読み取り、さらには、不可視画像に記録された情報を正確に復号化する際の障害となってしまう可能性がある。
なお、このような、不可視画像を形成する不可視トナーの近赤外光吸収率と、可視画像を形成する可視トナーの近赤外光吸収率と、の差(以下、単に「近赤外光吸収率差」と略す場合がある)は、分光反射率測定機を用いて、画像出力媒体表面に形成された不可視画像(ベタ画像)の分光反射率IP(i)と、画像出力媒体表面に形成された可視画像(ベタ画像)の分光反射率VP(i)と測定することにより、下式(8)に示したように求められる。
式(8):近赤外光吸収率差=IP(i)−VP(i)
<外添剤>
更に、不可視トナーの長期保存性、流動性、現像性、転写性をより向上させる為に、添加剤として、無機粉、樹脂粉を用いてもよい。
<トナー粒子の製造>
上記内部添加剤を、不可視トナー粒子内部に添加する方法としては公知の手法を用いることができるが、特に熱溶融混練処理が好適に用いられる。この時の混練としては、各種の加熱混練機を用いて行うことができる。加熱混練機としては、三本ロール型、一軸スクリュー型、二軸スクリュー型、バンバリーミキサー型が挙げられる。
また、不可視トナー粒子の製造法は、特に限定されるものではなく、公知の手法を用いることができるが、上記混練物の粉砕により製造する場合は、例えば、マイクロナイザー、ウルマックス、JET−O−マイザー、KTM(クリプトン)、ターボミージェット等により行うことができる。更には、その後工程として、ハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所製)、メカノフュージョンシステム(ホソカワミクロン社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)等を用いて、機械的外力を加えることで粉砕後のトナー形状を変化させることができる。また、熱風による球形化も挙げることができる。さらには、分級処理を施してトナー粒度分布を調整しても良い。不可視トナーの体積平均粒径としては、3μm〜12μmの範囲が好ましく、5μm〜10μmの範囲がより好ましい。体積平均粒径が、3μmより小さいと、静電的付着力が重力と比べて大きくなり、粉体としてハンドリングするのが困難になる場合がある。一方、体積平均粒径が、12μmより大きいと、高精細な不可視情報の記録が困難となる場合がある。
本実施の形態では、特に上記式(2)を満たすために、結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法、結着樹脂を得るための重合性単量体と着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法、結着樹脂と着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法などが好ましい。
<電子写真用現像剤>
本発明の電子写真用現像剤は、キャリアと、電子写真用トナーセットと、からなる電子写真用現像剤であって、該電子写真用トナーセットが、本発明の電子写真用トナーセットであることが好ましい。本発明の電子写真用現像剤は、公知の手法により、キャリアと、本発明の電子写真用トナーと、を混合処理することにより得ることができる。また、本発明の電子写真用現像剤は、前記電子写真用トナーは非磁性であり、キャリアは磁性を有するものを混合してなる二成分現像剤であることが好ましい。
現像剤中の不可視トナー濃度(TC:Toner Concentration)は、3質量%〜15質量%の範囲が好ましく、5質量%〜12質量%の範囲がより好ましい。なお、前記不可視トナー濃度(TC)は、下式(9)で表わされる。
式(9):TC(wt%)=[現像剤に含まれる不可視トナー質量(g)/現像剤の総質量(g)]×100
<画像形成方法>
(不可視画像の具体例)
次に、本発明の画像形成方法により形成される不可視画像の画像構成、不可視画像の目視による認識、および、不可視画像の機械読み取り等について具体的に説明する。不可視画像は、本発明の電子写真用トナーを用いて形成されるもので、近赤外光照射により機械読み取り可能であれば特に限定されるのではないが、文字、数字、記号、模様、絵、写真等の画像からなるのは勿論、JAN、標準ITF、Code128、Code39、NW−7等と呼ばれる公知のバーコードのような2次元パターンであってもよい。
不可視画像がバーコードのような2次元パターンからなる場合には、画像出力媒体に画像を形成した画像形成装置を特定するためのシリアル番号や、画像出力媒体表面に前記不可視画像と共に形成される可視画像の著作権認証番号等として利用できる。また、不可視画像と共に形成される可視画像が機密文書・有価証券・免許・個人IDカード等の形態をとる場合においては、これら偽造物の識別を検出することにも効果的に用いられる。
なお、上記のバーコードの例のみならず、本発明において、2次元パターンとは、従来、可視で認識可能な画像として用いられてきた公知の記録方式であれば特に限定されるものではない。例えば、微小面積セルを幾何学的に配置させた2次元パターンを形成する方法としては、QRコードと呼ばれる2次元バーコードが挙げられる。また、微小ラインビットマップを幾何学的に配置させた2次元パターンを形成する方法としては、特開平4−233683号公報に記載の技術である、回転角度が異なる複数のパターンによるコードの形成方法が挙げられる。
このような2次元パターンからなる不可視画像を画像出力媒体表面に形成することにより、容量の大きい情報、例えば、音楽情報、文章アプリケーションソフトの電子ファイル等を目視では理解できない形式で画像に埋め込むことが可能となり、より硬度な機密文書あるいはデジタル/アナログ情報共有文書等の作成技術を提供できる。
図1は、本発明の画像形成方法により形成される2次元パターンからなる不可視画像形成部の、通常の画像(目視で見た場合)、赤外光照射により認識した場合の拡大図、及び、該拡大図を機械読み取りによりデジタル情報に復号変換した後のビット情報イメージとして捉えた場合の一例を示す模式図である。図1の左側に示された図は、画像出力媒体12表面を目視で見た場合について示したものであり、画像出力媒体12表面には不可視画像11が形成されている。なお、図中、不可視画像11は、実際には視認できるものではないが、説明のために便宜上ハーフトーンで表している。
また、図1の中央に示された図は、不可視画像11を赤外光照射により機械読み取りして認識した場合において、不可視画像11の微視的領域を拡大した拡大図13である。拡大図13に示される2次元パターンは、回転角度が異なる複数の微小ラインビットマップで形成された場合の一例を示したものであり、具体的には、相互に異なる傾きを有する2種類の微小ライン単位14が配列し、片方が「0」、もう片方が「1」のビット情報を表している。この回転角度が異なる複数の微小ラインビットマップからなる2次元パターンは、可視画像に与えるノイズが極めて低く、かつ大量の情報を高密度にデジタル化して埋め込むことができるため、好適に用いられる。なお、微小ライン単位14は、好ましくは3〜10ドット、より好ましくは4〜7ドットで1単位が形成される。1単位が、3ドットよりも小さい場合には、機械による読み取り誤りが多くなり、10ドットを超える場合には、可視画像に対しノイズとして現れるため好ましくない。
図1の右側に示された図は、微小ライン単位14が配列している拡大部分13を、機械読み取りによりデジタル情報に復号変換してビット情報イメージ15として捉えたものである。このように、不可視画像は、CCD等の読み取り装置により、拡大部分13に示されるような2次元パターンとして読み取られ、これがデジタル情報としてビット情報イメージ15に復号変換され、さらには、エンコード時の記録フォーマットに対応した方式で音声情報、文章、画像ファイル、アプリケーションソフトの電子ファイル等へデコードされる。
一方、従来、偽造防止技術に用いられてきた技術としては、画像出力媒体に、桜紙(複写機の光学読み取り時に、「禁複写」等の文字が浮き出る特殊紙)を用いる方法、あるいは、比較的淡い色で透かし文字を重ね記録する方法があったが、いずれも、前記画像出力媒体表面に形成された文書や模様、絵柄等からなる可視画像の品質を損ねるものであった。しかしながら、本発明の画像形成方法により画像出力媒体表面に形成された不可視画像が光沢性を有する場合には、該画像出力媒体表面に対して、特定の角度から目視した場合は、前記不可視画像を巨視的に認識でき、また、別の角度から目視した場合は、前記不可視画像を認識できないようにすることが可能であるため、不可視画像と共に形成される可視画像の品質を損なうことがない。
このような例について以下に説明する。
図2は、本発明の画像形成方法により、画像出力媒体表面に不可視画像と共に可視画像が形成された記録物を、該記録物の紙面のほぼ垂直方向(正面)より、目視した場合に実際に認識できる画像を模式的に示した一例であり、図3は、本発明の画像形成方法により、図2に示す記録物を、該記録物の紙面の垂直方向からずれた位置(斜め)より、目視した場合に実際に認識できる画像を模式的に示した一例である。
図2及び図3において、記録物21表面には、文字やグラフ等からなる可視画像と共に「Confidential」というパターン(文字)からなる不可視画像22が、画像出力媒体表面と、可視画像との間に形成されている。しかし、図2においては、記録物21の紙面に対してほぼ垂直方向(正面)より目視しているため、不可視画像22(図2においては図示せず)は認識できないことを示している。一方、図3においては、記録物21の紙面に対して垂直方向からずれた位置(斜め)より目視しているため、不可視画像として形成された領域と、該領域以外と、の光沢差が顕著となるために、不可視画像22の「Confidential」というパターン(文字)が、可視画像と共に認識できることを示している。
図2及び図3に示した例において、不可視画像22は、目視により文字として巨視的に認識できるものであるが、偽造・複写行為に対して牽制効果を発揮するためには、必ずしも文字に限定されるものではない。また、不可視画像22の微視的領域が、図1に示した微小ライン単位14のような機械読み取り可能なパターンで構成されることにより、より偽造が困難で、かつ精度の高い本物認識が可能な記録物21とすることもできる。なお、図3に示す不可視画像22は、実際には光沢感により認識されるものであるが、説明の都合上、本発明の画像形成方法により形成された記録物を提示して直接説明することができないため、光沢感を有さない黒色のパターン(文字)として描画されている。
一方、本発明の画像形成方法により不可視画像と共に形成される可視画像は、どのような画像であってもよく、また、その画像形成方法も、電子写真方式も含め、公知のいかなる画像形成方法を用いてもよいが、不可視画像を機械読み取りする際に精度よく読み取るために、前記可視画像の近赤外光吸収率が5%以下であることが好ましい。さらに、本発明の画像形成方法に用いられる画像出力媒体は、本発明の電子写真用トナーを用いて画像形成可能なものであれば特に限定されるものではないが、画像出力媒体表面に直接不可視画像が形成される場合には、近赤外域の波長を吸収しないものが好ましく、また、不可視トナーがチタニア粒子等の白色顔料を添加してなるものである場合は、白色または白色度の高いものが好ましい。
上記のように、本発明の画像形成方法により、画像出力媒体表面に形成された2次元パターンからなる不可視画像は、波長700nm以上の領域、即ち肉眼で見ることができず、近赤外光領域において、特定の手段によって読み取りが可能となる。具体的な読み取り手段としては、例えば、赤外光成分を有する照明を記録用紙に照射しつつ、赤外光に感度を有するイメージセンサで記録用紙上の画像を読み取ることができる。
上記の2次元パターンからなる不可視画像は、例えば、特定の記録フォーマットを採用し、暗号鍵の付与、読み取り誤り補正(パリティ)付与等の公知技術を盛り込むことにより、機密性に優れ、かつ高精度/高密度な情報、例えば著作権、本物認識符号、データリンクアドレス、画像デジタル情報登録等をパターン化(エンコード)し、必要に応じ近赤外光領域による光学的読み取り・複合化(デコード)することができる。
(画像形成装置を用いた本発明の画像形成方法の具体例)
以下、本発明の画像形成方法を、画像形成装置を用いた実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明においては、画像形成装置の一例として、電子写真法により、不可視画像を形成する画像形成装置と、不可視画像と共に可視画像を同時に形成する画像形成装置と、を例に挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
図4は、本発明の画像形成方法により不可視画像を形成するための、画像形成装置の構成例を示す概略図である。図示した画像形成装置100は、像担持体101、帯電器102、像書き込み装置103、現像器104、転写ロール105、クリーニングブレード106等からなる画像形成手段を備えている。
像担持体101は、全体としてドラム状に形成されたもので、その外周面(ドラム表面)に感光層を有している。この像担持体101は、矢印A方向に回転可能に設けられている。帯電器102は、像担持体101を一様に帯電するものである。像書き込み装置103は、帯電器102によって一様に帯電された像担持体101に像光を照射することにより、静電潜像を形成するものである。
現像器104は、不可視トナーを収容し、この不可視トナーを、像書き込み装置103により静電潜像が形成された像担持体101表面に供給し、現像を行い、像担持体101表面にトナー像を形成する。転写ロール105は、図示しない用紙搬送手段によって矢印B方向に搬送される記録用紙(画像出力媒体)を像担持体101との間で挟持しつつ、像担持体101表面に形成された前記トナー像を記録用紙に転写するものである。クリーニングブレード106は、転写後に像担持体101表面に残った前記電子写真用トナーをクリーニング(除去)するものである。
次に、画像形成装置100による不可視画像の形成について説明する。先ず、像担持体101が回転駆動され、帯電器102によって像担持体101の表面が一様に帯電された後、この帯電された表面に、像書き込み装置103による像光が照射されて静電潜像が形成される。その後、現像器104によって、該静電潜像が形成された像担持体101表面にトナー像が形成された後、このトナー像が転写ロール105によって記録用紙表面に転写される。このとき記録用紙に転写されずに像担持体101表面に残ったトナーは、クリーニングブレード106によりクリーニングされる。こうして記録用紙表面には、視覚的に隠蔽したい付加情報などを表わす不可視画像が形成される。
なお、画像形成装置100によって、記録用紙表面に不可視画像が形成された面に、他の画像形成装置を用いて更に文字、数字、記号、模様、絵、写真画像などの可視画像を記録してもよい。この可視画像を記録する方法は、オフセット印刷、凸版印刷、凹版印刷等の一般的印刷手法はもちろんのこと、熱転写記録、インクジェット法、電子写真法等、公知の画像形成技術を任意に選択できる。
ここで、前記可視画像の形成に際しても電子写真法を用いる場合には、不可視/可視画像形成を一貫して実施することにより、生産性・機密管理性に優れた技術を提供できる。この場合の画像形成フローとしては、例えば、画像形成装置100の現像器104に、現像剤に含まれるトナーが不可視トナーのみ、イエロートナーのみ、マゼンタトナーのみ、シアントナーのみからなる現像剤を、各々収容した画像形成装置を併設し、順次画像出力媒体に重畳記録していく、一般的にタンデム方式と呼ばれる方法を用いることができる。
このように、図4に示す画像形成装置を用いて記録用紙表面に不可視画像を形成したのちに、さらにその上に可視画像を形成することにより、不可視画像を、可視画像と、記録用紙表面との間に埋め込む形で形成することができる。
なお、図4において、トナー像が転写ロール105によって記録用紙(画像出力媒体の一例)表面に転写された後に、140℃乃至210℃、好ましくは160℃乃至200℃の温度域で加熱定着させることが望ましい。
図5は、本発明の画像形成方法により不可視画像と共に可視画像を同時に形成するための、画像形成装置の構成例を示す概略図である。図示した画像形成装置200は、像担持体201、帯電器202、像書き込み装置203、ロータリー現像装置204、一次転写ロール205、クリーニングブレード206、中間転写体207、複数(図では3つ)の支持ロール208,209,210、二次転写ロール211等を備えて構成されている。
像担持体201は、全体としてドラム状に形成されたもので、その外周面(ドラム表面)に感光層を有している。この像担持体201は図5の矢印C方向に回転可能に設けられている。帯電器202は、像担持体201を一様に帯電するものである。像書き込み装置203は、帯電器202によって一様に帯電された像担持体201に像光を照射することにより、静電潜像を形成するものである。
ロータリー現像装置204は、それぞれイエロー用、マゼンタ用、シアン用、ブラック用、不可視用のトナーを収容する5つ現像器204Y,204M,204C,204K,204Fを有するものである。本装置では、画像形成のための現像剤にトナーを用いることから、現像器204Yにはイエロー色トナー、現像器204Mにはマゼンタ色トナー、現像器204Cにはシアン色トナー、現像器4Kにはブラック色トナー、現像器204Fには不可視トナーがそれぞれ収容されることになる。このロータリー現像装置204は、上記5つの現像器204Y,204M,204C,204K,204Fが順に像担持体201と近接・対向するように回転駆動することにより、それぞれの色に対応する静電潜像にトナーを転移して可視トナー像及び不可視トナー像を形成するものである。
ここで、必要とする可視画像に応じて、ロータリー現像装置204内の現像器204F以外の現像器を部分的に除去しても良い。例えば、現像器204Y、現像器204M、現像器204C、現像器204Fといった4つの現像器からなるロータリー現像装置であってもよい。また、可視画像形成用の現像器をレッド、ブルー、グリーン等の所望する色の現像剤を収容した現像器に変換して使用しても良い。
一次転写ロール205は、像担持体201との間で中間転写体207を挟持しつつ、像担持体201表面に形成されたトナー像(可視トナー像又は不可視トナー像)をエンドレスベルト状の中間転写体207の外周面に転写(一次転写)するものである。クリーニングブレード206は、転写後に像担持体201表面に残ったトナーをクリーニング(除去)するものである。中間転写体207は、その内周面を、複数の支持ロール208,209,210によって張架され、矢印D方向及びその逆方向に周回可能に支持されている。二次転写ロール211は、図示しない用紙搬送手段によって矢印E方向に搬送される記録用紙(画像出力媒体)を支持ロール210との間で挟持しつつ、中間転写体207外周面に転写されたトナー像を記録用紙に転写(二次転写)するものである。
画像形成装置200は、順次、像担持体201表面にトナー像を形成して中間転写体207外周面に重ねて転写するものであり、次のように動作する。すなわち、先ず、像担持体201が回転駆動され、帯電器202によって像担持体201の表面が一様に帯電された後、その像担持体201に像書き込み装置203による像光が照射されて静電潜像が形成される。この静電潜像はイエロー用の現像器204Yによって現像された後、そのトナー像が一次転写ロール205によって中間転写体207外周面に転写される。このとき記録用紙に転写されずに像担持体201表面に残ったイエロー色トナーは、クリーニングブレード206によりクリーニングされる。また、イエロー色のトナー像が、外周面に形成された中間転写体207は、該外周面にイエロー色のトナー像を保持したまま、一旦矢印D方向と逆方向に周回移動し、次のマゼンタ色のトナー像が、イエロー色のトナー画像の上に積層されて転写される位置に備えられる。
以降、マゼンタ、シアン、ブラックの各色についても、上記同様に帯電器202による帯電、像書き込み装置203による像光の照射、各現像器204M,204C,204Kによるトナー像の形成、中間転写体207外周面へのトナー像の転写が順次、繰り返される。
こうして中間転写体207外周面に対する4色のトナー像の転写が終了すると、これに続いて再び、像担持体201の表面が帯電器202によって一様に帯電された後、像書き込み装置203からの像光が照射されて静電潜像が形成される。この静電潜像は、不可視用の現像器204Fによって現像された後、そのトナー像が一次転写ロール205によって中間転写体207外周面に転写される。これにより、中間転写体207外周面には、4色のトナー像が重ね合わされたフルカラー像(可視トナー像)と不可視トナー像との両方が形成される。このフルカラーの可視トナー像及び不可視トナー像は二次転写ロール211により一括して記録用紙に転写される。これにより、記録用紙の画像形成面には、フルカラーの可視画像と不可視画像とが混在した記録画像が得られる。また、画像形成装置200を用いた本発明の画像形成方法では、前記画像形成面の可視画像と、不可視画像と、が重なる領域においては、不可視画像が、可視画像形成層と、記録用紙表面と、の間に形成される。
なお、図5において、トナー像が二次転写ロール211によって記録用紙(画像出力媒体の一例)表面に転写された後に、140℃乃至210℃、好ましくは160℃乃至200℃の温度域で加熱定着させることが望ましい。
図5に示す画像形成装置200を用いた本発明の画像形成方法では、図4に示す画像形成装置100を用いた本発明の画像形成方法と同様の効果に加えて、記録用紙表面に、フルカラーの可視画像の形成と、不可視画像の形成による付加情報の埋め込みと、を同時に行うことができるという効果が得られる。
また、フルカラーの可視画像と、記録用紙表面と、の間に不可視画像を形成することにより、不可視画像が常に記録用紙表面と接した状態になる。これにより、既述した不可視画像の存在の有無による光沢差が、目視検知でき、これにより例えば、機密文書等においては偽造抑止効果等を付与することができる。
さらに、画像形成時における不可視画像の解像度と、可視画像の解像度と、を異なるものとすることにより、例えば、不可視画像の読み取り後のデータ処理として、可視画像の解像度に対応する周波数成分をカットするフィルタ処理を行うことにより、不可視画像に起因する信号(データ)と、可視画像に起因するノイズ信号と、を効率良く分離して、不可視画像の判読を容易にすることができる。ちなみに、画像形成時の解像度は、像書き込み装置203による静電潜像の書き込み周波数を制御することにより調整することができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」はすべて「質量部」を意味する。
<粒度測定方法>
本発明における粒度測定について述べる。本発明において測定する粒子が2μm以上の場合、測定装置としてはコールターカウンターTA−II型(ベックマンーコールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(ベックマンーコールター社製)を使用した。
測定法としては分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5%水溶液2ml中に測定試料を10mg加える。これを前記電解液100ml中に添加した。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1分間分散処理を行い、前記コールターカウンターTA−II型により、アパーチャー径として100μmアパーチャーを用いて2〜60μmの粒子の粒度分布を測定して体積平均分布、個数平均分布を求めた。測定する粒子数は50000であった。
<結着樹脂の分子量測定方法>
本発明の静電荷象現像用トナーセットに用いる結着樹脂において、分子測定は、以下の条件で行ったものである。GPCは「HLC−8120GPC、SC−8020(東ソー(株)社製)装置」を用い、カラムは「TSKgel、SuperHM−H(東ソー(株)社製6.0mmID×15cm)」を2本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いた。実験条件としては、試料濃度0.5%、流速0.6ml/min.、サンプル注入量10μl、測定温度40℃、IR検出器を用いて実験を行った。また、検量線は東ソー社製「polystylene標準試料TSK standard」:「A−500」、「F−1」、「F−10」、「F−80」、「F−380」、「A−2500」、「F−4」、「F−40」、「F−128」、「F−700」の10サンプルから作製した。
<不可視トナーの作製に用いた近赤外光吸収材料>
不可視トナーの作製に用いた近赤外光吸収材料としては、下記の3種の内より選択して用いた。
近赤外光吸収材料(1) 本文中・式(3)に記載のナフタロシアニン系化合物
近赤外光吸収材料(2) 本文中・式(5)に記載のアミニウム系化合物
近赤外光吸収材料(3) CuO:38.1重量部、Al2O3:5重量部、P2O3:53.5重量部、K2O:3.6重量部からなるガラスを熱処理により結晶化し、粒径が数μm程度になるまで機械的に粉砕した銅燐酸結晶化ガラス
<不可視トナー粒子用結着樹脂の調整>
(結着樹脂I1)
スチレン370部、n−ブチルアクリレート30部、アクリル酸8部、四臭化炭素4部、ドデカンチオール24部を混合溶解したものを非イオン性界面活性剤(ノニポール400:三洋化成社製)6部及びアニオン性界面活性剤(ネオゲンSC:第一工業製薬社製)10部をイオン交換水550部に溶解したものをフラスコ中で分散、乳化し10分間ゆっくりと攪拌・混合しながら、過硫酸アンモニウム4gを溶解したイオン交換水50部を投入した。次いで窒素雰囲気下で温度70℃で乳化重合を行った。得られたスチレン−アクリル樹脂の重量平均分子量は48,000であった。
(結着樹脂I2)
結着樹脂I1と同様の処方を用い、重量平均分子量 36,000のスチレン−アクリル樹脂を得た。
(結着樹脂I3)
結着樹脂I1と同様の処方を用い、重量平均分子量 62,000のスチレン−アクリル樹脂を得た。
(結着樹脂I4)
結着樹脂I1と同様の処方を用い、重量平均分子量 28,000のスチレン−アクリル樹脂を得た。
(結着樹脂I5)
結着樹脂I1と同様の処方を用い、重量平均分子量 68,000のスチレン−アクリル樹脂を得た。
(結着樹脂I6)
結着樹脂I1と同様の処方を用い、重量平均分子量 24,000のスチレン−アクリル樹脂を得た。
(結着樹脂I7)
結着樹脂I1と同様の処方を用い、重量平均分子量 72,000のスチレン−アクリル樹脂を得た。
<不可視トナー粒子及び現像剤の製造>
実施例における不可視トナーは、以下の如き方法にて得られた。
(不可視トナー粒子1及び不可視画像形成用現像剤1)
結着樹脂(I1) 55部
近赤外光吸収材料(1) 40部
離型剤 (パラフィンワックスHNP−9:日本精鑞社製) 3.5部
上記よりなるトナー原料の混合物をエクストルーダーで混練し、粉砕した後、風力式分級機により細粒と、粗粒と、を分級し、体積平均粒径(平均粒径D50)が8.6μmの粒子を得た。
次に外部添加剤として、シリカ粒子(平均粒径40nm)1.5質量部をヘンシェルミキサーを用いて、先に得られた粒子100質量部に対して外部添加することにより、不可視トナー粒子(1)を得た。
該不可視トナー粒子8部及びMn−Mgフェライト粒子100部に共重合比が25/75であるスチレン・ブチルメタアクリレート共重合体10部がコーティングされたキャリア粒子100部をV型ブレンダーで混合処理し、不可視画像形成用現像剤(1)を得た。
(不可視トナー粒子2及び不可視画像形成用現像剤2)
結着樹脂(I2)を用いた以外は不可視トナー粒子1及び不可視画像形成用現像剤1と同様にして、8.3μmの不可視トナー粒子2及び不可視画像形成用現像剤2を得た。
(不可視トナー粒子3及び不可視画像形成用現像剤3)
結着樹脂(I3)を用いた以外は不可視トナー粒子1及び不可視画像形成用現像剤1と同様にして、8.7μmの不可視トナー粒子3及び不可視画像形成用現像剤3を得た。
(不可視トナー粒子5及び不可視画像形成用現像剤5)
結着樹脂(I5)を用いた以外は不可視トナー粒子1及び不可視画像形成用現像剤1と同様にして、8.9μm不可視トナー粒子5及び不可視画像形成用現像剤5を得た。
(不可視トナー粒子6及び不可視画像形成用現像剤6)
結着樹脂(I6)を用いた以外は不可視トナー粒子1及び不可視画像形成用現像剤1と同様にして、8.1μmの不可視トナー粒子6及び不可視画像形成用現像剤6を得た。
(不可視トナー粒子7及び不可視画像形成用現像剤7)
結着樹脂(I7)を用いた以外は不可視トナー粒子1及び不可視画像形成用現像剤1と同様にして、8.9μmの不可視トナー粒子7及び不可視画像形成用現像剤7を得た。
(不可視トナー粒子8及び不可視画像形成用現像剤8)
近赤外光吸収材料(2)を用いた以外は不可視トナー粒子1及び不可視画像形成用現像剤1と同様にして、8.6μmの不可視トナー粒子8及び不可視画像形成用現像剤8を得た。
(不可視トナー粒子9及び不可視画像形成用現像剤9)
近赤外光吸収材料(3)を用いた以外は不可視トナー粒子1及び不可視画像形成用現像剤1と同様にして、8.6μmの不可視トナー粒子9及び不可視画像形成用現像剤9を得た。
(不可視トナー粒子10及び不可視画像形成用現像剤10)
離型剤添加量を2.0部とした以外は不可視トナー粒子1及び不可視画像形成用現像剤1と同様にして、8.6μmの不可視トナー粒子9及び不可視画像形成用現像剤9を得た。
(不可視トナー粒子11及び不可視画像形成用現像剤11)
離型剤添加量を5.0部とした以外は不可視トナー粒子1及び不可視画像形成用現像剤1と同様にして、8.6μmの不可視トナー粒子9及び不可視画像形成用現像剤9を得た。
(不可視トナー粒子12及び不可視画像形成用現像剤12)
離型剤添加量を1.5部とした以外は不可視トナー粒子1及び不可視画像形成用現像剤1と同様にして、8.6μmの不可視トナー粒子9及び不可視画像形成用現像剤9を得た。
(不可視トナー粒子13及び不可視画像形成用現像剤13)
離型剤添加量を6.0部とした以外は不可視トナー粒子1及び不可視画像形成用現像剤1と同様にして、8.6μmの不可視トナー粒子9及び不可視画像形成用現像剤9を得た。
<カラートナー粒子用結着樹脂の調整>
(結着樹脂C1)
イソフタル酸101部とビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物180部及びジブチル錫オキサイド5.4部をフラスコに投入し、窒素雰囲気下で温度230℃で脱水縮合反応を行った。得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量は16,000であった。
(結着樹脂C2)
C1と同様の処方を用い、重量平均分子量 21,000のポリエステル樹脂を得た。
(結着樹脂C3)
C1と同様の処方を用い、重量平均分子量12,000のポリエステル樹脂を得た。
(結着樹脂C4)
C1と同様の処方を用い、重量平均分子量8,000のポリエステル樹脂を得た。
(結着樹脂C5)
C1と同様の処方を用い、重量平均分子量24,000のポリエステル樹脂を得た。
(結着樹脂C6)
C1と同様の処方を用い、重量平均分子量35,000のポリエステル樹脂を得た。
(結着樹脂C7)
C1と同様の処方を用い、重量平均分子量39,000ポリエステル樹脂を得た。
<カラートナー粒子及び現像剤の製造>
(マゼンタトナー粒子1及びマゼンタ現像剤1)
結着樹脂(C1) 65部
C.I.ピグメント・レッド57:1 30部
離型剤 (パラフィンワックスHNP−9:日本精鑞社製) 10部
上記材料を用いた以外は(不可視トナー粒子1及び不可視画像形成用現像剤1)と同様にして、8.3μmのマゼンタトナー粒子1及びマゼンタ現像剤1を得た。
(シアントナー粒子1及びシアン現像剤1)
顔料として、C.I.ピグメント・ブルー15:3を用いた以外は、マゼンタトナー粒子1及びマゼンタ現像剤1と同様にして、8.4μmのシアントナー粒子1及びシアン現像剤1を得た。
(イエロートナー粒子1及びイエロー現像剤1)
顔料として、C.I.ピグメント・イエロー12を用いた以外は、マゼンタトナー粒子1及びマゼンタ現像剤1と同様にして、8.3μmのイエロートナー粒子1及びイエロー現像剤1を得た。
(カラー画像用現像剤セット1)
マゼンタ現像剤1、シアン現像剤1、イエロー現像剤1よりなる現像剤セットをカラー画像用現像剤セット1とした。
(カラー画像用現像剤セット2)
各々のトナー粒子に用いる結着樹脂に結着樹脂(C2)を用いた以外はカラー画像用現像剤セット1と同様にしてカラー画像用現像剤セット2を調整した。
なお、各々のトナー粒子粒径は、以下のようであった。
マゼンタトナー粒子2:8.6μm、シアントナー粒子2:8.3μm、イエロートナー粒子2:8.4μm
(カラー画像用現像剤セット3)
各々のトナー粒子に用いる結着樹脂に結着樹脂(C3)を用いた以外はカラー画像用現像剤セット1と同様にしてカラー画像用現像剤セット3を調整した。
なお、各々のトナー粒子粒径は、以下のようであった。
マゼンタトナー粒子3:8.1μm、シアントナー粒子3:8.3μm、イエロートナー粒子3:8.2μm
(カラー画像用現像剤セット4)
各々のトナー粒子に用いる結着樹脂に結着樹脂(C4)を用いた以外はカラー画像用現像剤セット1と同様にしてカラー画像用現像剤セット4を調整した。
なお、各々のトナー粒子粒径は、以下のようであった。
マゼンタトナー粒子4:8.0μm、シアントナー粒子4:8.1μm、イエロートナー粒子4:8.1μm
(カラー画像用現像剤セット5)
各々のトナー粒子に用いる結着樹脂に結着樹脂(C5)を用いた以外はカラー画像用現像剤セット1と同様にしてカラー画像用現像剤セット5を調整した。
なお、各々のトナー粒子粒径は、以下のようであった。
マゼンタトナー粒子5:8.5μm、シアントナー粒子5:8.5μm、イエロートナー粒子5:8.4μm
(カラー画像用現像剤セット6) 各々のトナー粒子に用いる結着樹脂に結着樹脂(C6)を用いた以外はカラー画像用現像剤セット1と同様にしてカラー画像用現像剤セット6を調整した。
なお、各々のトナー粒子粒径は、以下のようであった。
マゼンタトナー粒子5:8.6μm、シアントナー粒子5:8.5μm、イエロートナー粒子5:8.5μm
(カラー画像用現像剤セット7)
各々のトナー粒子に用いる結着樹脂に結着樹脂(C7)を用いた以外はカラー画像用現像剤セット1と同様にしてカラー画像用現像剤セット7を調整した。
なお、各々のトナー粒子粒径は、以下のようであった。
マゼンタトナー粒子5:8.9μm、シアントナー粒子5:8.6μm、イエロートナー粒子5:8.7μm
<実施例1>
カラー画像用現像剤セット1及び不可視画像形成用現像剤1を組合せ、静電荷像現像用現像剤セットとした。
<実施例2>
カラー画像用現像剤セット1及び不可視画像形成用現像剤2を組合せ、静電荷像現像用現像剤セットとした。
<実施例3>
カラー画像用現像剤セット1及び不可視画像形成用現像剤3を組合せ、静電荷像現像用現像剤セットとした。
<実施例4>
カラー画像用現像剤セット2及び不可視画像形成用現像剤3を組合せ、静電荷像現像用現像剤セットとした。
<実施例5>
カラー画像用現像剤セット3及び不可視画像形成用現像剤2を組合せ、静電荷像現像用現像剤セットとした。
<実施例6>
カラー画像用現像剤セット1及び不可視画像形成用現像剤10を組合せ、静電荷像現像用現像剤セットとした。
<実施例7>
カラー画像用現像剤セット1及び不可視画像形成用現像剤11を組合せ、静電荷像現像用現像剤セットとした。
<実施例8>
カラー画像用現像剤セット1及び不可視画像形成用現像剤8を組合せ、静電荷像現像用現像剤セットとした。
<実施例9>
カラー画像用現像剤セット1及び不可視画像形成用現像剤9を組合せ、静電荷像現像用現像剤セットとした。
<実施例10>
カラー画像用現像剤セット6及び不可視画像形成用現像剤7を組合せ、静電荷像現像用現像剤セットとした。
<実施例11>
カラー画像用現像剤セット4及び不可視画像形成用現像剤4を組合せ、静電荷像現像用現像剤セットとした。
<比較例1>
カラー画像用現像剤セット1及び不可視画像形成用現像剤4を組合せ、静電荷像現像用現像剤セットとした。
<比較例2>
カラー画像用現像剤セット1及び不可視画像形成用現像剤5を組合せ、静電荷像現像用現像剤セットとした。
<比較例3>
カラー画像用現像剤セット5及び不可視画像形成用現像剤6を組合せ、静電荷像現像用現像剤セットとした。
<比較例4>
カラー画像用現像剤セット5及び不可視画像形成用現像剤7を組合せ、静電荷像現像用現像剤セットとした。
<比較例5>
カラー画像用現像剤セット1及び不可視画像形成用現像剤12を組合せ、静電荷像現像用現像剤セットとした。
<比較例6>
カラー画像用現像剤セット1及び不可視画像形成用現像剤13を組合せ、静電荷像現像用現像剤セットとした。
<比較例7>
カラー画像用現像剤セット7及び不可視画像形成用現像剤7を組合せ、静電荷像現像用現像剤セットとした。
このようにして得られた現像剤セットを用いて、画像形成装置を用いて画像形成テストを実施し、各種評価を行った。
[画像形成装置による画像形成]
<画像形成装置>
実施例1乃至11および比較例1乃至7に準じて作製した静電荷像現像用現像剤セットによる画像形成テストには、画像形成装置として、図5に示す富士ゼロックス社製のDocuCenterColor400改造機を用いた。この画像形成装置は加熱定着ユニットを外してあり、現像、転写により画像出力媒体上に形成されたトナー画像を、画像出力媒体に対して溶融定着されない形態で取り出すことが可能となっている。なお、イエロー用現像器、マゼンタ用現像器、シアン用現像器には、各々の色に対応した実施例および比較例に用いられるカラー画像用現像剤を充填し、ブラック用現像器には同じく不可視画像形成用現像剤を充填して画像形成を行った。
実施例8においては、不可視画像形成用現像剤をイエロー用現像器に充填し、以下マゼンタ用現像器、シアン用現像器、ブラック用現像器にそれぞれイエロー現像剤、マゼンタ現像剤、シアン用現像剤を充填した以外は上記と同様にして画像形成を行った。
また、画像形成テストに用いた画像出力媒体としては、A4サイズ白色紙(富士ゼロックス社製、J紙幅:210mm、長さ:297mm)を使用した。なお、後述するJIS規格「Z8741」に定められるところの60度鏡面光沢度測定を用い、画像出力媒体の60度鏡面光沢度Gs(60°)を測定した結果、上記富士ゼロックス社製のJ紙は、Gs(60°)=5.3%であった。
<画像形成及び定着画像サンプルの作成>
上記の現像剤を用いて、画像形成装置により画像出力媒体表面に画像形成されて得られた記録物は、その画像形成面に、可視画像および不可視画像が形成され、該可視画像は、電子写真学会テストチャートNo.5−1を用いて出力された画像である。一方、前記不可視画像は、図1に示したような回転角度が異なる2種の微小ラインビットマップで形成される機械読み取り・復号化可能な2次元パターンからなるものである。
上記の画像を、外部定着器(富士ゼロックス社製・DCC400用定着装置を本体から取り外し、ロール加熱温度を任意に制御できるよう改造したもの)を用い、Nip6.5mm下、定着速度定着速度180mm/secにて、定着温度を140℃から220℃まで10℃毎に上昇させつつ定着し、評価に供する画像サンプルを作成した。
<品質評価>
<不可視情報復元率>
不可視情報復元率の評価は、記録物1の画像形成面を、該画像形成面のほぼ真上10cmのところに設置した近赤外の波長域の光も照射するリング状LED光源(京都電気製、LEB−3012CE)にて照射した。この状態で、画像形成面のほぼ真上15cmのところに設置した、800nm以下の波長成分をカットするフィルタをレンズ部に装着した800nm〜900nmの波長域に受光感度を有するCCDカメラ(KEYENCE製、CCD TL−C2)によって、前記画像形成面を読み取り、一定のコントラスト(閾値)を境界として2値化処理することにより不可視画像を抽出し、これをソフトウエアで復号化処理し、著作権情報が正確に復元できるかどうかを評価した。そして、この評価は500回実施した際に、情報が正確に復元できた回数を、不可視情報復元率(%)として表2に示した。なお、不可視情報復元率(%)が85%以上であれば、実用上問題無いレベルとした。
<不可視情報の視認性>
各温度にて定着した画像サンプルについて、無作為に抽出された20名のモニターにより、視認性の評価を以下の判定基準により行った。
○:20名全員が不可視情報を視認できなかった。
△:不可視情報を視認でできた人数が20名中の2名以下であった。
×:不可視情報を視認でできた人数が20名中の2名以上、10名以下であった。
××:不可視情報を視認でできた人数が20名中の10名以上であった。
<カラー画像の画質>
JIS規格「Z8741」に定められるところの鏡面光沢度において、60度鏡面光沢度Gs(60°)測定方法を用いて、定着温度:170℃における、カラー画像及び不可視画像が重複している部分の画像表面光沢度を測定した。表面光沢度Gs(60°)≧50%であれば画質上問題ないレベルと判断した。なお、上記光沢度は、Gardner社製の光沢度計「マイクロ−トリ−グロス光沢計」を用いた。
<画像間の密着性>
定着温度:160℃における、カラー画像及び不可視画像が重複している画像部位を折り曲げた後に再度開き、その折り目部分の欠損程度を目視で判断した。なお、判断基準は下記のようにしており、△以上が問題ないレベルである。
○:全く欠損の無い状態。
△:欠損が見られるものの、断続的な状態。
×:線上の欠損が発生。
本発明における実施例及び比較例に対して上記評価を行った結果を表1乃至表4に記載する。
11 不可視画像、12 画像出力媒体、13 拡大部分、14 微小ライン単位、15 ビット情報イメージ、21 記録物、22 不可視画像、100 画像形成装置、101 像担持体、102 帯電器、103 像書き込み装置、104 現像器、105 転写ロール、106 クリーニングブレード、200 画像形成装置、201 像担持体、202 帯電器、203 像書き込み装置、204 ロータリー現像装置、204Y イエロー用現像器、204M マゼンタ用現像器、204C シアン用現像器、204K ブラック用現像器、204F 不可視用現像器、205 一次転写ロール、206 クリーニングブレード、207 中間転写体、208,209,210 支持ロール、211 ニ次転写ロール。