以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
(A)カラー画像形成方法
本発明の第一実施形態は、黒トナーおよびカラートナーを有する静電荷像現像用トナーを用いたカラー画像形成方法において、前記黒トナーおよび前記カラートナーが、非晶性ポリエステル樹脂、着色剤および炭化水素ワックスを含み、前記黒トナー中の非晶性ポリエステル樹脂および前記カラートナー中の非晶性ポリエステル樹脂のピーク分子量Mpの差が25,000未満、かつ重量平均分子量Mwの差が30,000未満であり、前記黒トナーおよび前記カラートナーの架橋度の差が5〜20の範囲であることを特徴とするカラー画像形成方法である。本実施形態の好適な形態としては、上記カラー画像形成方法において、前記静電荷像現像用トナーを中間転写体に転写する工程を有することを特徴とするものである。かかる構成を有することにより、上記した発明の効果を奏することができるものである。
以下、黒トナーおよびカラートナーを有するトナー(静電荷像現像用トナー)を用い、当該トナーを中間転写体に転写する工程を有するカラー画像形成方法について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明のカラー画像形成方法に係わるカラー画像形成装置の一実施形態を示す断面概要図である。
先ず、検知センサ、二次転写装置が装着されているカラー電子写真用の画像形成装置についてその概略を説明する。
画像形成装置GSは、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、中間転写体36の移動方向に沿って黒トナー及び黒トナー以外のカラートナー(イエロー、マゼンタ及びシアントナー)の各カラートナー像(黒トナー像を含む)を形成する画像形成ユニットを配置し、各画像形成ユニットの像担持体上に形成したカラートナー像を中間転写体上に多重転写して重ね合わせた後、画像支持体上に一括転写するものである。
図1において、画像形成装置GSの上部を占める位置に配設される画像読取装置SC上に載置された原稿画像が光学系により走査露光され、ラインイメージセンサCCDに読み込まれ、ラインイメージセンサCCDにより光電変換されたアナログ信号は、画像処理部において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等を行った後、画像書込手段としての露光光学系33に画像データ信号を送る。
中間転写体36としてはドラム式のものや無端ベルト式のものがあり、何れも同じような機能を有するものであるが、以下の説明においては中間転写体としては無端ベルト状の中間転写体(単に中間転写ベルトともいう)36を指すことにする。
又、図1において、中間転写体36の周縁部には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び黒色(K)の各色毎の画像形成用として4組のプロセスユニット100が設けられている。プロセスユニット100はカラートナー像の形成手段として、図の矢印で示す鉛直方向の中間転写体36の回転方向に対して、中間転写体36に沿って垂直方向に縦列配置され、Y、M、C、Kの順に配置されている。
4組のプロセスユニット100は何れも共通した構造であり、それぞれ、感光体ドラム31と、帯電手段としての帯電器32と、画像書込手段としての露光光学系33と、現像装置34と、像担持体クリーニング手段としての感光体クリーニング装置190とからなっている。
感光体ドラム31は、例えば外径が40〜100mm程度のアルミニウム等の金属性の部材によって形成される円筒状の基体の外周に、層厚(膜厚)20〜40μm程度の感光層を形成したものである。感光体ドラム31は、図示しない駆動源からの動力により、基体を接地された状態で矢印の方向に、例えば80〜280mm/s程度で、好ましくは220mm/sの線速度で回転される。
感光体ドラム31の周りには、帯電手段としての帯電器32、画像書込手段としての露光光学系33、現像装置34を1組とした画像形成部が、図の矢印にて示す感光体ドラム31の回転方向に対して配置される。
帯電手段としての帯電器32は、感光体ドラム31の回転軸に平行な方向で感光体ドラム31と対峙し近接して取り付けられる。帯電器32は、感光体ドラム31の感光層に対し所定の電位を与えるコロナ放電電極としての放電ワイヤを備え、トナーと同極性のコロナ放電によって帯電作用(本実施形態においてはマイナス帯電)を行い、感光体ドラム31に対し一様な電位を与える。
画像書込手段である露光光学系33は、不図示の半導体レーザ(LD)光源から発光されるレーザ光を、回転多面鏡(符号なし)により主走査方向に回転走査し、fθレンズ(符号なし)、反射ミラー(符号なし)等を経て感光体ドラム31上を画像信号に対応する電気信号による露光(画像書込)を行い、感光体ドラム31の感光層に原稿画像に対応する静電潜像を形成する。
現像手段としての現像装置34は、感光体ドラム31の帯電極性と同極性に帯電されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び黒色(K)の各色の現像剤(トナーに磁性体を含有させた一成分磁性トナーの現像剤、トナーとキャリアとを混合した2成分現像剤、非磁性トナーを単独で使用する現像剤等)を収容し、例えば厚み0.5〜1mm、外径15〜25mmの円筒状の非磁性のステンレス或いはアルミニウム材で形成された現像剤担持体である現像ローラ34aを備えている。現像ローラ34aは、突き当てコロ(不図示)により感光体ドラム31と所定の間隙、例えば100〜1000μmをあけて非接触に保たれ、感光体ドラム31の回転方向と同方向に回転するようになっており、現像時、現像ローラ34aに対してトナーと同極性(本実施形態においてはマイナス極性)の直流電圧或いは直流電圧に交流電圧を重畳する現像バイアス電圧を印加することにより、感光体ドラム31上の露光部に対して反転現像が行われる。
中間転写体36は、体積抵抗率が1.0×107〜1.0×109Ω・cm程度で、表面抵抗率が1.0×1010〜1.0×1012Ω/□程度の半導電性の無端状(シームレス)の樹脂ベルトが用いられる。樹脂ベルトとしては、変性ポリイミド、熱硬化ポリイミド、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ナイロンアロイ等のエンジニアリングプラスチックに導電材料を分散した厚さ0.05〜0.5mmの半導電性の樹脂フィルムを用いることができる。中間転写体36としては、この他に、シリコーンゴム或いはウレタンゴム等に導電材料を分散した厚さ0.5〜2.0mmの半導電性ゴムベルトを使用することもできる。中間転写体36はテンションローラ36a及び二次転写部材と対峙するバックアップローラ36Bを含む複数のローラ部材により巻回され、鉛直方向に回動可能に支持されている。
各色毎の第1の転写手段としての一次転写ローラ37は、例えばシリコーンやウレタン等の発泡ゴムを用いたローラ状の導電性部材からなり、中間転写体36を挟んで各色毎の感光体ドラム31に対向して設けられ、中間転写体36の背面を押圧して感光体ドラム31との間に転写域を形成する。一次転写ローラ37には定電流制御によりトナーと反対極性(本実施形態においてはプラス極性)の直流定電流が印加され、転写域に形成される転写電界によって、感光体ドラム31上のトナー像が中間転写体36上に転写される。
中間転写体36上に転写されたトナー像は画像支持体Pに転写される。中間転写体36の周上には、パッチ像トナーの濃度を測定する検知センサ38が設置されている。
中間転写体36上の残留トナーをクリーニングするために、クリーニングブレード191を備えたクリーニング装置190Aが設けられている。
更に、二次転写部材37A上のパッチ像トナーをクリーニングするために、二次転写装置70が設けられている。
次に、上記画像形成装置を用いた画像形成方法(画像形成プロセス(工程))について説明する。
画像記録のスタートにより不図示の感光体駆動モータの始動によりYの感光体ドラム31が図の矢印で示す方向へ回転され、Yの帯電器32によってYの感光体ドラム31に電位が付与される。Yの感光体ドラム31は電位を付与された後、Yの露光光学系33によって第1の色信号すなわちYの画像データに対応する電気信号による露光(画像書込)が行われ、Yの感光体ドラム31上にイエロー(Y)の画像に対応する静電潜像が形成される。この潜像はYの現像装置34により反転現像され、Yの感光体ドラム31上にイエロー(Y)のトナーからなるトナー像が形成される。Yの感光体ドラム31上に形成されたYのトナー像は一次転写手段としての一次転写ローラ7により中間転写体36上に転写される。
(トナーを中間転写体に転写する工程)
次いで、Mの帯電器32によってMの感光体ドラム31に電位が付与される。Mの感光体ドラム31は電位を付与された後、Mの露光光学系33によって第1の色信号すなわちMの画像データに対応する電気信号による露光(画像書込)が行われ、Mの感光体ドラム31上にマゼンタ(M)の画像に対応する静電潜像が形成される。この潜像はMの現像装置34により反転現像され、Mの感光体ドラム31上にマゼンタ(M)のトナーからなるトナー像が形成される。Mの感光体ドラム31上に形成されたMのトナー像は、一次転写手段としての一次転写ローラ37によりYのトナー像に重ね合わせて中間転写体36上に転写される。
同様のプロセスにより、Cの感光体ドラム31上に形成されたシアン(C)のトナーからなるトナー像と、Kの感光体ドラム31上に形成された黒色(K)のトナーからなるトナー像が順次中間転写体36上に重ね合わせて形成され、中間転写体36の周面上に、Y、M、C及びKのトナーからなる重ね合わせのカラートナー像が形成される。以上のプロセスが、本実施形態のトナーを中間転写体に転写する工程である。
転写後のそれぞれの感光体ドラム31の周面上に残ったトナーは感光体クリーニング装置190によりクリーニングされる。
一方、給紙カセット50A、50B、50C内に収容された記録紙としての画像支持体Pは、給紙カセット50A、50B、50Cにそれぞれ設けられる送り出しローラ51及び給紙ローラ52Aにより給紙され、搬送路52上を搬送ローラ52B、52C、52Dによって搬送され、レジストローラ53を経て、トナーと反対極性(本実施形態においてはプラス極性)の電圧が印加される二次転写手段としての二次転写部材37Aに搬送され、二次転写部材37Aの転写域において、中間転写体36上に形成された重ね合わせのカラートナー像(カラー画像)が画像支持体P上に一括して転写される。
カラー画像が転写された画像支持体Pは、定着装置47の加熱ローラ47aと加圧ベルト47bとにより形成されるニップ部において加熱加圧されて定着され、排紙ローラ54に挟持されて機外の排紙トレイ55上に載置される。
二次転写手段としての二次転写部材37Aにより画像支持体P上にカラー画像が転写された後、画像支持体Pを曲率分離した中間転写体36上の残留トナーは、中間転写体クリーニング装置190Aに備えられたクリーニングブレード191により除去される。
更に、二次転写部材37A上のパッチ像トナーは、二次転写装置70のクリーニングブレード71によりクリーニングされる。
上述したように、本実施形態のカラー画像形成方法では、トナーとして黒トナーおよびカラートナー(Y、M、Cトナー)を中間転写体に転写する工程を有するものである。上記工程を有する画像形成方法において、記黒トナー中の非晶性ポリエステル樹脂と前記カラートナー中の非晶性ポリエステル樹脂の分子量差を小さくすることで、定着時の熱エネルギーに対する溶融性の差も小さくなるため、全色差がなく、同レベルの低温定着性を有する(好ましくは同レベルでより低温定着性を向上させる)ことが可能である。その結果、プリントスピードの高速化、環境負荷低減等を目的とした、より一層の省エネルギー化を図ることができる。ただし、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び黒色(K)の4色同程度の強度のトナーを使用する場合、中間転写ベルト36とクリーニングブレード191との間の一定の摩擦力に対しては強いが、摩擦力が変化した場合など、脆い傾向を示す。そこで、本実施形態の画像形成方法では、色間で、不溶分の量に差をつけ、架橋度の差が5〜20の範囲にある前記黒トナーと前記カラートナーとを混合して使用することで、単純に硬いだけでなく、硬度と弾性とを併せ持つことが出来るため、トナーの破砕、融着が起こりにくくなり、フィルミング発生を効果的に抑制することができるものである。また、不溶分は、可溶分に対する溶解性は小さいため、架橋度の差がこの範囲内であれば定着性に影響を及ぼすことがない点でも優れている。
次に、本実施形態のカラー画像形成方法で用いるトナーにつき、説明する。
本実施形態のカラー画像形成方法で用いるトナーは、非晶性ポリエステル樹脂、着色剤、炭化水素ワックスを含むトナーとして黒トナーおよびカラートナーを有し、前記黒トナー中の非晶性ポリエステル樹脂と前記カラートナー中の非晶性ポリエステル樹脂のピーク分子量Mpの差が25,000未満、かつ重量平均分子量Mwの差が30,000以下であり、前記黒トナーおよび前記カラートナーの架橋度の差が5〜20の範囲であることを特徴とするものである。これらにより、上記した発明の効果を有効に発現し得るものである。
(1)画像形成方法に用いるトナーの種類(構成)
本実施形態のカラー画像形成方法で用いるトナーとしては、黒色(K)のトナー(黒トナーという)およびカラートナーを有するものである。ここで、前記カラートナーには、黒トナーは含まず、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)トナーを含むのが好ましい。イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)トナーを用いることにより、高画質のフルカラー画像を形成することができる点で優れている。前記カラートナーには、Y、M、Cトナー以外の他の有彩色のトナー(例えば、オレンジ、バイオレットトナーなど)をさらに含んでもよい。これらの他の有彩色のトナーを更に含むことで、フルカラーの高精細化および色再現範囲の拡大が可能となる点で優れている。
これら黒トナー及びカラートナーは、2次色を形成するトナーである。2次色を形成するトナーとは、使用される色材の基本色であるイエロー系着色剤を含有したイエロー(Y)トナー、マゼンタ系着色剤を含有したマゼンタ(M)トナー、シアン系着色剤を含有したシアン(C)トナー、およびブラック系着色剤を含有した黒(K)トナーから選ばれる2色のトナー像を重ねて形成する色のことである。かかる2次色を形成するトナーは、黒トナー及びカラートナーからなり、上記したイエロー(Y)トナー、マゼンタ(M)トナー、シアン(C)トナー、黒(K)トナー(以下、単にYMCKも略記する)を基本とする。こうしたYMCKを基本とするトナーは、各トナーの重ね合わせにより、様々な色調の画像を形成できる。よって、それらは、定着時の熱により、相互に良く融合することが望ましい。黒トナー及びカラートナーの各トナーの結着樹脂は、低温定着が可能なポリエステル樹脂を含むことが望ましく、さらに、高画質化が求められる黒トナー及びカラートナーは、乳化会合法で製造されることが好ましい。
(2)黒トナーとカラートナーとの架橋度差について
上記したように、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び黒色(K)の4色同程度の強度のトナーを使用する場合、中間転写ベルトとクリーニングブレードとの間の一定の摩擦力に対しては強いが、摩擦力が変化した場合など、脆い傾向を示す。そこで、本実施形態の画像形成方法では、色間で、不溶分の量に差をつけ、架橋度の差が5〜20の範囲にあるトナーを混合して使用することで、単純に硬いだけでなく、硬度と弾性とを併せ持つことが出来るため、トナーの破砕、融着が起こりにくくなり、フィルミング発生を効果的に抑制することができるものである。かかる観点から、前記黒トナーおよび前記カラートナーの架橋度の差が5〜20の範囲とするのがよく、7〜20の範囲がより好ましい。本実施形態では、黒トナーとカラートナーの架橋度は、どちらが高くてもよい。すなわち、前記カラートナーの架橋度よりも前記黒トナーの架橋度の方が高くてもよいし、前記黒トナーの架橋度よりも前記カラートナーの架橋度の方が高くてもよい。いずれの場合でも、架橋度の差が5〜20の範囲にあるトナーを混合して使用することで上記した効果を有効に発現し得るためである。ここで、黒トナーとカラートナーの架橋度の差が5より小さいと、中間転写ベルトとクリーニングブレード間の摩擦力変化に対し弱くなりフィルミングを生じる点で好ましくない。一方、黒トナーとカラートナーの架橋度の差が20より大きいと、架橋分のトナー可溶分に対する影響は無視できず、色毎で定着下限温度に差を生じる点で好ましくない。なお、カラートナーは、通常、Yトナー、Mトナー、Cトナーというように複数色のトナーを用いることから、これら複数色のトナーの架橋度の平均値をカラートナーの架橋度とする。カラートナーに用いる複数色のトナーの架橋度の差は、色毎の定着下限温度の差低減の観点から、小さいほど好ましく、0〜5が好ましく、より好ましくは0〜3である。
黒トナーとカラートナーの架橋度差の調整、すなわち、黒トナーの架橋度とカラートナーの架橋度の調整は、後述する実施例に示すように、トナー粒子の製造工程である<架橋工程>での(融合工程において得られた)未架橋のトナー粒子が形成された反応系へのラジカル重合開始剤(過硫酸カリウム等)の添加量、およびラジカル重合反応時間を適宜調整することで任意の架橋度(更には架橋度差)に調整することができる。但し、本実施形態では、かかる黒トナーとカラートナーの架橋度差の調整方法に何ら制限されるものではなく、例えば、トナー中の金属イオン量などを適宜調整することで任意の架橋度(更には架橋度差)に調整することができる。
黒トナー及びカラートナーの架橋度は、トナー粒子中の有機溶剤に対する不溶分を測定することで算出(測定方法は以下に記載)することができる。
(架橋度の算出のためのトナー粒子中の有機溶剤に対する不溶分の測定方法)
トナー粒子中の有機溶剤(ここでは、メチルエチルケトン(MEK)を例に取り説明する)に対する不溶分を測定することで算出する。
(i)トナー1gとメタノール100gとを200mlのビーカーに秤量し、混合、超音波洗浄機にて30分間超音波をかけた後、濾過、トナーを取り出し、シャーレに入れて24時間静置、乾燥する(トナーから外添剤の除去;トナー粒子を得る。)。
(ii)上記(i)の工程で得られたトナー粒子0.2gから0.3gを25mlのナスフラスコに直接秤量し、20mlのMEKを入れ、24時間還流条件にて加熱する。
(iii)上記(ii)の工程後、ナスフラスコの内容物を遠心分離用ステンレス管に移す。
(iv)再度、上記(ii)の工程で用いたナスフラスコにMEK 20mlを入れ、ナスフラスコを洗浄して、上記(iii)の工程で用いたステンレス管に移し、密閉する。
(v)上記(iv)の工程後のステンレス管を遠心分離器にセットし、回転数20,000rpm、20℃の条件で30分間遠心分離を行う。
(vi)上記(v)の工程後のステンレス管を遠心分離器から取り出し、室温になるまで静置する。
(vii)上記(vi)の工程後のステンレス管を開封し、ステンレス管内の上澄みを5ml秤量し、質量を測定したアルミ皿に取り出し、アルミ皿をホットプレート上で加熱してMEKを蒸発させる。
(viii)上記(vii)の工程後のアルミ皿を50℃の真空乾燥機で24時間乾燥させ、これを5ml中のMEK溶解分として、アルミ皿の質量と合わせて秤量する。
(ix)下記の式により、トナー粒子中のMEK不溶分の含有量を算出する。このトナー粒子中のMEK不溶分の含有量をトナーの架橋度と定義する。即ち、このトナー粒子中のMEK不溶分の含有量が20質量%であれば、このトナーの架橋度は20%となる。
以上が、架橋度の算出のためのトナー粒子中の有機溶剤に対する不溶分の測定方法であるが、後述する実施例のように製造段階で測定する場合には、上記(i)の工程により外添剤を除去する必要がないことから、上記(ii)以降の工程を行えばよい。
(3)黒トナーの中の非晶性ポリエステル樹脂と前記カラートナー中の非晶性ポリエステル樹脂の分子量及び分子量差について
本実施形態では、上記したように、黒トナー中の非晶性ポリエステル樹脂と前記カラートナー中の非晶性ポリエステル樹脂との分子量差を小さくすることで、定着時の熱エネルギーに対する溶融性の差も小さくなるため、全色差がなく、同レベルの低温定着性を有することが可能である。その結果、プリントスピードの高速化、環境負荷低減等を目的とした、より一層の省エネルギー化を図ることができる。かかる観点から、前記黒トナー中の非晶性ポリエステル樹脂と前記カラートナー中の非晶性ポリエステル樹脂のピーク分子量Mpの差は、25,000未満とするのがよく、20,000以下がより好ましく、15,000以下がさらに好ましく、7,500以下が特に好ましい。前記ピーク分子量Mpの差が25,000以上だと、色間での定着下限温度に差を生じる点で好ましくない。また、上記観点から、黒トナー中の非晶性ポリエステル樹脂とカラートナー中の非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwの差は、30,000未満とするのがよく、20,000以下がより好ましく、9,500以下がさらに好ましい。重量平均分子量Mwの差が30,000以上だとピーク分子量と同様に色間での定着下限温度に差を生じる点で好ましくない。さらに、前記黒トナーおよび前記カラートナーによる全色の前記トナー中の非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは、10,000〜40,000の範囲内にあることが好ましく、12,000〜30,000の範囲内にあることがより好ましい。前記重量平均分子量Mwが10,000以上であれば、耐熱保管性の確保の点で優れており、前記重量平均分子量Mwが40,000以下であれば、低温定着性を容易に達成し得る点で優れている。なお、カラートナーは、通常、Yトナー、Mトナー、Cトナーというように複数色のトナーを用いることから、これら複数色のトナー中の非晶性ポリエステル樹脂のピーク分子量Mpの平均値をカラートナー中の非晶性ポリエステル樹脂のピーク分子量Mpとする。同様に、これら複数色のトナー中の非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwの平均値をカラートナー中の非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwとする。カラートナーに用いる複数色のトナー中の非晶性ポリエステル樹脂のピーク分子量Mpの差は、色毎の定着下限温度の差低減の観点から、小さいほど好ましく、ピーク分子量Mpの差は15,000以下が好ましく、より好ましくは7,500以下である。同様に、カラートナーに用いる複数色のトナー中の非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwの差も、色毎の定着下限温度の差低減の観点から、小さいほど好ましく、重量平均分子量Mwの差は20,000以下が好ましく、より好ましくは9,500以下である。
ピーク分子量Mpは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定されたスチレン換算分子量による分子量分布から得られるものであり、ピーク分子量Mpとは、分子量分布におけるピークトップの溶出時間に相当する分子量をいう。分子量分布におけるピークトップが複数存在する場合は、ピーク面積比率の一番大きなピークトップの溶出時間に相当する分子量をいう。
黒トナー中の非晶性ポリエステル樹脂と前記カラートナー中の非晶性ポリエステル樹脂の分子量差(ピーク分子量Mp差及び重量平均分子量Mw差)の調整、すなわち、黒トナー中の非晶性ポリエステル樹脂のピーク分子量Mp及び重量平均分子量Mwとカラートナー中の非晶性ポリエステル樹脂のピーク分子量Mp及び重量平均分子量Mwの調整は、後述する実施例に示すように、トナー粒子の結着樹脂である非晶性ポリエステル樹脂材料の製造工程である<コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液Bの製造>及び<シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−1の製造>での、非晶性ポリエステル樹脂の合成(脱水縮合反応)に用いられる各原材料を用いた脱水縮合反応時間を適宜調整することで、任意のピーク分子量Mp及び重量平均分子量Mw(更には分子量差)に調整することができる。但し、本実施形態では、かかる黒トナー中の非晶性ポリエステル樹脂とカラートナー中の非晶性ポリエステル樹脂の分子量差の調整方法に何ら制限されるものではなく、例えば、脱水縮合反応時に使用する触媒量などを適宜調整することで任意のピーク分子量Mp及び重量平均分子量Mw(更には分子量差)に調整することができる。
黒トナー中の非晶性ポリエステル樹脂及びカラートナー中の非晶性ポリエステル樹脂のピーク分子量Mp及び重量平均分子量Mwは、後述する実施例のように製造段階で測定する場合には、トナー粒子を構成する結着樹脂成分である非晶性ポリエステル樹脂の分子量をGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)で測定し、求めることができる(表1、2参照)。また、製造後に測定する場合には、上記した「架橋度の算出のためのトナー粒子中の有機溶剤に対する不溶分の測定方法」の上記(vii)工程まで行い、上記(vi)の工程後のステンレス管を開封し、ステンレス管内の上澄みを適量秤量し、有機溶剤(MEK)に溶解したトナー成分(未架橋の樹脂成分)につき、非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とに分離し、このうちの非晶性ポリエステル樹脂につき、GPCで各分子量Mp及びMwを測定することができる。これらのピーク分子量Mp及び重量平均分子量Mwは、各分子量Mp及びMwの百の桁を四捨五入した値を用いるものとする(実施例の表1、2参照)。上記したように、本実施形態の黒トナー中の非晶性ポリエステル樹脂及びカラートナー中の非晶性ポリエステル樹脂のピーク分子量Mp及び重量平均分子量Mwは、トナー粒子を構成する溶剤に可溶な樹脂成分(未架橋の樹脂成分)中の非晶性ポリエステル樹脂成分若しくは、製造段階で得られる結着樹脂成分である非晶性ポリエステル樹脂)の各分子量Mp及びMwを指すものとする。すなわち、製造段階で測定しても、製造後に測定しても、各分子量Mp及びMwの百の桁を四捨五入した値で見た場合、差異は生じないものといえる。
(4)トナー(粒子)の粒径
トナーは、転写特性の向上、画質の向上および低温定着性の観点から、その粒径が体積基準のメジアン径で3〜8μmであることが好ましい。
また、トナーの粒度分布は、CV値が0〜25%であることが好ましく、5〜20%であることがより好ましい。CV値がこの範囲であることにより、トナーの帯電特性の均一性が高くなり、形成される画像に高い濃度階調の再現性が得られる。
CV値は、下記式によって求められるものである。ただし、算術平均粒径とは25,000個のトナー粒子について、体積基準の粒子径xの平均値である。
トナーの体積基準のメジアン径および算術平均粒径は「コールターマルチサイザーIII」(ベックマン・コールター社製)によって測定されるものである。
具体的には、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナーの分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製し、このトナー分散液を、サンプルスタンド内の電解液「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が5〜10%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。測定装置において、測定粒子カウント数を25,000個、アパーチャ径を50μmにし、測定範囲1〜30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率が大きい方から50%の粒子径(体積D50%径)を体積基準のメジアン径とする。
(5)トナーの平均円形度
また、トナーを構成する個々のトナー粒子について、帯電特性の安定性、低温定着性の観点から、平均円形度が0.930〜1.000であることが好ましく、0.950〜0.995であることがより好ましい。
平均円形度が上記の範囲であることにより、個々のトナー粒子が破砕しにくくなって摩擦帯電付与部材の汚染が抑制されてトナーの帯電性が安定し、また、記録材に転写されたトナー層におけるトナー粒子の充填密度が高くなって定着性が向上し、定着オフセットが発生しにくくなる。
トナー粒子の平均円形度は、「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて測定した値である。具体的には、トナーを界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散処理を1分間行って分散させた後、「FPIA−2100」(Sysmex社製)によって、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3,000〜10,000個の適正濃度で撮影を行い、個々のトナー粒子について下記式に従って円形度を算出し、各トナー粒子の円形度を加算し、全トナー粒子数で除することにより算出した値である。HPF検出数が上記の範囲であれば、再現性が得られる。
(6)トナーのガラス転移点および軟化点
また、本発明のトナーは、そのガラス転移点(Tg)が30〜60℃、特に40〜55℃であることが好ましい。また、軟化点が70〜140℃、特に80〜110℃であることが好ましい。
ここに、ガラス転移点(Tg)および軟化点は、測定試料をトナーとしたことの他は後述の同様の方法によって測定されるものである。
(7)トナーの機械的強度
さらに、本発明のトナーは、10%変形強度が9〜50MPaである機械的強度を有することが好ましい。
この10%変形強度は、微小圧縮試験機「MCT−W201」(島津製作所社製)を用いて圧縮試験モードで測定される値である。
(8)トナーの構成部材について
本形態の画像形成方法に用いるトナー(特に黒トナーおよびカラートナー)の構成成分としては、非晶性ポリエステル樹脂、着色剤および炭化水素ワックスを含むものである。各トナー(黒トナーおよびカラートナー)では、主成分である非晶性ポリエステル樹脂等を含む結着樹脂と、各着色剤とを含み、さらに、必要に応じて離型剤等その他の添加剤、外添剤を含むものである。以下、各構成部材につき説明する。
(8−1)結着樹脂
各トナーの主成分である結着樹脂としては、低い温度でトナー画像を定着させる低温定着性の観点からは、少なくとも非晶性ポリエステル樹脂を含有するものであればよい。さらに、低温定着性およびトナーの耐熱保存性の観点からは、結着樹脂として、非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂を含有するのがより好ましく、トナーに用いられている従来のものを用いることができる。例えば、非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタレン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂などが挙げられる。
(8−2a)非晶性ポリエステル樹脂
非晶性ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂以外のポリエステル樹脂である。つまり、通常は融点(示差走査熱量(DSC)測定装置を用いて測定されるDSC曲線において、明確な吸熱ピーク)を有さず、比較的高いガラス転移点(Tg)を有するものである。より具体的には、非晶性ポリエステル樹脂の示差走査熱量測定装置によるTgは、20〜90℃であることが好ましく、特に35〜65℃であることが好ましい。非晶性ポリエステル樹脂のTgが上記の範囲にあることにより、低温定着性、定着分離性および耐画像保存性が適切に得られるため好ましい。非晶性ポリエステル樹脂のTgの測定方法は、下記の「(10)トナーの製造方法」の項で説明する。
非晶性ポリエステル樹脂の分子量(数平均分子量(Mn))、ピーク分子量(数平均分子量(Mnのピーム分子量)(Mp)、重量平均分子量(Mw)およびその測定方法は、下記の「(10)トナーの製造方法」の項で説明する。
非晶性ポリエステル樹脂の軟化点およびその測定方法は、下記の「(10)トナーの製造方法」の項で説明する。
また、非晶性ポリエステル樹脂の酸価は、5〜45mgKOH/gであることが好ましく、更に好ましくは5〜30mgKOH/gである。酸価が45mgKOH以下であれば、吸湿性が高くなることもなく、高湿度下においても帯電性が低くなるのを防止することができる点で好ましい。また、5mgKOH/g以上であれば、樹脂粒子の分散安定性を保持することができ、トナー製造が行い易い点で好ましい。ここで、酸価は、ポリエステル樹脂1gに含まれる酸を中和するのに必要な水酸化カリウム(KOH)の質量をmgで表したものである。ポリエステル樹脂の酸価は、JIS K0070−1966に準じて求めることができる。なお、以下、他の樹脂の酸価は、上記と同様にして求めることができる。
非晶性ポリエステル樹脂の他、非晶性樹脂としては、特開2011−197659号公報に記載のスチレン−アクリル系樹脂などが挙げられる。
非晶性ポリエステル樹脂は、後述の構成成分の中から任意の組合せで、従来公知の方法を用いて合成することができ、エステル交換法や直接重縮合法等を単独で、また組み合せて用いることができる。
具体的には、重合温度140℃以上270℃以下で行うことができ、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。モノマーが、反応温度下で溶解または相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助溶剤として加え溶解させてもよい。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーと、そのモノマーと重縮合予定の酸またはアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
結着樹脂である非晶性ポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂全体の50質量%以上が好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。また上限は特に制限されないが、95質量%以下が好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。かような範囲であると得られるトナーが耐ブロッキング性に優れ、低温定着性も得ることができる。
(8−2b)結晶性ポリエステル樹脂
本形態では、結着樹脂として結晶性ポリエステル樹脂を含んでも良い。結晶性ポリエステル樹脂は、特に制限されるものではなく、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂を幅広く適用することができる。ここで、結晶性ポリエステル樹脂とは、上記したポリエステル樹脂のうち、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。明確な吸熱ピークとは、具体的には、実施例に記載の示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/分で測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。上記非晶性ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂のうち、上記結晶性ポリエステル樹脂以外のポリエステル樹脂(上記した明確な吸熱ピークを有さないもの)をいう。
結晶性ポリエステル樹脂は、上記定義したとおりであれば特に限定されず、例えば、結晶性ポリエステル樹脂による主鎖に他成分を共重合させた構造を有する樹脂について、この樹脂が上記のように明確な吸熱ピークを示すものであれば、本発明でいう結晶性ポリエステル樹脂に該当する。
結晶性ポリエステル樹脂の分子量(数平均分子量(Mn))、ピーク分子量(数平均分子量(Mnのピーム分子量)(Mp)、重量平均分子量(Mw)およびその測定方法は、下記の「(10)トナーの製造方法」の項で説明する。
結晶性ポリエステル樹脂の融点及びその測定方法は、下記の「(10)トナーの製造方法」の項で説明する。
結晶性ポリエステル樹脂の酸価(AV)は5〜45mgKOH/gであることが好ましく、更に好ましくは5〜30mgKOH/gである。酸価が45mgKOH以下であれば、吸湿性が高くなることもなく、高湿度下においても帯電性が低くなるのを防止することができる点で好ましい。また、5mgKOH/g以上であれば、樹脂粒子の分散安定性を保持することができ、トナー製造が行い易い点で好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂は、後述の構成成分の中から任意の組合せで、従来公知の方法を用いて合成することができ、エステル交換法や直接重縮合法等を単独で、また組み合せて用いることができる。
具体的には、重合温度140℃以上270℃以下で行うことができ、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。モノマーが、反応温度下で溶解または相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助溶剤として加え溶解させてもよい。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーと、そのモノマーと重縮合予定の酸またはアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
結着樹脂である結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂全量に対して通常1〜30質量%、好ましくは5〜20質量%となる量とすることが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の含有量が30質量%以下であると、外添剤の埋没やフィルミングなどの発生が少ない。また、1質量%以上であると低温定着性向上の効果が効果的に得られる。
また、上記したように各トナー中には、着色剤、炭化水素ワックス(離型剤)、必要に応じて、荷電制御剤などの内添剤;無機微粒子、有機微粒子、滑材などの外添剤が含有されていてもよい。
(8−3)着色剤
各トナーには、少なくとも着色剤を含有するものである。各トナーに用いられる着色剤としては、一般に知られているカーボンブラック、磁性体、染料、顔料などを任意に使用することができ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが使用される。磁性体としては鉄、ニッケル、コバルトなどの強磁性金属、これらの金属を含む合金、フェライト、マグネタイトなどの強磁性金属の化合物、強磁性金属を含まないが熱処理することにより強磁性を示す合金、例えばマンガン−銅−アルミニウム、マンガン−銅−錫などのホイスラー合金と呼ばれる種類の合金、二酸化クロムなどを用いることができる。
黒(ブラック)トナーに用いられるブラック系着色剤(顔料)としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉、染料、非磁性酸化鉄を含む無機顔料などの公知の種々のものを任意に使用することができる。
カラー(YMC等)のトナーを得るための着色剤としては、染料、有機顔料などの公知のものを任意に使用することができる。
このうち、マゼンタトナー等に用いられるマゼンタもしくはレッド用の着色剤としては、具体的には、有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48;1、C.I.ピグメントレッド53;1、C.I.ピグメントレッド57;1、ピグメントレッド81;4、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド222、C.I.ピグメントレッド238、C.I.ピグメントレッド269等が挙げられる。染料としては、例えば、C.I.ソルベントレッド1、ソルベントレッド11、C.I.ソルベントレッド49、C.I.ソルベントレッド52、C.I.ソルベントレッド58、C.I.ソルベントレッド68、C.I.ソルベントレッド111、C.I.ソルベントレッド122等が挙げられる。
また、イエロートナー等に用いられるオレンジもしくはイエロー用の着色剤としては、具体的には、有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等が挙げられる。染料としては、例えば、C.I.ソルベントイエロー19、C.I.ソルベントイエロー44、C.I.ソルベントイエロー77、C.I.ソルベントイエロー79、C.I.ソルベントイエロー81、C.I.ソルベントイエロー82、C.I.ソルベントイエロー93、C.I.ソルベントイエロー98、C.I.ソルベントイエロー103、C.I.ソルベントイエロー104、C.I.ソルベントイエロー112、C.I.ソルベントイエロー162等が挙げられる。
さらに、シアントナー等に用いられるグリーンもしくはシアン用の着色剤としては、具体的には、有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15;2、C.I.ピグメントブルー15;3、C.I.ピグメントブルー15;4、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー66、C.I.ピグメントブルー76、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。染料としては、例えば、C.I.ソルベントブルー25、C.I.ソルベントブルー36、C.I.ソルベントブルー69、C.I.ソルベントブルー70、C.I.ソルベントブルー93、C.I.ソルベントブルー95などを挙げることができる。
各色のトナーを得るための着色剤は、各色について、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
着色剤(顔料)の含有量は、トナー全体に対して1〜60質量%、好ましくは2〜40質量%の範囲で、これらの混合物も用いることができる。かような範囲であると画像の色再現性を確保できる。
また、着色剤(粒子)の大きさとしては、体積平均粒子径で、10〜1000nm、50〜500nmが好ましく、さらには80〜300nmが特に好ましい。かような範囲であると高い色再現性を得ることができるほか、高画質に必要な小径トナーの形成に適している点で好ましい。なお、着色剤の体積平均粒子径は、以下の<測定・算出方法>を用いて測定することができる。なお、以下のトナー、結着樹脂等の樹脂粒子、離型剤等の各種粒子等の体積平均粒子径も同様にして求めることができる。
<測定・算出方法>
1.着色剤(トナー、結着樹脂等の樹脂粒子、離型剤等の各種粒子等)の平均粒子径
コールターカウンターマルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステム(ベックマン・コールター社製)を接続した装置を用いて測定、算出する。以下、トナーを例に取り説明する。
測定手順としては、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20ml(トナーの分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)で馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を作製する。このトナー分散液を、サンプルスタンド内のISOTONII(ベックマン・コールター製)の入ったビーカーに、測定器表示濃度が5%〜10%になるまでピペットにて注入する。この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値が得られる。測定機において、測定粒子カウント数を25000個、アパチャー径を100μmにし、測定範囲である2.0〜60μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率が大きい方から50%の粒子径を体積中位径(体積基準メディアン径(体積D50%径))とする。
なお、着色剤(トナー、結着樹脂等の樹脂粒子、離型剤等の各種粒子等)の平均粒子径は、小数点第3位を四捨五入して小数点第2位まで求めた値を採用する。
(8−4)離型剤(ワックス)
各トナーの構成部材である離型剤としては、低温定着性確保の観点から融点が低い炭化水素ワックスを少なくとも有し、ポリオレフィンワックスは含まない。具体的には、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの鉱物、石油系ワックス;これらの変性物などが挙げられる。これらの離型剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
離型剤(ワックス)の融点は60〜100℃が好ましく、65〜95℃がさらに好ましい。離型剤(ワックス)の融点が60℃以上であれば、耐熱保管性の確保の点で優れる。一方、離型剤(ワックス)の融点が100℃以下であれば、低温定着性を効果的に達成することができる点で優れている。
離型剤の含有量は、トナー粒子中の結着樹脂全量に対して0.5〜25質量%、好ましくは3〜20質量%となる量とされる。かような範囲であるとホットオフセット防止や分離性確保の効果がある。
また、離型剤(粒子)の大きさとしては、体積平均粒子径で、10〜1000nm、50〜500nmが好ましく、さらには80〜300nmが特に好ましい。かような範囲であると、離型剤が溶融した際、画像表面へ溶出しやすく画像分離性の点で好ましい。
(8−5)荷電制御剤
荷電制御剤としては、公知の種々の化合物を用いることができる。荷電制御剤としては、例えば、プラス帯電用としてニグロシン系の電子供与性染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩、アルキルアミド、金属錯体、顔料、弗素処理活性剤等、マイナス帯電用として電子受容性の有機錯体、塩素化パラフィン、塩素化ポリエステル、銅フタロシアニンのスルホニルアミン等を挙げることができる。
荷電制御剤の含有量は、最終的に得られるトナー粒子中における結着樹脂100質量部に対して通常0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部となる量とされる。かような範囲であると、トナー補給後の帯電立ち上がりが確保できる点で好ましい。
(8−6)外添剤
トナーとしての帯電性能や流動性、あるいはクリーニング性を向上させる観点から、トナー粒子の表面に公知の無機微粒子や有機微粒子などの粒子、滑材を外添剤として添加することできる。
無機微粒子としては、シリカ、チタニア、アルミナ、酸化セリウム粒子、チタン酸ストロンチウムなどによる無機微粒子を好ましいものとして挙げられる。
必要に応じてこれらの無機微粒子は疎水化処理されているのが望ましい。本形態では、疎水化処理された無機微粒子の中でも、高い帯電性の観点から、疎水性シリカが好ましい。かかる疎水性シリカは、作製(内製)してもよいし、疎水性フュームドシリカや疎水性ゾルゲルシリカなどの市販品を入手してよい。例えば、チタニア粒子(ドデシルトリメトキシシラン処理済み、体積平均粒径30nm)、シリカ粒子(ヘキサメチルジンラザン処理済み、体積平均粒径100nm)等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
無機微粒子(疎水化処理されたものも含む)の平均粒子径は10〜700nmが好ましく、10〜500nmがより好ましい。かような範囲であると、耐久を通して安定した画像が得られる点で好ましい。また、無機微粒子(疎水化処理されたものも含む)の形状は、特に制限されるものではなく、球形や不定形状など任意の形状のものが利用できる。
有機微粒子としては、数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の有機微粒子を使用することができる。かような範囲であると、耐久を通して安定した画像が得られる点で好ましい。具体的には、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体による有機微粒子を使用することができる。有機微粒子の数平均一次粒子径は、画像解析法により測定される。具体的には、走査型電子顕微鏡「JSM−7401(JEOL社製)」を用いて、倍率3万倍でトナーの写真を撮影し、この写真画像をスキャナーにより取り込み、画像処理解析装置「LUZEX(登録商標) AP」((株)ニレコ製)ソフトウェアバージョン Ver.1.32を用いて、写真画像上の有機微粒子について2値化処理し、有機微粒子の任意の100個についての水平方向フェレ径を算出、その平均値を数平均一次粒径とする。ここで水平方向フェレ径とは、外添剤の画像を2値化処理したときの外接長方形のx軸に平行な辺の長さをいう。凝集体としてトナー表面に存在する場合は、該凝集体を形成する一次粒子の数平均一次粒径を測定するものとする。なお、各種粒子等の数平均一次粒子径は、上記と同様にして求めることができる。
滑材は、クリーニング性や転写性をさらに向上させる目的で使用されるものであって、滑材としては、例えば、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウムなどの塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、リノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩などの高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。これらの外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
外添剤の含有量は、トナー全体(外添剤を含む)に対して0.1〜10.0質量%、好ましくは0.5〜8.0質量%の範囲である。かような範囲であると、耐久を通して安定した画像が得られる点で好ましい。
外添剤の添加方法としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの公知の種々の混合装置を使用して添加する方法が挙げられる。
(9)現像剤
以上のようなトナーは、例えば磁性体を含有させて一成分磁性トナーとして使用する場合、いわゆるキャリアと混合して二成分現像剤として使用する場合、非磁性トナーを単独で使用する場合などが考えられ、いずれも現像剤として好適に使用することができる。
二成分現像剤を構成するキャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来から公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子を用いることが好ましい。
キャリアとしては、その体積平均粒径としては15〜100μmのものが好ましく、25〜60μmのものがより好ましい。キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
キャリアとしては、さらに樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアを用いることができる。被覆用の樹脂組成としては、特に限定はないが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂あるいはフッ素含有重合体系樹脂などが用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール系樹脂など使用することができる。
(10)トナーの製造方法
トナーの製造方法は、少なくとも非晶性ポリエステル樹脂、着色剤および炭化水素ワックスを用いてなるものであればよい。耐熱保管性と低温定着性との両立の観点から、好ましくは製造過程でコア−シェル型凝集粒子を作製する製造方法が望ましい(実施例参照)。以下では、少なくとも(不飽和)非晶性ポリエステル樹脂を含む結着樹脂、着色剤および炭化水素ワックスを使用し、製造過程でコア−シェル型凝集粒子を作製する製造方法を例に挙げて説明するが、本形態では、以下の製造方法に何ら制限されるものではない。
好適なトナーの製造方法としては、
少なくとも架橋構造を有する非晶性ポリエステル樹脂(以下、「架橋非晶性ポリエステル樹脂」ともいう。)、および、結晶性ポリエステル樹脂を含む結着樹脂、着色剤および炭化水素ワックスを含有するトナー粒子からなるトナーを製造する方法であって、
(a−1)結晶性ポリエステル樹脂による微粒子(以下、「結晶性ポリエステル樹脂微粒子」ともいう。)の水系媒体分散液を調製する工程、
(a−2)重合性不飽和結合を含有する非晶性ポリエステル樹脂による微粒子の水系媒体分散液を調製する工程、
(b)水系媒体中において、少なくとも結晶性ポリエステル樹脂微粒子を凝集させてコア凝集粒子を形成する工程、
(c)前記コア凝集粒子の表面に重合性不飽和結合を含有する非晶性ポリエステル樹脂(以下、「不飽和非晶性ポリエステル樹脂」ともいう。)による微粒子(以下、「不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子」ともいう。)を付着させて、コア−シェル型凝集粒子を形成する工程、
を経た後、
(d)前記コア−シェル型凝集粒子にラジカル重合開始剤を作用させてラジカル重合反応を行うことにより、コア凝集粒子の表面に架橋構造を有する非晶性ポリエステル樹脂による層を形成する工程、
を経ることを特徴とする方法である。
<第1形態>
このようなトナーの製造方法の具体的な一例としては、
(1−A−1)結晶性ポリエステル樹脂を合成し、当該結晶性ポリエステル樹脂による結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液を調製する結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液調製工程、
(1−B−1)重合性不飽和結合を有さない非晶性ポリエステル樹脂を合成し、当該重合性不飽和結合を有さない非晶性ポリエステル樹脂による微粒子(以下、「非晶性ポリエステル樹脂微粒子」ともいう。)の分散液を調製する非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液調製工程、
(1−B−2)不飽和非晶性ポリエステル樹脂を合成し、当該不飽和非晶性ポリエステル樹脂による不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液を調製する不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液調製工程、
(1−C)着色剤による微粒子(以下、「着色剤微粒子」ともいう。)の分散液を調製する着色剤微粒子分散液調製工程、
(1−D)離型剤による微粒子(以下、「離型剤微粒子」ともいう。)の分散液を調製する着色剤微粒子分散液調製工程、
(2)水系媒体中において、結晶性ポリエステル樹脂微粒子および非晶性ポリエステル樹脂微粒子などの結着樹脂の材料となる樹脂微粒子、着色剤微粒子、離型剤微粒子、必要に応じて荷電制御剤による微粒子などのトナー構成成分の微粒子を凝集させてコア凝集粒子を形成する凝集工程、
(3)コア凝集粒子の表面に不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子を付着させ、コア−シェル型凝集粒子を形成する付着工程、
(4)不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子のコア凝集粒子の表面への付着を停止させ、所望のコア−シェル型凝集粒子を確保する凝集停止工程、
(5)確保されたコア−シェル型凝集粒子を融合させて未架橋のコア−シェル型トナー粒子を形成する融合工程、
(6)ラジカル重合開始剤を未架橋のコア−シェル型トナー粒子に作用させてラジカル重合反応を行うことにより、架橋非晶性ポリエステル樹脂によるシェル層を形成する架橋工程、
(7)得られたトナー粒子を水系媒体中より濾別し、当該トナー粒子から界面活性剤などを洗浄除去する濾過・洗浄工程、
(8)洗浄処理されたトナー粒子の乾燥工程、
から構成され、必要に応じて
(9)乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する外添剤添加工程
を加えることができる。
(1−A−1)結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液調製工程
この結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液調製工程は、トナー粒子を構成する結着樹脂の材料となる結晶性ポリエステル樹脂を合成し、この結晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に微粒子状に分散させて結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液を調製する工程である。
本形態において、結晶性ポリエステル樹脂とは、示差走査熱量測定法(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有するポリエステル樹脂をいう。このような結晶性ポリエステル樹脂であれば、特に限定されず、例えば、結晶性ポリエステル樹脂による主鎖に他成分を共重合させた構造を有する樹脂について、この樹脂が上記のように明確な吸熱ピークを示すものであれば、本形態でいう結晶性ポリエステル樹脂に該当する。
本形態において使用される結晶性ポリエステル樹脂は、その融点が30〜99℃の範囲であることが好ましく、45〜88℃の範囲であることがより好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の融点が上記の範囲にあることにより、低温定着性および定着分離性が適切に得られるため好ましい。
ここに、結晶性ポリエステル樹脂の融点は、吸熱ピークのピークトップの温度を示し、示差走査カロリメーター「DSC−7」(パーキンエルマー社製)および熱分析装置コントローラー「TAC7/DX」(パーキンエルマー社製)を用いて示差走査熱量分析によってDSC測定したものである。
具体的には、結晶性ポリエステル樹脂0.5mgをアルミニウム製パン(KITNO.0219−0041)に封入し、これを「DSC−7」のサンプルホルダーにセットし、測定温度0〜200℃で、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分の測定条件で、Heat−cool−Heatの温度制御を行い、その2nd.Heatにおけるデータをもとに解析を行う。ただし、リファレンスの測定には空のアルミニウム製パンを使用する。
この結晶性ポリエステル樹脂は、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による数平均分子量(Mn)が好ましくは1,000〜10,000、さらに好ましくは2,000〜8,000であり、ピーク分子量(Mp)が好ましくは5,000〜35,000、より好ましくは8,000〜30,000であり、重量平均分子量(Mw)が好ましくは10,000〜40,000さらに好ましくは12,000〜35,000である。
結晶性ポリエステル樹脂におけるTHF可溶分の重量平均分子量(Mw)が10,000以上であれば、後述する融合工程において非晶性ポリエステル樹脂と相溶してしまうことなく、得られるトナー粒子が全体的に融点の低いものとなることもなくて耐ブロッキング性に優れるものとなる点で優れている。また、重量平均分子量が40.000以下であれば、得られるトナーが低温定着性に優れるものとなる。また、結晶性ポリエステル樹脂におけるTHF可溶分のピーク分子量Mpが5,000以上であれば、耐ブロッキング性の点で優れており、ピーク分子量Mpが35,000以下であれば、低温定着性の点で優れている。
GPCによる分子量測定は、以下のように行うことができる。すなわち、装置「HLC−8220」(東ソー社製)およびカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM−M3連」(東ソー社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2ml/minで流し、測定試料(トナーの製造に用いた結晶性ポリエステル樹脂)を室温において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解させ、次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得、この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒と共に装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出する。検量線測定用の標準ポリスチレン試料としては、Pressure Chemical社製の分子量が6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を測定し、検量線を作成する。また、検出器には屈折率検出器を用いることができる。
結晶性ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸成分および多価アルコール成分から生成される。多価カルボン酸成分および多価アルコール成分の価数としては、好ましくはそれぞれ2〜3であり、特に好ましくはそれぞれ2であるため、特に好ましい形態として価数がそれぞれ2である場合(すなわち、ジカルボン酸成分、ジオール成分)について説明する。
ジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましく、芳香族ジカルボン酸を併用してもよい。脂肪族ジカルボン酸としては、直鎖型のものを用いることが好ましい。直鎖型のものを用いることによって、結晶性が向上するという利点がある。ジカルボン酸成分は、1種類のものに限定されるものではなく、2種類以上を混合して用いてもよい。脂肪族ジカルボン酸としては、主鎖を構成する炭素原子の数が2〜22である直鎖型の脂肪族ジカルボン酸を用いることがより好ましい。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸などが挙げられ、また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。上記の脂肪族ジカルボン酸の中でも、入手容易性の観点から、炭素原子の数が6〜14である直鎖型の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましく、アジピン酸、セバシン酸、1,8−オクタンジカルボン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,10−ドデカンジカルボン酸(1,10−ドデカン二酸)を用いることが好ましい。
脂肪族ジカルボン酸と共に用いることのできる芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、t−ブチルイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などが挙げられる。これらの中でも、入手容易性および乳化容易性の観点から、テレフタル酸、イソフタル酸、t−ブチルイソフタル酸を用いることが好ましい。
芳香族ジカルボン酸の使用量は、結晶性ポリエステル樹脂を形成するためのジカルボン酸成分全体を100構成モル%とした場合の20構成モル%以下とされることが好ましく、より好ましくは10構成モル%以下、特に好ましくは5構成モル%以下である。芳香族ジカルボン酸の使用量が20構成モル%以下とされることにより、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を確保することができて製造されるトナーに優れた低温定着性が得られ、最終的に形成される画像に光沢性が得られると共に融点降下による画像保存性の低下が抑制され、さらに、当該結晶性ポリエステル樹脂を含む油相液を用いて油滴を形成させるときに、確実に乳化状態を得ることができる。
また、ジオール成分としては、脂肪族ジオールを用いることが好ましく、必要に応じて脂肪族ジオール以外のジオールを含有させてもよい。
ジオール成分としては、脂肪族ジオールの中でも、主鎖を構成する炭素原子の数が2〜22である直鎖型の脂肪族ジオールを用いることがより好ましく、さらに、入手容易性や確実な低温定着性の発現、高い光沢性を有する画像が得られるという観点から、主鎖を構成する炭素原子の数が2〜14である直鎖型の脂肪族ジオールを用いることが特に好ましい。
用いる直鎖型の脂肪族ジオールの主鎖を構成する炭素原子の数が2〜22であることにより、ジカルボン酸成分として芳香族ジカルボン酸が併用される場合においても低温定着性が阻害されるレベルの融点を有するポリエステル樹脂が形成されることがなく、製造されるトナーに十分な低温定着性が得られ、また、最終的に形成される画像に高い光沢性が得られる。
ジオール成分としては、分岐型の脂肪族ジオールを用いることもできるが、この場合、結晶性の確保の観点から、直鎖型の脂肪族ジオールと共に使用し、かつ、当該直鎖型の脂肪族ジオールの割合を高めにして使用することが好ましい。このように直鎖型の脂肪族ジオールの割合を高めにして使用することによって、結晶性が確保されて製造されるトナーに優れた低温定着性が確実に得られ、最終的に形成される画像において融点降下による画像保存性の低下が抑制され、さらには耐ブロッキング性が確実に得られる。
ジオール成分は、1種類のものに限定されるものではなく、2種類以上を混合して用いてもよい。
結晶性ポリエステル樹脂を形成するためのジオール成分としては、脂肪族ジオールの含有量が80構成モル%以上とされることが好ましく、より好ましくは90構成モル%以上である。ジオール成分における脂肪族ジオールの含有量が80構成モル%以上とされることにより、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を確保することができて製造されるトナーに優れた低温定着性が得られると共に最終的に形成される画像に光沢性が得られる。
脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−ドデカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオールなどが挙げられ、これらの中でも、入手容易性の観点、確実な低温定着性の発現という観点から、主鎖を構成する炭素原子の数が2〜14のものが好ましい。具体的には、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールを用いることが好ましい。
脂肪族ジオール以外のジオールとしては、二重結合を有するジオール、スルホン酸基を有するジオールなどが挙げられ、具体的には、二重結合を有するジオールとしては、例えば、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ヘキセン−1,6−ジオール、4−オクテン−1,8−ジオールなどが挙げられる。
ジオール成分における二重結合を有するジオールの含有量は20構成モル%以下とされることが好ましく、より好ましくは2〜10構成モル%である。二重結合を有するジオールの含有量が20構成モル%以下であることにより、得られる結晶性ポリエステル樹脂の融点が大幅に低くなることがなく、従って、フィルミングが発生するおそれが小さい。
なお、必要に応じて、酸価や水酸基価の調整等の目的で、酢酸、安息香酸等の1価の酸、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等の1価のアルコール、ベンゼントリカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸等、およびこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステル、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど3価のアルコールも併用することができる。
上記のジオール成分とジカルボン酸成分との使用比率は、ジオール成分のヒドロキシル基[OH]とジカルボン酸成分のカルボキシル基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]が、1.5/1〜1/1.5とされることが好ましく、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。
ジオール成分とジカルボン酸成分との使用比率が上記の範囲にあることにより、所望の分子量を有する結晶性ポリエステル樹脂を確実に得ることができる。
結晶性ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒は、以下の非晶性ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒と同様のものを用いることができる。
以上のような結晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させる方法としては、当該結晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒中に溶解または分散させて油相液を調製し、油相液を、転相乳化などによって水系媒体中に分散させて、所望の粒径に制御された状態の油滴を形成させた後、有機溶媒を除去する方法が挙げられる。
本形態において、「水系媒体」とは、少なくとも水が50質量%以上含有されたものをいい、水以外の成分としては、水に溶解する有機溶剤を挙げることができ、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、メチルセルソルブ、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらのうち、樹脂を溶解しない有機溶剤であるメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系有機溶剤を使用することが好ましい。
水系媒体の使用量は、油相液100質量部に対して、50〜2,000質量部であることが好ましく、100〜1,000質量部であることがより好ましい。
水系媒体の使用量を上記の範囲とすることで、水系媒体中において油相液を所望の粒径に乳化分散させることができる。
水系媒体中には、分散安定剤が溶解されていてもよく、また、この水系媒体中には、油滴の分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂微粒子などが添加されていてもよい。
分散安定剤としては、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイトなどの無機化合物を挙げることができるが、得られるトナー母体粒子中より分散安定剤を除去する必要があることから、リン酸三カルシウムなどのように酸やアルカリに可溶性のものを使用することが好ましく、または環境面の視点からは、酵素により分解可能なものを使用することが好ましい。
界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタインなどの両性界面活性剤などが挙げられ、また、フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤やカチオン性界面活性剤も使用することができる。
また、分散安定性の向上のための樹脂微粒子としては、粒径が、体積基準のメジアン径で0.5〜3μmのものが好ましく、具体的には、粒径が、体積基準のメジアン径で1μmおよび3μmのポリメタクリル酸メチル樹脂微粒子、粒径が、体積基準のメジアン径で0.5μmおよび2μmのポリスチレン樹脂微粒子、粒径が、体積基準のメジアン径で1μmのポリスチレン−アクリロニトリル樹脂微粒子などが挙げられる。
油相液の調製に使用される有機溶媒としては、油滴の形成後の除去処理が容易である観点から、沸点が低く、かつ、水への溶解性が低いものが好ましく、具体的には、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
有機溶媒の使用量は、結晶性ポリエステル樹脂100質量部に対して、通常1〜300質量部、好ましくは1〜100質量部、さらに好ましくは25〜70質量部である。
油相液の乳化分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、乳化分散を行うための分散機としては、特に限定されるものではなく、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機などが挙げられ、具体的には例えばTK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)などを挙げることができる。
油滴の分散径は、60〜1000nmとされることが好ましく、さらに好ましくは80〜500nmである。
油滴の分散径を上記の範囲とすることによって、油滴の表面積、すなわち架橋反応が生じる領域が好ましい大きさとなり、低温定着性と耐オフセット性とをより高いレベルで両立することができる。
油滴の分散径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−750」(株式会社堀場製作所製)を用いて測定した体積基準のメジアン径である。この油滴の分散径は、乳化分散時の機械的エネルギーの大きさによりコントロールすることができる。
油滴の形成後における有機溶媒の除去は、トナー粒子が水系媒体中に分散された状態の分散液全体を、徐々に層流の撹拌状態で昇温し、一定の温度域において強い撹拌を与えた後、脱溶媒を行うなどの操作により行うことができる。
また、分散安定剤を用いてトナー粒子を形成する場合は、有機溶媒の除去処理に加えて、酸やアルカリを添加して混合することにより、当該分散安定剤の除去処理も行う。
このように準備された結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液における結晶性ポリエステル樹脂微粒子(油滴)の粒径は、体積平均粒径で、60〜1000nmとされることが好ましく、さらに好ましくは80〜500nmである。かような範囲であると、安定したトナー製造の点で好ましい。なお、当該樹脂微粒子(油滴)(樹脂粒子)の体積平均粒子径は、レーザー回析・散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック粒度分布測定装置「UPA−150」(日機装社製)等)で測定することができる。なお、この微粒子(油滴)の体積平均粒径は、乳化分散時の機械的エネルギーの大きさによりコントロールすることができる。
また、結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液における結晶性ポリエステル樹脂微粒子の含有量(固形分濃度)は、分散液100質量%に対して10〜50質量%の範囲とすることが望ましく、より望ましくは15〜40質量%の範囲である。このような範囲であると、粒度分布の広がりを抑制し、トナー特性を向上させることができる。
(1−B−1)非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液調製工程
この非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液調製工程は、トナー粒子を構成する結着樹脂の材料となる重合性不飽和結合を有さない非晶性ポリエステル樹脂を合成し、この重合性不飽和結合を有さない非晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に微粒子状に分散させて非晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液を調製する工程である。
本実施形態において、重合性不飽和結合を有さない非晶性ポリエステル樹脂とは、上記の結晶性ポリエステル樹脂および後述の不飽和非晶性ポリエステル樹脂以外の非晶性ポリエステル樹脂をいい、通常は融点を有さず、比較的高いガラス転移点(Tg)を有するものである。以下、当該(1−B−1)の項においてのみ、重合性不飽和結合を有さない非晶性ポリエステル樹脂を「非晶性ポリエステル樹脂」ともいう。
重合性不飽和結合を有さない非晶性ポリエステル樹脂は、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分とを用い、上記の結晶性ポリエステル樹脂の合成工程と同様にして合成することができる。
この重合性不飽和結合を有さない非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)は、20〜90℃であることが好ましく、特に35〜65℃であることが好ましい。
また、この重合性不飽和結合を有さない非晶性ポリエステル樹脂の軟化点は、80〜220℃であることが好ましく、特に80〜150℃であることが好ましい。かような範囲であると低温定着と適度な光沢を得る点で好ましい。
ここに、重合性不飽和結合を有さない非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)は、示差走査カロリメーター「DSC−7」(パーキンエルマー製)、および熱分析装置コントローラー「TAC7/DX」(パーキンエルマー製)を用いて測定したものである。具体的には、非晶性ポリエステル樹脂4.50mgをアルミニウム製パン「KITNO.0219−0041」に封入し、これを「DSC−7」のサンプルホルダーにセットし、リファレンスの測定には空のアルミニウム製パンを使用し、測定温度0〜200℃で、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分の測定条件で、Heat−cool−Heatの温度制御を行い、その2nd.Heatにおけるデータを取得し、第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1の吸熱ピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線との交点をガラス転移点(Tg)として示す。なお、1st.Heat昇温時は200℃にて5分間保持する。
また、軟化点は、以下のように測定したものである。すなわち、まず、20℃、50%RHの環境下において、重合性不飽和結合を有さない非晶性ポリエステル樹脂1.3gをシャーレに入れ平らにならし、12時間以上放置した後、成型器「SSP−10A」(島津製作所製)によって3820kg/cm2の力で30秒間加圧し、直径1cmの円柱型の成型サンプルを作製する。次いで、この成型サンプルを、24℃、50%RHの環境下において、フローテスター「CFT−500D」(島津製作所製)により、荷重196N(20kgf)、開始温度60℃、予熱時間300秒間、昇温速度6℃/分の条件で、円柱型ダイの穴(1mm径×1mm)より、直径1cmのピストンを用いて予熱終了時から押し出し、昇温法の溶融温度測定方法でオフセット値5mmの設定で測定したオフセット温度Toffsetを、非晶性ポリエステル樹脂の軟化点とする。
この重合性不飽和結合を有さない非晶性ポリエステル樹脂は、THF可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による数平均分子量(Mn)が好ましくは1,0000〜10,000、より好ましくは2,000〜8,000、ピーク分子量(Mp)が好ましくは5,000〜35,000、より好ましくは8,000〜30,000、重量平均分子量(Mw)が好ましくは10,000〜40,000、より好ましくは12,000〜35,000である。
重合性不飽和結合を有さない非晶性ポリエステル樹脂におけるTHF可溶分のピーク分子量Mpが5,000以上であれば、耐ブロッキング性の点で優れており、ピーク分子量Mpが35,000以下であれば、低温定着性の点で優れている。重合性不飽和結合を有さない非晶性ポリエステル樹脂におけるTHF可溶分の重量平均分子量(Mw)が10,000以上であれば、得られるトナーが耐熱保管性の確保の点で優れ、更に耐ブロッキング性にも優れるものとなる。一方、40,000以下であれば、得られるトナーが低温定着性に優れるものとなる。
GPCによる分子量測定は、測定試料として重合性不飽和結合を有さない非晶性ポリエステル樹脂のTHF可溶分を用いたことの他は結晶性ポリエステル樹脂の分子量測定と同様の方法によって行われる。
重合性不飽和結合を有さない非晶性ポリエステル樹脂を形成すべき多価アルコール成分としては、例えば、上述の脂肪族ジオールに加え、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール類、およびこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物などのビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などを挙げることができ、また、3価以上の多価アルコール成分としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。さらに、製造コストや環境性から、シクロヘキサンジメタノールやネオペンチルアルコールなどを用いることが好ましい。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、重合性不飽和結合を有さない非晶性ポリエステル樹脂を形成すべき多価カルボン酸成分としては、上述の脂肪族ジカルボン酸に加え、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸が挙げられ、得られる非晶性ポリエステル樹脂の溶融粘度を適当なものにする目的で、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸を用いてもよい。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。3価以上の多価カルボン酸を含有することにより、高分子鎖が架橋構造をとることができ、該架橋構造をとることにより、高温側での弾性率の低下を抑制させることができ、高温側でのオフセット性を向上させることができる。
重合性不飽和結合を有さない非晶性ポリエステル樹脂の合成において、上記の多価アルコール成分と多価カルボン酸成分との使用比率は、多価アルコール成分のヒドロキシル基[OH]と多価カルボン酸成分のカルボキシル基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]が、1.5/1〜1/1.5とされることが好ましく、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。
多価アルコール成分と多価カルボン酸成分との使用比率が上記の範囲にあることにより、所望の分子量を有する重合性不飽和結合を有さない非晶性ポリエステル樹脂を確実に得ることができる。
重合性不飽和結合を有さない非晶性ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒は、酢酸チタン、プロピオン酸チタン、ヘキサン酸チタン、オクタン酸チタンなどの脂肪族モノカルボン酸チタン、シュウ酸チタン、コハク酸チタン、マレイン酸チタン、アジピン酸チタン、セバシン酸チタンなどの脂肪族ジカルボン酸チタン、ヘキサントリカルボン酸チタン、イソオクタントリカルボン酸などの脂肪族トリカルボン酸チタン、オクタンテトラカルボン酸チタン、デカンテトラカルボン酸チタンなどの脂肪族ポリカルボン酸チタン、などの脂肪族カルボン酸チタン類、安息香酸チタンなどの芳香族モノカルボン酸チタン、フタル酸チタン、テレフタル酸チタン、イソフタル酸チタン、ナフタレンジカルボン酸チタン、ビフェニルジカルボン酸チタン、アントラセンジカルボン酸チタンなどの芳香族ジカルボン酸チタン;トリメリット酸チタン、ナフタレントリカルボン酸チタンなどの芳香族トリカルボン酸チタン;ベンゼンテトラカルボン酸チタン、ナフタレンテトラカルボン酸チタンなどの芳香族テトラカルボン酸チタン;などの芳香族カルボン酸チタン類、脂肪族カルボン酸チタン類や芳香族カルボン酸チタン類のチタニル化合物類およびそのアルカリ金属塩類、ジクロロチタン、トリクロロチタン、テトラクロロチタン、テトラブロモチタンなどのハロゲン化チタン類、テトラブトキシチタン(チタンテトラブトキサイド)、テトラオクトキシチタン、テトラステアリロキシチタンなどのテトラアルコキシチタン類、チタンアセチルアセトナート、チタンジイソプロポキシドビスアセチルアセトナート、チタントリエタノールアミネート、などのチタン含有触媒である。
上記重合性不飽和結合を有さない非晶性ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒の使用量は、樹脂合成時のモノマー全量に対して、0.01〜10.0質量%の範囲が好ましく、0.02〜7.0質量%の範囲がより好ましい。かような範囲であると、未反応モノマーの残存が無くなる点で好ましい。
以上のような重合性不飽和結合を有さない非晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させる方法としては、重合性不飽和結合を有さない結晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させる場合と同様に、当該重合性不飽和結合を有さない非晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒中に溶解または分散させて油相液を調製し、油相液を、転相乳化などによって水系媒体中に分散させて、所望の粒径に制御された状態の油滴を形成させた後、有機溶媒を除去する方法が挙げられる。
油滴の分散径は60〜1000nmとされることが好ましく、さらに好ましくは80〜500nmである。
油滴の分散径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−750」(株式会社堀場製作所製)を用いて測定した体積基準のメジアン径である。この油滴の分散径は、乳化分散時の機械的エネルギーの大きさによりコントロールすることができる。
このように準備された非晶性樹脂微粒子分散液における非晶性樹脂微粒子(油滴)の粒径は、体積平均粒径で、60〜1000nmとされることが好ましく、さらに好ましくは80〜500nmである。かような範囲であると、安定したトナー製造の点で好ましい。なお、当該樹脂微粒子(油滴)の体積平均粒子径は、レーザー回析・散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック粒度分布測定装置「UPA−150」(日機装社製)等)で測定することができる。なお、この微粒子(油滴)の体積平均粒径は、乳化分散時の機械的エネルギーの大きさによりコントロールすることができる。
また、非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液における非晶性ポリエステル樹脂微粒子の含有量(固形分濃度)は、分散液100質量%に対して10〜50質量%の範囲とすることが望ましく、より望ましくは15〜40質量%の範囲である。このような範囲であると、粒度分布の広がりを抑制し、トナー特性を向上させることができる。
(1−B−2)不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液調製工程
この不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液調製工程は、トナー粒子を構成する結着樹脂の材料となる架橋非晶性ポリエステル樹脂を得るための不飽和非晶性ポリエステル樹脂を合成し、この不飽和非晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に微粒子状に分散させて不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液を調製する工程である。
本発明において、不飽和非晶性ポリエステル樹脂とは、その分子鎖内にラジカル重合をし得る重合性不飽和結合を含み、上記の結晶性ポリエステル樹脂とは異なり通常は融点を有さず、比較的高いガラス転移点(Tg)を有するものである。
不飽和非晶性ポリエステル樹脂は、少なくともいずれかに重合性不飽和結合が含有されてなる多価アルコール成分と多価カルボン酸成分とを用い、上記の結晶性ポリエステル樹脂の合成工程と同様にして合成することができる。
少なくともいずれかに重合性不飽和結合が含有されてなる多価アルコールと多価カルボン酸成分とは、
(i)全部または一部が重合性不飽和結合を有する多価アルコール成分と、全く重合性不飽和結合を有さない多価カルボン酸成分、
(ii)全く重合性不飽和結合を有さない多価アルコール成分と、全部または一部が重合性不飽和結合を有する多価カルボン酸成分、
(iii)全部または一部が重合性不飽和結合を有する多価アルコール成分と、全部または一部が重合性不飽和結合を有する多価カルボン酸成分、
のいずれかの組み合わせをいう。
この不飽和非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)は、20〜90℃であることが好ましく、特に35〜65℃であることが好ましい。
また、この不飽和非晶性ポリエステル樹脂の軟化点は、70〜220℃であることが好ましく、特に80〜180℃であることが好ましい。
不飽和非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点および軟化点の測定は、測定試料として不飽和非晶性ポリエステル樹脂を用いたことの他は上述の重合性不飽和結合を有さない非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点または軟化点と同様の方法によって行われる。
この不飽和非晶性ポリエステル樹脂は、THF可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による数平均分子量(Mn)が好ましくは1,000〜15,000、より好ましくは1,500〜10,000、ピーク分子量(Mp)が好ましくは5,000〜35,000、より好ましくは8,000〜30,000、重量平均分子量(Mw)が好ましくは10,000〜40,000、より好ましくは12,000〜35,000である。ピーク分子量Mpが5,000以上であれば、耐ブロッキング性の点で優れており、ピーク分子量Mpが35,000以下であれば、低温定着性の点で優れている。重量平均分子量Mwが10,000以上であれば、耐熱保管性の確保の点で優れており、重量平均分子量Mwが40,000以下であれば、低温定着性を容易に達成し得る点で優れている。
更に、この不飽和非晶性ポリエステル樹脂を、以下に説明するトナー粒子のコア用およびシェル用の結着樹脂として用いるのが好ましい。この場合には、コア用およびシェル用の結着樹脂として同じ不飽和非晶性ポリエステル樹脂(即ち、ピーク分子量Mp及び重量平均分子量Mwが同じもの)を用いるのが、黒トナーとカラートナーとの分子量差を調整するのに特に適している(実施例の表1、2参照のこと)。さらに、コア用やシェル用の結着樹脂として不飽和非晶性ポリエステル樹脂と重合性不飽和結合を有さない非晶性ポリエステル樹脂とを併用する場合には、(i)コア用の不飽和非晶性ポリエステル樹脂と重合性不飽和結合を有さない非晶性ポリエステル樹脂とには、各ピーク分子量Mp及び各重量平均分子量Mwがほぼ同じものを用いるのがよい。更に(ii)シェル用の不飽和非晶性ポリエステル樹脂と重合性不飽和結合を有さない非晶性ポリエステル樹脂とにも、各ピーク分子量Mp及び各重量平均分子量Mwがほぼ同じものを用いるのがよい。(iii)コア用およびシェル用の不飽和非晶性ポリエステル樹脂にも、各ピーク分子量Mp及び各重量平均分子量Mwがほぼ同じものを用いるのがよい。(iv)コア用およびシェル用の重合性不飽和結合を有さない非晶性ポリエステル樹脂にも、各ピーク分子量Mp及び各重量平均分子量Mwがほぼ同じものを用いるのがよい。上記(i)〜(iv)を満足するトナーを用いるのが、黒トナー中の非晶性ポリエステル樹脂とカラートナー中の非晶性ポリエステル樹脂の分子量差を調整するのに特に適している。
GPCによる分子量測定は、測定試料として不飽和非晶性ポリエステル樹脂のTHF可溶分を用いたことの他は結晶性ポリエステル樹脂の分子量測定と同様の方法によって行われる。
不飽和非晶性ポリエステル樹脂を形成するために使用できる多価アルコール成分としては、上述の非晶性ポリエステル樹脂を合成するための多価アルコール成分が挙げられ、不飽和非晶性ポリエステル樹脂の重合性不飽和結合を多価アルコール成分から導入する場合は、不飽和非晶性ポリエステル樹脂を形成するために使用できる多価アルコール成分として、重合性不飽和結合を有する、2−ブテン−1,4ジオール、3−ヘキセン−1,6−ジオール、4−オクテン−1,8−ジオ−ルなどのアルケンジオールなどを挙げることができる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、不飽和非晶性ポリエステル樹脂を形成するために使用できる多価カルボン酸成分としては、上述の非晶性ポリエステル樹脂を合成するための多価カルボン酸成分が挙げられ、不飽和非晶性ポリエステル樹脂の重合性不飽和結合を多価カルボン酸成分から導入する場合は、不飽和非晶性ポリエステル樹脂を形成するために使用できる多価カルボン酸成分として、重合性不飽和結合を有する多価カルボン酸、具体的には、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イソドデセニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸;およびこれらの酸無水物または酸塩化物などを挙げることができる。また、コーヒー酸などの重合性不飽和結合を有するモノカルボン酸を少量併用してもよい。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
不飽和非晶性ポリエステル樹脂の合成において、上記の多価アルコール成分と多価カルボン酸成分との使用比率は、多価アルコール成分のヒドロキシル基[OH]と多価カルボン酸成分のカルボキシル基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]が、1.5/1〜1/1.5とされることが好ましく、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。
多価アルコール成分と多価カルボン酸成分との使用比率が上記の範囲にあることにより、所望の分子量を有する不飽和非晶性ポリエステル樹脂を確実に得ることができる。
以上のような不飽和非晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させる方法としては、結晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させる場合と同様に、当該不飽和非晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒中に溶解または分散させて不飽和非晶性ポリエステル樹脂液を調製し、この不飽和非晶性ポリエステル樹脂液を、転相乳化などによって水系媒体中に分散させて、所望の粒径に制御された状態の油滴を形成させた後、有機溶媒を除去する方法が挙げられる。
このように準備された不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液における不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子(油滴)の粒径は、体積基準のメジアン径で、50〜400nmとされることが好ましく、さらに好ましくは80〜300nmである。なお、当該樹脂微粒子(油滴)の体積基準のメジアン径は、レーザー回析・散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック粒度分布測定装置「UPA−150」(日機装社製)等)で測定することができる。なお、この微粒子(油滴)の体積基準のメジアン径は、転相乳化等による分散時の機械的エネルギーの大きさによりコントロールすることができる。
また、不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液における不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子の含有量(固形分濃度)は、分散液100質量%に対して10〜50質量%の範囲とすることが望ましく、より望ましくは15〜40質量%の範囲である。このような範囲であると、粒度分布の広がりを抑制し、トナー特性を向上させることができる。
(1−C)着色剤微粒子分散液調製工程
この着色剤微粒子分散液調製工程は、黒トナー粒子およびカラー(YMC等)トナー粒子に対応する各色の着色剤を含有する工程であって、着色剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて着色剤微粒子の分散液を調製する工程である。
〔着色剤〕
着色剤としては、上記「(8)トナーの構成部材」の項で詳しく説明した通りである。
着色剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができる。
着色剤微粒子は、分散した状態で体積基準のメジアン径が10〜300nmとされることが好ましく、さらに好ましくは100〜250nm、特に好ましくは150〜250nmである。
着色剤微粒子の体積基準のメジアン径は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定されるものである。
(1−D)離型剤(ワックス)微粒子分散液調製工程
この離型剤微粒子分散液調製工程は、トナー粒子として離型剤(ワックス)を含有する工程であって、離型剤(ワックス)を水系媒体中に微粒子状に分散させて離型剤微粒子の分散液を調製する工程である。
〔離型剤(ワックス)〕
離型剤(ワックス)としては、上記「(8)トナーの構成部材」の項で詳しく説明した通りである。
当該水系媒体は上記で説明した通りであり、上記(1−A−1)工程の結晶性ポリエステル樹脂微粒子や上記(1−B−1)工程の非晶性ポリエステル樹脂微粒子等の分散に用いられる水系媒体と同様のものを用いることができる。この水系媒体中には、分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂微粒子などが添加されていてもよい。界面活性剤や樹脂微粒子も上記(1−A−1)工程や(1−B−1)工程で説明した通りである。
離型剤(ワックス)の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、このような分散機としては、特に限定されるものではなく、上記で挙げたように、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波ホモジナイザーなどの超音波分散機、高圧衝撃式分散機アルティマイザー、あるいは、高圧ホモジナイザーなどが挙げられる。
離型剤(ワックス)を分散させるにあたり、必要に応じて加熱を行ってもよい。加熱温度としては、分散性を向上させる観点から、離型剤の融点±20℃の範囲であることが好ましい。
離型剤微粒子の体積平均粒径は、10〜300nmとされることが好ましい。このような範囲であると、良好な定着性が得られる点で好ましい。
また、離型剤微粒子分散液における離型剤微粒子の含有量(固形分濃度)は、10〜50質量%の範囲とすることが望ましく、より望ましくは15〜40質量%の範囲である。このような範囲であると、ホットオフセット防止と分離性確保の効果がある。
(1−E)荷電制御剤微粒子分散液調製工程
荷電制御剤微粒子分散液調製工程は、トナー粒子として荷電制御剤を含有する工程であって、荷電制御剤を水系媒体中に微粒子状に分散させ荷電制御剤微粒子の分散液を調製する工程である。
〔荷電制御剤〕
荷電制御剤としては、上記「(8)トナーの構成部材」の項で詳しく説明した通りである。
荷電制御剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができる。
荷電制御剤が微粒子の形態である場合、分散した状態で体積基準のメジアン径が10〜300nmとされることが好ましい。
荷電制御剤微粒子の体積基準のメジアン径は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定されるものである。
(2)凝集工程
この凝集工程は、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液、非晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液、不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液、着色剤微粒子の分散液、離型剤微粒子の分散液、必要に応じて、荷電制御剤などの他のトナー粒子構成成分の分散液を添加、混合し、pH調整による微粒子表面の反発力と電解質体よりなる凝集剤の添加による凝集力とのバランスを取りながら緩慢に凝集させ、平均粒径および粒度分布を制御しながら会合を行うと同時に、加熱撹拌することで微粒子間の融着を行って形状制御を行うことにより、少なくとも不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子、好ましくは、結晶性ポリエステル樹脂微粒子、不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子(更に、必要に応じて非晶性ポリエステル樹脂)、着色剤微粒子、離型剤微粒子を含有するコア凝集粒子を形成する工程である。
界面活性剤としては、特に限定されずに公知の種々のものを用いることができるが、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸塩;ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウムなどの硫酸エステル塩;オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムなどの脂肪酸塩などのイオン性界面活性剤が挙げられる。
また、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールとのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレノキサイドとのエステル、ソルビタンエステルなどのノニオン性界面活性剤も使用することができる。
以上の界面活性剤は、所望に応じて、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
この凝集工程において用いることができる凝集剤としては、例えば1価、2価または3価の金属塩を挙げることができる。凝集剤を構成する金属としては、リチウム、カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属;アルミニウムなどが挙げられる。前記金属の対イオン(塩を構成する陰イオン)としては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、炭酸イオン、硫酸イオンなどが挙げられる。
この凝集工程における結晶性ポリエステル樹脂微粒子の反応系への添加割合は、最終的に得られるトナー粒子中における結晶性ポリエステル樹脂の含有量が1〜30質量%となるように調整されることが好ましい。これが1質量%以上であれば、得られるトナーが十分な低温定着性を得られる点で優れており、30質量%以下であれば、得られるトナーが十分な機械的強度を得られる点で優れている。
本発明において、コア凝集粒子中に含有させる結着樹脂を形成する樹脂としては、少なくとも非晶性ポリエステル樹脂が含まれている。また、結晶性ポリエステル樹脂やその他の樹脂がさらに含有されていてもよい。含有される非晶性ポリエステル樹脂は、重合性不飽和結合を含有するものであってもよく、重合性不飽和結合を有さないものであってもよく、その両者であってもよい。
コア凝集粒子中に非晶性ポリエステル樹脂または不飽和非晶性ポリエステル樹脂が含有されることによって、得られるトナーの機械的強度が向上する。
この非晶性ポリエステル樹脂微粒子および/または不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子の反応系への添加割合は、最終的に得られるトナー粒子中における非晶性ポリエステル樹脂および不飽和非晶性ポリエステル樹脂の合計の含有量が50〜95質量%となるように調整されることが好ましい。これが50質量%以上であれば、得られるトナーが十分な機械的強度を得られる点で優れており、95質量%以下であれば、得られるトナーに十分な低温定着性が得られる点で優れている。
また、この凝集工程における結晶性ポリエステル樹脂微粒子と、非晶性ポリエステル樹脂微粒子および不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子の合計の反応系への相対的な添加量比率は、質量比で1:99〜30:70であることが好ましく、より好ましくは5:95〜20:80である。添加量比率が上記範囲内であれば、得られるトナーが耐熱保管性に優れ、更に得られるトナーが低温定着性にも優れる点で好ましい。
この凝集工程における着色剤微粒子の反応系への添加割合は、最終的に得られるトナー粒子中における含有量が1〜10質量%となる割合とされることが好ましく、より好ましくは2〜8質量%である。着色剤の含有量がトナー中に1質量%未満である場合は、所望の着色力が得られないおそれがあり、一方、着色剤の含有量がトナー中の10質量%を超える場合は、着色剤の遊離やキャリアなどへの付着が発生し、帯電性に影響を与える場合がある。
トナー粒子中に離型剤や荷電制御剤などの内添剤を導入する場合は、この凝集工程(2)の前に内添剤のみよりなる内添剤微粒子の分散液を調製し、この凝集工程(2)において、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液、非晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液、不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液、着色剤微粒子の分散液と共に当該内添剤微粒子の分散液を混合する。
また例えば、非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液調製工程(1−B−1)または不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液調製工程(1−B−2)において、非晶性ポリエステル樹脂微粒子または不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子の内部に前述の内添剤を混在させてこれを用いることによりトナー粒子中に導入することもできる。
この凝集工程における反応系の温度、すなわち凝集温度は10〜35℃とされることが好ましく、20〜30℃とされることがより好ましい。凝集温度がこのような範囲とされることにより、コア凝集粒子の形成について適度な速度が確保されるため、コア凝集粒子を安定的に形成できる。
(3)付着工程
この付着工程は、形成されたコア凝集粒子の表面に不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子を付着させて、このコア凝集粒子の表面に当該不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子からなる層を被覆させて、コア−シェル型凝集粒子を形成する工程であり、具体的には、水系媒体中にコア凝集粒子が分散された反応系において、凝集剤の存在下において不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液を添加することにより、行われる。
この付着工程においては、凝集剤として、上記の凝集工程(2)において添加された凝集剤をそのまま利用することができるため、新たに凝集剤を添加しなくてもよい。また、不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子の付着の進行速度を調整する目的で、新たに凝集剤を添加することもできる。新たに添加される凝集剤としては、上記の挙げたものを使用することができ、この新たに添加される凝集剤は、上記の凝集工程(2)において使用される凝集剤と同じものであっても異なるものであってもよい。
この付着工程における不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子の反応系への添加割合は、最終的に得られるトナー粒子中におけるポリエステル樹脂の総量を100質量部としたとき、2〜20質量部となる量であることが好ましく、より好ましくは5〜10質量部である。
不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子の添加割合がこの範囲であることにより、得られるトナーについて低温定着性と耐熱保管性との両立が確保しやすい。
この付着工程における反応系の温度、すなわち付着温度は10〜35℃とされることが好ましく、20〜30℃とされることがより好ましい。付着温度がこのような範囲とされることにより、コア凝集粒子の表面に不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子を高い均一性で付着させることができる。
(4)凝集停止工程
この凝集停止工程は、コア凝集粒子の表面への不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子の付着を停止させることにより所望の組成および形状を有するコア−シェル型凝集粒子を確保する工程であり、具体的には、反応系内における微粒子の凝集作用を抑制するために、凝集工程(2)および付着工程(3)における微粒子の凝集作用が促進されるpH環境から脱する方向にpH調整することができる、塩基化合物からなる凝集停止剤を添加することにより、行われる。
凝集停止剤(塩基化合物)としては、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)およびそのナトリウム塩などのアルカリ金属塩、グルコナール、グルコン酸ナトリウム、クエン酸カリウムおよびクエン酸ナトリウム、ニトロトリアセテート(NTA)塩、GLDA(市販のL−グルタミン酸N,N二酢酸)、フミン酸およびフルビン酸、マルトールおよびエチルマルトール、ペンタ酢酸およびテトラ酢酸、カルボキシル基および水酸基の両方の官能基を有する公知の水溶性ポリマー類(高分子電解質)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。これらの中でも、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)およびそのナトリウム塩などのアルカリ金属塩が特に好適に使用される。
(5)融合工程
この融合工程は、上記の凝集停止工程(4)を経た後、反応系を所期の融着温度に加温することにより、凝集停止工程(4)において得られたコア−シェル型凝集粒子を構成する不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子、結晶性ポリエステル樹脂微粒子および非晶性ポリエステル樹脂微粒子を融着させてコア−シェル型凝集粒子を融合して、未架橋のコア−シェル型トナー粒子を形成させる工程である。
この融合工程に係る融着温度は、不飽和非晶性ポリエステル樹脂または非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)以上、かつ、結晶性ポリエステル樹脂の融点以下の温度であることが好ましい。
また、加熱する時間、すなわち融着時間は、1時間以上であることが好ましく、より好ましくは1〜10時間、さらに好ましくは2〜5時間である。
以上のような融着温度および融着時間において融合されて得られたトナー粒子は、低温定着性と耐熱保管性の両立が確保されたものとなりやすい。
(6)架橋工程
この架橋工程は、反応系にラジカル重合開始剤を添加して、融合工程(5)を経て得られた未架橋のコア−シェル型トナー粒子中に存在する不飽和非晶性ポリエステル樹脂中の重合性不飽和結合をラジカル重合反応させてトナー粒子内に架橋構造を形成させ、特に、未架橋のコア−シェル型トナー粒子の表層に存在する不飽和非晶性ポリエステル樹脂に架橋構造を形成させることによってシェル層を形成する工程である。
この工程により、トナー粒子内に高弾性を発現する架橋構造を有する非晶性ポリエステル樹脂を形成させることができ、トナーの機械的強度が向上し、画像形成の際の耐高温オフセット性が確保されると共に得られる画像における光沢過多が抑制できる。
この架橋工程において使用できるラジカル重合開始剤としては、水溶性の重合開始剤であれば公知のものを使用することができ、具体的には、例えば2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩無水物、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−エチルプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]など水溶性アゾ開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸およびその塩、過酸化水素などの水溶性重合開始剤を挙げることができる。これら1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
反応系に添加されるラジカル重合開始剤の添加量は、トナー粒子を構成するために使用される不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子の総量を100質量%としたとき、1〜20質量%とされるが好ましく、さらに5〜15質量%とされることが好ましい。
反応系に添加されるラジカル重合開始剤の添加量が上記の範囲であると、反応系内において不要な粒子の生成が抑制され、高い製造収率が得られる。
架橋工程における架橋構造の形成に係る架橋温度は、使用するラジカル重合開始剤の分解温度以上、かつ、結晶性ポリエステル樹脂の融点以下であることが好ましい。
また、架橋工程における架橋構造の形成に係る架橋時間は、1時間以上であることが好ましく、より好ましくは1〜10時間、さらに好ましくは2〜5時間である。
このような架橋温度および架橋時間において架橋されて得られるトナー粒子は、低温定着性と耐熱保管性との両立が確保されたものとなりやすい。
(7)濾過・洗浄工程
この濾過・洗浄工程では、得られたトナー粒子の分散液を冷却し、この冷却されたトナー粒子の分散液からトナー粒子を固液分離してトナー粒子を濾別する濾過処理と、濾別されたトナー粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤などの付着物を除去する洗浄処理とが施される。具体的な固液分離および洗浄の方法としては、遠心分離法、ヌッチェなどを使用する減圧濾過法、フィルタープレスなどを使用する濾過法などが挙げられ、これらは特に限定されるものではない。また、好ましくは、濾液のpHが6.5以下、かつ電気伝導度が12μS/cm以下となるまで洗浄と濾過を繰り返すのが好ましい。
(8)乾燥工程
この乾燥工程では、洗浄処理されたトナー粒子を乾燥処理が施される。この乾燥工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機などが挙げられ、これらは特に限定されるものではない。なお、乾燥処理されたトナー粒子中の水分量は、5質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは2質量%以下とされる。
ここに、トナー粒子の水分量の測定はカール・フィッシャー電量滴定法にて実施される。具体的には、水分計「AO−6、AQI−601」(AQ−6用インターフェイス)、加熱気化装置「LE−24S」からなる自動熱気化水分測定システム「AQS−724」(平沼産業社製)を用い、20℃、50%RHの環境下にて24時間放置したトナー粒子0.5gをガラス製20mlのサンプル管に精密に秤量して入れ、テフロン(登録商標)コートのシリコーンゴムパッキングを用いて密栓し、以下の測定条件および試薬にてこの密栓した環境中に存在する水分量の測定を行う。さらに、この密栓した環境中の水分量を補正するため、空のサンプルを同時に2本測定する。
・試料加熱温度:110℃
・試料加熱時間:1分
・窒素ガス流量:150mL/分
・試薬:対極液(陰極液);ハイドラナール クーロマット CG−K(HYDRANAL(R)−Coulomat CG−K)、発生液(陽極液);ハイドラナール クーロマット AK(HYDRANAL(R)−Coulomat AK)。
また、乾燥処理されたトナー粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集して凝集体を形成している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサーなどの機械式の解砕装置を使用することができる。
(9)外添剤添加工程
この外添剤添加工程は、乾燥処理されたトナー粒子に、流動特性、帯電特性の調整およびクリーニング性の向上などの目的で、荷電制御剤や種々の無機微粒子、有機微粒子、および滑剤などの微粒子状の外添剤を添加する工程である。外添剤を添加するために使用される装置としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの種々の公知の混合装置を挙げることができる。
外添剤として使用できる微粒子としては、シリカ、チタニア、アルミナなどの無機酸化物粒子が好ましく、さらに、これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤などによって疎水化処理されていることが好ましい。
この外添剤の添加量は、トナー中に0.1〜5.0質量%、好ましくは0.5〜4.0質量%である。また、外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
<第2形態>
また、トナーの製造方法の具体的な別の一例として、第1形態における融合工程(5)と架橋工程(6)との順番を逆順に行うことの他は同様に行う方法を挙げることもできる。
具体的には、上述と同様に、(1−A−1)結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液調製工程、(1−B−1)非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液調製工程、(1−B−2)不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液調製工程、(1−C)着色剤微粒子分散液調製工程、(2)凝集工程、(3)付着工程および(4)凝集停止工程を経て製造されたコア−シェル型凝集粒子に、融合が進行しない条件、かつ、不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子による重合性不飽和結合のラジカル重合反応が進行する条件において、反応系にラジカル重合開始剤を添加することにより、架橋工程を実施した後、架橋構造が形成されたコア−シェル型凝集粒子を融合させることにより、架橋非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂および非晶性ポリエステル樹脂を含む結着樹脂中に着色剤、離型剤、荷電制御剤などを含有してなるトナー粒子を製造することができる。
<第3形態>
また、トナーの製造方法の具体的なさらに別の一例として、第1形態における融合工程(5)と架橋工程(6)とを同時に行うことの他は同様に行う方法を挙げることもできる。
具体的には、上述と同様に、(1−A−1)結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液調製工程、(1−B−1)非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液調製工程、(1−B−2)不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液調製工程、(1−C)着色剤微粒子分散液調製工程、(2)凝集工程、(3)付着工程および(4)凝集停止工程を経て製造されたコア−シェル型凝集粒子に、不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子による重合性不飽和結合のラジカル重合反応が進行する条件、かつ、融合が進行する条件において、反応系にラジカル重合開始剤を添加することにより、架橋工程と融合工程とを同時に実施して、架橋非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂および非晶性ポリエステル樹脂を含む結着樹脂中に、必要に応じて着色剤、離型剤、荷電制御剤などを含有してなるトナー粒子を製造することができる。
以上のようなトナーの製造方法によれば、水系媒体においてコア凝集粒子の表面に重合性不飽和結合を含有する非晶性ポリエステル樹脂による微粒子を所望の状態に付着させ終えた後に架橋構造の形成が行われるために、確実に架橋構造を有するポリエステル樹脂を含有する重合トナーを製造することができ、しかも、当該製造されたトナーは所望の組成および構造を有するトナー粒子についてシャープな粒度分布を有するものとなる。その結果、優れた低温定着性を有しながら、トナー粒子内に形成された架橋構造を有するポリエステル樹脂による優れた耐高温オフセット性および耐熱保管性を有し、かつ、形成される画像に適度な光沢を付与することができ、さらに、シャープな粒度分布による良好な帯電特性のために高い濃度階調の再現性が得られるトナーを、少ないエネルギーで製造することができる。
コア凝集粒子の表面に重合性不飽和結合を含有する不飽和非晶性ポリエステル樹脂による微粒子を付着させ終えた後に架橋構造の形成が行われることによって所望の組成および構造を有するトナー粒子を高い収率で得ることができる理由としては、以下のように考えられる。
すなわち、ラジカル重合開始剤を作用させる時点において、重合性不飽和結合を含有する不飽和非晶性ポリエステル樹脂による微粒子同士の凝集体の生成が抑制された状態となることから、ラジカル重合反応後、前記凝集体の架橋体の生成が抑制されるためであると考えられる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の態様に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
以下、本発明を下記の実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液Aの製造>
加熱乾燥した3口フラスコに、脂肪族ジカルボン酸としてドデカン二酸355.8質量部、脂肪族ジオールとして1,9−ノナンジオール254.3質量部、並びに触媒としてテトラブトキシチタン(Ti(O−n−Bu)4ともいう)2.0質量部を入れた。減圧操作により容器内の空気を抜いた後、窒素ガスにより置換して不活性雰囲気とし、機械撹拌にて180℃で5時間還流処理を行った後、不活性雰囲気のまま徐々に昇温し、200℃で3時間撹拌を行って粘稠な液体状の生成物を得た。さらに、空冷しながらこの生成物の分子量をGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)で測定しながら、重量平均分子量Mwが15,000になったところで減圧を解除して重縮合反応を停止させ、これにより、結晶性ポリエステル樹脂を合成した。得られた結晶性ポリエステル樹脂は、融点が69℃であった。撹拌動力を与えるアンカー翼の備えられた反応容器に、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールとを添加し、その後、得られた結晶性ポリエステル樹脂をハンマーミルで粗粉砕したものを徐々に添加して撹拌し、完全に溶解させて油相となるポリエステル樹脂溶液を得た。次いで、撹拌されている油相に希アンモニア水溶液を数量滴下して、さらに、この油相をイオン交換水に滴下して転相乳化させた後、エバポレータで減圧しながら溶剤の除去を行った。反応系には結晶性ポリエステル樹脂微粒子が生成しており(該微粒子が分散した分散液が形成されており)、さらに、この分散液にイオン交換水を追加して固形分を20質量%に調整して、結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液Aを調製した。得られた結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A中の結晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径を電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定したところ、173nmであった。
<コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−1の製造>
撹拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた反応容器に、多価カルボン酸成分として、テレフタル酸139.5質量部、イソフタル酸15.5質量部、および、多価アルコール成分として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンプロピレンオキサイド2モル付加物(分子量=460)290.4質量部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンエチレンオキサイド2モル付加物(分子量404)60.2質量部を仕込み、反応系の温度を1時間かけて190℃に上昇させ、反応系内が均一に撹拌されていることを確認した後、触媒としてTi(O−n−Bu)4を2.0質量%となる量を投入し、さらに、生成される水を留去しながら反応系の温度を同温度から6時間かけて240℃に上昇させ、さらに240℃に維持した状態で脱水縮合反応を6時間継続して行い、非晶性ポリエステル樹脂を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量Mpが12,000、重量平均分子量Mwが15,000であった。得られた非晶性ポリエステル樹脂を、上記した結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液Aの製造と同様の操作を行うことによって、非晶性ポリエステル樹脂微粒子が分散されてなる固形分が20質量%の非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−1を調製した。得られた非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−1中の非晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径を電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定したところ、216nmであった。
<コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−2の製造>
脱水縮合反応時間を8時間とした以外は、コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−1の製造と同様にして、コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−2を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量Mpが14,000、重量平均分子量Mwが18,000であった。また、非晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は220nmであった。
<コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−3の製造>
脱水縮合反応時間を7時間とした以外は、コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−1の製造と同様にして、コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−3を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量Mpが13,000、重量平均分子量Mwが16,000であった。また、非晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は219nmであった。
<コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−4の製造>
脱水縮合反応時間を10時間とした以外は、コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−1の製造と同様にして、コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−4を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量Mpが19,000、重量平均分子量Mwが24,000であった。また、非晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は215nmであった。
<コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−5の製造>
脱水縮合反応時間を9時間とした以外は、コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−1の製造と同様にして、コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−5を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量Mpが15,000、重量平均分子量Mwが19,000であった。また、非晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は221nmであった。
<コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−6の製造>
脱水縮合反応時間を11時間とした以外は、コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−1の製造と同様にして、コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−6を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量Mpが20,000、重量平均分子量Mwが25,000であった。また、非晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は216nmであった。
<コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−7の製造>
脱水縮合反応時間を15時間とした以外は、コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−1の製造と同様にして、コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−7を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量Mpが32,000、重量平均分子量Mwが39,000であった。また、非晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は210nmであった。
<コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−8の製造>
脱水縮合反応時間を3時間とした以外は、コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−1の製造と同様にして、コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−8を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量Mpが9,000、重量平均分子量Mwが11,000であった。また、非晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は213nmであった。
<コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−9の製造>
脱水縮合反応時間を14時間とした以外は、コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−1の製造と同様にして、コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−9を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量Mpが31,000、重量平均分子量Mwが39,000であった。また、非晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は213nmであった。
<コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−10の製造>
脱水縮合反応時間を5時間とした以外は、コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−1の製造と同様にして、コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−10を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量Mpが11,000、重量平均分子量Mwが14,000であった。また、非晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は217nmであった。
<コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−11の製造>
脱水縮合反応時間を16時間とした以外は、コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−1の製造と同様にして、コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−11を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量Mpが38,000、重量平均分子量Mwが48,000であった。また、非晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は222nmであった。
<コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−12の製造>
脱水縮合反応時間を2時間とした以外は、コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−1の製造と同様にして、コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−12を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量Mpが8,000、重量平均分子量Mwが10,000であった。また、非晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は210nmであった。
<コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−13の製造>
脱水縮合反応時間を13時間とした以外は、コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−1の製造と同様にして、コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−13を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量Mpが30,000、重量平均分子量Mwが38,000であった。また、非晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は208nmであった。
<コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−14の製造>
脱水縮合反応時間を4時間とした以外は、コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−1の製造と同様にして、コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−14を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量Mpが10,000、重量平均分子量Mwが13,000であった。また、非晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は219nmであった。
<コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−15の製造>
脱水縮合反応時間を12時間とした以外は、コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−1の製造と同様にして、コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−15を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量Mpが29,000、重量平均分子量Mwが36,000であった。また、非晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は214nmであった。
<シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−1の製造>
撹拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた反応容器に、多価カルボン酸成分として、フマル酸10.8質量部、テレフタル酸125.6質量部、イソフタル酸14質量部、多価アルコール成分として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンプロピレンオキサイド2モル付加物(分子量=460)290.4質量部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンエチレンオキサイド2モル付加物(分子量404)60.2質量部を仕込み、反応系の温度を1時間かけて190℃に上昇させ、反応系内が均一に撹拌されていることを確認した後、触媒としてTi(O−n−Bu)4を2.0質量%となる量を投入し、さらに、生成される水を留去しながら反応系の温度を同温度から6時間かけて240℃に上昇させ、さらに240℃に維持した状態で6時間脱水縮合反応を継続して重合反応を行うことにより、不飽和非晶性ポリエステル樹脂を得た。得られた不飽和非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量Mpが12,000、重量平均分子量Mwが15,000であった。得られた不飽和非晶性ポリエステル樹脂を、上記した結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液Aの製造と同様の操作を行うことによって、不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子が分散されてなる固形分が20質量%の不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−1を調製した。得られた不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−1中の不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径を電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定したところ、209nmであった。
<シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−2の製造>
脱水縮合反応時間を8時間とした以外は、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−1の製造と同様にして、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−2を得た。得られた不飽和非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量Mpが14,000、重量平均分子量Mwが18,000であった。また、不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は220nmであった。
<シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−3の製造>
脱水縮合反応時間を7時間とした以外は、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−1の製造と同様にして、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−3を得た。得られた不飽和非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量Mpが13,000、重量平均分子量Mwが16,000であった。また、不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は230nmであった。
<シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−4の製造>
脱水縮合反応時間を10時間とした以外は、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−1の製造と同様にして、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−4を得た。得られた不飽和非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量Mpが19,000、重量平均分子量Mwが24,000であった。また、不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は229nmであった。
<シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−5の製造>
脱水縮合反応時間を9時間とした以外は、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−1の製造と同様にして、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−5を得た。得られた不飽和非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量Mpが15,000、重量平均分子量Mwが19,000であった。また、不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は226nmであった。
<シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−6の製造>
脱水縮合反応時間を11時間とした以外は、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−1の製造と同様にして、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−6を得た。得られた不飽和非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量Mpが20,000、重量平均分子量Mwが25,000であった。また、不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は207nmであった。
<シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−7の製造>
脱水縮合反応時間を15時間とした以外は、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−1の製造と同様にして、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−7を得た。得られた不飽和非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量Mpが32,000、重量平均分子量Mwが39,000であった。また、不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は215nmであった。
<シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−8の製造>
脱水縮合反応時間を3時間とした以外は、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−1の製造と同様にして、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−8を得た。得られた不飽和非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量Mpが9,000、重量平均分子量Mwが11,000であった。また、不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は207nmであった。
<シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−9の製造>
脱水縮合反応時間を14時間とした以外は、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−1の製造と同様にして、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−9を得た。得られた不飽和非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量Mpが31,000、重量平均分子量Mwが39,000であった。また、不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は213nmであった。
<シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−10の製造>
脱水縮合反応時間を5時間とした以外は、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−1の製造と同様にして、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−10を得た。得られた不飽和非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量Mpが11,000、重量平均分子量Mwが14,000であった。また、不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は232nmであった。
<シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−11の製造>
脱水縮合反応時間を16時間とした以外は、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−1の製造と同様にして、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−11を得た。得られた不飽和非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量Mpが38,000、重量平均分子量Mwが48,000であった。また、不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は225nmであった。
<シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−12の製造>
脱水縮合反応時間を2時間とした以外は、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−1の製造と同様にして、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−12を得た。得られた不飽和非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量Mpが8,000、重量平均分子量Mwが10,000であった。また、不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は217nmであった。
<シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−13の製造>
脱水縮合反応時間を13時間とした以外は、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−1の製造と同様にして、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−13を得た。得られた不飽和非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量Mpが30,000、重量平均分子量Mwが38,000であった。また、不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は204nmであった。
<シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−14の製造>
脱水縮合反応時間を4時間とした以外は、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−1の製造と同様にして、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−14を得た。得られた不飽和非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量Mpが10,000、重量平均分子量Mwが13,000であった。また、不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は211nmであった。
<シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−15の製造>
脱水縮合反応時間を12時間とした以外は、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−1の製造と同様にして、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−15を得た。得られた不飽和非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量Mpが29,000、重量平均分子量Mwが36,000であった。また、不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は225nmであった。
<ブラック着色剤微粒子分散液D−1の製造>
イオン交換水250質量部にn−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム8質量部を混合溶解させ、カーボンブラック「リーガル330(キャボット社製)」を10質量部とC.I.ピグメントブルー15:3を40質量部とを入れてホモジナイザー「ウルトラタラックスT50」(IKA社製)により10分間分散させた後、超音波分散機で20分間分散処理することにより、ブラック着色剤微粒子の分散液を得た。得られた分散液にさらに、イオン交換水を添加して、固形分を20質量%に調整することにより、ブラック着色剤微粒子分散液D−1を調製した。得られたブラック着色剤微粒子分散液D−1中のブラック着色剤微粒子の体積基準のメジアン径は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定したところ、215nmであった。
<イエロー着色剤微粒子分散液D−2の製造>
イオン交換水250質量部にn−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム8質量部を混合溶解させ、ピグメントイエロー74を50質量部入れてホモジナイザー「ウルトラタラックスT50」(IKA社製)により10分間分散させた後、超音波分散機で20分間分散処理することにより、イエロー着色剤微粒子の分散液を得た。得られた分散液にさらに、イオン交換水を添加して、固形分を20質量%に調整することにより、イエロー着色剤微粒子分散液D−2を調製した。得られたイエロー着色剤微粒子分散液D−2中のイエロー着色剤微粒子の体積基準のメジアン径は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定したところ、117nmであった。
<マゼンタ着色剤微粒子分散液D−3の製造>
イオン交換水250質量部にn−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム8質量部を混合溶解させ、ピグメントレッド122 25質量部、ピグメントレッド238 25質量部入れてホモジナイザー「ウルトラタラックスT50」(IKA社製)により10分間分散させた後、超音波分散機で20分間分散処理することにより、マゼンタ着色剤微粒子の分散液を得た。得られた分散液にさらに、イオン交換水を添加して、固形分を20質量%に調整することにより、マゼンタ着色剤微粒子分散液D−3を調製した。得られたマゼンタ着色剤微粒子分散液D−3中のマゼンタ着色剤微粒子の体積基準のメジアン径は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定したところ、115nmであった。
<シアン着色剤微粒子分散液D−4の製造>
イオン交換水250質量部にn−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム8質量部を混合溶解させ、銅フタロシアニン(C.I.ピグメントブルー15:3)50質量部入れてホモジナイザー「ウルトラタラックスT50」(IKA社製)により10分間分散させた後、超音波分散機で20分間分散処理することにより、シアン着色剤微粒子の分散液を得た。得られた分散液にさらに、イオン交換水を添加して、固形分を20質量%に調整することにより、シアン着色剤微粒子分散液D−4を調製した。得られたシアン着色剤微粒子分散液D−4中のシアン着色剤微粒子の体積基準のメジアン径は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定したところ、121nmであった。
<離型剤微粒子分散液Eの製造>
イオン交換水240質量部にアニオン性界面活性剤「ネオゲンRK」(第一工業製薬社製)5質量部およびフィッシャートロプシュワックス「FNP−0090」(日本精鑞社製、融点89℃)60質量部を入れて95℃に加熱し、「ウルトラタラックスT50」(IKA社製)にて十分に分散させた後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理することにより、離型剤微粒子の分散液を得た。得られた分散液にさらにイオン交換水を添加して、固形分を20質量%に調整することにより、離型剤微粒子分散液Eを調製した。得られた離型剤微粒子分散液E中の離型剤微粒子の体積基準のメジアン径は、気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定したところ、223nmであった。
〔黒トナーの製造例1、黒トナー1〕
<凝集工程>
上記の結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A 130質量部、非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−1 600質量部、ブラック着色剤微粒子分散液D−1 80質量部、離型剤微粒子分散液E 70質量部およびイオン交換水500質量部を、ホモジナイザー「ウルトラタラックスT50」(IKA社製)に投入し、20℃に温度を保ちながら15分間混合し、次いで、凝集剤としてポリ塩化アルミニウム0.1質量部を添加し、pHが4.1〜4.3に維持されるように0.3モル/Lの硝酸水溶液または1モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を適宜滴下しながら、2時間混合分散を継続した。反応系内の体積平均のメジアン径をコールターマルチタイザー(ベックマン・コールター社製)により計測し、コア凝集粒子の体積基準のメジアン径が3.2μmであることを確認した。
<付着工程>
コア凝集粒子が形成された反応系を丸型ステンレス製フラスコに移し、そこに不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−1 120質量部を添加し、20℃で60分間撹拌して、コア凝集粒子の表面にさらに不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子を付着させ、コア−シェル型凝集粒子を形成した。
<凝集停止工程>
その後、エチレンジアミンテトラ酢酸4Na 2.5質量部を加え、pHが8〜8.5に維持されるように1モル/Lの水酸化ナトリウムを滴下して、不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子のコア凝集粒子の表面へのさらなる付着および反応系内に存在する粒子同士の凝集を停止させ、所望の組成を有するコア−シェル型凝集粒子を確保した。
この凝集停止工程を終えた直後、および1時間後のそれぞれのコア−シェル型凝集粒子の体積平均のメジアン径をコールターマルチタイザー(ベックマン・コールター社製)により測定したところ、それぞれ、6.57μm、6.55μmであり、粒径の大きな増加は観察されなかった。
<融合工程>
凝集停止工程において得られたコア−シェル型凝集粒子が形成された反応系を、80℃に加熱し、120分間撹拌することにより、コア−シェル型凝集粒子内のポリエステル樹脂微粒子を融着させることにより、未架橋のトナー粒子を得た。
<架橋工程>
融合工程において得られた未架橋のトナー粒子が形成された反応系に、過硫酸カリウム10.5質量部を添加し、80℃の温度で、さらに120分間の撹拌を継続してラジカル重合反応を行い、架橋構造を有するトナー粒子を得た。
<濾過・洗浄工程〜乾燥工程>
その後、多管式熱交換機を使用して、反応系を25℃まで冷却してから、ヌッチェ式吸引濾過機を用いて「No.5」(東洋濾紙社製)の濾紙を用いて濾過し、濾液のpHが6.5以下、かつ電気伝導度が12μS/cm以下となるまで洗浄と濾過を繰り返し、真空乾燥により12時間乾燥することにより、トナー粒子〔1X〕を得た。
<外添剤添加工程>
得られたトナー粒子〔1X〕100質量部に対し、酸化セリウム粒子(個数体積平均粒径0.55μm)2.5質量部、チタニア粒子(ドデシルトリメトキシシラン処理済み、体積平均粒径30nm)0.8質量部およびシリカ粒子(ヘキサメチルジンラザン処理済み、体積平均粒径100nm)1.2質量部を添加し、5Lヘンシェルミキサー(三井三池化工機社製)により、装置内の温度が45℃に維持されるように冷却水を流しながら10分間の混合処理を行ない、得られた混合物を網目開き45μmの風力篩分機(ハイボルターNR300、東京機械(株)製)によって粗大粒子を除去することにより、外添剤処理が施された黒トナー1を製造した。この黒トナー1の架橋度は35.0であった。
〔カラートナーの製造例1、カラートナー1〕
着色剤微粒子分散液としてD−2〜D−4を使用し、架橋工程における過硫酸カリウム7.5g、ラジカル重合反応時間を90分間とした以外は、〔黒トナーの製造例1、黒トナー1〕と同様にして、カラートナー1であるイエロー(Y)トナー1、マゼンタ(M)トナー1、シアン(C)トナー1を得た。これらのカラートナー1の架橋度は24.8であった。
〔黒トナーの製造例2、黒トナー2〕
コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−2、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−2を使用し、架橋工程における過硫酸カリウム7.5g、ラジカル重合反応時間を90分間とした以外は、〔黒トナーの製造例1、黒トナー1〕と同様にして、黒トナー2を得た。この黒トナー2の架橋度は24.7であった。
〔カラートナーの製造例2、カラートナー2〕
コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−3、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−3、および着色剤微粒子分散液としてD−2〜D−4を使用し、架橋工程におけるラジカル重合反応時間を90分間とした以外は、〔黒トナーの製造例1、黒トナー1〕と同様にして、カラートナー2であるY、M、Cトナー2を得た。これらのカラートナー2の架橋度は29.9であった。
〔黒トナーの製造例3、黒トナー3〕
コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−3、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−3を使用し、架橋工程におけるラジカル重合反応時間を90分間とした以外は、〔黒トナーの製造例1、黒トナー1〕と同様にして、黒トナー3を得た。この黒トナー3の架橋度は29.6であった。
〔カラートナーの製造例3、カラートナー3〕
コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−2、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−2、および着色剤微粒子分散液としてD−2〜D−4を使用し、架橋工程における過硫酸カリウム5.0g、ラジカル重合反応時間を60分間とした以外は、〔黒トナーの製造例1、黒トナー1〕と同様にして、カラートナー3であるY、M、Cトナー3を得た。これらのカラートナー3の架橋度は15.2であった。
〔黒トナーの製造例4、黒トナー4〕
コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−4、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−4を使用し、架橋工程における過硫酸カリウム5.0g、ラジカル重合反応時間を60分間とした以外は、〔黒トナーの製造例1、黒トナー1〕と同様にして、黒トナー4を得た。この黒トナーの架橋度は15.1であった。
〔カラートナーの製造例4、カラートナー4〕
コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−1、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−1、および着色剤微粒子分散液としてD−2〜D−4を使用した以外は、〔黒トナーの製造例1、黒トナー1〕と同様にして、カラートナー4であるY、M、Cトナー4を得た。これらのカラートナー4の架橋度は35.0であった。
〔黒トナーの製造例5、黒トナー5〕
コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−5、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−5を使用し、架橋工程における過硫酸カリウム5.0g、ラジカル重合反応時間を30分間とした以外は、〔黒トナーの製造例1、黒トナー1〕と同様にして、黒トナー5を得た。この黒トナー5の架橋度は10.0であった。
〔カラートナーの製造例5、カラートナー5〕
コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−5、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−5、および着色剤微粒子分散液としてD−2〜D−4を使用し、架橋工程における過硫酸カリウム5.0g、ラジカル重合反応時間を30分間とした以外は、〔黒トナーの製造例1、黒トナー1〕と同様にして、カラートナー5であるY、M、Cトナー5を得た。これらのカラートナー5の架橋度は10.0であった。
〔黒トナーの製造例6、黒トナー6〕
コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−6、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−6を使用し、架橋工程における過硫酸カリウム12.5g、ラジカル重合反応時間を120分間とした以外は、〔黒トナーの製造例1、黒トナー1〕と同様にして、黒トナー6を得た。この黒トナー6の架橋度は50.0であった。
〔カラートナーの製造例6、カラートナー6〕
コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−2、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−2、および着色剤微粒子分散液としてD−2〜D−4を使用し、架橋工程における過硫酸カリウム12.5g、ラジカル重合反応時間を120分間とした以外は、〔黒トナーの製造例1、黒トナー1〕と同様にして、カラートナー6であるY、M、Cトナー6を得た。これらのカラートナー6の架橋度は50.0であった。
〔黒トナーの製造例7、黒トナー7〕
コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−7、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−7を使用した以外は、〔黒トナーの製造例1、黒トナー1〕と同様にして、黒トナー7を得た。この黒トナー7の架橋度は35.0であった。
〔カラートナーの製造例7、カラートナー7〕
コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−12、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−12、および着色剤微粒子分散液としてD−2〜D−4を使用し、架橋工程における過硫酸カリウム7.5g、ラジカル重合反応時間を90分間とした以外は、〔黒トナーの製造例1、黒トナー1〕と同様にして、カラートナー7であるY、M、Cトナー7を得た。これらのカラートナー7の架橋度は24.8であった。
〔黒トナーの製造例8、黒トナー8〕
コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−8、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−8を使用した以外は、〔黒トナーの製造例1、黒トナー1〕と同様にして、黒トナー8を得た。この黒トナー8の架橋度は34.0であった。
〔カラートナーの製造例8、カラートナー8〕
コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−13、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−13、および着色剤微粒子分散液としてD−2〜D−4を使用し、架橋工程における過硫酸カリウム7.5g、ラジカル重合反応時間を60分間とした以外は、〔黒トナーの製造例1、黒トナー1〕と同様にして、カラートナー8であるY、M、Cトナー8を得た。これらのカラートナー8の架橋度は23.0であった。
〔黒トナーの製造例9、黒トナー9〕
コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−9、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−9を使用し、架橋工程における過硫酸カリウム7.5g、ラジカル重合反応時間を60分間とした以外は、〔黒トナーの製造例1、黒トナー1〕と同様にして、黒トナー9を得た。この黒トナー9の架橋度は20.0であった。
〔カラートナーの製造例9、カラートナー9〕
コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−14、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−14、および着色剤微粒子分散液としてD−2〜D−4を使用した以外は、〔黒トナーの製造例1、黒トナー1〕と同様にして、カラートナー9であるY、M、Cトナー9を得た。これらのカラートナー9の架橋度は33.6であった。
〔黒トナーの製造例10、黒トナー10〕
コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−10、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−10を使用し、架橋工程における過硫酸カリウム7.5g、ラジカル重合反応時間を60分間とした以外は、〔黒トナーの製造例1、黒トナー1〕と同様にして、黒トナー10を得た。この黒トナー10の架橋度は22.0であった。
〔カラートナーの製造例10、カラートナー10〕
コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−15、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−15、および着色剤微粒子分散液としてD−2〜D−4を使用し、架橋工程におけるラジカル重合反応時間を90分間とした以外は、〔黒トナーの製造例1、黒トナー1〕と同様にして、カラートナー10であるY、M、Cトナー10を得た。これらのカラートナー10の架橋度は30.0であった。
〔黒トナーの製造例11、黒トナー11〕
コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−11、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−11を使用した以外は、〔黒トナーの製造例1、黒トナー1〕と同様にして、黒トナー11を得た。この黒トナー11の架橋度は35.3であった。
〔カラートナーの製造例11、カラートナー11〕
コア用 非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液B−12、シェル用 不飽和非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液C−12、および着色剤微粒子分散液としてD−2〜D−4を使用した以外は、〔黒トナーの製造例1、黒トナー1〕と同様にして、カラートナー11であるY、M、Cトナー11を得た。これらのカラートナー11の架橋度は33.9であった。
なお、上記黒トナー1〜11及びカラートナー1〜11の架橋度は、トナー粒子中の有機溶剤に対する不溶分を測定することで算出(測定方法は上記に記載した通りである)したものである。
上記トナーの製造例により得られた黒トナー1〜11中の非晶性ポリエステル樹脂及びカラートナー1〜11中の非晶性ポリエステル樹脂の分子量、並びに黒トナー1〜11及びカラートナー1〜11の架橋度を下記表1、2に示す。
(実施例1〜14及び比較例1〜3)
上記トナーの製造例により得られた黒トナー1〜11及びカラートナー1〜11の中から、それぞれ表3に示す実施例1〜14及び比較例1〜3の黒トナー及びカラートナーを組み合わせたトナーセットを用いて、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び黒色(K)の各色の現像剤を下記の「各色の現像剤の製造」に従って作製した。
(各色の現像剤の製造)
表3に示す実施例1〜14及び比較例1〜3の各トナーセットを構成する黒トナーおよび各カラートナーに対して、シリコーン樹脂を被覆した体積平均粒径60μmのフェライトキャリアをトナー濃度が6質量%となるように添加して混合することにより、実施例1〜14及び比較例1〜3に用いる各色の現像剤1〜11を製造した。
詳しくは、実施例1では、トナーセットを構成する黒トナー1および各カラートナー1に対して、シリコーン樹脂を被覆した体積平均粒径60μmのフェライトキャリアをトナー濃度が6質量%となるように添加して混合することにより、実施例1に用いる黒色の現像剤1及び各カラーの現像剤1を作製した。また実施例7では、トナーセットを構成する黒トナー5および各カラートナー3に対して、シリコーン樹脂を被覆した体積平均粒径60μmのフェライトキャリアをトナー濃度が6質量%となるように添加して混合することにより、実施例7に用いる黒色の現像剤5及び各カラーの現像剤3を作製した。他の実施例及び比較例も、上記した実施例1、7と同様にして、各色の現像剤を製造した。
[評価]
(1)中間転写ベルトのフィルミング性評価
実施例1〜14及び比較例1〜3で用意した各色の現像剤を用いて画像形成を行い、フィルミングの評価を行った。具体的には、コニカミノルタ株式会社製bizhub PRO(登録商標) C6500に、実施の形態で示した弾性中間転写ベルト(図1参照)を搭載し、実施例1〜14及び比較例1〜3で用意した17種類のトナーセットによる各色の現像剤を用いて50mm×50mmのベタ画像を有する評価チャートを連続的に50万枚印字した。中間転写ベルトの周長は1000mmとし、移動速度Vは250mm/秒とした。そして、連続印字後の中間転写ベルトの画像形成側表面について分光測色計(コニカミノルタ株式会社製、CM−2002)で測色し、ΔEを算出した。
なお、以下の基準でフィルミング性を評価した。ΔE及び評価結果を表3に示す。
<フィルミング性評価基準>
◎:ΔEが0以上1未満
○:ΔEが1以上4未満
△:ΔEは4以上6未満
×:ΔEが6以上。
(2)低温定着性(折り定着性)
市販の複合プリンタのフルカラー複写機「bizhub PRO(登録商標) C6501」(コニカミノルタ株式会社製)において、定着装置を定着用ヒートローラの表面温度を100〜210℃の範囲で変更することができるように改造したものに、実施例1〜14及び比較例1〜3で用意した各色の現像剤を装填し、A4サイズの普通紙(坪量80g/m2)上に、トナー付着量11mg/10cm2のベタ画像を定着させる定着実験を、設定される定着温度を100℃、105℃、・・・と5℃刻みで増加させるよう変更しながら繰り返し行った。次いで、各定着温度の定着実験において得られたプリント物を、折り機で前記ベタ画像に荷重をかけるように折り、これに0.35MPaの圧縮空気を吹き付け、折り目を下記の評価基準に示す5段階にランク付けし、ランク3となる定着実験のうち最も定着温度の低い定着実験における定着温度を、下限定着温度として評価した。この下限定着温度が低ければ低いほど低温定着性に優れることを示す。得られた低温定着性の評価結果及び下限定着温度を下記表3に示す。
<折り定着性の評価基準>
ランク5:全く折り目なし
ランク4:一部折れ目に従った剥離あり。
ランク3:折れ目に従った細かい線状の剥離あり。
ランク2:折れ目に従った太い線状の剥離あり。
ランク1:大きな剥離あり。
<低温定着性の評価基準>
◎:下限定着温度100℃以上110℃未満
〇:下限定着温度110℃以上120℃未満
△:下限定着温度120℃以上130℃未満
×:下限定着温度130℃以上
上記表1〜3の結果から、実施例1〜14では、比較例3に比して、黒トナーとカラートナーとの分子量差を小さくすることで、全色差がなく、同レベルの低温定着性(低温定着性の評価基準が○ないし◎;即ち下限定着温度100℃以上120℃未満)を有することが確認できた。一方、比較例3では、黒トナーとカラートナーとの分子量差が大きいため、色間での定着下限温度に差を生じることから、低温定着性(低温定着性の評価基準が×;即ち下限定着温度130℃以上)が達成できないことが確認できた。
さらに、実施例1〜14では、比較例1〜3に比して、黒色とカラー(イエロー、マゼンタ、シアン)との色間で架橋度の異なる(架橋度差が5〜20となる)黒トナーとカラー(YMC)トナーとを混合して使用することで、中間転写ベルトとクリーニングブレードとの間でのフィルミング発生を抑制でき(フィルミング性評価基準が○ないし◎であり)、尚且つ、全色差がなく、同レベルの低温定着性(低温定着性の評価基準が○ないし◎;即ち下限定着温度100℃以上120℃未満)を有することが確認できた。一方、比較例1、3では、架橋度差が5未満となる黒トナーとカラー(YMC)トナーを混合して使用するため、中間転写ベルトとクリーニングブレードとの間でのフィルミング発生を十分に抑制できない(フィルミング性評価基準が×である)ことが確認できた。更に、比較例2では、架橋度差が20超となる黒トナーとカラー(YMC)トナーを混合して使用するため、架橋分のトナー可溶分に対する影響は無視できず、色毎で定着下限温度に差を生じることから、低温定着性(低温定着性の評価基準が×;即ち下限定着温度130℃以上)が達成できないことが確認できた。
また、上記表1〜3の結果から、実施例1〜14では、比較例3に比して、重量平均分子量Mwが10,000以上40,000以下であることから、耐熱保管性の確保の点で優れ、さらに低温定着性を容易に達成できることが確認できた。一方、比較例3に比して、重量平均分子量Mwが30,000より大きい(38,000)ことからも、低温定着性が達成できないことが確認できた。
さらに、実施例1〜14で見た場合、実施例1、3、4、6、8、10〜14では、架橋度差が7〜20となる黒トナーとカラー(YMC)トナーを混合して使用することで、中間転写ベルトとクリーニングブレードとの間でのフィルミング発生をより効果的に抑制できる(フィルミング性評価基準が◎である)ことが確認できた。
さらに、実施例1〜14で見た場合、実施例1〜10では、黒トナーとカラートナーの分子量差をより小さくする(ピーク分子量Mpの差;15,000以下、重量平均分子量Mwの差;20,000以下)ことで、全色差がなく、同レベルの低温定着性(低温定着性の評価基準が○ないし◎;下限定着温度100℃以上110℃以下)を有することが確認できた。更に実施例1〜7、9〜10では、黒トナーとカラートナーとの分子量差をより一層小さくする(ピーク分子量Mpの差;7,500以下、重量平均分子量Mwの差;9,500以下)ことで、全色差がなく、同レベルの低温定着性(低温定着性の評価基準が◎;下限定着温度100℃以上105℃以下)を有することが確認できた。
以上のことから、実施例1〜14で見た場合、架橋度差が7〜20で、分子量差をピーク分子量Mpの差;15,000以下、重量平均分子量Mwの差;20,000以下とより小さくした1、3、4、6、8、10が、低温定着性に優れ、尚且つ中間転写体(特に中間転写ベルト)とクリーニングブレードとの間でのフィルミング発生をより抑制できるものといえる。更に架橋度差が7〜20で、分子量差をピーク分子量Mpの差;7,500以下、重量平均分子量Mwの差;9,500以下とより一層小さくした1、3、4、6、10が、低温定着性に優れ、尚且つ中間転写体(特に中間転写ベルト)とクリーニングブレードとの間でのフィルミング発生をより一層、効果的に抑制できるものといえる。