JP4495817B2 - 制癌性抗生物質チアジノトリエノマイシンf及びgと抗生物質ベンズオキサゾマイシン - Google Patents

制癌性抗生物質チアジノトリエノマイシンf及びgと抗生物質ベンズオキサゾマイシン Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は制癌活性を有するが抗菌活性を全くまたは殆んど示さない新規な制癌性抗生物質に関する。詳しくは、本発明はヒト子宮頸部癌由来細胞株HeLa-S3、ヒト上顎癌株KB細胞及びヒト胃癌株SC-6の増殖を強く阻害する新規抗生物質チアジノトリエノマイシンFおよびチアジノトリエノマイシンGならびにベンオキサゾマイシン、あるいはそれらの塩に関する。さらに、本発明はこれら新規な制癌性抗生物質の製造法にも関する。また、本発明は、それら新規な制癌性抗生物質、あるいはそれらの製薬学的に許容される塩を有効成分とする制癌剤をも包含する。
【0002】
【従来の技術】
微生物が生産する抗生物質であって制癌活性を有するものは数多く知られている。また、本発明のチアジノトリエノマイシン群に近似する化学構造を有して且つ微生物の生産する既知の抗生物質には、これまでにトリエノマイシン[I. UMEZAWA,ザ・ジャーナル・オブ・アンチビオティクス、第38巻、699-705頁(1985)]とマイコトリエニン[M. SUGITA, ザ・ジャーナル・オブ・アンチビオティクス、第35巻、1460-1479頁(1982)]が報告されている。
癌は複数の癌遺伝子及び(又は)癌抑制遺伝子の変異が組み合わせて生じたことに原因して起ると考えられることから、一つの制癌性物質を有効成分として全ての種類の癌に有効な制癌剤はあり得ないと考えられる。そこで新規な制癌剤物質は常に要望されている。
【0003】
本発明者らは、ある種の癌細胞に対して選択的に細胞毒性を示し且つ制癌活性を有すると認められる新規な抗生物質を得る目的で、微生物の生産する新規な抗生物質について研究を行ってきた。その結果、先に、土壌より分離された放線菌でMJ672-m3の菌株番号を付した菌株を培養し、得られた培養物中に制癌活性の物質の複数が産生されていることを見出し、それら物質を単離してそれぞれ新規な化合物であると認め、チアジノトリエノマイシンA、B、C、DまたはEと命名した。
【0004】
すなわち、先に、本発明者らは、次の一般式(A)
Figure 0004495817
(式中、Rはシクロヘキシル基またはシクロヘキセニル基をである)で表されるチアジノトリエノマイシンAまたはB、ならびに次の一般式(B)
Figure 0004495817
〔式中、Rはシクロヘキシル基、シクロヘキセニル基あるいはイソブチル基である〕で表されるチアジノトリエノマイシンC、DまたはEを得ることができた。この一群のチアジノトリエノマイシンA〜Eは、ヒトのある種の癌由来細胞株に選択的に細胞毒性を示す物質であり、たとえば、ヒト子宮頸部癌株のC33A及びHeLa細胞、ならびにヒト大腸癌及びヒト胃癌細胞に細胞毒性を有すると認められた(特開平7-242673号公報、参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、さらにすぐれた抗癌活性をもつ新規な制癌性物質を得ることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の放線菌MJ672-m3株の産生する物質について別段の研究を進めて、前記のチアジノトリエノマイシンA〜Eとは別に、3種の新規な抗生物質が産生されていることを今回、発見した。これら3種の抗生物質を単離してそれらの化学構造を決定することに成功し、それぞれをチアジノトリエノマイシンF、チアジノトリエノマイシンGおよびベンオキサゾマイシンと命名した。チアジノトリエノマイシンFおよびGは後記の一般式(I)で表される化合物であり、またベンオキサゾマイシンは後記の式(II)で表される化合物であり、また後述される癌細胞に対して殺癌細胞活性を有することが認められた。
【0007】
従って、第1の本発明においては、次の一般式(I)
Figure 0004495817
(式中、Rはシクロヘキセニル基またはシクロヘキシル基を示す)で表される化合物である制癌性抗生物質、チアジノトリエノマイシンFまたはG、あるいはそれの製薬学的に許容される塩が提供される。
【0008】
第1の本発明による一般式(I)の化合物には、次式(Ia)
Figure 0004495817
で表されるチアジノトリエノマイシンFと、次式(Ib)
Figure 0004495817
で表されるチアジノトリエノマイシンGとがある。
【0009】
本発明のチアジノトリエノマイシンFおよびGのいずれも弱酸性の物質であるが、製薬学的に許容できる無機酸、例えば塩酸、硫酸、リン酸等、あるいは製薬学的に許容できる有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸と反応させると、製薬学的に許容される酸付加塩にすることができる。
【0010】
次に、第1の本発明の式(Ia)のチアジノトリエノマイシンFの物理化学的性質を記載する。
(1)形状:白色粉末
(2)分子式:C374737
(3)分子量:677
(4)比旋光度:[α]D 25 +179.3°(c 0.10, MeOH)
(5)質量分析:FAB-MS(m/z),678(M+H)+ , 676(M-H)-
(6)溶解性:クロロホルム、メタノール、アセトン、ピリジン、ジメチルスルホキシドに可溶、水とヘキサンに難溶。
【0011】
(7)酸性、中性、塩基性の区別:弱酸性物質
(8)TLC のRf値:
(i)シリカゲル薄層クロマトグラフィー(メルク社 Art 5715)にてクロロホルム−メタノール(10:1)で展開した時;0.57
(ii)シリカゲル薄層クロマトグラフィー(メルク社 Art 5715)にてトルエン−アセトン(3:2)で展開した時;0.43
(iii)シリカゲル薄層クロマトグラフィー(メルク社 Art 5715)にてベンゼン−クロロホルム−メタノール(3:7:3)で展開した時;0.73
【0012】
(9)HPLC(高速液体カラムクロマトグラフィー)の保持時間(分);9.0
測定条件は次の通りである。
カラム:μ-Bondasphere 5μC18−100Å,3.9mm×15cm
流液:65% メタノール
流速:1ml/min
検出波長:260 nm
カラム温度:40℃
(10)紫外部吸収スペクトル(メタノール中)の極大波長(nm), (logε):
210 (4.09)
248 (4.80)
258 (4.77)
270 (4.77)
282 (4.65)
310 (3.36)
(11)赤外部吸収スペクトル(KBr錠):添付図面の図1に示す。
赤外部吸収極大の波長(cm-1):3350, 2920, 2850, 1730, 1660, 1550, 1450, 1300, 1205, 1160, 1100, 1000
(12)1H-NMRスペクトル(重ピリジン中、500MHz、内部標準;テトラメチルシラン):添付図面の図2に示す。
(13)13C-NMRスペクトル(重ピリジン中、125MHz、内部標準;テトラメチルシラン):添付図面の図3に示す。
【0013】
さらに第1の本発明の式(Ib)のチアジノトリエノマイシンGの物理化学的性質を記載する。
(1)形状:白色粉末
(2)分子式:C374937
(3)分子量:679
(4)比旋光度:[α]D 25 +245.8°(c 0.29, MeOH)
(5)質量分析:FAB-MS(m/z),680(M+H)+ , 678(M-H)-
(6)溶解性:クロロホルム、メタノール、アセトン、ピリジン、ジメチルスルホキシドに可溶、水とヘキサンに難溶。
【0014】
(7)酸性、中性、塩基性の区別:弱酸性物質
(8)TLC のRf値:
(i)シリカゲル薄層クロマトグラフィー(メルク社 Art 5715)にてクロロホルム−メタノール(10:1)で展開した時;0.59
(ii)シリカゲル薄層クロマトグラフィー(メルク社 Art 5715)にてトルエン−アセトン(3:2)で展開した時;0.45
(iii)シリカゲル薄層クロマトグラフィー(メルク社 Art 5715)にてベンゼン−クロロホルム−メタノール(3:7:3)で展開した時;0.75
【0015】
(9)HPLC(高速液体カラムクロマトグラフィー)の保持時間(分);10.0
測定条件は次の通りである。
カラム:μ-Bondasphere 5μC18−100Å,3.9mm×15cm
流液:65% メタノール
流速:1ml/min
検出波長:260 nm
カラム温度:40℃
(10)紫外部吸収スペクトル(メタノール中)の極大波長(nm), (logε):
210 (4.31)
249 (4.79)
258 (4.75)
270 (4.75)
282 (4.61)
315 (3.71)
(11)赤外部吸収スペクトル(KBr錠):添付図面の図4に示す。
赤外部吸収極大の波長(cm-1):3400, 2950, 2850, 1740, 1660, 1580, 1540, 1460, 1390, 1210, 1100, 1000
(12)1H-NMRスペクトル(重ピリジン中、500MHz、内部標準;テトラメチルシラン):添付図面の図5に示す。
(13)13C-NMRスペクトル(重ピリジン中、125MHz、内部標準;テトラメチルシラン):添付図面の図6に示す。
【0016】
第1の本発明による一般式(I)で表されるチアジノトリエノマイシンFおよびチアジノトリエノマイシンGは、後記の試験例1で例証されるように、ある種のヒト癌細胞株に対して選択的に高い毒性を有し、癌細胞に選択的な増殖阻害活性もしくは制癌活性を示すものである。
【0017】
更に、既知のアンサマイシン系トリエンは、ピリキラリア・オリザエ、カンジダ・アルビカンス、サッカロミセス・セレビシエ、スタフィロコカス・アウレウス等の真菌または細菌に強い抗菌活性を有するが、第1の本発明のチアジノトリエノマイシンFおよびGの上記の菌に対する最小有効阻止濃度(MIC)を寒天希釈法で測定すると、いずれの菌に対しても100μg/ml以上の数値であって、抗菌活性が認められなかった。従って、第1の本発明のチアジノトリエノマイシンFおよびGは抗菌活性が極めて弱いか又は全くないという特色がある。
【0018】
更に、第2の本発明によると、ストレプトミセス属に属する一般式(I)のチアジノトリエノマイシンFまたはGを生産する菌を培養し、その培養物から制癌性抗生物質チアジノトリエノマイシンFまたはチアジノトリエノマイシンG、あるいはそれら両者を採取することを特徴とする、制癌性抗生物質チアジノトリエノマイシンFおよび(または)チアジノトリエノマイシンGの製造法が提供される。
【0019】
第2の本発明の方法で用いうるチアジノトリエノマイシンFまたはGの生産菌の一例には、平成3年10月、微生物化学研究所において、東京都太田区中馬込の土壌より分離された放線菌で、MJ672-m3の菌株番号が付された菌がある。
【0020】
次に、MJ672-m3株の菌学的性状を記載する。
1.形態
MJ672-m3株は、分枝した基生菌糸よりらせん状の気菌糸を伸長する。輪生枝及び胞子のうは認められない。成熟した胞子鎖には10〜50個の円筒形の胞子の連鎖を認め、胞子の大きさは約 0.5〜0.7 ×0.8 〜1.1 ミクロンであった。なお、胞子の表面はとげ状である。
【0021】
2.各種培地における生育状態
色の記載について〔 〕内に示す標準は、コンティナー・コーポレーション・オブ・アメリカのカラー・ハーモニー・マニュアル(Container Corporation of AmericaのColor harmony manual)を用いた。
(1)シュクロース・硝酸塩寒天培地(27℃培養)
発育は黄色〔1ga, Lt Lemon Yellow〜lic, Chartreuse Yellow〕で、気菌糸は着生せず、溶解性色素は黄色味を帯びる。
(2)グルコース・アスパラギン寒天培地(27℃培養)
黄色〔1 la, Lemon Yellow〕〜うす黄茶〔2ic, Honey Gold〜2pe, Mustard Gold〕の発育上に、白の気菌糸をわずかにうっすらと着生し、溶解性色素は茶色味を帯びる。
(3)グリセリン・アスパラギン寒天培地(ISP-培地5、27℃培養)
うす黄茶〔2ic, Honey Gold〕〜明るい茶灰〔2ie, Lt Mustard Tan〕の発育上に、白の気菌糸を着生する。溶解性色素は茶色味を帯びる。
(4)スターチ・無機塩寒天培地(ISP-培地4、27℃培養)
うす黄茶〔1 1/2ic, Lt Antique Gold〜1 1/2 ne, Antique Gold〕の発育上に、白〜黄味灰〔1ea, Canary Yellow〕の気菌糸を着生する。溶解性色素は茶色味を帯びる。
【0022】
(5)チロシン寒天培地(ISP-培地7、27℃培養)
明るい茶灰〔2ie, Lt Mustard Tan〜2ig, Slate Tan〕の発育上に、白〜黄色〔1ga, Lt Lemon Yellow〕の気菌糸を着生する。溶解性色素は暗い茶を呈する。
【0023】
(6)栄養寒天培地(27℃培養)
発育は明るい茶灰〔2gc, Bamboo〜3gc, Lt Tan〕で、気菌糸は着生せず、溶解性色素は茶色味を帯びる。
(7)イースト・麦芽寒天培地(ISP-培地2、27℃培養)
うす黄茶〔2lg, Mustard Tan〕の発育上に、白の気菌糸をうっすらと着生し、溶解性色素は茶色を呈する。
(8)オートミール寒天培地(ISP-培地3、27℃培養)
黄色〔1 1/2la, Brite Yellow〕〜うす黄茶〔2ec, Biscuit〜1 1/2ne, Antique Gold〕の発育上に、白の気菌糸を着生する。溶解性色素は黄色味を帯びる。
(9)グリセリン・硝酸塩寒天培地(27℃培養)
発育は黄色〔1 la, Lemon Yellow〕〜うす黄茶〔1 1/2ne, Antique Gold〜2ng, Dull Gold〕で、気菌糸は着生せず、溶解性色素は茶色味を帯びる。
【0024】
(10)スターチ寒天培地(27℃培養)
黄色〔1ga, Lt Lemon Yellow〜1ic, Chartreuse Yellow〕の発育上に、白の気菌糸をごくわずかに着生し、溶解性色素は黄色味を帯びる。
(11)リンゴ酸石灰寒天培地(27℃培養)
発育は黄色〔1 la, Lemon Yellow〕〜うす黄茶〔1 1/2ia, Sunlight Yellow〜1 1/2 lc, Gold〕で、気菌糸は着生せず、溶解性色素は黄色味を帯びる。
(12)セルロース(ろ紙片添加合成後、27℃培養)
35日間の培養では生育しなかった。
【0025】
(13)ゼラチンの穿刺培養
15%単純ゼラチン培地(20℃培養)では、うす黄の発育上に、白の気菌糸を着生し、溶解性色素は茶色味を帯びる。グルコース・ペプトン・ゼラチン培地(27℃培養)の場合、茶灰の発育上に、白の気菌糸をわずかにうっすらと着生し、溶解性色素は暗い茶を呈する。
(14)脱脂牛乳(37℃培養)
うす黄〜うす黄茶の発育上に、白の気菌糸をわずかにうっすらと着生し、溶解性色素は暗い茶を呈する。
【0026】
3.生理的性質
(1)生育温度範囲
イースト・スターチ寒天培地(溶性デンプン 1.0%、イースト・エキス 0.2%、ひも寒天 3.0%、pH 7.0)を用い、10℃、20℃、24℃、27℃、30℃、37℃、50℃の各温度で試験した結果、10℃および50℃を除き、そのいずれの温度でも生育する。生育至適温度は27℃〜30℃付近と思われる。
(2)ゼラチンの液化(15%単純ゼラチン培地、20℃培養:グルコース・ペプトン・ゼラチン培地、27℃培養)
単純ゼラチン培地においては21日間の培養で液化が認められなかった。グルコース・ペプトン・ゼラチン培地においては培養後17日目頃より液化が認められ、5週間を経過しても完了しなかった。その作用は弱い方である。
【0027】
(3)スターチの加水分解(スターチ・無機塩寒天培地、ISP-培地4及びスターチ寒天培地、いずれも27℃培養)
いずれの培地においても培養後6日目頃より水解性が認められ、その作用は中等度〜強い方である。
(4)脱脂牛乳の凝固・ペプトン化(脱脂牛乳、37℃培養)
培養後7日目頃より凝固なしに、ペプトン化が始まり、培養3週間で完了し た。その作用は中等度〜強い方である。
(5)メラニン様色素の生成(トリプトン・イースト・ブロス、ISP-培地1:ペプトン・イースト・鉄寒天培地、ISP-培地6:チロシン寒天培地、ISP-培地7:いずれも27℃培養)
いずれの培地においても陽性である。
【0028】
(6)炭素源の利用性(プリドハム・ゴトリーブ寒天培地、ISP-培地9、27℃培養)
D−グルコース、L−アラビノース、ラクトース、D−フラクトース、シュクロース、イノシトール、ラフィノース及びD−マンニトールを利用して発育し、ラムノースは利用しない。D−キシロースの利用の存否は判然としない。
(7)硝酸塩の還元反応(0.1%硝酸カリウム含有ペプトン水、ISP-培地8、27℃培養)
陰性である。
(8)セルロースの分解(ろ紙片添加合成液、27℃培養)
35日間の観察で分解は認められない。
【0029】
以上の性状を要約すると、MJ672-m3株は、その形態上、基生菌糸よりらせん状の気菌糸を伸長し、輪生枝及び胞子のうは認められない。成熟した胞子鎖は10〜50個の円筒形の胞子を連鎖し、その表面はとげ状である。種々の培地で、発育は黄色〜うす黄茶、気菌糸は白を呈し、溶解性色素は黄色味〜茶色味を帯びる。生育至適温度は27〜30℃付近である。メラニン様色素の生成は陽性、蛋白分解力は中等度、スターチの水解性は中等度〜強い方である。なお、細胞壁に含まれる2,6-ジアミノピメリン酸はLL−型であった。
【0030】
これらの性状より、MJ672-m3株は、ストレプトミセス(Streptomyces)属に属すると考えられる。近縁の既知菌種を検索するとストレプトミセス・ハワイエンシス(Streptomyces hawaiiensis)[文献1, Shirling, E. B. および D. Gottlieb, International Journal of Systematic Bacteriology、18巻, 316頁、1968年、文献2, Skerman, V. B. D., V. Mcgowan, およびP. H. A. Sneath, International Journal of Systematic Bacteriology、30巻、387頁、1980年〕、ストレプトミセス・ロンギスポルス(Streptomyces longisporus)〔文献1, Shirling, E. B. およびD. Gottlieb, International Journal of Systematic Bacteriology、18巻, 342頁、1968年、文献3, Skerman, V. B. D., V. Mcgowan, およびP. H. A. Sneath, International Journal of Systematic Bacteriology、30巻、391頁、1980年〕があげられる。
【0031】
MJ672-m3株がこれらの2種のストレプトミセスと異なるところは、両者が共にラムノースを利用する点である。その他では気菌糸の色調等に些少の相違点を認めるが、実地にこれら2菌種との比較実験にまたねばならない。そこで現時点では、MJ672-m3株をストレプトミセス・エスピー(Streptomyces sp.)MJ672-m3とする。なお、MJ672-m3株は工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託申請し、平成6年1月10日、FERM P-14047として受託された。
【0032】
チアジノトリエノマイシンFまたはGを生産する菌は、以下では単にチアジノトリエノマイシンFまたはG生産菌という。上記の抗生物質チアジノトリエノマイシンFまたはGはチアジノトリエノマイシンFまたはG生産菌を本抗生物質の生産に適した培地に接種し培養することにより生産される。培地としては、通常の放線菌の培養に用いられる栄養源含有培地でよい。その栄養源としては、例えば市販されているペプトン、肉エキス、コーン・スティープ・リカー、綿実粉、落花生粉、大豆粉、酵母エキス、MZ−アミン、カゼイン水解物、硝酸ソーダ、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウムなどの窒素源、及び市販されているグリセリン、しょ糖、でん粉、グルコース、ガラクトース、マンノース、糖蜜などの炭水化物、あるいは脂肪などの炭素源、及び食塩、リン酸塩、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウムなどの無機塩を使用できる。その他必要に応じて微量の金属塩、消泡剤としての動・植・鉱物油などを添加することもできる。これらのものは生産菌が利用し抗生物質チアジノトリエノマイシンFまたはGの生産に役立つものであればよく、放線菌の公知の培養材料はすべて用いることができる。
【0033】
チアジノトリエノマイシンFまたはGの大量生産には液体培養が好ましく、培養温度はチアジノトリエノマイシンを生産できる範囲に適用できる。培養は以上述べた条件を適用しチアジノトリエノマイシンFまたはG生産菌の性質に応じて適宜選択して行うことができる。
【0034】
好ましい培養方法として、チアジノトリエノマイシンFまたはG生産菌を栄養源含有培地に接種して好気的に発育させるが、このことにより、チアジノトリエノマイシンFまたはGを含む培養物が得られる。下記の組成をもつ培地が好適である。すなわち、ポリペプトン(日本製薬)0.4 %、トーストソーヤ(日清製油)1.0 %、イーストエキス(日本製薬)0.1 %、肉エキス(極東製薬)0.4 %、グルコース(和光純薬)5.0 %、塩化ナトリウム(和光純薬)0.25%、炭酸カルシウム(小宗化学薬品)0.5 %を含み且つpHを1N塩酸で 7.0に調整した培地が好適に使用できる。本抗生物質の生産はワッフル付き500mlのエルレンマイヤーフラスコ90本に上記培地を1本当たり110mlずつ加え、種母を加え、さらに5日間、27℃でロータリーシェーカーで振盪培養して行うのが好ましい。なお、通常は、培養4日目と5日目での培養物中のチアジノトリエノマイシンFおよびGの力価は同じであった。
【0035】
チアジノトリエノマイシンFおよびGは、培養濾液及び菌体の両方に存在する。培養濾液からはpH 4.0以下で酢酸エチル、n-ブタノール等、水不混和性の有機溶剤で抽出することができる。菌体よりメタノール、含水アセトン等の有機溶剤で抽出後、抽出液を減圧濃縮し、培養濾液と同様の方法で更に溶剤抽出することができる。
【0036】
上述の抽出法に加え、脂溶性物質の採取に用いられる公知の方法、例えば吸着クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等を適宜組み合わせ、あるいは繰り返すことにより純粋な形でチアジノトリエノマイシンFおよびチアジノトリエノマイシンGをそれぞれ別個に採取することができる。
【0037】
第2の本発明方法の培養工程並びに精製工程中でチアジノトリエノマイシンFまたはGの追跡は前記の試験法により、ヒト子宮頚癌細胞株としてのHeLa細胞またはヒト上顎癌細胞株のKB細胞に対する細胞毒性を測定することで行った。
【0038】
第3の本発明によると、前記の一般式(I)で表わされるチアジノトリエノマイシンFまたはG、あるいはそれの製薬学的に許容される塩を有効成分として含有することを特徴とする制癌剤が提供される。
【0039】
第1の本発明のチアジノトリエノマイシンFまたはGを医薬として用いる場合には、一般に経口的にまたは非経口的に投与できる。
【0040】
チアジノトリエノマイシンFまたはG、あるいはその製薬学的に許容できる塩を有効成分とする制癌剤は、賦形剤あるいは担体と混合し組成物の形とすることができ、そして注射剤、経口剤または坐剤などの製剤の形で投与される。賦形剤および担体としては製薬学上許容されるものが選ばれ、その種類および組成は投与経路や投与方法によって決まる。例えば、液状担体として水、アルコールもしくは大豆油、ゴマ油、ミネラル油などの動植物油、または合成油などが用いられる。固体担体としてマルトース、シュクロースなどの糖類、リジンなどのアミノ酸類、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、シクロデキス トリンなどの多糖類、ステアリン酸マグネシウムなどの有機酸塩などが使用される。
【0041】
注射剤として製剤する場合には、液状担体は一般に生理食塩水、各種緩衝液、グルコース、イノシトール、マンニトールなどの糖類溶液、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、などのグリコール類であることができる。また、イノシトール、マンニトール、グルコース、マンノース、マルトース、シュクロースなどの糖類、フェニルアラニンなどのアミノ酸類などの賦形剤と共に凍結乾燥製剤とし、それを投与時に注射用の適当な溶剤、例えば滅菌水、生理食塩水、ブドウ糖液、電解質溶液、アミノ酸などの静脈投与用液体に溶解して使用できる。
【0042】
製剤された組成物中におけるチアジノトリエノマイシンFまたはGの含量は製剤型により種々異なるが、通常は 0.1〜99重量%、好ましくは1〜90重量%である。例えば注射液の場合には、通常、0.1〜5重量%の含量でチアジノトリエノマイシンFまたはGを含むようにすることがよい。経口投与の場合には、前記固体担体もしくは液状担体と共に錠剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、ドライシロップ剤、液剤、シロップ剤などの形態で用いられる。カプセル、錠剤、顆粒、粉剤の場合、一般にチアジノトリエノマイシンFまたはGの含量は3〜100重量%、好ましくは5〜90重量%であり、残部は担体である。
【0043】
第1の本発明によるチアジノトリエノマイシンFまたはG、あるいはその塩の
投与量は、患者の年令、体重、症状、治療目的などにより決定される。しかし、その投与量は動物試験の結果など種々の状況を勘案して総投与量が一定量を越えない範囲で、連続的または間けつ的に投与できる。一定の条件下における投与の適量と投与回数は、専門医の決定による。
【0044】
更に、本発明者らによって今回得られた第3の新規な抗生物質であるベンオキサゾマイシンは、後記の式(II)で表される化合物であり、制癌活性を有する。第4の本発明においては、次式(II)
Figure 0004495817
で示される化合物である制癌性抗生物質、ベンオキサゾマイシン、あるいはそれの製薬学的に許容される塩が提供される。
第4の本発明によるベンオキサゾマイシンは、弱酸性物質であるが、製薬学的に許容できる各種の塩基と結合して酸付加塩を形成できる。
【0045】
次に第4の本発明の式(II)のベンオキサゾマイシンの物理化学的性質を記載する。
(1)形状:白色粉末
(2)分子式:C364826
(3)分子量:636
(4)比旋光度:[α]D 25 -165.7°(c 0.31, MeOH)
(5)質量分析:FAB-MS(m/z),636 M+,635(M-H)-
(6)溶解性:クロロホルム、メタノール、アセトン、ピリジン、ジメチルスルホキシドに可溶、水とヘキサンに難溶。
【0046】
(7)酸性、中性、塩基性の区別:弱酸性物質
(8)TLC のRf値:
(i)シリカゲル薄層クロマトグラフィー(メルク社 Art 5715)にてクロロホルム−メタノール(10:1)で展開した時;0.56
(ii)シリカゲル薄層クロマトグラフィー(メルク社 Art 5715)にてトルエン−アセトン(3:2)で展開した時;0.40
(iii)シリカゲル薄層クロマトグラフィー(メルク社 Art 5715)にてベンゼン−クロロホルム−メタノール(3:7:3)で展開した時;0.71
【0047】
(9)HPLC(高速液体カラムクロマトグラフィー)の保持時間(分);9.6
測定条件は次の通りである。
【0048】
カラム:μ-Bondasphere 5μC18-100Å,3.9mm×15cm
流液:65% メタノール
流速:1ml/min
検出波長:260 nm
カラム温度:40℃
(10)紫外部吸収スペクトル(メタノール中)の極大波長(nm), (logε):
215 (4.23)
240(sh)(4.15)
308 (3.16)
(11)赤外部吸収スペクトル(KBr錠):添付図面の図7に示す。
赤外部吸収極大の波長(cm-1):3400, 2940, 2850, 1690, 1480, 1270, 1210, 1100, 1000
(12)1H-NMRスペクトル(重ピリジン中、500MHz、内部標準;テトラメチルシラン):添付図面の図8に示す。
(13)13C-NMRスペクトル(重ピリジン中、125MHz、内部標準;テトラメチルシラン):添付図面の図9に示す。
【0049】
第4の本発明による式(II)で表される抗生物質ベンオキサゾマイシンは、後記の試験例1で例証されるように、ある種のヒト癌細胞株に対して選択的に高い毒性を有し、癌細胞に選択的な増殖阻害活性もしくは制癌活性を示すものである。しかし、ベンオキサゾマイシンはディスクス法でピリキュラリア・オリゼ(真菌)に対して1mg/mlの濃度で15mmの阻止円を示したことから、弱い抗菌活性を示すと認められる。
第5の本発明においては、ストレプトミセス属に属して前記の式(II)のベンオキサゾマイシンを生産する菌を培養し、その培養物からベンオキサゾマイシンを採取することを特徴とする、制癌性抗生物質、ベンオキサゾマイシンの製造法が提供される。
【0050】
第5の本発明方法では、ベンオキサゾマイシンの生産菌として、前記のストレプトミセス・エスピーMJ672-m3株(工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM P-14047として寄託)を用いるのが好ましい。
【0051】
第5の本発明によるベンオキサゾマイシンの製造法は、第2の本発明によるチアジノトリエノマイシンF、Gの製造法と同じ要領で実施できる。第5の本発明方法を行うに当って、ストレプトミセス属に属するベンオキサゾマイシン生産菌としてMJ672-m3株を用いる場合は、栄養源含有培地にMJ672-m3株を接種して好気的に発育させることにより、チアジノトリエノマイシン群とベンオキサゾマイシンを含む培養物が得られる。培養に当って、栄養源としてポリペプトン
(日本製薬)0.4 %、トーストソーヤ(日清製油)1.0 %、イーストエキス(日本製薬)0.1 %、肉エキス(極東製薬)0.4 %、グルコース(和光純薬)5.0 %、塩化ナトリウム(和光純薬)0.25%、炭酸カルシウム(小宗化学薬品)0.5 %を加え、pHを1N塩酸で 7.0に合わせた培地を用いるのが好ましい。大量生産はワッフル付き 500mlのエルレンマイヤーフラスコ90本に上記培地を1本当たり 110mlずつ入れ、5日間、27℃でロータリーシェーカーで振盪培養して行った場合に、4日目と5日目培養でのチアジノトリエノマイシンF、Gとベンオキサゾマイシンの力価は同じであった。チアジノトリエノマイシンF、Gと同様に、ベンオキサゾマイシンは、培養濾液及び菌体の両方に存在する。培養濾液からはpH 4.0以下で酢酸エチル、n-ブタノール等、水不混和性の有機溶剤で抽出することができる。菌体よりメタノール、含水アセトン等の有機溶剤で抽出後、抽出液を減圧濃縮し、培養濾液と同様の方法で更に溶剤抽出することができる。上述の抽出法に加え、脂溶性物質の採取に用いられる公知の方法、例えば吸着クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等を適宜組み合わせ、あるいは繰り返すことにより純粋な形でベンオキサゾマイシンを採取することができる。
【0052】
さらに、第6の本発明においては、前記の式(II)の抗生物質ベンオキサゾマイシン、あるいはそれの製薬学的に許容される塩を有効成分とする制癌剤が提供される。
【0053】
第6の本発明による、ベンオキサゾマイシンまたはその塩を有効成分とする制癌剤は、第3の本発明の制癌剤と同じ様式で担体と混和して組成物の形とすることができ経口投与または非経口投与用の製剤または組成物の形で調合できる。また、ベンオキサゾマイシンの投与量は、チアジノトリエノマイシンFまたはGの投与量と同様に、各種の要因を勘案して決定できる。
【0054】
前記したように、第1の本発明によるチアジノトリエノマイシンFおよび G、ならびに第4の発明によるベンオキサゾマイシンは、ヒト癌に対して制癌活性を示すものである。この制癌活性を評定するために、ヒト子宮頸癌細胞株のHeLa細胞とヒト顎癌株のKB細胞に対する細胞増殖抑制活性を下記の試験例で測定した。
【0055】
試験例1
24穴のプレート(ファルコン社製3047)中に供試癌細胞を、10%の子牛胎児の血清(FBS, Lot. 1728、ネスコバイオ社製)を含むpH 7.2の MEM培地(ギブコ社製)1ml当たりに1万個撒く。翌日、メタノール溶液とした供試化合物(チアジノトリエノマイシンFまたはG、あるいはベンオキサゾマイシン)を加え、さらに2日間、37℃,5%炭酸ガスインキュベータの中で培養する。培地を捨て、20%メタノールに溶かした 0.1%(w/v)クリスタルバイオレト(和光純薬社製の色素)の溶液0.5 mlを入れて10分間染色後、染色液を捨て、水道水で細胞が剥がれない程度にリンスした。その後に60℃の乾燥器を用いて、このプレートを乾燥する。次に、染色された細胞に1mM塩酸を含む30%エタノール水溶液1mlを加えることにより、生存している細胞から色素を排出させた。吸光光度計(U-1100スペクトロフォトメータ、日立社製)を用いて 570nmにおける吸光度を測定し、比色定量値から下記の計算式:−
Figure 0004495817
により細胞増殖阻害率(%)を計算した。
【0056】
但し、上記の計算式で、Cは、供試化合物の非存在下に色素を添加した状態で癌細胞を3日間培養した後、さらに塩酸処理により生存している癌細胞から色素を排出した時の排出色素量の吸光度値から算定された生存細胞数を表す。D1は、供試化合物の非存在下に色素を添加した状態で癌細胞を1日培養した後、さらに塩酸処理により生存している癌細胞から色素を排出した時の排出色素量の吸光度値から算定された生存細胞数を表す。また、D3は、供試化合物の存在下に色素を添加した状態で癌細胞を3日間培養した後、さらに塩酸処理により生存している癌細胞から色素を排出した時の排出色素量の吸光度値から算定された生存細胞数を表す。
【0057】
添加された供試化合物の濃度を変えて試験を反復し、その都度に、細胞増殖阻害率(%)を計算した。こうして計測された細胞増殖阻害率の値から、供試癌細胞の増殖を50%阻害するのに要する供試化合物の濃度(IC50)の値を算定した。なお、供試化合物は、全てメタノールに溶解させ、希釈も全てメタノールで行った。メタノールの細胞毒性は1%(v/v)まで認められなかった。
上記の試験法により計測された各種の癌細胞に対するチアジノトリエノマイシンFおよびG、ならびにベンオキサゾマイシンのIC50値を次の表1に要約して示す。
【0058】
Figure 0004495817
【0059】
上記の表1に示したIC50値から明らかなように、本発明の3種の新規抗生物質は、各種のヒト癌細胞に対して有意の制癌活性を有する。
【0060】
【発明の実施の形態】
次に本発明による新規抗生物質の製造法を、実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中では重量%である。また力価(u)は、HeLa-S3細胞の増殖を50%阻害する本抗生物質の量を1 uと定義して算定される。
【0061】
実施例1
寒天斜面培地で培養したストレプトミセスMJ672-m3株(微工研菌寄 FERM P-14047)よりグルコース 5.0%、ポリペプトン 0.4%、イーストエキス0.1%、肉エキス 0.4%、塩化ナトリウム0.25%、フラスコ1本分当たり1.1gのトーストソーヤと550mgの炭酸カルシウム(0.5%)の組成からなる液体培地(pH 7.0)をワッフル付きの500mlエルレンマイヤーフラスコに110mlの培地を入れたこの三角フラスコ3本に1白金耳ずつ接種し、27℃で2日間しん盪培養した。
【0062】
得られた培養物を種培養物とした。次いで上記と同様の組成の培地を110 mlずつ分注した上記の三角フラスコ90本に種培養物を2mlずつ接種した。次いで27℃で5日間しん盪培養した。5日間培養後に、培地のpHは8.4であり、フラスコ90本の全力価は2500万uであった。培地を濾過し、菌体約900g(湿重量)を得た。菌体900gの力価は1800万uであった。培養後の活性の約70%が菌体成分に含まれることが分かった。
【0063】
以下、菌体からの目的物の採取と精製を説明する。菌体900gをメタノール3Lで1回抽出後、さらに66%アセトン3Lで2回抽出後、全ての抽出液を合わせ減圧濃縮した。次に、その濃縮物に酢酸エチル2Lと等量の水を加え、pH 3.0で攪拌し、酢酸エチル層に転溶させた(1500万u)。さらに減圧濃縮し、ヘキサン:メタノール:水(10:9:1)の組成の混液3Lと共に2回攪拌し、下層を減圧濃縮したところ、1.7gの黄色油状物質(1400万u)を得た。
【0064】
シリカゲル(Merck Art. 7734)85gを5cm×20cmのサイズカラムに、クロロホルム170mlで詰めておき、上記の黄色油状物質の1.7gを20mlのクロロホルムにサスペンドしたものを、チャージした。その後、このカラムを500mlのクロロホルムで洗った。次にクロロホルム:メタノール(50:1)の組成の混液500mlを流し、その回収液を減圧濃縮、乾固したところ130mg (200万u)の固体を得た。更にクロロホルム:メタノール(10:1)の組成の混液を 500ml流し、その回収液を減圧濃縮乾固し400mg(750万u)の固体を得た。クロロホルム:メタノール(50:1)の組成の混液を500mlを流して得られた回収液由来の130mgの固体を約5mlのメタノールに可溶化させた。得られた溶液を、セファデックスLH20(ファルマシア社製)のカラム(3cm×50cm)350mlにかけ、メタノールで溶出させ3mlずつ分画した。活性分画No.125〜196を集めて減圧乾固し、51.2mg(180万u)の白色粉末物質を得た。
【0065】
さらに、この白色粉末を高速液体クロマトグラフィー(マイクロボンダスフェア、ウォーターズ社製サイズ19mm×150mm)にかけ75%メタノールを9.9ml/minの流速で流し、活性ピークを分取した。カラムの温度は室温で、1回のチャージ量は7mgとした。8回同じ操作を繰り返し、保持時間30分と、35分と、40分とのピークを分取した。それぞれの画分を減圧乾固したところ、それぞれ白色粉末のチアジノトリエノマイシンFの2.3mg(40万u)と、白色粉末のチアジノトリエノマイシンGの8.3mg(80万u)と白色粉末のベンオキサゾマイシンの3.4mg(10万u)がそれぞれ得られた。
【0066】
【発明の効果】
以上詳細に説明した通り、本発明により新規な制癌性抗生物質チアジノトリエノマイシンFとG、およびベンオキサゾマイシンが提供された。チアジノトリエノマイシンFおよびGは、ヒトの癌、特に子宮癌、上顎癌、胃癌などに強い活性を示す点が特徴であり、ベンオキサゾマイシンはそれらの癌よりもヒトの白血病細胞HL60に強い増殖抑制活性を示す。最近、癌の化学療法の分野では癌細胞に対して特異的にアポトーシスを起こすことにより制癌活性を発揮させる試みが行われており、これらの本発明化合物は上記のアポトーシスを起す作用により制癌活性を示すと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 KBr錠法で測定したチアジノトリエノマイシン Fの赤外吸収スペクトルを表す。
【図2】 重ピリジン中、500MHzで測定したチアジノトリエノマイシンFの1H-NMRスペクトルを表す。
【図3】 重ピリジン中、125MHzで測定したチアジノトリエノマイシンFの13C-NMR スペクトルを表す。
【図4】 KBr錠法で測定したチアジノトリエノマイシン Gの赤外吸収スペクトルを表す。
【図5】 重ピリジン中、500MHzで測定したチアジノトリエノマイシンGの1H-NMRスペクトルを表す。
【図6】 重ピリジン中、125MHzで測定したチアジノトリエノマイシンGの13C-NMR スペクトルを表す。
【図7】 KBr錠法で測定したベンオキサゾマイシンの赤外吸収スペクトルを表す。
【図8】 重ピリジン中、500MHzで測定したベンオキサゾマイシンの1H-NMRスペクトルを表す。
【図9】 重ピリジン中、125MHzで測定したベンオキサゾマイシンの13C-NMRスペクトルを表す。

Claims (4)

  1. 次の一般式(I)
    Figure 0004495817
    (式中、Rはシクロヘキセニル基またはシクロヘキシル基を示す)で表される化合物である制癌性抗生物質、チアジノトリエノマイシン(Thiazinotrienomycin)FまたはG、あるいはそれの製薬学的に許容される塩。
  2. 請求項1に示される一般式(I)の化合物が次式(Ia)
    Figure 0004495817
    で表されるチアジノトリエノマイシンFである請求項1に記載の抗生物質。
  3. 請求項1に示される一般式(I)の化合物が次式(Ib)
    Figure 0004495817
    で表されるチアジノトリエノマイシンGである請求項1に記載の抗生物質
  4. 請求項1に示される一般式(I)のチアジノトリエノマイシンFまたはG、あるいはそれの製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する制癌剤
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