JP4494456B2 - 誘導路形成用ブロック - Google Patents

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Description

本発明は、擁壁や護岸等の壁体において緩斜面をなす通路を形成することにより、小動物の移動や生物の生息環境の再生を可能にする誘導路形成用ブロックと、完成した既設の壁体の前面に貼着固定して誘導路を形成するパネル材、及び壁体構築時に用いて壁体前面に誘導路を形成する型枠に関する。
コンクリート構造物の壁面が小動物の移動の妨げになって、生息環境を破壊している状況を解消するべく、従来から様々な構造のブロックが提案されている。例えば、狭水路に転落した小動物の脱出誘導を図るために、U字形側溝の外側任意位置に対して部分的に連設することにより地表面までの誘導路として機能する傾斜壁を備えたブロック(特許文献1)、一般的な水路ブロックの一内壁面又は両内壁面に沿うように設置すると階段状又は粗面状の斜路が形成されるブロック(特許文献2)、水路桝ブロック本体に脱出用スロープを形成したもの(特許文献3)、U字形側溝において一体的に形成された外方膨出部の踊り場から脱出用斜面を形成したもの(特許文献4)等が例示される。
側溝や狭水路のように、幅が狭く地表面からさほど深くない通水路の場合には、前記ブロック側壁の一部に開口を設けて脱出誘導路を形成するブロックを連設したりして、連続的に設置するブロックの一部に誘導路を備えたブロックを組み入れることで対応することができる。しかしながら、こうした従来のブロックを小川や河川、海岸、道路等における側壁や擁壁等の壁体に対して設置することは殆どの場合不可能である。
すなわち、これら壁体は、多数個のブロックを布積みや谷積みする段積み施工によって高く形成されるのが一般的であるし、のみならず、ほぼ垂直に切り立った壁面として形成されることも多かった。また、壁体の前面部分が全体的に平滑な状態に仕上げられていたり、下段ブロックと上段ブロックとの間が完全に分断されていたりしたために、小動物が下から這い上がったり、逆に陸上から水辺へと移動することが極めて困難であった。
さらに、側溝や狭水路であれば、小動物が水と共に流される間に誘導路が連設された開口部分や誘導路の踊り場部分に辿り着くことも可能であるが、広範囲に施工されるのが通例である壁体の場合、壁体と未施工のまま残された切り通しや岸辺との境界部分のような、誘導路となりうる場所にまで小動物が辿り着くことは殆ど奇跡に近い。
さらにまた、新たに構築される壁体であればともかく、完成した既設の壁体において小動物の移動を可能にする手段はなかったし、施工現場において型枠を用いて直接コンクリートを打設する壁体構築方法に対応させる必要もある。
特開平9−32097号公報 特開平9−250121号公報 実公平6−26569号公報 実公平7−54383号公報
そこで、本発明では、多数個のブロックを用いて段積みにより壁体を形成した場合に、小動物の脱出その他の移動を可能にする誘導路(以下、単に「斜路」ともいう)を略連続させた状態に形成できる誘導路形成用ブロックの提供を第1の目的とする。
また、本発明では、完成した既設の壁体前面に対して貼着固定することにより小動物の脱出誘導路(斜路)を略連続させた状態に形成できるパネル材の提供を第2の目的とし、さらに、壁体を新たに設置する際に用いれば簡易に誘導路を形成できる型枠の提供を第3の目的とする。
そして、誘導路の創出と同時に植生にも配慮して、多自然型の壁体面を形成することによって、生物の生息できる環境の再生を総合的に図ることを目的とする。
本発明に係る誘導路形成用ブロックでは、壁体の前面(化粧面)に複数個のブロックの段積みにより連続した誘導路を形成するべく、前面六角形ブロックとして六角形の上辺を水平方向にした段積みにより壁体を形成して、上辺とその左右辺とにより上下方向の誘導路を連続させた状態に設ける形状であることを特徴とする構造とした。特に、前面六角形ブロックは、ブロック前面が水平方向に長く扁平な六角形状で、上辺を平坦なステージ部として中央に配し、その左右辺の下降緩斜面が、左右にそれぞれ連設された形状である誘導路形成用ブロックが好ましい。
ここにいう誘導路とは、壁体を下方から上方へ、又はその逆方向に生物が移動できるように設けられた路をいい、必ずしも斜めに設けられた状態のみをいうのではなく、ブロック前面端部又は中ほどに誘導路に連なる略水平方向の平坦部(ステージ)を有するように途中が平坦になっていたり、湾曲しているものも含まれる。また、誘導路はブロック前面に垂直面として形成するのが好ましいが、傾斜面として形成してもよい。さらに、上段ブロックと下段ブロックで凸条が異なる方向に設けられたブロックを用い、誘導路を略連続させて形成するように段積みしてもよい。そして、本発明にいう壁体は、垂直積み擁壁であっても、斜積み擁壁、もたれ式擁壁等の擁壁であってもよく、いわゆる擁壁面のみならず小さな川の側壁面等も含むものである。
また、ここにいう隣接するとは、前面六角形状に縦横又は斜めに隣り合うことである。詳しくは、凸条、凹条、又は段差が上段ブロックと下段ブロックで異なる方向に設けられ、段積みにより誘導路を形成するようにした誘導路形成用ブロックとか、誘導路がブロック前面の端部又は中ほどに平坦部を有する誘導路形成用ブロック、すなわち、誘導路が平坦部両側に斜め下方から上昇、又は、平坦部両側から斜め上方に上昇するよう設けられた前面六角形状の誘導路形成用ブロックが好ましい。平坦部は生物に休息の場を提供するし、上昇又は下降する方向の変更や選択の機会を与える。水際部に生息する生物においては、誘導路が上下に連通することにより、水位の変動に関わりなく壁面上を自由に移動可能な斜路状の水際部が確保され、常に生態に適した生息環境が維持される。
このような誘導路形成用ブロックには、誘導路を形成した前面板の背部控側に空洞部を設けると共に、前記前面板に連通孔を設けると、壁体は石や土砂を充填することにより透水性を持ち、生物を乾燥から守ることもできる。また、植生の基盤としても有効に機能するため生物に生息空間を与える好ましい態様となる。すなわち、ブロック前面が略垂直面であり、ブロック背面控部との間に空洞部を設けたボックス型で、誘導路はブロックを多段積みする際に下段に位置するブロックより上段に位置するブロックを背面方向にずらして階段状に、前面六角形ブロックを配置して形成するのである。
上記誘導路には滑止めの凹凸を形成したり、誘導路又は誘導路近傍に植生機能を付与する溝又は穴を設けるとより好ましい多自然型の態様となる。更に、ブロックの化粧面に植生機能を付与する層を吹付けるとか一体成形することも好ましい。植生機能を付与する層としては多孔質コンクリートや木粉等の有機質、炭素質、その植生に好適な物資の固化体層である。
また、本発明に係る誘導路形成用ブロックでは、壁体を構成するブロックを、ブロック前面上部の天面部分が下降緩斜面として形成されており、複数個のブロックを多段積みした際には、前記下降緩斜面が複数個のブロックに亘って上下方向に連続する斜路となるように形成した。ここにいう斜路は、前記の誘導路と同意である。
ブロック前面上部の天面部分を下降緩斜面として形成可能であるならば個々の前面六角形ブロックの形状は問わないが、より具体的な形状としては、ブロック前面が水平方向に長く扁平な略六角形状をしており、下降緩斜面が、平坦なステージ部を中央に配して左右にそれぞれ連設されたものを採用しうる。また、ブロック前面より後方側に控えた位置において上方に立設された突起部の天面部分が下降緩斜面として形成されており、複数個のブロックを多段積みした際には、前記下降緩斜面が、ブロック前面上部の天面部分を介しながら複数個のブロックに亘って上下方向に連続する斜路となるものも採用しうる。
下降緩斜面、つまり斜路の表面は、小動物の移動に配慮して、凹凸状又は粗面状に形成するとよい。具体的には、表面に小突起や小さな窪みを規則的又は不規則的に配置してみたり、表面を小階段状に形成したりと、様々な滑り止め加工を採用しうる点は、先の誘導路形成用ブロックと同じである。
ブロック前面が略垂直面をなしている場合には、ブロックを多段積みする際に、下段に位置するブロックより上段に位置するブロックを背面方向にずらして階段状に配置することで、個々のブロックに形成された下降緩斜面を連続させることができる。一方、ブロックを垂直方向に多段積みする必要がある場合には、下降緩斜面を備えたブロック前面上部を、下降緩斜面のないブロック前面下部より前面方向に突出形成することで対応できる。
ブロックの積み上げ方法にかかわらず、ブロックの天面と底面において、多段積みされるブロック同士の連結部を対応形成しておくと、施工の迅速化や脱落防止が図られる。すなわち、前面六角形ブロックには、その前面上辺の天面側に凸となり、前面下辺の底面側に凹となる突起とそれに対応する凹陥部からなる連結部や、ブロックの背面側における上側部分と下側部分、そして左右部分において連結部として嵌合溝が刻設されている。このようにすると、ブロックを階段状に施工する場合には、上段に位置するブロックを背面方向にずらす際の位置決めが容易となる。連結部としては、突起とそれに対応する凹陥部や嵌合の組み合わせのほか、ピンを用いた連結方法、別途連結部材を用いる方法等が例示される。
また、本発明に係る誘導路形成用ブロックでは、ブロック前面と背面控部との間に空洞部を設けて、該空洞部と連通する開口をブロック前面又は上面に穿設することにより、植生が可能な多自然型の壁体を実現することができる。とくに、ブロックを階段状に設置する場合、下段に位置するブロックの上部天面が露出することになるので、天面に穿設した開口(透孔)から露出した胴込土砂等より植生が図られるし、ブロック前面をパネル板状に形成して空洞部まで連通する開口が露出するようにしておくと、やはり胴込めされた土砂等から自然な植生が図られる。
以上のような本発明に係る誘導路形成用ブロックは、背面控部を含めた全体をコンクリート製の一体成型品として製造されるのが一般的であるが、背面控部の全部又は一部に金属製や繊維製のネットを用いたもの、例えばコンクリート製で略板状をしたブロック前面より背面側に略コ字形の金網が延設され、全体としてボックス形状をしたものなども含まれる。
さらに本発明では、完成した壁体前面に貼着固定されるコンクリート製パネル材として、前面側に凸条、凹陥部又は段差が設けられており、壁体前面に貼着固定した際には前記凸条等の端部が隣接するパネル間で連続し、略上下方向に連続する緩斜面をなす誘導路が形成されるパネル材とすることもできる。ここにいう誘導路の意義や、誘導路の表面に様々な滑り止め加工を採用しうる点は、先の誘導路形成用ブロックと同様である。
一方、現場打設によりコンクリート製壁体を構築する場合の型枠としては、コンクリート打設面側に凸条、凹陥部又は段差が設けられており、壁体が完成した際には壁体前面において前記凸条等が略上下方向に連続する緩斜面をなす誘導路が転写形成されるものを用いる。この場合においても、型枠を取り外した後の完成したコンクリート製壁体の前面に形成された脱出用誘導路によって小動物の移動が確保されることになる。型枠は、誘導路の転写形成用の凸条等を含めた専用型枠としてもよいし、従来の合板製又は金属製の型枠のコンクリート打設面に対して装着使用する発泡スチロール製等の軽量転写型枠としてもよい。
また、いわゆる捨て型枠と呼ばれる型枠として、コンクリート打設面側に背筋を備える一方、前面側に凸条、凹陥部又は段差が設けられており、壁体が完成した際には壁体前面において前記凸条等が略上下方向に連続する緩斜面をなす誘導路として形成されるものも用いられる。こうした捨て型枠では、足場を必要とせず、複数個を積み上げながら据え付けした後にコンクリートを打設すると、型枠を化粧面としつつ背筋により打設コンクリートと一体化した構造物が得られる利点があり、完成した擁壁等の前面に形成される脱出用誘導路によって小動物の移動が確保されることになる。
以上のように、本発明に係る誘導路形成用前面六角形ブロックは、複数個を用いて六角形各辺の密接した、いわゆるハニカム形状の段積みをして壁体を形成する際に有用であり、壁体を高く形成した場合にも、誘導路(斜路)を略連続させた状態に形成できる。こうした斜路は、カエル、イモリ等の両生類やホタルの幼虫等の昆虫類であっても、斜路を伝って水中から陸上へ、あるいはその逆方向に移動することを可能とする。また、高い壁面の存在にもかかわらず、小動物は斜路を伝って移動することが可能になる結果、擁壁等の設置工事により従来の獣道など小動物の移動路が分断されてしまった場合においても、新たな移動路の確保が図られるので、生息環境への悪影響を防止することができる。
また、誘導路が平坦部両側に斜め下方から上昇又は、平坦部両側から斜め上方に上昇するよう設けた誘導路形成用前面六角形ブロックを用いると、壁体の斜面に複雑な誘導路を形成することができる。
さらに、ブロック前面上部の天面部分を下降緩斜面とした誘導路形成用ブロックでは、複数個を多段積みに、とくに下段に位置するブロックより上段に位置するブロックを背面方向にずらして階段状に配置すると、壁面として高く形成した場合においても、壁面を上下方向に連続し、小動物の移動を容易にする斜路を形成することができる。
こうした誘導路形成用ブロックは、植生にも配慮がなされており、空洞部に胴込めされた砕石や土砂部分からブロックの開口を経て植物が繁茂し、生物のすみかが確保される多自然型の壁面の形成が容易であるし、水際部に生息する生物においては、河川等の水位変動にかかわらず常に水際部が確保されるので、安定した生態系の保全が図られる。
そして、本発明に係る前面六角形誘導路形成用ブロックを壁体構築用パネル材として用いれば、既設擁壁や護岸のような壁体の前面部分に貼着固定することにより、当該現場における小動物の生息状況に適合するような形状や経路にて、壁体前面を上下方向に連続し、小動物の移動を可能にする誘導路を新設することができる。壁体設置によって獣道など小動物の移動路が分断されてしまった場合においても、壁体前面に貼着固定するだけで構造に大きな改造を加えることなく新たな移動路を確保でき、生息環境の再生を図ることができる。
また、本発明に係る前面六角形の誘導路形成用ブロックを壁体構築用型枠として用いれば、現場打設により新設されるコンクリート壁体構築時において型枠(場合によっては捨て型枠)の一部又は全部に対して使用するだけで、当該現場における小動物の生息状況に適合するような形状や経路にて、壁体前面を上下方向に連続し、小動物の移動を可能にする誘導路を併設することができる。
図1は本発明に係る誘導路形成用ブロックの一例を示す正面図、図2は同ブロックの平面図、図3は同ブロックの右側面図、図4は同ブロックのX−X断面図、図5は同ブロックの施工図である。図6は本発明に係る誘導路形成用ブロックの更に他の例を示した正面図(a)及び右側面図(b)であり、図7は同ブロックを多段に積み重ねた施工例を示す斜視図である。図8は先の図6に示したブロックにおける連結部として他の態様を採用した例の正面図(a)、右側面図(b)及びX−X断面図であり、図9は同ブロックの施工状態を示す斜視図である。図10はさらに他の例のブロックを用いて施工した状態を示す斜視図である。本発明をより詳細に説述するために、添付の図面にしたがって説明する。
図1乃至図4に見られる本発明に係る誘導路形成用ブロックの施工図は、図5に示されている。これらに図示された例の誘導路形成用ブロックは、ブロック前面R1(化粧面)が左右方向に長く扁平な略六角形状をしたものであり、ブロック前面R1上部の天面部分が下降緩斜面R11として形成されている。すなわち、パネル状をしたブロック前面R1の厚みを利用して下降緩斜面R11を確保したものであり、より具体的には、前面六角形ブロック上辺の最上面部分を平坦なステージ部R12とし、当該ステージ部R12を中央にして左右方向にそれぞれ下降緩斜面R11,R11が連設された形態をしている。これら左右の緩斜面R11,R11の表面や、ステージ部R12の表面は、凹凸状又は粗面状に形成しておくのが望ましい。
ブロック前面R1の表面側(化粧面側)は、護岸設置の際の景観に配慮して、自然石を模した擬石模様の凹凸が形成されており、中央部分と、左右に各1個ずつ、擬石模様を損なわないように不定形状をした開口R13a,R13b,R13cが穿設されている。これら開口R13a,R13b,R13cは、いずれもブロック背面控部R2との間における各空洞部R3a,R3b,R3cと連通している。図4に示されるように、3つの空洞部のうち、左右の空洞部R3b,R3cには底板がなく上部から底部までが貫通して透水性が確保されているが、中央の空洞部R3aには底板R5があって、その中央に穿設された断面すり鉢状をした水抜き用の小透孔R31によって透水性が確保されている。中央の空洞部R3aに底板R5を設けたのは、後述するように複数個のブロックを多段積みする際の安定性確保を図りつつ、ブロック自体の強度も確保するためである。
本例の誘導路形成用ブロックでは、ブロック前面R1が略垂直面をなすよう構成されているので、多段に積む際には、図5に示されるように、下段に位置するブロックよりも上段に位置するブロックを背面方向にずらしながら、階段状に設置される。各ブロックの左右端にあってブロック前面R1とブロック背面控部R2とを連結するリブR4,R4の上面には連結部となる凹部R41,R41が設けられており、段積みにした各ブロックに隣接している上段側のブロック前面R1の底面部分が嵌合することによって、両ブロックのズレ止めが図られることになる。こうして順次ブロックを前面六角形ブロックの各辺が上辺を水平方向にして接するように積み上げることにより形成された擁壁や護岸の前壁面には、複数個のブロックに亘って上下方向斜めに、あるいはつづら折りに、下降緩斜面R11とステージ部R12が交互に連続した斜路が形成される。
ブロックの空洞部R3a,R3b,R3cには砕石や土砂が胴込めされるが、形成される擁壁等の傾斜角度によっては、上段側のブロックが下段側のブロックより一層背面側に控えるように配置されることになり、露出したブロック空洞部R3a,R3b,R3cの上面部分からより効果的な植生が図られることになる。ブロック前面R1の開口R13a,R13b,R13cは、斜路を移動する小動物のすみかとなったり、水中に没した部分では魚巣ともなり得る。
図6は、本発明に係る誘導路形成用ブロックの他の例を示した正面図(a)及び右側面図(b)である。本例のブロックでも、正面視略横長六角形状をした前面六角形ブロックの前面U1の上辺天面部分において平坦なステージ部U12を中央にして左右方向にそれぞれ下降緩斜面U11,U11が設けられているが、これら下降緩斜面U11,U11を備えたブロック前面U1の上部が、下降緩斜面を有しないブロック前面U1下部よりも前面方向に突出形成されている点において、先の例のブロックと相違している。また、ブロック前面U1とブロック背面控部U2との間に空洞部はみられず、その代わりに、ブロックの天面側に凸となり、ブロックの底面側に凹となる連結部U41が設けられている点においても、先の例のブロックと相違が見られる。
そして、従前説明してきた例のブロックと異なり、本例のブロックは、階段状に積み上げるのではなくて、垂直又は急勾配斜面に積むことにより擁壁面を形成する場合に用いられる。すなわち、図7は本例のブロックの施工状態を示す斜視図であり、図示されるように、ブロックの連結部U41が上下方向に嵌合するよう連続して多段積みされる。各ブロック背面控部U2には設置斜面との間にアンカーU5が張設されており、このアンカーU5によってブロックを固定しつつ、各ブロックが多段に積み上げ施工された後に裏込め材が投入されることになる。積み上げられたブロックが擁壁として完成した状態においては、壁面から突出したブロック前面U1の上部における下降緩斜面U11とステージ部U12が連続し、完成した擁壁面において上下方向斜めに、あるいはつづら折り状の斜路が形成されるのである。
なお、本例のブロックを垂直方向に積む場合、下降緩斜面U11とステージ部U12が、いずれもやや斜め下方に傾斜してしまうので、それらの表面には凹凸状又は粗面状の滑り止めを施すのが望ましい。より効果的に小動物の滑落を防止するためには、下降緩斜面U11とステージ部U12部分を溝状にした凹面部として形成するとよい。
図8は、図6のブロックにおける連結部として他の態様を採用した例の正面図(a)、右側面図(b)及びX−X断面図(c)である。本例のブロックでは、連結部として嵌合溝U42が採用されており、ブロックの背面側における上側部分と下側部分、そして左右部分において嵌合溝U42が刻設されている。図9は同ブロックの施工状態を示す斜視図である。図示されるように、ブロックを多段に積む際には隣接するブロックの嵌合溝U42に対して跨るように連結板U6を嵌入することによって、ブロック同士の連結固定が図られる。連結板U6の背面側からは設置斜面との間にアンカーU5が張設されており、このアンカーU5によって固定されながら各ブロックが積み上げ施工された後に裏込め材が投入されることになる。ブロック上側部分の嵌合溝U42に見られる切り欠きU43は、アンカーU5嵌入用として設けられたものである。
こうして多数個の前面六角形ブロックを段積み施工することにより形成された擁壁は、裏込め材が投入されて完成した際には、先の例と同様に、壁面から前方に突出したブロック前面U1の上部における下降緩斜面U11とステージ部U12が連続し、擁壁面全体において上下方向斜めに、あるいはつづら折り状に連続する斜路が形成されるのである。
図10は、さらに他の例の前面六角形ブロックを用いて施工した状態を示す斜視図である。本例のブロックも、正面視略横長六角形状をしたブロック前面V1の上部天面部分において平坦なステージ部V12を中央にして左右方向にそれぞれ下降緩斜面V11,V11が設けられており、これら下降緩斜面V11,V11を備えたブロック前面V1の上部が、下降緩斜面を有しないブロック前面V1下部よりも前面方向に突出形成されている点は先の図6のブロック等と同じであるが、ブロック全体が背面控部方向に長く形成されており、かつ、上面と背面が開放した空洞部V3が設けられている点が相違している。図中に格子状模様で示されるように、空洞部V3の内部に砕石や土砂等が胴込めされながら複数個のブロックが多段に積み上げられると、空洞部V3の前端部分とともにステージ部V12や下降緩斜面V11,V11が壁面から前方に突出し、これらステージ部V12や下降緩斜面V11,V11が連続することにより、擁壁面全体において上下方向斜めに、あるいはつづら折り状に連続する斜路が形成されるのである。
図6乃至図10に示す前面六角形ブロックはパネル材として既設の壁体前面に貼着固定して用いることもできる。既設の壁体前面Wは平滑面であるか粗面であるかを問わないし、傾斜角度についてもさほど問題にならない。要は、パネル材を貼着固定することが可能な壁体であればよいのであって、接着剤やアンカーなど各種固定手段を適宜選択使用することにより貼着固定される。これら図示のパネル材と、同パネル材よりやや厚みの薄いパネル材とを組み合わせながら、複数個のパネル材を既設壁体前面の下端付近から上端まで三段にグループ分けしたり、グループ分けすることなく、完全な直線として連続固定したりしてもよい。また、既設壁体として河川の擁壁面を想定しており、水面位置を考慮して既設壁体前面の下端より若干控えた位置からパネル材を貼着して、既設壁体前面Wの最下端を起点としてもよく、前面六角形ブロックの形状は傾斜角度に応じて適宜組み合わせて用いることができることうまでもない。
また、本発明のブロックは、現場におけるコンクリート打設によって新たに壁体の構築施工を図る場合であって、型枠としてそのまま構造物の化粧面とする捨て型枠として用いる場合は、従来同様ブロックの背面側、つまりコンクリート打設面側に背筋を突設させたものを型枠とする。背筋としては、従来の捨て型枠に使用されている鋼製のL型脚やアンカーのほか、金属製や繊維製のネット等も好適に用いられる。あるいは、積み上げた型枠の裏面側をアングル材等で連結施工してもよい。いずれにしても、背面側に打設されたコンクリートによって一体化した擁壁等が構築され、完成した擁壁等の前面側には、壁体前面において凸条等が略上下方向に連続する緩斜面をなす誘導路が形成されることになり、移動する小動物の滑落防止が図られる。
本発明に係る誘導路形成用ブロックの一例を示す正面図である。 同ブロックの平面図である。 同ブロックの右側面図である。 同ブロックのX−X断面図である。 同ブロックの施工図である。 本発明に係る誘導路形成用ブロックの更に他の例を示した正面図(a)及び右側面図(b)である。 同ブロックを多段に積み重ねた施工例を示す斜視図である。 先の図6に示したブロックにおける連結部として他の態様を採用した例の正面図(a)、右側面図(b)及びX−X断面図である。 同ブロックの施工状態を示す斜視図である。 さらに他の例のブロックを用いて施工した状態を示す斜視図である。
符号の説明
1 単誘導路
1a,1b 誘導路
2 第1平坦部
3 凸部
4 凹部
5 第2平坦部
7 凹部
R1 ブロック前面
R2 背面控部
R3a,R3b,R3c 各空洞部
R4 リブ
R5 底板
R11 下降緩斜面
R12 ステージ部
R13a,R13b,R13c 開口
R31 小透孔
R41 凹部
U1 ブロック前面
U2 ブロック背面控部
U5 アンカー
U6 連結板
U11 下降緩斜面
U12 ステージ部
U41 連結部
U42 嵌合溝
V1 ブロック前面
V3 空洞部
V11 下降緩斜面
V12 ステージ部

Claims (9)

  1. 複数個のブロックの段積みにより連続した誘導路を形成する壁体形成用ブロックにおいて前面六角形ブロックとして六角形の上辺を水平方向にした段積みにより壁体を形成して、上辺とその左右辺とにより上下方向の誘導路を連続させた状態に設ける形状であることを特徴とする誘導路形成用ブロック。
  2. 前面六角形ブロックは、ブロック前面が水平方向に長く扁平な六角形状で、上辺を平坦なステージ部として中央に配し、その左右辺の下降緩斜面が、左右にそれぞれ連設された形状である請求項1記載の誘導路形成用ブロック。
  3. 前面六角形ブロックは、ブロック前面が略垂直面であり、ブロック背面控部との間に空洞部を設けたボックス型で、誘導路はブロックを多段積みする際に下段に位置するブロックより上段に位置するブロックを背面方向にずらして階段状に配置して形成する請求項1又は2のいずれかに記載の誘導路形成用ブロック。
  4. 前面六角形ブロックは、その前面上辺の上部天面部分において平坦なステージ部を中央にして左右辺方向にそれぞれ下降緩斜面が設けられており、下降緩斜面を備えたブロック前面の上辺が下降緩斜面を有しないブロック前面下辺よりも前面方向に突出形成されている請求項1記載の誘導路形成用ブロック。
  5. 前面六角形ブロックは、その前面上辺の天面側に凸となり、前面下辺の底面側に凹となる突起とそれに対応する凹陥部からなる連結部が設けられている請求項4記載の誘導路形成用ブロック。
  6. 前面六角形ブロックは、垂直方向に多段積みして下降緩斜面を備えたブロック前面上部を下降緩斜面のないブロック前面下部より前面方向に突出形成して誘導路を形成する請求項4記載の誘導路形成用ブロック。
  7. 前面六角形ブロックは、ブロックの背面側における上側部分と下側部分、そして左右部分において連結部として嵌合溝が刻設されている請求項4記載の誘導路形成用ブロック。
  8. 前面六角形ブロックは、ブロック全体が背面控部方向に長く形成され、かつ、上面と背面が開放した空洞部が設けられている請求項4記載の誘導路形成用ブロック。
  9. 前面六角形ブロックの誘導路は、少なくともその下降緩斜面の表面が、凹凸状又は粗面状に形成されている請求項1又は4いずれかに記載の誘導路形成用ブロック。
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