JP4490901B2 - 電子放出性薄膜の製造方法、電極基材及び電子放出装置 - Google Patents
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エラストマーと、金属粒子と、カーボンナノファイバーと、を混合して複合エラストマーを得る工程(a)と、
前記複合エラストマーと溶剤とを混合し、塗布液を得る工程(b)と、
前記塗布液を基材に塗布し、塗膜を形成する工程(c)と、
前記塗膜を熱処理して前記塗膜に含まれるエラストマーを除去すると共に、金属溶湯を該塗膜中に浸透させて薄膜を形成する工程(d)と、
を有する。
また、本発明にかかる電子放出性薄膜の製造方法は、
エラストマーと、金属粒子と、カーボンナノファイバーと、を混合しかつ剪断力によって前記カーボンナノファイバーを前記エラストマー中に分散させて複合エラストマーを得る工程(a)と、
前記複合エラストマーと溶剤とを混合し、カーボンナノファイバーがエラストマー分子に絡まったままの状態で存在する塗布液を得る工程(b)と、
前記塗布液を基材に塗布し、塗膜を形成する工程(c)と、
前記塗膜を熱処理して前記塗膜に含まれるエラストマーを除去すると共に、金属溶湯を該塗膜中に浸透させて薄膜を形成する工程(d)と、
を有する。
エラストマーが除去された前記塗膜に前記金属溶湯を浸透させる第2の熱処理工程(d−2)と、
を含むことができる。
また、本実施の形態にかかる電子放出性薄膜の製造方法は、エラストマーと、金属粒子と、カーボンナノファイバーと、を混合しかつ剪断力によって前記カーボンナノファイバーを前記エラストマー中に分散させて複合エラストマーを得る工程(a)と、前記複合エラストマーと溶剤とを混合し、カーボンナノファイバーがエラストマー分子に絡まったままの状態で存在する塗布液を得る工程(b)と、前記塗布液を基材に塗布し、塗膜を形成する工程(c)と、前記塗膜を熱処理して前記塗膜に含まれるエラストマーを除去すると共に、金属溶湯を該塗膜中に浸透させて薄膜を形成する工程(d)と、を有する。
エラストマーは、分子量が好ましくは5000ないし500万、さらに好ましくは2万ないし300万である。エラストマーの分子量がこの範囲であると、エラストマー分子が互いに絡み合い、相互につながっているので、エラストマーは、凝集したカーボンナノファイバーの相互に侵入しやすく、したがってカーボンナノファイバー同士を分離する効果が大きい。エラストマーの分子量が5000より小さいと、エラストマー分子が相互に充分に絡み合うことができず、後の工程で剪断力をかけてもカーボンナノファイバーを分散させる効果が小さくなる。また、エラストマーの分子量が500万より大きいと、エラストマーが固くなりすぎて加工が困難となる。
本実施の形態にかかる複合エラストマーは、カーボンナノファイバーを1〜50重量%の割合で含むことが好ましい。
工程(a)は、エラストマーにカーボンナノファイバーを剪断力によって分散させることが好ましく、オープンロール法、密閉式混練法、多軸押出し混練法、などを用いて行うことができる。
工程(a)で用いられた第1、第2の金属粒子41,42は、カーボンナノファイバーの分散性を良好にするために、使用するカーボンナノファイバーの平均直径よりも大きい平均粒径であることが好ましく、電子放出性薄膜の厚さよりも小さい粒径であることが好ましい。第1、第2の金属粒子41,42は、例えば平均粒径が1〜100μm、好ましくは10〜60μmである。また、第1、第2の金属粒子41,42の形状は、球形粒状に限らず、混合時に第1、第2の金属粒子41,42のまわりに乱流状の流動が発生する形状であれば平板状、りん片状であってもよい。
図2は、本実施の形態にかかる複合エラストマーの一部を拡大して示す模式図である。工程(a)で2種類の金属粒子を混合させた場合には、金属粒子もエラストマー30中に分散されるが、図2では省略した。
本実施の形態にかかる工程(b)は、工程(a)で得られた複合エラストマーと溶剤とを混合させ、カーボンナノファイバーが懸濁した塗布液を得る。複合エラストマーは、カーボンナノファイバーとエラストマーとの濡れがよいため、溶剤中に混合させても沈殿しない。これは、カーボンナノファイバーが、エラストマー分子に絡まったままの状態で塗布液中に均一に懸濁するためである。
本実施の形態にかかる工程(c)は、基材として例えば円盤状の基板上に、工程(b)で得られた塗布液を均一の厚さに塗布する方法を採用することができる。そのような塗布する方法としては、スピンコート法、ディッピング法、スクリーン印刷法、静電塗装などのスプレー法、インクジェット法から選ばれる方法によって実施されることが好ましい。さらに、このようにして塗布された塗布液は、減圧恒温炉中で凍結乾燥や熱処理乾燥、あるいは紫外線などによる硬化によって塗膜を形成する。塗膜の膜厚は、塗布する方法によって異なるが、例えば0.5〜30μmが好ましい。
本実施の形態にかかる製造方法で基材に形成された塗膜は、複合エラストマーと同様に、カーボンナノファイバーが均一に分散されている。
工程(d)は、工程(c)で得られた塗膜に含まれるエラストマーを分解気化させて除去する第1の熱処理工程(d−1)と、エラストマーが除去された塗膜に金属溶湯を浸透さ
せる第2の熱処理工程(d−2)と、を含むことができる。
図6は、工程(d)で得られた基板4上に形成された電子放出性薄膜の一部を拡大して示す模式図である。電子放出性薄膜7は、第2の熱処理工程(d−2)で塗膜に浸透して固化したマトリクスの金属60中にカーボンナノファイバー40が分散されている。カーボンナノファイバー40の周囲には、非晶質の周辺相70が形成される。
電子放出性薄膜7が形成された基板4を電極基板として用いる場合には、電子放出性薄膜7の表面を研磨することが好ましい。研磨方法としては、一般的な表面研磨方法が採用でき、例えば、サンドペーパによる研磨や、バフ仕上げなどを採用することができる。
図7は、本実施の形態にかかる電子放出装置を用いたフィールド・エミッション・ディスプレイの構成を示す模式図である。フィールド・エミッション・ディスプレイ100は、前記工程(d)で得られた電子放出性薄膜7を陰極82として形成した陰極基板4と、ゲート電極80を挟んで、陰極82から所定の間隔をあけて対向配置されたガラス基板90と、を例えば真空気密容器中に有している。ガラス基板90の陰極82側には陽極92及び蛍光体94が積層して形成されている。したがって、フィールド・エミッション・ディスプレイ100は、陰極82と、陽極92と、陰極82と陽極92との間に配置されたゲート電極80と、を具備する、電子放出装置を含む。
(1)サンプルの作製
(a)複合エラストマーの作製
第1の工程:ロール径が6インチのオープンロール(ロール温度10〜20℃)に、表1に示す所定量(100g)の天然ゴム(100重量部(phr))を投入して、ロールに巻き付かせた。
第2の工程:天然ゴムに対して表1に示す量(重量部)のマグネシウム粒子及びアルミニウム粒子を天然ゴムに投入した。このとき、ロール間隙を1.5mmとした。なお、投入したマグネシウム粒子及びアルミニウム粒子の詳細については後述する。
第3の工程:次に、マグネシウム粒子及びアルミニウム粒子を含む天然ゴムに対して表1に示す量(重量部)のカーボンナノファイバー(表1では「CNT」と記載する)を投入した。このとき、ロール間隙を1.5mmとした。
第4の工程:カーボンナノファイバーを投入し終わったら、天然ゴムとカーボンナノファイバーとの混合物をロールから取り出した。
第5の工程:ロール間隙を1.5mmから0.3mmと狭くして、混合物を投入して薄通しをした。このとき、2本のロールの表面速度比を1.1とした。薄通しは繰り返し10回行った。
第6の工程:ロールを所定の間隙(1.1mm)にセットして、薄通しした混合物を投入し、分出しした。
前記(a)で得られた複合エラストマーを、液温70℃のトルエンに浸漬し、攪拌しながら混合し、実施例1〜3の塗布液を得た。実施例1のトルエンの量は複合エラストマーの10倍であり、実施例2、3のトルエンの量は複合エラストマーの5倍である。トルエンの量を変えることで塗膜の膜厚を調整した。
前記(b)で得られた塗布液を、表1に示す材質の基板の表面にスクリーン印刷法で塗布
し、実施例1〜3の塗膜を得た。スクリーン印刷法は、スペーサの厚さが100μm、塗布速度が10mm/secであった。基板は、銅(表1では「Cu」と記載した)及びガ
ラスが用いられ、基板のサイズは100×100×1mmであった。
前記(c)で得られた塗膜が形成された基板を容器(炉)内に配置させ、300℃で1時間、第1の熱処理工程を実施した。第1の熱処理工程によって塗膜中のエラストマーが分解気化されて除去された。さらに、基板上(塗膜の上)に100×100×3mmのアルミニウム塊(純アルミニウムインゴット)を置き、不活性ガス(微量の酸素を含む窒素)雰囲気中でアルミニウムの融点(800℃)まで昇温し、第2の熱処理工程を実施した。この昇温の過程において、まず、マグネシウムが気化し、さらに、アルミニウム塊が溶融した。アルミニウムの溶湯は、マグネシウムによってその表面が還元され、分解気化したエラストマーと置換するように塗膜中に浸透した。アルミニウムの溶湯を浸透させた後、これを自然放冷して凝固させ、電子放出性薄膜が形成された基板を得た。
前記(d)で得られた実施例1〜3及び比較例1、2の基板を陰極基板として設置し、ゲート電極を挟んでITOガラス基板を陰極基板に対向配置させた。ITOガラス基板の表面には、陽極及び蛍光体が形成された。陰極基板とガラス基板(蛍光体)の電極間隔は150μmとした。実施例1〜3の電子放出性薄膜の表面は、#1500のサンドペーパで研磨し、さらにバフ研磨して均一な膜厚に調整するとともに表面を平滑化した。比較例1、2の電子放出性薄膜の表面には加工を施さず、ゲート電極と対向する面全体をエミッタとした。各サンプルの表面粗度をラフネスメータで計測し、その結果を表1に示した。
原料エラストマーの天然ゴムについて、パルス法NMRを用いてハーンエコー法による測定を行った。この測定は、日本電子(株)製「JMN−MU25」を用いて行った。測定は、観測核が1H、共鳴周波数が25MHz、90゜パルス幅が2μsecの条件で行い、ハーンエコー法のパルスシーケンス(90゜x−Pi−180゜x)にて、Piをいろいろ変えて減衰曲線を測定した。また、サンプルは、磁場の適正範囲までサンプル管に挿入して測定した。測定温度は150℃であった。この測定によって、原料エラストマー単体の第1スピン−スピン緩和時間(T2n)と、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)と、第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)と、を求めた。なお、測定温度が30℃の場合における原料エラストマー単体の第1スピン−スピン緩和時間(T2n)についても求めた。測定結果を表1に示す。
実施例1〜3及び比較例1の電子放出性薄膜の電子顕微鏡(SEM)におけるカーボンナノファイバーの分散状態の観察では、カーボンナノファイバーの凝集はほとんど観察されず良好であった。
(4−1)X線回折による結晶構造の分析
実施例1〜3及び比較例1の電子放出性薄膜を、X線回折(XRD)によって結晶構造の分析を行なった。結晶成分として検出された成分は、ほとんどがアルミニウムであり、電子放出性薄膜の約40重量%をしめる周辺相(表1には「Al/N/O周辺相の成分割合」と記載した)が結晶構造を有していない非晶質(アモルファス)相であることがわかった。
(4−2)電界放射走査型電子顕微鏡による元素分析
実施例1〜3及び比較例1の電子放出性薄膜を、電界放射走査型電子顕微鏡(FE−SEM)で観察し、照射点近傍の元素分析を行なった。元素分析結果から、非晶質の周辺相(Al/N/O周辺相)は、アルミニウム、窒素及び酸素の各元素を有することがわかった。
実施例1〜3及び比較例1,2の電子放出性薄膜のしきい値及び飽和電流密度を、前記(e)で作製した装置で測定した。しきい値の測定は、陽極と陰極の間に徐々に電圧をかけ、電子放出し始める電界(電圧/電極間距離)をしきい値電界とした。飽和電流密度は、陽極と陰極の間に徐々に電圧をかけ、電流密度がほぼ飽和状態になった値を飽和電流密度とした。測定結果を表1に示す。
2 減圧手段
3 注入手段
4 基板
5 塗膜
6 アルミニウム塊
7 電子放出性薄膜
10 第1のロール
20 第2のロール
30 エラストマー
40 カーボンナノファイバー
41 第1の金属粒子(マグネシウムなどの還元剤)
42 第2の金属粒子(アルミニウムなどのマトリクス金属)
60 マトリクス
70 周辺相
80 ゲート電極
82 陰極基板
90 ガラス基板
92 陽極
94 蛍光体
100 フィールド・エミッション・ディスプレイ
Claims (8)
- エラストマーと、金属粒子と、カーボンナノファイバーと、を混合して複合エラストマーを得る工程(a)と、
前記複合エラストマーと溶剤とを混合し、塗布液を得る工程(b)と、
前記塗布液を基材に塗布し、塗膜を形成する工程(c)と、
前記塗膜を熱処理して前記塗膜に含まれるエラストマーを除去すると共に、金属溶湯を該塗膜中に浸透させて薄膜を形成する工程(d)と、
を有する、電子放出性薄膜の製造方法。 - エラストマーと、金属粒子と、カーボンナノファイバーと、を混合しかつ剪断力によって前記カーボンナノファイバーを前記エラストマー中に分散させて複合エラストマーを得る工程(a)と、
前記複合エラストマーと溶剤とを混合し、カーボンナノファイバーがエラストマー分子に絡まったままの状態で存在する塗布液を得る工程(b)と、
前記塗布液を基材に塗布し、塗膜を形成する工程(c)と、
前記塗膜を熱処理して前記塗膜に含まれるエラストマーを除去すると共に、金属溶湯を該塗膜中に浸透させて薄膜を形成する工程(d)と、
を有する、電子放出性薄膜の製造方法。 - 請求項1または2において、
前記カーボンナノファイバーは、平均直径が0.5ないし500nmである、電子放出性薄膜の製造方法。 - 請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記金属粒子は、アルミニウムを含む粒子である、電子放出性薄膜の製造方法。 - 請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記金属溶湯は、アルミニウムを含む溶湯である、電子放出性薄膜の製造方法。 - 請求項1ないし5のいずれかにおいて、
前記工程(d)は、前記塗膜に含まれるエラストマーを分解気化させて除去する第1の
熱処理工程(d−1)と、
エラストマーが除去された前記塗膜に前記金属溶湯を浸透させる第2の熱処理工程(d−2)と、
を含む、電子放出性薄膜の製造方法。 - 請求項6において、
前記第2の熱処理工程は、窒素雰囲気内で行なわれる、電子放出性薄膜の製造方法。 - 請求項1ないし7のいずれかにおいて、
前記工程(d)で形成された前記薄膜の表面を研磨する、電子放出性薄膜の製造方法。
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