JP4488273B2 - 薄膜形成用のターゲット組立体、蒸着源、薄膜形成装置及び薄膜形成方法 - Google Patents

薄膜形成用のターゲット組立体、蒸着源、薄膜形成装置及び薄膜形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄膜形成等の蒸着時に用いる薄膜形成用のターゲット組立体、蒸着源、薄膜形成装置及び薄膜形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
固体のターゲット材料から、プラズマを発生させて基板上に蒸着による薄膜を形成する薄膜形成装置及び薄膜形成方法としては、例えば特許第2857743号の発明がある。この発明は、図8に示すように、円筒状の長尺な導電性物質からなるターゲット材料43の一端側に、このターゲット材料43と同じ断面を有するカソード電極40を一体的に接続する。そして、このカソード電極40及びターゲット材料43の一端側の外周側面を覆い、かつ、前記ターゲット材料43の他端側を露出させて円筒状の絶縁部材42を配置し、この露出した側の絶縁部材42の外周に円筒状のトリガー電極41を設置する。このようにして、ターゲット組立体50を作成する。
【0003】
尚、この図8では、絶縁部材42の端面42aと、トリガー電極41の端面41aとは一致させている。よって、前記ターゲット材料43はトリガー電極41を設置した設置部よりも先端部分が露出部43aとして露出されており、この露出部43aはプラズマを発生させる際のアーク放電を起こさせる消耗部として使用される。
【0004】
更に、ターゲット材料43、絶縁部材42及びトリガー電極41の周囲には、空間を介して、これらを取り囲むようにした円筒状のアーク電極44(アノード電極ともいう)が設置されている。アーク電極44には、ターゲット材料43の一端側に接続したカソード電極40との間でアーク電源51により設定された正の電圧が定常的にかかっている。その状態において、トリガー電極41を正の電圧とし、トリガー電極41とターゲット43材料の一端側との間にトリガー電源52により瞬間的に高電圧をかけることで、トリガー電極41とターゲット材料43との間にトリガー放電を起こさせる。このトリガー放電は、絶縁部材42の端面42aに沿った沿面放電として起こり、あるいはターゲット材料43の露出部43aのうちで前記絶縁部材42の端面42aに近い部位(基端部側)と絶縁部材42の端面42aとの間で起こり、このトリガー放電によりターゲット材料43の外周側面にアークスポット45の発生とともにプラズマが発生し、この発生したアークスポット45(カソードスポットあるいは局所溶融エリアともいう)をきっかけとして、ターゲット材料43のアークスポット45とアーク電極44との間にアーク放電を起こさせ、そして、アークスポット45の成長と移動とによって連続的にアーク放電を起こさせてターゲット材料43の外側側面からアークスポット45の発生とともにプラズマを発生させる。
【0005】
ターゲット材料43の前記基端部側の外周側面で発生するアークスポット45からは、プラズマ原子及び電気的に中性な液滴等からなる物質が様々な方向に放出されて飛散するが、ターゲット材料43に流れる電流により発生したターゲット材料43周囲の磁場により、前記プラズマ原子のみが飛散方向をターゲット材料43の軸線方向へ曲げられ、ターゲット材料43の軸線の先方方向に設置された基板48には、前記曲げられたプラズマ原子のみが照射され、そして、この基板48上に堆積されて薄膜が形成される。一方、電気的に中性な液滴は重く、磁場の影響をほとんど受けないのでアーク電極44の内周面に付着する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述の従来例では、トリガー放電により、絶縁部材42の端面42aに近いターゲット材料43の露出部43aの基端部側外周側面にアークスポット45を発生させ、このアークスポット45の成長と移動によってアーク放電を起こさせるので、ターゲット材料43の基端部側の局所消耗が著しい。具体的には、上述したようにアーク放電時にターゲット材料43の外周側面に発生するアークスポット45は、ターゲット材料43の軸線方向の中で最もアーク電源51に接続したカソード電極40側に近い底面方向、特にターゲット材料43が絶縁部材42から露出する端部(絶縁部材42の端面42aとの接触部)の外周側面に集中する。
【0007】
一方、トリガー放電もターゲット材料43が絶縁部材42の端面42aから露出した直下、即ち、トリガー電極41と露出したターゲット材料43との最短距離となる位置で発生しやすい(沿面放電となりやすい)。
【0008】
このため、図9に示すように、トリガー電極41の設置部近傍の露出したターゲット材料43の外周側面が選択的に消耗してくびれ部46が発生し、ターゲット材料43の体積の大部分、即ち、ターゲット材料43の露出部43aにおける基板48側の大部分が消耗していないにも関わらず、くびれ部46の発生によって露出部43aが落下してしまいターゲット材料43は早期に寿命を迎えてしまうという不具合があった。
【0009】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたもので、ターゲット材料の局所消耗の低減を図り、ターゲット材料の長寿命化が得られる薄膜形成用のターゲット組立体、蒸着源、薄膜形成装置及び薄膜形成方法を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するには、トリガー電極となる第1の電極をターゲット材料の先端部(薄膜を形成する基板と対向する側の端面)に絶縁部材を介して設置することにより、ターゲット材料の露出部(アーク放電を起こさせるターゲット材料の側周面部分)の全体でアークスポットによる消耗が発生するようにして、局部消耗をなくする。本発明のターゲット組立体、蒸着源及び薄膜形成装置では、アーク放電によりターゲット材料の側表面に発生するアークスポットは、ターゲット材料の側表面の先端側から他端側方向へ移動しやすいため、トリガー放電により発生したターゲット材料の側表面におけるトリガー電極近傍のアークスポットは、ターゲット材料とアーク電極との間でアーク放電が起こっている間に先端から他端側へ移動する。1回のアーク放電が終了する前にターゲットの露出部の他端までアークスポットが行き着いてしまうと、アークスポットの発生位置はターゲット露出部の他端に集中して、該他端の消耗を速くするが、この露出部の他端でのアークスポットの集中する時間を短くすることにより、その移動経路であった先端から露出部の他端までをアークスポットの発生域、即ち、プラズマ発生域として使用することができる。
【0011】
従来例のように、アーク放電時にアークスポットが集中しやすいターゲット材料の露出部の近傍にトリガー電極を設置したものと比べると、本発明の構成のターゲット組立、蒸着源及びこれらを用いた薄膜形成装置、並びに薄膜形成方法ではターゲット材料の局所消耗を低減し、ターゲット材料の露出部の全体を消耗できるようになってターゲット材料の使用の寿命を延ばすとともに未使用部分として残るターゲット体積を小さくすることができる。
【0012】
以上の観点から、本発明のターゲット材料を組み込んだ薄膜形成用のターゲット組立体及び蒸着源並びにこれらを用いた薄膜形成装置及び薄膜形成方法は、以下のような構成とした。
【0013】
すなわち、請求項1記載の発明は、ターゲット材料の外周面から発生させたプラズマ原子を基板上に照射して、該基板上に薄膜を形成する薄膜形成装置に用いる薄膜形成用のターゲット組立体において、前記ターゲット材料の前記基板と対向する側の端面に絶縁部材を介して第1の電極を積み重ねて配置するとともに、前記ターゲット材料の他端部には第2の電極を一体的に固定して形成したことを特徴とするものである。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の薄膜形成用のターゲット組立体において、前記ターゲット材料は長尺棒からなり、この長尺棒の前記基板と対向する側の端面に、該端面を覆う絶縁材と該絶縁部材の端面を覆う第1の電極が順次に積み重ねて配置されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の薄膜形成用のターゲット組立体において、前記ターゲット材料は、円筒形状の長尺棒からなり、この円筒形状の筒部内に、軸部が円筒形状でかつ端部にフランジを有する絶縁部材の前記軸部が嵌め込まれるとともに、前記フランジがターゲット材料の端面と当接し、前記絶縁部材の円筒形状の軸部内には、軸部を有しかつ端部にフランジを有する第1の電極の軸部が嵌め込まれるとともに第1の電極のフランジと前記絶縁部材のフランジとが当接していることを特徴とするものである。
【0016】
請求項4記載の発明は、減圧雰囲気下でプラズマを発生させるターゲット材料に絶縁部材を介して設置されたトリガー放電を起こさせるトリガー電極と、トリガー放電をきっかけとしてアーク放電を発生させるためのターゲット材料周囲に空間を介して設置されたアーク電極とを有する蒸着源において、前記ターゲット材料の先端面に、前記絶縁部材を介して前記トリガー電極を設置したことを特徴とするものである。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の蒸着源において、前記ターゲット材料は、棒状又は中空円筒状であり、その先端面に前記絶縁部材を介して前記トリガー電極を圧着して設置することを特徴とするものである。
【0018】
請求項6記載の発明は、長尺のターゲット材料に絶縁部材を介して固定したトリガー電極と、これらの全体を取り囲むように配置した筒状のアーク電極とを有し、減圧雰囲気下で前記トリガー電極とターゲット材料との間にてトリガー放電を起こさせるとともに該トリガー放電をきっかけとして前記ターゲット材料とアーク電極との間でアーク放電を発生させ、このアーク放電で前記ターゲット材料の外周面に発生したプラズマのプラズマ原子を基板の薄膜形成面上に照射して該基板上に薄膜を形成する薄膜形成装置において、前記トリガー電極は、前記基板と対向する側の前記長尺のターゲット材料の端面に前記絶縁部材を介して積み重ねて形成されて前記基板と対向し、前記ターゲット材料の前記基板と対向しない側の端面には前記トリガー電極及びアーク電極に対して負電圧となるベース電極が取り付けられていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項7記載の発明は、長尺のターゲット材料に絶縁部材を介して固定したトリガー電極と、これらの全体を取り囲むように配置した筒状のアーク電極とにそれぞれ電圧を印加し、減圧雰囲気下で前記ターゲット材料の外周面に発生したプラズマのプラズマ原子を基板の薄膜形成面上に照射して該基板上に薄膜を形成する薄膜形成方法において、前記長尺のターゲット材料の一端面に絶縁部材を介して前記トリガー電極を積み重ねて形成したターゲットを作成し、このターゲットにおける前記ターゲット材料の他端側に、前記トリガー電極及びアーク電極に対して負電圧にするためのベース電極を取り付け、前記トリガー電極を前記基板の薄膜形成面側に対向して配設し、前記ターゲットのベース電極に負電圧を印加しつつ前記トリガー電極とターゲット材料の間にてトリガー放電を起こさせるとともに、このトリガー放電をきっかけとして前記ターゲット材料とアーク電極との間でアーク放電を発生させ、このアーク放電によりターゲット材料の外周面に発生したプラズマのプラズマ原子を、前記基板の薄膜形成面上に照射して該基板上に薄膜を形成することを特徴とするものである。
【0020】
以下に上記構成の請求項1乃至7記載の各発明の作用を説明する。
【0021】
請求項1記載のターゲット組立体によれば、絶縁部材に隣接し露出したターゲット材料の端部外周面、即ち、絶縁部材と隣接したターゲット材料の外周面端部から、第2の電極側近傍までの外周面の領域全体(ターゲット材料の側表面全体)に亙ってアークスポットを発生できるようになり、ターゲット材料の長寿命化が図れる。
【0022】
請求項2記載のターゲット組立体によれば、ターゲット材料の端面が絶縁部材で覆われているので、トリガー放電によるアークスポットをターゲット材料の外周面に発生することができ、続いて発生するアーク放電もターゲット材料の外周面に発生させることができる。
【0023】
請求項3記載のターゲット組立体によれば、ターゲット材料、絶縁部材及び第1の電極をそれぞれ当接させているので、薄膜形成時のアーク電流あるいはアークスポット発生時にこれらの構成物以外の不純物の飛散がないので、不純物のない薄膜形成を実現できる。
【0024】
請求項4記載の蒸着源、請求項6記載の薄膜形成装置及び請求項7記載の薄膜形成方法によれば、トリガー電極により絶縁部材の直下の露出したターゲット材料の端部外周面、即ち、絶縁部材と隣接したターゲット材料の外周面端部からトリガー放電を発生させ、次いでターゲット材料の他端側に向けてアークスポットの移動を制御できるようになるので、ターゲット材料の側表面全体が消耗できるようになり、ターゲット材料の長寿命化が図れる。
【0025】
請求項5の蒸着源によれば、ターゲット材料、絶縁部材及びトリガー電極が圧着されて当接しているので、薄膜形成時のアーク電流あるいはアークスポット発生時に、これらの構成物以外の不純物の飛散がないので、不純物のない薄膜形成を実現できる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1について、図1、図2を用いて説明する。
【0028】
本実施の形態1において、プラズマを発生させるターゲット材料1は、純度99.9%のCrを用い、図1に示すように、長尺棒の形状、例えば直径4mm、長さ40mmの円柱形状としている。
【0029】
このターゲット材料1の一端面である上面1aには、このターゲット材料1の断面と同形状で厚さ0.5mmの円盤形状をしたZrO焼結体からなる絶縁セラミクス焼結体、即ち、絶縁部材2が耐熱性接着剤により接着されている。
【0030】
絶縁部材2上には、ターゲット材料1の外周側面にトリガー放電を起こさせるための、第1の電極としてのトリガー電極3(直径4mm、厚さ2mm、SUS304製)が耐熱性接着剤により接着されている。従って、このトリガー電極3も、前記ターゲット材料1の断面と同形状であるので、ターゲット材料1の端面には、該端面を覆うように絶縁部材2及びトリガー電極3が耐熱性接着剤(例えば、セラミックス粉末混入の接着剤としてアルミナボンド(商品名 東亜合成(株)製 アロンセラミック))により接着され積み重ねられて形成されている。
【0031】
そしてターゲット材料1の他端側には、図2に示すように、第2の電極としてのSUS304製のターゲットベース電極5が複数本のネジにより固定され、薄膜形成時に用いられるターゲット組立体10が構成されている。即ち、図2に示すように、このターゲットベース電極5は、前記ターゲット材料1の一端側と嵌合する凹部5aを穿設した小径突出部5bと、この小径突出部5bを一体で支持する大径部5cとを有しており、この凹部5a内に前記ターゲット材料1の他端側を嵌め込むとともに、前記小径突出部5bに備えられてターゲット材料1の中心軸線方向に進退する複数本のネジ9の先端がターゲット材料1の外周側面を締め付けることによって、ターゲット材料1とターゲットベース電極5とが固定されている。
【0032】
そして、ターゲットベース電極5におけるターゲット材料1の取り付け側の小径突出部5b及び大径部5cの表面には、これらの表面を覆うように形成されて、後述のアーク電極4とターゲットベース電極5とを絶縁状態に維持するための絶縁カバー8が取り付けられている。
【0033】
このように構成され、絶縁カバー8を取り付けたターゲット組立体10は、ターゲット材料1の周囲の空間を介して円筒状に形成したアーク電極(SUS304製)4内に挿入され、アーク電極4の一端と絶縁カバー8が当接されて両者は固定される。このとき円筒状のアーク電極4の中心軸線と、ターゲット材料1の中心軸線とは一致し、それぞれの内周面と外周側面とは等距離としている。そして、図2のようにターゲットベース電極5とトリガー電極3にはトリガー電源7の負電位側の端子(陰極端子)と正電位側の端子(陽極端子)がそれぞれ接続され、ターゲットベース電極5を介してターゲット材料1とアーク電極4の一端側(即ち、ターゲットベース電極5に近い側であって、トリガー電極3から離れた側)にはアーク電源6の負電位側の端子と正電位側の端子がそれぞれ接続されている。尚、アーク電源6の正電位側の端子とアーク電極4との接続位置は、ターゲット材料1が絶縁カバー8から露出した位置に対応する位置が好ましい。
【0034】
このようにして、トリガー電源7により、トリガー電極3(第1の電極)には正の電圧が、ターゲットベース電極5(第2の電極)には負の電圧が印加されるようになっており、またアーク電源6により、アーク電極4には正の電圧が、ターゲットベース電極5には負の電圧が印加されるようになっている。
【0035】
上述した構成では、アーク電源6の負電位側の端子は、ターゲットベース電極5に接続するようにしたが、これに限らずターゲット材料1に直接に接続しても良いが、本実施の形態1では図2に基づいて前者の例で説明する。
【0036】
前記アーク電源6は、図示しないが蓄電要素であるコンデンサーを有し、例えば8800μFの電気量を充電しておくことができ、電圧は0〜100Vの範囲で任意に設定できるようにしている。また、トリガー電源7は、図示しないコンピューターからのパルス信号により5μsecの周期で、ターゲットベース電極5を介して、ターゲット材料1とトリガー電極3との間に0〜5kVの電圧範囲で任意に設定された電圧をパルス状で印加するようにしている。
【0037】
上述したターゲット組立体10に対し、アーク電源6及びトリガー電源7をそれぞれ接続した構成とした蒸着源11を、図3に示すように、薄膜形成装置12の真空容器13中に設置する。薄膜形成装置12内の前記ターゲット組立体10の前方には、基板ホルダ14に保持された基板15が薄膜形成面をトリガー電極3側に対向して配置している。
【0038】
更に、薄膜形成装置12に配備されている不図示の真空ポンプにて真空容器13の内部を1×10−4Pa以下の真空度まで減圧し、アーク電源6を90Vの電圧で作動させ、ターゲットベース電極5を介してターゲット材料1とアーク電極4の間に90Vの電圧を印加する。これにより、アーク電極4は正電位となり、ターゲット材料1は負電位となる。このとき、真空容器13中は減圧下なので、ターゲット材料1とアーク電極4の間に電圧をかけても放電は起こらず、待機状態となる。
【0039】
次に図示しないコンピューターにより、トリガー電源7へパルス信号を送り、トリガー電源7を作動させ、ターゲットベース電極5を介してのターゲット材料1とトリガー電極3の間に3kVの電圧を5μsec間加える。これによりトリガー電極3は正の電位となり、ターゲット材料1は負の電位となる。
【0040】
このとき、ターゲット材料1とトリガー電極3との間には絶縁部材2が存在するので、電気的には導通しないが、接触しているために絶縁部材2の表面(外周側面)を伝って瞬間的にターゲット材料1の側表面(即ち、ターゲット材料1のトリガー電極設置側の外周側面の縁部近傍)1bに電流が流れ、トリガー放電が生成する。
【0041】
トリガー放電が起こると、その電気的エネルギーによりターゲット材料1の前記トリガー放電が起こった側表面(外周側面の縁部近傍)1b上にアークスポットとよばれる局所溶融エリアが発生し、この局所溶融エリアからの蒸発したターゲット材料1の物質がターゲット材料1の側表面1bとアーク電極4の内周面との間の空間に飛び出して導電体の役割を担い、ターゲット材料1の側表面1bとアーク電極4の内周面間でアーク放電を起こさせる。
【0042】
そしてこのアーク放電によってターゲット材料1の側表面1bに発生したアークスポットからの蒸発で様々な方向に飛散した物質中のプラズマ原子は、アーク放電によってターゲット材料1内を流れる電流、即ち、ターゲット材料1内をトリガー電極3側からターゲットベース電極5側に流れる電流(アーク電流)により発生する磁場で、アーク電極4の開口部から基板15に向けて放出される。この放出によって、プラズマ原子は基板15の薄膜形成面(表面)に堆積することになり、薄膜が形成される。アーク放電はアーク電源6に接続された前記コンデンサーに蓄積した電気量を放出し終わると終了する。本実施の形態1の場合には電気量を放出して1回のアーク放電を終了するまでのその所要時間は約200μsec程度である。
【0043】
前記トリガー放電により前記ターゲット材料1の側表面(外周側面のトリガー電極設置側の縁部近傍)1bに発生したアークスポットAp(図4に黒丸で示す)は、アーク放電によってターゲット材料1内を流れる電流(前記のアーク電流)により発生する磁場による磁力の作用で、ターゲット材料1の先端方向への力(真空容器13内の基板15の薄膜形成面へ向かう力)を受け、この力によってアークスポットApはトリガー電極3側にとどまろうとする。しかし、このアークスポットApには、アーク放電時に電気抵抗が少なくなるように移動させる力も作用する。前記とどまる力よりもこの移動させる力の作用が勝ることにより、アークスポットApは、ターゲット材料1が絶縁部材2の直下の露出した端部の側表面から、アーク電源6の負電位側の端子を接続したターゲットベース電極5の方向へ移動する。ターゲットベース電極5の方向へ移動する際のアークスポットApは、ターゲット材料1の側表面1bにおいて、1回のアーク放電で複数順次に発生するが、図4に例示するように、これらのアークスポットApはターゲット材料1の中心軸線に平行な軸線上を連続して直線的に移動するとは限らず、その発生位置が点在しつつ前記ターゲットベース電極5方向へ移動する。図4においてターゲット材料1の先端側から基端側に向いつつ、その周方向ではランダムにアークスポットApが発生して移動する。尚、図4においてはアークスポットApの位置は、一連のアークスポット群の中で抜粋して示している。
【0044】
そして、前記コンデンサーに蓄積した電気量を放出し、1回のアーク放電が終了した後は、再度コンデンサーに所要の電気量が充電され、2回目のトリガー放電とそれに続く2回目のアーク放電が始まり、上述と同様に繰り返され、アークスポットApはトリガー電極3の極めて近傍のターゲット材料1の側表面1b側からターゲット材料の側面を移動しながら絶縁カバー8の極めて近傍の露出したターゲット材料1の側表面1bまで移動する。
【0045】
前記ターゲット材料1の側表面1bと、トリガー電極3との間のトリガー放電によって発生するアークスポットApにおいて、前記トリガー電極3設置側のターゲット材料1における外周側面の縁部近傍でのアークスポットApの発生位置は、縁部近傍の円周方向にてランダムなので、1回のトリガー放電によって複数回のアーク放電をターゲット材料1の側表面1bとアーク電極4の内周面との間で発生させれば、各アーク放電の毎に発生するアークスポットApをターゲット材料1の側表面1bの全面を走らすことができるようになり、ターゲット材料1の消耗をこのターゲット材料1の側表面1b全体でほぼ均等にできる。
【0046】
即ち、ターゲット材料1の消耗状況を踏まえアーク放電時間を微調整することにより、厳密にターゲット材料1の消耗分布を制御することができる。よって、ターゲット材料1の局所消耗を低減し、ターゲット材料1の寿命を延ばすことができる。
【0047】
本実施の形態1では、アーク放電時間を約200μsecとしたので、ターゲット材料1の中心軸線方向での露出した側表面1bの全長Lに亙ってアークスポットApを生じさせるように説明したが、アーク放電時間を長くすると、絶縁カバー8の極めて近傍でのターゲット材料1の側表面1bでアークスポットApが多く生じることになり、従来例で述べたような外部のくびれが生じることになって好ましくなくなる。
【0048】
本実施の形態1のターゲット組立体10及び蒸着源11並びにこれらを用いた薄膜形成装置及び薄膜形成方法によれば、ターゲット材料1の不均一消耗を軽減し、ターゲット材料1の寿命を長くすることができる。
【0049】
本実施の形態1では、ターゲット材料1に純度99.9%のCrを用いたが、ターゲット材料1は導電性の物質であれば良く、例えばFe、Ni、Cu、Pt、Au、lr、Reのような金属や、炭素、WCのような炭化物などの導電性物質も用いることができる。
【0050】
尚、トリガー電極3、アーク電極4、ターゲットベース電極5は、SUS304製に限らず、銅電極や他の金属を用いることができる。純度99.9%以上の清浄な薄膜を成膜するためには99.9at%以上の純度のターゲット1を使用することが望ましいが、薄膜が高純度である必要がなければ99.9at%以下の純度のターゲットを用いても本発明の効果を妨げることはない。また、本実施の形態1では、アーク電極4とアーク電源6の正電位側の接続位置は、ターゲット材料1が絶縁カバー8から露出した位置に対応するアーク電極4の表面位置として説明したが、この対応する位置での接続がしにくい場合には、前記絶縁カバー8から露出した範囲の約5mm以下の位置で接続しても、ターゲット材料1の露出した大部分を薄膜形成用に使用でき、従来よりもターゲット材料1の寿命を格別に延ばすことができるものである。
【0051】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について、図5を参照して説明する。
【0052】
本実施の形態2は、ターゲット組立体10a又は蒸着源11aを構成する絶縁部材2aとして、絶縁性能を有する絶縁性接着剤層を用いたものである。
【0053】
尚、図5に示す本実施の形態2では、実施の形態1と同様な部材には同一名称及び符号を用いて説明する。
【0054】
図5において、プラズマを発生させるターゲット材料1は、純度99.9%のCrを用い、長尺棒形状、例えば直径4mm、長さ40mmの円柱形状としている。このターゲット材料1の一端面には、ターゲット材料1の断面と同形状で、厚さ0.5mmに形成された絶縁部材2aが設けられ、その絶縁部材2aの他端面には、前記ターゲット材料1の外周側面にトリガー放電を起こさせるための、第1の電極としてのトリガー電極3(直径4mm、厚さ2mm、SUS304製)が取り付けられている。そして、トリガー電極3と反対側のターゲット材料1の他端部には、実施の形態1と同様に、第2の電極としての金属製(SUS304製)のターゲットベース電極5が取り付けられて、ターゲット組立体10aが構成されている。このターゲット組立体10aにそれぞれ接続されるアーク電源6、トリガー電源7の構成は、実施の形態1の場合と同じである。
【0055】
前記ターゲット組立体10aの作製においては、ターゲット材料1の前記絶縁部材2aを形成する一端側の円周側面に肉厚のテープ2b(図中、点線で示す)を巻き付け(又は円周側面に嵌合する筒体を被せ)、そのテープ2bの内側にて形成される空間内に絶縁性能を有する絶縁性接着剤を供給する。この絶縁性接着剤としては、前記アルミナボンド(例えば、商品名;アロンセラミック、東亜合成(株)製)がある。この絶縁性接着剤の上にトリガー電極3を積み重ねて接着し、その後絶縁性接着剤を硬化させることにより、所望厚さの絶縁部材2aを得る。その後、前記テープ2b(あるいは筒体)を除去する。
【0056】
このようにして得られたターゲット組立体10a又はこのターゲット組立体10aを組み込んだ蒸着源11aであっても、実施の形態1の薄膜形成装置及び薄膜形成方法によって、ターゲット材料1の外周側面の全体から実施の形態1と同様にアークスポットApを発生させ、基板15上に所望の薄膜を形成することができる。
【0057】
本実施の形態2では、絶縁部材2aを構成する絶縁性接着剤の層厚をターゲット材料1の種類によって適宜に調整できるので、所望厚さの絶縁部材2aの形成が容易である。
【0058】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について、図6を参照して説明する。
【0059】
本実施の形態3は、前記実施の形態1においてターゲット材料1の形状と、ターゲット材料1の端面に設置するトリガー電極3と絶縁セラミクス焼結体からな絶縁部材2とを直接に密着させたこと等が異なることが特徴である。
【0060】
図6に示すように、ターゲットとして中空円柱状(円筒状)の長尺棒からなるターゲット材料21を用いる。
【0061】
このターゲット材料21に対して、同じく中空円柱状(円筒状)の軸部22aを有し、片端にターゲット材料21の端面に密着すべくターゲット材料21の直径方向に広がった円盤形状のフランジ22bを有し、中空絶縁セラミクス焼結体からなる絶縁部材22における前記軸部22aを嵌め込み、フランジ22bをターゲット材料21の端面に当接して設置している。
【0062】
そして、トリガー電極23の棒状の軸部23aの一端には、トリガー放電を起こさせるためのフランジとなる傘部25を設ける。また、軸部23aの他端には、前記ターゲット材料21の他端面(図では下端面)、及び絶縁部材22の他端面よりも軸部23aが突出した状態で、ターゲット材料21と絶縁部材22を一体的に固定するように圧着力を与えるためにネジ部26を設ける。
【0063】
このネジ部26にナット32をねじ込むことで、軸部23aを外周面に設けた第2の電極としてのトリガー電極23が絶縁部材22と組み合わされて設置されている。
【0064】
即ち、トリガー電極23の軸部23aは、絶縁部材22の中空円筒状の軸部22aの内部に嵌め込まれ、絶縁部材22のフランジ22bとトリガー電極23の傘部25とが当接した状態で、トリガー電極締め付け用のナット32によりトリガー電極23の傘部25を介してターゲット材料21、絶縁部材22、及びトリガー電極23を0.1g/cm以上の圧力で締め付け、傘部25より絶縁部材22を中空のターゲット材料21の端面に圧着させている。
【0065】
尚、ターゲット材料21の他端面(図6では下端面)には、リング形状の絶縁物質からなる絶縁リング30を介装して、トリガー電極23の軸部23aのナット32を螺合している。また、絶縁部材22の軸部22aの下端面と、ナット32との間には隙間が形成されて、傘部25により絶縁部材22のフランジ22bが確実に圧着されるようになっている。
【0066】
また、傘部25の外周と絶縁部材22の外周が確実に圧着され、軸部23a周囲での中当たりがないように、金属製のトリガー電極23の傘部25の下面側には軸部23aの周囲に凹状のくぼみ24が穿設されている。よって、ナット32による締め付け力(圧着力)は、0.1g/cmとなって、ターゲット材料21、絶縁部材22のフランジ22b及びトリガー電極23の傘部25は密着し、一体化している。
【0067】
また、ターゲット材料21の下端側の外周側面は、リング形状で第2の電極として機能するターゲットベース電極5の凹部に嵌め込まれ、このターゲットベース電極5の中心軸線方向に進退自在に設けられたネジ33により、下端側の外周側面が押圧されて固定され、ターゲット組立体10bが構成されている。
【0068】
そしてこのターゲット組立体10bのターゲットベース電極5の外周面が絶縁カバー28で覆われて、ターゲット組立体10bを取り囲む円筒状のアーク電極4内に配置されている。
【0069】
また、アーク電源6の正電位側の接続端子は、筒状のアーク電極4の下部側の下面、具体的には、ターゲット材料21が絶縁カバー28から露出した位置よりも下方側の、絶縁カバー28の存在する部位と対応した箇所で接続され、またアーク電源6の負電位側の接続端子は、ターゲットベース電極5の下部側の下面で接続されている。
【0070】
また、トリガー電源7の正電位側の接続端子は、トリガー電極23の軸部23aの下部側で接続され、また、負電位側の接続端子は、ターゲットベース電極5の下部側の下面で接続されている。
【0071】
上記構成において、アーク電源6の正電位側の接続端子の接続位置が、ターゲット材料21の絶縁カバー28から露出した位置よりも下方側にあると、アーク放電時のアークスポットApの移動によってターゲット材料21の露出した側表面の全体を薄膜形成用に使用できるようになる。
【0072】
本実施の形態3において、薄膜形成装置12の真空容器13を、実施の形態1の場合と同様に減圧雰囲気にした上でアーク電源6によりアーク電極4とターゲット材料21間に90Vの電圧を与えて放電待機状態とする。次いで、トリガー電源7によりトリガー電極23とターゲット材料21間に4.4kVの電圧を5μsec与えると、トリガー電極23の傘部25の外周より絶縁部材22の側表面を伝ってターゲット材料21側表面へとトリガー放電が生じる。
【0073】
この際、トリガー電極23及び絶縁部材22及びターゲット材料21は接着剤などによる固定ではなく、これら各部材を直接に当接した状態での圧力による固定であるため、トリガー放電時の前記接着剤等の介在物の蒸発によって生ずる不純物の混入を低減することができる。
【0074】
前記トリガー放電をきっかけとして、アーク電極4とターゲット材料21間にアーク放電が起こり、ターゲット材料21側表面に生じたアークスポットApからプラズマが発生する。プラズマ発生時にターゲット材料21側表面にできるアークスポットApは、実施の形態1の場合と同様にターゲットベース電極5へ向かう力を受けながらターゲット材料21側表面を移動するため、アーク放電時間の制御を行うことでターゲット材料21の消耗を均一に制御することが可能となる。
【0075】
上述した本実施の形態3によれば、実施の形態1の場合と同様な効果を奏することに加え、不純物の少ないプラズマ供給が可能となり、不純物の少ない薄膜を基板15上に形成することができる。
【0076】
また、本実施の形態3では、ターゲット材料21及び絶縁部材22を中空状とし、トリガー電極23の軸部23aに設けたネジ部26に螺合した固定用のナット32によりターゲット材料21及び絶縁部材22及びリガー電極23を圧着して、実施の形態1のような接着剤等の介在物を介在させないで、直接に当接させるようにしたが、例えば、図7に示すように、ターゲット材料21、絶縁部材22及びトリガー電極23を順次に積層して直接に当接させ、その中心位置で絶縁性材料からなる頭付きボルト35と、ナット36とでこれらを圧着固定するようにしたクランプのような構成のターゲット組立体10bとしても良い。
【0077】
図7においては、ターゲット材料21は中空円筒状である。また、絶縁部材22はリング状である。トリガー電極23は中心部にくぼみ24を形成したリング状である。そして、これらのターゲット材料21、絶縁部材22及びトリガー電極23の中心部を貫通して、絶縁性材料からなる頭付きボルト35が挿入され、この頭付きボルト35の下端のネジ部35aに絶縁性材料からなるナット36が螺合された構成となっている。
【0078】
そして、ターゲット材料21の前記トリガー電極23とは反対側の他端部には、リング状のターゲットベース電極5が嵌め込まれ、ターゲットベース電極5に螺刻したネジ部に挿入されたネジ33により、ターゲット材料21の外周面が押圧されて、一体化されることにより、ターゲット組立体10bが組み立てられている。前記トリガー電極23に形成されたくぼみ24は、ターゲット材料21、絶縁部材22、トリガー電極23の各外周面側が互いに密着するようにして、中当たりしないための構成である。
【0079】
そして、ターゲットベース電極5を覆うように、絶縁カバー28が覆せられている。更に、アーク電源6の正電位側の接続端子は、ターゲット材料21が絶縁カバー28から露出した位置に対応するアーク電極4の外周位置で接続され、負電位側の接続端子は、ターゲットベース電極5の下端面で接続されている。トリガー電源7の正電位側はトリガー電極23の外側面に接続され、負電位側はターゲットベース電極5の下端面で接続されている。
【0080】
図7に示す構成においても、トリガー電極23のくぼみ24によってターゲット材料21の端面と絶縁部材22及びトリガー電極23とを直接に当接して圧着することができる。尚、絶縁性のナット36を金属等の導電性ナットにすると、このナットとターゲット材料21は導電状態となるので、ターゲットベース電極5として使用でき、新たにターゲットベース電極及びターゲット材料固定用ネジを使用しなくても良くなる。
【0081】
また、アーク電源6の正電位側の接続端子位置は、ターゲット材料21の前記絶縁カバー8からの露出位置よりも例えば5mm上方と絶縁カバー8で覆われた範囲内で適宜選択しても、同様にターゲット材料21の外周側面の大部分を薄膜形成時に有効利用できる。
【0082】
図7に示すターゲット組立体10b又はターゲット組立体10bを用いた蒸着源11bを、薄膜形成装置に組み込み、既述した場合と同様な薄膜形成方法を実施すれば、実施の形態1、3の場合と同様に所望の薄膜を形成することが可能となる。
【0083】
上述した本発明によれば、以下の構成を付記することができる。
(付記1)ターゲット材料の外周面から発生させたプラズマのプラズマ原子を基板上に照射して、該基板上に薄膜を形成する薄膜形成装置に用いる蒸着源において、前記ターゲット材料の前記基板と対向する側の先端面に絶縁部材を介して第1の電極を積み重ねて配置するとともに、前記ターゲット材料の他端部には第2の電極を一体的に固定して形成したターゲット組立体と、このターゲット組立体のターゲット材料と絶縁部材と第1の電極を取り囲んでこれらの外周面と空間を介して設置された筒状のアーク電極と、前記ターゲット組立体の第1の電極を正電位にし、前記ターゲット材料を負電位にするように接続したトリガー電源と、前記ターゲット組立体のターゲット材料を負電位にし、前記アーク電極における前記第2の電極側の近傍位置を正電位にするように接続したアーク電源とを有することを特徴とする蒸着源。
【0084】
付記1の構成の蒸着源によれば、トリガー電源、アーク電源による電圧供給に基づき、前記トリガー電源により絶縁部材の直下の露出したターゲット材料の端部外周面、即ち、絶縁部材と隣接したターゲット材料の外周面端部からトリガー放電を発生させ、次いでターゲット材料の他端側に向けてアークスポットの移動を制御して、基板に対する蒸着による薄膜形成を行うことが可能となり、薄膜形成時にターゲット材料の側表面全体に亙る消耗を実現してこのターゲット材料の長寿命化を図ることが可能となる。
【0085】
【発明の効果】
本発明によれば、アークスポットの局所的な発生を無くし、ターゲット材料の長寿命化を図ることができるターゲット組立体を提供することができる。
【0086】
また、本発明によれば、ターゲット材料の側表面全体に亙る消耗を行いつつ薄膜形成を実現することができ、ターゲット材料の長寿命化を図ることができる蒸着源を提供することができる。
【0087】
更に本発明によれば、ターゲット材料の側表面全体に亙る消耗を行いつつ薄膜形成を実現することができ、ターゲット材料の長寿命化を図りつつ基板への薄膜形成を行うことができる薄膜形成装置及び薄膜形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1のターゲット組立体を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1のターゲット組立体を組み込んだ蒸着源を示す概略構成図である。
【図3】本発明の実施の形態1の薄膜形成装置を示す概略構成図である。
【図4】本発明の実施の形態1のターゲット組立体のターゲット材料に生じるアークスポットを示す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態2のターゲット組立体を組み込んだ蒸着源を示す概略構成図である。
【図6】本発明の実施の形態3のターゲット組立体を組み込んだ薄膜形成装置を示す概略構成図である。
【図7】本発明の実施の形態3の蒸着源の他例を示す概略構成図である。
【図8】従来の蒸着源の概略構成図である。
【図9】従来の蒸着源におけるターゲット材料に生じるくぼみを示す説明図である。
【符号の説明】
1 ターゲット材料
1b 側表面
2 絶縁部材
2a 絶縁部材
2b テープ
3 トリガー電極
4 アーク電極
5 ターゲットベース電極
5a 凹部
5b 小径突出部
5c 大径部
6 アーク電源
7 トリガー電源
8 絶縁カバー
9 ネジ
10 ターゲット組立体
10a ターゲット組立体
10b ターゲット組立体
11 蒸着源
11a 蒸着源
11b 蒸着源
12 薄膜形成装置
13 真空容器
14 基板ホルダ
15 基板
21 ターゲット材料
22 絶縁部材
22a 軸部
22b フランジ
23 トリガー電極
23a 軸部
24 くぼみ
25 傘部
26 ネジ部
28 絶縁カバー
30 絶縁リング
32 ナット
32a ネジ部
33 ネジ
35 頭付きボルト
36 ナット
Ap アークスポット

Claims (7)

  1. ターゲット材料の外周面から発生させたプラズマ原子を基板上に照射して、該基板上に薄膜を形成する薄膜形成装置に用いる薄膜形成用のターゲット組立体において、
    前記ターゲット材料の前記基板と対向する側の端面に絶縁部材を介して第1の電極を積み重ねて配置するとともに、前記ターゲット材料の他端部には第2の電極を一体的に固定して形成したことを特徴とする薄膜形成用のターゲット組立体。
  2. 前記ターゲット材料は長尺棒からなり、この長尺棒の前記基板と対向する側の端面に、該端面を覆う絶縁材と該絶縁部材の端面を覆う第1の電極が順次に積み重ねて配置されていることを特徴とする請求項1記載の薄膜形成用のターゲット組立体。
  3. 前記ターゲット材料は、円筒形状の長尺棒からなり、この円筒形状の筒部内に、軸部が円筒形状でかつ端部にフランジを有する絶縁部材の前記軸部が嵌め込まれるとともに、前記フランジがターゲット材料の端面と当接し、前記絶縁部材の円筒形状の軸部内には、軸部を有しかつ端部にフランジを有する第1の電極の軸部が嵌め込まれるとともに第1の電極のフランジと前記絶縁部材のフランジとが当接していることを特徴とする請求項1記載の薄膜形成用のターゲット組立体。
  4. 減圧雰囲気下でプラズマを発生させるターゲット材料に絶縁部材を介して設置されたトリガー放電を起こさせるトリガー電極と、トリガー放電をきっかけとしてアーク放電を発生させるためのターゲット材料周囲に空間を介して設置されたアーク電極とを有する蒸着源において、
    前記ターゲット材料の先端面に、前記絶縁部材を介して前記トリガー電極を設置したことを特徴とする蒸着源。
  5. 前記ターゲット材料は、棒状又は中空円筒状であり、その先端面に前記絶縁部材を介して前記トリガー電極を圧着して設置することを特徴とする請求項4記載の蒸着源。
  6. 長尺のターゲット材料に絶縁部材を介して固定したトリガー電極と、これらの全体を取り囲むように配置した筒状のアーク電極とを有し、減圧雰囲気下で前記トリガー電極とターゲット材料との間にてトリガー放電を起こさせるとともに該トリガー放電をきっかけとして前記ターゲット材料とアーク電極との間でアーク放電を発生させ、このアーク放電で前記ターゲット材料の外周面に発生したプラズマのプラズマ原子を基板の薄膜形成面上に照射して該基板上に薄膜を形成する薄膜形成装置において、
    前記トリガー電極は、前記基板と対向する側の前記長尺のターゲット材料の端面に前記絶縁部材を介して積み重ねて形成されて前記基板と対向し、前記ターゲット材料の前記基板と対向しない側の端面には前記トリガー電極及びアーク電極に対して負電圧となるベース電極が取り付けられていることを特徴とする薄膜形成装置。
  7. 長尺のターゲット材料に絶縁部材を介して固定したトリガー電極と、これらの全体を取り囲むように配置した筒状のアーク電極とにそれぞれ電圧を印加し、減圧雰囲気下で前記ターゲット材料の外周面に発生したプラズマのプラズマ原子を基板の薄膜形成面上に照射して該基板上に薄膜を形成する薄膜形成方法において、
    前記長尺のターゲット材料の一端面に絶縁部材を介して前記トリガー電極を積み重ねて形成したターゲットを作成し、
    このターゲットにおける前記ターゲット材料の他端側に、前記トリガー電極及びアーク電極に対して負電圧にするためのベース電極を取り付け、
    前記トリガー電極を前記基板の薄膜形成面側に対向して配設し、
    前記ターゲットのベース電極に負電圧を印加しつつ前記トリガー電極とターゲット材料の間にてトリガー放電を起こさせるとともに、このトリガー放電をきっかけとして前記ターゲット材料とアーク電極との間でアーク放電を発生させ、このアーク放電によりターゲット材料の外周面に発生したプラズマのプラズマ原子を、前記基板の薄膜形成面上に照射して該基板上に薄膜を形成すること、
    を特徴とする薄膜形成方法。
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