JP4487154B2 - ポリアミド樹脂組成物 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリカプラミド樹脂、ポリカプラミド樹脂以外のポリアミド樹脂および無機強化材からなる無機強化ポリアミド樹脂組成物に関する。詳しくは、本発明の組成物は、剛性・強度に優れ、かつ成形品外観(鏡面表面光沢、シボ面均一表面性)に優れる無機強化ポリアミド樹脂組成物に関する。特に自動車外装部品やドアミラー部品に適するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にポリアミド樹脂は、機械的特性、耐熱性、耐衝撃性、耐薬品性に優れ、自動車部品、電機部品、電子部品、家庭雑貨等に広く使用されている。なかでもガラス繊維を代表とする無機強化材を添加したポリアミド樹脂は、剛性、強度、耐熱性が大幅に向上し、特に、剛性に関しては添加量に比例して向上することが知られている。
しかしながら、ポリアミド樹脂に剛性、強度向上を目的にガラス繊維等の強化材を50〜70重量%と大量に添加すれば、成形品外観(鏡面表面光沢、シボ面均一表面性等)が極度に低下し、商品価値が著しく損なわれる。そこで成形品外観を向上させる方法として、結晶性ポリアミド樹脂に非晶性樹脂を添加することが提案されている。(例えば、特開平2―140265号公報、特開平3−9952号公報、特開平3−269056号公報、特開平4−202358号公報)
【0003】
しかし、これらの方法では良好な鏡面表面光沢、シボ面均一表面光沢は得られない。また、半芳香族ポリアミド樹脂(MXD−6)にナイロン66・ガラス繊維・マイカを高充填し、強度・剛性を上げる方法(例えば、特開平1−263151号公報)が知られているが、この場合、成形時の金型温度を135℃もの高温に上げる必要があったり、高温に上げた場合でも良好な成形品外観が得られない場合もあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明はポリアミド樹脂に強度・剛性向上を目的にガラス繊維等の強化材を50重量%以上と大量に添加しても、成形品外観が低下せずに強度・剛性を同時に満足させ、かつ成形時の金型温度が100℃以下で良好な成形品の提供を可能にならしめることを課題とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、ポリカプラミド樹脂、ポリカプラミド樹脂以外のポリアミド樹脂および無機強化材を特定の比率で配合し、溶融混合後の無機強化ポリアミド樹脂が、ある一定値以上のメルトインデックス値を満足し、かつ熱的性質がある基準値を満足した時に、上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0006】
即ち本発明は、(1)(A)ポリカプラミド樹脂を主成分とする結晶性ポリアミド樹脂、(B)(A)以外の半芳香族非晶性ポリアミド樹脂として6T/6I又はTMD−T/6及び(C)無機強化材として(C−1)ガラス繊維、(C−2)ミルドファイバーおよび/または針状ワラストナイト、および(C−3)板状晶の無機強化材を含有する組成物であって、(A)成分と(B)成分との配合比が0.25<(B)/(A)≦1を満足し、且つ組成物の水分率0.05%以下でのメルトフローインデックス(MFI)が4.0g/10分以上であり、かつ示差走査熱量計(DSC)で測定し降温結晶化温度(TC2)が、(TC2)≦185℃であり、各成分の配合比、配合量が下記式を満足することを特徴とするポリアミド樹脂組成物である。
30重量%≦(A)+(B)≦55重量%
8重量%≦(B)≦18重量%
20重量%≦(C−1)≦40重量%
8重量%≦(C−2)≦25重量%
8重量%≦(C−3)≦25重量%
45重量%≦(C−1)+(C−2)+(C−3)≦70重量%
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明における(A)成分は、通常ナイロン6と呼ばれるε―カプロラクタムの重縮合によって得られるポリカプラミド樹脂であり、通常よく用いられている成形材料の96%−H2SO4測定による相対粘度は2.3以上であるが、本発明に使用する場合の相対粘度は、1.7〜2.2の範囲が好ましい。特に好ましいのは1.9〜2.1の範囲である。なお、1.7未満ではタフネス性が低下するため好ましくなく、2.2を越えると流動性が低下し、目的とする成形品外観が得られないので好ましくない。しかし、ナイロン6の相対粘度を規制するより無機強化ポリアミド樹脂のメルトフローインデックスを規制する方が現実的である。
【0008】
本発明における(B)成分のポリカプラミド樹脂以外のポリアミド樹脂とは、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、ε―カプロラクタム等より得られる重合体である。具体例としては、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸重合体、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸重合体、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸重合体、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸およびイソフタル酸重合体、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸およびアジピン酸重合体、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸およびε―カプロラクタム重合体、メタキシリレンジアミンとアジピン酸重合体、トリメチルヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸重合体、トリメチルヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸とε―カプロラクタム重合体、トリメチルヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸、イソフタル酸重合体、テレフタル酸およびイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンおよびε―カプロラクタムの共重合体、メタキシリレンジアミンとテレフタル酸およびイソフタル酸とε―カプロラクタムの共重合体等のポリアミド樹脂が挙げられ、本発明においては、ジアミン成分又はジカルボン酸成分のいずれかが芳香族である半芳香族非晶性ポリアミド樹脂が好ましいが特に限定されるものではない。
これらのポリアミド樹脂の相対粘度は、特に限定されるものではないが、好ましい範囲は1.8〜2.4である。
【0009】
(A)成分と(B)成分の合計添加量は、30〜55重量%であり、好ましくは35〜50重量%である。また、(A)成分と(B)成分の配合割合は特に限定はないが、(A)成分と(B)成分の合計添加量に対する(B)成分の添加量は8〜18重量%が好ましい。(B)成分の添加量が少ないと良好な成形品外観が得られず、反対に(B)成分の添加量が多いと成形品の結晶固化が悪くなり、成形時に離型不良が生じたり熱間剛性が低下したりする。
また、本発明においては(A)成分と(B)成分との配合比は下記式を満足することが好ましい。
0.25<(B)/(A)≦1
【0010】
本発明における(C)成分としては無機強化材であり、具体例としては、ガラス繊維、針状ワラスト、ウィスカー、カーボン繊維、セラミック繊維などの繊維状無機強化材、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、石英、ガラス、マイカ、グラファイトなどの粉末状の無機強化材やが挙げられる。好ましい無機強化材としては、ガラス繊維(C−1)、粉末状ガラス(ミルドファイバー)および/または針状ワラストナイト(C−2)、マイカ、タルク、カオリン(C−3)等が挙げられる。これらの無機強化材は、単独で使用または2種以上を併用使用することもできる。また、これらの無機強化材は、ポリアミド樹脂の強化材に使用する場合、表面処理剤として一般的にアミノシラン処理されているものを使用してもよい。
【0011】
前記(C−1)ガラス繊維としては、平均粒径は4〜20μ程度、カット長は3〜6mm程度であり、ごく一般的なものを採用することができる。成形品中のガラス繊維平均繊維長は加工工程(押出工程・成形工程)で短くなり150〜300μ程度になる。ポリアミド樹脂の強化材に使用する場合の表面処理剤としては一般的にアミノシラン処理されている。ガラス繊維の強化材量としては20〜40重量%であり、好ましくは25〜35重量%である。20重量%未満であれば強度、剛性が低く反対に40重量%を超えると、良好な成形品外観が得られ難いので好ましくない。
【0012】
前記(C−2)のミルドファイバーとは(C−1)のガラス繊維の長さを短くしたものであり、平均粒径は4〜20μ程度、カット長は35〜80μ程度であり、加工工程(押出工程・成形工程)でほとんど短くならないため成形品中の繊維長は30〜75μ程度である。又(C−2)の針状ワラストナイトとは平均粒径は3〜40μ程度であり平均繊維長は20〜80μ程度のワラストナイトである。
これら(C−2)の添加量は8〜25重量%好ましくは10〜20重量%である。8重量%未満であれば強度、剛性が低く反対に25重量を超えると良好な成形品外観が得られ難いので好ましくない。
【0013】
前記(C−3)の板状晶とはタルク、マイカ、未焼成クレー等が挙げられ、その形状は魚のウロコのような形態を示す。添加量は8〜25重量%、好ましくは10〜20重量%である。8重量%未満であれば強度、剛性が低く、反対に25重量%を超えると良好な成形品外観が得られ難いので好ましくない。なお(C−3)の板状晶のなかでも強度、剛性の面より特にマイカが優れている。
【0014】
本発明(C)成分の強化材の配合量は45〜70重量%であり好ましくは55〜65重量%である。45重量%未満の場合は強度、剛性が低くなり反対に70重量%より上になれば良好な成形品外観は得られず、又強度に関しても低下する。本発明の(C)成分中(C−1)が20〜40重量%、(C−2)が8〜25重量%(C−3)が8〜25重量%の範囲内で添加することにより強度剛性が優れており、しかも成形品表面外観(鏡面表面光沢シボ面均一表面性)が優れる。
【0015】
さらに、本発明の無機強化ポリアミド樹脂の水分率が0.05%以下でのメルトフローインデックスが4.0g/10分以上で、かつ示差走査熱量計(DSC)で測定した降温結晶化温度(TC2)が、(TC2)≦185℃であることが必要である。
メルトフローインデックスは、JIS K−7210に準じて275℃×2160g荷重で測定した値である。また、降温結晶化温度(TC2)の測定は示差走査熱量計(DSC)を用い、窒素気流下で20℃/分の昇温速度にて300℃まで昇温し、その温度で5分間保持した後、10℃/分の速度にて100℃まで降温させることにより測定した。メルトフローインデックスが4.0g/10分未満の場合、良好な成形品外観が得られない。メルトフローインデックスが4.0g/10分以上の無機強化ポリアミド樹脂組成物を得るには、通常よく用いられている相対粘度2.3以上の結晶性ポリアミド樹脂を用いると、前記メルトフローインデックスの範囲に達せず(4.0g/10分未満)、超低粘度(相対粘度1.7〜2.2)の結晶性ポリアミド樹脂を使用するかコンパウンド加工時にポリアミド樹脂の分子鎖切断剤を添加する等の処方を採用しても良い。前記ポリアミド樹脂の分子鎖切断剤(減粘剤ともいう)としては、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等が有効であり、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸等が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、その添加量は本発明の(A)+(B)+(C)成分の合計100重量部に対し0.1〜3重量部前後で、本発明組成物のメルトフローインデックスが4.0g/10分以上になる。ただし、コンパウンド加工条件により分子鎖切断剤の効果は変化し、当然のことながら加工温度が高い程、またコンパウンド時のポリマー滞留時間が長い程効果は優れる。通常、コンパウンド加工温度は240〜300℃の範囲内およびコンパウンド時のポリマー滞留時間は15〜60秒以内が一般的である。
さらに、降温結晶化温度(TC2)が、(TC2)≦185℃を満足しない場合は、組成物の結晶化速度に起因して良好な成形品外観が得られない。
【0016】
また、本発明の無機強化ポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、滑剤、結晶核剤、離型剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、染料あるいは他種ポリマーなども添加することができる。
【0017】
本発明の組成物を得る方法としては、上述した(A)(B)(C)成分その他は、上記配合比率にて任意の配合順序で配合した後、溶融混合される。溶融混合方法は、当業者に周知のいずれかの方法も可能であり、単軸押出機、2軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等が使用できる。なかでも2軸押出機を使用することが好ましい。また、押出加工時破損し易いガラス繊維、針状ワラスト等は、2軸押出機のサイド口より投入することが好ましいが、特に限定されるものではない。
【0018】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制限されるものではない。
また、以下の実施例、比較例において示した各特性、物性値は、下記の試験方法で測定した。
【0019】
1)相対粘度(硫酸溶液法):JIS K−6810に準じて、96%−H2SO4溶液中で測定した。
2)引張強度:ASTM D−638に準じて測定した。
3)引張弾性率:ASTM D−638に準じて測定した。
4)鏡面光沢度:鏡面仕上げの100×100×3mmtの金型を使用し、樹脂温度280℃、金型温度80℃で成形品を作成し、JIS Z−8714に準じて入射角60度の光沢度を測定した。(数値が高い程、光沢度が良い)
判定は、光沢度92以上:○、光沢度91〜75:△、光沢度74以下:×で行なった。
5)シボ面均一表面性:シボ加工された板状の金型(図1にその平面図を示すが、図1において斜線部は樹脂が挿入されない部分である)を使用し、樹脂温度85℃、金型温度80℃で成形し、厚み2.5mmtの成形品を作成後、シボ面の表面性を肉眼で判定した。
【0020】
実施例1〜4,比較例1〜4
結晶性ポリアミド樹脂として相対粘度の異なるナイロン6を用い、結晶性ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂としてナイロン66,ヘキサメチレンテレフタレート/ヘキサメチレンイソフタレート(6T/6I樹脂)、トリメチルヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸とε―カプロラクタム重合体(TMD−T樹脂)を用いた。また、無機強化材としては市販のガラス繊維(日本板硝子(株)製RES03T−TP64T)を使用、ミルドファイバーとしては日本硝子繊維(株)製のREV−8(繊維径13μ、平均繊維長70μ、表面処理剤アミノシラン)を使用した。また針状ワラストとしてはNYCO社のNYGLOS−8(平均繊維径8μ、平均繊維長130μ)を使用、板状晶のマイカとして(株)レプコ社製のM−325S(平均粒子径18μ、平均アスペクト比20)を使用した。その他離型剤としてモンタン酸カルシウムを各0.4部添加し、表1に示す組成で混合後、35φ2軸押出機を用いてシリンダー温度270℃、スクリュー回転数70rpmにてコンパウンドを実施し、ペレットを作成した。得られたペレットは、熱風乾燥機にて水分率0.05%以下になるまで乾燥後、種々特性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
【発明の効果】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリカプラミド樹脂とポリカプラミド樹脂以外のポリアミド樹脂および無機強化材を含有する組成物からなり、組成物のメルトフローインデックスおよび示差走査熱量計(DSC)で測定した降温結晶化温度(TC2)を限定することにより、強度・剛性が優れかつ成形品外観(鏡面表面光沢およびシボ面均一表面性)の優れる樹脂組成物を供給することができる。
このような優れた性能を有する本発明のポリアミド樹脂組成物は、自動車用途、電機・電子部品用途等エンジニアリングプラスチック用途に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本発明組成物のシボ面均一表面性を評価する際に用いる金型の平面図である。
Claims (1)
- (A)ポリカプラミド樹脂を主成分とする結晶性ポリアミド樹脂、(B)(A)以外の半芳香族非晶性ポリアミド樹脂として6T/6I又はTMD−T/6及び(C)無機強化材として(C−1)ガラス繊維、(C−2)ミルドファイバーおよび/または針状ワラストナイト、および(C−3)板状晶の無機強化材を含有する組成物であって、(A)成分と(B)成分との配合比が0.25<(B)/(A)≦1を満足し、且つ組成物の水分率0.05%以下でのメルトフローインデックス(MFI)が4.0g/10分以上であり、かつ示差走査熱量計(DSC)で測定し降温結晶化温度(TC2)が、(TC2)≦185℃であり、各成分の配合比、配合量が下記式を満足することを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
30重量%≦(A)+(B)≦55重量%
8重量%≦(B)≦18重量%
20重量%≦(C−1)≦40重量%
8重量%≦(C−2)≦25重量%
8重量%≦(C−3)≦25重量%
45重量%≦(C−1)+(C−2)+(C−3)≦70重量%
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