JP4480912B2 - 半導体製品加工用切断刃およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する分野】
本発明は、耐摩耗性、耐欠損性、経済性に優れる半導体製品加工用切断刃とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
タイバーカットなどの半導体製品加工用切断刃は、寿命の長いもの、即ち、耐摩耗性、耐欠損性をより高めたものが望まれているが、その2つの要求に応え、同時に経済性も向上させた材料はまだ出ていない。
【0003】
耐摩耗性に優れる材料としては、例えば(1)特開平4-198453号公報に示されるもの、(2)特開平5-59481号公報に示されるもの、或いは(3)特開平4-202738号公報に示されるものがある。
【0004】
公報(1)に記載の発明は、IVa、Va、VIa族金属元素の特定粒径の炭化物質の硬質相と特定量の鉄族の金属結合相とから成る超硬合金であって、ビッカース硬度が18.0GPa以上である。
【0005】
公報(2)に記載の発明は、WCを主体にしてMoやMo2CやVCの硬質相を加え、さらに、Coベースの結合相を加えた超硬合金であって、ビッカース硬度が23.0GPa以上である。
【0006】
公報(3)に記載の発明は、平均粒径の小さなWC−Co系超硬合金であって、飽和磁気量とCo量との関係を特定することで強度と安定性を向上させて微細加工での適性を向上させている。
【0007】
しかし、上記(1)〜(3)の超硬合金は、高硬度化により耐摩耗性が飛躍的に向上している反面、耐欠損性が低下し、半導体製品加工用切断刃の材料としては満足いくものではなかった。
【0008】
一方、特開平7-242982号公報は、cBN(立方晶窒化硼素)の刃先部と超硬合金のボディを複合化したタイバーカットパンチ(ICリードフレーム用切断刃)を開示している。これは、刃先部がcBN多結晶焼結体であるため耐摩耗性に優れ、ボディは超硬合金であるため耐欠損性に優れる。しかし、高価なcBN多結晶焼結体を用いているのでコストアップが避けられない。また、超硬合金と異種材料のcBN多結晶焼結体を接合しているため、接合強度にも問題があり、ボディによる刃先部の補強効果(ボディによる刃先部の欠損防止効果)もあまり期待できない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
超硬合金は、耐摩耗性材料の中で最も一般的な材料であり、他の耐摩耗性材料に比べて安価であるが、耐摩耗性と耐欠損性の双方に優れるものがなく、従って、超硬合金を材料にした半導体製品加工用切断刃は、早期摩耗又は欠損が生じて短寿命となる。
【0010】
一方、刃先部をcBN多結晶焼結体で形成した特開平7-242982号公報のタイバーカットはコスト高となり、ボディによる刃先部の補強が十分でないため、耐欠損性にも問題がある。
【0011】
従って、本発明の主目的は、耐摩耗性と耐欠損性を両立させ、さらに経済性やボディによる刃先部補強効果も高めた半導体製品加工用切断刃とその製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、刃先部とボディ部とで組成および機械的特性の異なる超硬合金を接合することにより上記の目的を達成する。
【0013】
すなわち、本発明半導体製品加工用切断刃は、下記の超硬合金Aで形成される刃先部と、下記の超硬合金Bで形成されるボディ部が一体に接合されていることを特徴とする。
【0014】
A:重量比でCrの炭化物およびVの炭化物の少なくとも一方を0.1%以上3%以下、金属結合相を0.2%以下含み、残部がWC及びW2Cならびに不純物で構成され、ビッカース硬度が23.0GPa以上の超硬合金。
【0015】
B:重量比でWCを85%以上95%以下、TiC、TiCN、TaC、NbC、Mo2C、VCおよびCr3C2の中から選ばれた物質の少なくとも1種を0.1%以上6%以下含有し、残部が金属結合相と不純物とで構成され、抗折力が3.0GPa以上、ビッカース硬度が15.0GPa以上の超硬合金。
【0016】
ここで、刃先部Aは、X線回折法によるWC結晶(100)面の回折強度をIwc(100)、WC結晶(101)面の回折強度をIwc(101)としたときに、Iwc(100)/Iwc(101)が0.65以上0.9以下で、WC結晶(100)面およびWC結晶(101)面の回折ピークの半価値幅が0.4以上0.6以下であることを満たし、金属不純物の合計含有量が500ppm以下で構成された超硬合金であることが好ましい。
【0017】
さらに刃先部Aは、Vの炭化物を含まない方がより望ましい。
【0018】
これらの切断刃は、刃先部とボディ部の各超硬合金の金属結合相の含有量に差がつくようにしている(刃先部側が少ない)。ただし、その差が大きくなる場合には、刃先部とボディ部との間に超硬合金で形成される中間層を介在し、その中間層の金属結合相の含有量を刃先部より多く、ボディ部より少なくすることが好ましい。この中間層の結合相量は刃先部からボディ部側に向かって増加させた構成が望ましい。
【0019】
刃先部の超硬合金中に含まれるWC粒子の平均粒径は、0.5μm以上であることが望ましい。
【0020】
上記の切断刃は、次のような工程を具える方法により製造することが好適である。
【0021】
少なくともボディ部用の超硬合金粉末と刃先部用の超硬合金粉末を黒鉛型に充填する工程。
充填した粉末に19.5MPa(200kg/cm2)以上50.0MPa(500kg/cm2)以下の圧力を加え、その加圧下で通電して黒鉛型を1900℃以上2100℃以下に発熱させ、この状態を5分以上10分以下保持して黒鉛型内の超硬合金粉末を焼結一体化する工程。
【0022】
以下、本発明の作用と構成要件の限定理由を説明する。
【0023】
本発明切断刃は、刃先部をビッカース硬度の高い超硬合金で、ボディ部を抗折力の高い超硬合金で各々形成し、その2種類の超硬合金をそれぞれの合金に含まれる金属結合相を介して一体化させることで耐摩耗性と耐欠損性を両立させている。
【0024】
刃先部の耐摩耗性は、cBN多結晶焼結体を用いた特開平7-242982号のタイバーカットの方が勝るが、このタイバーカットは刃先部とボディ部の接合強度、つまりはボディによる刃先部の補強に問題がある。これに対し、この発明の切断刃は、超硬合金の金属結合相が結びついて抗折力の高いボディ部が刃先部をしっかり支えるため、耐欠損性が上記のタイバーカットよりも向上し、耐摩耗性と耐欠損性がバランス良く発揮されて寿命が延びる。
【0025】
(刃先部)
刃先部に安価な超硬合金を用いているのでコストも下がる。刃先部は金属結合相がほとんどなく、耐摩耗性に優れている。刃先部の金属結合相量を0.2重量%以下としたのは、0.2%を越えると耐摩耗性が低下するからである。金属結合相としては、Co、Ni、Feなどの鉄族金属が挙げられる。
不純物は目的成分以外の混入物で、具体的にはCo、Ni、Fe、Mo、Ca、Al、Siなどの元素が挙げられる。例えば、WCを目的成分としてその粉末を分析すると、通常、FeやNi等がわずかに混入している。また、Coを目的成分とした場合も、FeやNi等が混入されている。従って、例えば金属結合相として意図的に所定量含有されているNiは不純物ではないが、目的成分以外として含まれているNiは金属結合相ではなく不純物となる。この金属結合相と不純物についての考え方は、後述する超硬合金Bにおいても同様である。
【0026】
刃先部のビッカース硬度を23.0GPa以上としたのは、同数値に満たない硬度では従来品と差別化できるだけの耐摩耗性が得られないためである。ビッカース硬度は高いほど性能が良いため上限を定めていないが、超硬合金Aのビッカース硬度の上限は27.0GPa程度と考えられる。
【0027】
刃先部にCr又はVの炭化物を添加すると、IC封止樹脂に対して、優れた耐摩耗性を発揮し、延命効果がある。添加量を0.1%以上3%以下に限定したのは、下限を下回ると耐摩耗性向上の効果がなく、上限を超えると耐欠損性が低下するためである。
【0028】
刃先部のX線回折法において、WC結晶(100)面の画折強度をIwc(100)、WC結晶(101)面の回折強度をIwc(101)としたときに、Iwc(100)/Iwc(101)が0.65以上0.9以下に限定したのは、下限を下回ると耐摩耗性が不足し、上限を超えると耐欠損性が低下するためである。
【0029】
また、刃先部のWC結晶(100)面およびWC結晶(101)面の回折ピークの半価幅を0.4以上0.6以下に限定したのは、下限を下回ると耐摩耗性が不足し、上限を超えると靭性が低下するためである。
【0030】
さらに、刃先部における金属不純物の合計含有量は500ppm以下が好ましい。金属不純物としてはCo、Ni、Fe、Mo、Ca、Alなどが考えられるが、これらの合計含有量が500ppmを超えると炭化タングステンの粒界に存在する金属量が多くなり、炭化タングステンの脱落が促進されるため、耐食性が低下するためである。ここでの金属不純物は、前述した「不純物」のうち金属のものを指す。従って、この金属不純物には金属結合相としてのCoやNiなどは含まれない。
【0031】
Vの炭化物を添加すると、耐摩耗性の向上効果はあるが、耐欠損性において悪影響を及ぼすため、Crの炭化物のみを添加した方がより望ましい。
【0032】
刃先部のWC粒子の平均粒径が0.5μm未満になると、アブレッシブ摩耗以外にWC粒子の脱落により摩耗が進行する場合があるので、WCの粒径は0.5μm以上にするのがよい。WC粒子の平均粒径の上限は2μm程度である。この上限を超えると硬度が低下して耐摩耗性が劣化するためである。
【0033】
(ボディ部)
ボディ部(超硬合金B)のWC含有量は、85%未満では硬さが不足して使用中にボディ部が座屈し、95%を超えると所望の抗折力が得られず、突発的な欠損を起こす可能性があるので85%以上95%以下にした。
【0034】
ボディ部の超硬合金Bには、TiC、TiCN、TaC、NbC、Mo2C、VCおよびCr3C2の中から選ばれた物質の少なくとも1種の硬質相を添加することにより硬度が高まるのでボディ部の座屈を防止する効果がある。この場合、添加量が0.1%以下では顕著な効果が現れず、逆に6%を越えると硬く脆くなって、突発的な欠損の問題が生じるので、添加量の範囲を限定した。
【0035】
ボディ部では金属結合相量が刃先部に比べて多い。刃先部よりも金属結合相量を多くすることで、抗折力の高いボディ部とし、耐摩耗性に優れる刃先部をしっかりと保持するためである。ボディ部における金属結合相もCo、Ni、Feなどの鉄族金属が利用される。
【0036】
ボディ部の抗折力を3.0GPa以上としたのは、これ未満では突発的な欠損が考えられるからである。また、このボディ部のビッカース硬度を15.0GPa以上としたのは、使用中の座屈を回避するためである。ボディ部の超硬合金についても、抗折力、ビッカース硬度は高いほど良いが、超硬合金Bの組成での抗折力の上限は6.0GPa、ビッカース硬度の上限は20.0GPa程度と考えられる。
【0037】
(中間層)
本発明の切断刃は、上記超硬合金AとBの組合わせにより、ボディ部の金属結合相含有量が刃先部の金属結合相含有量よりも多くなって、ボディ部の熱膨張係数が刃先部のそれより大きくなり、ボディ部との熱膨張差で刃先部に圧縮残留応力が発現する。そのため、刃先部のチッピングが起こり難くなり、これによっても耐欠損性が高められる。
【0038】
但し、刃先部とボディ部の金属結合相含有量の差が10%を越えると、刃先部の圧縮残留応力が大きくなり過ぎ、寿命に影響しない程度の微少欠陥でも、それが刃先部にあった場合、微小欠陥を起点に切断刃が大破することがある。そこで、このようなときには刃先部とボディ部との間に中間層を設ける。この中間層は、刃先部側からボディ側向かって金属結合相の含有量を増加させることで熱膨張係数を変化させており、刃先部とボディ部間での熱膨張係数の急変化を防止して刃先部の圧縮残留応力を実用化レベルまで低減させる効果をもつ。
【0039】
(製造方法)
本発明切断刃の製造を通電加圧焼結法で行うと、刃先部とボディ部の金属結合相が結びついて各部の超硬合金の接合が強固になされる。通電加圧装置に原料粉末を充填するのに先だって、原料粉末の準備工程が必要である。原料粉末の準備は、重量比でCrの炭化物およびVの炭化物の少なくとも一方を0.1%以上3%以下、金属結合相を0.2%以下含み、残部がWCおよびW2Cとなる超硬合金Aが得られる原料粉末と、WCを85%以上95%以下、TiC、TiCN、TaC、NbC、Mo2C、VCおよびCr3C2の中から選ばれた物質の少なくとも1種を0.1%以上6%以下含有し、残部が金属結合相で構成される超硬合金Bの原料粉末の準備を行う。
【0040】
また、中間層を設ける場合、金属結合相の含有量を刃先部より多く、ボディ部より少なくした原料粉末の準備も行い、刃先部とボディ部の各原料粉末の間に中間層の原料粉末を充填する。通電加圧焼結では、中間層の金属結合相の量を厚み方向に変化させるのも容易である。例えば、中間層を多層構造にして各層の超硬合金粉末の金属結合相量を変えることにより傾斜組成の中間層を形成できる。傾斜組成は段階的な傾斜であっても連続的な傾斜であってもいずれでも良い。中間層を多層にした場合、各層の厚みを薄くして積層数を増やすことで実質的に連続的な傾斜組成を実現できる。
【0041】
この方法での黒鉛パンチによる加圧力が19.5MPa未満では、超硬合金にポア(いわゆる巣)が発生し易く、逆に50.0MPaを超えると黒鉛型が破損し易く、経済的ではない。
【0042】
また、焼結温度が1900℃未満では超硬合金の緻密化が充分でなく、2100℃を越えると金属結合相が溶出するので好ましくない。
【0043】
焼結温度の保持時間も5分未満では各部の超硬合金の均一焼成ができず、10分を越えると各部の超硬合金の組成の均一化が起こり、所望の特性を得ることができなくなる。以上の理由から、加圧力、焼結温度、保持時間に限定を加えた。
【0044】
(切断刃の適用対象)
本発明切断刃はタイバーカットなど、ICを樹脂封止した半導体製品の加工に好適である。例えば、半導体を樹脂で封止した後に、樹脂の入り口部にできたバリをプレス加工で除去する場合に利用される。切断対象となる半導体封止樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂などが挙げられる。また、切断対象となる金属材料としては、銅製リードフレームが挙げられる。
【0045】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1、図2は本発明の切断刃の部分断面図である。図1の切断刃は、刃先部1とボディ部2の2種類の超硬合金からなる。図2の切断刃は、刃先部1、ボディ部2、中間層3からなる3種類の超硬合金で構成される。いずれの構成においても、各超硬合金は焼結によって一体化されている。刃先部1は前述した超硬合金Aで構成され、ボディ部2は前述の超硬合金Bで構成される。
【0046】
図2の切断刃の中間層3を構成する超硬合金は、金属結合相の含有量が刃先部1側からボディ部2側に行くにつれて増加し、刃先部1との接合部は刃先部1の超硬合金に近似した組成、ボディ部2との接合部はボディ部2の超硬合金に近似した組成になっている。この中間層2は、単層構造、多層構造のどちらであってもよい。
【0047】
刃先部1の厚みは、切断するリードフレームもしくはIC封止樹脂の厚みよりも2mm程度大きくしておくことが好ましい。ボディ部2は、ホルダ(図示せず)への取付けを安定して行える厚みにする必要がある。中間層3の厚みは1mm〜10mmぐらいが好ましい。従って、一般的には「中間層厚み<ボディ部厚み」、「刃先部厚み<ボディ部厚み」の関係が成立する。
【0048】
次に、上記切断刃を得るための通電加圧焼結装置を説明する。図3は、この通電加圧装置を示す概略図である。黒鉛ブロック5の上部には黒鉛型4が支持されている。黒鉛型4は、側壁となる外枠4aと、抜き取り自在の底蓋4bとから成る。この黒鉛型4内にボディ部用超硬合金Bの粉末、中間層用超硬合金Cの粉末(これは省く場合がある)、刃先部用超硬合金Aの粉末を順に充填し、黒鉛パンチ6で所定の圧力を加える。そして、その加圧下で電源9から電極7、8を介して黒鉛型4及び黒鉛パンチ6に通電し、所定の温度を所定時間保持して各部の超硬合金粉末を一体に焼結する。黒鉛型の温度は黒鉛パンチ6が外枠4aの上部に露出してすぐの位置10で測定した。
【0049】
(試験例1)
表1、2に示す組成の超硬合金粉末を準備し、ボディ部用、刃先部用又はボディ部用、中間層用、刃先部用の順に超硬合金粉末を黒鉛型に充填する。次に、黒鉛パンチにより40MPa(400kg/cm2)の圧力を加えて、その加圧下で黒鉛型及び黒鉛パンチに通電して黒鉛型を2000℃に発熱させ、その状態を7分間保持して、サンプル1〜20を得た。刃先部については、超硬合金粉末として混合する前に予め目的成分ごとの金属不純物量を測定し、それら不純物の合計含有量も求めた。
【0050】
また、従来品として、表3に示すように、WC粒度、結合相Co含有量の異なる超硬合金4種類(イ、ロ、ハ、ニ)を準備した。従来品の製造条件は前記サンプル1〜20の製造条件と同一である。
【0051】
得られたサンプルと従来品について抗折力とビッカース硬度の測定を行った。また、X線回折法により、WC結晶(100)面の回折強度をIwc(100)、WC結晶(101)面の回折強度をIwc(101)としたときのIwc(100)/Iwc(101)と、WC結晶(100)面およびWC結晶(101)面の回折ピークの半価幅も求めた。これらの測定結果も表1〜3に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
次にサンプル1〜20及び従来品を用いて、回転するIC封止樹脂材料に荷重を加えながら試験片を接触させる耐摩耗試験を行った。この試験は、樹脂材料:エポキシ樹脂(直径φ20mm)、回転数:150rpm.、荷重:98N(10kgf)、滑り距離500m(時間:約53分)における摩耗量を測定することで行った。摩耗量は、試験片にできた凹み部分の断面積の平均値とした。結果を表4に示す。
【0056】
【表4】
【0057】
本発明実施例であるサンプル3、4、6、9、16、19、20はいずれも従来品に比べて高い耐摩耗性を具えていることがわかる。
【0058】
(試験例2)
試験例1のサンプル20種類および従来品4種類を用いて0.5mm厚の銅製のリードフレームをICパッケージのレジン(エポキシ樹脂)と共に切断し、寿命までの切断回数を調べた。銅製リードフレームの厚さは0.5mm、レジンの厚さは0.3mm、で、先端がシャープエッジ形状の工具を用いてリードフレームが切断される程度のプレス圧力を加えることで切断を行った。この場合の寿命判定は、切断刃の欠損もしくは摩耗により切断したレジンに0.1mmのバリが発生した時点とした。試験結果を表5に示す。
【0059】
【表5】
【0060】
表5を表4の結果と併せて見れば、サンプル3、4、6、9、16、19、20が耐摩耗性と耐欠損性をバランス良く両立して長寿命であることがわかる。ボディ部の硬度または抗折力が小さく、かつ中間層のないサンプル1、2、5はいずれも欠損を生じている。ボディ部にWCが少なく硬度の低いサンプル7、8は座屈を生じている。
【0061】
(試験例3)
刃先部、ボディ部の材料として、試験例1のサンプル3と同一組成の超硬合金粉末を用い、試験例1で採用した通電加圧焼結法における加圧力、焼結温度、その温度の保持時間を表6のように変化させて同表に示すサンプル18〜30を得た。得られたサンプルの刃先部とボディ部の抗折力およびビッカース硬度を測定した。測定結果も表6に示す。
【0062】
【表6】
【0063】
表6に示すように、通電加圧焼結時の圧力が低すぎるサンプル21は十分な硬度が得られず、圧力が高すぎるサンプル22は黒鉛型が破損した。また、焼結温度の低いサンプル25、焼結温度が高いサンプル26、保持時間の短いサンプル29、保持時間の長いサンプル30も十分な抗折力や硬度が得られなかった。
【0064】
【発明の効果】
この発明の切断刃は、特性の異なる超硬合金を刃先部とボディ部とで使い分け、その2種類の超硬合金を共通の金属結合相を介して一体に接合することにより、耐摩耗性に優れる反面、抗折力に問題のある刃先部の超硬合金を抗折力に優れるボディ部の超硬合金でしっかりと支えて耐摩耗性と耐欠損性を両立できる。従って、従来品に比べて寿命が大巾に向上する。
【0065】
切断刃の構成材料が全て超硬合金であるので経済性にも優れる。
【0066】
刃先部とボディ部間に中間層を介在したものは、熱膨張係数差による刃先部の圧縮残留応力を適正レベルに制御できる。
【0067】
刃先部のWC粒子の粒径を0.5μm以上にしたものはWC粒子の脱落が防止されて耐摩耗性がより良くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明切断刃の断面図である。
【図2】中間層を設けた本発明切断刃の断面図である。
【図3】本発明切断刃の製造に用いる通電加圧焼結装置の概略図である。
【符号の説明】
1 刃先部
2 ボディ部
3 中間層
4 黒鉛型
4a 外枠
4b 底蓋
5 黒鉛ブロック
6 黒鉛パンチ
7、8 電極
9 電源
10 温度測定位置
Claims (8)
- 下記の超硬合金Aで形成される刃先部と、下記の超硬合金Bで形成されるボディ部とが一体に接合されてなり、
A:重量比でCrの炭化物およびVの炭化物の少なくとも一方を0.1%以上3%以下、金属結合相を0.2%以下含み、残部がWCおよびW2Cならびに不純物とで構成され、かつその金属結合相の含有量が超硬合金Bよりも少なく、ビッカース硬度が23.0GPa以上の超硬合金
B:重量比でWCを85%以上95%以下、TiC、TiCN、TaC、NbC、Mo2C、VCおよびCr3C2の中から選ばれた物質の少なくとも1種を0.1%以上6%以下含有し、残部がCoおよびNiの少なくとも一方を含有する金属結合相と不純物とで構成され、抗折力が3.0GPa以上、ビッカース硬度が15.0GPa以上の超硬合金
前記刃先部は、
X線回折法によるWC結晶(100)面の回折強度をIwc(100)、WC結晶(101)面の回折強度をIwc(101)としたときに、
Iwc(100)/Iwc(101)が0.65以上0.9以下で、
WC結晶(100)面およびWC結晶(101)面の回折ピークの半価幅が0.4以上0.6以下であり、
金属不純物の合計含有量が500ppm以下であることを特徴とする半導体製品加工用切断刃。 - 刃先部が、Vの炭化物を含まないことを特徴とする請求項1に記載の半導体製品加工用切断刃。
- 刃先部とボディ部との間に超硬合金で形成される中間層を介在し、その中間層の金属結合相の含有量を刃先部より多く、ボディ部より少なくしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体製品加工用切断刃。
- 中間層における結合相の含有量を、刃先部からボディ部側に向かって増加させたことを特徴とする請求項3に記載の半導体製品加工用切断刃。
- 刃先部とボディ部との金属結合相の含有量の差が10重量%以上であることを特徴とする請求項3に記載の半導体製品加工用切断刃。
- 刃先部の超硬合金中に含まれるWC粒子の平均粒径が0.5μm以上であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の半導体製品加工用切断刃。
- 少なくとも刃先部用の下記超硬合金粉末αとボディ部用の下記超硬合金粉末βとを黒鉛型へ充填する工程と、
α:重量比でCrの炭化物およびVの炭化物の少なくとも一方を0.1%以上3%以下、金属結合相を0.2%以下含み、残部がWCおよびW 2 Cならびに不純物とで構成される粉末で、その金属結合相の含有量が超硬合金粉末βよりも少ない粉末
β:重量比でWCを85%以上95%以下、TiC、TiCN、TaC、NbC、Mo 2 C、VCおよびCr 3 C 2 の中から選ばれた物質の少なくとも1種を0.1%以上6%以下含有し、残部がCoおよびNiの少なくとも一方を含有する金属結合相と不純物とで構成される粉末
充填した粉末に19.5MPa以上50.0MPa以下の圧力を加え、その加圧下で通電して黒鉛型を1900℃以上2100℃以下に発熱させ、この状態を5分以上10分以下保持して黒鉛型内の超硬合金粉末を焼結一体化する工程と具えることを特徴とする半導体製品加工用切断刃の製造方法。 - さらに、金属結合相の含有量が刃先部用の超硬合金粉末αより多く、ボディ部用の超硬合金粉末βより少ない中間層用の超硬合金粉末γを刃先部用の超硬合金粉末αとボディ部用の超硬合金粉末βとの間に充填することを特徴とする請求項7に記載の半導体製品加工用切断刃の製造方法。
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JP2001073490A JP4480912B2 (ja) | 2001-03-15 | 2001-03-15 | 半導体製品加工用切断刃およびその製造方法 |
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Publications (2)
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