JP6957828B1 - 超硬合金及びそれを備える切削工具 - Google Patents
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Abstract
Description
前記超硬合金を走査型電子顕微鏡で撮像した画像において、前記第1相の割合が78面積%以上100面積%未満、かつ、前記第2相の割合が0面積%超22面積%以下であり、
前記画像において前記炭化タングステン粒子のそれぞれの円相当径を算出した場合、前記円相当径の平均値が0.5μm以上1.2μm以下であり、
前記円相当径が0.3μm以下である前記炭化タングステン粒子の個数基準の割合は10%以下であり、
前記円相当径が1.8μm超である前記炭化タングステン粒子の個数基準の割合は2%未満であり、
前記超硬合金の前記コバルトの質量基準の含有量は0質量%超10質量%以下である。
近年、5G(第5世代移動通信システム)の拡大に伴い、情報の高容量化が進んでいる。このため、プリント回路基板には更なる耐熱性が求められている。プリント回路基板の耐熱性の向上のため、プリント回路基板を構成する樹脂やガラスフィラーの耐熱性を向上させる技術が開発されている。一方、これによりプリント回路基板の難削化が進んでいる。
本開示の超硬合金は、工具材料として用いた場合に、特にプリント回路基板の微細加工においても、工具の長寿命化を可能とする。
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の超硬合金は、複数の炭化タングステン粒子からなる第1相と、コバルトを含む第2相と、を備える超硬合金であって、
前記超硬合金を走査型電子顕微鏡で撮像した画像において、前記第1相の割合が78面積%以上100面積%未満、かつ、前記第2相の割合が0面積%超22面積%以下であり、
前記画像において前記炭化タングステン粒子のそれぞれの円相当径を算出した場合、前記円相当径の平均値が0.5μm以上1.2μm以下であり、
前記円相当径が0.3μm以下である前記炭化タングステン粒子の個数基準の割合は10%以下であり、
前記円相当径が1.8μm超である前記炭化タングステン粒子の個数基準の割合は2%未満であり、
前記超硬合金の前記コバルトの質量基準の含有量は0質量%超10質量%以下である。
本開示の超硬合金及び切削工具の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。本開示の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、必ずしも実際の寸法関係を表すものではない。
本開示の超硬合金は、
複数の炭化タングステン粒子からなる第1相と、コバルトを含む第2相と、を備える超硬合金であって、
超硬合金を走査型電子顕微鏡で撮像した画像において、第1相の割合が78面積%以上100面積%未満、かつ、第2相の割合が0面積%超22面積%以下であり、
画像において炭化タングステン粒子のそれぞれの円相当径を算出した場合、円相当径の平均値が0.5μm以上1.2μm以下であり、
円相当径が0.3μm以下である炭化タングステン粒子の個数基準の割合は10%以下であり、
円相当径が1.8μm超である炭化タングステン粒子の個数基準の割合は2%未満であり、
超硬合金のコバルトの質量基準の含有量は0質量%超10質量%以下である。
(ii)本開示の超硬合金において、炭化タングステン粒子(以下、「WC粒子」とも記す。)の円相当径の平均値は0.5μm以上1.2μm以下である。炭化タングステン粒子の円相当径の平均値が0.5μm以上であると、使用に伴う脱落摩耗が生じ難く、超硬合金は優れた耐摩耗性を有することができる。炭化タングステン粒子の円相当径の平均値が1.2μm以下であると、超硬合金は高い硬度を有し、優れた耐摩耗性を有することができ、また高い抗折力を有し、優れた耐折損性を有することができる。
(第1相の組成)
第1相は、複数の炭化タングステン粒子からなる。ここで、炭化タングステンには、「純粋なWC(不純物元素が一切含有されないWC、不純物元素が検出限界未満となるWCも含む。)」だけではなく、「本開示の効果を損なわない限りにおいて、その内部に他の不純物元素が意図的あるいは不可避的に含有されるWC」も含まれる。炭化タングステンに含有される不純物の濃度(不純物を構成する元素が二種類以上の場合は、それらの合計濃度。)は、上記炭化タングステン及び上記不純物の総量に対して0.1質量%未満である。第1相中の不純物元素の含有量は、ICP発光分析(Inductively Coupled Plasma)Emission Spectroscopy(測定装置:島津製作所「ICPS−8100」(商標))により測定される。
本開示の超硬合金を走査型電子顕微鏡で撮像した画像において、炭化タングステン粒子の円相当径の平均値は0.5μm以上1.2μm以下である。炭化タングステン粒子の円相当径の平均値が0.5μm以上であると、使用に伴う脱落摩耗が生じ難く、超硬合金は優れた耐摩耗性を有することができる。炭化タングステン粒子の円相当径の平均値が1.2μm以下であると、超硬合金は高い硬度を有し、優れた耐摩耗性を有することができ、また高い抗折力を有し、優れた耐折損性を有することができる。
(A1)超硬合金の任意の表面又は任意の断面を鏡面加工する。鏡面加工の方法としては、例えば、ダイヤモンドペーストで研磨する方法、集束イオンビーム装置(FIB装置)を用いる方法、クロスセクションポリッシャー装置(CP装置)を用いる方法、及びこれらを組み合わせる方法等が挙げられる。
本開示の超硬合金を走査型電子顕微鏡で撮像した画像において、円相当径が0.3μm以下である炭化タングステン粒子の個数基準の割合は10%以下である。これによると、使用に伴う脱落摩耗が生じ難く、超硬合金は優れた耐摩耗性を有することができる。
第2相は、コバルトを含む。第2相は、第1相を構成する炭化タングステン粒子同士を結合させる結合相である。
(組成)
超硬合金は、複数の炭化タングステン粒子からなる第1相と、コバルトを含む第2相と、を備え、超硬合金を走査型電子顕微鏡で撮像した画像において、第1相の割合が78面積%以上100面積%未満、かつ、第2相の割合が0面積%超22面積%以下である。これによると、プリント回路基板の加工に対して必要な硬度と耐摩耗性が発揮され、工具寿命のばらつきの発生を抑制することができる。
本開示の超硬合金のバナジウムの質量基準の含有量は0ppm以上2000ppm未満であることが好ましい。すなわち、本開示の超硬合金は、(a)バナジウムを含まない、又は、(b)バナジウムを含む場合はバナジウムの質量基準の含有量は2000ppm未満であることが好ましい。
本開示の超硬合金のコバルトの質量基準の含有量は0質量%超10質量%以下である。これによると、超硬合金は高い硬度を有し、優れた耐摩耗性を有することができる。
本開示の超硬合金はクロム(Cr)を含み、超硬合金のクロムの質量基準の含有量は0.15質量%以上1.0質量%以下であることが好ましい。クロムは炭化タングステン粒子の粒成長抑制作用を有する。本発明者等は検討の結果、超硬合金中のクロムの含有量が0.15質量%以上1.0質量%以下の場合、得られた超硬合金中に、原料の微粒炭化タングステン粒子が残存することを効果的に抑制でき、かつ、粗大粒の発生を効果的に抑制できることを新たに知見した。
本開示の超硬合金において、コバルトに対するクロムの割合は、質量基準で5%以上10%以下であることが好ましい。クロムは炭化タングステン粒子の粒成長抑制作用を有する。更に、コバルト中に固溶することにより、コバルトの格子歪みの発生を促進する。よって、超硬合金がクロムを上記の割合で含むと、耐折損性が更に向上する。
本実施形態の超硬合金は、代表的には、原料粉末の準備工程、混合工程、成形工程、焼結工程、冷却工程を前記の順で行うことにより製造することができる。以下、各工程について説明する。
準備工程は、超硬合金を構成する材料の全ての原料粉末を準備する工程である。原料粉末としては、第1相の原料である炭化タングステン粉末、第2相の原料であるコバルト(Co)粉末が必須の原料粉末として挙げられる。また、必要に応じて、粒成長抑制剤として、炭化クロム(Cr3C2)粉末を準備することができる。炭化タングステン粉末、コバルト粉末、炭化クロム粉末は、市販のものを用いることができる。
混合行程は、準備工程で準備した各原料粉末を混合する工程である。混合工程により、各原料粉末が混合された混合粉末が得られる。
成形工程は、混合工程で得られた混合粉末を所定の形状に成形して、成形体を得る工程である。成形工程における成形方法及び成形条件は、一般的な方法及び条件を採用すればよく、特に問わない。所定の形状としては、例えば、切削工具形状(例えば、小径ドリルの形状)とすることが挙げられる。
焼結工程は、成形工程で得られた成形体を焼結して、超硬合金を得る工程である。本開示の超硬合金の製造方法においては、焼結温度は1350〜1450℃とすることができる。これによると、粗大炭化タングステン粒子の発生が抑制される。また、得られた超硬合金中の微粒炭化タングステン粒子の含有量を低減することができる。
冷却工程は、焼結完了後の超硬合金を冷却する工程である。冷却条件は一般的な条件を採用すればよく、特に問わない。
本開示の切削工具は、上記超硬合金からなる刃先を含む。本明細書において、刃先とは、切削に関与する部分を意味し、超硬合金において、その刃先稜線と、該刃先稜線から超硬合金側へ、該刃先稜線の接線の垂線に沿う距離が2mmである仮想の面と、に囲まれる領域を意味する。
本実施形態に係る切削工具は、超硬合金からなる基材の表面の少なくとも一部を被覆する硬質膜を更に備えてもよい。硬質膜としては、例えば、ダイヤモンドライクカーボンやダイヤモンドを用いることができる。
本開示の超硬合金において、炭化タングステン粒子の円相当径の平均値は、0.55μm以上1.1μm以下が好ましい。
本開示の超硬合金において、炭化タングステン粒子の円相当径の平均値は、0.60μm以上1.0μm以下が好ましい。
本開示の超硬合金において、円相当径が0.3μm以下である炭化タングステン粒子の個数基準の割合は、0%以上10%以下が好ましい。
本開示の超硬合金において、円相当径が0.3μm以下である炭化タングステン粒子の個数基準の割合は、0%以上9%以下が好ましい。
本開示の超硬合金において、円相当径が0.3μm以下である炭化タングステン粒子の個数基準の割合は、0%以上8%以下が好ましい。
本開示の超硬合金において、円相当径が1.8μm超である炭化タングステン粒子の個数基準の割合は、0%以上2%未満が好ましい。
本開示の超硬合金において、円相当径が1.8μm超である炭化タングステン粒子の個数基準の割合は、0%以上1%以下が好ましい。
本開示の超硬合金において、円相当径が1.8μm超である炭化タングステン粒子の個数基準の割合は、0%以上0.5%以下が好ましい。
本開示の超硬合金を走査型電子顕微鏡で撮像した画像において、第1相の割合は88面積%以上95面積%以下が好ましい。
本開示の超硬合金を走査型電子顕微鏡で撮像した画像において、第2相の割合は5面積%以上12面積%以下が好ましい。
本開示の超硬合金を走査型電子顕微鏡で撮像した画像において、第1相の割合が88面積%以上95面積%以下、かつ、第2相の割合が5面積%以上12面積%以下が好ましい。
本開示の超硬合金のバナジウムの質量基準の含有量は、0ppm以上2000ppm未満が好ましい。
本開示の超硬合金のバナジウムの質量基準の含有量は、0ppm以上100ppm未満が好ましい。
本開示の超硬合金のコバルトの質量基準の含有量は、1質量%以上9質量%以下が好ましい。
本開示の超硬合金のコバルトの質量基準の含有量は、2質量%以上8質量%以下が好ましい。
本開示の超硬合金のクロムの質量基準の含有量は、0.20質量%以上0.95質量%以下が好ましい。
本開示の超硬合金のクロムの質量基準の含有量は、0.25質量%以上0.90質量%以下が好ましい。
本開示の超硬合金において、コバルトに対するクロムの割合は、質量基準で7%以上9%以下が好ましい。
(準備工程)
原料粉末として、表1の「原料」欄に示す組成の粉末を準備した。炭化タングステン(WC)粉末は、平均粒径の異なるものを複数準備した。WC粉末の平均粒径は表1の「WC粉末」の「平均粒径(μm)」欄に示される通りである。Co粉末の平均粒径は1.0μmである。Cr3C2粉末の平均粒径は1.5μmである。VC粉末の平均粒径は0.9μmである。原料粉末の平均粒径は、Fisher Scientific社製の「Sub−Sieve Sizer モデル95」(商標)を用いて測定した値である。
試料14〜試料17のWC粉末について、d20/d80を測定したところ、全ての試料のd20/d80は0.1以上0.2未満であった。
WC粉末のd20/d80は、マイクロトラック社製の粒度分布測定装置(商品名:MT3300EX)を用いて測定した値である。
各原料粉末を表1の「原料」の「質量%」欄に示される配合量で混合し、混合粉末を作製した。表1の「原料」欄の「質量%」とは、原料粉末の合計質量に対する、各原料粉末の割合を示す。混合はボールミル又はアトライターで行った。混合時間は表1の「混合工程」の「混合機/時間」欄に記載の通りである。得られた混合粉末をスプレードライ乾燥して造粒粉末とした。
得られた造粒粉末をプレス成形して、φ3.4mmの丸棒形状の成形体を作製した。
成形体を焼結炉に入れ、真空中で焼結した。焼結温度及び焼結時間は、表1の「焼結工程」の「温度/時間」欄に記載の通りである。
焼結完了後、アルゴン(Ar)ガス雰囲気中で徐冷して、超硬合金を得た。
各試料の超硬合金について、炭化タングステン粒子の円相当径の平均値及び分布、第1相及び第2相の面積割合、バナジウムの質量基準の含有量、コバルトの質量基準の含有量及びコバルトに対するクロムの質量基準の割合を測定した。
各試料の超硬合金について、炭化タングステン粒子の円相当径の平均値を測定した。具体的な測定方法は、実施の形態1に記載されているため、その説明は繰り返さない。結果を表2の「WC粒子円相当径」の「平均値」欄に示す。
各試料の超硬合金について、円相当径が0.3μm以下である炭化タングステン粒子の個数基準の割合、及び、円相当径が1.8μm超である炭化タングステン粒子の個数基準の割合を算出した。具体的な測定方法及び算出方法は、実施の形態1に記載されているため、その説明は繰り返さない。
各試料の超硬合金について、走査型電子顕微鏡で撮影した画像における第1相及び第2相の面積割合を測定した。具体的な測定方法は、実施の形態1に記載されているため、その説明は繰り返さない。結果を表2の「第1相」の「面積%」欄、及び、「第2相」の「面積%」欄に示す。
各試料の超硬合金について、バナジウムの質量基準の含有量、コバルトの質量基準の含有量及びコバルトに対するクロムの質量基準の割合を測定した。具体的な測定方法は、実施の形態1に記載されているため、その説明は繰り返さない。結果を表2の「V」の「ppm」、「Co」の「質量%」、「Cr」の「質量%」及び「Cr/Co」の「%」欄に示す。
各試料の丸棒を加工し、刃径φ0.35mmの小径ドリルを作製した。現在、刃部のみをステンレスシャンクに圧入してドリルを成形することが主流であるが、評価のためにφ3.4mmの丸棒の先端を刃付け加工することでドリルの作製を行った。該ドリルを用いて市販の車載用プリント回路基板の穴開け加工を行った。穴開け加工の条件は、回転数155krpm、送り速度2.5m/minとした。10000個の穴あけを行った後のドリルの摩耗量を、ドリル径の減少量により算出した。3本のドリルで穴開け加工を行った。3本の摩耗量の平均値を表2の「摩耗量(μm)」欄に示す。また、穴開け加工後の刃先状態の観察を行った。その結果を表1の「刃先状態」欄に示す。
試料1〜試料13は実施例に該当し、試料14〜試料17は比較例に該当する。試料1〜試料13は、試料14〜試料17に比べて、摩耗量が少なく、工具寿命が長いことが確認された。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
Claims (8)
- 複数の炭化タングステン粒子からなる第1相と、コバルトを含む第2相と、からなる超硬合金であって、
前記超硬合金を走査型電子顕微鏡で撮像した画像において、前記第1相の割合が78面積%以上100面積%未満、かつ、前記第2相の割合が0面積%超22面積%以下であり、
前記画像において前記炭化タングステン粒子のそれぞれの円相当径を算出した場合、前記円相当径の平均値が0.5μm以上1.2μm以下であり、
前記円相当径が0.3μm以下である前記炭化タングステン粒子の個数基準の割合は10%以下であり、
前記円相当径が1.8μm超である前記炭化タングステン粒子の個数基準の割合は2%未満であり、
前記超硬合金の前記コバルトの質量基準の含有量は0質量%超10質量%以下である、超硬合金。 - 前記画像において、前記第2相の割合が5面積%以上12面積%以下である、請求項1に記載の超硬合金。
- 前記超硬合金のクロムの質量基準の含有量は0.15質量%以上1.0質量%以下である、請求項1又は請求項2に記載の超硬合金。
- 前記コバルトに対する前記クロムの割合は、質量基準で5%以上10%以下である、請求項3に記載の超硬合金。
- 前記超硬合金のバナジウムの質量基準の含有量は0ppm以上2000ppm未満である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の超硬合金。
- 前記超硬合金のバナジウムの質量基準の含有量は0ppm以上100ppm未満である、請求項5に記載の超硬合金。
- 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の超硬合金からなる刃先を備える、切削工具。
- 前記切削工具は、プリント回路基板加工用回転工具である、請求項7に記載の切削工具。
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