JP4479572B2 - 垂直磁気記録媒体用ディスク基板の製造方法、垂直磁気記録媒体用ディスク基板及び垂直磁気記録媒体 - Google Patents
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従来、非磁性基板の材料としてはアルミニウム合金が用いられてきたが、ハードディスク装置の高容量化、小型化の進展に対応して磁気ディスクも平坦度が高く、小径、薄形のものが要求され、このような市場要求に対して、従来のアルミニウム合金基板では対応が難しいため、基板材料としてガラスが用いられるようになってきている。
例えば、塩化パラジウムおよび塩化スズ(II)を含む水溶液で処理し、次いで炭酸アルカリ水溶液、炭酸水素アルカリ水溶液、または両者の混合水溶液で処理した後、無電解めっきを行う方法(特許文献1参照)、クロム酸−硫酸混合溶液および硝酸溶液で二段階エッチング処理し、次いで強アルカリ性溶液でエッチングした後、希薄な塩化スズ(II)で増感処理し、さらに銀塩溶液およびパラジウム塩溶液で活性化処理した後、無電解めっきを行う方法(特許文献2参照)、硫酸と重クロム酸塩カリウムの温液で清浄化した後、塩酸で酸性にした塩化スズ(II)で増感、次いで塩化パラジウムの溶液で活性化した後、無電解めっきを行う方法(特許文献3参照)、アルカリ脱脂し、フッ化水素酸でエッチングした後、塩化スズ(II)の溶液で増感、次いで塩化パラジウムの溶液で活性化した後、無電解めっきを行う方法などが提案されている。
これは、前処理として、ガラス基板をまず十分に脱脂し、続いてエッチングを行ってアンカー効果を高め、エッチング時に生じ基板表面に付着した異物を除去し、表面調整工程を施して基板表面を化学的に均一化し、続いて感受化処理、活性化処理を行った後、無電解Ni−Pめっきを行うものであり、エッチング液としてはフッ化水素酸とフッ化水素カリウムを含む水溶液を用い、表面異物除去には塩酸を用い、表面調整にはナトリウムメトキシドを含む水溶液を用いると好適とされている。
同様に、特許文献5には、ガラス基板表面に、水酸化カリウム溶液によるアルカリ脱脂処理,フッ酸によるエッチング処理,温純水処理,シランカップリング剤処理,塩化パラジウム水溶液によるアクチベーター処理,次亜リン酸ナトリウム水溶液によるアクサレーター処理を順次施した後、無電解Ni−Pめっきを行い、続いて、加熱処理を施すことによる磁気ディスク用ガラス基板への無電解Ni−Pめっき層の形成方法が提案されている。
特に、特許文献6に示されるように、情報を記録する役割を担う磁気記録層の下側に、磁気ヘッドから発生する磁束を通しやすく、かつ飽和磁束密度Bsの高い軟磁性裏打ち層と呼ばれる軟磁性膜を付与した二層垂直磁気記録媒体は、磁気ヘッドの発生磁界強度とその磁界勾配を増加させ、記録分解能を向上させるとともに媒体からの漏洩磁束も増加させうることから、高密度記録が可能な垂直磁気記録媒体として好適であることが知られている。
この軟磁性裏打ち層としては、スパッタリング法により形成した200nmから500nm程度の膜厚を有するNi−Fe合金膜やFe−Si−Al合金膜、あるいはCoを主体とするアモルファス合金膜等が一般的に用いられている。しかしながら、スパッタリング法によってこれらの比較的厚い膜を形成することは、生産コストや大量生産性の観点から好ましくない。
また、非特許文献1ではガラス基板上に形成されたCoNiFePめっき膜が、同じく非特許文献2では非磁性NiPめっき膜が付与されたAl合金ディスク基板上に形成された軟磁性NiPめっき膜が提案されている。
ここで、軟磁性裏打ち層が磁区構造を形成し、磁壁とよばれる磁化遷移領域が生じると、この磁壁から発生するスパイクノイズと呼ばれるノイズが垂直磁気記録媒体としての性能を劣化させることが知られている。したがって軟磁性裏打ち層としては磁壁の形成が抑制されていることが必要である。
特許文献8では、保磁力Hcが30〜300OeのCo又はCoNi合金からなる裏打ち層を、ディスク基板の円周方向に磁気異方性を有するように形成することで、スパイクノイズの発生が抑制できることも提案されている。この例では、裏打ち層の形成はスパッタリング法や蒸着法等の乾式成膜であるが、特許文献9にはHcを30Oe以上としてスパイクノイズの抑制が可能なCo−B膜をめっき法によって形成する方法が提案され、軟磁性裏打ち層としての使用可能性が示唆されている。
また、上述のCoNiFePめっき膜においても、実際の量産工程においては、めっき浴中の基板に均一な磁界を印加することは困難であるうえ、やはり大量生産性を損ねる可能性が高い。さらに、Feを含むめっき膜は、高いBsが得られるため軟磁性裏打ち層としては好適であるが、Feは二価のイオンと三価のイオンが共に安定に存在するため、一般にめっき浴の安定性を確保するのが困難であることが知られており、大量生産性に劣る面がある。
このような課題を解決するため、本出願人は、特願2004−121889「垂直磁気記録媒体用ディスク基板及びそれを用いた垂直磁気記録媒体」において、3at%以上20at%以下のPと、CoとNiの原子数比率(Co/(Co+Ni))で45at%以上のCoを含むCo−Ni−P合金膜からなり、かつその膜厚が0.2μm以上3μm以下である軟磁性下地層を無電解めっき法によりガラス基板上に形成することで、量産性に優れ、かつスパイクノイズが発生しないものとすることについて提案した。
また、非磁性Ni−P合金からなる無電解めっき膜は、既にハードディスク用のAl合金基板に使用されている実績があり、その大量生産のための作製方法やポリッシングによる表面平滑化技術が良く知られている。したがって、ガラス基板においても無電解めっき法により非磁性又は軟磁性のめっき膜を良好な特性の磁気ディスクを得るのに十分な膜厚で、密着性良く且つ十分な平滑性を保持する下地層として形成し、磁気記録媒体のための基板として使用できれば、生産コストの観点から非常に有望である。
すなわち、発明者らの検討によれば、ガラス基板上に、シランカップリング剤処理(例えば、3−アミノプロピルエトキシシラン水溶液への浸漬)、Pd触媒化処理(例えば、塩化パラジウム溶液への浸漬)などを順次施した後、無電解めっき法によりめっき膜を形成する方法を採用する場合には、ガラス基板とシランカップリング剤層の界面の結合力が弱いと、めっき反応中の膜応力により、めっき析出中に膜ふくれが発生したり、膜ふくれには至らぬまでも、次のポリッシュ工程において端面膜剥れや微小膜剥れなどの密着不良が現われることがあることが分かった。
一方、スパッタリング法にてNi−P等の下地層を形成する方法もあるが、通常ではガラスと金属の密着性は良くないので、ガラス基板上に直接下地層を成膜することは困難であり、その対策としてガラスとの密着性が金属の中で比較的良いとされるTiやCrを含む層をガラス基板上に形成し、これを密着層としてその上に下地層を成膜させなければならない。この方法は密着層であるTiやCrもガラスとの密着性が十分に良いわけではないので、下地層または密着層の膜厚を厚くすると、膨張係数の差による応力により密着性が低下する問題がある。また、上述のとおり、近年盛んに開発が行われている垂直磁気記録媒体には、軟磁性裏打ち層として膜厚が0.2μm〜3.0μmの比較的厚い層が必要とされており、スパッタリング法で成膜しようとすると、密着性の低下が問題となり、コストも高くなるという問題がある。
ここで、ガラス基板は、化学強化ガラス又は結晶化ガラスからなり、バッファ層は、軟磁性合金又は非磁性合金からなるものとすることができる。
このような本発明においては、バッファ層の膜厚が0.02μm未満の場合には、十分な密着性が得られるまでアニールすると、バッファ層が膜割れを起こすので好ましくない。また、バッファ層の膜厚が0.5μm超の場合には、十分な密着性が得られるまでアニールするには時間がかかるので、量産性の面から好ましくなく、さらにバッファ層が、膜厚が0.5μm超で磁性材料からなる場合には、アニールによる引張応力により基板面に対して垂直に磁気異方性を示し、この垂直磁気異方性が軟磁性下地層の磁気特性を害するので好ましくない。
従って、本発明の製造方法により製造される本発明のディスク基板を用いる垂直磁気記録媒体によれば、無電解めっき法でガラス基板上に形成した軟磁性めっき膜を軟磁性裏打ち層として利用するので、その厚膜を例えばスパッタリング法で形成するものと比較して量産性に優れ、非常に安価なものとすることができる。
<垂直磁気記録媒体用ディスク基板の実施形態>
図2に示すように、本発明の実施形態の垂直磁気記録媒体用ディスク基板10は、ディスク状のガラス基板1と、ガラス基板1上に形成されたシランカップリング剤からなる密着層2と、密着層2上に形成された触媒金属からなる触媒層3と、触媒層3上に無電解めっき法で形成されてアニール処理が施された膜厚0.02μm以上0.5μm以下のめっき膜からなるバッファ層4と、バッファ層4上に無電解めっき法で形成され、垂直磁気記録のための軟磁性裏打ち層の少なくとも一部として利用される軟磁性めっき膜からなる軟磁性下地層5とを備えてなる。
軟磁性下地層5としては、Co−Ni−P合金、Ni−Fe−P合金、Co−Ni−Fe−P合金、Ni−P合金(P濃度<5at%)などからなる軟磁性めっき膜を採用することができる。
特に、軟磁性下地層5にCo−Ni−P合金を採用する場合には、特願2004−309723「垂直磁気記録媒体用ディスク基板及びそれを用いた垂直磁気記録媒体」にて提案したとおり、軟磁性下地層5は、3at%以上20at%以下のPと、CoとNiの原子数比率(Co/(Co+Ni))で45at%以上のCoを含むCo−Ni−P合金膜からなり、かつその膜厚が0.2μm以上3μm以下であることが望ましい。
さらに、軟磁性下地層5の組成については、P濃度が3at%未満では安定な無電解めっき膜を形成することが困難であり、またP濃度が20at%を超える場合、飽和磁束密度Bs値が低下しすぎて軟磁性裏打ち層としての機能を果たさない。
Co濃度に関しては、CoとNiの原子数比率(Co/(Co+Ni))で45at%未満では飽和磁束密度Bs値が十分に高く維持できないことと、飽和磁歪定数が負で絶対値の大きな値になることから望ましくない。
一方、Co濃度の上限は特に規定されないが、CoとNiの原子数比率(Co/(Co+Ni))で90at%を超えると、CoNi合金は結晶磁気異方性定数の大きなhcp構造を形成し易くなり、保磁力が増大する可能性があることから望ましくない。すなわち、CoとNiの原子数比率(Ni/(Co+Ni))で10at%以上のNiを含有させ、fcc構造を安定に形成しやすい組成にすることが望ましい。
<垂直磁気記録媒体用ディスク基板の製造方法の実施形態>
このような実施形態の垂直磁気記録媒体用ディスク基板10の製造方法は、図1に示すように、ガラス材料からなる基体としてのガラス基板1の表面に、アルカリ脱脂処理S1、ガラス活性化処理S2、シランカップリング剤処理S3、Pd触媒化処理S4、Pd結合化処理S5を順次施した後、無電解めっきS6により0.02μm以上0.5μm以下の膜厚にめっき膜を形成して200℃以上350℃以下の温度にてアニール処理S7を施し、そのめっき膜上に無電解めっきS8により軟磁性めっき膜を形成する各工程からなる。
以下に、この実施形態の各工程について説明する。
(アルカリ脱脂処理S1)
この実施形態の第1の工程は、ガラス基板1の表面のアルカリ脱脂処理S1である。アルカリ脱脂処理S1は、塩基性無機化合物水溶液による1段階の処理で行ってもよいが、アルカリ性洗剤溶液による処理と、塩基性無機化合物水溶液による処理との2段階で行うことが好ましい。
本工程において用いることができるアルカリ性洗剤は、その溶液が9.0〜11.0のpHを呈するものであり、具体的にはアニオン系界面活性剤などを含む。アルカリ性洗剤の溶液は、1〜10質量%のアルカリ性洗剤を含むことが好ましい。アルカリ性洗剤溶液による処理は、ガラス基板1をアルカリ性洗剤溶液に浸漬することにより行うことが好ましく、必要に応じて洗剤溶液の攪拌、洗剤溶液に対する超音波照射などの手段を併用してもよい。通常の場合、この処理は、20〜70℃の温度において、1〜10分間にわたって実施される。
アルカリ脱脂処理S1を実施することによって、ガラス基板1上に付着していた有機物皮膜やパーティクル類を除去して、ガラス基板1の表面を清浄化することができる。
(ガラス活性化処理S2)
次に、ガラス活性化処理S2を実施する。このガラス活性化処理S2は、ガラス基板1の表面に存在する不活性な酸化膜を剥離除去すると同時に、ガラス基板1の表面の官能基を反応性に富むシラノール基(Si−OH)に変性させ、後述するシランカップリング剤との反応に対してガラス基板1の表面を活性化するための処理であり、ガラス基板1を0.001質量%〜1質量%のフッ酸などの希酸水溶液に浸漬することによって実施される。
通常の場合、この処理は、20〜50℃の温度において、1〜10分間にわたって実施される。
(シランカップリング剤処理S3)
次に、ガラス活性化処理S2が施されたガラス基板1に対してシランカップリング剤処理S3を施して、ガラス基板1上にシランカップリング剤からなる密着層2を形成する。
(CmH2m+1O)3Si(CH2)nNHR (I)
式中、Rは、H、CpH2pNH2、CONH2およびC6H5からなる群から選択され、m,n,pはそれぞれ正の整数を表す。好ましくは、mは1または2であり、nは2〜4の整数であり、およびpは2〜4の整数である。より好ましくは、以下の式(II)〜(IX)の化合物、またはそれら化合物の混合物が用いられる。
(CH3O)3SiC3H6NH2 (II)
[3−アミノプロピルトリメトキシシラン]
(C2H5O)3SiC3H6NH2 (III)
[3−アミノプロピルトリエトキシシラン]
(CH3O)3SiC3H6NHC2H4NH2 (IV)
[N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン]
(C2H5O)3SiC3H6NHC2H4NH2 (V)
[N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン]
(CH3O)3SiC3H6NHC6H5 (VI)
[N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン]
(C2H5O)3SiC3H6NHCONH2 (VII)
[3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン]
(C2H5O)3SiC3H6N=C(C4H9)CH3 (VIII)
[3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)−
プロピルアミン]
(CH3O)2(CH3)SiC3H6NHC2H4NH2 (IX)
[N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン]
シランカップリング剤は、通常0.1〜4.0質量%の水溶液として用いられる。ただし、水溶性が低いシランカップリング剤(例えば、式(VII)の化合物)の場合には、0.1〜2.0質量%の酢酸を含む酢酸水または水−アルコール(例えば、メタノール、エタノールなど)混合溶媒(さらに酢酸を含んでもよい)に溶解させて用いてもよい。
シランカップリング剤は、以下のスキーム1に示すように、水溶液または水性溶液中の水分によりアルコキシ基が加水分解されてシラノール基を生成し、さらに部分的に縮合してオリゴマー状態となる。この状態において、ガラス活性化処理S2によってガラス基板1の表面上に生成されたシラノール基と水素結合的な強い吸着状態を形成する。
次に、シランカップリング剤からなる密着層2が形成されたガラス基板1に対して、Pd触媒化処理S4を実施する。Pd触媒化処理S4は、密着層2が形成されたガラス基板1を、Pdの二価イオンを含む水溶液に浸漬することにより実施される。Pdの二価イオンを含む化合物としては、塩化パラジウム(PdCl2)などを用いることができる。その塩化パラジウムの水溶液に、NaOH、KOHなどのアルカリ性化合物を添加して、Pdイオンとシランカップリング剤のN−官能基(アミノ基、イミノ基、ウレイド基など)との反応を促進してもよい。好ましくは、PdイオンをPdCl2換算で0.01〜1.0質量%、アルカリ性化合物をKOH換算で0.01〜1.0質量%含む水溶液を用いて、本工程が実施される。通常の場合、この処理は、20〜30℃の温度において、1〜10分間にわたって実施される。
(Pd結合化処理S5)
引き続いて、Pd結合化処理S5を実施する。本工程は、好ましくは、次亜リン酸(H3PO2)の水溶液に対して、触媒層3が形成されたガラス基板1を浸漬することによって行われる。次亜リン酸水溶液で処理することで、Clと錯化合物を形成しているPdからClが解離し、シランカップリング剤のアミノ基と触媒成分としてのPdの間で強固な結合状態が成立する。その際、過剰の遊離Pdが除去される。次亜リン酸の水溶液は、好ましくは0.1〜1.0質量%の次亜リン酸を含む。通常の場合、本工程は、20〜30℃の温度において、1〜5分間にわたって実施される。
(無電解めっきS6)
次に、Pd結合化処理S5が施されたガラス基板1に対して、無電解めっきS6を施すことによりバッファ層4を形成する。本工程は、ガラス基板1を無電解めっき液に浸漬することによって行われる。形成するバッファ層4の膜厚を0.02〜0.5nmとすることがめっき膜の密着性、均一性を高めるために必要である。
(アニール処理S7)
次に、バッファ層4が形成されたガラス基板1に対して200℃以上350℃以下の温度にてアニール処理S7を施して、バッファ層4のガラス基板1に対する密着性を向上させる。本工程においては、スキーム1に示したように、水素結合的な吸着状態にあるガラス基板1の表面のシラノール基と、密着層2を構成するシランカップリング剤のシラノール基とを脱水縮合させ、それらの間に強固な化学結合(共有結合)を形成させ、ガラス基板1と密着層2との間、ひいてはガラス基板1とバッファ層4との間の密着性を向上させる。
ここで、バッファ層4の膜厚が0.02μm未満、特に0.01μm以下の場合には、十分な密着性が得られるまでアニールすると、バッファ層4が膜割れを起こすので好ましくない。また、膜厚が0.5μm超の場合には、十分な密着性が得られるまでアニールするには時間がかかるので、量産性の面から好ましくない。
アニール時間を短縮するためには温度を上げることが有効であるが、ガラス材料は種類にも拠るが一般に400℃程度のアニールで脆性となるため、350℃を上限とする。
また、アニールの温度および時間の最適値は、めっき膜合金の種類や組成比率により異なるが、バッファ層4が、膜厚0.5μm超で磁性材料からなる場合には、アニールによる引張応力により基板面に対して垂直に磁気異方性を示し、この垂直磁気異方性が軟磁性下地層5の磁気特性を害するので好ましくない。
(無電解めっきS8)
次に、アニール処理S7が施されたガラス基板1に対して、無電解めっきS8を施すことにより、軟磁性下地層5を形成する。本工程は、ガラス基板1を無電解めっき液に浸漬することによって行われる。その無電解めっき液を変えることにより種々の組成のめっき膜を形成することができる。形成する軟磁性下地層5の膜厚は、0.2μm以上とすることが軟磁性裏打ち層として必要であり、生産性の観点から3μm以下とすることが望ましい。
なお、無電解めっき法により軟磁性下地層5を形成した後に、軟磁性下地層5の表面を平滑化するためにポリッシング処理を行ってもよい。この場合、軟磁性下地層5の表面を、遊離砥粒を用いたポリッシングにより平滑化することが有効である。ポリッシング処理は、例えば、発泡ウレタン性のポリッシングパッドを貼った両面研磨盤を用いて、酸化アルミニウムあるいはコロイダルシリカの縣濁液を研磨剤として供給しながら、研磨することによって行うことができる。
<垂直磁気記録媒体の実施形態>
次に、上述の実施形態の垂直磁気記録媒体用ディスク基板10を用いる本発明の垂直磁気記録媒体の実施形態について説明する。
図示はしていないが、非磁性シード層20、磁気記録層30及び保護層40は、垂直磁気記録媒体用ディスク基板10の他面側にも同様に設けることができる。
30の結晶配向非磁性シード層20には、磁気記録層や結晶粒径等を好ましく制御するための材料を、特に制限なく用いることができる。例えば、磁気記録層30がCoCrPt系合金からなる垂直磁化膜であれば、非磁性シード層20としてはCoCr系合金やTi、あるいはTi系合金、Ruやその合金等を使用することができ、磁気記録層30がCo系合金等とPtあるいはPd等を積層した、いわゆる積層垂直磁化膜である場合には、非磁性シード層20としてPtやPd等を用いることができる。また、非磁性シード層20の上や下に更にプレシード層や中間層等を設けることも、本発明の効果を妨げるものではない。
保護層40としては、例えばカーボンを主体とする薄膜が用いられる。また、そのカーボンを主体とする薄膜と、その上に例えばパーフルオロポリエーテル等の液体潤滑剤を塗布してなる液体潤滑剤層とからなるものとすることもできる。
なお、これらの非磁性シード層20、磁気記録層30、保護層40はスパッタリング法、CVD法、真空蒸着法、めっき法などのいずれの薄膜形成方式でも形成することが可能である。
〔実施例1〕
ガラス基板1として強化ガラス基板(HOYA社製:商品名N5)を用い、以下の(1)〜(8)の工程を順次行った。
(1)工程S1として、温度50℃、濃度1.5質量%のアルカリ洗剤の水溶液に3分間浸漬した。また、温度50℃、濃度7.5質量%のKOH水溶液に3分間浸漬し、アルカリ脱脂処理を行った。
(2)工程S2として、温度20℃、濃度1.0質量%のH2SO4水溶液に3分間浸漬した。引き続き、温度20℃、濃度1.0質量%のHF水溶液に3分間浸漬し、ガラス活性化処理を行った。
(3)工程S3として,温度20℃、濃度1.0質量%の3−アミノプロピルトリエトキシシラン(式(III)の化合物)水溶液に3分間浸漬して、シランカップリング剤処理を行い、密着層2を形成した。
(4)工程S4として、温度20℃、濃度1.0質量%のPdCl2と濃度0.2質量%のNaOHとの混合水溶液に3分間浸漬し、Pd触媒化処理を行い、触媒層3を形成した。
(5)工程S5として、温度20℃、濃度1.0質量%のH3PO2水溶液に3分間浸漬し、Pd結合化処理を行った。
(6)工程S6として、表1に示すめっき浴を用いて、膜厚0.02μmのCoNiP合金膜からなるバッファ層4を無電解めっきにより形成した。
(8)工程S8として、バッファ層4の上に膜厚2.8μmのCoNiP合金膜からなる軟磁性下地層5を再び表1に示すめっき浴を用いて無電解めっきにより形成した。
以上の工程により、図1に示す垂直磁気記録媒体用ディスク基板10を作製した。
〔実施例2〕
バッファ層4の膜厚を0.2μm、アニール温度を200℃に変更したこと以外は実施例1と同様に実施した。
〔実施例3〕
バッファ層4の膜厚を0.2μm、アニール温度を280℃に変更したこと以外は実施例1と同様に実施した。
〔実施例4〕
バッファ層4の膜厚を0.2μm、アニール温度を350℃に変更したこと以外は実施例1と同様に実施した。
〔実施例5〕
バッファ層4の膜厚を0.5μm、アニール温度を300℃に変更したこと以外は実施例1と同様に実施した。
〔実施例6〕
バッファ層4の膜厚を0.5μm、アニール温度を350℃、アニール時間を60分に変更したこと以外は実施例1と同様に実施した。
〔比較例1〕
バッファ層4を設けない(すなわち工程S6,S7を省略した)こと以外は実施例1と同様に実施した。
〔比較例2〕
バッファ層4の膜厚を0.01μmに変更したこと以外は実施例1と同様に実施した。
〔比較例3〕
バッファ層4の膜厚を0.6μmに変更したこと以外は実施例1と同様に実施した。
〔比較例4〕
バッファ層4の膜厚を0.2μm、アニール温度を180℃に変更したこと以外は実施例1と同様に実施した。
〔比較例5〕
バッファ層40の膜厚を0.2μm、アニール温度を400℃に変更したこと以外は実施例1と同様に実施した。
(評価)
以上の実施例1〜6及び比較例1〜5により作製した垂直磁気記録媒体用ディスク基板10の各10検体について、目視により外観を、クロスカット剥離試験(JIS K 5600−3−4)によりめっき膜の密着性を、VSM(振動試料型磁力計)によりめっき膜の磁気特性をそれぞれ評価した。その評価結果を各実施例及び比較例の主要条件と共に表2に示す。
これに対し、バッファ層4がない比較例1では、磁気特性は満足するが、膜膨れ、膜剥がれが生じた。バッファ層4の膜厚が0.02μm未満である比較例2では、磁気特性は満足するが、アニール処理によりバッファ層4の膜割れが生じた。バッファ層4の膜厚が0.5μm超である比較例3では、膜膨れ、膜剥がれが生じると共に、バッファ層4がアニールによる引張応力により基板面に対して垂直に磁気異方性を示すようになり、軟磁性下地層5の磁気特性を害した。VSMにより測定した比較例3のM−Hループを図5に示す。アニール温度が200℃未満である比較例4では、磁気特性は満足するが、膜膨れ、膜剥がれが生じた。アニール温度が350℃超である比較例5では、アニール処理によりバッファ層4の膜割れが生じると共に、垂直磁気異方性を示し、軟磁気特性を満足しないものとなった。
以上のような本発明の実施形態のガラス基体へのめっき方法によれば、ガラス材料からなる基体上に、アルカリ脱脂処理、ガラス活性化処理、シランカップリング剤処理、Pd触媒化処理、Pd結合化処理を順次施した後、無電解めっき法により、0.02μm以上0.5μm以下の膜厚のバッファ層を形成し、このバッファ層を200℃以上350℃以下の温度にてアニールした後に、引き続きバッファ層上に無電解めっきを施すことにより、1μm以上の膜厚の非磁性又は磁性めっき膜を密着性よく均一に形成することができる。
2 密着層
3 触媒層
4 バッファ層
5 軟磁性下地層
10 垂直磁気記録媒体用ディスク基板
20 非磁性シード層
30 磁気記録層
40 保護層
S1 アルカリ脱脂処理
S2 ガラス活性化処理
S3 シランカップリング剤処理
S4 Pd触媒化処理
S5 Pd結合化処理
S6 無電解めっき
S7 アニール処理
S8 無電解めっき
Claims (5)
- ディスク状のガラス基板上に、少なくとも、ガラス活性化処理、シランカップリング剤処理、Pd触媒化処理、Pd結合化処理を順次施した後、無電解めっき法により0.02μm以上0.5μm以下の膜厚にめっき膜を形成して200℃以上350℃以下の温度にてアニール処理を施し、そのめっき膜上に無電解めっき法により0.2μm以上3μm以下の膜厚に軟磁性めっき膜を形成することを特徴とする垂直磁気記録媒体用ディスク基板の製造方法。
- ディスク状のガラス基板と、
前記ガラス基板上に形成されたシランカップリング剤からなる密着層と、
前記密着層上に形成された触媒金属からなる触媒層と、
前記触媒層上に無電解めっき法で形成されて200℃以上350℃以下の温度にてアニール処理が施された膜厚0.02μm以上0.5μm以下のめっき膜からなるバッファ層と、
前記バッファ層上に無電解めっき法で形成され、垂直磁気記録のための軟磁性裏打ち層の少なくとも一部として利用される膜厚0.2μm以上3μm以下の軟磁性めっき膜からなる軟磁性下地層と
を備えることを特徴とする垂直磁気記録媒体用ディスク基板。 - 前記ガラス基板が、化学強化ガラス又は結晶化ガラスからなることを特徴とする請求項2に記載の垂直磁気記録媒体用ディスク基板。
- 前記バッファ層が、軟磁性合金又は非磁性合金からなることを特徴とする請求項2又は3に記載の垂直磁気記録媒体用ディスク基板。
- 請求項2〜4のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体用ディスク基板上に、少なくとも非磁性シード層、磁気記録層、及び保護層を順次形成し、当該ディスク基板の前記軟磁性下地層を、当該磁気記録層のための軟磁性裏打ち層の少なくとも一部として利用することを特徴とする垂直磁気記録媒体。
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