JP4467235B2 - 半導体装置を製造する方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エアアイソレーション構造を有する半導体装置を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
LSIをはじめとする半導体素子同士を結合する配線の配線間には、従来、比誘電率の低い、緻密なシリカ膜が一般的に用いられてきた。しかし、近年、LSIの配線密度は微細化の一途をたどっており、これに伴って、基板上の隣接する配線間の距離が狭まっている。その為、従来の材料を用いても配線間の静電容量が増大し、その結果、配線を通じて伝達される電気信号の遅延が顕著となる問題が生じている。
このような問題を解決するために、配線間を比誘電率がほぼ1.0である、空気のみにするエアアイソレーション構造の概念が提案されているが(例えば、特許文献1、2参照。)、エアアイソレーション構造形成過程において用いるポリマーの残渣が配線間に残ってしまうため、充分な効果を得ることが達成できていない。
【0003】
ポリエチレンカーボネート、ポリプロピレンカーボネートなど、主鎖にカーボネート結合を持つ脂肪族の直鎖状ポリマーは、比較的低温で分解がすみやかに進行することが知られている。このため、ある種の直鎖脂肪族ポリカーボネートは、多孔質セラミックの焼結バインダーなどの、熱処理で空隙を作るという目的に使用されている。上記のような脂肪族直鎖カーボネートポリマーは、一般に、室温でゴム状の軟らかいものであるが、半導体製造工程で加工するためには、ポリマー膜が室温で十分な硬度を持っていることが必要である。室温で硬いポリマーとして製造プロセスで扱うためには、ポリマーのガラス転移温度が室温よりもかなり高い必要があるが、これらの脂肪族カーボネートポリマーは、そのガラス転移温度が室温付近または室温以下であり、半導体製造工程には適さないものであった。
【0004】
一方、ビスフェノールAなどの芳香族化合物をカーボネート基で結合した芳香族ポリカーボネート類は、耐熱性を有するエンジニアリングプラスチックとして広く用いられている。芳香族ポリカーボネートは100℃以上の高いガラス転移温度を持つため、室温で硬いポリマーであり、機械的強度としては、半導体製造プロセス適合性に問題ないが、これを窒素、アルゴンなどの不活性ガス下で熱分解を試みると、大量のチャー状残渣が発生し、500℃以下、より好ましくは350℃以下の温度で完全に熱分解することが求められるエアアイソレーション構造形成用材料としては使用できない。
以上のように、エアアイソレーション構造形成用材料としては、脂肪族直鎖ポリカーボネートの易熱分解性と、芳香族ポリカーボネートの高いガラス転移温度を併せ持つポリマー材料が求められていた。
【0005】
【特許文献1】
特表2001-514798号公報
【特許文献2】
特表2001-514798号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、半導体プロセスにおいて必須である、室温での硬度を有し、同時に比較的低温で完全に熱分解して、半導体素子の配線間にエアアイソレーション構造の形成するために好適な犠牲ポリマーとなる材料を用いて、半導体装置を製造する方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、主鎖にカーボネート基を有するポリマーで、同時に主鎖に脂肪族環構造を持つものが、比較的高いガラス転移温度と比較的低温での定量的な熱分解能を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(A)カーボネート基、並びにシクロヘキサン環、シクロペンタン環、ノルボルネン環およびそれらが連結した環状構造から選ばれた少なくとも一種の脂肪族環とが、直接、または炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐状の炭化水素鎖を介して結合しており、ガラス転移温度が100℃以上、かつ、350℃における熱分解率が50重量%以上である犠牲ポリマーと、(B)有機溶媒とを含有する塗布組成物を基板上に塗布した後、有機溶媒を除去して成膜し、この膜に配線用の溝を形成した後、金属配線を行い、エアアイソレーション構造前駆体を形成させ、前駆体の犠牲ポリマーを除去してエアアイソレーション構造を形成させることを特徴とする半導体装置を製造する方法。
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明においては、半導体装置の成形加工時にかかる圧力に対して犠牲ポリマーが変形しないことが必要であるため、犠牲ポリマーは、室温で変形および流動しない程度の耐熱性を有することが好ましい。一般に、ポリマーは、ガラス転移温度付近からその硬度が急激に低下するため、本発明の犠牲ポリマーは、ガラス転移温度が100℃以上であることが必要である。
【0010】
一方、本発明の半導体装置は、その配線部分の配線間の構造をエアアイソレーション構造とするためには、最終的に犠牲ポリマーを加熱除去する必要がある。しかしながら、加熱できる温度は、半導体素子の構成上、400℃以上では半導体素子および金属配線にダメージを与える可能性があり、ダメージを与える危険の少ない350℃の分解温度でポリマーの大部分が分解する必要がある。このため、350℃での熱分解による重量減少率が50重量%以上であることが必要である。
【0011】
本発明において、ガラス転移温度(Tg)には、示差熱分析装置を用い、8〜12mgのサンプルを窒素中、5℃/分で昇温して測定した値を用いる。350℃での熱分解率とは、熱重量装置により、8〜12mgの粉末状のサンプルを、酸素濃度0.1vol.%以下としたアルゴン中、室温から毎分10℃の速度で昇温し、350℃で60分ホールドした場合の重量減少率をいう。
以下に本発明の犠牲ポリマーについて説明する。
【0012】
本発明で用いるポリマーは、カーボネート基(−O−CO−O−)、並びにシクロヘキサン環、シクロペンタン環、ノルボルネン環およびそれらが連結した環状構造から選ばれた少なくとも一種の脂肪族環とが、直接、または炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐状の炭化水素鎖を介して結合しているもの(以下、脂環式ポリカーボネート、と称する)である。
これらのポリマーは、一般的なポリカーボネートの合成法(例えば、特開2001−11169号公報、特開昭63−220994号公報など参照)にしたがって、例えば、シクロヘキサン、シクロペンタン、ノルボルナンなど、またはそれら同士が連結した形の脂肪族環を持つ化合物のジオールと、ホスゲンまたは炭酸ジエステルのような化合物との縮合重合によって得られる。
【0013】
ポリマーの合成としては、縮合重合以外にも開環重合などの方法があるが、生産コストの面、および多様な共重合体が容易に得られるという点からは、縮合重合が望ましい。
脂肪族環を持つ化合物のジオールとしては、シクロヘキサンジオール、シクロペンタンジオール、ノルボルネンジオール、アダマンタンジオール、パーヒドロナフタレンジオール、パーヒドロアントラセンジオール、ペンタシクロデカンペンタデカンジオールなどの環に直接水酸基が結合したもの、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノール、シクロペンタンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、パーヒドロナフタレンジメタノール、パーヒドロアントラセンジメタノール、ペンタシクロデカンペンタデカンジメタノールなどの、環と水酸基の間に直鎖または分岐状の炭化水素鎖をもつ化合物を出発原料として使用することができる。
【0014】
脂肪族環とカーボネート基の間は、直接、または炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐状の炭化水素鎖を介して結合している。炭化水素鎖の炭素数が10を越えると、生成するポリマーの軟化温度が低くなるために、半導体プロセスに適合しなくなる。
一般に、ポリカーボネートにおいては、ポリマー中の脂肪族環の一単位に対して一単位のカーボネート基が存在する。本発明においては、ポリマーの機械的強度、耐熱性および耐薬品性をより向上させる目的で、カーボネート結合を部分的にエステル基、エーテル基、ケトン基、アミド基、イミド基などの結合基で置き換えることも可能である。しかしながら、ポリマー中に占めるカーボネート基の割合が下がると、熱分解特性が劣化する傾向があるため、カーボネート基の50モル%以下が上記の結合基で置き換えられていることが好ましい。したがって、本発明の犠牲ポリマーにおいては、脂肪族環の一単位に対するカーボネート基の比は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上である。
【0015】
上記のジオールからポリカーボネートを合成するためには、ジオールと、ホスゲンまたは炭酸ジエステルとを反応させればよい。生成物中に、半導体製造プロセスにおいて悪影響を及ぼすハロゲン元素が残存する可能性が少ないという点で、ホスゲンよりも炭酸ジエステルが好ましく用いられる。炭酸ジエステルとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトルイルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられる。このうち、本発明では、炭酸ジフェニルが好ましく用いられる。重合に用いる炭酸ジエステルは、本発明においては、製膜可能なポリマーを得るためには、上記のジオールの1モルに対して0.90〜1.15モルの比率で用いることが好ましい。
【0016】
縮合反応を行なう場合には、必要に応じて触媒を添加してもよい。触媒としては、ポリカーボネートの合成触媒として、公知のテトラアルキルオルソチタネート、ジブチルスズオキサイド、酸化アンチモン、酸化ゲルマニウム、酢酸亜鉛、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、含窒素化合物、含リン化合物などが含まれる。
本発明において、脂環式カーボネートポリマーが有する、100℃以上の高いガラス転移温度と、低温でのすみやかな熱分解挙動を保つ範囲において、耐薬品性などの物性を改良する目的で、ポリマーを変成したり、添加物を加えてもよい。
【0017】
例えば、本発明で用いられる脂環式カーボネートポリマーは、その分子鎖中または末端に反応性官能基を有していてもよい。反応性官能基を付与するためには、ポリマー末端の水酸基と反応することが知られている公知の化合物を、重合反応に引き続いて加え、必要なら、触媒を加えて反応させる。このような化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸塩化物、メタクリル酸塩化物、臭化アリルのような二重結合を持つ化合物類、メチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、ジクロロジメトキシシラン、メチルトリス(エチルメチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(N,N−ジエチルアミノキシ)シランなどのシリル化物、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテンオキシドなどのオキシド類、テトラブトキシチタンなどのチタン化合物、塩素、臭素、沃素、塩化水素などのハロゲン類、過酸化水素やメタクロロ過安息香酸などの過酸化物、その他アルミウムイソプロポキシド、トリイソプロポキシボラン、クロロ酢酸エチルなどが挙げられる。
【0018】
また、ジ−およびトリ−イソシアネート化合物など、水酸基と反応する化合物を加えることにより、ポリマーの末端基を結合させて架橋させることも可能である。耐薬品性および耐熱性を向上させる目的で、一分子内に複数のビニル基を有し、数平均分子量が1,000以下である有機架橋剤を添加することも可能である。ビニル基の構造としては、ラジカル反応性と長期保存安定性が両立するアリル基が好ましく用いられる。
【0019】
ビニル系有機架橋剤に含まれるビニル基の数は2個以上あればよいが、好ましくは3個以上である。3個のビニル基を有する架橋剤は、比較的少量の添加で耐熱性向上効果が得られ、しかも、得られる硬化樹脂組成物の相分離が起こりにくいために好ましい。本発明においては、有機架橋剤自身も硬化反応後に膜に残留することになるため、これ自身の熱分解が円滑に進むことが必要である。
以上の点から、本発明におけるビニル系架橋剤の好ましい具体例としては、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメタアリルシアヌレートが挙げられる。
【0020】
本発明では、上記の犠牲ポリマーを用いて、金属配線間が空気であるエアアイソレーション構造の半導体装置を形成することを特徴とするものである。
以下に、一例として、銅ダマシン法を用いた本発明のエアアイソレーション構造を有する半導体装置の製造方法について説明する。
先ず、配線部分の製造方法について詳説する。
最初に、基板上に犠牲ポリマーの膜を成膜する工程を実施する。
【0021】
基板としては、シリコン、ゲルマニウムなどの半導体基板、ガリウム-ヒ素、インジウム−アンチモンなどの化合物半導体基板などを用いこともできる。これらの表面に他の物質の薄膜を形成したうえで用いることも可能である。この場合、薄膜としては、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、銀、タンタル、タングステン、オスミウム、白金、金などの金属の他に、二酸化ケイ素、フッ素化ガラス、リンガラス、ホウ素−リンガラス、ホウケイ酸ガラス、多結晶シリコン、アルミナ、チタニア、ジルコニア、窒化シリコン、窒化チタン、窒化タンタル、窒化ホウ素、水素化シルセスキオキサンなどの無機化合物、メチルシルセスキオキサン、アモルファスカーボン、フッ素化アモルファスカーボン、ポリイミド、その他任意のブロックコポリマーからなる薄膜を用いることができる。
【0022】
薄膜の形成に先立ち、上記基板の表面を、あらかじめ密着向上剤で処理してもよい。この場合の密着向上剤としては、いわゆるシランカップリング剤として用いられるもの、アルミニウムキレート化合物などを使用することができる。好適に用いられるものとして、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジクロロシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)などが挙げられる。これらの密着向上剤を塗布するにあたっては、必要に応じて、他の添加物を加えたり、溶媒で希釈して用いてもよい。密着向上剤による処理は公知の方法で行う。
【0023】
犠牲ポリマーを基板上に成膜するには、犠牲ポリマーを有機溶媒と混合した塗布組成物を基盤に塗布した後、有機溶媒を除去することにより成膜することが好ましい。
本発明における塗布組成物の固形分濃度は2〜30重量%が好ましいが、使用目的に応じて適宜調整される。塗布組成物の固形分濃度が2〜30重量%であると、塗膜の膜厚が適当な範囲となり、保存安定性がより優れたものになる。この固形分濃度の調整は、必要であれば、濃縮または上記の有機溶媒による希釈によって行われる。
【0024】
固形分濃度とは、既知量の塗布組成物を、減圧雰囲気下にて80℃で1時間処理したあとの重量の最初の塗布液の重量に対する重量%で表される。
本発明の塗布組成物中のナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属および鉄の含量が1ppm以下あることが好ましく、100ppb 以下がより好ましい。これらの金属含有量が1ppmを超えると、後に述べるるように、たとえ本発明の犠牲ポリマーを熱により除去しても、これらの金属は半導体装置中に残存し、その結果、配線間のリーク電流や短絡を引き起こす場合がある。例えば、本発明の半導体装置の製造に用いる犠牲ポリマーに金属重合触媒が含有される場合、その除去は、イオン交換、吸着、通常のろ過による除去、再沈精製などにより行なわれる。
【0025】
本発明の塗布組成物には、基板との親和性を改良する目的で、界面活性剤などの成分を添加してもよい。界面活性剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられ、さらには、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、ポリ(メタ)アクリレート系界面活性剤などを挙げることができ、好ましくはフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤を挙げることができる。
【0026】
塗布方法としては、流延、浸漬、スピンコートなどの周知の方法で行うことができるが、半導体装置の多層配線構造体用にはスピンコートが好適である。薄膜の厚さは、塗布組成物の粘度や回転速度を変えることによって0.1〜100μmの範囲で制御できる。厚さが100μmを越えると、クラックが発生する場合がある。半導体装置の多層配線構造体用の薄膜としては、通常0.1〜5μmの範囲で用いられる。
【0027】
本発明の塗布組成物を成膜した後の有機溶媒の除去温度は限定されないが、80〜300℃未満、好ましくは100〜200℃の範囲である。温度が80℃未満の場合、溶媒の除去が不充分となり、膜の機械的機械的強度が充分に発現されない場合があり、300℃以上の場合には、分解反応が起こり始める場合がある。
有機溶媒を除去するのに要する時間は10秒〜24時間が好ましく、より好ましくは10秒〜5時間、最も好ましくは1分〜2時間である。時間が10秒未満であると、有機溶媒の除去が十分進行しない場合があり、得られる薄膜の耐熱温度が低下する場合がある。溶媒は、通常、24時間以内に完全に除去されるので、これ以上、長時間の加熱はあまり意味をなさない。
【0028】
有機溶媒を除去する場合および後に述べる犠牲ポリマーを除去する場合の雰囲気は、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性雰囲気下で行うのが好ましい。空気または酸素ガスを混入させた酸化性雰囲気下で行うことも可能であるが、この場合には、酸化性ガスの濃度を、有機溶媒を除去する工程においては、内容物が実質的に分解しないような濃度に制御する必要がある。
以上のように成膜された犠牲ポリマー膜の上に、デポジッションのような、通常用いられる方法で、キャップ膜として金属薄膜またはSiO2薄膜を堆積させ、さらにレジストマスクを設け、選択的エッチング、洗浄、そしてレジストマスクの除去といった通常の半導体装置の製造に用いられる工程手順を経て、配線溝を形成する。
【0029】
犠牲ポリマーとキャップ層との密着性が悪く、後に述べるCMP工程において、両層間で剥離が生じる場合があるが、この場合には、犠牲ポリマーの表面を酸化処理して、密着性を改良することが可能である。表面酸化処理方法として、放電処理、火炎処理、オゾン処理、電離活性線処理、プラズマ処理、高温加熱処理、酸化剤処理が挙げられ、これらを単独で行っても、これらの複数を組み合わせて行ってもよい。この表面酸化処理によって、犠牲ポリマー材料表面が酸化され、犠牲ポリマーと、金属やセラミックスや他の材料との密着性、および界面接合性を優れたものとすることが可能となる。
【0030】
配線溝を形成した後は、バリヤメタルを、通常用いられる方法で堆積させ、あらかじめ形成しておいた配線溝へCuを電解めっきなどによって埋め込んで下層配線を形成し、CMP(化学機械研磨)によるバリヤメタルとCuの研磨を行いエアアイソレーション前駆体構造とする。
引き続き、Cu配線間の犠牲ポリマー層をガス化させ、上層のキャップ膜内を拡散させながら除去し、本発明のエアアイソレーション構造とする。
【0031】
犠牲ポリマーをガス化して除去する方法としては、加熱、プラズマ処理などが挙げられるが、現行の半導体装置製造プロセスにおいて容易に実施可能であるという観点からは、加熱が好ましい。この場合の温度は、200〜500℃未満、好ましくは250〜450℃の範囲である。加熱温度が250℃未満の場合、充分な分解反応が進行しない場合があり、500℃以上の場合には、現行の半導体プロセスに適用するのは困難な場合がある。
【0032】
犠牲ポリマーの分解時間は、有機溶媒を除去する時間と同様に10秒−24時間の範囲で行うことが好ましく、より好ましくは10秒−5時間、最も好ましくは1分−2時間である。分解時間が10秒未満である場合、ポリマー分解反応が十分進行しない場合があり、残渣物が残り、半導体装置を汚染することがある。分解反応は、通常、24時間以内に終了するので、これ以上、長時間の加熱はあまり意味をなさない。
【0033】
犠牲ポリマーの分解を促進する目的で、紫外線や電子線を使うことができる。
本発明において、加熱は、半導体装置製造プロセス中で、通常、使用される枚葉型縦型炉またはホットプレート型の焼成システムを使用することができる。もちろん、本発明の製造工程を満足すれば、これらに限定されるものではない。
以上のような工程を経ることにより、配線間が空気によって仕切られたエアアイソレーション構造を有する半導体装置が形成される。本発明の犠牲ポリマーを成膜後、その上にSiO2などのキャップ膜をデポジションしなくても、配線溝の間隔が100nm以下であれば、犠牲ポリマーを除去した後であってもCVD(Chemical Vapor Deposition)法によるSiO2膜、あるいはSOG(Spin On Glass)法による層間絶縁膜を成膜した場合、毛細管現象により配線の隙間部分には膜原料が進入しないので、エアアイソレーション構造を形成することが可能である。
【0034】
なお、本発明の半導体装置において半導体素子と配線部分との接続は、通常、一般的のい用いられている方法を採用することができる。
本発明の犠牲ポリマーは、エアアイソレーション構造が形成された場合には、最終的には消失するが、犠牲ポリマー自身の比誘電率が低く、かつ、半導体加工に必要な耐熱性を有するため、信号転送ケーブル被覆材、同軸ケーブル被覆材、光ファイバー、フォトダイオード、発光ダイオード、半導体レーザー、LSI、HEMT、MMIC、記録メディア、通信部品などの素子およびこれらを用いた装置などにも利用できる。
【0035】
また、ポリマーの透明性を活かして、レンズ、液晶基板、液晶偏光板、プラズマディスプレー保護板、FED保護板、タッチパネル基板などのデイスプレー素材、光演算素子、LED、レーザーダイオード、光デイスク基板、太陽電池基板、太陽電池用保護層、反射防止被膜などに応用することができる。
本発明の犠牲ポリマーの高透明性と、高耐熱性とを利用して、光配線用の多層配線素子における、光配線導光路を形成する目的で使用することも可能である。また、犠牲ポリマー膜に規則的な空隙を形成したのちシリコンまたはゲルマニウムを充填し、さらに犠牲ポリマーを分解することで、フォトニックバンドギャップ構造を形成することも可能である。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。
【0037】
【参考例1】
1,4シクロヘキサンジオール25g(0.215mol)、炭酸ジフェニル50.6g(0.236mol)、およびジ−n−ブチルスズオキサイド0.028gの混合物を、わずかに減圧にしたフラスコ中で攪拌しながらゆるやかに加熱した。100℃付近で混合物は溶融させた。120℃から140℃の範囲で均一な溶融物が得られた。反応で生成するフェノールを除くために、徐々に減圧にしながら、約4時間をかけてゆるやかに温度を上げ、最終的に200℃、6500Paとした。このまま1時間反応させた後、室温に放冷し、常圧に戻した。フラスコに残った固体を塩化メチレンに溶解し、PTFE製のフィルター(0.05μm径)でろ過し、エタノールから再沈殿して精製し、真空乾燥して白色の1,4シクロヘキサンカーボネートポリマー粉末を得た。GPCからもとめられた平均分子量は約4,000であった。
【0038】
【実施例1】
参考例1で得られたポリマーの塩化メチレン溶液(20重量%)を、6インチのシリコンウエハー上に3ml滴下し、1000rpmにて60秒間回転塗布した。その後、120℃、空気中にて1分間乾燥し、膜厚が0.8μmの均一な膜質の犠牲ポリマー膜を得た。この犠牲ポリマー膜をウェハー上から削りとり、それぞれ約10mgの粉末状サンプルを用いて示差熱分析計によってガラス転移温度を、熱重量分析計によって350℃における熱分解率を測定した。
示差熱分析によって得られたこのポリマーのガラス転移温度は130℃であり、室温付近では硬いポリマーとして扱うことができた。
一方、アルゴン中、室温から毎分10℃の速度で昇温し、350℃で60分保持した場合、ポリマーの99.5%が熱分解していた。
以上から、この犠牲ポリマー膜は、100℃以上の高いガラス転移温度を有するため、室温では硬く、かつ、比較的低い温度で完全に熱分解するものであった。
【0039】
【比較例1】
実施例1で、1,4シクロヘキサンカーボネートに替えて、同じく脂肪族カーボネート構造を持つポリ−1,2プロパンカーボネート(Aldrich、ポリプロピレンカーボネート、Mn50,000)を用いて同様の操作を行ない、均一な膜質のポリマーが得られた。
熱重量分析によると、温度350℃、60分保持の条件においてポリマーの99.5%以上が分解し、低温でほぼ完全に熱分解するポリマーである。
しかしながら、ポリマーのガラス転移温度は約40℃であり、膜は室温で容易に変形する柔軟なものであるため、半導体加工プロセスには適合しないものであった。
【0040】
【比較例2】
実施例1で、1,4シクロヘキサンカーボネートに替えて、芳香族ポリカーボネート(Aldrich社、ポリビスフェノールAカーボネート、Mn17,000)を用いて同様の操作を行なった。均一な膜質の犠牲ポリマー膜が得られた。
このポリマーのガラス転移温度は145℃であり、室温で硬いポリマーであった。熱重量分析を行ったところ、アルゴン中、350℃で60分保持後には熱分解率は27%であり、73重量%に相当する黒色の残渣が生じていた。エアアイソレーション構造においては配線間の絶縁性が要求されるために、導電性の炭化物が残存してはならないため、このポリマーは半導体製造プロセスには適合しないものであった。
以上から、実施例1で用いた脂環式カーボネートの優位性が明らかである。
【0041】
【発明の効果】
本発明に用いられる犠牲ポリマーは、半導体装置の加工時に必要な100℃以上のガラス転移温度を有し、エアアイソレーション構造を形成する上で必須の熱分解温度が半導体の加工上限温度よりも低く、両温度特性を満足するものである。
本発明の犠牲ポリマーを用いて製造したエアアイソレーション構造の半導体装置は、半導体素子の配線間に不純物の存在しない完全なエアアイソレーション構造を有するものである。
Claims (1)
- (A)カーボネート基、並びにシクロヘキサン環、シクロペンタン環、ノルボルネン環およびそれらが連結した環状構造から選ばれた少なくとも一種の脂肪族環とが、直接、または炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐状の炭化水素鎖を介して結合しており、ガラス転移温度が100℃以上、かつ、350℃における熱分解率が50重量%以上である犠牲ポリマーと、(B)有機溶媒とを含有する塗布組成物を基板上に塗布した後、有機溶媒を除去して成膜し、この膜に配線用の溝を形成した後、金属配線を行い、エアアイソレーション構造前駆体を形成させ、前駆体の犠牲ポリマーを除去してエアアイソレーション構造を形成させることを特徴とする半導体装置を製造する方法。
Priority Applications (1)
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