JP4463445B2 - ワークの移送時間算出方法およびワーク移送システム - Google Patents
ワークの移送時間算出方法およびワーク移送システム Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワークの移送時間算出方法およびワーク移送システムに関し、特に移送路、中継路およびステーションが網状に配置された網状移送路においてワークの移送時間算出方法およびワーク移送システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
製造設備を有する工場において、加工機械を任意の位置に配置できれば、加工機械をライン状に配置する場合に比べて敷地の利用率を高くすることができる。
【0003】
この場合、各加工機械の間には網状の移送路が形成され、移送車がこの移送路を通ってワークを移送する形態となる。
【0004】
そして、一般に移送車は複数台が用意され、各移送車は自ら記憶した経路を移動し、または他の制御装置から経路の指令を受けて移動する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の従来技術においては、移動経路のうちどの経路を通れば最短時間で到達点に至ることができるかを判断する好適な手法がない。
【0006】
すなわち、経路がいくつかに絞られている場合であっても、他の移送車との経路上の競合を考慮すると、必ずしも幾何学的な最短経路が最短時間になるとは限らず、他の移送車の通過待ちを考慮すると遠回りした方が速いこともあるが、経路の候補のうちいずれを選択すればよいかを判断する好適な選択手法はない。
【0007】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、網状移送路における移送車の移動経路で、他の移送車の移動をも考慮して、移送車を到達点へ短い時間で到達させることを可能としたワークの移送時間算出方法およびワーク移送システムを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るワークの移送時間算出方法は、複数の移送路と、前記移送路が接続される中継路とからなる網状路における移送装置のワークの移送時間算出方法において、前記網状路上で、出発点から到達点へ至る経路を前記移送路および/または前記中継路の列として記憶し、前記移送装置が前記移送路および前記中継路の通過に要する通過時間を求める第1ステップと、前記移送装置が前記移送路および前記中継路で待機する待機時間を求める第2ステップと、前記通過時間および前記待機時間を合計し前記経路の移送時間を算出する第3ステップと、を有し、前記第2ステップにおいて、前記移送路および/または前記中継路が他の移送装置の使用状態から開放されるまでの時間である予約解消時間を調べて、前記移送路および/または前記中継路ごとの前記予約解消時間と、前記移送装置が前記移送路および/または前記中継路に到着する到着時間とを比較し、前記予約解消時間が前記到着時間より大きいときはその差を前記待機時間とし、前記予約解消時間が前記到着時間より小さいときはその前記待機時間を0とする、ことを特徴とする。
【0009】
このようにすることにより、網状路における移送車の移動経路について、他の移送車の移動をも考慮した移送時間を算出することができる。
【0011】
また、前記到着時間は、前記移送路および/または前記中継路ごとに、それ以前の前記通過時間および前記待機時間を合計して求めるようにしてもよい。
【0012】
そして、前記通過時間は、前記移送装置が前記移送路を移動する行程時間と、前記中継路で進行方向を変更する旋回時間とからなるようにしてもよい。
【0013】
前記行程時間は、前記移送路における距離、速度、加速度または減速度の少なくとも1つを変数として求めるようにしてもよい。
【0014】
前記旋回時間は、前記中継路における旋回角、角速度、角加速度または角減速度の少なくとも1つを変数として求めるようにしてもよい。
【0015】
さらに、複数の前記経路について前記移送時間を求め、前記移送時間が最短時間である前記経路を選択し、前記移送装置を移動させるようにしてもよい。
【0016】
このようにすることにより、移送車を到達点へ短い時間で到達させることができる。
【0017】
また、本発明に係るワーク移送システムは、ワークを移送する複数の移送装置と、前記移送装置が移動し、または停止する複数の移送路と、前記移送装置から前記ワークが搬入および搬出される複数のステーションと、2つ以上の前記移送路の中継点に設けられ、一方の前記移送路から前記移送装置が進入して停止しまたは他の前記移送路へ進行する中継路と、前記移送装置、前記移送路、前記ステーションおよび前記中継路の動作を制御する制御部と、前記移送路と前記中継路とからなる網状路上の出発点から到達点へ至る経路を前記移送路および/または前記中継路の列として記憶し、前記移送装置が前記移送路および前記中継路の通過に要する通過時間を求める通過時間算出部と、前記移送装置が前記移送路および前記中継路で待機する待機時間を求める待機時間算出部と、前記移送路および/または前記中継路の列ごとの前記通過時間および前記待機時間を合計し前記経路の移送時間を算出する移送時間合計部と、を有し、前記待機時間算出部は、前記移送路および/または前記中継路が他の移送装置の使用状態から開放されるまでの時間である予約解消時間を調べて、前記移送路および/または前記中継路ごとの前記予約解消時間と、前記移送装置が前記移送路および/または前記中継路に到着する到着時間とを比較し、前記予約解消時間が前記到着時間より大きいときはその差を前記待機時間とし、前記予約解消時間が前記到着時間より小さいときはその前記待機時間を0とする、ことを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るワークの移送時間算出方法およびワーク移送システムに適用した実施の形態を図1〜図14を参照しながら説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態に係るワーク移送システム10は、ワーク16を移送する複数の移送車(移送装置)18と、移送車18をワイヤ60を介して移動させ、または途中で停止させることのできる複数の移送路20と、移送車18からワーク16が搬入および搬出される複数の着脱装置(ステーション)24と、着脱装置24からワーク16を出し入れしてワーク16を加工する加工機14と、移送路20の中継点または端部に設けられ、移送路20から進入してきた移送車18を停止させ、または他の移送路20へ進行させことのできる分岐装置(中継路)22と、移送車18、移送路20、着脱装置24および分岐装置22の動作を直接制御する複数のユニットコントローラ26と、複数のユニットコントローラ26を統合して全体を制御するメインコントローラ(制御部)12とを有する。
【0020】
なお、以下、「搬入」とは、移送車18から着脱装置24へワーク16を受け渡す作業を表すものとし、「搬出」とはその逆の作業を表すものと定義する。
【0021】
図2に示すように、着脱装置24は複数存在し、また、それぞれの着脱装置24a〜24mはワーク16の加工工程に応じた加工機14(図1参照)を備えている。ワーク16は2種類のワーク16aおよび16b(共に図示せず)に分類され、加工機14はワーク16a、16bに共用のものと、どちらか一方に対し専用の加工を行うものとが混在している。
【0022】
ワーク16の加工工程は、順に4つの工程A、B、C、Dに分類され、投入工程でワーク16は投入装置36から工程Aに受け渡され、工程Dが終了すると払い出し工程の払出装置38に送られる。なお、投入装置36および払出装置38は、ワーク16を投入および払い出しを行う機能とともに、着脱装置24と同様に移送車18とワーク16の授受を行うものであり、以下の説明では着脱装置24と同列に扱うものとする。
【0023】
工程Aでは着脱装置24a〜24dを、工程Bでは着脱装置24e〜24gを、工程Cでは着脱装置24h〜24kを、工程Dでは着脱装置24L〜24mを備えており、それぞれの着脱装置24a〜24mと投入装置36および払出装置38とは網状に配置された移送路20で結ばれている。また、投入装置36、払出装置38および着脱装置24a〜24mは移送路20の途中の箇所に設けられている。
【0024】
ワーク16の移送経路は、例えば、投入装置36から投入され、工程Aの着脱装置24b、工程Bの着脱装置24g、工程Cの着脱装置24k、工程Dの着脱装置24Lで順に加工され、その後、払出装置38から払い出しされる。
【0025】
分岐装置22は複数存在し、分岐装置22a〜22mは移送路20の中継点に設置され、そして分岐装置22n〜22vは移送路20の端部に設置されている。また、中継点から延びる移送路20は90°に交差している必要はなく、分岐装置22iおよび22mのように、任意の角度に設定可能である。さらに、中継点から延びる移送路20の数は交差する4本に限ることなく、分岐装置22a、22m等のように、2本や3本など任意の数に設置することができる。
【0026】
また、着脱装置24a〜24mおよび払出装置38を適当な数のエリアに分割し、それぞれのエリアに移送車18を割り当てる。それぞれの移送車18は、割り当て分の着脱装置24または払出装置38に対してのみワーク16の搬入を行い、ワーク16の搬出を受ける際には前工程側のエリアにも進入し、他の移送車18を回避するときは隣接するエリアにも進入するものとする。
【0027】
図2では4台の移送車18a〜18dを移送車18aエリア〜移送車18dエリアに割り当てた例を示している。移送車18bエリアについていえば、工程B、工程Cにまたがったエリアの着脱装置24f、24g、24j、24kにワーク16を搬入する作業を行い、搬出作業に関しては、前工程である工程A、工程Bの着脱装置24a、24b、24c、24d、24e、24f、24gから搬出を受ける作業を行う。
【0028】
また、これらの移送路20と、分岐装置22とからなる網状路は、工程が進む方向をDxとして規定し、方向Dxに垂直な方向をDyとして規定している。分岐装置22の位置は、適当な基準点を設けて座標(x、y)として表され、分岐装置22間の移送路20の向きは、方向DxまたはDyで表される。さらに、分岐装置22iと分岐装置22mを結ぶ移送路20のように斜めに設定されたものは、傾き角度に応じた方向Dzを規定して表される。
【0029】
図3に示すように、着脱装置24は、縦長の構造であり、両脇部に立設されたレール58にはチェーン・スプロケット機構59が組み込まれている。レール58から水平方向に突出した一体型上下2段構造の載置台54、56はチェーン・スプロケット機構59によりレール58に沿って上下移動が可能であり、図示しない高さセンサにより載置台54、56の高さを検出可能な構成になっている。チェーン・スプロケット機構59は、ユニットコントローラ26に接続されたモータ52により駆動され、高さセンサの出力値を参照しながら載置台54、56の高さの調整動作が可能である。
【0030】
この着脱装置24と移送車18は、上段の載置台54との間でワーク16の積み下ろしが可能であるとともに、載置台54にワーク16がないときには下段の載置台56との間でも積み下ろしが可能に構成されている。
【0031】
具体的には、移送車18は未加工のワーク16xを載置台54に下ろすと、一度待避する。載置台56を加工機14の近くの高さまで降下させて、ここで加工機14で加工した加工済みのワーク16yを載置台56に載せると載置台54、56をさらに降下させる。載置台54が加工機14の近くの高さに到達したところで停止させ、未加工のワーク16xを加工機14に受け渡すと載置台54、56を上昇させる。そして、載置台56が移送車18の近くの高さに到達したら、待避していた移送車18が再度積み込み位置まで移動し、加工済みのワーク16yを載置台56から移送車18に積み込む。
【0032】
このようにして、着脱装置24、加工機14と移送車18との間で未加工のワーク16xと加工済みのワーク16yの搬入、搬出が可能になる。
【0033】
図4に示すように、分岐装置22は、分岐装置本体70と、分岐装置本体70から斜め下方向に突出して移送路20と接続している脚部80と、分岐装置本体70の直下に設けられ、モータ82によって水平に旋回する旋回部78と、旋回部78に設けられ移送車18を引き込みおよび送り出すローラ74と、ローラ74を回転させるモータ72とを有する。さらに、この分岐装置22は、移送路20のワイヤ60をプーリ62、64を介して駆動させるモータ68と、旋回部78の旋回角を検出する角度センサ(図示せず)と、移送車18の位置を検出する位置センサ(図示せず)等を有する。
【0034】
分岐装置22は、モータ68によりワイヤ60を駆動させてワイヤ60に着脱可能に固定される移送車18を移動させることができる。移送車18は、移動中はワイヤ60を咬み込んで固定するカム機構によりワイヤ60と一体となって移動する。そして、分岐装置22に到達すると自動的にカム機構が解除される構成になっており、カム機構が解除された後はローラ74によって旋回部78に引き込まれる。
【0035】
移送車18が旋回部78の中心位置まで達したらモータ82により向きを変えて、別の移送路20に対して再びローラ74により移送車18を送り出す。また、2つの移送路20が直線状に設定されて、移送車18が分岐装置22を介して直進する場合は、旋回部78の旋回動作は不要であり、比較的速く移送車18を通過させることができる。
【0036】
この分岐装置22のモータ68、72、82および図示しない位置センサ、角度センサはユニットコントローラ26に接続されており、移送車18の位置や旋回部78の角度が制御されている。
【0037】
図5に示すように、メインコントローラ12は、本体30と、画面出力を行うモニタ32と、入力装置のキーボード34等から構成される。
【0038】
本体30は、モニタ32を制御するモニタ機能部30aと、ワーク移送システム10の各種構成を保持するパラメータ管理機能部30bと、キーボード34から指示およびデータを入力しパラメータ管理機能部30bへ受け渡す数値パラメータ機能部30cと、有線または無線でユニットコントローラ26と通信を行う通信機能部30gとを有する。さらに、前記本体30は、通信機能部30gと接続されてワーク移送システム10の状態を管理する稼動状態管理機能部30dと、パラメータ管理機能部30b、稼動状態管理機能部30d等と協働して移送車18の移動する経路を決定する移送経路決定機能部30eと、移送車18の動作をシミュレーションするシミュレーション機能部30fとを有する。
【0039】
移送経路決定機能部30eは、各経路候補を移送路20および分岐装置22の列として記憶し、移送車18が前記移送路20および分岐装置22の通過に要する通過時間を求める通過時間算出部31と、移送装置が移送路20および分岐装置22で待機する待機時間を求める待機時間算出部33と、通過時間および待機時間を合計し各経路候補ごとの移送時間を算出する移送時間合計部35とを有する。
【0040】
また、前記本体30は、図示しないハードディスク、CPU、メモリ等を備えており、上記の各機能部30a〜30fは、通常はソフトウェアとしてハードディスクに格納されている。そして、各機能を実行するときはメモリにロードされた上でCPUにより実行される。
【0041】
メインコントローラ12は、図6に示す手順により、移送車18の移送経路を決定する。すなわち、各移送車18の分担する移動範囲を決定して入力し(ステップS1)、移送車18の搬出元と搬入先を決定し(ステップS2)、移送車18の移送経路を探索する(ステップS3)。探索して求められた経路候補を列挙し(ステップS4)、各経路候補ごとの移送時間を算出する(ステップS5)。
【0042】
そして、実際の動作条件を考慮して移送時間が最短の経路を選定し、さらに、決定した経路を移送車18が移動する際に、他の移送車との競合を避けながら分岐装置22を予約する(ステップS6)。
【0043】
このようにして、その時点で決定可能な移送経路を全て決定したら、次の計算条件が成立するまで待つ(ステップS7)。次の計算条件とは、例えば各着脱装置24からの搬入要求信号、搬出要求信号および移送車18による移送終了もしくは分岐装置22を通過したという情報等が条件となり、これらの条件が発生したときに再度ステップS2に戻るようにすればよい。
【0044】
このうち、ステップS5での処理、すなわち、各経路候補ごとの移送時間を算出し、移送時間が最短のものを選択する処理について図7〜図12を参照しながら詳細に説明する。
【0045】
このステップS5の処理は、基本的には、移送途中の分岐装置22の予約状況をテーブルから参照し、待機しなければならない待機時間を求め、この待機時間と移送車18が移動に要する時間とを合計し、実際の移送時間を求めるものである。
【0046】
移送経路決定機能部30eは、分岐装置22の位置および接続先などの情報が記録されている分岐装置情報テーブル112(図7参照)と、移送路20の接続先などの情報が記録されている移送路情報データテーブル113(図8参照)と、探索して選定された複数の移動経路を列挙して記述する経路候補データテーブル114(図9参照)と、移動経路候補の移送時間算出用の経路候補時間データテーブル115(図10参照)と、分岐装置22ごとに移送車18の使用予約が記録されている分岐装置予約データテーブル120(図11参照)と、分岐装置22ごとに予約時間が記録されている分岐装置時間管理テーブル122(図12参照)とを用いて各経路候補ごとの移送時間を算出する。これらのテーブルはハードディスクまたはメモリ上に設定され、CPUが参照および更新の処理を行う。
【0047】
図7に示す分岐装置情報テーブル112は、各分岐装置22a〜22vについて、位置座標と、接続先の分岐装置22の番号と、旋回部78の角速度、角加速度および角減速度と、それぞれの接続先の方向を+Dx、+Dy、+Dz、−Dx、−Dy、−Dz方向として記録しているテーブルである。
【0048】
分岐装置22aについて説明すると、位置座標は、方向Dx、Dyを基準にした直交座標で(xa、ya)と表され、接続先は+Dx、+Dyおよび−Dy方向の3方向である。また、+Dx方向には分岐装置22dが、−Dy方向には分岐装置22bが、+Dy方向には分岐装置22oが接続されていることを示している。旋回速度、角加速度および角減速度はそれぞれωa[°/sec]、ωb[°/sec2]、ωc[°/sec2]である。
【0049】
図8に示す移送路情報データテーブル113は、各移送路20について、長さと、接続先の分岐装置22の番号と、移送車18を移送する速度、加速度および減速度を記録しているテーブルである。例えば、分岐装置22aと22dを結ぶ移送路が20aであることを示している。
【0050】
図9に示す経路候補データテーブル114は、経路候補の組み合わせを全て列挙するテーブルであり、経路を分岐装置22の列として記憶している。欄が「S」で表されるものは出発点の着脱装置24であり、「G」で表されるものは到達点の着脱装置24を示す。
【0051】
図10に示す経路候補時間データテーブル115の各順番は「行程時間」、「旋回時間」および「待機時間」の欄に分割されている。行程時間は移送路20を通過する時間であり、旋回時間は分岐装置22で旋回部78が旋回に要する時間である。また、行程時間および旋回時間はともに移動している時間(通過時間)であり、待機時間と区別される。また、行程時間、旋回時間および待機時間の合計をそれぞれ記録する「合計行程時間」、「合計旋回時間」、「合計待機時間」の欄とこれらをさらに合計する「移送時間」の欄が付加されている。また、それぞれの欄は初期状態では全て空欄になっているものとする。経路候補時間データテーブル115の「順番」は、経路候補データテーブル114の「順番」より「1」だけ小さい値に対応している。
【0052】
図11に示す分岐装置予約データテーブル120は、各分岐装置22ごとに、移送車18が進入する進入動作および脱出する進行動作に分けて予約するテーブルであり、各動作ごとに動作が終了した時点で予約が解消される。
【0053】
分岐装置22dについて説明すると、一番左側の「順番1」の欄にのみ「18c」が記録されているので、移送車18cは、現在、この分岐装置22dに待機していて、いずれかの分岐装置22へ進行する動作が予約されていることを表している。
【0054】
また、分岐装置22bについて説明すると、「順番1」および「順番2」の欄に「18a」が記録されているので、いずれかの分岐装置22から移送車18が進入し、そして別の分岐装置22へ進行する動作が予約されていることを表している。
【0055】
図12に示す分岐装置時間管理テーブル122は、分岐装置予約データテーブル120と同じ書式をもつテーブルであり、分岐装置予約データテーブル120の各欄に対応して、予約されている時間を現時刻からの時間で記録している。
【0056】
例えば、分岐装置22bについては、10[sec]後に移送車18aが進入し、15[sec]後に通過して、使用状態から解放されることが分かる。
【0057】
移送路情報データテーブル113、経路候補テーブル114、経路候補時間データテーブル115、分岐装置予約データテーブル120および分岐装置時間管理テーブル122は、それぞれ、着脱装置24、分岐装置22が増設される場合および移送車18の経路が長い場合などに対応可能な十分な記憶領域を持つものとする。
【0058】
次に、ステップS5における各経路候補ごとの移送時間を算出する手順について図13および図14を参照しながら説明する。
【0059】
この手順は、ステップS101において、経路候補データテーブル114で、上段側から順に経路候補を選択して、選択した経路候補ごとにステップS102〜S111の処理を実行するものである。全ての経路候補について処理が終了したならばステップS112へ移り、後処理を行う。
【0060】
ステップS102において、経路候補データテーブル114を参照し、順番2から順に右列の方向に、通過する分岐装置22を選択する。選択した分岐装置22に対して、ステップS103およびステップS104の行程時間および旋回時間を算出する処理を行う。この処理は通過時間算出部31により実行される。各経路候補ごとに全ての分岐装置22に対する行程時間および旋回時間を算出し、求められた行程時間および旋回時間をそれぞれ合計し、合計行程時間および合計旋回時間として経路候補時間データテーブル115の「合計行程時間/合計旋回時間」の欄に記録し(ステップS105)、ステップS106へ移る。
【0061】
すなわち、ステップS103においては、選択された分岐装置22と、そのひとつ前の順番の分岐装置22との間の移送路20を通過するのに要する行程時間を計算する。
【0062】
例えば、経路候補データテーブル114の経路候補「No.1」の「順番3」では、分岐装置22の番号は「22d」であり、その1つ前の「順番2」では、「22a」である。ここで、図8の移送路情報データテーブル113を参照すると、分岐装置22a〜22dの間は移送路20aであることが分かるので、移送路20aの長さ、速度、加速度、減速度から、この間に要する行程時間を計算する。
【0063】
また、図9の経路候補データテーブル114の分岐装置22の番号の欄が「G」であるとき、または「順番2」の欄に関するときは、到達点または出発点と当該分岐装置22との間の距離を求め、移送路情報データテーブル113におけるデータのうち「長さ」を求めた距離で置き換えて計算する。
【0064】
ここで求めた行程時間は、図10の経路候補時間データテーブル115の「行程時間」の欄に左詰めにして順に記録する。
【0065】
次に、ステップS104において、選択された分岐装置22における旋回部78の旋回時間を計算する。
【0066】
例えば、図9の経路候補データテーブル114の経路候補「No.1」の「順番2」に関しては分岐装置22aの旋回時間を計算する。すなわち、図7の分岐装置情報テーブル112を参照し、分岐装置22aにおける移送車18の進入方向と進行方向からそれぞれの接続先の分岐装置22と分岐装置22aとの位置座標から旋回角度を求める。そして、求めた旋回角度と分岐装置22aの欄の、旋回速度、角加速度、角減速度とから旋回時間を計算する。
【0067】
また、旋回角度の算出にあたっては、分岐装置情報テーブル112の「接続方向」の欄から+Dx、+Dy、+Dz、−Dx、−Dy、−Dzの各方向の組み合わせにより予め旋回角度を求めておいてもよい。この場合、+Dx方向〜−Dx方向への移動のように直線上の移動の場合は旋回の必要はないので、算出過程を省略し旋回に要する時間を「0」とすればよい。またさらに、旋回時間の算出には、旋回部78が旋回している時間だけでなく、移送車18が移送路20と分岐装置22との間を移る遷移状態の時間を付加するようにしてもよい。
【0068】
ここで求めた旋回時間は、図10の経路候補時間データテーブル115の「旋回時間」の欄に左詰めにして順に記録する。
【0069】
記録を行ったらステップS102へ戻り、次の経路候補について同様の処理を繰り返す。
【0070】
次に、待機時間を求めるステップS106〜S110(図14参照)の処理について説明する。この処理は待機時間算出部33により実行される。
【0071】
まず、ステップS106において、図9の経路候補データテーブル114を参照し、順番2から順に右列の方向に通過する分岐装置22を選択する。選択した分岐装置22に対して、ステップS107〜S111の合計待機時間を算出する処理を行う。各経路候補ごとに全ての分岐装置22に対する合計待機時間を算出したらステップS101へ戻り、次の経路候補の処理に移る。
【0072】
すなわち、ステップS107において、経路候補時間データテーブル115で選択された列より前の順番(左側)に記録された行程時間および旋回時間の合計に、当該列の行程時間を加算し理想到着時間とする。この理想到着時間は、障害がない場合に移送車18が当該列の分岐装置22に到着できる時間を表す。
【0073】
例えば、経路候補が「No.1」で順番が「順番2」であれば、経路候補時間データテーブル115を参照すると理想到着時間は、7+5+20=32[sec]であり、分岐装置22dに到着するのは32[sec]後であることが分かる。
【0074】
なお、当該列の旋回時間は、到着後に行う動作であることから、ここには加算しない。
【0075】
次に、ステップS108において、図9の経路候補データテーブル114のうち、図10の経路候補時間データテーブル115に対応する欄から分岐装置22の番号を確認する。そして、確認した分岐装置22を図12の分岐装置時間管理テーブル122で参照し、その分岐装置22の予約が解消される予約解消時間を調べて次のステップS109へ移る。予約解消時間は分岐装置時間管理テーブル122で空欄でない一番右側の欄の数値を読めばよい。もし、経路候補時間データテーブル115の対応する欄が全て空欄になっているならば、この分岐装置22における待機時間は「0」としてステップS111へ移る。
【0076】
ステップS109において、経路候補時間データテーブル115の「合計待機時間」の欄の数値と理想到着時間とを加算し実到着時間(到着時間)を求める。「合計待機時間」の欄の数値は、その時点における数値を参照すればよく、また空欄であるならば「0」とみなす。
【0077】
ステップS110において、予約解消時間と実到着時間とを比較して待機時間を求める。すなわち、予約解消時間の方が実到着時間より小さければ、実到着時間までに分岐装置22の予約が解消されているので、待機時間を「0」とする。また、逆であるならばその差を待機時間とする。
【0078】
上記例において、経路候補が「No.1」で順番が「順番2」の場合では、移送車18bが分岐装置22dへ到着する実到着時間が32[sec]であり、分岐装置時間管理テーブル122を参照すると分岐装置22dの予約解消時間が60[sec]なので、待機時間は60−32=28[sec]となる。
【0079】
ステップS111において、求めた待機時間を図10の経路候補時間データテーブル115の「合計待機時間」の欄に積算記録する。つまり、当該欄が空欄であるならばそのまま記録し、すでに待機時間が記録されているときは加算して記録する。また、各順番の「待機時間」の欄には積算しない値をそのまま記録し、他の利用に供する。
【0080】
記録をしたらステップS106へ戻り、次の経路候補について同様の処理を繰り返す。
【0081】
行程時間を求めるステップS101〜S105の処理および待機時間を求めるステップS106〜S111の処理が終了したら、ステップS112において、移送時間合計部35の機能により、図10の経路候補時間データテーブル115の各経路候補について「合計行程時間」、「合計旋回時間」および「合計待機時間」のそれぞれを加算して移送時間を求める。求めた移送時間は「移送時間」の欄に記録する。
【0082】
最後に、ステップS113において、経路候補時間データテーブル115の「移送時間」に記録された時間のうち最短時間のものを選択して移送車18の経路として決定する。このようにして図6のステップS5の処理が終了する。
【0083】
この後、図6のステップS6において、その経路を他のテーブルに記録し予約することができる。
【0084】
そして、前記他のテーブルのデータに従い、各移送車18の動作指示が通信機能部30gを経由し、各ユニットコントローラ26に伝えられる。各ユニットコントローラ26は動作指示に付随するアドレスから自身宛の動作指示であることを確認すると、この動作指示に従い着脱装置24および分岐装置22を制御して移送車18を動作させることができる。
【0085】
このように、本実施の形態に係るワークの移送時間算出方法およびワーク移送システム10においては、分岐装置22ごとに予約の解消される時間を記録しているので、移送車18がその分岐装置22に到着する実到着時間とを比較して待機時間を算出することができる。このとき、実待機時間は、それ以前の行程時間、旋回時間および待機時間を合計して求めるので、正確に算出することができる。
【0086】
行程時間は、移送路20の長さ、速度に加え、加速度および減速度に基づいて算出しているので正確な行程時間を求めることができる。
【0087】
同様に旋回時間は、分岐装置22における旋回角、角速度に加え、角加速度および角減速度に基づいて算出しているので正確な旋回時間を求めることができる。
【0088】
そして、移送路20の長さ、速度、加速度、減速度および分岐装置22における角速度、角加速度、角減速度は、それぞれ移送路20または分岐装置22ごとに独立した数値を記録しておくため、これらの装置を異なる仕様で増設した場合または装置の性能が変化した場合であっても個別に数値を更新して適応させることができる。
【0089】
そして、複数の経路について移送時間を求めて、そのうち最短時間のものを選択するので、他の移送車の移動をも考慮して、移送車18を到達点へ速く到達させることができる。
【0090】
また、着脱装置24、加工機14等が増設されあるいは取り除かれた場合であっても、分岐装置情報テーブル112、移送路情報データテーブル113、経路候補データテーブル114、経路候補時間データテーブル115、分岐装置予約データテーブル120および分岐装置時間管理テーブル122の所定のデータを更新するだけで適用可能であり、アルゴリズム部分に変更を加える必要がない。移送路20は互いに直交していなくてもよく、分岐装置22における接続先は任意の数であっても適用可能なので、移送路20を種々の形態に変更することが可能である。
【0091】
搬送経路の表現方法は、その経路途中の分岐装置22の番号列による方法を示したが、移送路20の番号列で表現するようにしてもよい。
【0092】
移送車18については、ワイヤ60から動力を受ける他走式のものに限らず、床面を移動する自走式および自立式等のものであってもよい。
【0093】
またさらに、網状移送路は都市交通網等であってもよい。
【0094】
そしてさらに、この発明に係るワークの移送時間算出方法およびワーク移送システムは、上述の実施の形態例に限らず、この発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0095】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るワークの移送時間算出方法およびワーク移送システムによれば、網状移送路における移送車の移動経路で、他の移送車の移動をも考慮しながら、移送車を到達点へ短い時間で到達させることができるという効果が達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係るワーク移送システムを示す斜視図である。
【図2】本実施の形態における網状移送路を示す説明図である。
【図3】着脱装置、移送車を示す斜視図である。
【図4】分岐装置を示す説明図である。
【図5】本実施の形態に係るワーク移送システムの機能ブロック図である。
【図6】メインコントローラが移送車の移送経路を決定する手順を示すフローチャートである。
【図7】分岐装置情報テーブルの内容を示す説明図である。
【図8】移送路情報テーブルの内容を示す説明図である。
【図9】経路候補データテーブルの内容を示す説明図である。
【図10】計算途中の経路候補時間データテーブルの内容を示す説明図である。
【図11】分岐装置予約データテーブルの内容を示す説明図である。
【図12】分岐装置時間管理テーブルの内容を示す説明図である。
【図13】各経路候補ごとの移送時間を算出して最短の移送時間を選択する手順を示すフローチャート(その1)である。
【図14】各経路候補ごとの移送時間を算出して最短の移送時間を選択する手順を示すフローチャート(その2)である。
【符号の説明】
10…ワーク移送システム 12…メインコントローラ
14…加工機
16、16a、16b、16x、16y…ワーク
18、18a〜18d…移送車 20、22a〜22v…移送路
22、22a〜22v…分岐装置 24、24a〜24m…着脱装置
26…ユニットコントローラ 30…本体
30a…モニタ機能部 30b…パラメータ管理機能部
30c…数値パラメータ設定機能部 30d…稼動状態管理機能部
30e…移送経路決定機能部 30f…シミュレーション機能部
30g…通信機能部 31…通過時間算出部
32…モニタ 33…待機時間算出部
34…キーボード 35…移送時間合計部
36…投入装置 38…払出装置
60…ワイヤ 112…分岐装置情報テーブル
113…移送路情報データテーブル 114…経路候補データテーブル
115…経路候補時間データテーブル 120…分岐装置予約データテーブル
122…分岐装置時間管理テーブル
Claims (7)
- 複数の移送路と、前記移送路が接続される中継路とからなる網状路における移送装置のワークの移送時間算出方法において、
前記網状路上で、出発点から到達点へ至る経路を前記移送路および/または前記中継路の列として記憶し、前記移送装置が前記移送路および前記中継路の通過に要する通過時間を求める第1ステップと、
前記移送装置が前記移送路および前記中継路で待機する待機時間を求める第2ステップと、
前記通過時間および前記待機時間を合計し前記経路の移送時間を算出する第3ステップと、を有し、
前記第2ステップにおいて、前記移送路および/または前記中継路が他の移送装置の使用状態から開放されるまでの時間である予約解消時間を調べて、前記移送路および/または前記中継路ごとの前記予約解消時間と、前記移送装置が前記移送路および/または前記中継路に到着する到着時間とを比較し、前記予約解消時間が前記到着時間より大きいときはその差を前記待機時間とし、前記予約解消時間が前記到着時間より小さいときはその前記待機時間を0とする、ことを特徴とするワークの移送時間算出方法。 - 請求項1記載のワークの移送時間算出方法において、
前記到着時間は、前記移送路および/または前記中継路ごとに、それ以前の前記通過時間および前記待機時間を合計して求めることを特徴とするワークの移送時間算出方法。 - 請求項1又は2記載のワークの移送時間算出方法において、
前記通過時間は、前記移送装置が前記移送路を移動する行程時間と、前記中継路で進行方向を変更する旋回時間とからなることを特徴とするワークの移送時間算出方法。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載のワークの移送時間算出方法において、
前記行程時間は、前記移送路における距離、速度、加速度または減速度の少なくとも1つを変数として求めることを特徴とするワークの移送時間算出方法。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載のワークの移送時間算出方法において、
前記旋回時間は、前記中継路における旋回角、角速度、角加速度または角減速度の少なくとも1つを変数として求めることを特徴とするワークの移送時間算出方法。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載のワークの移送時間算出方法において、
複数の前記経路について前記移送時間を求め、前記移送時間が最短時間である前記経路を選択し、前記移送装置を移動させることを特徴とするワークの移送時間算出方法。 - ワークを移送する複数の移送装置と、
前記移送装置が移動し、または停止する複数の移送路と、
前記移送装置から前記ワークが搬入および搬出される複数のステーションと、
2つ以上の前記移送路の中継点に設けられ、一方の前記移送路から前記移送装置が進入して停止しまたは他の前記移送路へ進行する中継路と、
前記移送装置、前記移送路、前記ステーションおよび前記中継路の動作を制御する制御部と、
前記移送路と前記中継路とからなる網状路上の出発点から到達点へ至る経路を前記移送路および/または前記中継路の列として記憶し、前記移送装置が前記移送路および前記中継路の通過に要する通過時間を求める通過時間算出部と、
前記移送装置が前記移送路および前記中継路で待機する待機時間を求める待機時間算出部と、
前記移送路および/または前記中継路の列ごとの前記通過時間および前記待機時間を合計し前記経路の移送時間を算出する移送時間合計部と、を有し、
前記待機時間算出部は、前記移送路および/または前記中継路が他の移送装置の使用状態から開放されるまでの時間である予約解消時間を調べて、前記移送路および/または前記中継路ごとの前記予約解消時間と、前記移送装置が前記移送路および/または前記中継路に到着する到着時間とを比較し、前記予約解消時間が前記到着時間より大きいときはその差を前記待機時間とし、前記予約解消時間が前記到着時間より小さいときはその前記待機時間を0とする、ことを特徴とするワーク移送システム。
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