JP4461910B2 - 弾性波装置の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば弾性表面波共振子や弾性表面波フィルタなどの弾性波装置の製造方法に関し、より詳細には、IDT電極(インターデジタルトランスデューサ電極)を覆うように、温度特性を改善するための絶縁膜が形成されている構造を備えた弾性波装置の製造方法に関する。
従来、弾性表面波装置において、温度特性を改善するために、IDT電極を覆うようにSiO2膜を積層した構造が広く用いられている。この種の弾性表面波装置の一例が、下記の特許文献1に開示されている。
図10は、特許文献1に記載の弾性表面波装置を説明するための部分切欠正面断面図である。弾性表面波装置101は、圧電基板102を有する。圧電基板102上に、IDT電極103が形成されている。IDT電極103は、Alからなり、反射係数を高めるために、その規格化膜厚T/λが2.6〜4.8%の範囲とされている。ここで、Tは、IDT電極の膜厚、λは弾性表面波装置101のIDTの周期で決定される波長を示す。また、IDT電極103を覆うように、SiO2膜104が形成されている。SiO2膜104の規格化膜厚H/λは、22〜38%の範囲とされている。SiO2膜104は、周波数温度特性を改善するために設けられており、かつ上記規格化膜厚範囲とすることにより、弾性表面波装置101の周波数温度係数を±10ppm/℃以内とし得るとされている。
特開平8−265088号公報
しかしながら、特許文献1に記載のように、弾性表面波装置において、反射係数を高めるためにAlからなる電極の規格化膜厚を一定の範囲とし、さらに周波数温度特性を改善するために、SiO2膜の規格化膜厚を上記26%以上とした場合、実際には、得られた弾性表面波装置において十分な反射係数を得ることができないことがわかった。これは、図10に模式的正面断面図で示されているように、SiO2膜104の上面に丸みを帯びた凹凸104aが生じ、それによってIDT電極103の反射係数が損なわれることによると考えられる。
すなわち、IDT電極103の厚みを反射係数を高めるように最適化し、さらに良好な周波数温度特性を得るように温度特性を改善するためにSiO2膜104の厚みを最適化したとしても、そのような構成では、結果として得られた弾性表面波装置において、十分な反射係数を得ることはできなかった。
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、絶縁膜の厚みを好ましい範囲として周波数温度特性を改善したとしても、IDT電極の反射係数を効果的に高め得る構造を備えた弾性波装置の製造方法を提供することにある。
本発明に係る弾性波装置の製造方法は、圧電基板を用意する工程と、前記圧電基板上に複数本の電極指を有するIDT電極を形成する工程と、前記IDT電極を覆うように絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜を形成した後に、絶縁膜表面において、下方のIDT電極と同じ平面形状を有するレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンを形成した後に、反応性イオンエッチングにより前記絶縁膜をエッチングし、それによってIDTの電極指の上方において、前記絶縁膜表面に、上面及び側面が電極指の横断面の上面及び側面とそれぞれ平行となるように、電極指の横断面に相似である断面形状を有する凸部を形成する工程とを備えることを特徴とする。
本発明に係る弾性波装置の製造方法では、基板上にIDT電極を形成し、該IDT電極を覆うように絶縁膜を形成し、絶縁膜形成後に、IDT電極と同じ平面形状を有するレジストパターンを絶縁膜表面に形成した後に、反応性イオンエッチングにより絶縁膜をエッチングする。それによって、IDTの電極指の上方において、絶縁膜に、上面及び側面が電極指の横断面の上面及び側面にそれぞれ並行となる断面形状、すなわち電極指の横断面に相似な断面形状の凸部が形成される。よって、絶縁膜の形成により周波数温度特性を改善し得るだけでなく、電極厚みを調整することにより反射係数を効果的に高めることが可能とされた本発明の弾性波装置を提供することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
図1(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る弾性表面波装置を示す略図的平面図及び部分切欠正面断面図である。
弾性波装置としての弾性表面波装置1は、LiTaO3基板2上に、IDT電極3,4及び反射器5,6を形成した構造を有する。IDT電極3,4及び反射器の表面波伝搬方向両側に、反射器5,6が配置されており、本実施形態では、共振子型の弾性表面波フィルタが構成されている。IDT電極3,4は、複数本の電極指3a,4aをそれぞれ有する。共振子型弾性表面波フィルタでは、電極の反射係数が大きいことが求められる。
本実施形態では、反射係数を高めるためにIDT電極3,4は、Alからなり、その規格化膜厚T/λが、0.04以上の範囲とされている。
IDT電極3,4を覆うように、周波数温度特性を改善するために絶縁膜としてSiO2膜7が形成されている。SiO2膜7の周波数温度係数は正の値であり、他方、LiTaO3基板2の周波数温度係数は負の値である。従って、SiO2膜7を形成することにより、弾性表面波フィルタ1の周波数温度係数の絶対値が小さくされている。
また、本実施形態の特徴は、SiO2膜7の表面に凸部7aが形成されており、該凸部7aの断面形状が、下方に位置している電極指3aの横断面形状、すなわちIDT電極の交叉指部と相似とされていることにある。より具体的には、凸部7aは、上面7a1と、上面7a1の両側において上面7a1に連ねられている側面7a2,7a3を有する。上面7a1は、平坦な水平方向に延びる面であり、下方の電極指3aの上面と平行とされている。そして、側面7a2,7a3は、本実施形態では垂直方向に延びており、電極指3aの側面と平行とされている。より好ましくは、図1(b)に示されているように、上記凸部7aの横断面は、電極指3aの横断面と等しい形状とされる。
なお、絶縁膜表面の凸部がIDT電極の交叉指部の横断面形状と相似であればよいのは、IDT電極の交叉指部を覆う絶縁膜が、IDT電極の交叉指部の横断面形状と相似形状であれば本願発明の特性を得ることができるため(IDT電極のバスバー等は、相似形でなくてもよいため)である。
上記凸部7aを有するようにSiO2膜7を加工するには、例えば以下の製造方法を用いることができる。
まず、図2(a)に示すように、LiTaO3基板2を用意し、該LiTaO3基板上にIDT電極3を形成する。IDT電極3の形成は、フォトリソグラフィ−エッチング法などの適宜の方法により行い得る。本実施形態では、IDT電極3は、上記のようにAlからなり、上記範囲の規格化膜厚T/λを有するように形成される。
次に、図2(b)に示すように、SiO2膜7Aを全面に形成する。SiO2膜7Aの形成は、スパッタリングなどの適宜の方法により行い得る。この場合、下方にIDT電極3が形成されているため、形成されたSiO2膜7Aの上面には、丸みを帯びた凹凸が形成されることになる。言い換えれば、電極指3aが位置している上方で上方に突出しており、IDT電極3の電極指3a,3a間の領域において凹んでいるように、SiO2膜7Aの表面に曲面状の凹凸が生じる。
次に、図2(c)に示すように、スピンコーターを用いて、フォトレジスト8を塗布する。そして、IDT電極3に合わせてフォトレジスト8を露光して現像する。このようにして、図3(a)に示すレジストパターン8Aが形成される。このレジストパターン8Aは、下方のIDT電極3と同様の平面形状を有する。
しかる後、反応性イオンエッチングによりSiO2膜7Aをエッチングする。この場合、レジストパターン8Aで被覆されている部分はエッチングされない。
しかる後、レジストパターン8Aを用いて除去する。このようにして図3(b)に示すように、上面7a1と、上面7a1に連なる側面7a2,7a3を有する凸部7aを形成することができる。なお、製造方法では、凸部7a,7a間において、下方の凹んだ溝7bが形成されているが、図2(b)におけるSiO2膜の形成に際し、IDT電極3の電極指3a,3a間における凹みが少なくなるようにSiO2膜を成膜しておけば、図3(c)に示すように、凸部7a間において平坦な底部7cを有するようにSiO2膜7の表面を加工することができる。
図1(b)に戻り、本実施形態の弾性表面波フィルタ1では、SiO2膜の形成により周波数温度特性が改善されるとともに、凸部7aの電極指3aの横断面形状と同方向の断面形状が相似とされているため、後述する実験例から明らかなように、反射係数の低下を抑制することができる。IDT電極の厚みを上記特定の規格化膜厚範囲とすることにより反射係数を高めた場合であっても、従来、SiO2膜の上方に凹凸が形成された場合、反射係数が低下するという問題があった。これに対して、本実施形態では、凸部7aの横断面が、IDT電極の電極指3aの横断面と相似であるため、このような反射係数の低下を効果的に抑制することができる。
次に、具体的な実験例に基づき、上記実施形態における凸部7aの効果を説明する。
36°YカットX伝搬のLiTaO3基板上に、様々な規格化膜厚T/λとなるように、AlからなるIDT電極3を形成し、しかる後規格化膜厚がH/λ=0.2であるSiO2膜を形成し、共振子型の弾性表面波フィルタを作製し、反射係数を求めた。この場合、IDT3の電極指3a上において、図1(b)に示す凸部7aの高さ及び幅が電極指3aの厚み及び幅と等しくなるように反応性イオンエッチングにより加工し、上記凸部7aを形成した。結果を図6に実線で示す。
比較のために、上記反応性イオンエッチングを行わずに、図4に示すように、IDT電極の電極指3aが設けられている部分の上方において、上面17aと、17aに連なる傾斜側面17b,17cを有する凸部17が設けられるように、SiO2膜を形成したことを除いて同様に構成された構造を、第1の従来例の弾性表面波フィルタとして用意した。
また、図5に示すように、H/λが0.2であるSiO2膜27の上面が平坦な構造であることを除いては、上記実施形態と同様にして構成された弾性表面波フィルタを作製した。この弾性表面波フィルタを第2の従来例とした。
第1,第2の従来例の弾性表面波フィルタにおけるIDT電極の規格化膜厚T/λと、反射係数との関係を図6に併せて示す。
図6から明らかなように、第2の従来例では、SiO2膜27の表面が平坦であるため、電極の膜厚を変化させても反射係数は高まらなかった。これに対して、第1の従来例では、SiO2膜の表面に凸部17が形成されているため、電極の規格化膜厚T/λが0.01から0.08に増加するにつれて、反射係数は若干高くなった。
これに対して、上記実施形態では、電極の規格化膜厚T/λを0.01から0.08に増大させるにつれて、反射係数が効果的に高められることがわかる。すなわち、SiO2膜7の凸部7aが電極指3aの横断面と相似な形状とされているため、電極の規格化膜厚T/λを調整することによる反射係数増大効果が確実に得られ、十分な反射係数を得られることがわかる。
図7,図8は、SiO2膜の規格化膜厚H/λを0.25及び0.3としたことを除いては、図6に示した結果を得た場合と同様にして測定された実施形態及び第1,第2の実施例の弾性表面波フィルタの電極規格化膜厚T/λと、反射係数との関係を示す。
図7及び図8から明らかなように、第2の従来例では、SiO2膜の規格化膜厚H/λを0.25及び0.3と変更した場合であっても、電極膜厚を増加させても反射係数は高まらなかった。また、第1の従来例では、電極の規格化膜厚T/λを増大することにより、反射係数は高められるものの、反射係数を改善する効果は十分でないことかわかる。これに対して、実施形態では、SiO2膜の規格化膜厚H/λが0.25及び0.3の場合においても、電極の規格化膜厚T/λを0.01から0.08に高めることにより、反射係数が効果的に高められることがわかる。これは、SiO2膜を形成し、周波数温度特性を改善した場合であっても、上記凸部7aの断面形状が、電極指3aの断面形状と相似であるため、反射係数を高める効果が阻害され難いことによる。
本願発明者の実験によれば、凸部7aにおいては、好ましくは、上記側面7a2,7a3の垂直方向に対する角度が±20°以内であれば、反射係数の低下を10%以下に抑制することができ、好ましいことが確かめられている。また、上記傾斜角度が、±10°以内では、反射係数の低下は5%以下となり、より一層良好な特性の得られることが確かめられている。
また、SiO2膜の膜厚の変化と弾性表面波装置の温度特性の変化を図9に示す。図9からわかるように、SiO2膜が厚くなるにつれて、TCFがマイナスからプラス側に変化している。そして、SiO2膜の規格膜厚(H/λ)が0.10〜0.45の範囲で、TCFがほぼ±30(ppm/℃)以下の良好な温度特性を得ることができる。なお、図9では、Al電極の規格化膜厚(H/λ)が0.06のときの特性を示しているが、弾性表面波装置の温度特性は、Al電極の規格化膜厚が変化してもほとんど変化しない。
なお、上記実施形態では、IDT3,4が設けられた2共振子型の弾性表面波フィルタ1につき説明したが、本発明は様々な弾性表面波共振子や弾性表面波フィルタあるいは弾性表面波装置以外の弾性境界波装置などにも適用することができる。
また、上記実施形態では、AlからなるIDT電極3,4が形成されていたが、IDT電極は、Al合金により形成されていてもよく、またAlまたはAl合金からなる電極層を主たる電極層とするものであってもよく、その場合、主たる電極層にさらに他の金属層からなる電極層が積層されていてもよい。
さらに、SiO2膜7に代えて、他の温度特性改善用絶縁膜を形成してもよい。
(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る弾性表面波装置としての共振子型弾性表面波フィルタの略図的平面図及び要部を示す部分切欠正面断面図。 (a)〜(c)は、図1に示した弾性表面波フィルタの製造方法を説明するための各部分切欠断面図。 (a)及び(b)は、図2に示した実施形態の弾性表面波フィルタの製造方法を示す各部分切欠断面図の続きの各部分切欠断面図、また(c)は、変形例の弾性表面波フィルタの部分切欠正面断面図。 比較のために用意した第1の従来例の弾性表面波フィルタの要部を示す部分切欠正面断面図。 比較のために用意した第2の従来例の弾性表面波フィルタの要部を示す部分切欠正面断面図。 実施形態及び第1,第2の従来例の弾性表面波フィルタにおいて、SiO2膜の規格化膜厚H/λを0.2とし、IDT電極の規格化膜厚T/λを変化させた場合の反射係数の変化を示す図。 実施形態、及び第1,第2の従来例の弾性表面波フィルタにおいて、SiO2膜の規格化膜厚H/λを0.25とし、IDT電極の規格化膜厚T/λを変化させた場合の反射係数の変化を示す図。 実施形態、及び第1,第2の従来例の弾性表面波フィルタにおいて、SiO2膜の規格化膜厚H/λを0.3とし、IDT電極の規格化膜厚T/λを変化させた場合の反射係数の変化を示す図。 SiO2膜の膜厚の変化と弾性表面波装置の温度特性の変化との関係を示す図。 従来の弾性表面波装置を説明するための部分切欠正面断面図。
符号の説明
1…弾性表面波フィルタ
2…LiTaO3基板
3,4…IDT電極
3a…電極指
5,6…反射器
7…SiO2
7a…凸部
7a1…上面
7a2,7a3…側面

Claims (1)

  1. 圧電基板を用意する工程と、
    前記圧電基板上に複数本の電極指を有するIDT電極を形成する工程と、
    前記IDT電極を覆うように絶縁膜を形成する工程と、
    前記絶縁膜を形成した後に、絶縁膜表面において、下方のIDT電極と同じ平面形状を有するレジストパターンを形成する工程と、
    前記レジストパターンを形成した後に、反応性イオンエッチングにより前記絶縁膜をエッチングし、それによってIDTの電極指の上方において、前記絶縁膜表面に、上面及び側面が電極指の横断面の上面及び側面とそれぞれ平行となるように、電極指の横断面に相似である断面形状を有する凸部を形成する工程とを備えることを特徴とする、弾性波装置の製造方法。
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