JP4457525B2 - 距離測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、擬似ランダム雑音符号を用いて変調した電磁波を送受信することにより測定対象物までの距離を測定するスペクトラム拡散方式の距離測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、距離測定装置として、M系列符号(最大周期符号系列)等の擬似ランダム雑音符号(以下、PN符号ともいう)を用いて距離測定を行うスペクトラム拡散方式(以下、SS方式ともいう)の距離測定装置が知られている。
【0003】
この装置では、所定チップ数のPN符号を用いて変調(強度変調)した距離測定用の電磁波を測定対象物に向けて送信し、その送信波が測定対象物に当たって反射してくる反射波を受信し、この受信信号と送信に用いたPN符号との相関値を計算し、相関値が最大となる時刻から、電磁波が測定対象物との間を往復するのに要した時間(延いては測定対象物までの距離)を測定する。
【0004】
特に、相関器としてデジタル相関器を用いる場合には、測定対象物からの反射波の受信信号を2値化し、2値化後の符号と送信に用いたPN符号との相関値を計算する。
従って、SS方式の距離測定装置では、受信信号にノイズが重畳されて、受信信号が送信時のPN符号から少し変化したとしても、その反射波の受信時刻を正確に検出することができ、測定対象物までの距離を正確に測定することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、SS方式の距離測定装置において、距離測定用の電磁波として、レーザ光等の光を用いるようにした場合、電磁波の発生源には、レーザダイオード等の発光素子が使用され、反射波を受信する受信手段には、フォトダイオード若しくはフォトトランジスタ等からなる受光素子(光電変換素子)が使用される。そして、この場合、受光素子から出力される受光信号(受信信号)は、受光素子が設けられた回路の基準電位(一般にグランド電位)を基準に正若しくは負の一方向に変化するものとなる。
【0006】
しかし、このように、受信信号が、グランド電位等の所定の基準電位に対して正若しくは負の一方向に変化する距離測定装置においては、受信信号を2値化してPN符号に対応した受信データを生成するのに用いる判定電圧を、受信信号の信号レベルに対応した信号レベルに設定することが難しく、場合によっては、受信信号を良好に2値化することができなくなるという問題があった。
【0007】
つまり、距離測定装置で得られる受信信号の信号レベルは、距離測定装置と測定対象物との間の距離や測定対象物の種類等によって変化するが、アンテナ等を用いて測定対象物からの反射波(電波)を受信する距離測定装置においては、図6(b)に示すように、受信信号が、グランド電位等の基準電位を中心に正・負に変化することから、受信信号の信号レベルが変化しても、受信信号が基準電位に対して正か負かを判定することにより、受信信号を正確に2値化することができる。
【0008】
これに対して、上記のように、受信信号がグランド電位等の基準電位に対して正若しくは負の一方向に変化する距離測定装置においては、図6(c)に示すように、グランド電位等の基準電位に対する受信信号の信号レベルが0〜正(又は0〜負)に変化し、その変化幅は、距離測定装置と測定対象物との間の距離や測定対象物の種類等によって変動するため、受信信号を正確に2値化するのに使用する判定電圧を一定電圧に設定すると、受信信号を正確に2値化することができず、2値化によって得られる受信データ(符号列)が、電磁波の送信に用いたPN符号と対応しなくなることがあるのである。
【0009】
例えば、図6(d)に示すように、受信信号の信号レベルが低い場合でも、受信信号を2値化して距離測定を行うことができるようにするために、2値化用の判定電圧を基準電位であるグランド電位(GND)近傍のVTH1 に設定すると、図に実線で示すように受信信号の信号レベルが低い場合と、図に点線で示すように受信信号の信号レベルが高い場合とで、2値化後の符号「1」に対応するパルス幅P1、P2が異なる値となってしまい、受信信号の信号レベルが高い場合に、送信時のPN符号に対応した受信データを正確に復元することができなくなってしまう。また、逆に、高レベルの受信信号を正確に2値化できるようにするために、2値化用の判定電圧を比較的高電圧(VTH2 )に設定すると、受信信号の信号レベルが低い場合に判定電圧が受信信号よりも大きくなって、受信信号を2値化できなくなってしまう。
【0010】
そして、このように、受信信号を正確に2値化できない場合には、2値化後の受信信号(2値信号)をサンプリングして、送信時に用いたPN符号との相関計算を行った際に、演算誤差が生じ、距離測定精度が低下してしまう。
尚、図6(b),(c)は、図6(a)に示すような31チップM系列符号を送信信号として測定対象物に電磁波を送信した場合の受信信号の変化を模式的に表すものであり、実際には、受信信号の信号レベルや信号波形は図に示すような綺麗な矩形波とはならず、後述実施例で説明する図4に示す如くなる。
【0011】
一方、こうした問題を解決するためには、2値化用の判定電圧を、受信信号の信号レベルに対応して、そのピーク電圧の1/2の電圧に設定すればよいが、判定電圧をこのように設定するのは、極めて困難である。また、たとえ、受信信号のピーク電圧を検出してその1/2の電圧を判定電圧として設定するようにしたとしても、判定電圧の設定に時間を要することから、受信信号に含まれる最初の符号については正確に2値化することができなくなる。
【0012】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、受信信号が基準電位から正若しくは負の一方向に変化するSS方式の距離測定装置において、2値化用の判定電圧を変化させることなく、受信信号を送信時のPN符号に対応して正確に2値化し、距離測定を高精度に行うことができるようにすることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するためになされた請求項1記載の距離測定装置においては、まず、符号発生手段が、一定周期のクロックに同期して所定チップ数の擬似ランダム雑音符号(PN符号)を順次発生し、送信手段が、擬似ランダム符号に従い距離測定用の電磁波を生成して、その電磁波を測定対象物に向けて送信し、受信手段が、その電磁波が外部の測定対象物に当たって反射してきた反射波を受信し、基準電位に対して正又は負の何れか一方に変化する受信信号を出力する。
【0014】
次に、受信手段からの受信信号は、2値化手段に入力され、2値化手段は、その受信信号と予め設定された判定電圧とを比較することで、受信信号を2値化する。すると、相関値演算手段が、その2値化された受信信号(2値信号)を、符号発生手段がPN符号を生成するのに用いたクロックに同期してサンプリングし、そのサンプリングにより得られた受信データと符号発生手段が発生したPN符号との相関値を演算する。
【0015】
そして、距離演算手段が、相関値演算手段による演算結果に基づき電磁波が測定対象物との間で往復するのに要した時間を求め、その時間から測定対象物までの距離を算出する。
ところで、本発明の距離測定装置においては、受信手段が、基準電位に対して正又は負の何れか一方に変化する受信信号を出力することから、従来のように、受信手段からの受信信号を2値化手段にそのまま入力するようにすると、受信信号が測定対象物からの反射波に対応する場合であっても、2値化手段において、送信時のPN符号に対応した2値信号を復元できなることがある。
【0016】
そこで、本発明の距離測定装置には、更に、信号処理手段と送信開始タイミング制御手段とが設けられている。
即ち、本発明の距離測定装置においては、信号処理手段が、受信手段から出力される受信信号の中から、送信手段が生成した電磁波の周波数成分よりも低い周波数の信号成分を除去することで、その信号成分除去後の受信信号が2値化手段に入力されるようにし、送信開始タイミング制御手段が、符号発生手段に対して、相関値演算手段が2値信号のサンプリングを開始する前から、受信手段が測定対象物からの反射波の受信を開始してから信号処理手段での受信信号の直流電圧レベルが安定するのに要する安定化時間に対応したクロック数分以上余分に、PN符号を発生させることで、送信手段からの電磁波の送信開始タイミングを距離測定開始タイミングよりも早くする。
【0017】
つまり、本発明のように、受信手段から2値化手段に至る受信信号の入力経路に低周波信号成分除去用の信号処理手段(例えば、ハイパスフィルタ、カップリングコンデンサ等)を設けて、2値化手段に入力される受信信号の中から低周波信号成分を除去するようにした場合、受信手段が測定対象物からの反射波を受信していない状態では、2値化手段の入力は、2値化手段を構成するコンパレータ等の回路素子の基準電位(グランド電位等)に保持される。
【0018】
そして、この状態で、受信手段が測定対象物からの反射波の受信を開始すると、2値化手段に入力される受信信号は、一時的に、正若しくは負方向に大きく変動し、受信信号の変動中心も同様に変化するが、その後、受信信号の変動中心(換言すれば直流電圧レベル)は、当該装置の基準電位(一般にグランド電位)に安定することになる(後述の図4参照)。
【0019】
このため、本発明では、受信手段から2値化手段に至る受信信号の入力経路に信号処理手段を設け、更に、符号発生手段から、信号処理手段から出力される受信信号の直流電圧レベルが安定するのに要する安定化時間に対応したクロック数分以上余分にPN符号を発生させて、送信手段からの電磁波の送信開始タイミングを距離測定開始タイミングよりも早くすることにより、距離測定開始後(詳しくは相関値演算手段による2値信号のサンプリング時)に、2値化手段において、距離測定用のPN符号に対応した2値信号を正確に復元できるようにしているのである。
【0020】
よって、本発明によれば、距離測定用の電磁波として光を用いる距離測定装置のように、受信手段にて得られる受信信号がグランド電位等の基準電位に対して正若しくは負の一方向にのみ変化する距離測定装置において、受信信号のレベル変動に対応して判定電圧を変化させることなく、受信信号を正確に2値化することができるようになり、従来装置に比べて、測定可能距離を長くし、且つ、距離測定精度を向上することが可能となる。
【0021】
ここで、本発明のように、符号発生手段からPN符号を余分に発生させることで、2値化手段による受信信号の2値化精度を高めるには、単に、受信手段が測定対象物からの反射波の受信を開始してから、2値化手段に入力される受信信号が安定するのに要する時間分だけ、符号発生手段からPN符号を余分に発生させるようにしても良い。
【0022】
しかし、このようにすると、相関値演算手段での2値信号のサンプリング期間を、少なくとも、距離測定に用いるPN符号の一周期分の時間に、当該装置で測定すべき最大距離を電磁波が往復するのに要する時間(最大往復時間)を加えた時間以上に設定しなければならず、そのサンプリングにより得られた受信データから測定対象物との間の距離を求めるためには、その受信データの中から、PN符号の一周期分(換言すれば所定チップ長分)のデータを順に取り出し、その取り出した全てのデータに対して、距離測定用のPN符号との相関演算を行わなければならなくなる。
【0023】
つまり、符号発生手段から余分に発生させるPN符号の発生時間を、単に、2値化手段に入力される受信信号が安定するのに要する時間に対応させた場合には、相関値演算手段が2値信号のサンプリングを開始してから測定対象物からの反射波が届くまでの時間が、測定対象物との間の距離によって変化することになるので、相関値演算手段では、PN符号のチップ長に対応した時間に上述した最大往復時間を加えた時間以上、2値信号のサンプリングを行わなければならず、この結果、相関値演算手段での相関演算すべきデータ量が多くなって、その演算処理が複雑になってしまうのである。
【0024】
また、この場合、当該装置と測定対象物との間の距離が長いと、受信手段に測定対象物からの反射波が届いてから2値化手段に入力される受信信号が安定化するまでの安定化時間中にも、2値化手段が受信信号を2値化することになるので、相関値演算手段による演算結果に誤差が生じることも考えられる。
【0025】
そこで、こうした問題を防止するには、送信開始タイミング制御手段を、請求項2に記載のように構成するとよい。
つまり、請求項2に記載の距離測定装置においては、送信開始タイミング制御手段が、符号発生手段に対して、相関値演算手段が2値信号のサンプリングを開始する前から、電磁波が当該装置で測定すべき最大測定距離を往復するのに要する最大往復時間に上述した安定化時間を加えた時間に対応したクロック数分だけ余分に、PN符号を発生させる。
【0026】
この結果、請求項2に記載の距離測定装置において、相関値演算手段は、受信手段に測定対象物からの反射波が届き、信号処理手段から直流電圧レベルが安定した受信信号が2値化手段に入力されるようになってから、2値信号のサンプリング動作に入ることになる。
【0027】
よって、請求項2に記載の距離測定装置によれば、受信手段にて測定対象物からの反射波が受信されない期間中に相関値演算手段が2値信号のサンプリングに入るのを防止して、相関値演算手段による演算結果に誤差が生じるのを防止できる。また、相関値演算手段における不要なサンプリング動作を防止できるので、サンプリングにより得られるデータ量を少なくして、相関値演算手段による演算処理を簡素化できる。
【0028】
そして、請求項2に記載の距離測定装置において、相関値演算手段による2値信号のサンプリング動作を必要最小限に抑えて、相関値の演算をより効率よく実行させるには、符号発生手段、相関値演算手段、及び距離演算手段を、請求項3に記載のように構成するとよい。
【0029】
即ち、請求項3に記載の距離測定装置においては、相関値演算手段が、2値信号のサンプリング開始後、PN符号のチップ数に対応したクロック数分だけ2値信号をサンプリングし、そのサンプリングにより得られた受信データと、サンプリング期間中に符号発生手段が発生したPN符号である送信データとの相関値を、各データを相対的に1ビットずつ順にシフトさせて演算する。そして、距離演算手段は、相関値演算手段にて演算された相関値が最大となったときの受信データと送信データとの位相差から、電磁波が測定対象物との間で往復するのに要した時間を求め、測定対象物までの距離を算出する。
【0030】
この結果、請求項3に記載の距離測定装置によれば、相関値演算手段による2値信号のサンプリング数(換言すればデータ量)を、距離測定用のPN符号のチップ数に制限して、相関値演算手段での演算処理を簡単にすることができる。
一方、本発明の距離測定装置においては、受信手段として、基準電位に対して正又は負の何れか一方に変化する受信信号を出力するものが使用されるが、このような受信手段としては、一般的には、光を送受信する際に用いられる受光素子が知られている。
【0031】
従って、本発明は、特に、請求項4に記載のように、送信手段が、距離測定用の電磁波として光を発生する発光素子と、この発光素子をPN符号に従い駆動する駆動回路とから構成され、受光手段が、発光素子から出射された光が測定対象物に当たって反射してくる反射光を受光する受光素子から構成された距離測定装置に適用することにより、上記効果を有効に発揮することができる。
【0032】
尚、本発明は、距離測定用の電磁波として光を使用するものに限定されるものではなく、受信手段が、基準電位に対して正又は負の何れか一方に変化する受信信号を出力するものであれば、電磁波として電波を使用する距離測定装置であっても適用できる。例えば、受信手段が、一端が設置されたLC共振回路からなる共振アンテナにて構成され、測定対象物からの反射波(電波)をその共振アンテナにて受信するようにされた距離測定装置であれば、共振アンテナにて得られる受信信号は、基準電位(この場合グランド電位)に対して正又は負の何れか一方に変化することになるので、本発明は、このような装置であっても適用できる。
【0033】
一方、信号処理手段としては、受信信号に含まれる低周波信号成分を除去するためのものであることから、ハイパスフィルタや、低周波信号遮断用のカップリングコンデンサ等を用いることができるが、一般に受信手段からの受信信号は微弱であることから、信号処理手段に信号増幅機能を持たせてもよい。そして、このためには、請求項5に記載のように、信号処理手段を、受信信号の中から上述した低周波信号成分を除去するフィルタ手段を備えた増幅回路にて構成すればよい。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明が適用された実施例のSS方式の距離測定装置の構成を表す構成図である。
【0035】
本実施例の距離測定装置は、例えば、自動車に搭載されて、車両前方の測定対象物(前方を走行する先行車両や障害物等)までの距離を測定するために用いられるものであり、図1に示すように、距離測定用のレーザ光を車両前方に向けて出射する発光部2を備える。発光部2は、発光素子としてレーザダイオードLDを備え、レーザダイオードLDへの通電・非通電がLD駆動回路4によって切り換えられることにより、距離測定用のレーザ光を出射する。
【0036】
また、LD駆動回路4は、送信信号発生部6から一定周期(例えば、周波数:20MHz)のクロック(以下、動作クロックという)CKに同期して順次出力される送信信号(詳しくはPN符号)に応じて、レーザダイオードLDへの通電・非通電を切り換える。
【0037】
即ち、LD駆動回路4は、送信信号発生部6からの送信信号が、値「1」を表すHighレベルであるとき、レーザダイオードLDへ通電してレーザ光を出射させ、送信信号が値「0」を表すLow レベルであるとき、レーザダイオードLDへの通電を遮断してレーザ光の出射を停止させる。
【0038】
尚、送信信号発生部6は、CPU,ROM,RAM等からなるマイクロコンピュータ(以下単にCPUという)20から送信開始信号を受けると、その後、CPU20から送信停止信号が入力される迄の間、所定チップ数のPN符号(例えば、31チップM系列符号)を繰り返し生成し、その生成したPN符号を送信信号としてLD駆動回路4に出力するものであり、本発明の符号発生手段として機能する。また、LD駆動回路4及び発光部2は、本発明の送信手段に相当する。
【0039】
次に、本実施例の距離測定装置には、発光部2から出射されたレーザ光が車両前方の測定対象物に当たって反射してくる反射光を受光する、受信手段としての受光部8が備えられている。受光部8は、受光素子として、電流検出用の抵抗等を介して電源ラインに逆バイアス状態で接続されたフォトダイオードPDを備え、フォトダイオードPDにレーザ光(測定対象物からの反射光)が入射することにより流れた光電流を電圧信号に変換して出力する。そして、この受光部8にて光電変換された信号(受信信号)は、直流〜低周波信号成分遮断用のハイパスフィルタ(HPF)10を介して、増幅回路12に入力され、この増幅回路12にて所定レベルまで増幅された後、コンパレータ14に入力される。尚、HPF10及び増幅回路12は、本発明(特に請求項5に記載)の信号処理手段に相当し、その内、HPF10は、請求項5に記載のフィルタ手段に相当する。
【0040】
次に、コンパレータ14は、増幅回路12を介して入力される受信信号を2値化するためのものであり、その受信信号と予め設定された判定電圧とを比較し、受信信号が判定電圧よりも大きいときにHighレベルとなり、受信信号が判定電圧以下であるときにLow レベルとなる2値信号を発生する。そして、この2値信号は、相関器16に入力される。尚、コンパレータ14は、本発明の2値化手段に相当する。
【0041】
相関器16は、予めセットされているリファレンスコードとコンパレータ14から入力される2値信号との相関値を演算するものであり、本発明の相関演算手段に相当する。そして、特に、本実施例では、相関器16は、リファレンスコードと2値信号との相関値を演算するに当たって、CPU20から出力される相関開始信号及び相関停止信号に従い、PN符号一周期分の時間、上記動作クロックに同期して、コンパレータ14からの2値信号をサンプリングし、そのサンプリングした受信データとリファレンスコードとの相関値を、これら各データを相対的に1ビットずつ順にシフトさせて演算し、相関値が最大となるときの各データの位相差をCPU20に出力するようにされている。
【0042】
尚、リファレンスコードは、2値信号のサンプリング期間中に送信信号発生部6が発生するPN符号一周期分を予め相関器16に送ることにより、相関器16にセットされる。
一方、CPU20は、相関器16から測定データとして出力される位相差に基づき、発光部2からのレーザ光が測定対象物に当たって反射してくる迄のレーザ光の往復時間を求め、その時間から測定対象物までの距離を算出する。
【0043】
以下、CPU20において距離測定のために実行される距離測定処理について、図2に示すフローチャートに沿って説明する。
図2に示すように、距離測定を行うに当たって、CPU20は、まず、送信信号発生部6に送信開始信号を出力する(S110)。この結果、送信信号発生部6では、所定チップ長のPN符号が繰り返し生成され、これが送信信号としてLD駆動回路4に出力されて、発光部2からPN符号に応じたレーザ光が出射される。
【0044】
こうして、発光部2がPN符号に対応したレーザ光の出射を開始すると、CPU20は、その後、予め設定された遅延時間が経過したか否かを判断することにより、遅延時間が経過するのを待ち(S120)、遅延時間が経過すると、相関器16に対して、相関開始信号を出力する(S130)。すると、相関器16は、送信信号発生部6がPN符号を発生するのに用いるクロックと同じクロックを用いて、コンパレータ14から入力される2値信号をサンプリングし、これを受信データとして順に記憶する。
【0045】
次に、CPU20は、相関開始信号出力後、送信信号発生部6が所定チップ長のPN符号を出力するのに要するPN符号一周期分の時間(サンプリング期間)が経過したか否かを判断することにより、サンプリング期間が経過するのを待ち(S140)、サンプリング期間が経過すると、送信停止信号及び相関停止信号を、送信信号発生部6及び相関器16に夫々出力する(S150)。
【0046】
この結果、送信信号発生部6は、PN符号の生成(換言すれば送信信号の出力)を停止し、相関器16は、2値信号のサンプリングを終了して、そのサンプリングしたPN符号一周期分の受信データと、そのサンプリング期間中に送信信号発生部6が発生したPN符号であるリファレンスコードとの相関値を演算し、相関値が最大となるときの各データの位相差をCPU20に出力する。
【0047】
このため、CPU20は、送信停止信号及び相関停止信号の出力後は、相関器16から相関値の演算結果(相関値が最大となる受信データとリファレンスコードとの位相差)を取り込み、この位相差から、発光部2からのレーザ光が測定対象物との間で往復するのに要した時間を求め、この時間から測定対象物までの距離を算出する(S160)。
【0048】
ここで、CPU20が、送信信号発生部6に送信開始信号を出力してから、相関器16に相関開始信号を出力する迄の遅延時間は、図3に示すように、測定対象物からの反射光が受光部8に届いてから、HPF10及び増幅回路12を介してコンパレータ14に入力される受信信号の直流電圧レベルが安定するのに要する安定化時間(本実施例では1.5μsec.)と、本実施例の距離測定装置において測定対象となっている最大距離(本実施例では200m)をレーザ光が往復するのに要する最大往復時間(本実施例では1.33μsec.)とを加えた時間(2.88μsec.)である。
【0049】
以下、この理由を詳しく説明する。
まず、図4は、送信信号発生部6が20MHzの動作クロックで31チップM系列符号を2周期に渡って送信信号として生成し、発光部2がその送信信号に応じてレーザ光を出射し、受光部8がそのレーザ光を直接(距離:零)受光した場合の、コンパレータ14に入力される受信信号とコンパレータ14から出力される2値信号との関係を表す説明図である。
【0050】
この図から明らかなように、本実施例の距離測定装置には、受光部8からコンパレータ14に至る受信信号の経路上にHPF10が設けられているため、受光部8に測定対象物からの反射光が入射した直後には、コンパレータ14の受信信号入力端子は、コンパレータ14の基準電位(グランド電位「0」)から、受光部8からの出力の変化方向(本実施例では正「+」方向)に大きく変化する。また、受光部8に入射する測定対象物からの反射光はPN符号によって強度変調(換言すれば振幅変調)されているため、受光部8からの出力は、グランド電位「0」からレーザ光の強度に応じた所定の正電位までの間で変化する。
【0051】
従って、受光部8に測定対象物からの反射光が入射した直後のコンパレータ14の入力電位は、グランド電位「0」と増幅回路12で増幅された受信信号の振幅に対応した正電位との間で変動し、その変動中心(換言すれば受信信号の直流電圧レベル)は、グランド電位「0」よりも高い正電圧となる。
【0052】
しかし、PN符号に対応した反射光が受光部8に入力され続けると、HPF10及び増幅回路12を介してコンパレータ14に入力される受信信号の変動中心(つまり直流電圧レベル)は、徐々に低下し、最終的(本実施例の場合、1.5μsec.経過後)には、グランド電位「0」で安定する。
【0053】
そして、コンパレータ14に入力される受信信号の直流電圧レベルがグランド電位「0」で安定するまでは、コンパレータ14にて、送信時のPN符号に対応した2値信号を正確に復元することはできないものの、コンパレータ14に入力される受信信号の直流電圧レベルがグランド電位「0」で安定した後は、判定電圧に基準電位(つまりグランド電位)を設定しておくことにより、コンパレータ14にて、送信時のPN符号に対応した2値信号を正確に復元することができる。
【0054】
そこで、本実施例では、CPU20が送信開始信号を出力して発光部2からのレーザ光の出射を開始させた後、CPU20が相関開始信号を出力して相関器16による2値信号のサンプリングを開始させるまでの遅延時間(換言すれば、相関器16に対して2値信号のサンプリングを開始させる前に発光部2からPN符号に対応したレーザ光を余分に出射させる時間)として、コンパレータ14に入力される受信信号の直流電圧レベルが安定するのに要する安定化時間(本実施例では、1.5μsec.)以上の時間を設定することにより、コンパレータ14にて、PN符号に対応した2値信号を正確に復元できるようにしているのである。
【0055】
尚、本実施例において、HPF10は、受信信号の直流信号成分を遮断するためのものであり、そのカットオフ周波数を高く設定しすぎると、測定対象物からの反射波に含まれる信号成分が遮断されてしまうことがあるので、カットオフ周波数はできるだけ低い値に設定することが望ましい。
【0056】
例えば、上記のように距離測定に用いるPN符号が31チップM系列符号であり、このPN符号により発光部2を制御する際の動作クロックが20MHzであるとすると、31チップM系列符号で符号が1又は0で連続する最大回数は5回であるため、送・受信信号に含まれる最低周波数成分は、PN符号10チップを1周期とする2MHzとなり、HPF10のカットオフ周波数は、少なくとも2MHzよりも小さい周波数に設定する必要があり、受信信号がHPF10の影響を受けるのを確実に防止するには、そのカットオフ周波数を100kHz程度に設定するとよい。
【0057】
また、本実施例では、遅延時間として、上述した安定化時間をそのまま設定するのではなく、この安定化時間(1.5μsec.)に、測定対象となっている最大距離(本実施例では200m)をレーザ光が往復するのに要する最大往復時間(本実施例では1.33μsec.)を加えた時間(2.88μsec.)を設定しているが、これは、以下の理由による。
【0058】
つまり、送信信号発生部6が20MHzの動作クロックで31チップM系列符号を2周期に渡って送信信号として生成し、発光部2がその送信信号に応じてレーザ光を出射するようにした場合、図5に示すように、測定対象物との距離が零(0m)であれば、受光部8からその送信信号に対応した受光信号が応答遅れなく出力されるが、測定対象物との距離が測定対象となる最大距離(200m)であれば、受光部8からは、送信信号に対して最大往復時間(1.33μsec.)だけ遅れて受光信号が出力されることになる。
【0059】
従って、遅延時間として、上述した安定化時間(1.5μsec.)をそのまま設定して、測定対象物との間の距離を0〜200mの範囲で正確に測定できるようにするには、相関器16での2値信号のサンプリング期間を、PN符号1周期分の時間(1.55μsec.)にレーザ光の最大往復時間(1.33μsec.)を加えた時間以上に設定する必要がある。
【0060】
そして、この場合には、相関器16でサンプリングされる2値信号のデータ量が多くなり、相関器16での相関演算が複雑になってしまう。また、この場合、相関器16でサンプリングされる2値信号には、距離測定対象となる範囲内(200m内)に測定対象物が存在していたとしても、その測定対象物からの反射光とは関係のない信号が含まれることになるので、距離測定精度が低下する虞もある。
【0061】
そこで、本実施例では、遅延時間として、安定化時間(1.5μsec.)と最大往復時間(1.33μsec.)とを加えた時間を設定することにより、距離測定対象となる範囲内(200m内)に測定対象物が存在している場合に、相関器16において、測定対象物からの反射光に対応し、且つ安定した2値信号を、確実にサンプリングできるようにしているのである。
【0062】
従って、本実施例の距離測定装置によれば、受光部8からの受光信号が基準電位(グランド電位)から一方向(本実施例では正方向)に変化するにも関わらず、受信信号から距離測定に用いるPN符号に対応した2値信号を復元し、その復元した2値信号とPN符号との相関演算によって、測定対象物までの距離を正確に測定することができるようになる。
【0063】
また、相関器16で2値信号をサンプリングすることにより得られるデータ量は、相関演算に最低必要なPN符号一周期分であり、相関器16で2値信号を余分にサンプリングする必要がないので、相関器16での相関演算(延いては相関器16の構成)を簡単にし、しかも、その演算結果から測定対象物までの距離を精度よく求めることができるようになる。
【0064】
尚、本実施例においては、CPU20において実行されるS110〜S130の処理が、本発明の送信開始タイミング制御手段に相当し、S160の処理が、本発明の距離演算手段に相当する。また、S140,S150の処理は、相関器16を請求項3に記載の相関値演算手段として機能させるための処理である。
【0065】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
例えば、上記実施例では、増幅回路12の前段にHPF10を設けて、受光部8からの受信信号の中から、直流〜低周波信号成分を除去するものとして説明したが、例えば、増幅回路12として、複数段の増幅素子からなり、各増幅素子間に、低周波信号成分カット用のカップリングコンデンサを備えた高周波増幅回路を用いた場合には、そのカップリングコンデンサによって、受信信号の中から直流〜低周波信号成分を除去することができるので、本実施例のようにHPF10を別途設けることなく、本発明を実現できる。
【0066】
また、上記実施例では、送信信号発生部6からPN符号を余分に発生させる時間(つまり遅延時間)として、安定化時間(1.5μsec.)と最大往復時間(1.33μsec.)とを加えた時間を設定するものとして説明したが、遅延時間として単に安定化時間を設定した場合であっても、相関器16では、PN符号に対応した2値信号をサンプリングすることができるので、従来装置に比べて、距離測定精度を向上することができる。
【0067】
また、上記実施例では、距離測定用の電磁波としてレーザ光を用いる距離測定装置について説明したが、本発明は、距離測定用の電磁波を受信する受信手段からの出力が基準電位に対して正又は負の一方向にのみ変化する距離測定装置であれば、上記実施例と同様に適用して、同様の効果を得ることができる。
【0068】
具体的には、例えば、距離測定用の電磁波として、ミリ波を用い、これを一端がグランド等の基準電位に接地された共振アンテナで受信するようにした距離測定装置であっても、受信信号は、その基準電位に対して正又は負の一方向にのみ変化することになるので、こうした距離測定装置であっても、本発明を適用することにより、上記実施例と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例のSS方式の距離測定装置の構成を表す構成図である。
【図2】 実施例のCPUにて実行される距離測定処理を表すフローチャートである。
【図3】 実施例の距離測定装置の動作を説明するタイムチャートである。
【図4】 実施例のコンパレータに入力される受信信号及びコンパレータから出力される2値信号の変化を説明する説明図である。
【図5】 実施例の距離測定装置と測定対象物との距離によって変化する受信信号を説明する説明図である。
【図6】 従来技術の問題を説明する説明図である。
【符号の説明】
2…発光部、4…LD駆動回路、6…送信信号発生部、8…受光部、10…HPF(ハイパスフィルタ)12…増幅回路、14…コンパレータ、16…相関器、20…CPU(マイクロコンピュータ)。
Claims (5)
- 一定周期のクロックに同期して所定チップ数の擬似ランダム雑音符号を順次発生する符号発生手段と、
該符号発生手段が発生した擬似ランダム符号に従い距離測定用の電磁波を生成すると共に、該電磁波を測定対象物に向けて送信する送信手段と、
該送信手段が送信した電磁波が外部の測定対象物に当たって反射してくる反射波を受信し、基準電位に対して正又は負の何れか一方に変化する受信信号を出力する受信手段と、
該受信手段からの受信信号と予め設定された判定電圧とを比較することで、前記受信信号を2値化する2値化手段と、
該2値化手段にて2値化された2値信号を前記クロックに同期して順次サンプリングし、該サンプリングにより得られた受信データと前記符号発生手段が発生した擬似ランダム雑音符号との相関値を演算する相関値演算手段と、
該相関値演算手段による演算結果に基づき前記電磁波が測定対象物との間で往復するのに要した時間を求め、該時間から前記測定対象物までの距離を算出する距離演算手段と、
を備えたスペクトラム拡散方式の距離測定装置において、
前記受信手段から出力される受信信号の中から、前記送信手段が生成した電磁波の周波数成分よりも低い周波数の信号成分を除去し、該信号成分除去後の受信信号を前記2値化手段に出力する信号処理手段と、
前記符号発生手段に対して、前記相関値演算手段が前記2値信号のサンプリングを開始する前から、前記受信手段が前記反射波の受信を開始してから前記信号処理手段での受信信号の直流電圧レベルが安定するのに要する安定化時間に対応したクロック数分以上余分に、前記擬似ランダム雑音符号を発生させることで、前記送信手段からの電磁波の送信開始タイミングを距離測定開始タイミングよりも早くする送信開始タイミング制御手段と、
を備えたことを特徴とする距離測定装置。 - 前記送信開始タイミング制御手段は、前記符号発生手段に対して、前記相関値演算手段が前記2値信号のサンプリングを開始する前から、前記電磁波が当該装置で測定すべき最大測定距離を往復するのに要する最大往復時間に前記安定化時間を加えた時間に対応したクロック数分だけ余分に、前記擬似ランダム雑音符号を発生させることを特徴とする請求項1記載の距離測定装置。
- 前記相関値演算手段は、前記2値信号のサンプリング開始後、前記擬似ランダム雑音符号のチップ数に対応したクロック数分だけ前記2値信号をサンプリングし、該サンプリングにより得られた受信データと、該サンプリング期間中に前記符号発生手段が発生した擬似ランダム雑音符号である送信データとの相関値を、各データを相対的に1ビットずつ順にシフトさせて演算し、
前記距離演算手段は、前記相関値演算手段にて演算された相関値が最大となったときの前記各データの位相差から、前記電磁波が前記測定対象物との間で往復するのに要した時間を求め、前記測定対象物までの距離を算出することを特徴とする請求項2記載の距離測定装置。 - 前記送信手段は、前記距離測定用の電磁波として光を発生する発光素子と、該発光素子を前記擬似ランダム雑音符号に従い駆動する駆動回路とからなり、
前記受信手段は、前記発光素子から出射された光が測定対象物に当たって反射してくる反射光を受光する受光素子からなることを特徴とする請求項1〜請求項3何れか記載の距離測定装置。 - 前記信号処理手段は、前記受信手段から出力される受信信号の中から、少なくとも前記送信手段が生成した電磁波の周波数成分よりも低い周波数の信号成分を除去するフィルタ手段を備えた増幅回路からなり、低周波信号成分除去後の受信信号を増幅して、前記2値化手段に出力することを特徴とする請求項1〜請求項4何れか記載の距離測定装置。
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