JP4457213B2 - リチウムフェライト系複合酸化物の製造方法 - Google Patents

リチウムフェライト系複合酸化物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムフェライト系複合酸化物の製造方法に関する。
現在我が国において、携帯電話、ノートパソコンなどのポータブル機器に搭載されている二次電池の殆どは、リチウムイオン二次電池である。また、リチウムイオン二次電池は、今後電気自動車、電力負荷平準化システムなどの大型電池としても実用化されるものと予測されており、その重要性はますます高まっている。
現在、リチウムイオン二次電池においては、正極材料として主にリチウムコバルト酸化物(LiCoO2)材料を使用し、負極材料として黒鉛などの炭素材料を使用している。
特に、正極材料としてのLiCoO2は、電池の作動電圧(正極中の遷移金属の酸化還元電位と負極元素の酸化還元電位との差)、充放電容量(正極から脱離・挿入可能なLi量)などの電池性能に関連する重要な材料であるので、今後需要が一層増大するものと予測されている。しかしながら、この化合物は、希少金属であるコバルトを多量に含むために、リチウムイオン二次電池の高コスト要因の一つとなっている。さらに、現在すでに全世界のコバルト生産量の約20%が電池産業において用いられていることを考慮すれば、LiCoO2からな
る正極材料のみでは、今後の需要拡大に対応可能かどうかは、不明である。
現在、より安価で資源的制約の少ない正極材料として、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(LiMn2O4)などが知られており、一部はLiCoO2に代替して実
用化されている。しかしながら、これらの材料は、電池充電時の安全性の問題(LiNiO2)、50℃以上でのマンガンの溶解による顕著な特性劣化(LiMn2O4)などの問題点を有している
ので、これら材料によるLiCoO2の代替は、予期された程には進展していない。
さらに、マンガンおよびニッケルに比べて、資源的により一層豊富であり、毒性が低く、安価な鉄を含むリチウムフェライト(LiFeO2)について、電極材料としての可能性が検討されている。しかしながら、通常の鉄源とLi源とを用いて高温焼成により得られるリチウムフェライトは、殆ど充放電しないので、リチウムイオン二次電池の正極材料としての活性を有していない。
一方、α-NaFeO2またはFeOOHを出発物質として、H/Liイオン交換法あるいはNa/Liイオ
ン交換法を用いて得られるLiFeO2は、4V付近に充電平坦電位を有しているものの、放電電位は3V以下である(下記特許文献1および特許文献2参照)。このイオン交換法により得られたLiFeO2の放電電位は、LiCoO2の放電電位に比べて、約1V以上低く、前者材料による後者材料の代替は、かなり困難である。この様に、実用的レベルに達するリチウムフェライトの製造技術は、未だ確立されていない。
リチウム二次電池において、リチウムフェライト系酸化物がLiCoO2に代替しうる正極材料であるか否かの判断基準としては、4V付近に鉄の3+/4+酸化還元に伴う放電平坦電位を
有するか否かという点がある。本発明者らは、リチウムフェライトとリチウムマンガン酸化物(Li2MnO3)との固溶体(Li1+x(Fe0.5Mn0.5)1-xO2, 0≦x≦1/3。以下「鉄含有Li2MnO3」と略記する)を形成させることにより、4V領域に鉄の3+/4+酸化還元に伴う放電平坦電位を有する化合物が得られることを見出した(下記特許文献3および特許文献4参照)。しかしながら、この材料のもつ4V領域の充放電容量は、充放電試験サイクル数の増加とともに劣化するという問題があり、現時点では、上記の方法では、実用化のために必要な高容量
を有しかつサイクル劣化の少ない材料は得られていないので、さらに技術的改善が必要である(下記非特許文献1参照)。
また、本発明者らは、ニッケルイオンを鉄含有Li2MnO3相に固溶させること(以下、こ
の固溶体を「鉄及びニッケル含有Li2MnO3」と略記する)により、低い電流密度(7.5mA/g)下では充放電曲線のサイクル数増大に伴う変化を抑制できることを見出している(下記特
許文献5参照)。しかしながら、鉄含有Li2MnO3系正極材料を実用化するためには、より高い電流密度下(たとえば40mA/g以上)においてサイクル劣化を生じることなく高容量(90mAh/g以上)を得ることがきわめて重要である。
また、上記した鉄及びニッケル含有Li2MnO3は、鉄、マンガン及びニッケルを含有する
共沈物を得た後、リチウム塩及び酸化剤と共に水熱反応を行って均一な生成物を形成し、その後焼成することによって作製されている。しかしながら、この様な製造方法では、水熱反応を含むために製造工程が煩雑であり、しかも、水熱反応において酸化剤が必要であるため、製造コストが高くなるという欠点がある。
従って、この様な煩雑な製造工程を経ることなく、比較的低コストで実施可能な方法によって、高い電流密度下において高容量を有し、しかもサイクル劣化の少ないリチウム二次電池用正極材料を得ることが望まれている。
更に、この様な方法で得られた材料をリチウムイオン二次電池用正極として実用化するためには、実用化の進んでいる安価で資源的制約の少ない正極材料、例えば、リチウムマンガンスピネル(Li1+δMn2-δO4(0<δ<0.33))に対して優位な特性を有することも重
要な要件となる。
特開平10-120421号公報 特開平8-295518号公報 特開2002-68748号公報 特開2002-121026号公報 特開2003-48718号公報 田渕光春ほか、「鉄含有Li2MnO3の充放電特性改善方法の検討」、電気化学会第68回大会、神戸、2001年4月
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、リチウム二次電池用正極材料として優れた特性を有する材料を、煩雑な工程を要することなく、低コストで製造することができ、しかも、既存の実用化の進んでいる低価格の正極材料と比較して、より優れた充放電特性を有する材料を得ることが可能な新規な製造方法を提供することである。
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、マンガン、鉄及びニッケルを含む共沈物を0℃以下の液温で作製する場合には、水熱反応を行うことなく、リチウム化合物を添加して焼成するだけで、鉄及びニッケル含有Li2MnO3を得るこ
とができ、しかも、驚くべきことに、得られた物質は、従来知られている鉄及びニッケル含有Li2MnO3と比べてより一層優れた充放電特性を有するものとなることを見出した。更
に、この方法で得られた物質は、リチウムマンガンスピネル等の比較的安価な原料を用いた既存の正極材料と比較した場合に、例えば炭素負極を用いた60℃程度の高温充放電条件下において、高容量を有するものであることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明は、下記に示すリチウムフェライト系複合酸化物の製造方法、その製造方法によって製造されたリチウムフェライト系複合酸化物、リチウムイオン二次電池用正極材料およびリチウムイオン二次電池を提供する。
1.マンガン化合物、鉄化合物およびニッケル化合物を含む混合水溶液を0℃以下の液温下でアルカリ性として沈殿物を形成し、得られた沈殿生成物をリチウム化合物とともに焼成することを特徴とする、組成式Li1+x(Mn1-m-nFenNim)1-xO2 (但し、0<x<1/3、0.01≦m≦0.50、0.05≦n≦0.75、0.06≦m+n<1) で表されるリチウムフェライト系複合酸化物の製造方法。
2.焼成を酸化性雰囲気中で行うことを特徴とする上記項1に記載のリチウムフェライト系複合酸化物の製造方法。
3.上記項1又は2に記載の製造方法によって得られた、層状岩塩型構造を有するリチウムフェライト系複合酸化物。
4.上記項3に記載の層状岩塩型構造を有するリチウムフェライト系複合酸化物からなるリチウムイオン二次電池用正極材料。
5.上記項4に記載のリチウム二次電池用正極材料を構成要素とするリチウムイオン二次電池。
本発明の製造方法は、マンガン化合物、鉄化合物およびニッケル化合物を含む混合水溶液を0℃以下の液温下においてアルカリ性として沈殿物を形成し、得られた沈殿生成物をリチウム化合物とともに焼成する方法である。
この方法によれば、水熱合成という煩雑な操作を行うことなく、簡便な製造方法によって、低コストで組成式:Li1+x(Mn1-m-nFenNim)1-xO2 (但し、0<x<1/3、0.01≦m≦0.50
、0.05≦n≦0.75、0.06≦m+n<1) で表されるリチウムフェライト系複合酸化物を得るこ
とができる。得られるリチウムフェライト系複合酸化物は、リチウムイオン二次電池用正極材料として用いた場合に、従来知られているリチウムフェライト系複合酸化物と比較して優れた充放電特性を有するものであり、40mA/g程度という高電流密度下において、高容量を有し、しかもサイクル劣化の生じ難いものとなる。
本発明の製造方法では、均質な共沈物を作製することが重要であり、そのために、マンガン化合物、鉄化合物およびニッケル化合物を含む混合水溶液をアルカリ性として沈殿物を形成する際に、液温を0℃以下とすることが必要である。この様な条件下で作製した均質な沈殿にリチウム化合物を添加して焼成することにより、上記した優れた特性を有するリチウムフェライト系複合酸化物を得ることができる。これに対して、一般的な乾式混合プロセスを用いる固相反応法では、各元素間の均質な混合が困難であり、目的とする優れた特性のリチウムフェライト系複合酸化物を得ることができない。
以下、本発明の製造方法について、具体的に説明する。
鉄化合物、マンガン化合物およびニッケル化合物としては、これらの化合物を含む混合水溶液を形成できる成分であれば特に限定なく使用できる。通常、水溶性の化合物を用いればよい。この様な水溶性化合物の具体例としては、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩などの水溶性塩、水酸化物などを挙げることができる。これらの水溶性化合物は、無水物および水和物のいずれであってもよい。また、酸化物などの非水溶性化合物であっても、例えば、塩酸などの酸を用いて溶解させて水溶液として用いることが可能である。これらの各原料化合物は、各金属源について、それぞれ単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
該混合水溶液における鉄化合物、マンガン化合物およびニッケル化合物の混合割合は、
目的とするリチウムフェライト系複合酸化物における各元素比と同様の元素比となるようにすればよい。すなわち、鉄化合物については、Feイオン量(n値:Fe/(Fe+Mn+Ni)が、Li
イオン以外の金属イオン量の5〜75モル%(0.05≦Fe/(Fe+Mn+Ni) ≦0.75)となるように、好ましくは20〜60モル%(0.20≦Fe/(Fe+Mn+Ni) ≦0.60)となるように、混合すればよい。ま
た、ニッケル化合物については、Niイオン量(m値:Ni/(Fe+Mn+Ni)が、Liイオン以外の金
属イオン量の1〜50モル%(0.01≦Ni /(Fe+Mn+Ni)≦0.50)となるように、好ましくは5〜30
モル%(0.05≦Ni /(Fe+Mn+Ni)≦0.30)となるように、混合すればよい。さらに、Feイオン
とNiイオンの合計量は、前記組成式において0.06≦m+n<1であり、好ましくは0.3≦m+n≦0.8の範囲内とすればよい。
混合水溶液中の各化合物の濃度については、特に限定的ではなく、均一な混合水溶液を形成でき、且つ円滑に共沈物を形成できるように適宜決めればよい。通常、マンガン化合物、鉄化合物およびニッケル化合物の合計濃度を、0.01〜5mol/l程度、好ましくは0.1〜2mol/l程度とすればよい。
本発明方法では、沈殿の形成の際の液温は、0℃以下に維持することが必要であり、−30℃〜0℃程度に維持することが好ましく、−15℃〜−3℃程度に維持することがより好ましい。
該混合水溶液から共沈物を生成させるには、該混合水溶液をアルカリ性とすればよい。良好な共沈物を形成する条件は、混合水溶液に含まれる各化合物の種類、濃度などによって異なるので一概に規定出来ないが、通常、pH8程度以上とすることが好ましく、pH11程度以上とすることがより好ましい。
該混合水溶液をアルカリ性にする方法については、特に限定的ではなく、該混合水溶液にアルカリ又はアルカリを含む水溶液を添加してもよく、或いは、アルカリを含む水溶液に該混合水溶液を添加してもよい。アルカリとしては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属塩、アンモニアなどを用いることができる。これらのアルカリを水溶液として用いる場合には、例えば、0.1〜20mol/l程度、好ましくは0.3
〜10mol/l程度の濃度の水溶液として用いることができる。
該混合水溶液に、アルカリ又はアルカリを含む水溶液を添加する場合には、該混合水溶液の液温を0℃以下とすることが必要である。この場合、マンガン化合物、鉄化合物及びニッケル化合物を含むことにより液温0℃以下に下げることが可能であれば、水単独を溶
媒として用いてもよいが、該混合水溶液の液温を0℃以下の任意の温度に調整する場合には、メタノール、エタノールなどの水溶性アルコールを含む水−アルコール混合溶媒を用いればよい。アルコールの使用量は、目的とする沈殿生成温度などに応じて適宜決めればよいが、通常、水100重量部に対して、50重量部程度以下の使用量とすることが適当である。
また、アルカリを含む水溶液にマンガン化合物、鉄化合物およびニッケル化合物を含む混合水溶液を添加する場合には、アルカリを含む水溶液の液温を0℃以下に維持することが必要である。このため、アルカリを含む水溶液の溶媒として、水−アルコール混合溶媒を用いても良い。この場合に、アルコールの使用量についても、目的とする沈殿生成温度などに応じて適宜決めればよいが、通常、水100重量部に対して、50重量部程度以下の使用量とすることが適当である。
該混合水溶液をアルカリ性として沈殿を形成した後、更に、0〜150℃程度(好ましくは10-100℃程度)で、1〜7日間程度(好ましくは2〜4日間程度)にわたり、反応溶液に空気を吹き込みながら、共沈物の酸化・熟成処理を行うことが好ましい。
得られた沈殿を蒸留水等で洗浄して、過剰のアルカリ成分、残留原料等を除去し、濾別することによって、沈殿を精製することができる。
次いで、上記で得られた沈殿物にリチウム化合物を加える。なお、混合物を均一にするため、リチウム化合物を加えた後、混合物を攪拌し、乾燥してもよい。
リチウム化合物としては、例えば、塩化リチウム、硝酸リチウム等のリチウム塩、水酸化リチウム等を用いることができる。これらのリチウム化合物は、一種単独又は二種以上混合して用いることができ、無水物および水和物の何れを用いても良い。
リチウム化合物の使用量は、沈殿生成物中のFe,Mn及びNiの合計モル数に対するリチウム元素モル比として、Li/(Fe+Mn+Ni)=1〜3程度とすることが好ましく、1.1〜1.8程度と
することがより好ましい。
リチウム化合物は、反応の均一性を確保するために、水溶液の形態で共沈物と混合することが好ましい。水溶液の形態で加える場合、水溶液中のリチウム化合物の濃度は特に限定されないが、0.01〜10mol/l程度とすることが好ましく、0.1〜2mol/l程度とすることがより好ましい。
乾燥温度は特に限定されないが、通常は80℃程度以上、好ましくは100℃程度以上である。
上記方法で得られた混合物を焼成することによって、目的とするリチウムフェライト系複合酸化物が得られる。なお、焼成する前に、混合物を粉砕してもよい。
粉砕の程度については、粗大粒子が含まれず、混合物が均一な色調となっていればよい。
焼成雰囲気については、特に限定はなく、大気中、酸素気流中等の酸化性雰囲気中、不活性雰囲気中、還元雰囲気中等任意の雰囲気を選択できる。本発明では、ニッケルの酸化を促進するため、大気中、酸素気流中等の酸化性雰囲気が好ましい。
焼成温度は、200〜1000℃程度とすることが好ましく、300〜800℃程度とすることがよ
り好ましい。焼成時間は、1〜100時間程度とすることが好ましく、10〜60時間程度とすることがより好ましい。
焼成終了後、過剰のリチウム化合物を除去するために、通常、得られたリチウムフェライト系複合酸化物を水洗処理、溶媒洗浄処理等に供する。その後、濾過を行い、例えば、80℃以上の温度、好ましくは100℃程度の温度で加熱乾燥してもよい。
次いで、必要に応じて、この加熱乾燥物を粉砕し、リチウム化合物を加えて、焼成し、洗浄し、乾燥するという一連の操作を繰り返し行うことにより、リチウムフェライト系複合酸化物の優れた特性(リチウムイオン二次電池用正極材料としての作動電圧領域におけ
る安定的な充放電特性、高容量など)をより一層改善することができる。
本発明の製造方法によって得られるリチウムフェライト系複合酸化物は、組成式Li1+x(Mn1-m-nFenNim)1-xO2 (但し、0<x<1/3、0.01≦m≦0.50、0.05≦n≦0.75、0.06≦m+n<1) で表される化合物であり、その結晶構造は、公知物質であるLiNiO2に類似する層状岩塩型構造である。
図1は、本発明の製造方法によって得られるリチウムフェライト系複合酸化物の構造を模式的に表す図面である。図1の左側には、LiNiO2について、結晶の各層に含まれる元素を示し、図1の右側には、本発明の製造方法によって得られる複合酸化物について、結晶の各層に含まれる元素を示している。
図1から判るように、LiNiO2は、立方最密充填した酸化物イオンの8面体格子間位置にa軸方向に沿って2次元的にNiイオンとLiイオンとがそれぞれ配列し、c軸方向に交互に積層した結晶構造を有するものである。一方、本発明によるリチウムフェライト系酸化物の結晶構造は、Liイオン、Feイオン、Mnイオンが、LiNiO2のNi層を部分的に置換していることと、Li層内にFe、Niイオンが部分的に置換していることが特徴である。
LiNiO2のNi層内がすべてFeイオンにより置換されたものが、層状岩塩型LiFeO2であるが、この材料はほとんど充放電容量を有しないことが知られている(K.Ado, M.Tabuchi, H.Kobayashi, H.Kageyama, O.Nakamura, Y.Inaba, R.Kanno, M.Takagi and Y.Takeda, J. Electochem. Soc., 144, [7], L177, (1997))。
これに対して、上記した通り、本発明の製造方法によって得られるリチウムフェライト系複合酸化物では、Feイオンは、Ni層内でLiイオンおよびMnイオンの共存により希釈されている。十分な放電容量を有する複合酸化物を得るためには、この様な鉄イオンの希釈が重要な要件となる。尚、Li層内にもFeイオンがしばしば混在するが、これはリチウムフェライトが立方晶岩塩構造(図1で全金属元素を同一イオンと仮定したときに対応する構造)
をとりやすいため起こるものであり、このFeイオンは充放電に寄与しない。
本発明の製造方法によって得られるリチウムフェライト系複合酸化物では、固溶させるFeイオン量(n値:Fe/(Fe+Mn+Ni))は、0.05≦n≦0.75であり、好ましくは0.20≦n≦0.60である。Feイオンの固溶量が過剰となる場合には、充放電に関与しないLi層内のFeイオンが多くなるので、電池特性上好ましくない。これに対し、Feイオンの固溶量が少なすぎる場合には、充放電容量が小さくなるため、やはり好ましくない。
本発明の製造方法によって得られるリチウムフェライト系複合酸化物に固溶させるNiイオンも、基本的にFeイオンと同様にMnイオンを置換する形で層状岩塩型構造中に存在している(S.H.Kang, J.Kim, M.E.Stoll, D.Abraham, Y.K.Sun and K.Amine, Journal of Power Sources, 112, 41-48, (2002).)。Niイオンは、2価―3価状態で存在しているものと推
測され、複合酸化物の電子伝導性の向上や層状岩塩型構造の安定化によるLi層内Feイオン量低減などに寄与しているものと思われる。本発明による複合酸化物に固溶させるNiイオン量(m値:Ni/(Fe+Mn+Ni))は、0.01≦m≦0.50であり、好ましくは0.05≦m≦0.30である。MnおよびFeに比して高価なNiを多量に使用する場合には、経済的に不利となる。これに対し、Niイオンの固溶量が少なすぎる場合には、電子伝導性の向上や層状岩塩型構造安定化などの効果が十分に発現されない。
さらに、本発明の製造方法によって得られるリチウムフェライト系複合酸化物に固溶させるFeイオンとNiイオンの合計量は、前記組成式において0.06≦m+n<1であり、好ましくは0.3≦m+n≦0.8の範囲内にある。
また、本発明の製造方法によって得られるリチウムフェライト系複合酸化物では、層状岩塩型の結晶構造を保つことができる限り、Li1+x(Mn1-m-nFenNim)1-xO2のxは、遷移金属イオンの平均価数によって0と1/3の間の値をとることができる。
さらに、本発明の製造方法によって得られるリチウムフェライト系複合酸化物は、充放
電特性に重大な影響を及ぼさない範囲(最大10モル%程度)の水酸化リチウム、炭酸リチウ
ム(それらの水和物も含む)などの不純物相を含んでいても良い。
本発明によるリチウムフェライト系複合酸化物を用いるリチウムイオン二次電池は、公知の手法により製造することができる。すなわち、正極材料として、本発明による複合酸化物を使用し、負極材料として、公知の金属リチウム、炭素系材料(活性炭、黒鉛)などを使用し、電解液として、公知のエチレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどの溶媒に過塩素酸リチウム、LiPF6などのリチウム塩を溶解させた溶液を使用し、さらにその他
の公知の電池構成要素を使用して、常法に従って、リチウムイオン二次電池を組立てることができる。
本発明の製造方法によれば、水熱処理を使用しないことから、簡便にかつ低コストでリチウムコバルト系酸化物を製造することができる。
また、本発明の製造方法によって得られるリチウムフェライト系複合酸化物は、リチウムイオン二次電池用正極材料として、従来技術の方法で製造されたリチウムフェライト系複合酸化物よりもサイクル劣化が少なく、かつ、高容量で低コストであり、極めて有用である。
更に、本発明方法によって得られるリチウムフェライト系複合酸化物は、高温環境下においても正極材料として優れた性能を発揮し得るものである。例えば、高温充放電条件(例えば、60℃程度)では、実用化されている代表的な低価格正極材料であるリチウムマンガンスピネルと比較した場合に、より高容量を有するものである。よって、本発明方法によって得られるリチウムフェライト系複合酸化物は、例えば、車載用二次電池などの高温環境下で使用される可能性のあるリチウムイオン二次電池用の正極としても優れた性能を発揮し得るものである。
以下に実施例および比較例を示し、本発明の特徴とするところを一層明確にする。本発明は、これら実施例により限定されるものではない。
硝酸鉄(III)9水和物40.40g、塩化マンガン(II)4水和物19.79gおよび硝酸ニッケル(II)6水和物14.54g(全量0.25mol、Fe:Mn:Niモル比=4:4:2)を500mlの蒸留水に加え、完全に溶解させた。別のビーカーに水酸化リチウム水溶液(蒸留水500mlに水酸化リチウム1水和物50gを溶解させた溶液)を作製した。この水溶液をチタン製ビーカーに入れ、エタノール200mlを加えた後恒温漕内に静置し恒温漕内を-10℃に保った。水酸化リチウム水溶液に上記金
属塩水溶液を徐々に滴下することにより、Fe-Mn-Ni沈殿物を形成させた。反応液が完全にアルカリ性(pH11以上)に保たれていることを確認し、攪拌下に共沈物を含む反応液に室温で2日間空気を吹き込んで酸化処理して、沈殿を熟成させた。
生成している沈殿物を蒸留水で洗浄して、過剰に存在する水酸化リチウムなどの塩類を除去し、濾過して、精製共沈物を得た。
水酸化リチウム1水和物15.74gを蒸留水100mlに溶解させた水酸化リチウム水溶液と精製共沈物25gとを混合し、100℃で乾燥し、粉砕した。得られた粉末を酸素気流中600℃で20時間焼成した。次いで、過剰のリチウム塩を除去するために、焼成物を蒸留水で水洗し、濾過し、乾燥して、所望の粉末状生成物である鉄及びニッケル含有Li2MnO3(Li1+x(Fe0.4Mn0.4Ni0.2)1-xO2)を得た。
この最終生成物のX線回折パターンを図2に示す。すべてのピークは、"M.Tabuchi, A.Nakashima, H.Shigemura, K.Ado, H.Kobayashi, H.Sakaebe, H.Kageyama, T.Nakamura, M.Kohzaki, A.Hirano and R.Kanno, Journal of the Electrochemical Society, 149, A509-524, (2002)."に記載されている層状岩塩型の鉄及びニッケル含有Li2MnO3 (すなわち、Li1+x(Fe0.4Mn0.5Ni0.1)1-xO2)の単位胞
Figure 0004457213
で指数付けすることができた。
また、最終生成物の組成は、誘導結合高周波プラズマ分光分析(ICP)及び原子吸光分析
により、評価を行った。その元素分析結果を表1に示す。
本実施例において得られた鉄及びニッケル含有Li2MnO3の各ピークより計算される格子
定数(a= 2.8935(4)A, c=14.2639(16)A)が、上記文献の記載値に近いこと、化学分析(下記表1)により、FeおよびNiが仕込量通りそれぞれ40モル%(n値)および20モル%(m値)含まれ
ていること、Li/(Mn+Fe+Ni)値より計算されるx値が0.13であることから、本実施例において、鉄及びニッケル含有Li2MnO3(すなわち、Li1.13(Fe0.4Mn0.4Ni0.2)0.87O2)が得られたことが確認できた。
また、図3は、本実施例で最終生成物として得られた鉄及びニッケル含有Li2MnO3の電子顕微鏡写真を電子的に画像処理した図面である。図3から、本実施例により、粒径が100nm以下で比較的揃った鉄及びニッケル含有Li2MnO3が形成されていることが明らかである。
Fe-Mn-Ni混合水溶液から沈殿物を得て熟成後、水洗・濾過処理により精製共沈物を得る工程までは実施例1と同様である。
次いで、水酸化リチウム1水和物15.74gを蒸留水100mlに溶解させた水酸化リチウム水溶液と精製共沈物25gとを混合し、100℃で乾燥し、粉砕した。得られた粉末を酸素気流中650℃で20時間焼成した。次いで、過剰のリチウム塩を除去するために、焼成物を蒸留水で水洗し、濾過し、乾燥して、所望の粉末状生成物である鉄及びニッケル含有Li2MnO3(すなわち、Li1+x(Fe0.4Mn0.4Ni0.2)1-xO2)を得た。
この最終生成物のX線回折パターンを図2に示す。すべてのピークは、"M.Tabuchi, A.Nakashima, H.Shigemura, K.Ado, H.Kobayashi, H.Sakaebe, H.Kageyama, T.Nakamura, M.Kohzaki, A.Hirano and R.Kanno, Journal of the Electrochemical Society, 149, A509-524, (2002)."に記載されている層状岩塩型の鉄及びニッケル含有Li2MnO3 (すなわち、Li1+x(Fe0.4Mn0.5Ni0.1)1-xO2)の単位胞
Figure 0004457213
で指数付けすることができた。図2に示されているように、本実施例の各回折ピークが実施例1のピークに比べシャープであることから、本実施例の試料が実施例1の試料に比べ
結晶性が高いことがわかる。
また、最終生成物の組成は、誘導結合高周波プラズマ分光分析(ICP)及び原子吸光分析
により、評価を行った。その元素分析結果を表1に示す。
本実施例において得られた鉄及びニッケル含有Li2MnO3の各ピークより計算される格子
定数(a= 2.8875(3)A, c=14.2620(15)A)が、上記文献の記載値に近いこと、化学分析(下記
表1)により、FeおよびNiが仕込量通りそれぞれ40モル%(n値)および20モル%(m値)含まれ
ていること、Li/(Mn+Fe+Ni)値より計算されるx値が0.18であることから、本実施例において、鉄及びニッケル含有Li2MnO3(すなわち、Li1.18(Fe0.4Mn0.4Ni0.2)0.82O2)が得られたことが明らかである。
また、図3は、本実施例で最終生成物として得られた鉄及びニッケル含有Li2MnO3の電子顕微鏡写真を電子的に画像処理した図面である。図3から、本実施例により、粒径が100nm以下で比較的揃った鉄及びニッケル含有Li2MnO3が形成されていること、及び実施例1に比べ焼成温度の上昇により粒成長していることが明らかである。
Figure 0004457213
比較例1
硝酸鉄(III)9水和物40.40g、塩化マンガン(II)4水和物19.79gおよび硝酸ニッケル(II)6水和物14.54g (全量0.25mol、Fe:Mn:Niモル比=4:4:2)を500mlの蒸留水に加え、完全に溶
解させた。別のビーカーに水酸化リチウム水溶液(蒸留水500mlに水酸化リチウム1水和物50gを溶解させた溶液)を作製した。この水溶液をチタン製ビーカーに入れ、恒温漕内に静
置し恒温漕内を+5℃に保った。水酸化リチウム水溶液に上記金属塩水溶液を徐々に滴下することにより、Fe-Mn-Ni沈殿物を形成させた。反応液が完全にアルカリ性(pH11以上)に保たれていることを確認し、攪拌下に共沈物を含む反応液に室温で2日間空気を吹き込んで
酸化処理して、沈殿を熟成させた。
生成している沈殿物を蒸留水で洗浄して、過剰に存在する水酸化リチウムなどの塩類を除去し、濾過して、精製共沈物を得た。
精製共沈物25gを水酸化リチウム1水和物50g、塩素酸カリウム50g、蒸留水600mlとと
もにポリテトラフルオロエチレンビーカー中に入れ、よく攪拌した後、水熱反応炉(オートクレーブ)内に設置し、220℃で8時間水熱処理した。
水熱処理終了後、反応炉を室温付近まで冷却し、水熱処理反応液を含むビーカーをオートクレーブ外に取り出した。生成している沈殿物を蒸留水で洗浄して、過剰に存在する水酸化リチウムなどの塩類を除去し、濾過し、乾燥することにより、粉末状生成物(鉄及びニッケル含有Li2MnO3)を得た。
次いで、得られた生成物の結晶性を改善するために、水酸化リチウム1水和物5.25gを蒸留水100mlに溶解させた水酸化リチウム水溶液と生成物粉末25gとを混合し、100℃で乾燥し、粉砕した。得られた粉末を酸素気流中600℃で20時間焼成した。次いで、過剰のリ
チウム塩を除去するために、焼成物を蒸留水で水洗し、濾過し、乾燥して、比較例1の粉末状生成物である鉄及びニッケル含有Li2MnO3(すなわち、Li1+x(Fe0.4Mn0.4Ni0.2)1-xO2)を得た。
この最終生成物のX線回折パターンよりすべてのピークは、"M.Tabuchi, A.Nakashima, H.Shigemura, K.Ado, H.Kobayashi, H.Sakaebe, H.Kageyama, T.Nakamura, M.Kohzaki, A
.Hirano and R.Kanno, Journal of the Electrochemical Society, 149, A509-524, (2002).に記載されている層状岩塩型の鉄及びニッケル含有Li2MnO3 (すなわち、Li1+x(Fe0.4Mn0.5Ni0.1)1-xO2)の単位胞
Figure 0004457213
のみで指数付けすることができた。本比較例において得られた鉄及びニッケル含有Li2MnO3の各ピークより計算される格子定数(a= 2.9077(3)A, c=14.3019(17)A)が、上記文献の記載値に近く、仕込みモル量が実施例1と同一であることから、本比較例においても、鉄及
びニッケル含有Li2MnO3(すなわち、Li1+x(Fe0.4Mn0.4Ni0.2)1-xO2)が得られたことが確認できた。
比較例2
Fe-Mn-Ni混合水溶液から共沈物を得て熟成後、水熱処理を行い水洗・濾過処理により粒子状生成物(鉄およびニッケル含有Li2MnO3)を得る工程までは比較例1と同様である。
次いで、得られた生成物の結晶性を改善するために、水酸化リチウム1水和物5.25gを蒸留水100mlに溶解させた水酸化リチウム水溶液と生成物粉末25gとを混合し、100℃で乾燥し、粉砕した。得られた粉末を酸素気流中650℃で20時間焼成した。次いで、過剰のリ
チウム塩を除去するために、焼成物を蒸留水で水洗し、濾過し、乾燥して、比較例2の粉末状生成物である鉄及びニッケル含有Li2MnO3(すなわち、Li1+x(Fe0.4Mn0.4Ni0.2)1-xO2)を得た。
この最終生成物のX線回折パターンよりすべてのピークは、"M.Tabuchi, A.Nakashima, H.Shigemura, K.Ado, H.Kobayashi, H.Sakaebe, H.Kageyama, T.Nakamura, M.Kohzaki, A.Hirano and R.Kanno, Journal of the Electrochemical Society, 149, A509-524, (2002)."に記載されている層状岩塩型の鉄及びニッケル含有Li2MnO3 (すなわち、Li1+x(Fe0.4Mn0.5Ni0.1)1-xO2)の単位胞
Figure 0004457213
のみで指数付けすることができた。
本比較例において得られた鉄及びニッケル含有Li2MnO3の各ピークより計算される格子
定数(a= 2.9015(4)A, c=14.2881(15)A)が、上記文献の記載値に近く、仕込みモル量が実
施例1と同一であることから、本比較例においても、鉄及びニッケル含有Li2MnO3(すなわ
ち、Li1+x(Fe0.4Mn0.4Ni0.2)1-xO2)が得られたことが確認できた。
充放電試験
正極材料として上記実施例1および2で得られた各試料を用い、負極材料として金属リチウムを用いた。また、電解液として、支持塩であるLiPF6をエチレンカーボネートとジ
エチルカーボネートとの混合溶媒に溶解させた1M溶液を用いた。そして、コイン型リチ
ウム電池としての充放電特性を試験温度30℃で(電位範囲3.0-4.3V、電流密度42mA/g)充電開始にて検討した。上記のリチウム電池の充放電特性を図4に示す。図4中において、右上がりの曲線は充電曲線に対応し、右下がりの曲線は放電曲線に対応する。Q1cおよびQ10cはそれぞれ初期および10サイクル目の充電容量を示し、Q1d3.5およびQ1d3.0はそれぞれ3.5Vおよび3.0V以上での初期放電容量を示し、 Q10d3.5およびQ10d3.0はそれぞれ3.5Vおよび3.0V以上での10サイクル目の放電容量を示す。実施例1及び2にて得られた試料は図4
に示されるように初期充電より充放電可能である。また、初期放電容量(Q1d3.0)は90mAh/g以上あり、42mA/gという高い電流密度において試験したにも関わらず大きな容量を示し
ている。
上記リチウム電池の充放電特性評価を表2に示す。表2より、比較例1及び2で得られ
た水熱法を用いた試料と比べ、同一の電流密度において、本発明試料は初期放電容量(Q1d3.0及びQ1d3.5)、10サイクル後放電容量(Q10d3.0 及びQ10d3.5)が大きな容量を示し、容
量維持率も高いことが判る。
従って、本発明の製造方法によれば、水熱処理という煩雑な工程を要することなく、リチウム二次電池用正極材料として優れた性能を有するリチウムフェライト系複合酸化物を得ることができる。また、本発明によって得られたリチウムフェライト系複合酸化物は、リチウム二次電池用正極材料として用いると、高い電流密度下において高容量を有し、さらにはサイクル劣化が少ないことが明らかである。
Figure 0004457213
高温充放電試験
実施例1で得られた材料を正極材料として用い、負極材料を黒鉛に変更したこと以外は、上記充放電特性評価で用いたものと同様の構造のコイン型リチウム二次電池を作製した。この電池を60℃に保たれた恒温槽に入れ、充放電電位範囲2.5-4.3V(ただし最大充電容量を150mAh/gに制限)、電流密度42mA/gとして充電開始で10サイクルまで充放電特性評価を行った。
比較として、リチウムマンガンスピネル(Li1.1Mn1.9O4)を正極材料とすること以外は、上記方法と同様にして作製したコイン型リチウム二次電池を用いて、60℃において充放電試験を行った。尚、ここで用いたLi1.1Mn1.9O4は、Mn2O3とLiOHをモル比0.95:1.1の割合で乾式混合し、大気中900℃、20時間焼成することにより作製したものである。
図5は60℃における充放電特性を示すグラフであり、右上がりの曲線が充電曲線であり、右下がりの曲線が放電曲線である。図5において、"1c"とあるのは、初期充電容量を示す曲線、"10c"とあるのは、10サイクル後充電容量を示す曲線、"1d"とあるのは、初期
放電容量を示す曲線、"10d"とあるのは、10サイクル後放電容量を示す曲線である。
得られた充放電特性(図5)より、実施例1の材料を用いた電池は、初期放電容量こそ105mAh/gと低いものの10サイクル後の放電容量は146mAh/gであり、比較としたリチウムマン
ガンスピネルを用いた電池(1サイクル目放電容量74mAh/g、10サイクル目放電容量41mAh/g)に比べて高容量であった。また、実施例1材料を用いた電池は、10サイクル後の平均放電電圧も3.28Vあり、高電位を維持していることがわかる。
以上の試験は、実用化されている負極材料である黒鉛を用いて高温での充放電特性を評価するものであり、上記結果は、実施例1の材料は負極として黒鉛を用いた実用に近い電
池構成においても安定に充放電可能なことを示すものである。この結果から、本発明方法によって得られる複合酸化物が、既存正極であるリチウムマンガンスピネルと比較して、特に、高温サイクル試験において優位性を有することが明らかである。
本発明の製造方法によって得られたリチウムフェライト系複合酸化物の結晶構造を模式的に示す図面である。 実施例1及び2で得られた鉄およびニッケル含有Li2MnO3のX線回折パターンを示す図面である。 実施例1及び2で得られた鉄およびニッケル含有Li2MnO3の電子顕微鏡写真を電子的に画像処理した図面である。 実施例1及び2で得られた鉄およびニッケル含有Li2MnO3をそれぞれ正極材料とし、Li金属を負極材料とする2種のコイン型リチウム電池の初期および10サイクル目の充放電特性を示すグラフである。 実施例1で作製したコイン型リチウム二次電池(黒鉛負極)とリチウムマンガンスピネルを正極材料として用いたコイン型リチウム二次電池(黒鉛負極)についての60℃における充放電特性を示すグラフである。

Claims (5)

  1. マンガン化合物、鉄化合物およびニッケル化合物を含む混合水溶液を0℃以下の液温下でアルカリ性として沈殿物を形成し、得られた沈殿生成物をリチウム化合物とともに焼成することを特徴とする、組成式Li1+x(Mn1-m-nFenNim)1-xO2 (但し、0<x<1/3、0.01≦m≦0.50、0.05≦n≦0.75、0.06≦m+n<1) で表されるリチウムフェライト系複合酸化物の製造方法。
  2. 焼成を酸化性雰囲気中で行うことを特徴とする請求項1に記載のリチウムフェライト系複合酸化物の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の製造方法によって得られた、層状岩塩型構造を有するリチウムフェライト系複合酸化物。
  4. 請求項3に記載の層状岩塩型構造を有するリチウムフェライト系複合酸化物からなるリチウムイオン二次電池用正極材料。
  5. 請求項4に記載のリチウム二次電池用正極材料を構成要素とするリチウムイオン二次電池。


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