JP4457213B2 - リチウムフェライト系複合酸化物の製造方法 - Google Patents
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る正極材料のみでは、今後の需要拡大に対応可能かどうかは、不明である。
用化されている。しかしながら、これらの材料は、電池充電時の安全性の問題(LiNiO2)、50℃以上でのマンガンの溶解による顕著な特性劣化(LiMn2O4)などの問題点を有している
ので、これら材料によるLiCoO2の代替は、予期された程には進展していない。
ン交換法を用いて得られるLiFeO2は、4V付近に充電平坦電位を有しているものの、放電電位は3V以下である(下記特許文献1および特許文献2参照)。このイオン交換法により得られたLiFeO2の放電電位は、LiCoO2の放電電位に比べて、約1V以上低く、前者材料による後者材料の代替は、かなり困難である。この様に、実用的レベルに達するリチウムフェライトの製造技術は、未だ確立されていない。
有するか否かという点がある。本発明者らは、リチウムフェライトとリチウムマンガン酸化物(Li2MnO3)との固溶体(Li1+x(Fe0.5Mn0.5)1-xO2, 0≦x≦1/3。以下「鉄含有Li2MnO3」と略記する)を形成させることにより、4V領域に鉄の3+/4+酸化還元に伴う放電平坦電位を有する化合物が得られることを見出した(下記特許文献3および特許文献4参照)。しかしながら、この材料のもつ4V領域の充放電容量は、充放電試験サイクル数の増加とともに劣化するという問題があり、現時点では、上記の方法では、実用化のために必要な高容量
を有しかつサイクル劣化の少ない材料は得られていないので、さらに技術的改善が必要である(下記非特許文献1参照)。
の固溶体を「鉄及びニッケル含有Li2MnO3」と略記する)により、低い電流密度(7.5mA/g)下では充放電曲線のサイクル数増大に伴う変化を抑制できることを見出している(下記特
許文献5参照)。しかしながら、鉄含有Li2MnO3系正極材料を実用化するためには、より高い電流密度下(たとえば40mA/g以上)においてサイクル劣化を生じることなく高容量(90mAh/g以上)を得ることがきわめて重要である。
共沈物を得た後、リチウム塩及び酸化剤と共に水熱反応を行って均一な生成物を形成し、その後焼成することによって作製されている。しかしながら、この様な製造方法では、水熱反応を含むために製造工程が煩雑であり、しかも、水熱反応において酸化剤が必要であるため、製造コストが高くなるという欠点がある。
要な要件となる。
とができ、しかも、驚くべきことに、得られた物質は、従来知られている鉄及びニッケル含有Li2MnO3と比べてより一層優れた充放電特性を有するものとなることを見出した。更
に、この方法で得られた物質は、リチウムマンガンスピネル等の比較的安価な原料を用いた既存の正極材料と比較した場合に、例えば炭素負極を用いた60℃程度の高温充放電条件下において、高容量を有するものであることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
1.マンガン化合物、鉄化合物およびニッケル化合物を含む混合水溶液を0℃以下の液温下でアルカリ性として沈殿物を形成し、得られた沈殿生成物をリチウム化合物とともに焼成することを特徴とする、組成式Li1+x(Mn1-m-nFenNim)1-xO2 (但し、0<x<1/3、0.01≦m≦0.50、0.05≦n≦0.75、0.06≦m+n<1) で表されるリチウムフェライト系複合酸化物の製造方法。
2.焼成を酸化性雰囲気中で行うことを特徴とする上記項1に記載のリチウムフェライト系複合酸化物の製造方法。
3.上記項1又は2に記載の製造方法によって得られた、層状岩塩型構造を有するリチウムフェライト系複合酸化物。
4.上記項3に記載の層状岩塩型構造を有するリチウムフェライト系複合酸化物からなるリチウムイオン二次電池用正極材料。
5.上記項4に記載のリチウム二次電池用正極材料を構成要素とするリチウムイオン二次電池。
、0.05≦n≦0.75、0.06≦m+n<1) で表されるリチウムフェライト系複合酸化物を得るこ
とができる。得られるリチウムフェライト系複合酸化物は、リチウムイオン二次電池用正極材料として用いた場合に、従来知られているリチウムフェライト系複合酸化物と比較して優れた充放電特性を有するものであり、40mA/g程度という高電流密度下において、高容量を有し、しかもサイクル劣化の生じ難いものとなる。
目的とするリチウムフェライト系複合酸化物における各元素比と同様の元素比となるようにすればよい。すなわち、鉄化合物については、Feイオン量(n値:Fe/(Fe+Mn+Ni)が、Li
イオン以外の金属イオン量の5〜75モル%(0.05≦Fe/(Fe+Mn+Ni) ≦0.75)となるように、好ましくは20〜60モル%(0.20≦Fe/(Fe+Mn+Ni) ≦0.60)となるように、混合すればよい。ま
た、ニッケル化合物については、Niイオン量(m値:Ni/(Fe+Mn+Ni)が、Liイオン以外の金
属イオン量の1〜50モル%(0.01≦Ni /(Fe+Mn+Ni)≦0.50)となるように、好ましくは5〜30
モル%(0.05≦Ni /(Fe+Mn+Ni)≦0.30)となるように、混合すればよい。さらに、Feイオン
とNiイオンの合計量は、前記組成式において0.06≦m+n<1であり、好ましくは0.3≦m+n≦0.8の範囲内とすればよい。
〜10mol/l程度の濃度の水溶液として用いることができる。
媒として用いてもよいが、該混合水溶液の液温を0℃以下の任意の温度に調整する場合には、メタノール、エタノールなどの水溶性アルコールを含む水−アルコール混合溶媒を用いればよい。アルコールの使用量は、目的とする沈殿生成温度などに応じて適宜決めればよいが、通常、水100重量部に対して、50重量部程度以下の使用量とすることが適当である。
することがより好ましい。
り好ましい。焼成時間は、1〜100時間程度とすることが好ましく、10〜60時間程度とすることがより好ましい。
る安定的な充放電特性、高容量など)をより一層改善することができる。
をとりやすいため起こるものであり、このFeイオンは充放電に寄与しない。
測され、複合酸化物の電子伝導性の向上や層状岩塩型構造の安定化によるLi層内Feイオン量低減などに寄与しているものと思われる。本発明による複合酸化物に固溶させるNiイオン量(m値:Ni/(Fe+Mn+Ni))は、0.01≦m≦0.50であり、好ましくは0.05≦m≦0.30である。MnおよびFeに比して高価なNiを多量に使用する場合には、経済的に不利となる。これに対し、Niイオンの固溶量が少なすぎる場合には、電子伝導性の向上や層状岩塩型構造安定化などの効果が十分に発現されない。
電特性に重大な影響を及ぼさない範囲(最大10モル%程度)の水酸化リチウム、炭酸リチウ
ム(それらの水和物も含む)などの不純物相を含んでいても良い。
の公知の電池構成要素を使用して、常法に従って、リチウムイオン二次電池を組立てることができる。
属塩水溶液を徐々に滴下することにより、Fe-Mn-Ni沈殿物を形成させた。反応液が完全にアルカリ性(pH11以上)に保たれていることを確認し、攪拌下に共沈物を含む反応液に室温で2日間空気を吹き込んで酸化処理して、沈殿を熟成させた。
で指数付けすることができた。
により、評価を行った。その元素分析結果を表1に示す。
定数(a= 2.8935(4)A, c=14.2639(16)A)が、上記文献の記載値に近いこと、化学分析(下記表1)により、FeおよびNiが仕込量通りそれぞれ40モル%(n値)および20モル%(m値)含まれ
ていること、Li/(Mn+Fe+Ni)値より計算されるx値が0.13であることから、本実施例において、鉄及びニッケル含有Li2MnO3(すなわち、Li1.13(Fe0.4Mn0.4Ni0.2)0.87O2)が得られたことが確認できた。
で指数付けすることができた。図2に示されているように、本実施例の各回折ピークが実施例1のピークに比べシャープであることから、本実施例の試料が実施例1の試料に比べ
結晶性が高いことがわかる。
により、評価を行った。その元素分析結果を表1に示す。
定数(a= 2.8875(3)A, c=14.2620(15)A)が、上記文献の記載値に近いこと、化学分析(下記
表1)により、FeおよびNiが仕込量通りそれぞれ40モル%(n値)および20モル%(m値)含まれ
ていること、Li/(Mn+Fe+Ni)値より計算されるx値が0.18であることから、本実施例において、鉄及びニッケル含有Li2MnO3(すなわち、Li1.18(Fe0.4Mn0.4Ni0.2)0.82O2)が得られたことが明らかである。
硝酸鉄(III)9水和物40.40g、塩化マンガン(II)4水和物19.79gおよび硝酸ニッケル(II)6水和物14.54g (全量0.25mol、Fe:Mn:Niモル比=4:4:2)を500mlの蒸留水に加え、完全に溶
解させた。別のビーカーに水酸化リチウム水溶液(蒸留水500mlに水酸化リチウム1水和物50gを溶解させた溶液)を作製した。この水溶液をチタン製ビーカーに入れ、恒温漕内に静
置し恒温漕内を+5℃に保った。水酸化リチウム水溶液に上記金属塩水溶液を徐々に滴下することにより、Fe-Mn-Ni沈殿物を形成させた。反応液が完全にアルカリ性(pH11以上)に保たれていることを確認し、攪拌下に共沈物を含む反応液に室温で2日間空気を吹き込んで
酸化処理して、沈殿を熟成させた。
もにポリテトラフルオロエチレンビーカー中に入れ、よく攪拌した後、水熱反応炉(オートクレーブ)内に設置し、220℃で8時間水熱処理した。
チウム塩を除去するために、焼成物を蒸留水で水洗し、濾過し、乾燥して、比較例1の粉末状生成物である鉄及びニッケル含有Li2MnO3(すなわち、Li1+x(Fe0.4Mn0.4Ni0.2)1-xO2)を得た。
.Hirano and R.Kanno, Journal of the Electrochemical Society, 149, A509-524, (2002).に記載されている層状岩塩型の鉄及びニッケル含有Li2MnO3 (すなわち、Li1+x(Fe0.4Mn0.5Ni0.1)1-xO2)の単位胞
のみで指数付けすることができた。本比較例において得られた鉄及びニッケル含有Li2MnO3の各ピークより計算される格子定数(a= 2.9077(3)A, c=14.3019(17)A)が、上記文献の記載値に近く、仕込みモル量が実施例1と同一であることから、本比較例においても、鉄及
びニッケル含有Li2MnO3(すなわち、Li1+x(Fe0.4Mn0.4Ni0.2)1-xO2)が得られたことが確認できた。
Fe-Mn-Ni混合水溶液から共沈物を得て熟成後、水熱処理を行い水洗・濾過処理により粒子状生成物(鉄およびニッケル含有Li2MnO3)を得る工程までは比較例1と同様である。
チウム塩を除去するために、焼成物を蒸留水で水洗し、濾過し、乾燥して、比較例2の粉末状生成物である鉄及びニッケル含有Li2MnO3(すなわち、Li1+x(Fe0.4Mn0.4Ni0.2)1-xO2)を得た。
のみで指数付けすることができた。
定数(a= 2.9015(4)A, c=14.2881(15)A)が、上記文献の記載値に近く、仕込みモル量が実
施例1と同一であることから、本比較例においても、鉄及びニッケル含有Li2MnO3(すなわ
ち、Li1+x(Fe0.4Mn0.4Ni0.2)1-xO2)が得られたことが確認できた。
正極材料として上記実施例1および2で得られた各試料を用い、負極材料として金属リチウムを用いた。また、電解液として、支持塩であるLiPF6をエチレンカーボネートとジ
エチルカーボネートとの混合溶媒に溶解させた1M溶液を用いた。そして、コイン型リチ
ウム電池としての充放電特性を試験温度30℃で(電位範囲3.0-4.3V、電流密度42mA/g)充電開始にて検討した。上記のリチウム電池の充放電特性を図4に示す。図4中において、右上がりの曲線は充電曲線に対応し、右下がりの曲線は放電曲線に対応する。Q1cおよびQ10cはそれぞれ初期および10サイクル目の充電容量を示し、Q1d3.5およびQ1d3.0はそれぞれ3.5Vおよび3.0V以上での初期放電容量を示し、 Q10d3.5およびQ10d3.0はそれぞれ3.5Vおよび3.0V以上での10サイクル目の放電容量を示す。実施例1及び2にて得られた試料は図4
に示されるように初期充電より充放電可能である。また、初期放電容量(Q1d3.0)は90mAh/g以上あり、42mA/gという高い電流密度において試験したにも関わらず大きな容量を示し
ている。
た水熱法を用いた試料と比べ、同一の電流密度において、本発明試料は初期放電容量(Q1d3.0及びQ1d3.5)、10サイクル後放電容量(Q10d3.0 及びQ10d3.5)が大きな容量を示し、容
量維持率も高いことが判る。
実施例1で得られた材料を正極材料として用い、負極材料を黒鉛に変更したこと以外は、上記充放電特性評価で用いたものと同様の構造のコイン型リチウム二次電池を作製した。この電池を60℃に保たれた恒温槽に入れ、充放電電位範囲2.5-4.3V(ただし最大充電容量を150mAh/gに制限)、電流密度42mA/gとして充電開始で10サイクルまで充放電特性評価を行った。
放電容量を示す曲線、"10d"とあるのは、10サイクル後放電容量を示す曲線である。
ガンスピネルを用いた電池(1サイクル目放電容量74mAh/g、10サイクル目放電容量41mAh/g)に比べて高容量であった。また、実施例1材料を用いた電池は、10サイクル後の平均放電電圧も3.28Vあり、高電位を維持していることがわかる。
池構成においても安定に充放電可能なことを示すものである。この結果から、本発明方法によって得られる複合酸化物が、既存正極であるリチウムマンガンスピネルと比較して、特に、高温サイクル試験において優位性を有することが明らかである。
Claims (5)
- マンガン化合物、鉄化合物およびニッケル化合物を含む混合水溶液を0℃以下の液温下でアルカリ性として沈殿物を形成し、得られた沈殿生成物をリチウム化合物とともに焼成することを特徴とする、組成式Li1+x(Mn1-m-nFenNim)1-xO2 (但し、0<x<1/3、0.01≦m≦0.50、0.05≦n≦0.75、0.06≦m+n<1) で表されるリチウムフェライト系複合酸化物の製造方法。
- 焼成を酸化性雰囲気中で行うことを特徴とする請求項1に記載のリチウムフェライト系複合酸化物の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の製造方法によって得られた、層状岩塩型構造を有するリチウムフェライト系複合酸化物。
- 請求項3に記載の層状岩塩型構造を有するリチウムフェライト系複合酸化物からなるリチウムイオン二次電池用正極材料。
- 請求項4に記載のリチウム二次電池用正極材料を構成要素とするリチウムイオン二次電池。
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