以下、本発明を電子写真方式の画像形成装置であるレーザー複写機(以下、単に複写機という)に適用した第1実施形態について説明する。図1は、本第1実施形態に係る複写機を示す概略構成図である。複写機本体の上部には、コンタクトガラス1、走査光学系2などを有するスキャナ装置が設けられている。原稿がコンタクトガラス1上に載置された後、図示しないコピースタートボタンが押されると、このスキャナ装置による原稿の読み取りが開始される。具体的には、原稿照明光源3や反射ミラー4,5,6などを有する移動部が原稿面方向に移動しながら、コンタクトガラス1上の原稿に対して光走査を行う。この光走査によって得られた原稿反射光は、レンズ7を透過した後に画像読取素子8によって画像信号として読み込まれてデジタル画像処理が施される。処理後の信号は、図示しないレーザーダイオード(LD)を駆動してレーザー光を出射させる。出射したレーザー光は、ポリゴンミラー9上で反射して主走査方向に偏向せしめられながら、ミラー10を介して感光体11を走査する。この走査に先立ち、ドラム状の感光体11は図示しない駆動手段によって図中時計回りに回転駆動されながら、ドラム帯電器12によって一様帯電せしめられる。そして、表面に上述のレーザー光が走査されて静電潜像を担持する。この静電潜像は、現像装置100によってトナー像に現像される。
上記感光体11には、図中下方からチャージャユニットが対向している。このチャージャユニットの図中左側には、2つの給紙カセット13、14が配設されており、それぞれカセット内に記録体たる転写紙Pを複数枚重ねた転写紙束の状態で収容している。コピー動作がスタートすると、画像情報に応じたサイズ及び姿勢の転写紙Pを収容している方の給紙カセット(13又は14)の給紙コロ(13a又は14aが回転駆動されて、転写紙束の一番上の転写紙Pを給紙路に送り出す。この給紙路の最下流側には、レジストローラ対15が配設されており、給紙手段から送られてくる転写紙Pをローラ間に挟み込む。そして、挟み込んだ転写紙を感光体11上のトナー像に重ね合わせ得るタイミングで、感光体11と上記チャージャユニットとの対向部に向けて送り出す。この対向部においては、チャージャユニットの転写チャージャ16から生起せしめられるコロナ放電の影響により、感光体11上のトナー像が転写紙Pに静電転写される。その後、分離チャージャ17によって感光体11から分離された転写紙Pは、張架ローラに張架されながら無端移動せしめられる搬送ベルト18によって定着手段19に送られる。定着手段19は、内部に熱源を有する加熱ローラと、これに所定の圧力で当接する加圧ローラとによって形成される定着ニップに挟まれて、加熱されながら加圧される。この加熱や加圧の影響により、トナー像が転写紙P上に定着せしめられる。このようにしてトナー像が定着された転写紙Pは、排紙ローラ対20を経て機外のスタック部21上にスタックされる。
上記チャージャユニットとの対向位置を通過した後の感光体11は、その表面に付着している転写残トナーがクリーニング手段22によって除去された後、除電ランプ23によって除電されて初期化せしめられる。
図2は、感光体11と、現像装置(100)の第1トナー静電搬送基板101とを示す拡大構成図である。現像装置(100)内では、図示しない領域にて、後述する供給部から第1トナー静電搬送基板101上にトナーが供給される。第1トナー静電搬送基板101は、ガラス等からなる絶縁性基板101dに対して、複数の短冊状の搬送電極が基板長手方向(図の左右方向)に所定のピッチで並ぶように配設されている。これら搬送電極は幅寸法(基板長手方向における寸法)が30[μm]になっており、互いに30[μm]の間隙を介して平行配設されている。このような配設により、絶縁性基板上では短冊状の搬送電極がストライプ状に並べられた構成になっている。
各搬送電極について更に詳しく述べると、それらはA群、第B群、第C群の3種類に分類され、同じ群に属する電極同士は互いに電気的に接続された状態になっている。そして、絶縁性基板101d上では、図中左側、A群に属するA搬送電極101a、B群に属するB搬送電極101b、C群に属するC搬送電極101cという順序が繰り返されるように、各搬送電極が配設されている。各A搬送電極101a、各B搬送電極101b、各C搬送電極101cに対しては、駆動電源回路30からA相駆動バイアス、B相駆動バイアス、C相駆動バイアスがそれぞれ印加される。なお、同図において、トナーはマイナス極性に帯電しており、第1トナー静電搬送基板101上にて図中右側から左側に向けて搬送される。
図3は、上述のA相駆動バイアス、B相駆動バイアス及びC相駆動バイアスの波形を示す波形図である。各相では、それぞれ電圧−100[V]、持続時間501[μsec]の直流パルス波が501[μsec]の間隔をおいて出力される。ここで、まず上記C搬送電極(101c)に印加されるC相駆動バイアスに着目してみると、時点t0においては0[V]になっている。このとき、上記C搬送電極(101c)に対してトナー搬送方向上流側で隣り合っている上記A搬送電極(101a)も0[V]になっている(C相駆動パルス参照)。また、トナー搬送方向下流側で隣り合っている上記B搬送電極(101a)には、−100[V]の電圧が印加されている(B相駆動バイアス参照)。このような状態において、時点t0における上記C搬送電極(101c)上のトナーは、殆ど動かずにそこに留まっている。
その後、334[μsec]が経過して時点t1が到来すると、上記C搬送電極(101c)には、−100[V]の電圧が印加される。すると、上記C搬送電極(101c)上に存在しているマイナス極性のトナーに対して、C搬送電極(101c)と反発する静電気力が作用する。このとき、上記C搬送電極に対してトナー搬送方向上流側で隣り合っている上記A搬送電極(101a)にも、−100[V]の電圧が印加されている。一方、トナー搬送方向下流側で隣り合っている上記B搬送電極(101b)は、0[V]になっている。このため、上記C搬送電極(101c)上に存在しているマイナス極性のトナーは、上記B搬送電極(101b)に向けて静電移動する。
その後、更に約334[μsec]が経過して時点t2が到来すると、それまで0[V]であった上記B搬送電極(101b)に、−100[V]の電圧が印加される。そして、上記C搬送電極(101c)上からの静電移動によって上記B搬送電極(101b)上に存在するようになったトナーに対して、B搬送電極(101b)と反発する静電気力が作用する。このとき、B搬送電極(101b)に対してトナー搬送方向上流側で隣り合っているC搬送電極(101c)にも、−100[V]の電圧が印加されている。一方、トナー搬送方向下流側で隣り合っているA搬送電極(101a)は、0[V]になっている。このため、B搬送電極(101b)上のトナーは、A搬送電極(101a)に向けて静電移動する。
その後、更に約334[μsec]が経過して時点t3が到来すると、それまで0[V]であったA搬送電極(101a)に、−100[V]の電圧が印加される。そして、B搬送電極(101b)からの静電移動によってA搬送電極(101a)上に存在するようになったトナーに対して、A搬送電極と反発する静電気力が作用する。このとき、A搬送電極(101a)に対してトナー搬送方向上流側で隣り合っているB搬送電極(101b)にも、−100[V]の電圧が印加されている。一方、トナー搬送方向下流側で隣り合っているC搬送電極(101c)は0[V]になっている。このため、A搬送電極(101a)上のトナーは、C搬送電極(101c)に向けて静電移動する。
以上のような静電移動の繰り返しにより、先に示した図2において、第1トナー静電搬送基板101上のトナーは図中右側から左側に向けて、ホッピングしながら静電移動していく。そして、第1トナー静電搬送基板101と感光体11とが所定の間隙を介して対向している現像領域に進入する。この現像領域において、感光体11の画像部11aは0[V]になっているのに対し、非画像部11bは−100[V]になっている。すると、トナーは現像領域中を図中右側から左側に向けて静電移動する過程で、感光体11の画像部11aに付着して静電潜像を現像する。
なお、感光体11の非画像部11bについては、第1トナー静電搬送基板101の各搬送電極に印加する駆動バイアスの電位平均値よりも、トナーの帯電極性側に大きな電位を帯びさせる必要がある。例えば、図3に示した各相の駆動バイアスは、それぞれ、持続時間501[μsec]の−100[V]の電位と、持続時間501[μsec]の0[V]の電位との繰り返しであるので、電位平均値は−50[V]になる。一方、図2における感光体11の非画像部11bの電位は、この−50[V]よりもマイナス極性側に大きな−100[V]になっている。このような電位の関係では、現像領域で第1トナー静電搬送基板101と感光体11の非画像部11bとの間に存在するトナーが、相対的に第1トナー静電搬送基板101に向けて静電移動するため、非画像部11bへの付着が阻止される。ところが、非画像部11bの電位を駆動バイアスの電位平均値よりもマイナス極性側に小さくしてしまうと、トナーを相対的に非画像部11bに向けて静電移動させ、付着させてしまうおそれがある。そこで、非画像部11bの電位を駆動バイアスの電位平均値よりもトナーの帯電極性側に大きくするのである。
次に、本複写機の特徴的な構成について説明する。
図4は、現像装置100と感光体11とを示す拡大構成図である。同図において現像装置100は、感光体11の付近でトナーを循環搬送するトナー搬送部120、これに向けてトナーを供給するトナー供給装置などを備えている。このトナー供給装置は、トナー供給部140と、これにトナーを補給するトナー補給部160とから構成されている。
図5、図6、図7は、それぞれ、上記トナー供給部140を示す平断面図、縦断面図、横断面図である。トナー供給部140は、図示しないトナーと摩擦促進物質との混合物を収容する混合物収容部たる収容室を有しており、この収容室は仕切壁141によって第1収容室142、第2収容室143の2つに仕切られている。第1収容室142内には、図示しない駆動手段によって回転駆動される第1搬送スクリュウ144が設けられている。また、第2収容室143内には、図示しない駆動手段によって回転駆動される第2搬送スクリュウ145が設けられている。これら第1搬送スクリュウ144,第2搬送スクリュウ145は、回転軸144a,145aの表面に螺旋突起144b,145bが突設せしめられた構造になっている。それぞれ、スクリューピッチ120[mm]、螺旋突起厚み1.5[mm]になっている。また、回転軸144a,145aは、螺旋突起144b,145bの先端を60[mm/sec]の周速で移動させるように回転せしめられる。また、各スクリュウは、アルミ等の導電性材料からなる基材の表面に、厚さ1[μm]程度のポリイミド樹脂層がコーティングされている。
収容室の両端付近には、それぞれ長さL2(例えば25mm)に渡って仕切壁141の設けられていない連通スペースがあり、2つの収容室(142、143)がここで連通している。図5において、第1搬送スクリュウ144は、図示しないスクリュウ駆動系によって回転駆動されるのに伴って、第1収容室142に収容されている上記混合物を図中左側から右側に向けて攪拌搬送する。これによって第1収容室142の図中右側の連通スペースまで搬送された混合物は、第2収容室143内に進入する。そして、スクリュウ駆動系によって回転駆動される第2搬送スクリュウ143によって今度は図中右側から左側に向けて搬送され、第2収容室143の図中左側の連通スペースを経由して第1収容室142内に戻る。このようにして、収容室内では、混合物が攪拌搬送されながら図中反時計回りに循環する。第2収容室143には、図示しないトナー濃度検知手段が配設されており、第2収容室143内の混合物のトナー濃度を検知してトナー濃度信号を図示しない補給制御部に出力する。この補給制御部は、トナー濃度信号に応じて、上記トナー補給部(図4の160)を駆動制御することで、適量のトナーを第1収容室142に補給させる。これにより、収容室内の混合物のトナー濃度が所定範囲内に維持される。第2収容室143内に新たに補給されたトナーは、混合物に取り込まれた後、攪拌搬送に伴って摩擦促進物質に摺擦せしめられながら、第1収容室142に送られる。
図6に示したように、第1収容室142の底には、メッシュ146が設けられている。第1収容室142内では、混合物が第1搬送スクリュウ144によって攪拌搬送されながらメッシュ146の上を通過する。このメッシュ146は、厚さ0.08[mm]のステンレス等からなる金属製板状部材に、長径0.2[mm]且つ短径0.15[mm]の複数の孔が約50[%]の開口率になるように設けられたものである。各孔は、その短径方向をスクリュウ軸線方向に沿わせるような姿勢で設けられている。第1搬送スクリュウ144の螺旋突起144b先端と、メッシュ146との間には、所定の間隙が保持されている。この間隙については、トナーの直径の1/5〜10倍程度の範囲に設定することが望ましい。望ましくはキャリア径の1/3〜2倍程度であると、混合物の入れ替え効率や混合攪拌効率が良くなる。本第1実施形態の複写機においては、0.7〜1.0[mm]程度に設定されている。第1搬送スクリュウ144の螺旋突起144bの先端と、メッシュ146との間には、所定のギャップを設けることが望ましい。
図7に示すように、第1搬送スクリュウ144の導電性基材には、スクリュウ電源回路190が接続されている。また、メッシュ146には、メッシュ電源回路191が接続されている。これら電源回路は、何れもスクリュウやメッシュにマイナス極性の電位を生じせしめるものであり、図示しないメイン制御部によってそれぞれ出力電圧が制御される。トナー供給部140から図示しない上述のトナー搬送部(120)にトナーが供給される際には、これら電源回路からの出力によって第1搬送スクリュウ144、メッシュ146がそれぞれトナーと同極性の電位を帯びる。詳しくは、第1搬送スクリュウ144は、メッシュ146よりもトナーと同極性側(マイナス極性側)に大きな電位を帯びる。また、メッシュ146は、図示しない第1トナー静電搬送基板(101)の各搬送電極に印加される駆動バイアスの平均電圧値よりも、トナーと同極性側に大きな電位を帯びる。更に詳しくは、例えば、上述のように駆動バイアスの平均電圧値が−50[V]である場合に、第1搬送スクリュウ144、メッシュ146がそれぞれ−1.45[kV]、−0.25[kV]の電位を帯びる。
すると、第1収容室142から図示しない第1トナー静電搬送基板(101)にかけて、図8に示すような電界が形成される。即ち、第1搬送スクリュウ(144)とメッシュ146との間には、スクリュウの螺旋突起144b先端からメッシュ146の孔146a内に向けて延びる電気力線が形成される。また、メッシュ146と図示しない第1トナー静電搬送基板(101)との間には、孔146aの出口付近から基板に向けて延びる電気力線が形成される。第1搬送スクリュウ(144)によって攪拌搬送される混合物中のトナーは、まず、前者の電気力線の影響を受けて、摩擦帯電粒子の表面から離脱して孔146内に静電移動する。次に、後者の電気力線の影響を受けて孔146を通過した後、第1トナー静電搬送基板(101)に向けて静電移動する。このような静電移動により、図7に示した第1収容室142内で攪拌搬送される混合物中のトナーが、摩擦帯電物質から分離されて第1トナー静電搬送基板(101)に供給される。なお、メッシュ146を通過した後のトナーは、メッシュ146の電位よりも平均電圧値の小さい基板上の各搬送電極に向けて相対的に静電移動しながら、基板上でトナー搬送方向にも相対的に静電移動していく。
第1搬送スクリュウ144の螺旋突起144b先端と、メッシュ146との電位差については、両者間の電界強度が絶対値で0.3〜3.5[kV/mm]の範囲におさまるように設定することが望ましい。3.5[kV/mm]よりも大きくなると、螺旋突起144bから延びる電気力線を孔146aのエッジに集中させてスクリュウからメッシュへの放電を引き起こし易くなるからである。また、0.3[kV/mm]よりも小さくなると、摩擦促進粒子の表面に付着しているトナーに対して、その付着力(鏡像力やファンデルワールス力)よりも大きい静電気力を付与することができなくなるからである。螺旋突起144b先端とメッシュ146との距離が1[mm]である場合には、両者の電位差を絶対値で0.3〜3.5[kV]にすれば、電界強度を上述の範囲に収めることができる。なお、より望ましい電界強度の範囲は、絶対値で0.8〜3.0[kV]である。
なお、図7に示したように、第2収容室143の底には、メッシュが設けられていない。よって、2つの収容室のうち、第1収容室142内のトナーだけが、第1トナー静電搬送基板101に供給される。
先に示した図4において、トナー搬送部140は、先に説明した第1トナー静電搬送基板101の他に、第2トナー静電搬送基板103を有している。そして、第1トナー静電搬送基板101を底面にしている移送部102と、これの重力方向下側で第2トナー静電搬送基板103を底面にしている回収部104とが重ねられた二重構造になっている。上記メッシュ146を透過してトナー搬送部140の第1トナー静電搬送基板101の図中右側端部に供給されたトナーは、EH現象によってホッピングしながら図中右側から左側に向けて搬送される。そして、感光体11に対向する現像領域で一部が静電潜像の現像に寄与する。現像に寄与したかった残りのトナーは、現像領域を通過した後に、第2トナー静電搬送基板103の図中左側端部上に落下する。そして、この第2トナー静電搬送基板103も、第1トナー静電搬送基板101と同様の複数の搬送電極を有している。第2トナー静電搬送基板103の図中左側端部に落下したトナーは、これら搬送電極に印加されるA〜C層の駆動パルスの影響を受けて、今度は図中左側から右側へとホッピングしながら搬送される。そして、トナー供給部140の第2収容室内に戻される。これにより、現像に寄与しなかったトナーがリサイクルされる。
トナー供給部140の第2収容室143には、トナー補給部160が着脱可能に連結している。このトナー補給部160は、上述の補給制御部に駆動制御されることで、内部に収容しているトナーを第2収容室143内に補給する。
以上の構成の現像装置100においては、トナー搬送部120と、トナー供給部140と、トナー補給部160との組合せにより、トナー搬送手段が構成されている。このトナー搬送手段とは、トナー静電搬送部材たる第1トナー静電搬送基板101の表面上に存在するトナーを、静電気力によってその表面に対して相対移動させながら潜像担持体たる感光体11との対向位置に搬送する手段である。また、本複写機の現像装置100においては、第1収容室142や第2収容室143が、トナーに対してこれの摩擦帯電を促進する摩擦帯電物質が混合された混合物を収容する混合物収容部として機能している。また、第1搬送スクリュウ144、第2搬送スクリュウ145、これらを回転駆動させる回転駆動系などからなる組合せが、混合物収容部内の混合物を攪拌する攪拌手段として機能している。また、メッシュ146、上記スクリュウ電源回路(190)、上記メッシュ電源(191)などからなる組合せが、攪拌手段によって攪拌される混合物をトナーと摩擦促進物質とに分離する分離手段として機能している。
金属材料からなるメッシュ146については、金属膜(板)のエッチングやエレクトロホーミング(電鋳)などによって容易に製造することができる。図9(a)、(b)、(c)に、エッチングによるメッシュ形成工程の一例を示す。この一例では、まず、図9(a)に示すように、SUS等の金属膜に対し、レーザー加工による微細加工を施したフォトマスクの開口パターンをフォトレジストによって形成する。次に、図9(b)に示すように、FeCl3等によってエッチングを行なって孔を形成する。更に、図9(c)に示すように、レジスト膜を剥離して、メッシュ146を完成させる。なお、エレクトロホーミングによるメッシュ形成については、図10(a)及び(b)に示すような工程で行えばよい。また、細線ワイヤーを編んでメッシュ146を形成することも可能である。
メッシュ146の材料としては、可撓性や摩耗耐久性を発揮するものを用いることが望ましい。また、メッシュ146の孔の形状は、丸形、楕円形、四角形、長方形、星形、異形等のものを採用することができる。本複写機では、図9(c)に示したように、メッシュの孔を楕円形状とし、長手方向の開口の大きさを孔の長さLとし、短手方向の開口の大きさを孔の幅Wとしている。
メッシュ146の厚さTについては、20〜150[μm]、好ましくは30〜80[μm]の範囲で設定することが望ましい。このとき、厚さTと、長さLと、幅Wとの関係が、500W≧L、且つ、W/5≦T≦3Wの範囲であることが好ましい。これは、孔の長さLと、幅Wが500W≧Lであると、メッシュ146がある程度強い剛性と、ある程度高い開口率とを両立させるためである。また、幅Wと厚さTとの関係がW/5≦T≦3Wでは金属膜としての平面性や曲率加工が確保できるためである。これにより、メッシュ146の剛性による、ボビン形状や平板の真直性、接触変形と形状回復を機能させることができる。
メッシュ146の開口率については、20〜70[%]の範囲とすることが好ましい。現像する画像が黒ベタの時、ムラ無くその放出量を確保するためには、かかる範囲にしなければならないことが実験によって確認されたからである。
メッシュ146の孔146aについては、トナーの平均粒子径rよりも大きく、摩擦促進粒子Pの平均粒径Rよりも小さいことが必要である。更に、図11(a)及び(b)に示したトナーと、摩擦促進粒子Pとの関係については、6r≦W、且つ、2W≦Rとすることが好ましい。トナーの平均粒子径rに対して6r≦Wとすることで、クラウド状のトナーによるメッシュの目詰まり起こり難くなり、孔146aを通してトナーを容易に供給し続けることができる。また、摩擦促進粒子Pの平均粒子Rに対して2W≦Rとすることで、摩擦促進粒子Pの粒径分布や、連続使用で摩擦促進粒子Pが摩耗、小粒径化したときにも、メッシュ146の孔を通過しないように対応できるよう余裕度を持たせている。
メッシュ146の構造については、金属材料の他、図12に示すように、第1トナー静電搬送基板101との対向面が金属材料層146bからなり、且つ混合物との接触面が有機樹脂146cからなる二重構造としてもよい。このような構造のメッシュ146では、摩擦促進粒子Pと接触する部分が有機材料であるので、摩擦促進粒子Pに対する摩擦によるダメージが金属材料に較べて小さく、その耐久性を向上させることができる。
メッシュ146の孔146aについては、図13に示すように、トナーが入り込む入口側から出口側に向けて先細になる構造にしてもよい。かかる構造にすることで、出口側にて、孔146a内壁の金属材料部分(146b)から図示しない第1トナー静電搬送基板(101)に向けて電気力線を確実に延ばすことができる。そして、このことにより、孔146aからのトナーの抜け性を向上させることができる。
また、メッシュ146については、図14に示すように、金属材料からなる基体146dの表面を、絶縁性の保護膜146eで被覆したものとしても良い。この場合、保護膜146eについては、電界強度劣化を起こさないよう0.5〜30[μm]の薄膜とし、SiO2、SiN、Ta2O5、ポリイミド等の材料を用いる。かかる構成のメッシュ146では、帯電したトナーと接触する表面が全て絶縁性の保護膜146eで覆われることで、基体146dからトナーへの電荷注入を阻止することができ、帯電量を適正に保つことができる。また、基体146dと混合物とが接触しないので、混合物、とりわけトナーの劣化も金属部と接触するものと較べて少なくすることができる。
また、メッシュ146については、図15に示すように、有機樹脂材料からなる基体146fの外面に、金属材料からなる金属層146gを蒸着や電鋳によって被覆したものとしても良い。この場合、基体146fに用いる有機樹脂材料としては、トナー帯電能力の比較的高いものを用いることが望ましい。金属層146gは、0.5〜5[μm]の厚みの薄膜であり、孔146a内のトナーがこの薄膜から第1トナー静電搬送基板101に向けて延びる電気力線に沿って孔内を通過する。かかる構成のメッシュ146では、基体146fが有機樹脂材料であるため、良好なフレキシブル性と弾性とを発揮するとともに、良好は形状復元性を発揮する。そして、外から力が加わった場合でも、その形状を安定して保つことができる。また、孔146a内のトナーと接触することでトナーの摩擦帯電を促すこともできる。
また、メッシュ146については、図16に示すように、金属材料からなる基材146hにおけるスクリュー対向面側に、有機樹脂剤量からなる保護層146iを貼り合わせたものとしてもよい。この場合、有機樹脂材料としては、トナー帯電能力の比較的高いものを用いることが望ましい。両材料の貼り合わせ法については、加熱接合によるものや、ホットプレスによるものを用いることができる。有機樹脂材料が用いられたメッシュ146は、良好なフレキシブル性、弾性、及び形状復元性を発揮することができる。
また、メッシュ146については、図17に示すように、トナーが進入する入口側から出口側に向けて広がるテーパー状の形状にしてもよい。外面に向かって傾斜があり、孔径が広がる形状に形成してもよい。出口側に向けて広がる傾斜を孔内壁に形成することで、内壁へのトナー付着を抑えることができる。
図18は、上記トナー補給部160を、上記トナー供給部(140)の第2搬送スクリュウ145とともに示す拡大構成図である。同図において、トナー補給部160は、補給用のトナーを収容するトナー収容部161、これの内部からトナー供給部の第2搬送スクリュウ145へとトナーを送り込むための送込ローラ162、掻き取りブレード163等を有している。送込ローラ162は、金属などの導電性の高い材料から構成されている。そして、トナー収容部161の下方で、その周面の一部をケーシング164に設けられた開口から露出させるように配設され、図示しない駆動手段によって図中時計回りに回転駆動される。送込ローラ162の周面には、図19に示すように、螺旋状に掘り込まれた螺旋溝162aが形成されている。この螺旋溝162aは、幅1[mm]、深さ0.2[mm]のサイズに形成されており、送込ローラ162の下方にある第2搬送スクリュウ(145)の上記螺旋突起(145b)とピッチが等しくなっている。そして、送込ローラ162と第2搬送スクリュウ(145)とは、それぞれ互いの対向部にて、螺旋溝162aと螺旋突起(145b)とを常に対向させるように、等しい周速で回転駆動せしめられる。
先に示した図18において、掻き取りブレード163は、その一端側がケーシング164に固定される一方で、もう一端側が固定されていない自由端になっている。そして、この自由端を送込ローラ162の周面に当接させるように配設されている。トナー収容部161内に収容されているトナーは、自重によって送込ローラ162に押さえ付けられて、その一部が螺旋溝162a内に充填される。このようにして螺旋溝162a内にトナーが充填された送込ローラ162は、図中時計回りに回転する過程で、周面上(非溝部)に付着している余分なトナーがウレタンゴムからなる掻き取りブレード163によって掻き取られる。そして、ケーシング164の開口を通って外部に出て、その下方に位置する第2搬送スクリュウ145との対向部である補給領域に至る。この補給領域では、送込ローラ162の周面と、第2搬送スクリュウ145の螺旋突起145bの先端との間に所定の間隙が保持されている。
図20は、上記トナー補給部(106)と、上記トナー供給部(140)との間に形成される補給領域の周囲構成を示す拡大図である。同図において、第2搬送スクリュウ145は、アルミ等の金属からなる基体の表面に、有機樹脂材料からなる保護層が被覆されている。そして、その金属製の基体は電気的に接地されている。一方、金属材料からなる送込ローラ162には、図示しない制御部によって出力が制御される送込電源回路192が接続されている。この送込電源回路192からの出力により、送込ローラ162はトナーの帯電極性と同極性であるマイナスの電位を帯びる。その電位値は、例えば−1.0[kV]である。
送込ローラ162の回転に伴い、送込ローラ162の螺旋溝162a内に充填されているトナーは、補給領域に向けて搬送される。この補給領域では、−1.0[kV]の電位を帯びている送込ローラ162と、接地されている第2搬送スクリュウ145の螺旋突起145aとの間に強電界が形成されている。補給領域に至った螺旋溝162a内のトナーは、この強電界を受けて、送込ローラ162からマイナス極性の電荷が注入されて、螺旋溝162a内から飛翔する。そして、間隙Gを通過して第2搬送スクリュウ145の螺旋突起145bに付着する。このようにして、トナー補給部160からトナー供給部140の第2収容室(143)内にトナーが補給される。補給されたトナーは、第2収容室内の混合物に混合されながら、第1収容室(142)に向けて攪拌搬送される。この過程で、トナーは更に摩擦帯電が促される。
補給直後のトナーの帯電量(Q/M)は、トナーの種類によって異なるが、本発明者らの試験によれば、−2〜−7[μC/g]であった。これは、トナーを現像に寄与させるにはまだ不十分な値であるが、混合物中の摩擦帯電粒子に静電吸着させるには十分な値である。メッシュ(146)の上側まで搬送された混合物中のトナーの帯電量は、−15〜−30[μC/g]まで上昇しており、十分に現像に寄与し得る値であった。参考までに、−1[μC/g]とごく微量に帯電させたトナーをトナー供給部(140)の第2収容室に手作業で投入したところ、それでもメッシュ(146)からのトナーのこぼれ落ちは殆ど起こらなかった。ごく僅かなこぼれ落ちが認められるものの、実使用に差し支えないレベルであった。但し、−1[μC/g]を境にして、それよりも小さくなると、急激にこぼれ落ち量が増加し出すことがわかった。よって、補給に先立って、トナーを絶対値で1[μc/g]以上に帯電させれば、こぼれ落ちを有効に抑え得ることができる。参考までに、こぼれ落ちが完全に無くなるトナー帯電量の絶対値は、3[μC/g]であった。
なお、先に示した図18において、送込ローラ162は、トナー収容部161内のトナーを補給先であるトナー供給部(140)の第2搬送スクリュウ145に向けて送り込む送込手段として機能している。また、送込ローラ162と送込電源回路192との組合せは、送込手段によって送り込む前あるいは送り込んでいる途中のトナーを帯電せしめる帯電手段として機能している。
参考までに、本複写機の上記補給領域で起こるトナーへの電荷注入の原理について説明する。図21は、電極間でトナーを飛翔させるための飛翔装置の要部を示す断面図である。この飛翔装置は、接地されたアルミ平板からなる接地電極201と、電源回路に接続されたアルミ平板からなるパルス印加電極202とを、ベークライトスペーサーによって1.0[mm]の間隙で対向させている。接地電極201の上面には、直径10[mm]×深さ0.2[mm]の円柱状の凹部が形成されており、この中には未帯電のトナーが充填されている。パルス印加電極202に電圧が印加されると、両電極間の電位差の影響により、接地電極201から凹部201a内のトナーに、パルス印加電圧とは逆極性の電流が流れ込む。これにより、トナーは電荷注入されて、凹部201a内からパルス印加電極202に向けて重力に逆らって飛翔する。
本発明者らは、図21に示した飛翔装置を用いて、次のような試験を行った。即ち、上記電源回路として、横河電機社製のファンクションジェネレータFC−120と、Trek製のHigh−Voltage Power Amplifier 10/10Aとの組合せからなるものを用いた。この組合せは、前者から発せられた方形パルスを後者によって1000倍に増幅するもので、パルス印加電極202への出力電圧値を変化させることができる。パルス印加電極202への出力波形は、Sony−Tektronix製のデジタルオシロスコープ 243ILによって視覚的に観察される。本発明者らは、かかる構成の飛翔装置を用いて、パルス印加電圧値と、トナーの飛翔状態との関係を調査してみた。パルス印加電圧については、上述のジェネレーターから±0.2V〜1.0V、1〜1000[msec]で発生させた方形パルスを、で1000倍に増幅してパルス印加電極202に出力した。電圧を変化させる毎に、トナーをセットしなおしたことは言うまでもない。
飛翔してパルス印加電極202に付着したトナーについては、質量を、吸引式ファラデーゲージMETTLER AT261 DeltaRangeで測定した。また、電荷量をKeithley System Electrometer Model 6514 で測定した。
被検トナーとしては、市場に出回っている6種類の市販トナーA〜Fと、本発明者らが試作した2種類の試作トナーG〜Hとを用いた。これら2種類の試作トナーは、何れも母体樹脂と顔料だけからなる。電荷制御剤やシリカ等の外添剤を添加する前のトナー母体粉末に、疎水性シリカH−2000(ヘキスト社製)を、Osterizerによって1.0[wt%](G)、3.0[wt%](H)の添加量で添加したものである。
図22は、この試験に基づいて作成されたトナー種類と、トナー帯電量との関係を示すグラフである。このグラフより、負電荷が注入された場合におけるトナー帯電量はマイナス帯電の場合で−2〜−7[μC/g]、プラス帯電の場合で+4〜+38[μC/g]であった。何れの極性に帯電させる場合でも、最も大きく帯電するのは試作トナーHであることがわかる。
そこで、試作トナーHを使用して、パルス印加電極202への印加パルスの高さや幅と、トナー帯電量との関係を求めた。この結果を図23と図24とに示す。図23は、パルス幅を1.0[sec]に固定した場合における印加電圧値(パルス高さ)とトナー帯電量との関係を示している。また、図24は、印加電圧値(パルス高さ)を−1000[V]に固定した場合におけるパルス幅とトナー帯電量との関係を示している。図23より、試作トナーHに電荷を注入するためには、プラス、マイナス何れの電荷であっても両電極間に少なくとも600[V]以上の電位差を生じせしめなければならないことがわかる。これは、1.0[mm]の間隙において、0.6×106[V/m]の平均電界強度に相当する。なお、印加電圧値が0[V]であってもトナーが+2〜3[μC/g]に帯電しているのは、次の理由からである。即ち、シリカH200をトナー母体樹脂に添加する際、高速攪拌によってトナーを摩擦帯電させたにもかかわらず、十分に放電させないままにそのトナーを使用したためである。
一方、図24より、電荷注入は1[msec]以下の極めて短時間で完了していることがわかる。これよりもパルス幅を短くすると、パルス印加電極202に向けて飛翔するトナーの量が激減してしまった。しかし、これは電荷注入が起こらなかったのではなく、飛翔が完了する前に、飛翔に必要な電界が消失してしまうためである。その証拠に、帯電して飛翔するトナーを高速度カメラで撮影しその平均飛翔移動時間(電極間飛翔時間)を求めたところ、約1〜2[msec]であった。そこで、1[msec]後にパルスの高さを0[V]にするのではなく、電荷注入は起きないがトナー飛翔は継続させられる値ぎりぎりまで落としたところ、電荷注入に必要な最小時間は0.2〜0.3[msec]であることが判明した。
本実施形態に係る複写機では、図4における混合物収容部たる第1収容室142や第2収容室143にセットする摩擦促進物質として、非磁性材料からなる摩擦促進粒子を主成分とするものを用いるようにユーザーに指定している。この指定については、例えば、かかる要件を満たす摩擦促進物質を収容室内にセットした状態で複写機や現像装置(100)を出荷することによって行うことができる。また例えば、上記要件を満たす摩擦促進物質を、複写機本体や現像装置(100)とともに梱包して出荷することによって行ってもよい。また例えば、上記要件を満たす摩擦促進物質の製品番号や商品名などを、複写機本体、現像装置(100)、これらの取扱説明書などに明記することによって行ってもよい。また例えば、ユーザーに対して書面や電子データ等をもって上記要件、製品番号、商品名などを通知することによって行ってもよい。
非磁性材料からなる摩擦促進粒子を主成分とする摩擦促進物質を指定したのは、次に説明する理由による。即ち、一般に、非磁性材料は磁性材料に比べて造粒し易く、小径化や粒径分布のシャープ化も容易であるため、摩擦促進物質に安定した摩擦帯電性能を発揮させることが可能になる。また、製造コストの低減化を望むこともできる。摩擦促進粒子の非磁性材料としては、本複写機ではガラスを適用している。しかし、帯電性能に応じて有機、無機の何れを適用してもよい。トナーとして負帯電性のものが用いられる場合には、正帯電性の非磁性材料として、石英(SiO2)、ガラス、ポリアクリル樹脂、ポリアミド、ナイロン樹脂メラミン樹脂等の材料を適用することができる。また、トナーとして正帯電性のものが用いられる場合には、負帯電性の非磁性材料として、テフロン(登録商標)樹脂、ポリ塩化樹脂、ポリエチレン樹脂等などを適用することができる。これらは磁場コントロールを必要としないので、簡易で耐久性の大きいキャリア材料として機能することができる。
また、本複写機においては、収容室内にセットする摩擦促進物質として、単一材料からなる摩擦促進粒子を主成分とするものを使用するようにユーザーに指定している。この指定については、非磁性材料と同様の方法によって行っている。かかる摩擦促進物質を指定したのは、次に説明する理由による。即ち、摩擦促進粒子を経時で摩耗させても、その表面材料を変化させないため、長期間安定した帯電性能を得ることができるからである。その材料としては、耐摩耗性に優れ、飽和帯電量が一定で、しかも帯電分布の小さなものが望ましい。例えば、BaTiO3・SiO2、Na2SiO3、B2O3・SiO2、Al2O3、Si3N4、TiO2、ZrO2など、高剛性で帯電能力に優れた無機材料が挙げられる。また、ポリアクリル樹脂、ポリアミド、ナイロン樹脂メラミン樹脂などの有機材料でもよい。摩擦促進粒子を単一材料で構成しても、その比重については、結晶化度を調整したり、微結晶の集合体の焼結体で微細気孔率をもたせたりすることで調整することができる。
次に、実施形態に係る複写機の変形例装置について説明する。
[第1変形例装置]
図25は、本第1変形例装置のトナー補給部160を、トナー供給部の第2搬送スクリュウ145とともに示す拡大構成図である。本第1変形例装置のトナー補給部160は、次に掲げる3点が実施形態のものと異なる。即ち、第1点目は、送込ローラ162の表面全領域において、無垢の金属材料の上に、絶縁材料からなる中抵抗層が被覆されている点である。この中抵抗層は、体積固有抵抗が108〜1012[Ωcm]に調整されており、導出ローラ162からトナーへの電荷注入を阻止する。第2点目は、送込電源回路192が、送込ローラ162表面の中抵抗層ではなく、その下の金属製基体に−500[V]の送込バイアスを印加する点である。また、第3点目は、図示のように、コロナチャージャー165を設けた点である。このコロナチャージャー165は、掻き取りブレード163による掻き取り領域を通過した送込ローラ162の螺旋溝162a内に充填されているトナーに向けてコロナ放電を生起せしめて、トナーをマイナス極性に帯電させる。コロナチャージャー165によるトナー帯電位置は、送込ローラ162と第2搬送スクリュウ145とが対向する補給領域よりもローラ回転上流に約90[°]回転した場所になっている。コロナチャージャー165によってマイナス極性に帯電せしめられたトナーは、補給領域にて−500[V]の金属製基体と接地された第2搬送スクリュウ145との電位差による強電界によって螺旋溝162a内から飛翔して第2搬送スクリュウ145の螺旋突起145bに付着する。
かかる構成の本第1変形例装置にて、実際にトナー補給部140からトナー供給部の第2搬送スクリュウ145上にトナーを補給したところ、補給後のトナーの平均帯電量Q/Mは−5〜−10[μC/g]であった。そして、第1収容室(142)の上記メッシュ(146)からトナーがこぼれ落ちるようなことはなかった。
[第2変形例装置]
図26は、本第2変形例装置のトナー補給部160を、トナー供給部の第2搬送スクリュウ145とともに示す拡大構成図である。本第2変形例装置のトナー補給部160は、次に掲げる点が第1変形例装置のものと異なる。即ち、コロナチャージャー(165)の代わりに、カーボンナノチューブシート(以下、CNTSという)166が送込ローラ162に対して0.2[mm]の間隙を介して対向するように配設されている点である。CNTS166は、図27に示すように、炭素原子が六角網面状に並んだ炭素原子によって形成された直径ナノメートルオーダーのカーボンチューブがマトリクス状に無数に並んでいるシート状の物体である。かかるCNTS166には、図26に示したように、放電電源回路193が接続されており、−1[kV]の放電バイアスが印加される。すると、CNTS166の各カーボンナノチューブから電子電界放出が起こって送込ローラ162の螺旋溝162a内のトナーがマイナス極性に帯電する。
かかる構成の本第2変形例装置にて、実際にトナー補給部140からトナー供給部の第2搬送スクリュウ145上にトナーを補給したところ、補給後のトナーの平均帯電量Q/Mは−4〜−8[μC/g]であった。そして、第1収容室(142)の上記メッシュ(146)からトナーがこぼれ落ちるようなことはなかった。
[第3変形例装置]
本第3変形例装置は、そのトナー補給部(140)の構成が、次の3点において、図18に示した実施形態のものと異なっている。即ち、第1点目は、送込ローラ162として、金属製の芯金の表面に中抵抗層が設けられたローラで、螺旋溝が形成されていないものを用いている点である。第2点目は、送込電源回路192が、送込ローラ162表面の中抵抗層ではなく、その下の金属製基体に−500[V]の送込バイアスを印加する点である。また、第3点目は、ウレタンゴム製の掻き取りブレード(163)に代えて、樹脂製の規制ブレードが設けられている点である。
かかる構成の第3変形例装置では、従来から一般的に用いられた一成分現像装置の現像ローラと規制ブレードとの組合せと同様に、送込ローラ162表面に担持されたトナー層が規制ブレードとの当接位置で層厚規制される際に、トナーが摩擦帯電せしめられる。反発明者らが実際にトナー補給部140からトナー供給部の第2搬送スクリュウ145上にトナーを補給したところ、補給後のトナーの平均帯電量Q/Mは−6〜−12[μC/g]であった。そして、第1収容室(142)の上記メッシュ(146)からトナーがこぼれ落ちるようなことはなかった。
[第4変形例装置]
図28は、本第4変形例装置におけるトナー補給部160を、トナー供給部の第2搬送スクリュウ145とともに示す拡大構成図である。本第4変形例装置におけるトナー補給部160は、次に掲げる2点が実施形態のものと異なる。即ち、第1点目は、掻き取りブレード(163)を設けていない点である。また、第2点目は、送込ローラ162として、金属製芯金162bの周面に、長さ5[mm]の導電性繊維(商品名:サンダーロン)からなる無数の起毛を螺旋状に立設せして螺旋ブラシ162cを形成したものを用いている点である。無数の起毛からなる螺旋ブラシ162cの螺旋ピッチは、第2搬送スクリュウ145の螺旋突起145bと同じであり、螺旋ブラシ162cと螺旋突起145bとが補給領域で常に向かい合うようになっている。送込ローラ162が図中時計回りに回転すると、螺旋ブラシ162cの起毛先端面にほぼ一層のトナー層が形成される。そして、このトナー層には、補給領域に形成される強電界の影響により、螺旋ブラシ162cからマイナス極性の電荷が注入される。そして、起毛先端から飛翔して第2搬送スクリュウ145に付着する。
かかる構成の本第4変形例装置にて、実際にトナー補給部140からトナー供給部の第2搬送スクリュウ145上にトナーを補給したところ、補給後のトナーの平均帯電量Q/Mは−3〜−8[μC/g]であった。そして、第1収容室(142)の上記メッシュ(146)からトナーがこぼれ落ちるようなことはなかった。
[第5変形例装置]
図29は、第5変形例装置を示す概略構成図である。本第5変形例装置は、ブラック(Bk),イエロー(Y),シアン(C),マゼンダ(M)の4色でフルカラー画像を形成するものであり、それぞれの色用のプロセスユニット200Y,M,C,Bkを備えている。なお、各色のプロセスユニットはほぼ同じ構成であるので、以下、Y,M,C,Bkの符号を必要に応じて省略して説明する。
プロセスユニット200は、図30に示すように、感光体11、ドラム帯電器12、除電ランプ23、クリーニング手段22、現像装置100がユニット化されたもので、複写機本体に対して着脱可能になっている。そして、寿命到達時に交換される。
現像装置100においては、実施形態に係る複写機と同様に、トナー補給部160の送込ローラ162の螺旋溝162aに充填されたトナーが、電荷注入によってトナー供給部140の第2搬送スクリュウ145に補給される。供給されたトナーは、第2収容室143の混合物に取り込まれながら、第2搬送スクリュウ145の回転駆動によって第1収容室142に向けて搬送される。そして、第1収容室142の第1搬送スクリュウ144に受け渡された後、メッシュ146によって混合物から分離されてトナー搬送部120に供給される。トナー搬送部120には、実施形態に係る複写機に設けられていた2つのトナー静電搬送基板のうち、トナーをトナー供給部140側から感光体11側に向けて搬送するための第1トナー静電搬送基板101しか設けられていない。この第1トナー静電搬送基板101は、剛性部101fとフレキシブル部101eとを有している。剛性部101fは、その基材が容易に撓らないような比較的剛性の高い材料で構成され、感光体11の下方でそれに対向するようにほぼ水平な状態で延在している。一方、フレキシブル部101eは、その基材に変形自在な材料が用いられており、剛性部101fから鉛直方向下方に向けて折れ曲がってトナー供給部140のメッシュ146に対向している。メッシュ146を通過したトナーは、このフレキシブル部101eに供給された後、重力にさからって図中下方から上方に向けてホッピングしながら搬送される。そして、フレキシブル部101eから剛性部101fに受け渡された後、今度は水平方向にホッピングしながら現像領域に向けて搬送されて現像に寄与する。現像に寄与しないで回収領域まで搬送されたトナーは、剛性部101fの端からこぼれ落ちた後、現像装置100のケーシング底面のテーパーに沿って下って第2収容室143内に戻される。
先に示した図29において、プロセスユニット200Y,M,C,Bkの図中左側方には、それぞれ光書込装置31Y,M,C,Bkが配設されており、それぞれ対応するプロセスユニットの感光体を光走査する。具体的には、図示しないスキャナ装置から送られてくる各色用の画像データに応じて変調されたレーザビームを出射する半導体レーザ、コリメートレンズ、ポリゴンミラー等の光偏向器、走査結像用光学系などを用いて光走査する。
プロセスユニット200Y,M,C,Bkの図中右側方には、紙搬送ベルト25を無端移動させる転写ユニット28が配設されている。この転写ユニット28は、図示しない駆動手段によって回転駆動される駆動ローラ26と、従動ローラ27と、4つの転写ローラ24Y,M,C,Bkとによって紙搬送ベルト25を張架している。そして、駆動ローラ26の回転駆動に伴って紙搬送ベルト25を図中時計回りに無端移動させる。転写ローラ24Y,M,C,Bkは、それぞれ、プロセスユニット200Y,M,C,Bkの感光体との間に紙搬送ベルト25を挟み込んで転写ニップを形成している。
複写機本体の下部には、転写紙束を収容している給紙カセット32が配設されており、転写紙束の一番上の転写紙Pを給紙コロ32aの回転駆動によって所定のタイミングで給紙路に送る。送られた転写紙Pは、レジストローラ対15を経て、紙搬送ベルト25に供給される。紙搬送ベルト25は、供給された転写紙Pを表面に保持ながら無端移動して、Y,M,C,Bk用の転写ニップに順次送り込む。この過程で、転写紙P上にY,M,C,Bkトナー像が順次重ね合わせて転写されてフルカラー画像が形成される。このようにしてフルカラー画像が形成された転写紙Pは、紙搬送ベルト25上からベルト定着方式の定着手段19に受け渡された後、排紙ローラ対20を経て機外のスタック部33にスタックされる。
かかる構成の第5変形例装置では、4つのプロセスユニット200Y,M,C,Bkによって転写紙P上に4つの色のトナー像を重ね合わせることで、フルカラー画像を形成することができる。
[第6変形例装置]
図31は、本第6変形例装置の画像形成部を示す概略構成図である。この第6変形例装置は、転写ベルト35を水平方向に細長く張架しながら無端移動せしめる転写ユニット34を備えている。また、この転写ユニット34の上方に平行配設された4つのプロセスカートリッジ200Y,M,C,Bkを備えている。
以下、必要に応じてY,M,C,Bkの符号を省略して説明する。
図32に示すように、プロセスカ−トリッジ200は、感光体11、ドラム帯電器12、現像装置100、クリーニング手段22などが一体的に形成されたユニットであり、複写機本体に対して着脱可能に構成されている。
現像装置100においては、実施形態に係る複写機と同様に、トナー補給部160の送込ローラ162の螺旋溝162aに充填されたトナーが、電荷注入によってトナー供給部140の第2搬送スクリュウ145に補給される。補給されて混合物に取り込まれたトナーは第2収容室143、第1収容室142を順次経由した後、メッシュ146のふるい機能によって混合物から分離されてトナー搬送部120に供給される。そして、第5変形例装置と同様のフレキシブル101e部と剛性部101fとを有する第1トナー静電搬送基板101表面上で、EH現象によってホッピングしながら現像領域に向けて搬送され、感光体11上の静電潜像を現像する。現像に寄与しなかったトナーは、第1トナー静電搬送基板101の端から落下した後、トナー搬送部120の底面のテーパーに沿って自重で第1収容室142内に戻される。
先に示した図31において、転写ユニット34は、駆動ローラ36と、従動ローラ37と、2次転写バックアップローラ38と、4つの転写ローラ24Y,M,C,Bkとによって転写ベルト35を張架している。そして、図示しない駆動手段によって回転駆動される駆動ローラ36によって図中反時計回りに無端移動せしめられる。4つの転写ローラ24Y,M,C,Bkは、それぞれプロセスカ−トリッジ200Y,M,C,Bkの感光体との間に転写ベルト35を挟み込んで1次転写ニップを形成している。各色のプロセスカ−トリッジ200Y,M,C,Bkの感光体上で現像されたトナー像は、それぞれの1次転写ニップで転写ベルト35に重ね合わせ転写されて4色トナー像となる。
この4色トナー像は、2次転写バックアップローラ38と2次転写ローラ39との間に転写ベルト35を挟み込んでいる2次転写ニップにて、タイミングを合わせて搬送されてくる転写紙P上に一括2次転写される。そして、転写紙Pの白色と相まってフルカラー画像となる。
以上の構成の第6変形例装置においても、4つのプロセスユニット200Y,M,C,Bkで形成した4色のトナー像を重ね合わせることで、フルカラー画像を形成することができる。
[第7変形例装置]
図33は、第7変形例装置を示す概略構成図である。本第7変形例装置は、イエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),黒(K)の各色の画像を形成するための4組のプロセスユニット401Y,M,C,Kを備えている。なお、以下、各符号の添字Y,M,C,Kは、それぞれイエロー、マゼンダ、シアン、黒用の部材であることを示す。
プロセスユニット401Y,M,C,Kは、潜像担持体としてのドラム状の感光体411Y,M,C,Kを有している。本第7変形例装置は、これらプロセスユニット401Y,M,C,Kの他、光書込ユニット407、給紙カセット403,404、レジストローラ対415、転写ユニット406、ベルト定着方式の定着装置419、排紙トレイ408を備えている。また、図示しない手差しトレイ、電源ユニットなども備えている。
上記光書込ユニット407は、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を備え、画像データに基づいて各感光体411Y,M,C,Kの表面にレーザー光を走査しながら照射する。
各プロセスユニット401Y,M,C,Kは、少なくとも、潜像担持体たる感光体(411Y,M,C,K)と、現像手段たる現像装置とを1つのユニットとして共通の支持体に支持させたものである。そして、それぞれ第7変形例装置の本体に対して着脱可能に構成されており、内部の部品が寿命に達した時点で交換される。
図34は、上記プロセスユニット401Y,M,C,Kのうちの何れか1つを、上記転写ユニット406の一部とともに示す拡大構成図である。なお、各プロセスユニット401Y,M,C,Kは、使用するトナーの色が異なる点の他は、ほぼ同様の構成になっているので、同図においては、符号の添字Y,M,C,Kを省略している。同図において、プロセスユニット401は、感光体411の他、これの表面に対して潤滑剤を塗布するブラシローラ424を有している。また、クリーニング処理を施す揺動可能なカウンタブレード422a等からなるドラムクリーニング装置や、除電処理を施す除電ランプ423なども有している。更には、感光体411を一様帯電せしめる帯電手段412や、現像装置500なども有している。
プロセスユニット401において、図示しない電源によって交流の帯電バイアスが印加されるローラ等を有する帯電手段412は、感光体411に当接するように配設されている。そして、図示しない駆動手段により、当接部でその表面を感光体411の表面移動と同方向に移動させるように回転せしめられながら、感光体411の表面を一様帯電せしめる。このように一様帯電せしめられた感光体411の表面に、上記光書込ユニット(図33の407)で変調及び偏向されたレーザー光が走査されながら照射されると、感光体411の表面に静電潜像が形成される。この静電潜像は、後述する現像装置500によってトナー像に現像される。
先に示した図33において、本体筺体の下部には、2つの給紙カセット403,404が配設されている。これら給紙カセット403,404は、内部に転写紙束を収容しており、その一番上の転写紙Pに給紙ローラ403a,404aを押し当てている。そして、所定のタイミングで給紙ローラ403a,404aを回転させて、転写紙Pを給紙路に送り出す。この給紙路の末端には、レジストローラ対415が配設されており、送られてきた転写紙Pを、Y用のプロセスユニット401Yの感光体411Y上に形成されたYトナー像に同期させ得るタイミングで、転写ユニット406に向けて送り出す。
転写ユニット406は、感光体411Y,M,C,Kのそれぞれに接触して4つの転写ニップを形成しながら無端移動する転写搬送ベルト460を有している。転写搬送ベルト460は、各プロセスユニット401Y,M,C,Kの感光体411Y,M,C,Kに接触して4つの転写ニップを形成するように、4つの支持ローラ461に掛け回されている。これらの支持ローラ461のうち、図中最も左側のものに対しては、図示しない電源から所定電圧が印加された静電吸着ローラ462が対向するように配置されている。この静電吸着ローラ462からの電荷付与により、転写搬送ベルト460は、そのおもて面(スープ外面)に転写紙Pを静電吸着することができる。
各転写ニップの下方には、転写搬送ベルト460の裏面に接触する転写バイアス印加ローラ465Y,M,C,Kが設けられている。これら転写バイアス印加ローラ465Y,M,C,Kには、図示しない転写バイアス電源によって定電流制御される転写バイアスが印加される。これにより、転写搬送ベルト460に転写電荷が付与され、各転写ニップにおいて転写搬送ベルト460と感光体表面との間に所定強度の転写電界が形成される。なお、本第7変形例装置においては、転写バイアス印加部材として転写バイアス印加ローラ465を設けているが、ローラに代えて、ブラシやブレード等のものを設けてもよい。
図中の一点鎖線は、転写紙の搬送経路を示している。給紙カセット403,404から給送された図示しない転写紙は、図示しない搬送ガイドにガイドされながら複数の搬送ローラ対によって搬送され、レジストローラ対415が設けられている一時停止位置に送られる。このレジストローラ対415によって所定のタイミングで送り出された転写紙は上記転写搬送ベルト460に保持され、感光体411Y,M,C,Kに接触し得るY転写ニップ、M転写ニップ、C転写ニップ、K転写ニップを順次通過する。これにより、各プロセスユニット401Y,M,C,Kの感光体411Y,M,C,K上で現像されたY,M,C,Kトナー像が、それぞれ転写ニップで転写紙Pに重ね合わされ、上記転写電界やニップ圧の作用を受けて転写紙上に転写される。この重ね合わせの転写により、転写紙上にはフルカラー画像が形成される。
フルカラー画像が形成された図示しない転写紙は、加熱ベルトを備える上記定着装置419内でこのフルカラートナー像が定着された後、排紙トレイ408上に排出される。
先に示した図34において、トナー像が転写された後の感光体411の表面は、ブラシローラ424で所定量の潤滑剤が塗布された後、カウンタブレード422aでクリーニングされる。そして、除電ランプ423から照射された光によって除電され、次の静電潜像の形成に備えられる。
カウンタブレード422aによってクリーニングされた感光体411表面には、どうしても除去し切れなかったトナーが僅かながら残ってしまう。このように残ってしまったクリーニング残トナーは、感光体411表面に当接しながら回転する帯電手段412に付着して汚れとなってしまう。この汚れは、ローラクリーニングによって除去される。
現像装置500は、静電搬送手段として、板状の静電搬送基板ではなく、筒状の静電搬送ドラム501Aを備えている。この静電搬送ドラム501Aは、例えば次のようにして製造されたものである。即ち、まず、ポリイミドなどからなる円筒状の樹脂基材のおもて全面に、アルミ等からなる導電層が蒸着された後、導電層がフォトリソグラフィー法によって各搬送電極やバスライン(共通電極にパターンニングされる。そして、パターンニングされた各電極や樹脂基材の上に、絶縁層が被覆されたものである。絶縁層としては、SiO2等の無機材料をスパッタ工法によって薄層化したものや、スピンコートによって形成した厚み1〜2[μm]程度の有機膜などを、各搬送電極の上に貼り付けたものでもよい。かかる構成の静電搬送ドラム501Aは、図示しない駆動手段によって図中時計回りに回転駆動されるようになっている。本第7変形例装置は、静電搬送部材として、表面の無端移動が可能なものを用いるのである。但し、現像期間中には静電搬送ドラム501Aの回転駆動が停止される。
図35は、静電搬送ドラム501Aを示す斜視図である。同図では、便宜上、ドラム表面に被覆されている絶縁層の図示を省略している。静電搬送ドラム501Aのおもて面には、ドラム軸線方向に延在する短冊状の搬送電極が、周方向の全周に渡って所定間隔で並ぶように複数設けられている。これら搬送電極は、幅寸法が30[μm]になっており、互いに30[μm]の間隙を介して配設される。そして、A搬送電極501a、B搬送電極501b、C搬送電極501cという順で並んでおり、それぞれ、現像中には図3に示したA相、B相、C相駆動パルス電圧が出力される。
図36は、本第7変形例装置の現像装置500を、感光体411とともに示す拡大構成図である。この図においても、Y,M,C,Kの添字の記載を省略している。同図において、現像装置500は、静電搬送ドラム501Aの他、トナー補給部520、トナー供給部540、クリーニング装置560などを備えている。トナー補給部520は、内部に収容しているトナーを、補給ローラ526の回転によってトナー供給部540の第2収容室543内に補給する。なお、同図において静電搬送ドラム501Aの周囲に付されている矢印は、静電搬送ドラム501Aの回転を示すものではなく、ドラム面上におけるトナーの移動を示している。
上記トナー供給部540は、静電搬送手段の重力方向上方ではなく、重力方向下方に配設されている。トナー供給部540の第2収容室543内に補給されたトナーは、トナーと摩擦帯電粒子との混合物に混合されて摩擦帯電が促されながら、第2搬送スクリュウ545によって搬送された後、第1収容室542に受け渡される。第1収容室542内の第1搬送スクリュウ544に、図示しない電源によってスクリュウバイアスが印加されると、第1搬送スクリュウ544と、それの下方にあるメッシュ546との間に電位差が生ずる。第1搬送スクリュウ544によって図中奥行き方向に搬送される混合物中のトナーは、この電位差により、混合物中の摩擦帯電粒子表面から離脱して、重力方向にあるメッシュ546に向けて飛翔する。そして、メッシュ546を通過して、静電搬送ドラム501Aにおける図中下側の面に供給される。次いで、各搬送電極に現像用の駆動パルス電圧が出力される静電搬送ドラム501Aの曲面上を、EH現象によって図中反時計回りにホッピングしながら曲面に沿って搬送される。このとき、本発明者らの試験によれば、トナーをドラム面から離脱させてしまうことはなかった。
トナーは、静電搬送ドラム501Aの曲面に沿って図中反時計回りに約280[°]搬送されると、感光体511に対向する現像領域に到達し、ここで一部が静電潜像の現像に寄与する。現像に寄与したかった残りのトナーは、現像領域を通過する。
上記トナー供給部540の図中右側の端部には、静電搬送ドラム501Aに向かって突出する形状の回収通路が形成されている。この回収通路は、第1収容室542と仕切られているが、図中上側の天端付近だけは第1収容室542と連通するようになっている。回収通路の下端には、静電搬送ドラム501Aに向けて開口する回収口が設けられている。また、この回収通路内には、図中奥行き方向に延在する回収電極を通路長さ方向に所定のピッチで並べた回収電極群448が設けられている。各回収電極には、プラス極性の直流パルス電圧である回収パルス波が、それぞれ位相をずらして出力される。静電搬送ドラム501A上をホッピングしながら現像領域を通過した余剰のトナーは、上述の回収口との対向位置を通過する際に、これら回収電極群548に静電的に引き寄せられて、ドラム面上から回収通路内に移行する。そして、各回収電極に出力される回収パルス波の影響によって回収通路に沿って図中下側から上側に向けて搬送されて、第1収容室542内に回収される。これにより、現像に寄与しなかったトナーがリサイクルされる。このように、本第7変形例装置では、回収通路や回収電極群548が、静電搬送手段たる静電搬送ドラム501Aの表面から余剰のトナーを回収する回収手段として機能している。
トナー供給部540の第2収容室543には、トナー濃度検知手段547が配設されており、第2収容室543内の混合物のトナー濃度を検知してそれに応じた値の電圧を出力する。この出力電圧の値は、図示しない制御部に送られる。制御部は、RMA等の記憶手段を備えており、この中にトナー濃度検知手段からの出力電圧の目標値であるY用Vtrefや、他の現像装置に搭載されたTセンサからの出力電圧の目標値であるM,C,K用Vtrefのデータを格納している。そして、Y用の現像装置500については、トナー濃度検知手段547からの出力電圧の値とY用Vtrefを比較し、トナー補給部を比較結果に応じた時間だけ駆動させる。このようにトナー補給部の駆動が制御されることで、トナー供給に伴ってトナー濃度を低下させたトナー供給部540内の混合物に適量のYトナーが補給され、そのYトナー濃度が所定の範囲内に維持される。他色の現像装置500についても、同様のトナー補給制御が実施される。
静電搬送ドラム501Aの図中下方には、クリーニングローラ571、除去ブレード572等を有するクリーニング装置560が、静電搬送ドラム501Aに対して接離可能に配設されている。そして、図示しないソレノイソ等の移動手段によって上下移動せしめられることで、クリーニングローラ571を静電搬送ドラム501Aに接離させることができる。このクリーニングローラ571は、金属製の芯金に、ゴムや樹脂等の弾性材料が被覆された構成になっており、図示しない駆動手段によって図中時計回りに回転駆動される。また、図示しない電源により、トナーとは逆極性(本例では正極性)のクリーニングバイアスが印加される。静電搬送ドラム501Aの回転駆動が行われない現像期間中には、クリーニングローラ571が静電搬送ドラム501Aとの接触位置から待避せしめられて、ドラム上におけるトナーのホッピングを邪魔しないようになっている。
次に、本発明に係る画像形成装置に対して、好ましくない構成を採用してしまった比較例装置について説明する。
[第1比較例装置]
本第1比較例装置は、図25に示した上記第2変形例装置とほぼ同様の構成であるが、次の点が異なっている。即ち、コロナチャージャー165に印加するコロナ放電電圧が第2変形例装置のものよりも低くなっている点である。本発明者らが、実際に本第1比較例装置にて、トナー補給部160からトナー供給部の第2搬送スクリュウ145上にトナーを補給したところ、第1収容室(142)のメッシュ(146)から多量のトナーが自重によってこぼれ落ちてしまった。
[第2比較例装置]
本第2比較例装置は、第1実施形態に係る複写機、第1変形例装置、第2変形例装置の何れかとほぼ同様の構成になっている(以下、それぞれの構成とほぼ同様のものを、第2比較例装置A、第2比較例装置B、第2比較例装置Cという)。但し、次の点だけがそれら装置と異なっている。即ち、送込ローラ162の螺旋溝162aの深さを0.2[mm]よりも大幅に深い1.0[mm]にした点である。
本発明者らは、第2比較例装置A、第2比較例装置B、第2比較例装置Cのそれぞれについて、実際にトナー補給部160からトナー供給部の第2搬送スクリュウ145上にトナーを補給してみた。すると、何れの第2比較例装置においても、送込ローラ162の螺旋溝162a内から飛翔するトナーの量が減り、補給領域を通過した後の螺旋溝162a内に多量のトナーが残っていた。溝内のトナー層が厚すぎて、トナーが良好に帯電しなかったためと考えられる。
[第3比較例装置]
本第3比較例装置は、第1実施形態に係る複写機、第1変形例装置、第2変形例装置、第4変形例装置の何れかとほぼ同様の構成になっている(以下、それぞれの構成とほぼ同様のものを、第3比較例装置A、第3比較例装置B、第3比較例装置C、第3比較例装置Dという)。但し、次の点だけがそれら装置と異なっている。即ち、補給領域にて、送込ローラ162の螺旋溝162a又は螺旋ブラシ162cと、第2搬送スクリュウ145の螺旋突起145bを対向させないように、両者の同期をずらしてローラとスクリュウとを回転させる点である。
本発明者らは、第3比較例装置A、第3比較例装置B、第3比較例装置C、第3比較例Dのそれぞれについて、実際にトナー補給部160からトナー供給部の第2搬送スクリュウ145上にトナーを補給してみた。すると、何れの第3比較例装置においても、送込ローラ162から飛翔するトナーの量が1/4程度まで減少してしまった。補給領域にて、送込ローラ162上のトナーと、第2搬送スクリュウ145の螺旋突起145bとの距離が遠すぎる結果、トナーを送込ローラ162表面との付着力に抗して離脱させ得るほど強い電界が形成されなかったためと考えられる。
次に、本発明を適用した複写機の第2実施形態について説明する。本第2実施形態の複写機は、先に説明した第3変形例装置とほぼ同様の構成になっている。但し、次の2点が異なっている。即ち、第1点目は、上述の規制ブレードを設けていない点である。これにより、トナー補給部(160)内にて、トナーの摩擦帯電はなされなくなっている。また、第2点目は、トナー補給部(160)のトナー収容部(161)内にセットするトナーとして、所定規格のものが指定されている。この所定規格とは、工場からの出荷に先立ち、何らかの方法によって帯電せしめられた後、自然放電を抑えるために絶縁性封入袋にほぼ真空の状態で密閉され、且つ使用有効期限が定められたものである。この使用有効期限内では、密閉されたトナーの平均帯電量Q/Mが−1[μC/g]よりもマイナス側に大きな値に保たれる。勿論、使用有効期限が過ぎれば、−1[μC/g]よりも小さくなる場合もあり得る。
かかる構成の本複写機においては、指定されたトナーを定められた使用有効期限内で使用する限り、トナー供給部(140)の収容室(142、143)内にて、摩擦促進粒子に良好に静電吸着させる。そして、このことにより、上記メッシュ(146)からのトナーのこぼれ落ちを有効に抑えることができる。なお、トナーの指定法については、上述した摩擦促進物質の指定法と同様である。
参考までに、本発明者らは、次のような試験を行った。即ち、トナーと磁性キャリアとからなる二成分現像剤を現像ロールに担持して現像を行う二成分現像葬式の画像形成装置にて、現像装置内で二成分現像剤を長時間攪拌せしめてトナー帯電量Q/Mを−25[μC/g]で飽和させた。そして、そのトナーにて、ドラム状の有機感光体上でベタ画像を現像した後、現像トナーをウレタンゴムブレードで掻き落として回収した。更に、回収トナーをガラス容器中に入れて密閉した。一ヶ月後に開封してトナーの帯電量Q/Mを測定したところ、−10[μC/g]であった。このトナーを本第2実施形態に係る複写機のトナー収容部(161)にセットしてトナー補給を行ったところ、送込ローラ(162)から第2搬送スクリュウ(145)に向けて十分量のトナーが飛翔した。そして、第1収容室(142)のメッシュ(146)からトナーがこぼれ落ちるようなことはなかった。
以上、第1実施形態に係る複写機や第4変形例装置においては、それぞれ、トナー補給部(160)に設ける帯電手段として、トナー粒子を電荷注入によって帯電せしめるものを用いている。かかる構成では、コロナ放電によって帯電せしめるものを用いる場合とは異なり、オゾンを発生させることなく、トナーを良好に帯電せしめることができる。また、摩擦によって帯電せしめるものを用いる場合とは異なり、摩擦によるトナー劣化を引き起こすことなく、トナーを良好に帯電せしめることができる。
また、第1変形例装置においては、トナー補給部(160)に設ける帯電手段として、トナー粒子をコロナ放電によって帯電せしめるものを用いている。かかる構成では、トナー粒子を摩擦しないで帯電させるので、摩擦帯電方式の場合に比べてトナーに対するストレスを低減することができる。また、電荷注入によって帯電させる場合に比べて、トナーの帯電量を大きくすることもできる。更には、先端を放電に伴って徐々に消耗していくカーボンナノチューブからの電子電界放出によって帯電させる場合に比べて、帯電手段の寿命を延ばすことができる。
また、第2変形例装置においては、トナー補給部(160)に設ける帯電手段として、トナー粒子を電子電界放出によって帯電せしめるものを用いている。かかる構成では、トナー粒子を摩擦しないで帯電させるので、摩擦帯電方式の場合に比べてトナーに対するストレスを低減することができる。また、電荷注入によって帯電させる場合に比べて、トナーの帯電量を大きくすることもできる。更には、コロナ放電方式とは異なり、オゾンを発生させることなく、トナーを帯電させることができる。
また、第3変形例装置においては、トナー補給部(160)に設ける帯電手段として、トナー粒子を摩擦によって帯電せしめるものを用いている。かかる構成では、コロナ放電、電荷注入、あるいは電子電界放出を生起せしめるための電源を設けることなく、トナーを良好に帯電させることができる。
また、第1実施形態に係る複写機や各変形例装置においては、トナー補給部(160)に設ける帯電手段として、トナー粒子の平均帯電量Q/Mの絶対値を1.0[μC/g]以上にする帯電能力のものを用いている。かかる構成では、トナーの帯電不良によるメッシュ(146)からのこぼれ落ちをより確実に抑えることができる。
また、第1実施形態に係る複写機や各変形例装置においては、トナー補給部(160)に設ける送込手段として、トナー収容部(161)内のトナーを担持しながら駆動して補給先たるトナー供給部(140)に補給するトナー担持部材たる送込ローラ(162)を用いている。加えて、トナー補給部(140)に設ける帯電手段として、この送込ローラ(162)に担持されるトナーを帯電せしめるものを用いている。かかる構成では、トナー収容部(161)内に収容されている全トナーのうち、補給直前のトナーだけを帯電させるので、トナー収容部(161)内で繰り返し帯電させることによるトナー劣化を抑えることができる。
また、第2実施形態に係る複写機においては、トナー収容部(161)にセットするトナーとして、工場出荷に先立って予め帯電せしめられ且つ使用有効期限が定められたトナー粒子を主成分とするものを指定している。かかる構成では、指定したトナーが定められた使用有効期限内で使用される限り、メッシュ(146)からの帯電不良トナーのこぼれ落ちを有効に抑えることができる。
また、第2実施形態に係る複写機においては、使用有効期限が到来する前のトナーにおけるトナー粒子の平均帯電量の絶対値が1.0[μC/g]以上であるので、定められた使用有効期限内でトナーが使用される限り、メッシュ(146)からの帯電不良トナーのこぼれ落ちをより確実に抑えることができる。
また、各実施形態に係る複写機や各変形例装置においては、第1収容室(142)内お混合物をトナーと摩擦促進物質とに分離する分離手段として、トナーと、これよりも平均粒径の大きな摩擦促進粒子を主成分にする摩擦促進物質とを、メッシュ(146)によって分離するものを用いている。かかる構成では、メッシュ(146)のふるい機能によってトナーを容易に分離することができる。
また、各実施形態に係る複写機や各変形例装置においては、各収容室(142、143)内で混合物を攪拌する攪拌手段として、回転軸144a,145aの周面に螺旋突起144b,145bが形成されたスクリュウ部材たる第1搬送スクリュウ144、第2搬送スクリュウ145の回転駆動によって混合物をメッシュ(146)の面方向に搬送しながら攪拌するものを用いている。かかる構成では、混合物を搬送しながら、トナーと混合物とを容易に分離することができる。
また、第1実施形態に係る複写機、第1変形例装置、あるいは第2変形例装置においては、トナー補給部(140)に設けるトナー担持部材として、回転可能なローラ部材の周面に螺旋溝162aが形成され、溝内に充填されたトナーを混合物収容部たる第2収容室(143)内に補給するものを用いている。更には、スクリュウ部材たる第1搬送スクリュウ144として、螺旋突起144bの軸方向におけるピッチがトナー担持部材たる送込ローラ162における溝の軸方向におけるピッチと同じであるものを用いている。かかる構成では、補給領域にて、螺旋突起144bと螺旋溝162aとを常に最短距離で対向させるので、過剰なバイアスを印加することなく、トナーを良好に帯電させることができる。
また、第4変形例装置においては、トナー担持部材たる送込ローラ162として、回転可能な回転軸たる金属製芯金162bの周面に起毛が螺旋状に立設せしめられてなる螺旋ブラシ162cを形成したものを用いている。更には、スクリュウ部材たる第2搬送スクリュウ145として、螺旋突起145aの軸方向におけるピッチが送込ローラ162の螺旋ブラシ162c軸方向におけるピッチと同じであるものを用いている。かかる構成においても、補給領域にて、螺旋突起144bと螺旋ブラシ162cとを常に最短距離で対向させるので、過剰なバイアスを印加することなく、トナーを良好に帯電させることができる。