JP4449251B2 - 弁開閉時期制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の動弁装置において吸気弁または排気弁の開閉時期を制御するために使用される弁開閉時期制御装置(内燃機関用バルブ開閉タイミング調整装置)に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の弁開閉時期制御装置の一つとして、内燃機関のクランク軸から内燃機関の吸気弁または排気弁を開閉するカム軸に駆動力を伝達する駆動力伝達系に設けられ、前記クランク軸または前記カム軸と一体的に回転するハウジング部材と、このハウジング部材に設けたシュー部に相対回転可能に組付けられてベーン部にて前記ハウジング部材内に進角油室と遅角油室を形成し前記カム軸または前記クランク軸と一体的に回転するロータ部材と、作動油の供給によりアンロック作動して前記ハウジング部材と前記ロータ部材の相対回転を許容し作動油の排出によりロック作動して前記ハウジング部材と前記ロータ部材の相対回転を最進角位相位置と最遅角位相位置間の両端回転限界位置を除いた中間領域内の目標位相位置にて規制する相対回転制御機構と、前記進角油室及び前記遅角油室と前記相対回転制御機構への作動油の給排を制御する油圧回路を備えたものがあり、例えば特開平11−223112号公報に示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記した弁開閉時期制御装置においては、相対回転制御機構がハウジング部材とロータ部材の相対回転を最進角位相位置と最遅角位相位置間の両端回転限界位置を除いた中間領域内の目標位相位置にて規制する状態にて、内燃機関の良好な始動性が得られるように、吸気弁及び排気弁の開閉時期が設定されている。このため、内燃機関の始動時において、相対回転制御機構がハウジング部材とロータ部材の相対回転を目標位相位置にて規制しない場合には、カム軸に作用する変動トルクを含む駆動力伝達系のトルク変動に起因してハウジング部材とロータ部材が不安定に相対回転して、内燃機関の始動性が損なわれるおそれがある。
【0004】
ところで、内燃機関の始動時において、相対回転制御機構がハウジング部材とロータ部材の相対回転を目標位相位置(中間位相位置)にて規制することを阻害する要因としては、油圧回路の設定に起因するものや、進角油室及び遅角油室と相対回転制御機構に作動油が残留することに起因するものがある。また、従来の油圧回路においては、内燃機関の始動時に、油圧回路が備える油圧制御弁を如何に制御するかについて十分な検討がなされておらず、内燃機関の始動時から通常運転時に移行する過程において、ハウジング部材とロータ部材の相対回転位相が過渡的に不安定となる(ハウジング部材に対してロータ部材が進角側および遅角側に大きくばたつく)おそれがある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記した問題に対処すべく、上記した弁開閉時期制御装置において、進角油室及び遅角油室と相対回転制御機構への作動油の給排を制御する油圧回路として、内燃機関の始動時における作動油の油圧が制御可能油圧以上となった後の始動後期には、前記進角油室と前記遅角油室の交互に繰り返し作動油を供給して、前記進角油室と前記遅角油室に作動油を充満させることが可能で、その後に前記相対回転制御機構に作動油を供給可能な油圧回路を採用したこと(請求項1に係る発明)に特徴がある。
【0006】
また、本発明の実施に際しては、前記進角油室と前記遅角油室の交互に繰り返し作動油を供給するときの、前記油圧回路が備える油圧制御弁の制御値を、内燃機関の停止前の通常運転時において前記ハウジング部材と前記ロータ部材の相対回転位相を保持する際の制御値を基に設定すること(請求項2に係る発明)が可能である。この場合において、前記油圧制御弁の制御値を、作動油の温度に応じて補正すること(請求項3に係る発明)が望ましい。
【0007】
また、本発明の実施に際しては、前記進角油室と前記遅角油室の交互に繰り返し作動油を供給するときの、1回で供給される作動油の油量を、前記進角油室と前記遅角油室で異にすること(請求項4に係る発明)が可能である。この場合において、前記進角油室と前記遅角油室に1回で供給される作動油の油量比を、前記相対回転制御機構がロック状態であるときの前記進角油室と前記遅角油室の容積比を基に設定すること(請求項5に係る発明)が可能である。
【0008】
また、本発明の実施に際しては、前記進角油室と前記遅角油室に1回で供給される作動油の油量を、前記ハウジング部材と前記ロータ部材の相対回転位相を検出する位相検出手段の検出値(実位相位置)と前記目標位相位置との差を基に設定すること(請求項6に係る発明)が可能である。また、前記進角油室と前記遅角油室に1回で供給される作動油の油量を、経過時間に応じて順次減少させること(請求項7に係る発明)が可能である。また、作動油の油圧が制御可能油圧以上となったことの判定を、内燃機関の始動開始後の所定経過時間にて行うこと(請求項8に係る発明)が可能である。
【0009】
また、本発明の実施に際して、前記油圧回路は、内燃機関の始動時に、作動油の油圧が制御可能油圧となるまでは、前記進角油室及び前記遅角油室の両方と、前記相対回転制御機構から作動油を排出可能であること(請求項9に係る発明)が望ましい。
【0010】
【発明の作用・効果】
本発明による弁開閉時期制御装置(請求項1に係る発明)においては、内燃機関の始動時において、作動油の油圧が制御可能油圧以上となった後の始動後期には、油圧回路により進角油室と遅角油室の交互に繰り返し作動油を供給して、進角油室と遅角油室に作動油を充満させることが可能で、その後に相対回転制御機構に作動油を供給可能である。このため、内燃機関の始動後期から通常運転に移行する過程において、相対回転制御機構による規制(ロック)を解除した状態で、ハウジング部材とロータ部材の相対回転位相を上記した目標位相位置に略一致させて保持することができ、ハウジング部材とロータ部材の相対回転位相を所定の中間位相で安定させることができる。
【0011】
ところで、本発明による弁開閉時期制御装置(請求項1に係る発明)においては、内燃機関の始動後期から通常運転に移行する過程において、油圧回路により進角油室と遅角油室の交互に繰り返し作動油を供給するものであるため、進角油室と遅角油室に作動油が充満される前において、仮に、相対回転制御機構による規制(ロック)が解除されても、それまでに進角油室と遅角油室に供給された作動油によってハウジング部材とロータ部材の相対回転を抑制することが可能である。したがって、ハウジング部材とロータ部材の相対回転位相が過渡的に不安定となることを抑制することができて、ハウジング部材に対してロータ部材が進角側および遅角側にばたつく(振動する)ことが抑制される。
【0012】
また、本発明の実施に際して、進角油室と遅角油室の交互に繰り返し作動油を供給するときの、油圧回路が備える油圧制御弁の制御値を、内燃機関の停止前の通常運転時においてハウジング部材とロータ部材の相対回転位相を保持する際の制御値を基に設定した場合(請求項2に係る発明の場合)においては、機差(製品のバラツキ)及び経時劣化を吸収することができて、常に所期の作動油供給特性を得ることができ、所期の作動応答性を得ることができる。この場合において、前記油圧制御弁の制御値を、作動油の温度に応じて(例えば、作動油の温度が高いときには粘度が低いため油圧制御弁の開口面積が小さくなるように、また作動油の温度が低いときには粘度が高いため油圧制御弁の開口面積が大きくなるように)補正した場合(請求項3に係る発明の場合)においては、作動油の温度に拘らず、常に所期の作動油供給特性が得られて、所期の作動応答性を得ることができる。
【0013】
また、本発明の実施に際して、進角油室と遅角油室の交互に繰り返し作動油を供給するときの、1回で供給される作動油の油量を、進角油室と遅角油室で異にした場合(請求項4に係る発明の場合)においては、例えば、相対回転制御機構がロック状態であるときの進角油室と遅角油室の容積が異なる場合において、進角油室と遅角油室に作動油をバランスよく供給することができる。
【0014】
この場合において、進角油室と遅角油室に1回で供給される作動油の油量比を、相対回転制御機構がロック状態であるときの進角油室と遅角油室の容積比を基に設定した場合(請求項5に係る発明の場合)においては、進角油室と遅角油室に作動油が充満される前において、仮に、相対回転制御機構による規制(ロック)が解除されても、それまでに進角油室と遅角油室に供給された作動油およびその後に進角油室と遅角油室に供給される作動油によって、ハウジング部材に対してロータ部材を目標位相位置に向けて移動させて保持することが可能である。
【0015】
また、本発明の実施に際して、進角油室と遅角油室に1回で供給される作動油の油量を、ハウジング部材とロータ部材の相対回転位相を検出する位相検出手段の検出値(実位相位置)と目標位相位置との差を基に設定した場合(請求項6に係る発明の場合)においては、進角油室と遅角油室に作動油が充満される前において、仮に、相対回転制御機構による規制(ロック)が解除されても、その後に進角油室と遅角油室に供給される作動油によって、ハウジング部材に対してロータ部材を目標位相位置に向けて速やかに移動させることが可能であり、しかもハウジング部材に対してロータ部材を目標位相位置に保持することが可能である。
【0016】
また、本発明の実施に際して、進角油室と遅角油室に1回で供給される作動油の油量を、経過時間に応じて順次減少させた場合(請求項7に係る発明の場合)においては、進角油室と遅角油室の交互に繰り返し作動油を供給する初期において多量の作動油を進角油室と遅角油室に供給することができて、進角油室と遅角油室に作動油を短時間にて充満させることができ、内燃機関の始動から通常運転に移行する際の時間を短くすることができる。
【0017】
また、本発明の実施に際して、作動油の油圧が制御可能油圧以上となったことの判定を、内燃機関の始動開始後の所定経過時間にて行うようにした場合(請求項8に係る発明の場合)においては、油圧検出手段を用いることなく安価に実施することができる。
【0018】
また、本発明による弁開閉時期制御装置(請求項9に係る発明)においては、内燃機関の始動時に、作動油の油圧が制御可能油圧となるまでの始動初期には、油圧回路にて進角油室及び遅角油室と相対回転制御機構から作動油を排出可能である。このため、内燃機関の始動初期において進角油室及び遅角油室に残る作動油を排出することができて、同作動油によりハウジング部材とロータ部材の相対回転が阻害されることはなく、駆動力伝達系のトルク変動により、ハウジング部材に対してロータ部材を最進角位相位置と最遅角位相位置間の目標位相位置に素早く相対回転させることができる。また、内燃機関の始動初期において相対回転制御機構から作動油を排出することができて、相対回転制御機構にて的確なロック作動が得られ、ハウジング部材とロータ部材の相対回転を上記した目標位相位置にて的確に規制することができる。したがって、内燃機関の始動性を向上させることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図11に示した本発明による弁開閉時期制御装置は、カム軸10の先端部(図1の左端)に一体的に組付けたロータ部材20と、このロータ部材20に所定範囲で相対回転可能に外装されたハウジング部材30と、ハウジング部材30とロータ部材20間に介装したトーションスプリングSと、ハウジング部材30とロータ部材20の相対回転を制御する相対回転制御機構Bを備えるとともに、後述する進角油室R1及び遅角油室R2への作動油の給排を制御するとともに相対回転制御機構Bへの作動油の給排を制御する油圧回路Cを備えている。
【0020】
カム軸10は、吸気弁(図示省略)を開閉する周知のカム(図示省略)を有していて、内燃機関のシリンダヘッド40に回転自在に支持されており、内部にはカム軸10の軸方向に延びる進角通路11と遅角通路12が設けられている。進角通路11は、径方向の通孔13と環状の通路14と接続通路P1を介して油圧制御弁100の接続ポート101に接続されている。また、遅角通路12は、径方向の通孔15と環状の通路16と接続通路P2を介して油圧制御弁100の接続ポート102に接続されている。なお、径方向の通孔13,15と環状の通路16はカム軸10に形成されており、環状の通路14はカム軸10とシリンダヘッド40の段部間に形成されている。
【0021】
ロータ部材20は、メインロータ21と、このメインロータ21の前方(図1の左方)に一体的に組付けた段付筒状のフロントロータ22によって構成されていて、ボルト50によってカム軸10の前端に一体的に固着されており、ボルト50の頭部によって前端を閉塞された各ロータ21,22の中心内孔はカム軸10に設けた進角通路11に連通している。
【0022】
メインロータ21は、フロントロータ22が同軸的に組付けられる内孔21aを有するとともに、4個のベーン23とこれを径外方へ付勢するスプリング24(図1参照)を組付けるためのベーン溝21bを有している。各ベーン23は、ベーン溝21bに組付けられて径外方に延びており、ハウジング部材30内に4個の進角油室R1及び遅角油室R2を区画形成している。また、メインロータ21には、径方向内端にて中心内孔を通して進角通路11に連通し径方向外端にて進角油室R1に連通する径方向の通孔21cが4個設けられるとともに、遅角通路12に連通する軸方向の通孔21dと、径方向内端にて通孔21dに連通し径方向外端にて遅角油室R2に連通する径方向の通孔21eがそれぞれ4個設けられている。
【0023】
ハウジング部材30は、ハウジング本体31と、フロントプレート32と、リヤ薄肉プレート33と、これらを一体的に連結する5本のボルト34(図2参照)によって構成されていて、ハウジング本体31の後方外周にはスプロケット31aが一体的に形成されている。スプロケット31aは、周知のように、タイミングチェーン(図示省略)を介して内燃機関のクランク軸(図示省略)に連結されていて、クランク軸からの駆動力が伝達されて図2の時計方向へ回転されるように構成されている。
【0024】
ハウジング本体31は、径内方に突出する4個のシュー部31bを有していて、各シュー部31bの径方向内端にてメインロータ21を相対回転可能に支承している。フロントプレート32とリヤ薄肉プレート33は、軸方向の対向する端面にて、メインロータ21の軸方向端面外周および各ベーン23の軸方向端面全体にそれぞれ摺動可能に接している。また、ハウジング本体31には、図2に示したように、最遅角位相位置をベーン23との当接によって規定する突起31cが形成されるとともに、最進角位相位置をベーン23との当接によって規定する突起31dが形成されている。
【0025】
相対回転制御機構Bは、作動油の供給によりアンロック作動してハウジング部材30とロータ部材20の相対回転を許容し、作動油の排出によりロック作動してハウジング部材30とロータ部材20の相対回転を最進角位相位置と最遅角位相位置間の目標位相位置(図2の状態)にて規制するものであり、図2〜図4に示したように、一対のロックピン61,62及びロックスプリング63,64を備えている。
【0026】
各ロックピン61,62は、フロントプレート32に設けた軸方向の退避孔32a,32bに軸方向へ摺動可能に組付けられていて、退避孔32a,32bに収容したロックスプリング63,64によって退避孔32a,32bから突出するように付勢されている。なお、各退避孔32a,32bには、ロックピン61,62を円滑に軸方向移動させるための通孔32c,32dが設けられている。
【0027】
また、各ロックピン61,62は、先端部がメインロータ21に設けた円弧状ロック溝21f,21gに摺動可能で抜き差し可能(嵌合・離脱可能)であり、円弧状ロック溝21f,21gに作動油が供給されることによりロックスプリング63,64の付勢力(小さい値に設定されている)に抗して軸方向へ移動して退避孔32a,32bに退避収容されるようになっている。また、各ロックピン61,62の先端は、メインロータ21の端面に当接可能であり、当接状態では摺動可能である。
【0028】
各円弧状ロック溝21f,21gは、図2に示したように、ハウジング部材30に対してロータ部材20が中間位相位置にあるとき、端部が各退避孔32a,32bに対向一致するように設けられていて、底部には円弧状連通溝21h,21iと軸方向の通孔21j,21kが設けられている。円弧状ロック溝21fは、図2及び図3にて示したように、円弧状連通溝21hと軸方向の通孔21jと径方向の通孔21cを通して進角通路11に連通するとともに、径外方に延びる連通溝21mを通して進角油室R1に連通している。円弧状ロック溝21gは、図2及び図4にて示したように、円弧状連通溝21iと軸方向の通孔21kと径方向の通孔21eと軸方向の通孔21dを通して遅角通路12に連通するとともに、径外方に延びる連通溝21nを通して遅角油室R2に連通している。
【0029】
ハウジング部材30とロータ部材20間に介装したトーションスプリングSは、ハウジング部材30に対してロータ部材20を進角側に回転付勢するものであり、その付勢力は吸気弁を閉方向に付勢するスプリング(図示省略)の付勢力に起因してカム軸10及びロータ部材20が遅角側に回転付勢されるのを打ち消す程度の値とされている。このため、ロータ部材20のハウジング部材30に対する相対回転位相を進角側へ変更する場合の作動応答性が良好とされている。
【0030】
図1に示した油圧制御弁100は、内燃機関によって駆動されるオイルポンプ110、内燃機関のオイル溜120等とにより油圧回路Cを構成していて、通電制御装置200によるソレノイド103への通電によってスプール104をスプリング105に抗して図1の左方向へ移動できるものであり、デューティ値(%)を変えることにより、スプール104が図5〜図11に例示したように作動するように構成されている。通電制御装置200は、各種センサ(クランク角センサ201、カム角センサ202、スロットル開度センサ203、エンジン回転数センサ204、エンジン冷却水温センサ205、車速センサ206、オイルポンプ吐出圧センサ207等)からの検出信号に基づき、予め設定した制御ルーチン(始動時制御ルーチンと通常運転時制御ルーチン)に従い、内燃機関の運転状態に応じて出力(デューティ値)を制御するようになっている。
【0031】
スプール104は、図5にて拡大して示したように、5個のランド部104a,104b,104c,104d,104eと、各ランド部間に形成した4個の環状溝104f,104g,104h,104iと、両端の環状溝104f,104iを排出ポート107に連通させる一対の連通孔104j,104kを有していて、図5に示した各部のラップ量がL1<L2<L3<L4<L5<L6となるように設定されている。
【0032】
ところで、スプール104が図5に示した状態(デューティ値0%で非通電の状態)にあるときには、オイルポンプ110の吐出口に接続された供給ポート106が両ランド部104b,104cによって両接続ポート101,102との連通を遮断されるとともに、両接続ポート101,102がオイル溜120に接続された排出ポート107に両環状溝104f,104iと両連通孔104j,104kを通して連通していて、両接続ポート101,102から排出ポート107に作動油が排出可能である。このため、各進角油室R1及び各遅角油室R2と相対回転制御機構Bの両円弧状ロック溝21f,21gから油圧制御弁100を通して作動油をオイル溜120に排出可能である。
【0033】
また、スプール104が図6に示した状態にあるときには、供給ポート106が両ランド部104b,104cによって両接続ポート101,102との連通を遮断されるとともに、接続ポート101が排出ポート107に環状溝104fと連通孔104jを通して連通していて、接続ポート101から排出ポート107に作動油が排出可能であるものの、接続ポート102が両ランド部104d,104eによって排出ポート107との連通を遮断される。このため、各進角油室R1と相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21fから油圧制御弁100を通して作動油をオイル溜120に排出可能であり、各遅角油室R2と相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21gに作動油を封止可能である。
【0034】
また、スプール104が図7に示した状態にあるときには、供給ポート106がランド部104bによって接続ポート101との連通を遮断された状態にて接続ポート102に環状溝104hを通して連通するとともに、接続ポート101が排出ポート107に環状溝104fと連通孔104jを通して連通していて、供給ポート106から接続ポート102に作動油が供給可能であり、接続ポート101から排出ポート107に作動油が排出可能である。このため、各遅角油室R2と相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21gに油圧制御弁100を通して作動油が供給可能であり、各進角油室R1と相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21fから油圧制御弁100を通して作動油をオイル溜120に排出可能である。
【0035】
また、スプール104が図8に示した状態にあるときには、供給ポート106がランド部104bによって接続ポート101との連通を遮断された状態にて接続ポート102に環状溝104hを通して連通するとともに、接続ポート101がランド部104bによって排出ポート107との連通を遮断され、供給ポート106から接続ポート102に作動油が供給可能である。このため、各遅角油室R2と相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21gに油圧制御弁100を通して作動油が供給可能であり、各進角油室R1と相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21fに作動油を封止可能である。
【0036】
また、スプール104が図9に示した状態にあるときには、供給ポート106が両ランド部104b,104dによって両接続ポート101,102との連通を遮断されるとともに、両接続ポート101,102が各ランド部104b,104d,104eによって排出ポート107との連通を遮断される。このため、各進角油室R1及び各遅角油室R2と相対回転制御機構Bの両円弧状ロック溝21f,21gに作動油を封止可能である。
【0037】
また、スプール104が図10に示した状態にあるときには、供給ポート106がランド部104dによって接続ポート102との連通を遮断された状態にて接続ポート101に環状溝104gを通して連通するとともに、接続ポート102が両ランド部104d,104eによって排出ポート107との連通を遮断されていて、供給ポート106から接続ポート101に作動油が供給可能である。このため、各進角油室R1と相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21fに油圧制御弁100を通して作動油が供給可能であり、各遅角油室R2と相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21gに作動油を封止可能である。
【0038】
また、スプール104が図11に示した状態(デューティ値100%の状態)にあるときには、供給ポート106がランド部104dによって接続ポート102との連通を遮断された状態にて接続ポート101に環状溝104gを通して連通するとともに、接続ポート102が排出ポート107に環状溝104iと連通孔104kを通して連通していて、供給ポート106から接続ポート101に作動油が供給可能であり、接続ポート102から排出ポート107に作動油が排出可能である。このため、各進角油室R1と相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21fに油圧制御弁100を通して作動油が供給可能であり、各遅角油室R2と相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21gから油圧制御弁100を通して作動油を排出可能である。
【0039】
上記のように構成した本実施形態においては、内燃機関の始動時、油圧制御弁100のソレノイド103への通電が通電制御装置200によって予め設定した始動時制御ルーチンに従って制御され、オイルポンプ110から吐出される作動油の供給油圧(オイルポンプ吐出圧)Pがゼロ(例えば、図12と図13のto時)から制御可能油圧P1(例えば、図12と図13のt1時)となるまでの始動初期には、油圧制御弁100が図5の状態に制御保持されて、油圧回路Cにて各進角油室R1及び各遅角油室R2と相対回転制御機構Bから作動油がオイル溜120に排出される。
【0040】
図12は内燃機関の停止時におけるハウジング部材30とロータ部材20の相対回転位相(クランク角センサ201とカム角センサ202の出力に基づいて演算される実位相位置)と目標位相位置との差(位相量の差)がゼロである場合の作動例であり、図13は内燃機関の停止時におけるハウジング部材30とロータ部材20の相対回転位相(実位相位置)が目標位相位置より遅角側にある場合の作動例である。なお、内燃機関の停止時におけるハウジング部材30とロータ部材20の相対回転位相(実位相位置)が目標位相位置より進角側にある場合の作動例は、図12および図13の作動例の説明から容易に理解されると思われるため、その説明は省略する。
【0041】
また、図12と図13のtoは内燃機関の始動開始時(これは、例えば、エンジン回転数センサ204の出力から検出される)を示し、図12と図13のt1はオイルポンプ110の吐出圧が制御可能油圧P1になった時点(これは、例えば、オイルポンプ吐出圧センサ207の出力から検出される)を示していて、図12と図13のtoからt1までの時間は略2秒程度(オイルポンプ110の性能によって異なる)である。
【0042】
上記した内燃機関の始動初期においては、各進角油室R1及び各遅角油室R2に残る作動油を排出することができて、同作動油によりハウジング部材30とロータ部材20の相対回転が阻害されることはなく、駆動力伝達系のトルク変動により、ハウジング部材30に対してロータ部材20を最進角位相位置と最遅角位相位置間の目標位相位置に素早く相対回転させることができる。また、内燃機関の始動初期においては、相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21f,21gから作動油を排出することができて、相対回転制御機構Bにて的確なロック作動(各ロックスプリング63,64による各ロックピン61,62の押動)が得られ、ハウジング部材30とロータ部材20の相対回転を上記した目標位相位置にて的確に規制することができる。したがって、内燃機関の始動性を向上させることができる。なお、図12に示した作動例では、内燃機関の始動時点でハウジング部材30とロータ部材20の相対回転位相(実位相位置)が目標位相位置に一致していて、相対回転制御機構Bがロック作動しているため、ハウジング部材30に対してロータ部材20は相対回転しない。
【0043】
また、内燃機関の始動時において、オイルポンプ110から吐出される作動油の供給油圧Pが制御可能油圧P1以上となった後の始動後期(例えば、図12と図13のt1以降)には、油圧回路Cにて油圧制御弁100のソレノイド103への通電(デューティ値)が通電制御装置200によって制御されて、油圧制御弁100から各進角油室R1と各遅角油室R2の交互に所定の周期Tc(例えば、16〜20msec程度の周期)で繰り返し作動油が供給される。
【0044】
これにより、各進角油室R1と各遅角油室R2に作動油を充満させることが可能で、その後に相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21f,21gに油圧制御弁100を通して作動油が供給可能である。このため、内燃機関の始動後期から通常運転に移行する過程において、相対回転制御機構Bによる規制(ロック)を解除した状態で、ハウジング部材30とロータ部材20の相対回転位相を上記した目標位相位置に略一致させて保持することができ、ハウジング部材30とロータ部材20の相対回転位相を所定の中間位相で安定させることができる。
【0045】
ところで、図12の作動例では、内燃機関の始動初期においてハウジング部材30とロータ部材20の相対回転位相(実位相位置)が目標位相位置に一致しているため、油圧制御弁100から各進角油室R1と各遅角油室R2の交互に繰り返し作動油が供給される際のソレノイド103へのデューティ値が、基準制御値(内燃機関の通常運転時においてハウジング部材30とロータ部材20の相対回転位相を保持する際の制御値、すなわち油圧制御弁100のスプール104が図9の状態に制御保持されるデューティ値で、通電制御装置200に内燃機関の通常運転毎に更新記憶されている)を基にそれぞれ演算されていて、基準制御値から進角側および遅角側への各振れ幅W1,W2が制御の始めから等しくされている。このため、各進角油室R1と各遅角油室R2に1回で供給される作動油の油量が略等しくされている。なお、油圧制御弁100のスプール104が図9の状態に制御保持されている状態でのスプール104の位置が基準位置より図示左右方向に変位している場合(すなわち、進角側のラップ量と遅角側のラップ量が相違していて、上記した基準制御値が進角側または遅角側に変位している場合)には、各振れ幅W1,W2を調整して、進角油室R1と遅角油室R2に1回で供給される作動油の油量が略同じとなるように設定される。
【0046】
これに対して、図13の作動例では、内燃機関の始動初期においてハウジング部材30とロータ部材20の相対回転位相(実位相位置)が目標位相位置より遅角側にあるため、油圧制御弁100から各進角油室R1と各遅角油室R2の交互に繰り返し作動油が供給される際のソレノイド103へのデューティ値が、実位相位置と目標位相位置との差および上記した基準制御値を基にそれぞれ演算されて、基準制御値からの各振れ幅W1,W2が制御の始めに進角側に大きく振れ、その後は徐々に遅角側に移行して、最終的には進角側と遅角側の各振れ幅W1,W2が等しくされる。このため、各進角油室R1と各遅角油室R2に1回で供給される作動油の油量が徐々に変化して最終的には略等しくされる。
【0047】
また、本実施形態においては、内燃機関の通常運転時、油圧制御弁100のソレノイド103への通電が通電制御装置200によって予め設定した通常運転時制御ルーチンに従って制御されることにより、ロータ部材20のハウジング部材30に対する相対回転位相が最遅角位相(進角油室R1の容積が最小となり遅角油室R2の容積が最大となる位相)から最進角位相(進角油室R1の容積が最大となり遅角油室R2の容積が最小となる位相)までの範囲の任意の位相に調整保持されて、内燃機関の駆動時における吸気弁の弁開閉時期が最遅角制御状態での作動と最進角制御状態での作動間で適宜に調整保持される。
【0048】
この場合において、ロータ部材20のハウジング部材30に対する相対回転位相の進角側への調整は、油圧制御弁100のスプール104が図11に示した状態とされて、各進角油室R1と相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21fに油圧制御弁100を通して作動油が供給されるとともに、各遅角油室R2と相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21gから油圧制御弁100を通して作動油が排出されることによりなされる。
【0049】
このときには、作動油が相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21fに供給されロックピン61がロックスプリング63に抗してアンロック作動して退避孔32aに退避収容された状態、またはロックピン61がメインロータ21の端面に摺動可能に当接した状態、およびロックピン62がメインロータ21の端面に摺動可能に当接した状態、またはロックピン62が円弧状ロック溝21gに摺動可能に嵌合した状態にて、作動油が各進角油室R1に供給されるとともに、各遅角油室R2から作動油が排出されることにより、ロータ部材20がハウジング部材30に対して進角側に相対回転する。
【0050】
また、ロータ部材20のハウジング部材30に対する相対回転位相の遅角側への調整は、油圧制御弁100のスプール104が図7に示した状態とされて、各遅角油室R2と相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21gに油圧制御弁100を通して作動油が供給されるとともに、各進角油室R1と相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21fから油圧制御弁100を通して作動油が排出されることによりなされる。
【0051】
このときには、作動油が相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21gに供給されロックピン62がロックスプリング64に抗してアンロック作動して退避孔32bに退避収容された状態、またはロックピン62がメインロータ21の端面に摺動可能に当接した状態、およびロックピン61がメインロータ21の端面に摺動可能に当接した状態、またはロックピン61が円弧状ロック溝21fに摺動可能に嵌合した状態にて、作動油が各遅角油室R2に供給されるとともに、各進角油室R1から作動油が排出されることにより、ロータ部材20がハウジング部材30に対して遅角側に相対回転する。
【0052】
上記した作動説明から明らかなように、本実施形態においては、内燃機関の始動後期から通常運転に移行する過程において、油圧回路Cにより各進角油室R1と各遅角油室R2の交互に繰り返し作動油を供給するものであるため、各進角油室R1と各遅角油室R2に作動油が充満される前において、仮に、相対回転制御機構Bによる規制(ロック)が解除されても、それまでに各進角油室R1と各遅角油室R2に供給された作動油によってハウジング部材30とロータ部材20の相対回転を抑制することが可能である。したがって、ハウジング部材30とロータ部材20の相対回転位相が過渡的に不安定となることを抑制することができて、ハウジング部材30に対してロータ部材20が進角側および遅角側にばたつく(振動する)ことが抑制される。
【0053】
また、本実施形態においては、各進角油室R1と各遅角油室R2の交互に繰り返し作動油が供給される際のソレノイド103へのデューティ値が、基準制御値(内燃機関の通常運転時においてハウジング部材30とロータ部材20の相対回転位相を保持する際の制御値、すなわち油圧制御弁100のスプール104が図9の状態に制御保持されるデューティ値で、通電制御装置200に内燃機関の通常運転毎に更新記憶されている)を基に規定されているため、機差(製品のバラツキ)及び経時劣化を吸収することができて、常に所期の作動油供給特性を得ることができ、所期の作動応答性を得ることができる。
【0054】
また、本実施形態においては、各進角油室R1と各遅角油室R2の交互に繰り返し作動油が供給される際のソレノイド103へのデューティ値が、実位相位置と目標位相位置との差に応じても変化するようにしてあり、各進角油室R1と各遅角油室R2に作動油が充満される前において、仮に、相対回転制御機構Bによる規制(ロック)が解除されても、その後に各進角油室R1と各遅角油室R2に供給される作動油によって、ハウジング部材30に対してロータ部材20を目標位相位置に向けて速やかに移動させることが可能であり、しかもハウジング部材30に対してロータ部材20を目標位相位置に保持することが可能である。
【0055】
上記実施形態においては、図12および図13に示したように、進角油室R1と遅角油室R2の交互に繰り返し作動油が供給される際に1サイクル(Tc時間)にて進角油室R1と遅角油室R2に供給される作動油の油量(W1+W2)が等しくなるようにして実施したが、図14に示したように、1サイクル(Tc時間)にて進角油室R1と遅角油室R2に供給される作動油の油量が順次減少するようにして実施することも可能である。なお、図14に示した実施形態では、遅角油室R2に供給される作動油の油量が一定で、進角油室R1に供給される作動油の油量が順次減少する。
【0056】
また、上記実施形態においては、図12に示したように、内燃機関の始動初期においてハウジング部材30とロータ部材20の相対回転位相(実位相位置)が目標位相位置に一致している状態での作動(油圧制御弁100から各進角油室R1と各遅角油室R2の交互に繰り返し作動油が供給される作動)において、進角油室R1と遅角油室R2に1回で供給される作動油の油量が等しくなるようにして実施したが、図15に示したように、進角油室R1と遅角油室R2に1回で供給される作動油の油量を、経過時間に応じて順次減少させるようにして実施することも可能である。
【0057】
図15に示した作動が得られる実施形態においては、進角油室R1と遅角油室R2の交互に繰り返し作動油を供給する初期において、多量の作動油を進角油室R1と遅角油室R2に供給することができて、進角油室R1と遅角油室R2に作動油を短時間にて充満させることができ、内燃機関の始動から通常運転に移行する際の時間を短くすることができる。
【0058】
また、図16または図17に示したように、進角油室R1と遅角油室R2に1回で供給される作動油の油量を、進角油室R1と遅角油室R2で異にして(破線で示した基準制御値からの各振れ幅または各供給時間を変えることにより、進角油室R1に1回で供給される作動油の油量を、遅角油室R2に1回で供給される作動油の油量より少量として)実施することも可能である。これらの実施形態は、相対回転制御機構Bがロック状態であるときの進角油室R1と遅角油室R2の容積が異なる場合において有効であり、進角油室R1と遅角油室R2に作動油をバランスよく供給することができる。
【0059】
これらの実施形態において、進角油室R1と遅角油室R2に1回で供給される作動油の油量比(図16に示した振れ幅W1,W2の比、または図17に示した供給時間T1,T2の比)を、相対回転制御機構Bがロック状態であるときの進角油室R1と遅角油室R2の容積比を基に設定した場合においては、進角油室R1と遅角油室R2に作動油が充満される前において、仮に、相対回転制御機構Bによる規制(ロック)が解除されても、それまでに進角油室R1と遅角油室R2に供給された作動油およびその後に進角油室R1と遅角油室R2に供給される作動油によって、ハウジング部材30に対してロータ部材20を目標位相位置に向けて移動させることが可能である。なお、図16では供給時間T1,T2が等しく、図17では振れ幅W1,W2が等しくされている。
【0060】
また、上記実施形態においては、基準制御値からの振れ幅W1,W2の演算に際して作動油の温度(エンジン冷却水温センサ205にて検出可能)を考慮せずに実施したが、基準制御値からの振れ幅W1,W2の演算に際して図18または図19に示した補正量を加算して実施することも可能である。図18では、作動油の温度が低いとき、作動油の粘性が高くて通路抵抗が大きくなり、作動油が進角油室R1または遅角油室R2に供給され難くなることを考慮して、補正値を大きくし、また作動油の温度が高いとき、作動油の粘性が低くなってオイルポンプ110のポンプ効率が低下し、作動油の油圧が低下して進角油室R1または遅角油室R2への供給量が低下することを考慮して、低温時程ではないが補正値を大きくしている。一方、図19では、上記した粘性の変化による通路抵抗の変化のみを考慮して、低温時のみ補正値を大きくしている。図18または図19に示した補正量を加算して実施した場合には、作動油の温度に拘らず、常に所期の作動油供給特性が得られて、所期の作動応答性を得ることができる。
【0061】
また、上記実施形態においては、作動油の油圧が制御可能油圧以上となったことの判定をオイルポンプ吐出圧センサ207からの検出信号で行うようにしたが、内燃機関の始動開始後の所定経過時間(内燃機関の始動によって駆動されるオイルポンプ110の吐出圧Pが制御可能油圧P1以上となる予め計測した時間)にて行うようにして実施することも可能である。この場合には、上記実施形態のオイルポンプ吐出圧センサ207(油圧検出手段)を用いることなく安価に実施することができる。
【0062】
また、上記実施形態においては、一つの油圧制御弁100を備えた油圧回路Cにて、進角油室R1及び遅角油室R2と相対回転制御機構Bに作動油を給排可能としてコンパクトな構成で実施したが、複数個の油圧制御弁を備えた油圧回路にて、上記実施形態と同様に、進角油室R1及び遅角油室R2と相対回転制御機構Bに作動油を給排可能として実施することも可能である。
【0063】
また、上記実施形態においては、ハウジング部材30がクランク軸と一体的に回転し、ロータ部材20がカム軸10と一体的に回転するように構成した弁開閉時期制御装置に本発明を実施したが、ハウジング部材がカム軸と一体的に回転し、ロータ部材がクランク軸と一体的に回転するように構成した弁開閉時期制御装置にも、本発明は同様に実施することが可能である。また、本発明は、ベーンがロータ本体に一体的に形成されるタイプの装置にも同様に実施し得るものである。
【0064】
また、上記実施形態においては、吸気弁を開閉するカム軸に装着される弁開閉時期制御装置に本発明を実施したが、本発明は排気弁を開閉するカム軸に装着される弁開閉時期制御装置にも同様にまたは適宜変更して実施し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による弁開閉時期制御装置の一実施形態を示す全体構成図である。
【図2】 図1の要部縦断正面図である。
【図3】 図2に示した上方のロックピン部位の断面図である。
【図4】 図2に示した下方のロックピン部位の断面図である。
【図5】 図1に示した油圧制御弁の拡大断面図である。
【図6】 図5に示した油圧制御弁の第1の通電状態での要部断面図である。
【図7】 図5に示した油圧制御弁の第2の通電状態での要部断面図である。
【図8】 図5に示した油圧制御弁の第3の通電状態での要部断面図である。
【図9】 図5に示した油圧制御弁の第4の通電状態での要部断面図である。
【図10】 図5に示した油圧制御弁の第5の通電状態での要部断面図である。
【図11】 図5に示した油圧制御弁の第6の通電状態での要部断面図である。
【図12】 図1に示した弁開閉時期制御装置の一作動例(内燃機関の始動初期においてハウジング部材とロータ部材の実位相位置が目標位相位置に一致している場合の作動例)を示す作動説明図である。
【図13】 図1に示した弁開閉時期制御装置の他の作動例(内燃機関の始動初期においてハウジング部材とロータ部材の実位相位置が目標位相位置より遅角側にある場合の作動例)を示す作動説明図である。
【図14】 図12および図13に示した作動例の変形例(遅角油室に供給される作動油の油量が一定で、進角油室に供給される作動油の油量が順次減少するようにした場合の作動例)を示す作動説明図である。
【図15】 図12および図13に示した作動例の他の変形例(進角油室と遅角油室に1回で供給される作動油の油量を、経過時間に応じて順次減少させるようにした場合の作動例)を示す作動説明図である。
【図16】 相対回転制御機構がロック状態であるときの進角油室と遅角油室の容積が異なる場合の一作動例を示す作動説明図である。
【図17】 相対回転制御機構がロック状態であるときの進角油室と遅角油室の容積が異なる場合の他の作動例を示す作動説明図である。
【図18】 基準制御値からの振れ幅の演算に際して作動油の温度に応じて加算される補正量の一例を示す図である。
【図19】 基準制御値からの振れ幅の演算に際して作動油の温度に応じて加算される補正量の他の例を示す図である。
【符号の説明】
10…カム軸、11…進角通路、12…遅角通路、20…ロータ部材、21…ロータ本体、23…ベーン、30…ハウジング部材、31…ハウジング本体、31b…シュー部、B…相対回転制御機構、61,62…ロックピン、63,64…ロックスプリング、R1…進角油室、R2…遅角油室、C…油圧回路、100…油圧制御弁、110…オイルポンプ、120…オイル溜、200…通電制御装置。
Claims (10)
- 内燃機関のクランク軸から内燃機関の吸気弁または排気弁を開閉するカム軸に駆動力を伝達する駆動力伝達系に設けられ、前記クランク軸または前記カム軸と一体的に回転するハウジング部材と、このハウジング部材に設けたシュー部に相対回転可能に組付けられてベーン部にて前記ハウジング部材内に進角油室と遅角油室を形成し前記カム軸または前記クランク軸と一体的に回転するロータ部材と、作動油の供給によりアンロック作動して前記ハウジング部材と前記ロータ部材の相対回転を許容し作動油の排出によりロック作動して前記ハウジング部材と前記ロータ部材の相対回転を最進角位相位置と最遅角位相位置間の両端回転限界位置を除いた中間領域内の目標位相位置にて規制する相対回転制御機構と、前記進角油室及び前記遅角油室と前記相対回転制御機構への作動油の給排を制御する油圧回路を備えた弁開閉時期制御装置において、前記油圧回路として、内燃機関の始動時における作動油の油圧が制御可能油圧以上となった後の始動後期には、前記進角油室と前記遅角油室の交互に繰り返し作動油を供給して、前記進角油室と前記遅角油室に作動油を充満させることが可能で、その後に前記相対回転制御機構に作動油を供給可能な油圧回路を採用したことを特徴とする弁開閉時期制御装置。
- 請求項1に記載の弁開閉時期制御装置において、前記進角油室と前記遅角油室の交互に繰り返し作動油を供給するときの、前記油圧回路が備える油圧制御弁の制御値を、内燃機関の停止前の通常運転時において前記ハウジング部材と前記ロータ部材の相対回転位相を保持する際の制御値を基に設定したことを特徴とする弁開閉時期制御装置。
- 請求項2に記載の弁開閉時期制御装置において、前記油圧制御弁の制御値を、作動油の温度に応じて補正するようにしたことを特徴とする弁開閉時期制御装置。
- 請求項1に記載の弁開閉時期制御装置において、前記進角油室と前記遅角油室の交互に繰り返し作動油を供給するときの、1回で供給される作動油の油量を、前記進角油室と前記遅角油室で異にしたことを特徴とする弁開閉時期制御装置。
- 請求項4に記載の弁開閉時期制御装置において、前記進角油室と前記遅角油室に1回で供給される作動油の油量比を、前記相対回転制御機構がロック状態であるときの前記進角油室と前記遅角油室の容積比を基に設定したことを特徴とする弁開閉時期制御装置。
- 請求項1から5の何れか1項に記載の弁開閉時期制御装置において、前記進角油室と前記遅角油室に1回で供給される作動油の油量を、前記ハウジング部材と前記ロータ部材の相対回転位相を検出する位相検出手段の検出値と前記目標位相位置との差を基に設定したことを特徴とする弁開閉時期制御装置。
- 請求項1から5の何れか1項に記載の弁開閉時期制御装置において、前記進角油室と前記遅角油室に1回で供給される作動油の油量を、経過時間に応じて順次減少させたことを特徴とする弁開閉時期制御装置。
- 請求項1に記載の弁開閉時期制御装置において、作動油の油圧が制御可能油圧以上となったことの判定を、内燃機関の始動開始後の所定経過時間にて行うようにしたことを特徴とする弁開閉時期制御装置。
- 請求項1、2、4、6、7、8の何れか1項に記載の弁開閉時期制御装置において、前記油圧回路は、内燃機関の始動時に、作動油の油圧が制御可能油圧となるまでの始動初期には、前記進角油室及び前記遅角油室の両方と、前記相対回転制御機構から作動油を排出可能であることを特徴とする弁開閉時期制御装置。
- 内燃機関のクランク軸から内燃機関の吸気弁または排気弁を開閉するカム軸に駆動力を伝達する駆動力伝達系に設けられ、前記クランク軸または前記カム軸と一体的に回転するハウジング部材と、このハウジング部材に設けたシュー部に相対回転可能に組付けられてベーン部にて前記ハウジング部材内に進角油室と遅角油室を形成し前記カム軸または前記クランク軸と一体的に回転するロータ部材と、作動油の供給によりアンロック作動して前記ハウジング部材と前記ロータ部材の相対回転を許容し作動油の排出によりロック作動して前記ハウジング部材と前記ロータ部材の相対回転を最進角位相位置と最遅角位相位置間の両端回転限界位置を除いた中間領域内の目標位相位置にて規制する相対回転制御機構と、前記進角油室及び前記遅角油室と前記相対回転制御機構への作動油の給排を制御する油圧回路を備えた弁開閉時期制御装置において、前記油圧回路として、通電制御装置によって通電を制御されることにより作動を制御されて前記進角油室及び前記遅角油室と前記相対回転制御機構への作動油の給排を制御し非通電の状態では前記進角油室及び前記遅角油室と前記相対回転制御機構から作動油を排出可能である油圧制御弁を備えていて、内燃機関の始動時に、作動油の油圧が制御可能油圧となるまでの始動初期には、前記油圧制御弁が非通電の状態とされて、前記進角油室及び前記遅角油室と前記相対回転制御機構から作動油を排出可能であり、内燃機関の始動時における作動油の油圧が制御可能油圧以上となった後の始動後期には、前記進角油室と前記遅角油室の交互に繰り返し作動油を供給して、前記進角油室と前記遅角油室に作動油を充満させることが可能で、その後に前記相対回転制御機構に作動油を供給可能な油圧回路を採用したことを特徴とする弁開閉時期制御装置。
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