(発明が解決しようとする課題)
上記した弁開閉時期制御装置においては、相対回転制御機構がハウジング部材とロータ部材の相対回転を最進角位相位置と最遅角位相位置間の両端回転限界位置を除いた中間領域内のロック位相位置にて規制する状態にて、内燃機関の良好な始動性が得られるように、吸気弁及び排気弁の開閉時期が設定されている。このため、内燃機関の始動時において、相対回転制御機構がハウジング部材とロータ部材の相対回転をロック位相位置にて規制しない場合には、内燃機関の始動性が損なわれるおそれがある。
ところで、内燃機関の始動時において、相対回転制御機構がハウジング部材とロータ部材の相対回転をロック位相位置にて規制することを阻害する要因としては、油圧回路の設定に起因するものや、進角油室及び遅角油室と相対回転制御機構に作動油が残留することに起因するものがある。また、従来の油圧回路においては、内燃機関の始動時に、油圧回路が備える油圧制御弁を如何に制御するかについて十分な検討がなされておらず、内燃機関の始動時から通常運転時に移行する過程において、ハウジング部材とロータ部材の相対回転位相が過渡的に不安定となるおそれがある。
(課題を解決するための手段)
本発明は、上記した問題に対処すべく、上記した弁開閉時期制御装置において、
前記相対回転制御機構を、前記ロック位相位置にてロック作動したとき進角側への相対回転を規制する第1制御機構と、前記ロック位相位置にてロック作動したとき遅角側への相対回転を規制する第2制御機構にて構成し、前記油圧回路から前記第1制御機構を通して前記進角油室に作動油を給排可能とし、前記油圧回路から前記第2制御機構を通して前記遅角油室に作動油を給排可能とし、前記油圧回路を単一の油圧制御弁で作動油の給排を制御可能に構成し、
前記油圧回路として、内燃機関の始動時に、作動油の油圧が制御可能油圧となるまでは、前記進角油室及び前記遅角油室と前記第1制御機構及び前記第2制御機構から作動油を排出可能で、作動油の油圧が制御可能油圧以上となった後には、前記進角油室及び前記遅角油室に作動油が供給されていないときに前記ハウジング部材と前記ロータ部材が相対回転する方向側で、
前記駆動力伝達系のトルク変動による遅角側への相対回転の力と、前記ハウジング部材及び前記ロータ部材間に介装したトーションスプリングによる進角側への相対回転の力とで、遅角側への相対回転の力の方が大きい場合には、前記ハウジング部材と前記ロータ部材の最遅角位相位置からの相対回転角が設定値を超えるまでの間に、位相変換の応答性が優れる方向側にある前記進角油室と前記第1制御機構に作動油を供給して充満させるとともに、前記相対回転角が設定値を超えた後に、前記遅角油室と前記第2制御機構に作動油を供給可能である油圧回路を採用した
こと(請求項1に係る発明)に特徴がある。
また、本発明の実施に際しては、前記進角油室に作動油を充満させるときの、前記油圧制御弁の制御値を、内燃機関の停止前の通常運転時においてハウジング部材とロータ部材の相対回転位相を保持する際の制御値を基に更新すること(請求項2に係る発明)が望ましく、この場合において、前記油圧制御弁の制御値を、作動油の温度に応じて補正すること(請求項3に係る発明)が望ましい。
また、本発明の実施に際しては、作動油の油圧が制御可能油圧以上となったことの判定を、内燃機関の始動後の所定経過時間にて行うこと(請求項4に係る発明)が望ましく、この場合において、前記所定経過時間を作動油の温度または内燃機関の回転数に応じて補正すること(請求項5に係る発明)が望ましい。また、前記進角油室から他方の油室への作動油の供給切換を位相検出手段の検出値に基づいて行うこと(請求項6に係る発明)が望ましい。
また、上記した各場合において、前記油圧制御弁として、制御電流値がゼロまたは極小の状態で前記進角油室及び前記遅角油室と前記相対回転制御機構から作動油を排出可能、制御電流値が小の状態で前記進角油室から作動油を排出可能かつ他方に作動油を供給可能、制御電流値が中の状態で前記進角油室及び前記遅角油室に作動油を給排不能、制御電流値が大の状態で前記進角油室に作動油を供給可能かつ他方から作動油を排出可能な油圧制御弁を採用し、作動油の油圧が制御可能油圧以上となった時点から短時間で制御電流値をゼロまたは極小から大とすること(請求項7に係る発明)が可能である。
(発明の作用効果)
本発明による弁開閉時期制御装置(請求項1に係る発明)においては、内燃機関の始動時に、作動油の油圧が制御可能油圧となるまでの始動初期には、油圧回路にて進角油室及び遅角油室と前記第1制御機構及び前記第2制御機構(相対回転制御機構)から作動油を排出可能である。このため、内燃機関の始動初期において進角油室及び遅角油室に残る作動油を排出することができて、同作動油によりハウジング部材とロータ部材の相対回転が阻害されることはなく、駆動力伝達系のトルク変動により、ハウジング部材に対してロータ部材を最進角位相位置と最遅角位相位置間のロック位相位置に素早く相対回転させることができる。また、内燃機関の始動初期において前記第1制御機構及び前記第2制御機構(相対回転制御機構)から作動油を排出することができて、相対回転制御機構にて的確なロック作動が得られ、ハウジング部材とロータ部材の相対回転を上記したロック位相位置にて的確に規制することができる。したがって、内燃機関の始動性を向上させることができる。
また、本発明による弁開閉時期制御装置(請求項1に係る発明)においては、内燃機関の始動時において、作動油の油圧が制御可能油圧以上となった後の始動後期には、前記進角油室と前記第1制御機構に作動油を供給して充満させるとともに、その後に前記遅角油室と前記第2制御機構に作動油を供給可能である。このため、内燃機関の始動後期から通常運転時に移行する過程において、前記第1制御機構及び前記第2制御機構(相対回転制御機構)による規制(ロック)を解除した状態で、ハウジング部材とロータ部材の相対回転位相を上記したロック位相位置に略一致させて保持することができ、ハウジング部材とロータ部材の相対回転位相を所定の中間位相で安定させることができる。
また、本発明による弁開閉時期制御装置(請求項1に係る発明)においては、相対回転制御機構を、ロック位相位置にてロック作動したとき進角側への相対回転を規制する第1制御機構と、ロック位相位置にてロック作動したとき遅角側への相対回転を規制する第2制御機構にて構成し、油圧回路から第1制御機構を通して進角油室に作動油を給排可能とし、油圧回路から第2制御機構を通して遅角油室に作動油を給排可能とし、油圧回路を単一の油圧制御弁で作動油の給排を制御可能に構成した。このため、油圧回路から進角油室に至る作動油の給排通路の一部を油圧回路から第1制御機構に至る作動油の給排通路として共用することができるとともに、油圧回路から遅角油室に至る作動油の給排通路の一部を油圧回路から第2制御機構に至る作動油の給排通路として共用することができて、通路形成のための加工を低減することができる。また、油圧回路をシンプルとして小型化・低コスト化を図ることができる。
また、本発明の実施に際して、進角油室に作動油を充満させるときの、油圧回路が備える油圧制御弁の制御値を、内燃機関の停止前の通常運転時においてハウジング部材とロータ部材の相対回転位相を保持する際の制御値を基に更新するようにした場合(請求項2に係る発明)においては、機差(製品のバラツキ)及び経時劣化を吸収することができて、常に所期の作動油供給特性を得ることができ、所期の作動応答性を得ることができる。この場合において、前記油圧制御弁の制御値を、作動油の温度に応じて(作動油の温度が高いときには粘度が低いため油圧制御弁の開口面積が小さくなるように、また作動油の温度が低いときには粘度が高いため油圧制御弁の開口面積が大きくなるように)補正した場合(請求項3に係る発明)においては、作動油の温度に拘らず、常に所期の作動油供給特性が得られて、所期の作動応答性を得ることができる。
また、本発明の実施に際して、作動油の油圧が制御可能油圧以上となったことの判定を、内燃機関の始動後の所定経過時間にて行うようにした場合(請求項4に係る発明)においては、油圧検出手段を用いることなく安価に実施することができる。この場合において、前記所定経過時間を作動油の温度または内燃機関の回転数に応じて(作動油の温度が高いときには短く低いときには長く、また内燃機関の回転数が高いときには短く低いときには長く)補正した場合(請求項5に係る発明)においては、作動油の温度または内燃機関の回転数に拘らず、常に所期の作動油供給特性が得られて、所期の作動応答性を得ることができる。
また、本発明の実施に際して、進角油室から他方の油室への作動油の供給切換を位相検出手段(例えば、クランク角センサ及びカム角センサ)の検出値に基づいて行うようにした場合(請求項6に係る発明)には、所定の相対回転位相にて作動油の供給切換を的確に行うことができて、常に所期の作動応答性を得ることができる。
また、本発明の実施に際して、油圧制御弁として、制御電流値がゼロまたは極小の状態で進角油室及び遅角油室と相対回転制御機構から作動油を排出可能、制御電流値が小の状態で進角油室から作動油を排出可能かつ他方に作動油を供給可能、制御電流値が中の状態で進角油室及び遅角油室に作動油を給排不能、制御電流値が大の状態で進角油室に作動油を供給可能かつ他方から作動油を排出可能な油圧制御弁を採用し、作動油の油圧が制御可能油圧以上となった時点から短時間で制御電流値をゼロまたは極小から大とした場合(請求項7に係る発明)には、制御電流値がゼロまたは極小の状態(進角油室及び遅角油室から作動油を排出可能な状態)から制御電流値が大の状態(進角油室に作動油を供給可能かつ遅角油室から作動油を排出可能な状態)に移行する際において、制御電流値が小の状態(遅角油室に作動油を供給可能かつ進角油室から作動油を排出可能な状態)である時間を極小とすることが可能である。
このため、仮に、作動油の油圧が制御可能油圧以上となった時点で、進角油室と遅角油室に作動油が残留していて、制御電流値がゼロまたは極小の状態から大の状態に移行する過渡期の制御電流値が小の状態で遅角油室に作動油が供給されても、過渡期の制御電流値が小の状態は極小時間であり、そのときに遅角油室に向けて供給される作動油の流量は微量であって、第2制御機構がアンロック動作することはない。なお、上記した過渡期において、遅角油室に向けて供給される作動油の流量が多い場合(制御電流値が小の状態である時間が長い場合)には、遅角油室に残量している作動油に供給される作動油が加わることで、第2制御機構がアンロック動作してハウジング部材とロータ部材の相対回転位相が過渡的に不安定となるおそれがある。
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図12に示した本発明による弁開閉時期制御装置は、カム軸10の先端部(図1の左端)に一体的に組付けたロータ部材20と、このロータ部材20に所定範囲で相対回転可能に外装されたハウジング部材30と、ハウジング部材30とロータ部材20間に介装したトーションスプリングSと、ハウジング部材30とロータ部材20の相対回転を制御する相対回転制御機構Bを備えるとともに、後述する進角油室R1及び遅角油室R2への作動油の給排を制御するとともに相対回転制御機構Bへの作動油の給排を制御する油圧回路Cを備えている。
カム軸10は、吸気弁(図示省略)を開閉する周知のカム(図示省略)を有していて、内燃機関のシリンダヘッド40に回転自在に支持されており、内部にはカム軸10の軸方向に延びる進角通路11と遅角通路12が設けられている。進角通路11は、径方向の通孔13と環状の通路14と接続通路P1を介して油圧制御弁100の接続ポート101に接続されている。また、遅角通路12は、径方向の通孔15と環状の通路16と接続通路P2を介して油圧制御弁100の接続ポート102に接続されている。なお、径方向の通孔13,15と環状の通路16はカム軸10に形成されており、環状の通路14はカム軸10とシリンダヘッド40の段部間に形成されている。
ロータ部材20は、メインロータ21と、このメインロータ21の前方(図1の左方)に一体的に組付けた段付筒状のフロントロータ22によって構成されていて、ボルト50によってカム軸10の前端に一体的に固着されており、ボルト50の頭部によって前端を閉塞された各ロータ21,22の中心内孔はカム軸10に設けた進角通路11に連通している。
メインロータ21は、フロントロータ22が同軸的に組付けられる内孔21aを有するとともに、4個のベーン23とこれを径外方へ付勢するスプリング24(図1参照)を組付けるためのベーン溝21bを有している。各ベーン23は、ベーン溝21bに組付けられて径外方に延びており、ハウジング部材30内に4個の進角油室R1及び遅角油室R2を区画形成している。また、メインロータ21には、径方向内端にて中心内孔を通して進角通路11に連通し径方向外端にて進角油室R1に連通する径方向の通孔21cが4個設けられるとともに、遅角通路12に連通する軸方向の通孔21dと、径方向内端にて通孔21dに連通し径方向外端にて遅角油室R2に連通する径方向の通孔21eがそれぞれ4個設けられている。
ハウジング部材30は、ハウジング本体31と、フロントプレート32と、リヤ薄肉プレート33と、これらを一体的に連結する5本のボルト34(図2参照)によって構成されていて、ハウジング本体31の後方外周にはスプロケット31aが一体的に形成されている。スプロケット31aは、周知のように、タイミングチェーン(図示省略)を介して内燃機関のクランク軸(図示省略)に連結されていて、クランク軸からの駆動力が伝達されて図2の時計方向へ回転されるように構成されている。
ハウジング本体31は、径内方に突出する4個のシュー部31bを有していて、各シュー部31bの径方向内端にてメインロータ21を相対回転可能に支承している。フロントプレート32とリヤ薄肉プレート33は、軸方向の対向する端面にて、メインロータ21の軸方向端面外周および各ベーン23の軸方向端面全体にそれぞれ摺動可能に接している。また、ハウジング本体31には、図2に示したように、最遅角位相位置をベーン23との当接によって規定する突起31cが形成されるとともに、最進角位相位置をベーン23との当接によって規定する突起31dが形成されている。
相対回転制御機構Bは、作動油の供給によりアンロック作動してハウジング部材30とロータ部材20の相対回転を許容し、作動油の排出によりロック作動してハウジング部材30とロータ部材20の相対回転を最進角位相位置と最遅角位相位置間のロック位相位置(図2の状態)にて規制するものであり、図2〜図4に示したように、一対のロックピン61,62及びロックスプリング63,64を備えている。なお、相対回転制御機構Bは、ロックピン61とロックスプリング63を備えた第1制御機構と、ロックピン62とロックスプリング64を備えた第2制御機構にて構成されている。
第1制御機構は、進角通路11からの作動油の供給によりアンロック作動してハウジング部材30とロータ部材20の相対回転を許容し、進角通路11への作動油の排出によりロック作動してハウジング部材30とロータ部材20の進角側への相対回転をロック位相位置(図2の状態)にて規制する。第2制御機構は、遅角通路12からの作動油の供給によりアンロック作動してハウジング部材30とロータ部材20の相対回転を許容し、遅角通路12への作動油の排出によりロック作動してハウジング部材30とロータ部材20の進角側への相対回転をロック位相位置(図2の状態)にて規制する。
各ロックピン61,62は、フロントプレート32に設けた軸方向の退避孔32a,32bに軸方向へ摺動可能に組付けられていて、退避孔32a,32bに収容したロックスプリング63,64によって退避孔32a,32bから突出するように付勢されている。なお、各退避孔32a,32bには、ロックピン61,62を円滑に軸方向移動させるための通孔32c,32dが設けられている。
また、各ロックピン61,62は、先端部がメインロータ21に設けた円弧状ロック溝21f,21gに摺動可能で抜き差し可能(嵌合・離脱可能)であり、円弧状ロック溝21f,21gに作動油が供給されることによりロックスプリング63,64の付勢力(小さい値に設定されている)に抗して軸方向へ移動して退避孔32a,32bに退避収容されるようになっている。また、各ロックピン61,62の先端は、メインロータ21の端面に当接可能であり、当接状態では摺動可能である。
各円弧状ロック溝21f,21gは、図2に示したように、ハウジング部材30に対してロータ部材20がロック位相位置にあるとき、端部が各退避孔32a,32bに対向一致するように設けられていて、底部には円弧状連通溝21h,21iと軸方向の通孔21j,21kが設けられている。円弧状ロック溝21fは、図2及び図3にて示したように、円弧状連通溝21hと軸方向の通孔21jと径方向の通孔21cを通して進角通路11に連通するとともに、径外方に延びる連通溝21mを通して進角油室R1に連通している。円弧状ロック溝21gは、図2及び図4にて示したように、円弧状連通溝21iと軸方向の通孔21kと径方向の通孔21eと軸方向の通孔21dを通して遅角通路12に連通するとともに、径外方に延びる連通溝21nを通して遅角油室R2に連通している。
ハウジング部材30とロータ部材20間に介装したトーションスプリングSは、ハウジング部材30に対してロータ部材20を進角側に回転付勢するものであり、その付勢力は吸気弁を閉方向に付勢するスプリング(図示省略)の付勢力に起因してカム軸10及びロータ部材20が遅角側に回転付勢されるのを打ち消す程度の値とされている。このため、ロータ部材20のハウジング部材30に対する相対回転位相を進角側へ変更する場合の作動応答性が良好とされている。
図1に示した油圧制御弁100は、内燃機関によって駆動されるオイルポンプ110、内燃機関のオイル溜120等とにより油圧回路Cを構成していて、通電制御装置200によるソレノイド103への通電によってスプール104をスプリング105に抗して図1の左方向へ移動できるものであり、制御電流値であるデューティ値(%)を変えることにより、スプール104が図5〜図11に例示したように作動するように構成されている。通電制御装置200は、各種センサ(クランク角センサ201、カム角センサ202、スロットル開度センサ203、エンジン回転数センサ204、エンジン冷却水温センサ205、車速センサ206、オイルポンプ吐出圧センサ207等)からの検出信号に基づき、予め設定した制御ルーチン(図12参照)に従い、内燃機関の運転状態に応じて出力(デューティ値)を制御するようになっている。
スプール104は、図5にて拡大して示したように、5個のランド部104a,104b,104c,104d,104eと、各ランド部間に形成した4個の環状溝104f,104g,104h,104iと、両端の環状溝104f,104iを排出ポート107に連通させる一対の連通孔104j,104kを有していて、図5に示した各部のラップ量がL1<L2<L3<L4<L5<L6となるように設定されている。
ところで、スプール104が図5に示した状態(デューティ値0%、すなわち制御電流値がゼロで非通電の状態)にあるときには、オイルポンプ110の吐出口に接続された供給ポート106が両ランド部104b,104cによって両接続ポート101,102との連通を遮断されるとともに、両接続ポート101,102がオイル溜120に接続された排出ポート107に両環状溝104f,104iと両連通孔104j,104kを通して連通していて、両接続ポート101,102から排出ポート107に作動油が排出可能である。このため、各進角油室R1及び各遅角油室R2と相対回転制御機構Bの両円弧状ロック溝21f,21gから油圧制御弁100を通して作動油をオイル溜120に排出可能である。
また、スプール104が図6に示した状態にあるときには、供給ポート106が両ランド部104b,104cによって両接続ポート101,102との連通を遮断されるとともに、接続ポート101が排出ポート107に環状溝104fと連通孔104jを通して連通していて、接続ポート101から排出ポート107に作動油が排出可能であるものの、接続ポート102が両ランド部104d,104eによって排出ポート107との連通を遮断される。このため、各進角油室R1と相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21fから油圧制御弁100を通して作動油をオイル溜120に排出可能であり、各遅角油室R2と相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21gに作動油を封止可能である。
また、スプール104が図7に示した状態(制御電流値が小の状態)にあるときには、供給ポート106がランド部104bによって接続ポート101との連通を遮断された状態にて接続ポート102に環状溝104hを通して連通するとともに、接続ポート101が排出ポート107に環状溝104fと連通孔104jを通して連通していて、供給ポート106から接続ポート102に作動油が供給可能であり、接続ポート101から排出ポート107に作動油が排出可能である。このため、各遅角油室R2と相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21gに油圧制御弁100を通して作動油が供給可能であり、各進角油室R1と相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21fから油圧制御弁100を通して作動油をオイル溜120に排出可能である。
また、スプール104が図8に示した状態にあるときには、供給ポート106がランド部104bによって接続ポート101との連通を遮断された状態にて接続ポート102に環状溝104hを通して連通するとともに、接続ポート101がランド部104bによって排出ポート107との連通を遮断され、供給ポート106から接続ポート102に作動油が供給可能である。このため、各遅角油室R2と相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21gに油圧制御弁100を通して作動油が供給可能であり、各進角油室R1と相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21fに作動油を封止可能である。
また、スプール104が図9に示した状態(制御電流値が中の状態)にあるときには、供給ポート106が両ランド部104b,104dによって両接続ポート101,102との連通を遮断されるとともに、両接続ポート101,102が各ランド部104b,104d,104eによって排出ポート107との連通を遮断される。このため、各進角油室R1及び各遅角油室R2と相対回転制御機構Bの両円弧状ロック溝21f,21gに作動油を封止可能である。
また、スプール104が図10に示した状態にあるときには、供給ポート106がランド部104dによって接続ポート102との連通を遮断された状態にて接続ポート101に環状溝104gを通して連通するとともに、接続ポート102が両ランド部104d,104eによって排出ポート107との連通を遮断されていて、供給ポート106から接続ポート101に作動油が供給可能である。このため、各進角油室R1と相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21fに油圧制御弁100を通して作動油が供給可能であり、各遅角油室R2と相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21gに作動油を封止可能である。
また、スプール104が図11に示した状態(デューティ値100%、すなわち制御電流値が大の状態)にあるときには、供給ポート106がランド部104dによって接続ポート102との連通を遮断された状態にて接続ポート101に環状溝104gを通して連通するとともに、接続ポート102が排出ポート107に環状溝104iと連通孔104kを通して連通していて、供給ポート106から接続ポート101に作動油が供給可能であり、接続ポート102から排出ポート107に作動油が排出可能である。このため、各進角油室R1と相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21fに油圧制御弁100を通して作動油が供給可能であり、各遅角油室R2と相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21gから油圧制御弁100を通して作動油を排出可能である。
上記のように構成した本実施形態においては、内燃機関の始動時、油圧制御弁100のソレノイド103への通電が通電制御装置200によって予め設定した制御ルーチン(図12の弁開閉時期制御ルーチン参照)に従って制御され、オイルポンプ110から吐出される作動油の供給油圧(オイルポンプ吐出圧)Pが制御可能油圧P1となるまでの始動初期には、図12のステップ301,303,305が繰り返し実行されて、油圧制御弁100が図5の状態に保持され、油圧回路Cにて各進角油室R1及び各遅角油室R2と相対回転制御機構Bから作動油がオイル溜120に排出される。なお、ステップ301では、内燃機関の始動開始時に実行される初期化処理により”0”とされるオイル充填フラグが”0”か否かが判定され、ステップ303では、オイルポンプ吐出圧センサ207からの検出信号に基づき供給油圧Pが制御可能油圧P1以上か否かが判定され、ステップ305では、油圧制御弁100を図5の状態に保持制御するデューティ値でソレノイド103への通電が実行される。
このため、内燃機関の始動初期において、各進角油室R1及び各遅角油室R2に残る作動油を排出することができて、同作動油によりハウジング部材30とロータ部材20の相対回転が阻害されることはなく、駆動力伝達系のトルク変動により、ハウジング部材30に対してロータ部材20を最進角位相位置と最遅角位相位置間のロック位相位置に素早く相対回転させることができる。また、内燃機関の始動初期において、相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21f,21gから作動油を排出することができて、相対回転制御機構Bにて的確なロック作動(各ロックスプリング63,64による各ロックピン61,62の押動)が得られ、ハウジング部材30とロータ部材20の相対回転を上記したロック位相位置にて的確に規制することができる。したがって、内燃機関の始動性を向上させることができる。
また、内燃機関の始動時において、オイルポンプ110から吐出される作動油の供給油圧Pが制御可能油圧P1以上となった後の始動後期には、ハウジング部材30とロータ部材20の最遅角位相位置からの相対回転角αが設定値A(予め設定した上記ロック位相位置に相当する値)を超える(位相変換の応答性が優れる方向側にある進角油室R1に作動油を充満させる)までの間に、図12のステップ301,303,307,309,311が繰り返し実行されて、油圧制御弁100が図11の状態(図10の状態でも実施可能)に保持され、油圧回路Cにて進角油室R1及び相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21fに作動油が供給される。なお、ステップ307では、内燃機関の始動開始時に実行される初期化処理により”0”とされる遅角供給フラグが”1”か否かが判定され、ステップ309では、油圧制御弁100を図11の状態に保持制御するデューティ値でソレノイド103への通電が実行され、ステップ311では、クランク角センサ201とカム角センサ202からの検出信号に基づき相対回転角αが設定値Aを超えたか否かが判定される。なお、上記設定値Aは、油圧制御弁100を図5の状態に保持制御している時に検出される中間位相位置の現実の相対回転角αを基に補正してもよい。これにより、機差を吸収することが可能となる。
また、上記した相対回転角αが設定値Aを超えた後には、上記した相対回転角αが設定値A以下となる(遅角油室R2に作動油を充満させる)まで、図12のステップ313,315,319,301,303,307が繰り返し実行されて、油圧制御弁100が図8の状態に保持され、油圧回路Cにて各進角油室R1と相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21fに作動油を封止可能な状態で各遅角油室R2及び相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21gに作動油が供給される。なお、ステップ313では油圧制御弁100を図8の状態に保持制御するデューティ値でソレノイド103への通電が実行され、ステップ315ではクランク角センサ201とカム角センサ202からの検出信号に基づき相対回転角αが設定値A以下か否かが判定され、ステップ319では遅角供給フラグが”1”とされる。なお、上記設定値Aは、系のヒステリシスを考慮した値とするのが望ましい。これにより、より確実に遅角油室R2への作動油供給が行える。
また、上記した相対回転角αが設定値A以下となった後には、内燃機関が停止されるまで、図12のステップ317,321が実行された後に、ステップ301,330が繰り返し実行されて、通常運転時制御ルーチン330が繰り返し実行される。なお、ステップ317では油圧制御弁100を図9の状態に保持制御するデューティ値でソレノイド103への通電が実行され、ステップ321ではオイル充填フラグが”1”とされる。
このため、内燃機関の始動後期から通常運転時に移行する過程において、相対回転制御機構Bによるロックを解除した状態で、ハウジング部材30とロータ部材20の相対回転位相を上記したロック位相位置に略一致させて保持することができ、ハウジング部材30とロータ部材20の相対回転位相を所定の中間位相で安定させることができる。また、進角油室R1から遅角油室R2への作動油の供給切換を位相検出手段(クランク角センサ201及びカム角センサ202)の検出値に基づいて行うようにしているため、所定の相対回転位相にて作動油の供給切換を行うことができて、常に所期の作動応答性を得ることができる。
また、本実施形態においては、内燃機関の通常運転時、図12のステップ330が実行されて、油圧制御弁100のソレノイド103への通電が通電制御装置200によって予め設定した制御ルーチン(詳細省略)に従って制御されることにより、ロータ部材20のハウジング部材30に対する相対回転位相が最遅角位相(進角油室R1の容積が最小となり遅角油室R2の容積が最大となる位相)から最進角位相(進角油室R1の容積が最大となり遅角油室R2の容積が最小となる位相)までの範囲の任意の位相に調整保持されて、内燃機関の駆動時における吸気弁の弁開閉時期が最遅角制御状態での作動と最進角制御状態での作動間で適宜に調整保持される。
この場合において、ロータ部材20のハウジング部材30に対する相対回転位相の進角側への調整は、油圧制御弁100のスプール104が図11に示した状態とされて、各進角油室R1と相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21fに油圧制御弁100を通して作動油が供給されるとともに、各遅角油室R2と相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21gから油圧制御弁100を通して作動油が排出されることによりなされる。
このときには、作動油が相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21fに供給されロックピン61がロックスプリング63に抗してアンロック作動して退避孔32aに退避収容された状態、またはロックピン61がメインロータ21の端面に摺動可能に当接した状態、およびロックピン62がメインロータ21の端面に摺動可能に当接した状態、またはロックピン62が円弧状ロック溝21gに摺動可能に嵌合した状態にて、作動油が各進角油室R1に供給されるとともに、各遅角油室R2から作動油が排出されることにより、ロータ部材20がハウジング部材30に対して進角側に相対回転する。
また、ロータ部材20のハウジング部材30に対する相対回転位相の遅角側への調整は、油圧制御弁100のスプール104が図7に示した状態とされて、各遅角油室R2と相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21gに油圧制御弁100を通して作動油が供給されるとともに、各進角油室R1と相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21fから油圧制御弁100を通して作動油が排出されることによりなされる。
このときには、作動油が相対回転制御機構Bの円弧状ロック溝21gに供給されロックピン62がロックスプリング64に抗してアンロック作動して退避孔32bに退避収容された状態、またはロックピン62がメインロータ21の端面に摺動可能に当接した状態、およびロックピン61がメインロータ21の端面に摺動可能に当接した状態、またはロックピン61が円弧状ロック溝21fに摺動可能に嵌合した状態にて、作動油が各遅角油室R2に供給されるとともに、各進角油室R1から作動油が排出されることにより、ロータ部材20がハウジング部材30に対して遅角側に相対回転する。
上記実施形態の実施に際して、図12のステップ309の実行に際し、ソレノイド103への通電デューティ値(制御値)を、内燃機関の停止前の通常運転時において位相を保持する際のソレノイド103への通電デューティ値(制御値)を基に更新するようにした場合には、機差(製品のバラツキ)及び経時劣化を吸収することができて、常に所期の作動油供給特性を得ることができ、所期の作動応答性を得ることができる。この場合において、ソレノイド103への通電デューティ値(制御値)を、エンジン冷却水温センサ205からの検出信号に基づいて作動油の温度に応じて(作動油の温度が高いときには粘度が低いため油圧制御弁の開口面積が小さくなるように、また作動油の温度が低いときには粘度が高いため油圧制御弁の開口面積が大きくなるように)補正した場合には、作動油の温度に拘らず、常に所期の作動油供給特性が得られて、所期の作動応答性を得ることができる。
また、上記実施形態の実施に際して、オイルポンプ吐出圧(作動油の油圧)Pが制御可能油圧P1以上となったことの判定(図12のステップ303)を、内燃機関の始動後の所定経過時間(内燃機関の始動によって駆動されるオイルポンプ110の吐出圧Pが制御可能油圧P1以上となる予め計測した時間)にて行うようにした場合には、上記実施形態のオイルポンプ吐出圧センサ207(油圧検出手段)を用いることなく安価に実施することができる。この場合において、前記所定経過時間をエンジン冷却水温センサ205にて検出可能な作動油の温度またはエンジン回転数センサ204にて検出可能な内燃機関の回転数に応じて(作動油の温度が高いときには短く低いときには長く、また内燃機関の回転数が高いときには短く低いときには長く)補正した場合には、作動油の温度または内燃機関の回転数に拘らず、常に所期の作動油供給特性が得られて、所期の作動応答性を得ることができる。
また、上記実施形態においては、相対回転制御機構Bを、ロック位相位置にてロック作動したとき進角側への相対回転を規制する第1制御機構(ロックピン61とロックスプリング63を備えたもの)と、ロック位相位置にてロック作動したとき遅角側への相対回転を規制する第2制御機構(ロックピン62とロックスプリング64を備えたもの)にて構成し、油圧回路Cから第1制御機構を通して進角油室R1に作動油を給排可能とし、油圧回路Cから第2制御機構を通して遅角油室R2に作動油を給排可能とし、油圧回路Cを単一の油圧制御弁100で作動油の給排を制御可能に構成した。
このため、油圧回路Cから進角油室R1に至る作動油の給排通路の一部を油圧回路Cから第1制御機構に至る作動油の給排通路として共用することができるとともに、油圧回路Cから遅角油室R2に至る作動油の給排通路の一部を油圧回路Cから第2制御機構に至る作動油の給排通路として共用することができて、通路形成のための加工を低減することができる。また、油圧回路Cを単一の油圧制御弁100で作動油の給排を制御可能とすることで、油圧回路Cをシンプルとして小型化・低コスト化を図ることができる。
また、上記実施形態において、デューティ値0%(制御電流値がゼロの状態)で図5に示したように進角油室R1及び遅角油室R2から作動油を排出可能、制御電流値が小の状態で図7に示したように進角油室R1から作動油を排出可能かつ遅角油室R2に作動油を供給可能、制御電流値が中の状態で図9に示したように進角油室R1及び遅角油室R2に作動油を給排不能、制御電流値が大の状態で図11に示したように進角油室R1に作動油を供給可能かつ遅角油室R2から作動油を排出可能な油圧制御弁100を採用した上で、作動油の油圧が制御可能油圧P1以上となった時点から短時間(図12のステップ307と309の実行に要する極小時間)でソレノイド103への通電デューティ値が0%から100%(制御電流値がゼロから大)となるように設定した。
したがって、ソレノイド103への通電デューティ値が0%の状態(進角油室R1及び遅角油室R2から作動油を排出可能な状態)からソレノイド103への通電デューティ値が100%の状態(進角油室R1に作動油を供給可能かつ遅角油室R2から作動油を排出可能な状態)に移行する際において、遅角油室R2に作動油を供給可能かつ進角油室R1から作動油を排出可能な状態(図7の状態)である時間を極小とすることができる。
また、作動油の油圧が制御可能油圧P1以上となった時点において、進角油室R1及び遅角油室R2と相対回転制御機構Bから作動油を排出可能な状態から、制御電流値が大の状態で進角油室R1から作動油を排出可能かつ遅角油室R2に作動油を供給可能な状態に向かって移行させる際に、制御電流値を大に一時的に変化させた後に所定の制御電流値に制御するようにしたので、例えば、スプール104の位置を進角油室R1および遅角油室R2に作動油を給排不能な状態、あるいは遅角油室R2から作動油を排出可能かつ進角油室R1に作動油を供給可能な状態に変化させる際に、遅角油室R2に作動油を供給可能かつ進角油室R1から作動油を排出可能な状態である時間を極小で通過させ、その後に所定の位置にスプール104を移動させることができる。
このため、仮に、作動油の油圧が制御可能油圧P1以上となった時点で、進角油室R1と遅角油室R2に作動油が残留していて、ソレノイド103への通電デューティ値が0%から100%に移行する過渡期の図7に示した状態(制御電流値が小の状態)で遅角油室R2に作動油が供給されても、過渡期の図7に示した状態は極小時間であり、そのときに遅角油室R2に向けて供給される作動油の流量は微量であって、ロックピン62(第2制御機構)がアンロック動作することはない。なお、上記した過渡期において、遅角油室R2に向けて供給される作動油の流量が多い場合(図7の状態である時間が長い場合)には、遅角油室R2に残量している作動油に供給される作動油が加わることで、ロックピン62(第2制御機構)がアンロック動作してハウジング部材30とロータ部材20の相対回転位相が過渡的に不安定となるおそれがある。
上記実施形態においては、一つの油圧制御弁100を備えた油圧回路Cにて、進角油室R1及び遅角油室R2と相対回転制御機構Bに作動油を給排可能として実施したが、図13に示したように、2個の油圧制御弁100a,100bを備えた油圧回路Caにて、上記実施形態と同様に、進角油室R1及び遅角油室R2と相対回転制御機構Bに作動油を給排可能として実施することも可能である。図13に示した相対回転制御機構Bでは、各ロックピン(ロックプレートでも実施可能)61,62が、ハウジング本体31に設けた径方向の退避孔に軸方向へ摺動可能に組付けられていて、退避孔に収容したロックスプリング63,64によって退避孔から突出するように付勢されている。なお、図13に示した相対回転制御機構Bは、図1〜図12に示した上記実施形態の相対回転制御機構Bに代えて採用することも可能である。
また、上記実施形態においては、ハウジング部材30がクランク軸と一体的に回転し、ロータ部材20がカム軸10と一体的に回転するように構成した弁開閉時期制御装置に本発明を実施したが、ハウジング部材がカム軸と一体的に回転し、ロータ部材がクランク軸と一体的に回転するように構成した弁開閉時期制御装置にも、本発明は同様に実施することが可能である。また、本発明は、ベーンがロータ本体に一体的に形成されるタイプの装置にも同様に実施し得るものである。
また、上記実施形態においては、吸気弁を開閉するカム軸に装着される弁開閉時期制御装置に本発明を実施したが、本発明は排気弁を開閉するカム軸に装着される弁開閉時期制御装置にも同様にまたは適宜変更して実施し得るものである。排気弁を開閉するカム軸に装着される弁開閉時期制御装置においては、進角方向にアシストするトーションスプリングによって進角方向への力を強くしたものがあり、かかる装置においては、位相変換の応答性が優れる方向側が進角方向となるため、内燃機関の始動時において作動油の油圧が制御可能油圧以上となった後には、遅角油室に作動油を充満させた後に、進角油室に作動油を充満させて実施する。
また、上記実施形態の油圧制御弁として、制御電流値が大の状態で進角油室及び遅角油室の両方と相対回転制御機構から作動油を排出可能、制御電流値が中の状態で進角油室または遅角油室の一方から作動油を排出可能かつ他方に作動油を供給可能、制御電流値が小の状態で進角油室及び遅角油室に作動油を給排不能、制御電流値がゼロまたは極小の状態で進角油室または遅角油室の一方に作動油を供給可能かつ他方から作動油を排出可能な油圧制御弁を採用することも可能である。
この場合には、作動油の油圧が制御可能油圧以上となった時点において、進角油室及び遅角油室と相対回転制御機構から作動油を排出可能な状態から、進角油室及び遅角油室に作動油を給排不能な状態または、進角油室または遅角油室の一方から作動油を排出可能かつ他方に作動油を供給可能な状態に移行させる際に、制御電流値を一時的にゼロまたは極小に変化させた後に所定の制御電流値に制御することで上記した効果を得ることができる。