JP4447384B2 - 耐傷性樹脂組成物および射出成形体 - Google Patents

耐傷性樹脂組成物および射出成形体 Download PDF

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Description

本発明は耐傷性が高く高外観を有する樹脂組成物であり、かつ射出成形性が良好で成形ガス由来のモールドデポジット、フローマーク等の成形不良が発生しにくい樹脂組成物、ならびに該組成物から形成される射出成形体に関する。
近年、射出成形・金型技術の進歩により金型の表面転写性が向上し、またウェルドレス成形がハイサイクルで可能となったため、従来高品位な外観を得るために塗装が必須であった薄型テレビ,家電,事務機等のハウジング部材が、コストダウン目的等により無塗装化されるケースが増えてきた。このようなハウジング部材には、ポリカーボネート樹脂やPC/ABS樹脂またはPMMA樹脂等が使用されているが、ポリカーボネート樹脂もしくはPC/ABS樹脂は衝撃強度が高い反面、材料硬度が低いため耐傷性に劣り、無塗装化が難しい。また流動性が低く、近年大型化の傾向にある薄型テレビの射出成形用材料として適さない。一方PMMA樹脂は材料硬度が高く耐傷性に優れる反面、材料強度が低いためハウジング部材としては使用できず、飾り板等での使用が一般的である。またポリカーボネート樹脂と同様に流動性が低く、射出成形性が非常に困難であるという問題も有する。
熱可塑性樹脂の耐傷性を改良する方法としてシリコーンオイル、フッ素樹脂または各種ワックス等を添加し、成形品表面の摩擦係数を低下させる方法が一般的である。ただし、いずれの添加剤も耐傷性効果を得るためには一定以上の添加量が必要であり、これらの添加剤は添加量が増えるに従い射出成形時にモールドデポジット(以下MDと略す)・ガス・フローマーク等の成形不良もしくは光沢低下等の原因となるため、無塗装高外観材料としては好ましくない。
また公知文献としてスチレン系樹脂、充填材からなる樹脂組成物とオレフィン系ワックスと官能基を有する滑剤または脂肪酸金属塩を組み合わせた滑剤からなるスチレン系樹脂組成物および成形体の記載がある(例えば、特許文献1参照)が、該文献に記載のスチレン系樹脂組成物は表面硬度が低く耐傷性に劣り、無塗装高外観材料としての用途には適さない。
特開2000−248134号公報
本発明は摺動性改良剤の添加による射出成形時の各種外観不良を解決し、摺動性が良好で耐傷性に優れる樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の熱可塑性樹脂に特定のワックス、特定の脂肪酸金属塩を適量組み合わせることにより、耐傷性が著しく向上し、且つ射出成形時のMD 、フローマークの発生が少ない事を突き止め、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明はアクリル系樹脂(a1)30〜95重量部、ゴム質重合体にシアン化ビニルおよび芳香族ビニルをグラフトしたグラフト共重合体(a2)5〜65重量部、シアン化ビニルおよび芳香族ビニルとの共重合体(a3)1〜70重量部を混合してなる樹脂組成物(A)100重量部とポリエチレンワックス(B)0.1〜3重量部、脂肪酸金属塩(C)0.1〜1重量部を含むことを特徴とする樹脂組成物である。
本発明の樹脂組成物は摺動性が良好であり耐傷性に優れ、かつ射出成形時のMD・フローマークの発生が少なく、薄型テレビ・各種家電・事務機の無塗装ハウジングに最適な材料である。
以下に本発明を詳しく説明する。本発明のA成分は下記(a1)〜(a3)を混合してなる熱可塑性樹脂組成物である。
(a1)アクリル系樹脂
(a2)ゴム質重合体にシアン化ビニルおよび芳香族ビニルをグラフトしたグラフト共重合体
(a3)シアン化ビニルおよび芳香族ビニルとの共重合体。
(a1)のアクリル系樹脂としては、通常はメタクリル酸メチル重合体(PMMA)、メタクリル酸メチルを主成分とする共重合体、もしくはアクリル酸メチル重合体(PMA)を使用でき、好ましくは、メタクリル酸メチル単独重合体、15 重量% 以下のアクリル酸メチル単位またはアクリル酸エチル単位、または40%以下のビニル芳香族化合物単位を含有するメタクリル酸メチル共重合体が好ましい。
(a2)は、ゴム質重合体に、シアン化ビニルおよび芳香族ビニルをグラフトしたグラフト共重合体である。
ゴム質重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体などのジエン系ゴム、エチレンα−オレフィンゴムであるエチレン−プロピレンゴム、エチレン−ブテンゴムなどの非ジエン系ゴム、アクリル酸エステルゴム、メタクリル酸エステル系ゴム、シリコンアクリルゴム等が挙げられる。シアン化ビニルとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられ、アクリロニトリルが好適に用いられる。芳香族ビニルとしては、スチレン、α−メチルスチレンのようなα−置換スチレン、ビニルトルエン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレンなどが挙げられ、これらを単独で用いても、2種以上用いても良いが、スチレンが最も好ましい。
(a2)としては、ポリブタジエンにアクリロニトリルとスチレンを重合してなるABS樹脂が好適である。
(a2)は、既知の塊状重合、懸濁重合、乳化重合で製造される。
(a3)は、シアン化ビニルと芳香族ビニルとの共重合体であり、シアン化ビニルおよび芳香族ビニルは上述(a2)で説明したものが用いられるが、アクリロニトリルとスチレンを重合してなるAS樹脂が好適である。
(a1)〜(a3)の混合量は特に限定されないが、好ましくは(a1)が30〜95重量部、(a2)が5〜65重量部、(a3)が1〜70重量部である。
A成分は、本発明の効果を損なわない範囲で、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ブチルアクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、N−フェニルマレイミド等の共重合可能なビニル系単量体を併用することも可能である。アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの具体的な例としては、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸グリシジル等がある。
本発明のA成分の特に好ましい態様は、PMMAおよびABSの混合物、PMMA、ABSおよび変性樹脂の混合物、MS(例えばメタクリル酸メチル−スチレン共重合体)、MBSまたはMABSである。
なお通常ABS樹脂の組成にはAS樹脂を含んでいる。
本組成は用途に応じて適宜選ばれる。例えば、半透明な用途には該組成物が半透明になる組み合わせが用いられる。
A成分の製造方法に関しては特に制限はなく、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合、塊状−懸濁重合、溶融混合等の通常公知の方法を用いる事ができる。
本発明で用いられるポリエチレンワックスは、低分子量ポリエチレンを90重量%以上含むワックスを指す。具体的には平均数分子量が500〜10000、140℃における粘度が100〜30000cps、軟化点が90〜120℃であるポリエチレンを90重量%以上含むワックスである。酸化型ポリエチレンワックスは低分子量ポリエチレンを酸化剤等により部分的に酸化させたものである。具体的には平均数分子量が500〜7000、140℃における粘度が100〜30000cps、軟化点が90〜140℃である酸化型ポリエチレンである。
ワックスの添加量は、樹脂組成物(A)100重量部に対し、0.1〜3重量部が好ましい。0.1重量部以上の場合、滑性に優れ、十分な摺動性が得られる。また、3重量部以下では射出成形時にMD、フローマーク等の不良が発生することがなく、良好な成形品外観を得ることができる。
本発明で用いる脂肪酸金属塩は、含まれる金属がNa、Mg、Ca、Al、Znのいずれかであり、これらの金属と脂肪酸の塩である。具体的にはステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム等が挙げられる。好ましくはステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムが挙げられる。
脂肪酸金属塩の添加量は、樹脂組成物(A)100重量部に対し、0.1〜1重量部である。0.1重量部以上の添加によりポリエチレンワックスと組み合わせた時に十分な摺動性が得られ、1重量部以下の添加により射出成形時にMD、シルバー、フローマーク等の原因が解消される。
本発明においてはアクリル系樹脂(a1)、ゴム質重合体にシアン化ビニルと芳香族ビニルをグラフトしたグラフト共重合体(a2)、シアン化ビニルと芳香族ビニルとの共重合体(a3)を混合してなる樹脂組成物に、ポリエチレンワックスと脂肪酸金属塩を併用することが重要である。これらの樹脂組成物にポリエチレンワックスもしくは脂肪酸金属塩のいずれか単独を混合した場合でも摺動性を向上させる効果はあるものの、耐傷性や耐削れ性を十分に向上させるためには多量な添加量が必要となり、射出成形時にMDやフローマーク等の不良を生じさせ実用的でない。併用する場合にのみ低添加量で高外観を維持しつつ良好な摺動性が発現する事が可能になり、本発明の効果が現れる。本発明の樹脂組成物は射出成形で成形することにより、無塗装ハウジング材として適する成形体となる。
本発明において各熱可塑性樹脂とポリエチレンワックス、脂肪酸金属塩の混合には、押出機、プラストミル、二ーダー、ロールミキサー、バンバリーミキサー、ブラベンダー等の熱可塑性樹脂に一般的に用いられる各種混合装置を用いることができる。これらのうち押出機が好ましく、さらに好ましくはベント付き押出機を用いることである。混合方法はそれぞれの原料を一括に配合して押出機等により混合しても良い。混合する順番は全く問わない。また必要に応じ、本発明の熱可塑性樹脂や樹脂組成物に、目的とする特徴を阻害しない範囲で、他の熱可塑性樹脂や添加剤を添加することも可能である。他の熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂、塩素化ポリエチレン、ポリカーボネート、熱可塑性ポリウレタン、ポリエステル等が挙げられる。スチレン系樹脂としてはポリスチレン(GPPS,HIPS)やポリスチレンとポリフェニレンエーテル(PPE)の混合体等も使用可能である。添加剤としては帯電防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、難燃剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、滑剤、漂白剤、充填剤等が挙げられる。
下記の実施例および比較例は、本発明をさらに具体的に説明するためのものであり、以下の例に限定されるものではない。尚、実施例中の評価、各種測定は以下の方法で行った。また組成および配合は、特に断らない限り重量部を示す。
(1)動摩擦係数
東測精密工業株式会社製往復動摩擦摩耗試験機AFT−15MSを使用して、動摩擦係数および削れ量を測定した。
試験片:カラープレート
相手材:SUSピン(先端径 2.5mmR)
試験環境:23℃、50%Rh
試験荷重:100g
摺動速度:80mm/sec
上記の条件で20回往復摺動したときの動摩擦係数を記録した。
(2)削れ量
上記動摩擦係数と同じ機器・試験方法を用いて、2000回摺動後の試験プレートの削れ深さを削れ量として記録した。
(3)連続成形テスト
東芝1300t成形機を使用し、43インチ薄型テレビハウジングの連続成形を行い、1時間後のMD発生有無とフローマークの発生有無を目視観察した。発生のないものを○、僅かな不良が認められたものを△、大きく不良の発生したものを×と判定した。
(4)試験片作成方法
東芝製射出成形機IS55EPNにて50mm×90mm×2.5mm厚のカラープレートを成形し、摺動性測定用試験片とした。
成形条件;シリンダー温度:240−240−220−200℃
金型温度:60℃
[実施例1〜5、比較例1〜4]
本実施例で用いた各成分は以下の通りである。
A成分:ABS/PMMAアロイ樹脂(「AT20(登録商標)」旭化成ケミカルズ株式会社製)
B成分:酸化型ポリエチレンワックス(「E―250P(登録商標)」三洋化成工業株式会社製)
C1成分:ステアリン酸カルシウム(「ダイワックスC(登録商標)」大日化学工業株式会社製)
C2成分:ステアリン酸マグネシウム(「ダイワックスM(登録商標)」大日化学工業株式会社製)
C3成分:ステアリン酸亜鉛(「ダイワックスZP(登録商標)」大日化学工業株式会社製)
上記成分を混合後、二軸押出機のトップより一括投入し250℃で溶融混練し、ペレットを得た。
Figure 0004447384
Figure 0004447384
表1の実施例1〜5に示すように、ABS/PMMAアロイ樹脂にポリエチレンワックスと脂肪酸金属塩を併用することにより、動摩擦係数と削れ量の大きな低下が見られた。
表2の比較例3〜4に示すようにポリエチレンワックスもしくは脂肪酸金属塩を多量に添加することによっても摺動性の向上は見られるが、射出成形時にMD・フローマーク等の不良を生じた。
本発明の樹脂組成物は摺動性が良好であり耐傷性に優れ、かつ射出成形時のMD・フローマークの発生が少なく、薄型テレビ・各種家電・事務機の無塗装ハウジングに好適に利用できる。

Claims (6)

  1. アクリル系樹脂(a1)30〜95重量部、ゴム質重合体にシアン化ビニルおよび芳香族ビニルをグラフトしたグラフト共重合体(a2)5〜65重量部、シアン化ビニルおよび芳香族ビニルとの共重合体(a3)1〜70重量部を混合してなる樹脂組成物(A)100重量部とポリエチレンワックス(B)0.1〜3重量部、脂肪酸金属塩(C)0.1〜1重量部を含むことを特徴とする樹脂組成物。
  2. さらに顔料及び/又は染料を含むことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 脂肪酸金属塩(C)がステアリン酸カルシウムもしくはステアリン酸マグネシウムであることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物から得られる射出成形体。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物から得られる家電・事務機のハウジング
  6. 請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物から得られる薄型テレビのハウジング
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