JP6373072B2 - 熱可塑性樹脂組成物及びその成形品 - Google Patents
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[1]
ゴム質重合体に、芳香族ビニル系単量体及びシアン化ビニル系単量体をグラフト重合してなるグラフト共重合体(A)と、
芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体とを共重合してなる共重合体(B)と、
メタクリル酸エステル系単量体と、アクリル酸エステル単量体、芳香族ビニル系単量体、無水マレイン酸系単量体及びマレイミド系単量体からなる群より選択される少なくとも1種類以上の単量体とを共重合してなり、かつ、当該メタクリル酸エステル系単量体の含有量が50質量%以上である共重合体(C)と、
α−オレフィンと無水マレイン酸とを共重合してなる共重合体(D)と、
を含み、
以下の(1)〜(3)を満たす、熱可塑性樹脂組成物:
(1)前記熱可塑性樹脂組成物中のゴム質重合体の含有量が5〜15質量%である;
(2)前記熱可塑性樹脂組成物中の共重合体(C)の含有量が30〜89質量%である;
(3)鉛筆硬度がF以上であり、かつ、全光線透過率が75%以上である。
[2]
前記グラフト共重合体(A)のゴム質重合体がジエン系ゴムである、[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3]
前記共重合体(B)中のシアン化ビニル系単量体の割合が15〜25質量%である、[1]又は[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4]
前記共重合体(C)がメタクリル酸エステル系単量体、芳香族ビニル系単量体及び無水マレイン酸系単量体からなる共重合体、又はメタクリル酸エステル系単量体、芳香族ビニル系単量体及びマレイミド系単量体からなる共重合体である、[1]〜[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5]
前記共重合体(D)がα−オレフィン30〜70質量%と無水マレイン酸70〜30質量%とからなり、かつ、分子量が500〜50,000の共重合体である、[1]〜[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[6]
[1]〜[5]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含む、成形品。
(1)前記熱可塑性樹脂組成物中のゴム質重合体の含有量が5〜15質量%である;
(2)前記熱可塑性樹脂組成物中の共重合体(C)の含有量が30〜89質量%である;
(3)鉛筆硬度がF以上であり、かつ、全光線透過率が75%以上である。
このように構成されているため、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、十分な流動性、耐熱性及び耐傷付性を確保した上で、優れた耐衝撃性、鉛筆強度及び意匠性(透明性、漆黒性)を発揮する。
グラフト共重合体(A)は、ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体及びシアン化ビニル系単量体がグラフト重合される。グラフト共重合体(A)に用いられるゴム質重合体としては、以下に限定されないが、例えば、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体及びエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体等からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる(共役)ジエン系ゴム単位;ポリアクリル酸ブチル等からなるアクリル系ゴム単位;エチレン−プロピレンゴム単位;シリコンゴム単位;シリコーン−アクリル複合ゴム単位;それらの水素添加物からなるゴム単位等が挙げられる。これらの中でも(共役)ジエン系ゴム単位が好ましく、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体及びスチレン−ブタジエンブロック共重合体がより好ましい。(共役)ジエン系ゴム単位を用いることにより、耐衝撃性がより向上する傾向にある。ゴム成分単位は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
共重合体(B)は、芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体との共重合である。なお、共重合体(B)における芳香族ビニル系単量体及びシアン化ビニル系単量体としては、特に限定されないが、それぞれ、上述したグラフト共重合体(A)における芳香族ビニル系単量体及びシアン化ビニル系単量体と同様のものを例示することができる。また、共重合体(B)において、透明性を阻害しない範囲で、芳香族ビニル系単量体及びシアン化ビニル系単量体と共重合可能な他の単量体を共重合することができる。共重合可能な他の単量体としてはブチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート等のアクリル酸エステル系単量体及びメタクリル酸エステル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル酸類;無水マレイン酸;N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド等のN−置換マレイミド系単量体;グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体等が挙げられる。共重合可能な他の単量体は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
共重合体(C)は、メタクリル酸エステル系単量体と、アクリル酸エステル系単量体、芳香族ビニル系単量体、無水マレイン酸系単量体及びマレイミド系単量体からなる群より選択される少なくとも1種類以上の単量体との共重合である。ここで、共重合体(C)における芳香族ビニル系単量体としては、特に限定されないが、上述したグラフト共重合体(A)における芳香族ビニル系単量体と同様のものを例示することができる。
共重合体(D)は、α−オレフィンと無水マレイン酸との共重合体である。ここで、共重合体(D)における無水マレイン酸としては、特に限定されないが、上述した共重合体(C)における無水マレイン酸と同様のものを例示することができる。
重合反応槽に、ポリブタジエンゴムラテックス(日機装(株)社製マイクロトラック粒度分析計「nanotrac150」にて測定した体積平均粒子径=0.25μm、固形分量=45質量%)100質量部に、ターシャリードデシルメルカプタン0.1質量部、及び脱イオン水45質量部を加え、気相部を窒素置換した後、55℃に昇温した。続いて、1.5時間かけて70℃まで昇温しながら、アクリロニトリル11質量部、スチレンを44質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.5質量部、クメンハイドロパーオキシド0.15質量部よりなる単量体混合液、及び脱イオン水22質量部にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2質量部、硫酸第一鉄0.004質量部、エチレンジアミンテトラ酢酸2ナトリウム塩0.04質量部を溶解してなる水溶液を4時間にわたり添加した。添加終了後1時間、反応槽を70℃に制御しながら重合反応を完結させた。
アクリロニトリル13質量部、スチレン52質量部、溶媒としてトルエン35質量部、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシー2ーエチルヘキサノエート0.05質量部からなる混合物を、窒素ガスを用いてバブリングさせた後、特許第3664576号の実施例2に記載されたものと同様の二段傾斜パドル型(傾斜角度45度)攪拌翼を供えた内容積150lの反応槽に、スプレーノズルを用いて連続的に37.5kg/時間の速度で供給した。重合温度は130℃とし、反応槽内での反応液の充満率が70容量%を維持できるように、供給液量と同量の反応液を連続的に抜き出した。反応槽の液相部相当部分には温調のためのジャケットが設けられ、ジャケット温度は128℃であった。また、攪拌所要動力は4kW/m、重合転化速度は39.8wt%/hrであった。抜き出した反応液は、250℃、10mmHgの高真空に保たれた揮発分除去装置へ導入し、未反応単量体、有機溶剤を脱気回収し、生成した共重合体(B−2)をペレットとして回収した。(B−2)の組成は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル20.8質量%、スチレン79.2質量%であった。また、還元粘度は0.67dl/gであった。
反応槽への供給液として、アクリロニトリル16質量部、及びスチレン49質量部、溶媒としてトルエン35質量部、重合開始剤として、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.05質量部を用い、温調ジャケット温度を129℃とした以外は、共重合体(B−1)の製造と同様の方法で、共重合体(B−3)を製造した。重合転化速度は39.3wt%/hrであった。抜き出した反応液は、250℃、10mmHgの高真空に保たれた揮発分除去装置へ導入し、未反応単量体、有機溶剤を脱気回収し、共重合体(B−3)はペレットとして回収した。(B−3)の組成は、フーリエ変換赤外分光光度計(FR−IR)を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル24.8質量%、スチレン75.2質量%であった。また、還元粘度は0.46dl/gであった。
4枚傾斜パドル翼を取り付けた攪拌機を有する容器に、水2kg、第三リン酸カルシウム65g、炭酸カルシウム39g、ラウリル酸ナトリウム0.39gを投入し、混合液を得た。次に、3枚後退翼を取り付けた攪拌機を有する60Lの反応器に水26kgを投入して80℃に昇温し、混合液、及びメタクリル酸メチル19,042g、スチレン1,393g、N−フェニルマレイミド2,787g、ラウロイロパ−オキサイド40.65g、及びn−オクチルメルカプタン48.77gを投入した。約75℃を保って懸濁重合を行い、原料投入してから約120分後に発熱ピ−クが観測された。その後、93℃に1℃/minの速度で昇温した後、120分間熟成し、重合反応を実質終了した。次に、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために20質量%硫酸を投入した。次に重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去した上で、水分を濾別し、得られたスラリ−を脱水してビ−ズ状ポリマ−を水洗浄した後、上記と同様に脱水し、さらにイオン交換水で洗浄、脱水を繰り返して洗浄し、共重合体(C−1)を得た。得られた共重合体(C−1)は、メタクリル酸メチル・N−フェニルマレイミド・スチレン共重合体であり、熱分解ガスクロ法を用いた組成分析の結果、メタクリル酸メチル82質量%、N−フェニルマレイミド12質量%、スチレン6質量%であった。また重量平均分子量は12万であった。
メタクリル酸メチル68.6質量部、アクリル酸メチル1.4質量部、エチルベンゼン30質量部からなる単量体混合物に、1,1−ジ−t−ブチルパ−オキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン150ppm、及びn−オクチルメルカプタン1500ppmを添加し、均一に混合した。この溶液を内容積10リットルの密閉式耐圧反応器に連続的に供給し、攪拌下に平均温度135℃、平均滞留時間2時間で重合した。この重合液を反応器に接続された貯槽に連続的に送り出し、重合体と未反応単量体及び溶液と分離し、重合体を押出機にて連続的に溶融状態で押出し、共重合体(C−2)のペレットを得た。この共重合体を、熱分解ガスクロ法を用いて組成分析したところ、メタクリル酸メチル単位/アクリル酸メチル単位=98.0/2.0(質量比)の結果を得た。
共重合体(C−3)として、以下を使用した。
メチルメタクリレート・スチレン共重合体:新日鉄住金化学株式会社製 エスチレン MS−600
共重合体(D)として、以下を使用した。
共重合体(D−1):α−オレフィンと無水マレイン酸の共重合体 三菱化学株式会社製ダイヤカルナ
その他の成分として、以下を使用した。
滑材(E−1):酸化型ポリエチレンワックス 三洋化成工業株式会社製 E−250P
金属塩(E−2):ステアリン酸カルシウム 大日化学工業株式会社製 ダイワックスC
着色剤(E−3):カーボンブラック 三菱化学株式会社製 三菱カーボン980N
グラフト共重合体(A−1)22質量部、共重合体(B−1)10.5質量部、共重合体(B−2)7.5質量部、共重合体(C−1)60質量部、共重合体(D−1)1質量部、着色剤(E−3)1.5質量部を混合し、これを2軸押出機のトップより一括投入し、250℃で溶融混練し、ペレットを得た。作製されたペレットを樹脂温度250℃、金型温度70℃、射出速度33mm/sにて射出成形(東芝機械製「EC50S))を行い、50mm×90mm×2.5mmの平板の射出成型品を作製した。
表1に示す組成割合で各成分を配合し、実施例1と同様にして樹脂ペレットを得、評価を行った。なお、各種評価の方法は以下に述べるとおりとした。評価結果を表1に示す。
ISO179に準じて、各例に対応する射出成型品のシャルピー衝撃強さを評価した。8kJ/m2以上を「○」、8kJ/m2未満を「×」とした。
各例に対応するペレットをサンプルとして、ISO1133に基づいたテスト方法でMVRを測定した。測定条件としては、温度を265℃とし、荷重を10kgとして行った。4.5[cm3/10分]以上を「○」、4.0[cm3/10分]以上4.5[cm3/10分]未満を「△」、4.0[cm3/10分]未満を「×」とした。
各例に対応する射出成型品を対象として、ISO75に基づいたテスト方法で荷重たわみ温度を測定した。荷重は1.8MPaの条件で、88℃以上を「〇」、80.0℃以上88.0℃未満を「△」、80.0℃未満を「×」とした。
各例に対応するペレットを用い、射出成形機により、シリンダー温度=240℃、金型温度=70℃として5cm×9cm、厚み2.5mmの平板を射出成形した。この平板でJIS K5600 鉛筆ひっかき値に準じて評価した(鉛筆:JIS S6006規定、重り:750±10g)。F以上を「〇」、HBを「△」、B以下を「×」とした。
(4)で得られた各例の平板を、大倉インダストリー株式会社製動摩擦試験機DTF−1を使用して、下記条件で引掻き、傷付試験前後の明度差ΔL*をミノルタ株式会社製色彩計、CM−2002(分光測色計)CM−S9W(ソフト)にて測定した。ΔL*が6未満を「〇」、6以上10未満を「△」、10以上を「×」とした。但し、傷の状態や試験片の漆黒性による影響から明度差ΔL*と目視評価で乖離がある場合、目視で適宜「○」〜「×」を評価した。
相手材:SUS球(直径5mm)
試験環境:23℃、50%Rh
試験荷重:5000g
引掻き速度:10mm/sec
引掻き距離:40mm
(4)で得られた各例の平板を用いて、ASTM D1003に準じて評価した。75%以上を「〇」、70%以上75%未満を「△」、70%未満を「×」とした。
(4)で得られた各例の平板の明度L*をミノルタ株式会社製色彩計、CM−2002(分光測色計)CMS9W(ソフト)にて測定した。L*が4未満を「〇」、4以上5未満を「△」、5以上を「×」とした。
Claims (6)
- ゴム質重合体に、芳香族ビニル系単量体及びシアン化ビニル系単量体をグラフト重合してなるグラフト共重合体(A)と、
芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体とを共重合してなる共重合体(B)と、
メタクリル酸エステル系単量体と、アクリル酸エステル単量体、芳香族ビニル系単量体、無水マレイン酸系単量体及びマレイミド系単量体からなる群より選択される少なくとも1種類以上の単量体とを共重合してなり、かつ、当該メタクリル酸エステル系単量体の含有量が50質量%以上である共重合体(C)と、
α−オレフィンと無水マレイン酸とを共重合してなる共重合体(D)と、
を含み、
以下の(1)〜(3)を満たす、熱可塑性樹脂組成物:
(1)前記熱可塑性樹脂組成物中のゴム質重合体の含有量が5〜15質量%である;
(2)前記熱可塑性樹脂組成物中の共重合体(C)の含有量が30〜89質量%である;
(3)鉛筆硬度がF以上であり、かつ、全光線透過率が75%以上である。 - 前記グラフト共重合体(A)のゴム質重合体がジエン系ゴムである、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記共重合体(B)中のシアン化ビニル系単量体の割合が15〜25質量%である、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記共重合体(C)がメタクリル酸エステル系単量体、芳香族ビニル系単量体及び無水マレイン酸系単量体からなる共重合体、又はメタクリル酸エステル系単量体、芳香族ビニル系単量体及びマレイミド系単量体からなる共重合体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記共重合体(D)がα−オレフィン30〜70質量%と無水マレイン酸70〜30質量%とからなり、かつ、分子量が500〜50,000の共重合体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む、成形品。
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